説明

湿気/乾気フィールドで反応するエアー・ターミナル付雷用保護装置

本願発明の雷用保護装置は、接地されたフランクリン・ロッドと、該フランクリン・ロッドに付随する、所定の周囲サイズを有する所定の全体形状を規定する導電デバイスと、を備える。上記雷用保護装置は、雷のリーダーが低下する期間中で上方向のリーダー開始要求が変化しないままでいるときに、雷の悪天候に付随する周囲地面の電界の下でのコロナ放電量を制限するように特別に工夫されている。また、上記雷用保護装置は、公害、昆虫、害虫、または水滴からの汚染に実質的に反応しないコロナ開始電圧を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、広くは雷用保護装置に関連し、より詳細には、一層改善された雷用保護装置に関連する。
【0002】
雷放電の大部分は、主に負に充電された雲に関連することは、よく知られている。雷による衝撃の2つの主たるカテゴリーは、非常に高い構造物からの上方向への閃光、および負の下降するステップトリーダー(stepped leader)に関連する一層広範囲となる衝撃である。そのことは、「高層建築物に対する雷発生のモデリング、パートI:理論」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電(Power Delivery)関連、9巻、1号、1994年1月、162頁-171頁)、および「高層建築物に対する雷発生のモデリング、パートII:応用」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、9巻、1号、1994年1月, 172頁-193頁)に説明されている。負の下降するリーダーは、負の空間電荷のシース(sheath)に囲まれており、このシースが、負のリーダーが地面に近づくにつれて、接地された物体の全てに正の電荷を誘導するようになる。接地された一層高い構造物およびその近くの周辺物が、下降する負のリーダーの通路となり、接地された構造物上に誘導された電荷が、一層大きな影響を与えることとなる。
【0003】
雷撃による電流は、中央値が25−35KAで、2〜3KAから2〜3百KAの広範囲で変化する統計的な変数であることは知られている。構造物が引きつける半径は、すなわち構造物が下降するリーダーを捕捉する、構造物周囲での最大半径の距離は、衝撃電流および構造物の高さの両方と共に増加することになり、この衝撃電流は、負の空間電荷のジャケット(jacket)に関連している。
【0004】
近年、長い空気ギャップの物理的破壊の研究における進展をベースにして、雷が衝突する種々の地面構造でのメカニズムに関する理解が、実質的に進歩してきている。特に、衝撃メカニズム内の接地物体で演じられる役割が、明解になってきている。詳細が、「直接的な雷撃に暴露された伝送ラインのモデリング」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、5巻, 1990年10月、1983頁-1997頁)に記載されており、モデリングは、引き付ける半径が、2つの部分を含むことを示している。すなわち、構造物から生じた正のリーダーが広がる大きな部分(major part)および、負のリーダーの先端と正のリーダーの先端との間での最終的なジャンプを構成する小さな部分(lesser part)の2つの部分を含む。
【0005】
静電気学による電界解析は、接地された何かの構造物の表面および近接場における初期段階での電界の増大が、雲の電荷及び/又は下降する負のリーダーによって、上記接地された構造物に導かれる正の電荷によって主に生じ、そこでの電界の量は、雲の電荷及び/又は下降する負のリーダー自身によるので、バックグランド(background)の電界をはるかに越えることを示している。誘導された電荷で生じる電界の開始は、接地された物体の構造的な特徴にもよるが、周辺空気のイオン化が発生したときに、コロナ放電および正のストリーマー(streamer)の形成を生じさせながら達成される。正のストリーマーの長さは、接地された構造物の形状および誘導された正の電荷にもよるが、メートルの領域まで成長することができる。
【0006】
「スイッチング・インパルス・リーダーの開始と長い空気ギャップでの破壊のためのモデル」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、4巻、1号、1989年1月、596頁-606頁)および「空気絶縁体のスイッチング・インパルスの強度:リーダー開始の判定基準」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、4巻、4号、1989年10月、2187頁-2195頁)で、詳細が記載されているように、正のストリーマーが、臨界サイズに到着したとき、高度に誘導されたステム(stem)が、構造物のストリーマー・ジャンクションにおいて形成され、この結果、正のリーダーが形成される。傾きの平均が、約400−500KV/mを有する正のストリーマーに反して、リーダーの傾きは、リーダー電流および電流が存在する継続時間の両方の関数となる。1Aの電流にとって、リーダーの傾きは、30−50kV/mとなり、すなわち正のストリーマーの傾きの約10分の1であるが、しかし100Aのオーダーのリーダー電流にとっては、リーダーの傾きは、2−3kV/mと等しい低い傾きで下降していくことになる。このことは、正のストリーマーに反して、正のリーダーは、非現実的な高い電位を要求されることなく、100mの範囲内の距離を移動することができることを意味する。
【0007】
接地構造から発生する正のリーダーの全てが、下降している負のリーダーと、最終ジャンプ内で衝突するような軌道を完成させるわけでないことに注目することは重要である。正のリーダーが、構造物から遠方へ遠方へと移動するにつれて、この移動動作は、リーダー先端より先の空間電位および電界のパラメータによって益々支配されることになる。リーダー先端は、下降しているリーダーの電荷によって益々決定され、そして接地された構造物によっては益々決定されなくなる。状態が、継続する伝播にとって不適切になったとき、正のリーダーは停止し、そして、正のストリーマー/正のリーダーのプロセスをスタートさせた関連する接地された構造物は、被雷されなくなる。
【0008】
下方向の負の雷によって雷撃を受けた物体は、誘導された正の電荷のおかげで、正のリーダーの形成を生じさせる長い正のストリーマーの生成に「成功」している。この正のリーダーは、いわゆる最終ジャンプのために、接近中の下降する負の雷のリーダーと出会うために、増加中の電界区域内を進行する。この最終ジャンプは、上昇する正のリーダーの先端と下降する負の雷のリーダーの先端との間の平均電圧の傾きが、500−600kV/mに達したときに発生する。従って、目標を、保護対象物体の対応する可能性に対して、雷用ロッドへの雷撃の可能性を最大するとき、上記目標は、ロッドの先端の状態が、長い正の上昇するストリーマー/リーダーを生成するのに理想的であるときに、非常に有利になるであろう。
【背景技術】
【0009】
雷用保護の実務は、2つの広いカテゴリーに分類することができる。第1は、フランクリン・ロッドまたは架空地線の種々の実施であって、この実施の目的は、雷撃の電流に対して地面への優先的な経路を与えて、可能性のある損害を防ごうとするものである。大部分において、これらのシステムは、雷撃が発生する可能性に対して影響を及ぼすことを主張することができない。
【0010】
従来の雷用ロッドの機能は、下方向のステップトリーダーの発生を先行させる周囲地面電界への反応に影響を受けていることに注目すべきである。上記周囲地面電界は、晴天時において通常は数百V/mのオーダーであるが、雷に先行する雲での帯電により、2KV/m−20Kv/mの範囲内で変化することがある。このことは、G. Simpson が、「不安定な天候における大気電気」(地球物理学・学会誌、英国気象庁、ロンドン、84号、1949年、1頁-51頁)において説明している。
【0011】
上記電界は、リーダーが下降する間の連続する電界変化に比較して相対的に遅い時間で変化し、雷の嵐の間、数分間まで持続することができる。このことは、「雷の測定技術」(1号、13章、R.H.Golde 編集、1977年、441頁)内で、R.B.Anderson によって述べられている。しかし、連続する雷の放電の間に、雲の充電再生が、10秒程度の間隔で、遅い周囲電界を発生させることになる。このことは、「雷保護に対する新しい取り組みへの批判的論評」(米国気象学会、2002年12月、1809頁−1820頁)内で、M.A. Uman および V.A. Rakov によって、詳しく述べられている。上記から、雷用ロッドは、一般的に混合型のストレスに晒され、すなわち周囲地面の電界によって緩やかに変化する成分を伴いながら、下降するリーダーによって非常に高速な成分に追従されることは明白である。雷用ロッドは、周囲地面電界により重要な空間電荷を生成することで、自己保護をするようになる。このことは、「近接の衝撃に反応する雷用ロッドの測定」(地球物理研究レター、27巻、10号、2000年 5月15日、1487頁−1490頁)内で、C.B. Moore、 G.D. Aulich、および W, Rison によって述べられている。上記自己保護が、下降するステップトリーダーに反応して望ましいストリーマー/リーダーの形成を妨げるようになる。この意見は、混合された電圧下での長い空気ギャップでの高電圧実験によって確認されており、この内容は、「直流電圧と、直流電圧に重畳するスイッチング・サージとを伴う、大きな空気ギャップでのフラッシュ・オーバー試験」(IEEE 論文、 PAS-89 巻、1970年 5月/6月、781頁〜788頁)内で、N.Knudsen および F.IIiceto によって、説明されている。
【0012】
上記試験において、正の直流電圧によって生成されたコロナ空間電荷が、リーダーの開始電圧内の増加を導く正のスイッチング・インパルスの適用を先行させること、これに対応して、長い空気ギャップ内の複合の破壊電圧を増加させることにストレスを加える。このことは、上記最後に挙げた参照文献内で述べられている。
【0013】
更に、「大きな空気ギャップでのスイッチング・サージの強度;物理的手法」(IEEE 論文、パワー装置及びシステムの関連、PAS-95巻、2号、1976年 3月/4月、512頁〜524頁)内で、G.Carrara、および L.Thione によって述べられているように、大きな空気ギャップでの正のスイッチング・インパルスによる破壊試験および付随する現象のモデリングは、どんなギャップ長さであっても、リーダーの開始電圧は、一定の臨界値以下に留まる限り、高ストレス下の電極の曲率半径とは無関係であることが確認された。一定の臨界値以下の電極の半径にとって、コロナ開始電圧は、リーダーの開始電圧よりも低く、そのためコロナ放電は、リーダーの形成よりも先行することになる。一方の臨界値に等しいか、または大きい半径のロッドにとって、コロナ開始電圧とリーダーの開始電圧とが、一致することになる。
【0014】
「直接的な雷撃への伝送ライン暴露のモデリング」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、5巻, 1990年10月、1983頁-1997頁)、および「スイッチング・インパルス・リーダーの開始及び長い空気ギャップの破壊に関するモデル」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、4巻、1号、1989年1月、596頁-606頁)内において、一手法が、空気ギャップの長さ(すなわち、地面より上にある雷用ロッド)に、正のリーダーの開始電圧への依存を形成することを提示している。また、上記参照文献は、地面より上にある雷用ロッド用のギャップ長または雷用ロッド用の高さのための臨界の半径値を決定する一手法を提供してくれる。
【0015】
フランクリン・ロッドの別の変形例は、アーリー・ストリーマーのエミッタ・システム(Early Streamer Emission System)であり、これは、フランスの規格NFC−17−102「アーリー・ストリーマーのエミッタ・ターミナルを使用した、雷に対する構造物と開放エリアの保護」(1995年7月、英訳版発行)に記載されている。ここでのアイデアは、ストリーマーのプロセスをより早く開始させるいくつかの手段があるとき、このことが、雷用ロッドを一層効率良くすると考えたものである。しかし、適切なサイズのアーリー・ストリーマーの開始は、上方向の正のリーダーの形成に導いたときであっても、連続する接続プロセスを保証するものではない。上方向のリーダーが接地された構造物を離れた後の短期間に、リーダーの伝播が、接地された構造物での初期状態によるのではなく、下降するステップトリーダーによって生成された周囲電界条件によって抑制されることになる。あまりにも早期に生成された上方向のリーダーは、簡単に中断させられることになり、上方向のリーダーおよび下降するリーダーの間での最終ジャンプによって終了する連続する接続プロセスに導けないようになる。
【0016】
米国特許番号第6,320,119号(Gumley 出願)に記載されているフランクリン・ロッドの別の変形例は、雷用保護装置が晒されている電界が、ストリーマー/リーダーの伝播をトリガーするのに十分になるまでの間、コロナ活動を制限するのに十分なサイズを有する曲線の導電性表面の使用を介してコロナの放電量を制限しようと試みるものである。しかし、この手法は、雷に通常伴う害虫、昆虫、および水滴による曲線の導電性表面への汚染の効果を考慮することが不足している。これらの汚染は、通常状態の雷用ロッドの開始電圧に近づこうとする、大きな曲線の導電性表面でのコロナ開始電圧を低減させることになる。このため、雷用保護装置は、単に湿るまたは汚染しただけで、該装置は、大きな曲線の半径を有する導電性表面の目的を駄目にするような典型的な周囲地面の電界において、コロナを生成することになる。
【0017】
雷保護実務の他の広いカテゴリーを、「消散システム(dissipation systems)」と呼ぶことができ、米国特許番号第5,043,527号(Carpenter 出願)、米国特許番号第4,910,636号(Sadler、他 出願)、および米国特許番号第4,605,814号(Gillem 出願)は、そのように記載している。これらのシステムでは、空間電荷を生成するために、電線若しくはロッドのポイントまたは先端を使用している。発明の装置をどう機能させるかの方法において、科学的基礎に欠けるまたは無いような、いくつかの矛盾する文章が存在する。ある消散システムは、空間電荷の生成が、雲の負電荷を中性化させることができ、この結果、雷を低減させることができるような主張を提案しているが、これは、非現実的なタスクである。別の消散システムは、保護された構造物からのイオンの分散が、堆積した電荷を下方向に吹くことで低減させるか、または電荷した雲および保護された構造物の間での電位差を低減若しくは最小化するような主張を提案している。
【0018】
上記主張は、もちろん物理的に無意味であり、何故なら、接地された構造物上に誘導された電荷(イメージ)は、雲に誘導された電荷または下降するリーダーが、留まり、かつ周囲の空気に分散することができない限り、その場に留まる抑制された電荷だからである。更に、金属が、正のイオンを放出しないことは、確定した科学的事実である。それどころか、正の空間電荷は、イオン化プロセスによって形成され、このプロセスは、電極(構造)で収集され、周囲の空気内に正イオン空間電荷を放置する地面に注入される電子を生みだす。また、雲および接地された対象物の間の電位を変化させることは、必然的に雲の電位を変化させる非現実的なタスクを意味する。何故なら、接地された構造物は、規定しているように、雷による衝撃でも無い限り、地面の電位に等しく、かつ常に地面の電位に留まるからである。
【0019】
従って、既知の従来技術の装置よりも一層効率良いであろう、改良された雷用保護装置を提供することが要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本願発明の目的は、種々の環境条件におけるコロナ開始およびリーダー開始の制御に関連する。
【0021】
従って、本願発明の目的は、下記の技術的特徴を提供する。
・雷用ロッドは、雷のリーダーの低下期間中で、上方向のリーダー開始要求が変化しないままでいるときに、雷の悪天候に付随する周囲地面下でのコロナ放電の量を制限する。
・雷用ロッドは、ロッド内のコロナ開始電圧が、公害、昆虫、害虫、または水滴からの汚染に対して、実質的に影響されないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明の目的によれば、以下の雷用保護装置が提供される。
この雷用保護装置は、接地されたフランクリン・ロッドと、該フランクリン・ロッドに取り付けられ、所定の周囲サイズを有する所定の全体形状を規定する導電デバイスとを備える。上記導電デバイスは、連続する上方向のリーダー開始空間電位が周囲地面の最大電界の空間電位より以下となる地面から上にある所定の位置のために、乾燥状態および湿潤状態の両状態において、上記保護装置のコロナ開始空間電位が上記連続する上方向のリーダー開始空間電位と一致するような形状とサイズとを有する。
さらに、上記導電デバイスは、上記連続する上方向のリーダー開始空間電位が上記周囲地面の最大電界の空間電位を越える地面から上にある他の所定の位置のために、上記保護装置のコロナ開始空間電位が、上記周囲地面の最大電界の空間電位より上であって、かつ上記連続する上方向のリーダー開始空間電位より下にあって、上記保護装置のコロナ開始空間電位が、汚染について表面突起部で実質的に無反応であるような形状とサイズとを有する。
【0023】
好ましい実施例において、導電デバイスは、複数の金属性のトロイド(toroids)を含み、トロイドの各々は、一定の離れた空間的関係において上記フランクリン・ロッドと結合している。一層好ましくは、上記トロイドの各々は、所定の大直径(major diameter)と所定の小直径(minor diameter)と有し、全体の形状を、球形状また楕円形状として規定するように配置される。
【0024】
更に好ましい実施例において、最大周囲電界Egmおよび地面からのフランクリン・ロッドの実効高さがhのときの最大空間電位は、Ugm=Egm・h、で規定され、または連続する正のリーダー開始電位UIcは、UIc=1556/(1+3.89/h)、(kV,m)で規定される。最大電界は、Eci(r)=2300[1+0.224/(2r)0.37]、(kV/m,m)を満足し、この式で、Eciは、コロナ開始電界を示し、rは、トロイドの小半径を示す。
【0025】
本願発明および関連する種々の有利な点は、添付図面を参照してなされる好ましい実施例に関する以下の限定されない記述を読むことで、一層理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の好ましい実施例により、地面に設置された雷用保護装置の側面図である。
【図2】本願発明の別の好ましい実施例により、保護すべき構造物の頂点に搭載された雷用保護装置の側面図である。
【図3】図1および図2に示した雷用保護装置の平面図である。
【0027】
本願発明を実施例との関連で説明することになるが、この説明が本願発明の範囲を実施例の範囲に制限しようと意図するものでないことは理解されるであろう。むしろ、説明は、添付した「特許請求の範囲」内で規定するような、代替例、変形例、および均等な実施例の全てをカバーするものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の記述において、図面内において同様な機能は、同様な参照番号を与えており、いくつかの要素は、図を明解にするために、当該要素が先行する図において既に識別されるときは、後の図において言及しないことがある。
【0029】
本願発明は、雷用保護装置に関するものであり、またエアー・ターミナルとも呼ばれる装置に関するものであり、当該装置は、最適なデザインを特徴づけるのに必要と思われる以下の条件を満足している。
1.エアー・ターミナルは、どの位置にあろうとも、ステップトリーダーの下降に先行して、周囲地面の電界の実際的な値によって生じる空間電位に晒されることで、コロナを発生することはない。また、以下でも示すように、上記要求は、地面からの実効ある高さhを満たすことができ、または一定の制限高さhoを超えない、大規模な接地された構造物からの実効ある高さhを満たすことができる。上記要求は、正の上方向のリーダー開始が、遅く変化する周囲電界から影響されることなく、エアー・ターミナルの自己防衛の傾向を防ぐことを保証することになるであろう。
2.上記で設定された制限を越える、実効あるエアー・ターミナルの高さのために、エアー・ターミナル電極のコロナ開始電圧は、地面または接地された構造物の上にあるエアー・ターミナル位置での空間電位のせいで、リーダー開始電圧と一致することが要求されるであろう。一方で、この要求は、雷用保護装置を雷撃から自己防衛させ、引き付ける距離を制限するような、コロナの空間電荷の生成がないことを保証するであろう。
3.雷用保護装置は、雨による水滴、および大きな円滑な電極上のコロナ開始電界を著しく低減させる傾向にある汚染物による別の突起部に実質的に無反応になるであろう。この要求は、重要である。何故なら、雷には、雨が通常付随しており、また、小さな導電の突起部は、現実の電界条件のもとでは避けることができないからである。
【0030】
実効ある高さは、以下のように決定されるであろう。
1.平らな地面の上にあるエアー・ターミナルにとって、実効ある高さhは、エアー・ターミナルの物理的高さになるであろう。
2.平らな地面の上にある細長い構造物の上のエアー・ターミナルにとって、実効ある高さhは、エアー・ターミナルおよび細長い構造物の物理的高さの合計になるであろう。
3.天井の寸法が、エアー・ターミナルの長さ以上に大きな、巨大な構造物にとって、実効ある高さは、上記(1)のようなエアー・ターミナルの物理的長さになるであろう。
4.上記記載に含まれないトポロジーにとって、実効ある高さは、周囲地面の最大電界での空間電位およびリーダー開始の空間電位を計算するために、電界の計算によって決定される。この計算方法は、「高層建築物に対する雷発生のモデリング、パートI:理論」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、9巻、1号, 1994年1月、162頁-171頁)および、また「空気絶縁体でのスイッチング・インパルスの強度:リーダー開始の判定基準」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、4巻、4号、1989年10月、2187頁-2195頁)に記載されている。
【0031】
図1〜図3において、本願発明の一般的な原理による雷用保護装置10が示されている。図1において、雷用保護装置10は、地面12の上に搭載されており、一方、図2において、雷用保護装置は、保護すべき構造物14の頂上に搭載されている。図示のように、本願発明による雷用保護装置10は、接地されたフランクリン・ロッド16と、該フランクリン・ロッド16に取り付けられ、所定サイズの周囲において所定の全体形状20を規定するような導電デバイス18と、を備えている。本願の明細書を読むことで一層明解に理解できるように、導電デバイス18は、連続する上方向のリーダー開始空間電位が周囲地面の最大電界の空間電位より以下である地面から上にある所定の位置のために、乾燥状態および湿潤状態の両状態において、上記保護装置のコロナ開始空間電位が、上記連続する上方向のリーダー開始空間電位と一致するような、特別な形状およびサイズをしている。さらに、導電デバイス18は、上記連続する上方向のリーダー開始空間電位が上記周囲地面の最大電界の空間電位を越える地面から上にある他の所定の位置のために、上記保護装置のコロナ開始空間電位が、上記周囲地面の最大電界の空間電位より上であって、かつ上記連続する上方向のリーダー開始空間電位より下であって、上記保護装置のコロナ開始空間電位が、汚染に関して表面突起部で実質的に無反応であるような、特別な形状およびサイズをしている。好都合なことに、デバイスのコロナ開始の空間電位は、汚染、例えば、汚染物、害虫、昆虫、水滴による汚染に関して、表面の突起部で実質的に無反応なことである。
【0032】
勿論、従来型の下方の導電物と接地システムは、NFPA(米国防火協会)規格780の要求仕様を満足するように変更されないままである。
【0033】
図示の好ましい実施例において、導電デバイス18には、有利なことに、ロッド16に沿って適切に配置された、複数の金属のトロイド22が供給されている。このトロイド22は、フランクリン・ロッド16の周囲および該ロッド16に対して電気的に結合され、かつ好ましいことに互いに個別に電気的に結合している。図示のように、各トロイド22は、所定の大直径を有し、この大直径は、フランクリン・ロッド16の周囲での球形として、全体の形状20を規定するように配置される。また、図示していないが、代替の実施例として、該ロッド16の周囲に楕円の形状を形成するように、トロイド22を搭載するように構想することもできる。図1に関連して、種々のパラメータを以下で規定するが、rはトロイドの小半径であり、Rは最も広いトロイドの全体半径であり、nはトロイドの数であり、hは、中央のトロイドの地面からの高さである。
【0034】
上記で概要を説明した本願発明の雷用保護装置は、具体的には以下の条件を満足するようにデザインされる。
エアー・ターミナルの実効的な高さhを考え、エアー・ターミナルの高さまたは長さに沿った最大の周囲電界での平均値は、Egmに相当すると考える。これに対応して、遅い周囲地面の電界によって生成される最大空間電位は、下式で得られる。
gm=Egm・h …(1)
平らな地面から適度の高さのエアー・ターミナルでの典型的なEgmの値は、「不安定な天候における大気電気」(地球物理学・学会誌、英国気象庁、ロンドン、84号、1949年、1頁-51頁)において、G.Simpsonによって説明されているように20kV/mになるであろう。更に、「スイッチング・インパルス・リーダーの開始と長い空気ギャップの破壊のためのモデル」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、4巻、1号、1989年1月、596頁-606頁)」、また「空気絶縁体のスイッチング・インパルスの強度:リーダー開始の判定基準」(Farouk A.M.Rizk 著、IEEE 論文、給電関連、4巻、4号、1989年10月、2187頁-2195頁)に詳細に記載されているように、地面から実効ある高さhでのエアー・ターミナルにとって、正の連続するリーダー開始空間電位は、以下のように表すことができる。
Ic=1556/(1+3.89/h) (kV,m) …(2)
上記に関連して、実効ある高さの制限を決定するために、上記(1)式および(2)式を引用すると、
gm・h=1556/(1+3.89/h) …(3)
以上より、下記が得られる。
=1556/Egm−3.89 (m,kV/m) …(4)
【0035】
一般に、Egmは、周囲のトポロジーに依存する。上記で述べたように、平らな地面上に搭載された雷用ロッドに対して、Egmは、20kV/mにすることができ、その結果、この特定なケースのために、hとして74mが許容される。
【0036】
h<hに従うとき、最大空間電位Ugmは、周囲地面の電界のおかげで、正の連続するリーダー開始空間電位UIcよりも低くなるであろう。この実効的な高さの範囲内において、自己保護に対するエアー・ターミナルのいかなる傾向も、空間電位Ugmにおいて、エアー・ターミナルの表面上のいずれの点における電位が、コロナ開始電界Eciに等しいかまたは以下であることで、防がれることになる。空間電位のいかなる値にとって、すなわち、周囲地面の電界およびエアー・ターミナルの高さにとって、エアー・ターミナルの表面上のいずれの点における電界が、数値的な電界の計算技術、例えば充電シミュレーションによって決定することができる。このことは、「高電圧電界の計算のための充電シミュレーション方法」(IEEE 論文、PAS-93巻、5号、1974年 9月/10月、1660頁〜1668頁)内に、H. Singer、H. Stenbigler、および P.Weiss によって開示されている。上記の導電デバイスでの好ましい配置での幾何学的パラメータr、R、およびnは、Ugmでの最大適用電界が、コロナ開始電位Eciに等しくなるように選択するべきであろう。このコロナ開始電位Eciは、「高電圧ネットワーク内のサージ」(K.Ragallar 編集、1979年 165頁〜 205頁)内の「空気ギャップ絶縁の電気的強度」(L.Thione 著)に記載されており、下式で表現される。
ci=2300[1+0.224/(2r)0.37] (kV/m、m) …(5)
ここで、rは、導電デバイスのトロイドの小半径である。表面の粗さによるEciの僅かな減少は、上記Egmの選択において間接的に考慮できることに注目するべきである。
【0037】
h>hのときの平らな地面の上にあるエアー・ターミナルにとって、(2)式によって表現される連続するリーダー開始空間電圧に対応する空間電位は、約1500kVで実際は一定になるであろう。この高さの範囲内で、上記の好ましい導電デバイスでのパラメータr、R、およびnは、この空間電位で、得られる電界が上記(5)式のコロナ開始電界を満たすことができるように選択されるべきである。
【0038】
好ましいことに、現実においてエアー・ターミナルの寸法で限定された数は、デザインされた空間電位の段階を、例えば200kV以下、200kV〜400kV、400kV〜600kV等をカバーするように使用できるであろう。
【0039】
エアー・ターミナルの実際の高さにとって、上記(1)式および(2)式の電極の計算は、実効あるエアー・ターミナルの高さに基づいて、デザインする空間電位を、約200−1500kVの範囲で変更できる。ターミナル電極のデザイン・パラメータは、全体の半径Rを範囲10−100cm内で変更できることを示した。管状導体の半径rは、0.5−2.5cmの範囲内で変更できる。管状の環状形体の数値nは、球面の周囲に沿って適切に空間を占めるように、6から12の範囲内で選択することができる。推奨するターミナル電極の形状の雨に対する非感受性は、長い空気ギャップ上での正のスイッチング・インパルスの試験によって確認することができた。このことは、本願で挙げた文献の一例である「大きな電極の空気ギャップのスイッチング・インパルスの放電開始電圧での雨による影響」(F.A.M.Rizk 著、IEEE 論文、パワー装置及びシステムの関連、PAS-95巻、4号、1976年7月/8月、1394頁-1402頁)内に、詳細を記載している。全体の半径Rが75cmで、トロイドの半径rが1.25cmおよびトロイドの数値n=8の管状のトロイドの電極にとって、人工雨のもとで、正のスイッチング・インパルス50%の放電開始電圧で、987kVに達した。IEC規格60、すなわち982kVまでに達する規格を満足している。これは、雨が実際に絶縁破壊に影響を与えることがなく、従って本願発明の雷用保護装置の正のリーダー開始電圧にも影響を与えることがないことを示す。直径1mの円滑な球形の電極を完全にカバーする同一のギャップにとって、対応する破壊電圧は、上述した科学参照文献をもとに後で説明するように、乾燥条件下の1481kVから、雨の下での897kVに低下させることになる。
【0040】
実験室での試験における、本願発明の雷用保護装置の印象的な物理的説明は、以下と考える。
・カバーされていない管状のトロイドの球形は、全面球面の表面よりもはるかに少ない降水を収集する。
・雨滴は、電界が低減された連続のトロイド間でのトロイドの管状の低位の表面に収集される傾向にある。
・同一直径の円滑な球形の管状に比較した、より小さな管状の半径により、水滴または汚染物によるかく乱は、益々重要ではなくなる。
【0041】
本願発明によれば、標準的なフランクリン・ロッドであれば、好都合なことに、どのようなロッドでも、多様なサイズの金属のトロイドのセット内に包み込むことで変形させることができ、また本願発明の雷用保護装置を形成するように上記ロッドと個別に結合させることができることを述べておく。
【0042】
図において、トロイドは、水平に方向付けられることを示しているが、別の方向に、非制限の一例として垂直に方向付けることもできることも述べておく。しかしながら、トロイドが垂直に方向付けられたとき、うまく機能しないであろう。それは、差異は小さいかもしれないが、湿気および水滴が、電界が存在しない位置に形成されることで、トロイドが水平に方向付けられたときに電界が低減したようにはならないであろう。
【0043】
本願発明に関連する技術に精通した人は、本願発明による雷用保護装置が、雷用ロッドを今まで使用していた場所に使用できることは容易に理解されるであろう。
【0044】
本願発明の好ましい実施例を、添付図面により明細書で説明してきたが、本願発明は、上記の詳細な実施例に制限されるものではなく、種々の変更および改良が、本願発明の範囲から逸脱すること無く実施できることを理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地されたフランクリン・ロッドと、該フランクリン・ロッドに電気的に結合する、所定の周囲サイズを有する所定の全体形状を規定する導電デバイスと、を備える雷用保護装置であって、
前記導電デバイスは、連続する上方向のリーダー開始空間電位が周囲地面の最大電界の空間電位より以下である地面から上にある所定位置のために、乾燥状態および湿潤状態の両方において、前記保護装置のコロナ開始空間電位が前記連続する上方向のリーダー開始空間電位と一致するような形状とサイズとを有し、さらに、前記連続する上方向のリーダー開始空間電位が前記周囲地面の最大電界の空間電位を越える地面から上にある他の所定位置のために、前記保護装置のコロナ開始空間電位が、前記周囲地面の最大電界の空間電位より上にあって、かつ前記連続する上方向のリーダー開始空間電位より下にあって、前記保護装置のコロナ開始空間電位が、汚染について表面突起部で実質的に無反応である形状とサイズとを有する雷用保護装置。
【請求項2】
前記導電デバイスは、前記フランクリン・ロッドに沿って配置された複数の金属性のトロイドを含み、各々のトロイドは、前記フランクリン・ロッドに結合している請求項1に記載の雷用保護装置。
【請求項3】
前記トロイドの各々は、所定の大直径および所定の小直径を有し、トロイド全体の形状を球形の形状として規定するように配置される請求項2に記載の雷用保護装置。
【請求項4】
前記トロイドの各々は、所定の大直径および所定の小直径を有し、トロイド全体の形状を楕円の形状として規定するように配置される請求項2に記載の雷用保護装置。
【請求項5】
前記フランクリン・ロッドは、実質的に垂直方向に延びており、前記トロイドの各々は、前記フランクリン・ロッドの周りで実質的に水平方向に延びている請求項2に記載の雷用保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507883(P2010−507883A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533619(P2009−533619)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001876
【国際公開番号】WO2008/049207
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(508155114)
【出願人】(508155125)
【Fターム(参考)】