説明

湿潤剤および分散剤としてのポリエーテル変性エポキシアミン付加物

【課題】一般的な結合剤および溶媒系と高い相溶性を呈する湿潤剤および分散剤を提供すること。
【解決手段】湿潤剤および分散剤に適した付加化合物であって、A)ポリエポキシドとB)少なくとも1つの一級ポリオキシアルキレンアミン、C)少なくとも1つの他の脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミン、及びD)少なくとも1つの変性イソシアネートとの反応から得られる付加化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料および充填剤のための湿潤剤および分散剤として、アミン系(aminic)、くし型(comblike)ポリマーおよびその塩を形成するための、エポキシドと、アミン、ポリエーテル変性アミンおよびポリアルキレンオキシド変性および/またはポリエステル変性および/またはポリエーテル−ポリエステル変性イソシアネートとの反応生成物、ならびにそれらを調製するための方法に関する。本発明はさらに、有機顔料および無機顔料のための湿潤剤および分散剤として、ならびに充填剤としてのこれらの反応生成物の、水性、溶媒ベースの、および放射線硬化性の系における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の反応生成物は、顔料濃厚物を生成するため、ならびに結合剤、塗料、プラスチックおよびプラスチック混合物中で固体を安定化するために特に適している。湿潤剤および分散剤として、上述の生成物は、このような系の粘度を低下させ、保存性および流動特性を向上させ、色の濃さを増大させ得る。
【0003】
固体を液体媒体中に安定に組み込むためには、高い機械力が必要である。結果として、これらの分散力を低くするためには薬剤を使用し、これによって必要な系の中への全体的なエネルギーの入力だけでなく、分散時間も最小化することが慣例である。公知の分散剤はほとんどが界面活性物質であり、これは少量で固体に直接供給されるかまたは液体媒体に添加される。凝集した固体の完全な解膠の後でさえ、分散プロセスの後で再凝集する場合もあり得、従って分散性が全体的または部分的に打ち消される。この方式では、望ましくない効果、例えば、液体の系における粘度の増大、陰影のドリフト、または塗装および被覆(コーティング)における光沢の喪失が生じ得る。
【0004】
顔料および充填剤のための分散剤として現在用いられる、複数の種々の物質が公知である。既存の特許文献の概説は、特許文献1に見出される。例えば、低分子量の単純な化合物、例えば、レシチン、脂肪酸およびそれらの塩と同様に、複雑な構造のアルキルフェノールエトキシレートも湿潤剤および分散剤として利用される。
【0005】
このような分散剤の1つの公知の群は、イミダゾリン成分を含むアミンとのモノエポキシドまたはポリエポキシドの反応生成物に基づく。この群の分散剤の概説は、他の文献中すなわち特許文献2および特許文献3に見出される。分散剤の別の群は、ポリエポキシド/アミン混合物およびそれらの塩から形成される。刊行物である特許文献4および特許文献5は、主に有機媒体中での顔料のための分散剤としてのこのような混合物の使用を開示しており、このポリエポキシドは、ノボラック類であって、用いられるアミン類は、低分子量の脂肪族、芳香族および/または複素環アミンである。
【0006】
さらに最近では、ポリエポキシド/アミン分散剤の分野でさらに開発がなされている。特許文献6では、1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を有するエポキシド類と脂肪族ポリオール類との反応生成物が、乳化剤として記載されている。従って、これらの化合物は、なんら塩化可能な窒素原子を担持せず、従って、充填剤および顔料に対して低い親和性しか示さない。対照的に、特許文献7は、単官能性または多官能性の、芳香族エポキシドとポリオキシアルキレンモノアミンとの付加化合物を湿潤剤および分散剤として適切だと記載している。これらの特定のアミンは、1分子あたり少なくとも4つのエーテル酸素を有する。特定のポリエーテル−置換アミンの別の適用は、特許文献8に開示される。そこでは、アミンは、高い色素画分を有する広いスペクトルの液体インクを生成するための乳化剤として機能する。
【0007】
上述の分散剤の全てに共通なのは、それらが、各々、狭い分野の使用のために開発されており、従って、顔料−結合剤混合物に対して特異的に一致するということである。しかし、極性が大きく異なる系では、それらの有用性は限定されている。
【0008】
排他的にポリエーテル−置換アミンに基づく分散剤の別の不利な点は、アミン類の有効性が限られていることに依拠する。現在では、例えば、ほんの5つ程度の異なるアミンしか利用できない。ポリエーテル−ポリエステル変性一級アミン類は対照的に、まったく有効ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0318999号明細書
【特許文献2】米国特許第5128393号明細書
【特許文献3】米国特許第4710561号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3623296号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第3623297号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第747413号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10326147号明細書
【特許文献8】国際公開第WO2005/113677号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に大規模な産業上の適用の分野では、既存の湿潤剤および分散剤の狭いスペクトルおよび有効性は、障害となる。なぜなら、合理化された処理操作の一部として、モジュラーコンポーネントを用いることが好ましいからである。これらのモジュラーコンポーネントは、モジュラー構築系という意味では、結合剤、補助剤および溶媒などの他の成分と高い相溶性を示す。
【0011】
従って、一般的な結合剤および溶媒系と高い相溶性を呈する湿潤剤および分散剤を提供することが本発明の目的である。同時に、この湿潤剤および分散剤は、容易に利用可能であるべきであり、かつ良好な長期間の安定性および保存性を有さなければならない。この湿潤剤および分散剤は、この湿潤剤および分散剤を含む被覆系の光沢およびヘイズ(haze)に悪影響を及ぼすことなく粘度を低下させることができる。
【0012】
さらに、このような湿潤剤および分散剤を調製するための方法が示される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、湿潤剤および分散剤に適した付加化合物であって
A)ポリエポキシドと、
B)一般式(I)の少なくとも1つの一級ポリオキシアルキレンアミンであって、
【0014】
【化1】

【0015】
式中、RはC1−C24アルキル、C5−C12シクロアルキル、C6−C10アリール、C6−C18アラルキルであり、R1およびR2はお互いに独立して、同一であってもまたは異なってもよく、かつH、C1−C24アルキル、アリールおよび/または−CH2−O−Cn2n+1であり、かつx部分はブロック式にまたはランダムに配置されてもよく、好ましくは10〜100、さらに好ましくは20〜70、極めて好ましくは35〜50である、一級ポリオキシアルキレンアミン、
C)一般式(II)の少なくとも1つの他の脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミンであって、
2N−R6−Z (II)
式中、R6はアルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルであり、かつZは、−OH、三級アミン、または例えば、N−(3−アミノプロピル)イミダゾールもしくはN−(2−アミノ−エチル)モルホリンなどのような、ヘテロ原子として好ましくはNおよび/もしくはOを含む、5員もしくは6員環を有する複素環式基から選択されるさらなる官能基であってもよい、脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミン、及び
D)一般式(IIIa)および/または(IIIb)の少なくとも1つの変性イソシアネートであって、
【0016】
【化2】

【0017】
式中、R3はアルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはアラルキルであり、R4およびR5はお互いに独立して、H、アルキルおよび/またはアリールであり、Xはアルキレン、シクロアルキレンおよび/またはアラルキレンであり、Yはアルキレンおよび/またはシクロアルキレンであり、かつnおよびmはお互いに独立して0〜100、好ましくは1〜100、さらに好ましくは2〜100であり、ここでn+mの合計は2以上である、変性イソシアネートとのウレタンを形成させる反応により得られる付加化合物によって、本発明に従って達成される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましくは、形成されたウレタンは、理論上1800〜100000g/モルという平均分子量を有する。特に好ましくは、理論上2000〜70000g/モル、特に好ましくは10000〜60000g/モルという平均分子量を有するウレタンである。
【0019】
ポリエーテル−、ポリエステル−および/またはポリエーテル−ポリエステル−変性イソシアネートの使用の結果として、本発明の付加化合物は、広範な有用性を有する。本発明の化合物中に付加的に存在するウレタン結合は、一般的な結合剤−溶媒系との広範な相溶性だけでなく、それが化学的に不活性という理由で、有利な長期の安定性および保存性も可能にする。湿潤剤および分散剤は、その湿潤剤および分散剤を含む被覆系の光沢およびヘイズに対して悪影響を及ぼすことなく粘度を低減させることができるということは特に驚くべきである。
【0020】
構成要素Aとして、芳香族含有のおよび/または脂肪族のポリエポキシドを用いることが可能である。ポリエポキシドは、1分子あたり2つ以上のエポキシド基を含んでもよく、少なくとも6個の炭素原子を有してもよい。異なるポリエポキシドの混合物を用いることもまた可能である。芳香族含有のポリエポキシドの基に由来する代表的な例は、ジフェニロールプロパン(ビスフェノールA)とエピクロロヒドリンおよびその高級な相同体との反応生成物であり、これらは、例えば、それぞれ、Dow Chemical Companyから、およびResolution Performance ProductsからD.E.R.またはEpikoteの商品名で販売されている。脂肪族ポリエポキシドの例は、例えば、1,6−ヘキサンジグリシジルエーテルおよび1,4−ブタンジグリシジルエーテルである。脂肪族ポリエポキシドは、更に、例えば、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリテトラヒドロフランジグリシジルエーテルなどのように、鎖に酸素を含んでもよい。これらの脂肪族ポリエポキシドは、例えば、Ems−Chemieから商品名Grilonit(グリロニット)(登録商標)として入手可能である。
【0021】
構成要素Bのポリエーテルアミンは、好ましくは、末端の一級アミノ基を有するポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールであり、これはメタノールから出発して調製され、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドに基づき、かつHuntsmanから商品名Jeffamin(ジェファーミン)(登録商標)として市販されている。しかし、例えば、ブチレンオキシド、1,2−エポキシヘキサン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルまたはスチレンオキシドなどのような、そのポリエーテル部分が異なるエポキシドに基づくポリエーテルアミンもまた使用される。この場合、異なるエポキシドを用いる場合のエポキシド単位の分布は、ブロック式に生じても、またはランダムに生じてもよい。ポリエーテルを調製するためのこのようなエポキシドの使用を通じて、必要に応じて、異なる結合剤または溶媒について相溶性を所望のものに合わせることが可能である。
【0022】
構成要素Cの脂肪族および/または芳香脂肪族アミンは好ましくは、3〜28個の炭素原子を有する。その例は、アミノヘキサン、ステアリルアミン、オレイルアミン、およびまたベンジルアミンまたはシクロヘキシルアミンである。さらなる官能基として特に好ましくは、ヒドロキシル基または三級アミノ基である。官能基を有するアミンの例は、例えば、エタノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールまたは、ちょうど1つを超えるさらなる官能基を有するアミン、例えば、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールまたは2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオールなどである。特に好ましくは、例えば、エタノール−アミン、ブタノールアミンおよび/またはジメチルアミノプロピルアミンである。複素環式基を有するアミンの例は、N−(3−アミノプロピル)イミダゾールまたはN−(2−アミノエチル)モルホリンである。
【0023】
本発明によれば、構成要素Aおよび(B+C)は、化学量論的に過剰の構成要素Aの中でお互いと反応して、エポキシド末端ポリマーが形成され得る。同等に、本発明によって、構成要素Aおよび(B+C)を、化学量論的に過剰の構成要素(B+C)の中でお互いと反応させて、アミン−末端ポリマーを形成することが可能である。構成要素Aを構成要素BおよびCの合計に対して、33:32〜32:33のモル比で用いることが好ましい。好ましくは、21:20〜20:21、さらに好ましくは、11:10〜10:11のモル比である。
【0024】
構成要素A、BおよびCは、好ましくは、A、BおよびCが十分反応するモル比で用いられる。
構成要素Cに対する構成要素Bのモル比は好ましくは、2:30〜30:2である。さらに好ましくは、3:1〜1:3、特に好ましくは3:1〜3:2のモル比である。
本発明の別の好ましい実施形態では、構成要素Dは、構成要素Aおよび(B+C)の付加によって生成されるOH基の5〜100%、好ましくは20〜100%、さらに好ましくは40〜100%が反応してウレタンを形成するような量で用いられる。
本発明の1つの好ましい実施形態では、構成要素Aとしては一般式(IV)のジエポキシド
【0025】
【化3】

【0026】
であって、ここでSは−CH2−O−または−CH2−であり、Tはアルキレン、シクロアルキレン、アリーレンまたはアラルキレンであり、かつuは1〜8であるジエポキシドが利用される。
【0027】
構成要素Aとしての使用において、特に好ましくは、1分子あたり平均2個のエポキシ官能基を有する脂肪族ジエポキシド化合物であり、特に好ましくは、ジオールのジグリシジルエーテルを有するものである。
【0028】
構成要素A、B、CおよびDから得られる付加化合物は、広い相溶性を有する高価値の湿潤剤および分散剤の構成要素となる。それらは、2段階の反応によって得られる形態で用いられてもよい。しかし、各々の個々の場合に、特定の要件に対してそれらの特性を適合させるために、特定の場合には、それらをさらに変性することが所望される。下に記載されるのは、付加化合物中に存在するヒドロキシル基および/またはアミノ基との反応に基づく適切な変性である。変性の過程において、これらの基を完全に反応させても、または部分的に反応させてもよい。
【0029】
以下の変性反応を必要に応じて組み合わせて、複数の変性された付加化合物を得てもよい。2つ以上の変性反応が連続して行われる場合、分子中で1つ以上の連続反応について十分反応性を有する基を確実に形成させるようにすべきである。述べられている変性は、本発明の有利な実施形態であり、かつ以下によって実現され得る:
1.末端アミノ基と、イソシアネート、ラクトン、カーボ−ネートまたは(メタクリレート)アクリレートとの反応、
2.末端エポキシド基と二級アミンまたは飽和もしくは不飽和カルボン酸との反応、
3.残留のヒドロキシル官能基とヒドロキシカルボン酸および/または環状ラクトンとの反応、
4.残留のヒドロキシル官能基と、放射線硬化のための二重結合を保有する不飽和環状無水物との反応、
5.残留のヒドロキシル官能基と、放射線硬化のための二重結合を保有する(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルとの反応、
6.残留のヒドロキシル官能基と、Cで列挙したもの以外のイソシアネートとの反応、
7.残留のヒドロキシル官能基とリン酸またはポリリン酸および/または酸性のリン酸エステルおよび/またはカルボン酸との反応、ならびに
8.四級アンモニウム塩または窒素酸化物を形成するためのアミノ基のアルキル化または酸化、
【0030】
「(メタ)アクリル−」という名称は、アクリル化合物およびメタクリル化合物の両方を指す。同様に、「(メタ)アクリレート−」という名称は、アクリレート化合物およびメタクリレート化合物の両方を指す。
(メタ)アクリル化合物または(メタ)アクリレート化合物を用いることができるならば、アクリレート化合物が好ましい。
【0031】
本発明の付加化合物に残される遊離のエポキシド基は、2.)で言及されるようなカルボン酸でエステル化される。放射線硬化のための二重結合を保持することができる(メタ)アクリル酸でのエステル化が好ましい。本発明の付加化合物中に残される遊離のヒドロキシル基は、3.)、4.)、および5.)に言及されるようにエステル化される。エステル化は、当業者に公知である方法で行なう。遊離のアミノ基が本発明の付加化合物に付加的に存在する場合、満足な反応速度を得るために、エステル化の前にこれらのアミノ基を塩化することが賢明である。このエステル交換の経過において、末端のOH基は保持され、このことは、得られた生成物が、多数の被覆系で特に広い相溶性が著しいということを意味する。
【0032】
必要に応じて残留のヒドロキシル基との本発明の付加反応で形成される化合物は、6.)のように、イソシアネートと付加的に反応され得る。ウレタンの形成は、当業者に公知の方法で行われる。ウレタン基へのヒドロキシル基の変換は好ましくは、ヒドロキシル基が被覆系における乱れ(disruption)である場合に達成される。さらに、ウレタンのさらなる形成は、湿潤剤および分散剤の脱泡効果に有益な結果を有し得る。発泡しようとする傾向を抑制することによって、特に水性処方物中での分散操作の場合、湿潤剤および分散剤の重要な追加の特性が構成される。
【0033】
任意の残留のアミノ基の変性は、8.)に記載されるように、当業者に公知である方法で行われる。例えば、アミノの窒素原子の四級化は、ハロカルボン酸エステルまたはエポキシドを用いて、アルキルまたはアラルキルハライドを用いて達成され得る。このような四級化は、好ましくは、例えば、アミノ基が、顔料ペーストが導入される結合剤系の乱れ(disruption)である場合、好ましい。
【0034】
β−ヒドロキシアミノ基を形成するための構成要素Aのエポキシド官能基と構成要素BおよびCのアミノ基との反応は、溶媒系で、ただし好ましくはバルクで、当業者に公知の方法に従って行われ得る。ここで選択すべき反応温度は、反応物質の反応性に依存する。多くのエポキシドが室温でさえアミンと反応する。対照的に、反応性の低いエポキシドについては、最大160℃までの反応温度が必要な場合がある。エポキシドとアミンとの反応に特に適切な反応温度は50〜120℃である。当業者に公知の触媒を必要に応じて、エポキシドとアミンとの反応を加速するために用いてもよい。
【0035】
構成要素Dは好ましくは、独国特許出願公開第19919482号(A1)に記載されるような方法によって調製される。この目的のために、モノヒドロキシ化合物を、過剰のジイソシアネート、好ましくは、トリレンジイソシアネートと反応させ、このジイソシアネートの未反応部分を反応混合物から除去する。
【0036】
本発明の目的は、湿潤剤および分散剤に適した付加化合物を調製するための方法により、同等に達成され、これは、
A)ポリエポキシドと、
B)一般式(I)の少なくとも1つの一級ポリオキシアルキレンアミンであって
【0037】
【化4】

【0038】
式中、RはC1−C24アルキル、C5−C12シクロアルキル、C6−C10アリール、C6−C18アラルキルであり、R1およびR2はお互いに独立して、同一であってもまたは異なってもよく、H、C1−C24アルキル、アリールおよび/または−CH2−O−Cn2n+1であり、かつx部分はブロック式にまたはランダムに配置されてもよく、好ましくは10〜100、さらに好ましくは20〜70、極めて好ましくは35〜50である、一級ポリオキシアルキレンアミン、
C)一般式(II)の少なくとも1つの他の脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミンであって、
2N−R6−Z (II)
式中、R6はアルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルであり、かつZは、−OH、三級アミン、または例えば、N−(3−アミノプロピル)イミダゾールもしくはN−(2−アミノ−エチル)モルホリンなどのような、ヘテロ原子として好ましくはNおよび/もしくはOを含む5員もしくは6員環を有する複素環式基から選択されるさらなる官能基であってもよい、脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミン、及び
D)一般式(IIIa)および/または(IIIb)の少なくとも1つの変性イソシアネートであって、
【0039】
【化5】

【0040】
式中、R3はアルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはアラルキルであり、R4およびR5はお互いに独立して、H、アルキルおよび/またはアリールであり、Xはアルキレン、シクロアルキレンおよび/またはアラルキレンであり、Yはアルキレンおよび/またはシクロアルキレンであり、かつnおよびmはお互いに独立して0〜100、好ましくは1〜100、さらに好ましくは2〜100であり、ここでn+mの合計は2以上である、変性イソシアネートとのウレタンを形成するための反応による。
【0041】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態は、構成要素Aとして一般式(IV)のジエポキシドであって、
【0042】
【化6】

【0043】
式中、Sは−CH2−O−または−CH2−であり、Tはアルキル、シクロアルキレン、アリールまたはアラルキルであり、かつuは1〜8である、ジエポキシドを用いる。脂肪族ジエポキシドが特に好ましい。なぜならそれらは、生成物の一部に対して低い固有の粘度を保証するからである。
【0044】
構成要素のDの使用に関して、使用されるこの構成要素の量は好ましくは、付加反応において、構成要素Aおよび(B+C)の付加によって生成されるOH基の5〜100%、好ましくは20〜100%、より好ましくは40〜100%がウレタンの形成で反応されるように選択される。
この方法では、付加化合物と結合剤との特に良好な相溶性が、特に水性の系で達成される。
【0045】
本発明の付加化合物は、有機および/または無機の顔料または充填剤のための湿潤剤および/または分散剤として用いられる。この分散剤は、単独で用いられてもよく、または結合剤と一緒に用いられてもよい。本発明の湿潤剤および分散剤は、水性および/または溶媒含有の被覆材料中で顔料および充填剤の安定化および分散化のためにそれらを適用することが特に望ましい。
【0046】
別の好ましい実施形態では、本発明の付加化合物を、放射線硬化の系において有機および/または無機の顔料または充填剤のための湿潤剤および/または分散剤として用いる。
水性のおよび/または溶媒含有のおよび/または放射線硬化の系における湿潤剤および分散剤としてのそれらの使用に加えて、本発明の付加化合物を粉体形状または繊維形状で用いて固体を被覆することが同様に可能である。有機固体および無機固体に対するこの種の被覆は、公知の方式で行われる;例えば、このような方法は、欧州特許出願公開第0270126号(A)に記載される。特に、顔料の場合には、顔料表面の被覆は、例えば、顔料懸濁液に対する本発明の付加化合物の添加による、顔料の合成の間または後に生じ得る。この方法で前処理された顔料は、未処理の顔料に比較して、かなり容易な結合剤系への組み込み、粘度および凝結特性の改善、ならびに良好な光沢を呈する。さらに、本発明の付加化合物は、例えば、爪の塗膜中に効果的な顔料を分散するために適している。
【0047】
本発明の分散剤は、好ましくは、分散されるべき固体に対して、0.5〜60重量%の量で用いられる。しかし、特定の固体では、実質的により大量の分散剤もまた、分散操作のために必要である場合がある。
用いられる分散剤の量は、分散されるべき固体の表面の大きさおよび性質に対して実質的に依存する。例えば、カーボンブラックは二酸化チタンよりも実質的に大量の分散剤を必要とする。欧州特許出願公開第0270126号(A)は、顔料および充填剤の例を示している。さらなる例は、特に有機顔料の領域における、例えば、ジケトピロロピロールの分類における新たな進展に基づく。純粋な鉄および混合酸化物に基づく磁性顔料が同様に、本発明の分散剤の補助によって分散中に導入され得る。さらに、同様に鉱物系の充填剤、例えば、炭酸カルシウムおよび酸化カルシウム、または難燃剤、例えば、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムが分散されてもよい。さらに、同様に艶消し剤、例えば、シリカが分散されて安定化される。
【0048】
本発明は、下記の実施例によってさらに例示されるが、これらの実施例に制限されることはない。他に示さない限り、部についての言及は、重量部であり、パーセンテージについての言及は重量パーセンテージである。
【実施例】
【0049】
<実施例1(本発明)>
KPGスターラー、窒素のラインおよび強力なコンデンサを備えた250mlの四つ首フラスコに、5.93g(0.003モル)のJeffamin M2070および2.22g(0.021モル)のベンジルアミンを充填し、この最初の充填物を攪拌しながら100℃まで加熱した。3時間の経過後、6.22g(0.022モル)のGrilonit RV1812を滴下した。全部で5時間の反応時間後、63.00g(0.03モル)のTDI−M2000イソシアネート付加物を滴下した。100℃でさらに3時間反応後、反応生成物を115.13gの十分に鉱質除去した水で希釈した。生成された生成物は、黄色っぽい透明の溶液で40%が固体である。
さらなる実施例を、下に示す表に示される反応物質を用いて、上記の手順に従って行った。
【0050】
【表1】

【0051】
TDI:トリレンジイソシアネート(異性体混合物)
M2000:メトキシポリエチレングリコール(分子量2000)
MP41−2000:メトキシポリエチレン−ポリプロピレングリコール(分子量2000、EO/PO=4/1)
Grilonit RV1806:1,4−ブタンジグリシジルエーテル
Grilonit RV1812:1,6−ヘキサンジグリシジルエーテル
Grilonit F704:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(PO、約7個)
B11/120:ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(分子量:約2000;EO/PO:1:1)
Jeffamin M2070:メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアミン(分子量:約2000;EO/PO:32:10)
Jeffamin M2005:メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアミン(分子量:約2000;EO/PO:6:29)。
【0052】
〔性能評価〕
本発明の分散剤の活性を試験するために、結合剤なしの顔料ペーストを調製し、これを結合剤(Johncryl 8052)に組み込んだ。ここで粘度を測定した。完成した顔料被覆物質の塗布および硬化の後、次にドローダウン(drawdown)を検査して、光沢およびヘイズの測定を行った。
処方物の成分は、VMA−Getzmann GmbHのDispermat CVを用いて40℃、10000rpmで、40〜60分間分散させる。
【0053】
Byk 017:Byk−Chemie GmbHの消泡剤
Johncryl 8052:Johnson Polymersのアクリレート分散液
Irgalithrot FBN:CibaのRed Naphtol AS 顔料
Printex 35:Degussaの黒色顔料(ファーネスブラック)
Sunfastブルー249−1282:Sun−Chemicalsのフタロシアニン顔料
【0054】
【表2】

【0055】
次いで、顔料ペーストを30:70の比でJohncryl 8052結合剤に添加する。
〔評価〕
比較の実施例として(発明ではない)、Byk−ChemieのWO2008/092687の実施例2を使用した。
【0056】
【表3】

【0057】
分散:60分、10000rpm、40℃、1:1.5ビーズ1mm
【0058】
【表4】

【0059】
分散:40分、10000rpm、40℃、1:1.5ビーズ1mm
【0060】
【表5】

【0061】
分散:40分、10000rpm、40℃、1:1.5ビーズ1mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤剤および分散剤に適した付加化合物であって、
A)ポリエポキシドと
B)一般式(I):
【化1】

[式中、RはC1−C24アルキル、C5−C12シクロアルキル、C6−C10アリール、C6−C18アラルキルであり、R1およびR2はお互いに独立して、同一であってもまたは異なってもよく、かつH、C1−C24アルキル、アリールおよび/または−CH2−O−Cn2n+1であり、かつx部分はブロック式にまたはランダムに配置されてもよい]の少なくとも1つの一級ポリオキシアルキレンアミン、
C)一般式(II):
2N−R6−Z (II)
[式中、R6はアルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルであり、かつZは、−OH、三級アミンまたは5員もしくは6員環を有する複素環式基から選択されるさらなる官能基であってもよい]の少なくとも1つの他の脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミン、及び
D)一般式(IIIa)および/または(IIIb):
【化2】

[式中、R3はアルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはアラルキルであり、R4およびR5はお互いに独立して、H、アルキルおよび/またはアリールであり、Xはアルキレン、シクロアルキレンおよび/またはアラルキレンであり、Yはアルキレンおよび/またはシクロアルキレンであり、かつnおよびmはお互いに独立して0〜100であり、ここでn+mの合計は2以上である]の少なくとも1つの変性イソシアネートとのウレタンを形成させる反応により得られる付加化合物。
【請求項2】
構成要素Aが一般式(IV):
【化3】

[式中、Sは−CH2−O−または−CH2−であり、Tはアルキレン、シクロアルキレン、アリーレンまたはアラルキレンであり、かつuは1〜8である]
のジエポキシドであることを特徴とする請求項1に記載の付加化合物。
【請求項3】
構成要素Bが、メタノールから出発して調製され、かつエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドに基づく、末端一級アミノ基を有するポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールであることを特徴とする請求項1または2に記載の付加化合物。
【請求項4】
さらなる工程において、存在する任意の末端アミノ基をイソシアネート、ラクトン、カーボ−ネートまたは(メタ)アクリレートと反応させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項5】
さらなる工程において、存在する任意の末端エポキシド基を二級アミンまたは飽和もしくは不飽和のカルボン酸と反応させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項6】
さらなる工程において、残留する任意のヒドロキシル官能基をヒドロキシカルボン酸および/または環状ラクトンと反応させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項7】
さらなる工程において、残留する任意のヒドロキシル官能基を放射線硬化のために二重結合を保有している不飽和環状無水物と反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項8】
さらなる工程において、残留する任意のヒドロキシル官能基を放射線硬化のために二重結合を保有している(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルと反応させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項9】
さらなる工程において、残留する任意のヒドロキシル官能基をDのもとで示されるイソシアネート以外のイソシアネートと反応させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項10】
さらなる工程において、残留する任意のヒドロキシル官能基をリン酸またはポリリン酸および/または酸性のリン酸エステルおよび/またはカルボン酸と反応させることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項11】
さらなる工程において、四級アンモニウム塩または窒素酸化物を形成するための、残留する任意のアミノ基のアルキル化または酸化が存在することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の付加化合物。
【請求項12】
湿潤剤および分散剤に適した付加化合物を調製するための方法であって、
A)ポリエポキシドと
B)一般式(I):
【化4】

[式中、RはC1−C24アルキル、C5−C12シクロアルキル、C6−C10アリール、C6−C18アラルキルであり、R1およびR2はお互いに独立して、同一であってもまたは異なってもよく、かつH、C1−C24アルキル、アリールおよび/または−CH2−O−Cn2n+1であり、かつx部分はブロック式にまたはランダムに配置されてもよい]の少なくとも1つの一級ポリオキシアルキレンアミン、
C)一般式(II):
2N−R6−Z (II)
[式中、R6はアルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルであり、かつZは、−OH、三級アミンまたは5員もしくは6員環を有する複素環式基から選択されるさらなる官能基であってもよい]の少なくとも1つの他の脂肪族および/または芳香脂肪族の一級アミン、及び
D)一般式(IIIa)および/または(IIIb)
【化5】

[式中、R3はアルキル、シクロアルキル、アリールおよび/またはアラルキルであり、R4およびR5はお互いに独立して、H、アルキルおよび/またはアリールであり、Xはアルキレン、シクロアルキレンおよび/またはアラルキレンであり、Yはアルキレンおよび/またはシクロアルキレンであり、かつnおよびmはお互いに独立して0〜100であり、ここでn+mの合計は2以上である]の少なくとも1つの変性イソシアネートとのウレタンを形成させる反応による付加化合物を調製するための方法。
【請求項13】
構成要素Aが、一般式(IV):
【化6】

[式中、Sは−CH2−O−または−CH2−であり、Tはアルキレン、シクロアルキレン、アリーレンまたはアラルキレンであり、かつuは1〜8である]のジエポキシドであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
有機および/または無機の顔料または充填剤のための湿潤剤および/または分散剤としての請求項1〜11のいずれかに記載の付加化合物の使用。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の付加化合物で被覆されている粉体形状または繊維形状の固体。

【公表番号】特表2013−513682(P2013−513682A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542539(P2012−542539)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069182
【国際公開番号】WO2011/070074
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(598067245)ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング (30)
【Fターム(参考)】