説明

溝入れ加工方法

【課題】金属部材を切削して溝を形成する際に、バリの発生を防止する溝入れ加工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る溝入れ加工方法は、被切削金属部材20に、複数枚の円盤型カッター14を積層したマルチカッター10を回転させながら移動させて複数の溝を形成する溝入れ加工方法であって、被切削金属部材20の第一稜線21aとマルチカッター10の回転軸Cとを結ぶ直線と、円盤型カッター14の進行方向とが平行となるように、被切削金属部材20の所定の深さまで切り込む切り込み工程と、円盤型カッター14を第一稜線21aから第二稜線21bに向けて移動させる第一切削工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材を円盤型カッターで切削して溝を形成する溝入れ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等は、動作時の発熱量が大きいため、例えばヒートシンクを設置することによって放熱し、温度の上昇を抑制している。当該ヒートシンクは、例えば、金属部材からなるベース部材と、当該ベース部材の表面に、略等間隔で並設された板状のフィンとを有する。隣り合うフィンの間には、溝が形成されているため、当該溝に空気などの冷媒が通ることにより、ベース部材に配置された半導体デバイス等を好適に冷却することができる。近年、半導体デバイス等の小型化、軽量化等に伴って、ヒートシンク(フィン)も、高機能化、小型化及び軽量化等が求められている。
【0003】
従来のヒートシンクは、例えば、特許文献1に示すように、ベース部材の表面に切り欠かれた溝条に、板状のフィンを嵌め合わせて製造されていた。また、例えば、特許文献2に示すように、直方体の被切削金属部材に切削加工により溝を施して製造されていた。また、従来のヒートシンクは、押し出し成形やダイキャストによっても製造されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−315731号公報(図1及び図2参照)
【特許文献2】特開2005−228948号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製造方法であると、ベース部材に溝条を形成する工程及びベース部材にフィンを嵌め合わせる工程が煩雑であるという問題があった。また、押し出し成形やダイキャストによってヒートシンクを製造すると、比較的容易に製造することができるものの、フィンの長さを小さくしたり、フィンの厚みを薄くしたりして小型化を図った場合に製品の質が低下するという問題があった。
【0006】
また、特許文献2のように、切削加工によれば比較的容易に溝を形成することができるとともに、フィンの薄肉化、小型化にも対応することができる。しかし、切削加工によると、フィンが薄い板状の部材であるため、カッターを移動させる際にフィンやカッターが振動し、溝にバリが発生する慮りがあった。
【0007】
即ち、例えば円盤型カッターで金属部材を切削する際に、円盤型カッターが最も振動するのは、円盤型カッターを金属部材に押圧して切り込む時である。この際、円盤型カッターの回転軸と被削材ブロックの一の稜線とを結ぶ線と、円盤型カッターの進行方向線との開き角度が大きいほど、円盤型カッターを押圧する力は分散するため、円盤型カッターの先端側が振動してしまう。円盤型カッターが振動すると、安定した切削の妨げになるため、溝にバリが発生する原因になっていた。溝にバリが発生すると冷媒が通過する際の妨げになるため、製品の質を低下させるものであった。
【0008】
このような観点から、本発明は、金属部材を切削して溝を形成する際に、バリの発生を防止する溝入れ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、直方体を呈する被削材ブロックに、複数枚の円盤型カッターを積層したマルチカッターを回転させながら移動させて複数の溝を形成する溝入れ加工方法であって、前記被削材ブロックの一方の稜線と前記マルチカッターの回転軸とを結ぶ直線と、前記円盤型カッターの進行方向とが平行となるように、前記被削材ブロックの所定の深さまで切り込む切り込み工程と、前記円盤型カッターを一方の稜線から他方の稜線に向けて移動させる第一切削工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
かかる溝入れ加工方法は、円盤型カッターを被削材ブロックに押圧する際に、円盤型カッターの回転軸と被削材ブロックの稜線とを結ぶ線と、円盤型カッターの進行方向線とが平行であるため、マルチカッターの押圧力が被削材ブロックに集中的に伝達し、円盤型カッターの振動を抑制することができる。したがって、金属部材を切削して溝を形成する際にバリの発生を防止するとともに、フィンの欠損も防止することができる。
【0011】
また、本発明は、直方体を呈する被削材ブロックと、この被削材ブロックの底面に配置されたベース部材と、を有する被切削金属部材に、複数枚の円盤型カッターを積層したマルチカッターを回転させながら移動させて複数の溝を形成する溝入れ加工方法であって、前記被削材ブロックの一方の稜線と前記マルチカッターの回転軸とを結ぶ直線と、前記円盤型カッターの進行方向とが平行となるように、前記被切削金属部材の所定の深さまで切り込む切り込み工程と、前記円盤型カッターを一方の稜線から他方の稜線に向けて移動させる第一切削工程と、を含み、前記所定の深さは、前記被削材ブロックの高さよりも大きいことを特徴とする。
【0012】
かかる溝入れ加工方法は、ベース部材を備えた被切削金属部材に対して溝入れ加工する場合において、円盤型カッターを被削材ブロックに押圧する際に、円盤型カッターの回転軸と被削材ブロックの稜線とを結ぶ線と、円盤型カッターの進行方向線とが平行であるため、マルチカッターの押圧力が被削材ブロックに集中的に伝達し、円盤型カッターの振動を抑制することができる。また、円盤型カッターの先端側がベース部材に食い込むため、円盤型カッターの先端側の振動をさらに抑制することができる。これにより、フィンの欠損やバリの発生を防止することができる。
【0013】
また、前記第一切削工程の後、前記円盤型カッターを他方の稜線から一方の稜線に向けて移動させる第二切削工程を含むことが好ましい。
【0014】
かかる溝入れ加工方法によれば、第一切削工程で形成された溝に、再度円盤型カッターを移動させることにより、溝内に残存する切粉を容易に取り除くことができる。
【0015】
また、前記被削材ブロックの一方の稜線に沿って、円弧状の凹部を予め形成することが好ましい。
【0016】
かかる溝入れ加工方法によれば、円盤型カッターを被削材ブロックに押圧する際に作用する反力を軽減することができるため、円盤型カッターの振動を防止することができる。これにより、フィンの欠損及びバリの発生を防止することができる。
【0017】
また、隣り合う前記円盤型カッターの間に、前記円盤型カッターよりも半径が小さいスペーサを有することが好ましい。
【0018】
かかる溝入れ加工方法によれば、積層された円盤型カッターの間に切粉が入り込むのを防止することができる。これにより、切削の際に発生する切粉を効率よく外部に排出することができるため、より質の高い加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る溝入れ加工方法によれば、金属部材を切削して溝を形成する際に、バリの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第一実施形態によって形成されたヒートシンクを示した斜視図である。
【図2】本発明に係る第一本実施形態で使用するマルチカッターを示した図であって、(a)は、側面図、(b)は、カッター部における拡大断面図、(c)は、円盤型カッターの正面図、(d)は、(C)のE部分の拡大図である。
【図3】本発明に係る第一実施形態の工程図であって、(a)は、配置工程を示した斜視図、(b)は、切り込み工程、(c)は、第一切削工程、(d)は、抜き取り工程をそれぞれ示した側面図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態の作用を示した模式図であって、(a)は、従来の切り込み工程、(b)は、第一実施形態に係る切り込み工程を示す。
【図5】本発明に係る第一実施形態の抜き取り工程を説明するための側面図である。
【図6】本発明に係る第三実施形態を示した側面図である。
【図7】本発明に係る第四実施形態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
本発明に係る溝入れ加工方法は、円盤型のカッターを複数枚積層したマルチカッターを用いて金属部材を切削し、溝を形成するものである。当該溝入れ加工方法は、様々な製品を製造する際に採用することができるが、本実施形態においては、被切削金属部材を切削してヒートシンクを製造する場合を例にして説明する。
そこで、本実施形態においては、溝入れ加工方法によって製造されたヒートシンクの説明及びマルチカッターの説明を行った後に、溝入れ加工方法の具体的な工程について説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る第一実施形態によって形成されたヒートシンクを示した斜視図である。図2は、本発明に係る第一本実施形態で使用するマルチカッターを示した図であって、(a)は、側面図、(b)は、カッター部における拡大断面図、(c)は、円盤型カッターの正面図、(d)は、円盤型カッターの刃部の拡大図である。
図1に示すように、本実施形態に係る溝入れ加工方法によって製造されたヒートシンク1は、平板からなるベース部材2と、ベース部材2の表面に略等間隔で並設されたフィン3,3・・・とを有する。また、隣り合うフィン3の間には、溝4が形成されている。
【0023】
ベース部材2は、直方体からなる金属部材であって、裏面側に例えば、半導体部材が配置され、当該半導体部材によって発生した熱をフィン3側に伝達する部材である。
フィン3は、平板状を呈する金属部材であって、ベース部材2の表面に略等間隔で複数枚配置されている。隣り合うフィン3の間には、フィン3の長手方向に亘って連続する溝4が形成されている。複数のフィン3によって形成される溝4に冷媒(空気)が通ることにより、ベース部材2及びフィン3に伝達された熱を外部に放出することができる。即ち、フィン3の表面積が大きいほど、冷媒との接触面積が増えるため、冷却効果を高めることができる。フィン3の高さや厚さ寸法、溝4の幅等は、ヒートシンク1の使用用途によって適宜設定される。
【0024】
ベース部材2及びフィン3は、本実施形態においては一体物であって、例えば、アルミニウム合金から形成されている。なお、ベース部材2及びフィン3の材料は、これに限定されるものではなく、アルミニウム、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等であってもよい。
【0025】
なお、本実施形態に係るベース部材2の表面において、溝4の両端側には凹溝部5,5・・・が形成されている。凹溝部5は、後記する切削加工を行う際に、円盤型カッターがベース部材2に入り込むことによって形成される凹溝である。
【0026】
マルチカッター10は、図2の(a)及び(b)に示すように、軸部11と、複数枚の円盤型カッター14,14・・・を備えたカッター部16とを有する切削具である。軸部11は、鋼材からなる軸部材である。軸部11の外周には、カッター部16が設置されており、軸部11の一端側には、図示しない駆動源が接続されている。マルチカッター10は、駆動源による軸部11の回転に伴って、カッター部16が円周方向に回転し、被切削金属部材を切削するものである。
【0027】
カッター部16は、図2の(b)で示すように、等間隔で配置された複数枚の円盤型カッター14,14・・・と、隣り合う円盤型カッター14,14の間に配置されたスペーサ15,15・・・とを有する。
円盤型カッター14は、図2の(c)に示すように、円環状の本体部14aと、本体部14aの外周に周設された刃部14bとからなる。本体部14aの中央に形成された中空部14cに軸部11が嵌合されて軸部11と一体化する。刃部14bは、例えば鋼からなる刃であって、図2の(d)に示すように、逃げ角、すくい角がそれぞれ角度α、角度βで形成されている。ここで、円盤型カッター14の半径はRとする。また、図2の(b)に示すように、円盤型カッター14の厚さはKとする。即ち、円盤型カッター14の厚さKによって、ヒートシンク1の溝4の幅が決定する。
【0028】
なお、刃部14bの形状や逃げ角、すくい角等は、被切削金属部材20の素材や溝4の幅に合わせて適宜設定すればよい。逃げ角の角度α、すくい角の角度βを大きくすると、切粉を容易に外部に排出することができる。
【0029】
スペーサ15は、図2の(b)に示すように、隣り合う円盤型カッター14同士の間に介設されるものであって、円環状を呈し軸部11の小径部11bに嵌合されている。スペーサ15は、円盤型カッター14を所望の間隔で配置させるものであるとともに、被切削金属部材を切削するときに発生する切粉を好適に外部に排出させるためのものである。即ち、マルチカッター10は、円盤型カッター14を積層させてなる装置であるため、隣り合う円盤型カッター14,14の間に切粉が残存する慮りがある。特に、軸心側に切粉が詰まると、当該切粉の除去作業が困難となるだけでなく、マルチカッター10の寿命も短くするものである。また、このように、円盤型カッター14,14の間に切粉が残存すると、被切削金属部材にマルチカッター10を押圧して切り込む際の妨げになる可能性がある。
しかし、本実施形態のように、スペーサ15が介設されることにより、切粉が隣り合う円盤型カッター14,14の間隙に詰まることを防止することができる。
【0030】
ここで、スペーサ15の厚さをJとする。スペーサ15の厚さJによって、ヒートシンク1のフィン3の厚さが決定する。また、スペーサ15の半径をSとし、円盤型カッター14の半径Rから、スペーサ15の半径Sを引いた部分をTとする。Tは、円盤型カッター14によって被切削金属部材を切り込むことができる範囲を示し、以下、最大切り込み長Tとする。本実施形態においては、後記する切り込み工程において、円盤型カッター14をベース部材2に食い込ませるため、最大切り込み長Tが、被削材ブロック21の高さUよりも大きくなるように形成されている。
【0031】
円盤型カッター14は、最大切り込み長Tの長さが大きいほど、円盤型カッター14の振動も大きくなる。したがって、スペーサ15の半径Sを大きく設定して円盤型カッター14の振動を防止するとともに、切粉の詰まりを防止することが好ましい。また、スペーサ15の幅Jが大きいほど切粉の詰まりを防止することができ、切粉を遠心力によって円盤型カッター14の外部に排出することができる。
【0032】
マルチカッター10は、本実施形態においては前記したように形成したが、あくまで例示であってこれに限定されるものではない。円盤型カッター14の枚数や、厚さK、スペーサ15の厚さJ等は、ヒートシンク1の用途に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
次に、本実施形態に係る溝入れ加工方法について説明する。図3は、本実施形態の工程図であって、(a)は、配置工程を示した斜視図、(b)は、切り込み工程、(c)は、第一切削工程、(d)は、抜き取り工程をそれぞれ示した側面図である。
【0034】
本実施形態に係る溝加工方法は、図3に示すように、マルチカッター10を所定の位置に配置するマルチカッター配置工程と、マルチカッター10を被切削金属部材20に押圧する切り込み工程と、一方の稜線21aから他方の稜線21bに向けてマルチカッター10を移動させる第一切削工程と、マルチカッター10を被切削金属部材20から抜き取る抜き取り工程と、を含むものである。
【0035】
ここで、マルチカッター10によって切削される金属部材を被切削金属部材20とする。被切削金属部材20は、板状を呈するベース部材2と、ベース部材2よりも表面の面積が小さく、直方体を呈する被削材ブロック21とからなる。被削材ブロック21は、図2の(b)に示すように、高さUで形成されている。被削材ブロック21の表面の四辺のうち、向かい合う一対の辺を第一稜線21a、第二稜線21bとする。本実施形態においては、被切削金属部材20は、一体的に成形されたものであるが、複数の部材を接合して形成されたものでもよい。
【0036】
<マルチカッター配置工程>
マルチカッター配置工程は、図3の(a)に示すように、マルチカッター10の軸部11と第一稜線21aとが略平行となり、かつ、マルチカッター10の回転軸Cが被切削金属部材20の第一稜線21aを通る鉛直線M上に位置するようにマルチカッター10を配置する工程である。なお、被切削金属部材20は、図示しない切削装置の架台に予め固定させておく。
【0037】
<切り込み工程>
切り込み工程は、図3の(a)及び(b)に示すように、円盤型カッター14を回転駆動させつつ、マルチカッター10の回転軸Cが鉛直線Mに沿うようにして下方に移動させる工程である。本実施形態における切り込み深さWは、円盤型カッター14の先端がベース部材2の内部に入り込むように設定する。即ち、切り込み深さWは、被削材ブロック21の高さUよりも大きくなるように設定する。なお、切り込み深さWは、溝4を浅く成形したい場合には、W<Uとなるように設定する。
【0038】
<第一切削工程>
第一切削工程は、図3の(b)及び(c)に示すように、マルチカッター10を、第一稜線21aから略水平方向(切り込み深さWが一定)に、第二稜線21bまで移動させる工程である。マルチカッター10は、マルチカッター10の回転軸Cが第二稜線21bを通る鉛直線Mに達するまで移動させる。なお、本実施形態においては、マルチカッター10は略水平方向に移動させたが、必ずしも水平でなくてもよい。
【0039】
<抜き取り工程>
抜き取り工程は、図3の(c)及び(d)に示すように、マルチカッター10を被切削金属部材20から抜き取る工程である。本実施形態においては、第二稜線21bを通る鉛直線Mに沿うようにしてマルチカッター10を上方に移動させて、被切削金属部材20からマルチカッター10を抜き取る。以上の工程により、図1に示すヒートシンク1が形成される。
【0040】
ここで、本実施形態に係る溝入れ加工方法を行った際の作用について説明する。
図4は、前記した切り込み工程の作用を示す模式図であって、(a)は、従来の切り込み工程、(b)は、本実施形態に係る切り込み工程を示す。例えば、図4の(a)に示すように、従来の切り込み工程としては、被削材ブロック21の横方向から一定の切り込み深さを保った状態で、第一稜線21aから第二稜線21bまで水平移動させる工程が行われていた。
【0041】
かかる従来の切り込み工程によると、回転軸Cからマルチカッター10の進行方向線K1と、回転軸Cと被削材ブロック21の第一稜線21aとを結ぶ仮想線L1とが、角度γで開いている。したがって、マルチカッター10を被削材ブロック21に押圧すると当該押圧力が分散するため、角度γが大きいほど円盤型カッター14が面外方向に大きく振動する。このように円盤型カッター14が振動すると、フィン3が欠けたり、溝4内にバリが発生したりするという問題があった。
【0042】
これに対し、本実施形態に係る切り込み工程によれば、図4の(b)に示すように、回転軸Cからマルチカッター10の進行方向線K2と、回転軸Cと被削材ブロック21の第一稜線21aとを結ぶ仮想線L2とが重なり合っている。したがって、マルチカッター10を被削材ブロック21に押圧すると当該押圧力が集中するため、円盤型カッター14の振動を防止することができる。これにより、フィン3の欠損や、溝4内のバリの発生を防止することができる。
【0043】
また、マルチカッター10で被削材ブロック21を切り込む際に、押圧力が集中するため、押圧力を小さく設定することができる。これにより、円盤型カッター14の長寿命化を図ることができる。
【0044】
また、図3の(b)及び(c)に示すように、本実施形態に係る第一切削工程によれば、切り込み深さWを被削材ブロック21の高さUよりも大きく設定したため、円盤型カッター14の先端をベース部材2に食い込ませることができる。これにより、円盤型カッター14の先端側の振動を防止することができるため、バリの発生を防止することができる。
【0045】
また、図5は、本実施形態に係る抜き取り工程を説明するための側面図である。図5に示すように、本実施形態に係る抜き取り工程によれば、マルチカッター10を鉛直線Mに沿って引き抜くことにより、マルチカッター10を最短距離で離脱させることができる。ここで、円盤型カッター14の外周と、被削材ブロック21の上面とが、側面視して交差する点を交差点21cとする。
【0046】
即ち、第一切削工程が終わった時点で、マルチカッター10の回転軸Cは、鉛直線Mの線上に位置する。この際、マルチカッター10の回転軸Cは、被削材ブロック21の上面よりも下方に押し込まれることはないため、第二稜線21bから交差点21cまでの距離Pと、切り込み深さWは、常にP>Wとなる。したがって、鉛直線Mに沿って上方に引き抜くことにより、マルチカッター10を被切削金属部材20から最短距離で離脱させることができる。そのため、マルチカッター10を引き抜く際に、第一切削工程で形成されたフィン3と円盤型カッター14が接触してバリが発生したり、フィン3の欠損等を防止したりすることができる。
【0047】
以上、本発明における最良の実施形態において説明したが、本発明は、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、第一実施形態においては、円盤型カッター14の先端をベース部材2に食い込ませたが、食い込ませずに第一切削工程を行ってもよい。即ち、溝4の深さは、必要に応じて適宜設定すればよい。また、ベース部材2を設けずに、被削材ブロック21のみに対して本発明に係る溝入れ加工を行ってもよい。
以下に本発明の他の実施形態について説明する。説明する際に、第一実施形態と同等の部材には同等の符号を付し、重複する構成については説明を省略する。
【0048】
[第二実施形態]
本発明に係る第二実施形態は、第一切削工程の後に、第二切削工程を行う点で第一実施形態と相違する。第二切削工程は、具体的な図示はしないが、図3の(c)を参照して説明する。
第二切削工程は、第二稜線21b側から、第一稜線21a側に向かってマルチカッター10を水平移動(切り込み深さW一定)させる工程である。そして、円盤型カッター14の回転軸Cが第一稜線21aの鉛直線Mに位置した段階で第二切削工程が終了する。
【0049】
このように、第二切削工程によれば、第一切削工程によって形成された溝4内を円盤型カッター14が通過する。これにより、溝4内に残存する切粉を外部へ排出することができるとともに、溝4内に形成されたバリを切削して除去することができる。
なお、第二切削工程が終了したら、抜き取り工程を行えばよい。抜き取り工程は、第一実施形態に係る工程と略同等であるため、説明を省略する。
【0050】
[第三実施形態]
図6は、本発明に係る第三実施形態を示した側面図である。第三実施形態に係る切り込み工程は、被切削金属部材20に対して円盤型カッター14を斜めに切り込ませる点で第一実施形態と相違する。即ち、第三実施形態に係る切り込み工程は、切り込み工程の際に、円盤型カッター14を角度σで切り込ませてもよい。このように、円盤型カッター14を斜めに切り込ませたとしても、円盤型カッター14の回転軸Cから第一稜線21aを結ぶ仮想線L3と、円盤型カッター14の進行方向を平行にすることができる。これにより、円盤型カッター14を押圧する際の力を集中させることができるため、バリの発生を防止することができる。なお、角度σは、30°〜60°の範囲が好ましい。
【0051】
[第四実施形態]
図7は、本発明に係る第四実施形態を示した側面図である。第四実施形態は、被削材ブロック21の仮想稜線26dに沿って、断面視円弧状の凹部30を予め形成した点で第一実施形態と相違する。凹部30は、第四実施形態においては、円盤型カッター14の半径Rと略同等の曲率で形成されている。これにより、円盤型カッター14を被削材ブロック21に押圧した際に、凹部30に円盤型カッター14が線接触するため、好適に切削することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ヒートシンク
2 ベース部材
3 フィン
4 溝
10 マルチカッター
14 円盤型カッター
15 スペーサ
20 被切削金属部材
21 被削材ブロック
21a 第一稜線
21b 第二稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体を呈する被削材ブロックに、複数枚の円盤型カッターを積層したマルチカッターを回転させながら移動させて複数の溝を形成する溝入れ加工方法であって、
前記被削材ブロックの一方の稜線と前記マルチカッターの回転軸とを結ぶ直線と、前記円盤型カッターの進行方向とが平行となるように、前記被削材ブロックの所定の深さまで切り込む切り込み工程と、
前記円盤型カッターを一方の稜線から他方の稜線に向けて移動させる第一切削工程と、を含むことを特徴とする溝入れ加工方法。
【請求項2】
直方体を呈する被削材ブロックと、この被削材ブロックの底面に配置されたベース部材と、を有する被切削金属部材に、複数枚の円盤型カッターを積層したマルチカッターを回転させながら移動させて複数の溝を形成する溝入れ加工方法であって、
前記被削材ブロックの一方の稜線と前記マルチカッターの回転軸とを結ぶ直線と、前記円盤型カッターの進行方向とが平行となるように、前記被切削金属部材の所定の深さまで切り込む切り込み工程と、
前記円盤型カッターを一方の稜線から他方の稜線に向けて移動させる第一切削工程と、を含み、
前記所定の深さは、前記被削材ブロックの高さよりも大きいことを特徴とする溝入れ加工方法。
【請求項3】
前記第一切削工程の後、
前記円盤型カッターを他方の稜線から一方の稜線に向けて移動させる第二切削工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溝入れ加工方法。
【請求項4】
前記被削材ブロックの一方の稜線に沿って、円弧状の凹部を予め形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の溝入れ加工方法。
【請求項5】
隣り合う前記円盤型カッターの間に、前記円盤型カッターよりも半径が小さいスペーサを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の溝入れ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81584(P2012−81584A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−16228(P2012−16228)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2007−223645(P2007−223645)の分割
【原出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】