説明

溝形成装置

【課題】比較的幅が狭い溝を容易かつ確実に形成することができる溝形成装置を提供する。
【解決手段】作業機装着部17と土砂排除部18とを有しており、土砂排除部は一対の側面板19a,19bと連結板20とを備え、一対の側面板の溝形成方向前端と連結板の溝形成方向前端とによって前方が開口した土砂入口部25を形成するとともに、一対の側面板の上端と連結板の溝形成方向後端部とによって上方が開口した土砂出口部26を形成し、土砂入口部を形成する各側面板の溝形成方向前端部に、溝形成方向前方側に向かって先鋭化された溝切部24を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝形成装置に関し、詳しくは、圃場等の地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水はけの悪い土地に排水暗渠を形成するための暗渠管(暗渠排水パイプ)を埋設施工する際には、パイプ外径に対応した幅狭の溝をトレンチャーにて掘削形成することが行われている。このトレンチャーは、上部の駆動用鎖車と下部の案内用ローラーとに、複数の切削刃を備えたチェーンを掛け渡し、チェーンを回転させることにより、切削刃で土砂を切削して溝を掘削形成し、切削した土砂を溝外部に排出する構造を有している(例えば、特許文献1参照。)。また、溝形成方向前方側が先鋭化したラッセル部によって土砂を切り開いくことにより、溝を形成することも行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−252097号公報
【特許文献2】特開2005−194828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トレンチャーは構造が複雑で高価であり、保守にも手間がかかるという問題があった。また、ラッセル部で土砂を切り開いていくものは、溝幅や土質によっては、溝の側壁部が強く圧縮されて溝周囲の土砂の通水性が低下してしまうことがあった。さらに、バックホーに幅狭のバケットを装着して溝を形成することも行われているが、バケットによる溝の掘削とバケット内の土砂の排出とを繰り返さなければならず、操作が面倒で、長い溝の形成には不向きであった。
【0005】
そこで本発明は、比較的幅が狭い溝を容易かつ確実に形成することができる溝形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の溝形成装置は、地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置であって、走行可能な作業機に装着される作業機装着部と、該作業機装着部の下方に連設された土砂排除部とを備え、該土砂排除部は、形成する溝の幅寸法と同じ間隔で対向配置された一対の側面板と、該一対の側面板の溝形成方向前方側下端から溝形成方向後方側上端に向かって上昇する方向に配置され、一対の側面板同士を連結する連結板とを備え、前記一対の側面板の溝形成方向前端と前記連結板の溝形成方向前端とによって前方が開口した土砂入口部を形成するとともに、前記一対の側面板の上端と前記連結板の溝形成方向後端部とによって上方が開口した土砂出口部を形成し、前記土砂入口部を形成する各側面板の溝形成方向前端部に、溝形成方向前方側に向かって先鋭化され、土砂入口部を地中に挿入して溝形成方向前方に向けて前進させたときに、土砂入口部の内方に進入する土砂と、土砂入口部の外方を通過する土砂とを切り分ける溝切部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の溝形成装置は、前記溝切部が、側面板の溝形成方向前端部における上下方向中間部から側面板の溝形成方向前方側上端部に向かって上昇する方向の斜辺からなる上部溝切部と、側面板の溝形成方向前端部における上下方向中間部から側面板の溝形成方向前方側下端部に向かって下降する方向の斜辺からなる下部溝切部とが設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、前記土砂出口部は、一方の側面板の上端部から連続状態で上方に延出し、他方の側面板の上方方向に向かって湾曲した状態で土砂出口部の上方を覆う土砂排出ガイドを備えていることを特徴としている。
【0009】
さらに、前記一対の側面板の溝形成方向後方側の各外面に、各外面から側方にそれぞれ突出して前記土砂排除部で土砂を排除することにより形成した溝の上部の土砂を溝の側方に押し拡げる拡翼板を備えていることを特徴としている。
【0010】
また、前記連結板の溝形成方向後部側に、該連結板の上部から連結板の下部に至る給水パイプを設け、該給水パイプの上端に給水接続口を設けるとともに、前記連結板を貫通して前記給水パイプを通して供給される水を連結板の溝形成方向前方に吐出する吐出口を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溝形成装置によれば、土砂入口部の溝形成方向前方側に先鋭化した溝切部を形成したので、溝形成装置を前進させて溝を形成する際に、溝切部によって土砂入口部の前方の土砂を土砂入口部の内外に確実に切り分けることができ、溝形成部周辺の土砂を乱すことが少なくなり、安定した状態で溝を形成することができる。また、溝切部の上部に上昇する方向の斜辺からなる上部溝切部を設けることにより、溝切部による土砂の切り分けをより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の溝形成装置の一形態例を示す斜視図である。
【図2】同じく側面図である。
【図3】同じく正面図である。
【図4】同じく平面図である。
【図5】同じく使用状態の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本形態例に示す溝形成装置11は、走行可能な作業機、例えば図5に示すように、バックホー12の作業アーム13の先端や、ブルドーザの排土板の下部、更には、トラクタなどの各種作業機の適宜な位置に着脱可能に取り付けられ、バックホー12などの作業機を走行させたり、作業アーム13を作動させたりすることにより、圃場14のあらかじめ設定された位置に、あらかじめ設定された幅及び深さの暗渠管埋設用の溝15を形成するものであって、溝形成装置11は、作業機への取付状態や取付位置などの条件により、必要に応じて適宜な形状に形成したアタッチメントを介して作業機に取り付けられる。
【0014】
溝形成装置11は、前記作業アーム13の先端に固定ピン16によって固着される作業機装着部17と、該作業機装着部17の下方に連設された土砂排除部18とを備えている。土砂排除部18は、形成する溝の幅寸法と同じ間隔で、板面を鉛直方向に向けて下方が僅かに幅狭になるように対向配置された左右一対の側面板19a,19bと、該一対の側面板19a,19bの内面同士を連結する連結板20と、一方の側面板19aの上端部に設けられた土砂排出ガイド21と、前記一対の側面板19a,19bの溝形成方向後方側の各外面から側方にそれぞれ突出した左右一対の拡翼板22と、溝形成装置11の先端下部に水を供給するための給水パイプ23とを備えている。
【0015】
各側面板19a,19bの溝形成方向前端部には、溝形成方向前方側に向かって先鋭化された溝切部24が形成されている。本形態例に示す溝切部24は、側面板19a,19bの上下方向中間部から側面板19a,19bの溝形成方向上端部に向かって上昇する方向の斜辺からなる上部溝切部24aと、側面板19a,19bの上下方向中間部から側面板19a,19bの溝形成方向前方側下端部に向かって下降する方向の斜辺からなる下部溝切部24bとを有しており、上下方向中間部に対して上部側及び下部側が溝形成方向前方に突出した形状に形成されている。
【0016】
連結板20は、溝を横切る方向に板面を向けた板材からなるものであって、連結板20の溝形成方向前方側端部に設けられた補強板20aは、一対の側面板19a,19bの溝形成方向前方側下端部に板面を水平方向に向けた状態で配置され、連結板20の溝形成方向後端部20bは、一対の側面板19a,19bの溝形成方向後方側上端に板面を鉛直方向に向けた状態で配置されている。全体的には、溝形成方向前方側下端部の補強板20aから溝形成方向後端部20bに向かって上昇する斜面で、また、連結板20の中間部が溝形成方向後方側に突出した緩やかな円弧状に形成されている。
【0017】
溝形成装置11の溝形成方向前方部分には、一対の側面板19a,19bの溝形成方向前端、すなわち、前記上部溝切部24a及び下部溝切部24bと連結板20の溝形成方向前方側端部の補強板20aとよって前方及び上方が開口した土砂入口部25が形成されている。また、溝形成装置11の溝形成方向後方上部には、一対の側面板19a,19bの上端と連結板20の溝形成方向後端部20bとによって上方が開口した土砂出口部26が形成されている。
【0018】
土砂排出ガイド21は、一方(図3において左側)の側面板19aの上端部から連続状態で上方に延出し、他方(図3において右側)の側面板19bの上方に向かって湾曲し、土砂出口部26の上方を覆う湾曲部21aを有する湾曲形状の板材で形成されており、湾曲部21aは、溝形成方向前方側が高くなるように傾斜状態に形成されている。これにより、他方の側面板19bの上方に、側方が開口した土砂排出口27が形成される。
【0019】
拡翼板22は、板面を鉛直方向に向けた状態板状部材の基部を側面板19a,19bの外面に固着したものであって、側面板19a,19bの外面に対して後退角を有するとともに、各拡翼板22の突出端22aには、上方が拡がった傾斜が設けられている。また、給水パイプ23は、連結板20の溝形成方向後方側の面に沿うように設けられており、給水パイプ23の上端には、一方の側面板19aの上部を貫通する給水接続口23aが設けられ、給水パイプ23の下端には、給水パイプ23を通して供給される水を連結板20の溝形成方向前方に吐出する吐出口23bが設けられている。
【0020】
このように形成された溝形成装置11は、図5に示すように、バックホー12の作業アーム13の先端やブルドーザの排土板の下部などに装着して土砂排除部18を地中に挿入し、図5において左方の水平方向に移動させることにより、溝形成装置11が通過した圃場14の部分に溝15を形成することができる。このとき、先鋭化した溝切部24によって土砂排除部18の前方の土砂を、土砂入口部25の内方に進入する土砂と土砂入口部25の外方を通過する土砂とに切り分けることができ、地中に土砂の塊や小石、草の根がある場合でも、所定形状の比較的幅が狭い溝15を容易かつ確実に形成することができる。
【0021】
特に、上部溝切部24aを、溝形成方向前方側に向かって上昇する方向の斜辺、すなわち、上下方向中間部に向かって溝形成方向後方側が下降する斜辺に形成することにより、上部溝切部24aによって切り分けられる土砂が溝形成装置11の前方に盛り上がることを確実に防止することができ、土砂入口部25の前方の土砂をより確実に土砂入口部25の内方に進入させることができる。また、下部溝切部24bの溝形成方向後方側を上昇させることにより、下部溝切部24bによって切り分けられて土砂入口部25の内方に進入する溝底部側の土砂を土砂入口部25から連結板20に向かって円滑にガイドすることができる。
【0022】
土砂入口部25の内方に進入した土砂は、溝形成装置11の前進に伴って連結板20により上方にガイドされ、上方に開口した土砂出口部26から溝形成装置11の上方に排出され、さらに、土砂出口部26の上方を覆う土砂排出ガイド21にガイドされ、他方の側面板19bの上方を越えて土砂排出口27から溝形成装置11で形成した溝15の開口一側部(図3において右側)上面に排出することができる。また、土砂排出ガイド21における湾曲部21aの溝形成方向前方側を高く形成しておくことにより、土砂出口部26から土砂排出口27を経て排出される土砂を後方に逃がすことなく、溝形成装置11の前進する力とのバランスによってより確実に側方に排出することができる。
【0023】
したがって、従来のようにバックホーのバケットで溝を形成する際のバケットから土砂を排出するための操作が不要となり、溝形成装置11の溝形成方向と各種作業機の走行方向とを一致させた状態で、溝形成装置11を装着したバックホー12やブルドーザ、トラクタなどの各種作業機を溝15を形成する方向に走行させることにより、溝形成装置11を地中に挿入したままで長い溝15を連続して形成することができる。
【0024】
さらに、側面板19a,19bの溝形成方向後方側に設けた拡翼板22により、溝15の開口一側部上面に排出された土砂を溝15の開口から遠ざけることができるので、排出した土砂が形成した溝15の中に落下することを防止できる。加えて、突出端22aに形成した上方が拡がった傾斜により、溝15の開口上端付近を押し拡げて圧縮することができるので、開口上端付近の土砂が溝15の中に落下することも防止できる。
【0025】
また、圃場14における土砂の状況に応じて給水接続口23aから給水パイプ23に適当な圧力及び流量の水を供給し、吐出口23bから溝形成装置11の前方の土砂に向けて水を吐出し、土砂入口部25の内方に進入する土砂に適当な湿り気を与えることにより、地表面近くの土砂に比べて固くしまった状態になっている下層の土砂を上部溝切部24a及び下部溝切部24bや連結板20における溝形成方向前方側端部の補強板20aによる土砂の切り分けを容易かつ確実に行うことが可能となる。さらに、連結板20による土砂出口部26への土砂のガイドも円滑にでき、土砂排出口27から排出される土砂に適度な粘り気を持たせることができるので、排出した土砂が溝15の中に落下することをより確実に防止できる。
【0026】
なお、溝切部の傾斜、土砂排出ガイド、拡翼板、給水パイプ及び吐出口23aなどの形状は、圃場の土砂の状況や形成する溝の幅及び深さなどの条件に応じて設ければよく、作業機装着部の形状は、溝形成装置を装着する作業機に応じた形状とすることができる。
【符号の説明】
【0027】
11…溝形成装置、12…バックホー、13…作業アーム、14…圃場、15…溝、16…固定ピン、17…作業機装着部、18…土砂排除部、19a,19b…側面板、20…連結板、20a…溝形成方向前方側端部の補強板、20b…溝形成方向後端部、21…土砂排出ガイド、21a…湾曲部、22…拡翼板、22a…突出端、23…給水パイプ、23a…給水接続口、23b…吐出口、24…溝切部、24a…上部溝切部、24b…下部溝切部、25…土砂入口部、26…土砂出口部、27…土砂排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置であって、走行可能な作業機に装着される作業機装着部と、該作業機装着部の下方に連設された土砂排除部とを備え、該土砂排除部は、形成する溝の幅寸法と同じ間隔で対向配置された一対の側面板と、該一対の側面板の溝形成方向前方側下端から溝形成方向後方側上端に向かって上昇する方向に配置され、一対の側面板同士を連結する連結板とを備え、前記一対の側面板の溝形成方向前端と前記連結板の溝形成方向前端とによって前方が開口した土砂入口部を形成するとともに、前記一対の側面板の上端と前記連結板の溝形成方向後端部とによって上方が開口した土砂出口部を形成し、前記土砂入口部を形成する各側面板の溝形成方向前端部に、溝形成方向前方側に向かって先鋭化され、土砂入口部を地中に挿入して溝形成方向前方に向けて前進させたときに、土砂入口部の内方に進入する土砂と、土砂入口部の外方を通過する土砂とを切り分ける溝切部が形成されていることを特徴とする溝形成装置。
【請求項2】
前記溝切部は、側面板の溝形成方向前端部における上下方向中間部から側面板の溝形成方向前方側上端部に向かって上昇する方向の斜辺からなる上部溝切部と、側面板の溝形成方向前端部における上下方向中間部から側面板の溝形成方向前方側下端部に向かって下降する方向の斜辺からなる下部溝切部とが設けられていることを特徴とする請求項1記載の溝形成装置。
【請求項3】
前記土砂出口部は、一方の側面板の上端部から連続状態で上方に延出し、他方の側面板の上方方向に向かって湾曲した状態で土砂出口部の上方を覆う土砂排出ガイドを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の溝形成装置。
【請求項4】
前記一対の側面板の溝形成方向後方側の各外面に、各外面から側方にそれぞれ突出して前記土砂排除部で土砂を排除することにより形成した溝の上部の土砂を溝の側方に押し拡げる拡翼板を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の溝形成装置。
【請求項5】
前記連結板の溝形成方向後部側に、該連結板の上部から連結板の下部に至る給水パイプを設け、該給水パイプの上端に給水接続口を設けるとともに、前記連結板を貫通して前記給水パイプを通して供給される水を連結板の溝形成方向前方に吐出する吐出口を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の溝形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−229575(P2012−229575A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99275(P2011−99275)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)
【出願人】(508320941)キャタピラー九州株式会社 (8)