説明

溝形成装置

【課題】溝の壁面が崩れやすい土質の場合でも、暗渠管を埋設するための溝を容易かつ確実に形成することができる溝形成装置を提供する。
【解決手段】地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置11であって、暗渠管に対応した溝幅の暗渠管敷設用の幅狭溝を形成する幅狭溝形成部21と、前記幅狭溝より幅が広い幅広溝を形成する幅広溝形成部22とを備えている。幅広溝形成部は、幅広溝形成方向に向かって開口した幅広土砂進入部23と、幅広土砂進入部の上部に設けられた作業機取付部24と、幅広土砂進入部の幅広溝形成方向に向かって後方に設けられた土砂貯留部25とを備え、幅狭溝形成部は、幅狭溝形成方向に向かって開口した幅狭土砂進入部31と、幅狭土砂進入部から進入した土砂を土砂貯留部に向けてガイドするガイド部33とを備えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝形成装置に関し、詳しくは、圃場等の地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水はけの悪い土地に排水暗渠を形成するための暗渠管(暗渠排水パイプ)を埋設施工する際には、パイプ外径に対応した幅狭の溝をトレンチャーにて掘削形成することが行われている。このトレンチャーは、上部の駆動用鎖車と下部の案内用ローラーとに、複数の切削刃を備えたチェーンを掛け渡し、チェーンを回転させることにより、切削刃で土砂を切削して溝を掘削形成し、切削した土砂を溝外部に排出する構造を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−252097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、土質によっては、幅狭の溝を形成しても溝の壁面が崩れてしまうことがあり、崩れた土砂によって溝の深さが一定にならず、そのままでは暗渠管を埋設できなくなってしまう。
【0005】
そこで本発明は、溝の壁面が崩れやすい土質の場合でも、暗渠管を埋設するための溝を容易かつ確実に形成することができる溝形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の溝形成装置における第1の構成は、地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置であって、暗渠管に対応した溝幅の暗渠管敷設用の幅狭溝を形成する幅狭溝形成部と、前記幅狭溝より幅が広い幅広溝を形成する幅広溝形成部とを備え、該幅広溝形成部は、幅広溝形成方向に向かって開口した幅広土砂進入部と、該幅広土砂進入部の上部に設けられた作業機取付部と、前記幅広土砂進入部の幅広溝形成方向後方に連続して設けられた土砂貯留部とを備え、前記幅広土砂進入部は、前記幅広溝の底面を形成する溝底形成部と、該溝底形成部の溝幅方向両端から立ち上がって前記幅広溝の両壁面を形成する一対の溝壁形成部とを有し、前記土砂貯留部は、前記溝底形成部に連続して土砂貯留部の後方に向かって次第に幅狭となる底板と、前記一対の溝壁形成部に連続して土砂貯留部の後方に向かって次第に間隔が狭くなる一対の側板と、前記底板及び一対の側板の幅広溝形成方向後方端部を塞ぐ後壁とを備え、該後壁は、幅広溝形成後に幅狭溝を形成する際に前記幅広溝形成部によって形成した幅広溝の底面に沿う平板状に形成され、前記幅狭溝形成部は、前記後壁の幅広溝形成方向後方に突出した状態で設けられ、幅狭溝形成方向に向かって開口した幅狭土砂進入部と、該幅狭土砂進入部から進入した土砂を前記土砂貯留部に向けてガイドし、後壁に設けられた開口部を通して土砂貯留部内に送り出すガイド部とを備えるとともに、前記開口部を開閉する蓋板を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明の溝形成装置の第2の構成は、地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置であって、暗渠管に対応した溝幅の暗渠管敷設用の幅狭溝を形成する幅狭溝形成部と、前記暗渠管埋設溝より幅が広い幅広溝を形成する幅広溝形成部とを備え、該幅広溝形成部は、幅広溝形成方向に向かって開口した幅広土砂進入部と、該幅広土砂進入部の上部に設けられた作業機取付部と、前記幅広土砂進入部の幅広溝形成方向に向かって後方に設けられた土砂貯留部とを備え、前記幅狭溝形成部は、前記幅広土砂進入部の下方に幅狭溝形成方向に向かって開口した幅狭土砂進入部と、該幅狭土砂進入部から進入した土砂を前記土砂貯留部に向けてガイドするガイド部とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の溝形成装置によれば、幅広溝の底面部に暗渠管敷設用の幅狭溝を形成することができるので、幅狭溝の深さを浅くすることができ、幅狭溝の壁面が崩れることを抑えることができる。したがって、幅狭溝の内部にあらかじめ設定された状態で暗渠管を埋設施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1形態例を示す溝形成装置における幅広溝形成時の姿勢を示す正面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】同じく幅狭溝形成時の姿勢を示す正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】同じく使用状態の一例を示す説明図である。
【図6】同じく幅広溝形成時の状態を示す正面図である。
【図7】同じく幅狭溝形成時の状態を示す正面図である。
【図8】同じく形成した溝に暗渠管を敷設した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2形態例を示す溝形成装置の一部断面側面図である。
【図10】同じく正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図8の第1形態例に示す溝形成装置11は、例えば図5に示すように、バックホー12の作業アーム13の先端や、ブルドーザの排土板の下部、更には、トラクタなどの各種作業機の適宜な位置に着脱可能に取り付けられ、バックホー12などの作業機を走行させたり、作業アーム13を作動させたりすることにより、圃場14のあらかじめ設定された位置に、図8に示すように、暗渠管15を埋設するための溝16を形成するものであって、溝形成装置11は、作業機への取付状態や取付位置などの条件により、必要に応じて適宜な形状に形成したアタッチメントを介して作業機に取り付けられる。
【0011】
溝形成装置11は、暗渠管15に対応した溝幅の暗渠管敷設用の幅狭溝16aを形成する幅狭溝形成部21と、前記幅狭溝16aより幅が広い幅広溝16bを形成する幅広溝形成部22とを備えている。幅広溝形成部22は、幅広溝16aの形成方向に向かって開口した幅広土砂進入部23と、該幅広土砂進入部23の上部に設けられた作業機取付部24と、前記幅広土砂進入部23の幅広溝形成方向後方に連続して設けられた土砂貯留部25とを備えている。前記幅広土砂進入部23は、前記幅広溝16bの底面を形成する溝底形成部26と、該溝底形成部26の溝幅方向両端から立ち上がって前記幅広溝16bの両壁面を形成する一対の溝壁形成部27,27とを有している。
【0012】
前記土砂貯留部25は、前記溝底形成部26に連続して土砂貯留部25の後方に向かって次第に幅狭となる形状の底板28と、前記一対の溝壁形成部27,27に連続して土砂貯留部25の後方に向かって次第に間隔が狭くなるように配置された一対の側板29と、前記底板28及び一対の側板29の幅広溝形成方向後方端部を塞ぐ後壁30とを備えている。後壁30は、幅広溝16bを形成した後に幅狭溝16aを形成する際に、前記幅広溝形成部22によって形成した幅広溝16bの底面に沿う方向の平板状で、幅狭溝形成時の先端部には、上方に向かって湾曲した形状の湾曲部30aが形成されている。
【0013】
前記幅狭溝形成部21は、前記後壁30の幅広溝形成方向に対して後方に突出した状態で設けられており、幅狭溝形成方向に向かって開口した幅狭土砂進入部31と、該幅狭土砂進入部31から進入した土砂を前記土砂貯留部25に向けてガイドし、後壁30に設けられた開口部32を通して土砂貯留部25内に土砂送り出すガイド部33とを備えるとともに、前記開口部32を開閉するための蓋板34が後壁30の土砂貯留部25側内面にヒンジ35を介して回動可能に設けられている。
【0014】
また、幅広溝形成部22における溝壁形成部27,27の幅広溝形成方向前端部及び幅狭溝形成部21の幅狭土砂進入部31の溝形成方向前端部には、前方側に向かって先鋭化された溝切部36,37がそれぞれ形成されている。
【0015】
このような構造を有する溝形成装置11を使用して暗渠管15を埋設する溝16を形成する際には、図5に示すように、連結ピンを介してバックホー12の作業アーム13の先端に溝形成装置11を装着し、最初に幅広溝16bを形成する。
【0016】
幅広溝16bを形成する際には、溝形成装置11を図1及び図2や図5、図6に示すように、幅広土砂進入部23が幅広溝形成方向に向けて開口した状態にするとともに、形成する幅広溝16bの底面に平行な状態になるように底板28を位置させる。この状態で溝形成装置11を幅広溝形成方向に向けて移動させることにより、図6に示すように、幅広土砂進入部23が通過した部分に幅広溝16bを形成することができる。
【0017】
このとき、蓋板34は、自重によって開口部32を閉じた状態になっており、幅広土砂進入部23から土砂貯留部25内に進入した土砂が開口部32を通って土砂貯留部25の後方に排出されることを防止できる。
【0018】
幅広溝16bを形成した後、溝形成装置11を、図3及び図4、図7に示すように、後壁30の外面が、湾曲部30aを先頭にして幅広溝16bの底面に当接するような状態としてから溝形成装置11を幅狭溝形成方向に向けて移動させる。これにより、幅広溝16bの底面中央部の土砂が幅狭土砂進入部31からガイド部33内に進入し、ガイド部33でガイドされた土砂の圧力によって開口部32の蓋板34が自動的に開くことにより、幅狭土砂進入部31からの土砂を土砂貯留部25内に取り込むことができ、幅狭溝形成部21が通過した部分に幅狭溝16aを形成することができる。
【0019】
この幅狭溝形成時には、後壁30の外面が幅広溝16bの底面に当接するようにして幅狭溝16aを形成することにより、幅狭溝16aの深さを一定にすることができる。また、一対の側板29の間隔が溝底部側で狭くなる逆台形状の状態になるので、先に形成した幅広溝16bの壁面に側板29の外面がほとんど当たることはなく、幅広溝16bの壁面が側板29に当たって崩れることを抑えることができる。さらに、幅狭溝形成部21の形状を、幅狭溝形成時の状態で幅狭溝16aの開口側が広く、底部側が狭い逆台形状に形成することにより、幅狭溝16aの壁面が崩れることを抑えることができる。
【0020】
図9及び図10は、本発明の溝形成装置の第2形態例を示している。なお、前記第1形態例における溝形成装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0021】
本形態例における溝形成装置は、幅広溝形成部22における幅広土砂進入部23の下方で、底板28の先端中央に幅狭溝形成部21の幅狭土砂進入部31を連続状態で形成した例を示している。このように、溝16の溝形成方向に向かって幅広土砂進入部23と幅狭土砂進入部31とを上下に連続させた状態で開口させることにより、溝形成装置を溝形成方向に移動させて幅広土砂進入部23で幅広溝16bを形成するのと同時に幅狭土砂進入部31で幅狭溝16aを形成することができる。
【0022】
本形態例においても、幅狭溝形成部21や幅広溝形成部22の形状を、形成した幅狭溝16aや幅広溝16bの壁面上部が拡開した逆台形状になるようにしておくことにより、溝16の溝壁面が崩れることを抑えることができる。
【0023】
このように、幅狭溝形成部21と幅広溝形成部22とを備えた溝形成装置を使用することにより、暗渠管15の埋設深さに対応するための溝が深い幅広溝16bの底部中央に、暗渠管15を敷設するための溝が浅い幅狭溝16aを有する二段構造の溝16を形成することができ、溝が深くて壁面の面積が大きな幅広溝16bの壁面が崩れても、崩れた土砂が幅狭溝16a内に落下することはほとんどなく、また、幅狭溝16aは溝が浅いので壁面が崩れることはほとんどなく、壁面が崩れたとしても、少量の土砂が溝底部に落下するだけであるから、幅狭溝16aの底面部に暗渠管15を容易かつ確実に敷設することができる。したがって、溝の壁面が崩れやすい土質を有する圃場の場合でも、暗渠管15の埋設施工を効率よく短期間で行うことができる。
【0024】
また、幅狭溝形成部21や幅広溝形成部22の溝形成方向前端部に先端を先鋭化した溝切部を設けておくことにより、土砂を開口内外に確実に切り分けることができ、地中に土砂の塊や小石、草の根がある場合でも、所定形状の溝をより確実に形成することができる。
【0025】
なお、土砂貯留部25内に所定量の土砂が貯留された状態になったときには、バックホー12の作業アーム13を操作して溝周辺に土砂貯留部25内の土砂を排出すればよく、また、土砂貯留部25の後壁30の近傍に土砂貯留部25内の土砂を外部に排出するためのガイド部材や機械的に作動して土砂を排出する機構を備えた土砂排出手段を設けることにより、長い溝を連続的に形成することが可能である。また、幅狭溝16a内に暗渠管15を敷設した後は、通常通り埋め戻せばよい。
【0026】
さらに、幅狭溝形成部21で形成した幅狭溝16a内に、図8に想像線で示すような上部が開口した不透水性部材38を介して暗渠管15を敷設し、暗渠管15に用水を供給して不透水性部材38内に貯留した状態とし、不透水性部材38の上方の土砂を介して毛細管現象により圃場の地中に用水を供給するように形成することもできる。このとき、幅狭溝16aの上部に幅広溝16bが形成されており、幅狭溝16a及び幅広溝16bには埋め戻された土砂が適度に締め固められて充填されるので、不透水性部材38の上方の幅狭溝16a内の土砂だけでなく、幅広溝16b内の土砂にも適度な毛細管現象が生じることから、幅広い範囲に効果的な地下灌漑を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
11…溝形成装置、12…バックホー、13…作業アーム、14…圃場、15…暗渠管、16…溝、16a…幅狭溝、16b…幅広溝、21…幅狭溝形成部、22…幅広溝形成部、23…幅広土砂進入部、24…作業機取付部、25…土砂貯留部、26…溝底形成部、27…溝壁形成部、28…底板、29…側板、30…後壁、30a…湾曲部、31…幅狭土砂進入部、32…開口部、33…ガイド部、34…蓋板、35…ヒンジ、36,37…溝切部、38…不透水性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置であって、暗渠管に対応した溝幅の暗渠管敷設用の幅狭溝を形成する幅狭溝形成部と、前記幅狭溝より幅が広い幅広溝を形成する幅広溝形成部とを備え、該幅広溝形成部は、幅広溝形成方向に向かって開口した幅広土砂進入部と、該幅広土砂進入部の上部に設けられた作業機取付部と、前記幅広土砂進入部の幅広溝形成方向後方に連続して設けられた土砂貯留部とを備え、前記幅広土砂進入部は、前記幅広溝の底面を形成する溝底形成部と、該溝底形成部の溝幅方向両端から立ち上がって前記幅広溝の両壁面を形成する一対の溝壁形成部とを有し、前記土砂貯留部は、前記溝底形成部に連続して土砂貯留部の後方に向かって次第に幅狭となる底板と、前記一対の溝壁形成部に連続して土砂貯留部の後方に向かって次第に間隔が狭くなる一対の側板と、前記底板及び一対の側板の幅広溝形成方向後方端部を塞ぐ後壁とを備え、該後壁は、幅広溝形成後に幅狭溝を形成する際に前記幅広溝形成部によって形成した幅広溝の底面に沿う平板状に形成され、前記幅狭溝形成部は、前記後壁の幅広溝形成方向後方に突出した状態で設けられ、幅狭溝形成方向に向かって開口した幅狭土砂進入部と、該幅狭土砂進入部から進入した土砂を前記土砂貯留部に向けてガイドし、後壁に設けられた開口部を通して土砂貯留部内に送り出すガイド部とを備えるとともに、前記開口部を開閉する蓋板を備えていることを特徴とする溝形成装置。
【請求項2】
地中に暗渠管を埋設するための溝を形成する溝形成装置であって、暗渠管に対応した溝幅の暗渠管敷設用の幅狭溝を形成する幅狭溝形成部と、前記暗渠管埋設溝より幅が広い幅広溝を形成する幅広溝形成部とを備え、該幅広溝形成部は、幅広溝形成方向に向かって開口した幅広土砂進入部と、該幅広土砂進入部の上部に設けられた作業機取付部と、前記幅広土砂進入部の幅広溝形成方向に向かって後方に設けられた土砂貯留部とを備え、前記幅狭溝形成部は、前記幅広土砂進入部の下方に幅狭溝形成方向に向かって開口した幅狭土砂進入部と、該幅狭土砂進入部から進入した土砂を前記土砂貯留部に向けてガイドするガイド部とを備えていることを特徴とする溝形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−251392(P2012−251392A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126382(P2011−126382)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)
【出願人】(508320941)キャタピラー九州株式会社 (8)