説明

溶媒含有ポリカーボネート溶液を脱気する装置および方法

本発明は、溶媒含有ポリカーボネート溶液を脱蔵させる装置および方法に関する。本発明に係る装置を用いることにより、加熱可能な管状の脱蔵器とベント式押出機を併用する装置を用いて、揮発性成分の低い残存量を有するポリカーボネートが溶媒含有ポリマー溶融体から調製され、該ポリカーボネートは改良された光学特性(特に黄色度指数)を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒含有ポリカーボネート溶液を脱蔵させる装置および方法に関する。加熱可能な管状の脱蔵装置とベント式押出機を用いる、本発明に係る装置を使用することにより、揮発性成分の残存値の低いポリカーボネートが、溶媒含有ポリマー溶融体から生成される。該ポリカーボネートは、光学特性、特に黄色度(YI)が改良される。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートを調製するための既知の界面法において、溶媒、例えば芳香族塩化炭化水素(特にジクロロメタン)が使用されており、最終製品においてそれらが残存することは望ましくない。なぜならば、それらはポリカーボネート中で崩壊を生じさせるからである。これらの揮発性成分を除去するために、先行技術において既知の方法を用いると、ベント式押出機を比較的高温で操作しなければならず、このことは熱損傷を引き起すと共に、光学特性を悪化させる欠点を有する。
【0003】
ポリカーボネート溶液の効率的な濃縮と、低温で溶媒の残存量を蒸発させることは、改良した光学特性を備えるポリカーボネートを得るために最も重要なことである。
【0004】
界面法によるポリカーボネート合成法が種々の文献において記載されており、例えば、シュネルによる「ポリカーボネートの化学および物理」Polymer Reviews,第9巻、インターサイエンス・パブリッシャーズ、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、1964年、第33頁〜第70頁に記載されている。
【0005】
界面法の場合、最初に水性のアルカリ溶液(または懸濁液)中に導入された、ビフェノールのジナトリウム塩(または種々のビフェノールの混合物)は、第二相を形成する不活性な有機溶媒又は溶媒混合物の存在下でホスゲン化される。有機相を形成すると共に主に有機相中に存在するオリゴカーボネートは適当な触媒を用いて縮合される。これによって有機相中に溶解した高分子量ポリカーボネートが得られる。最終的に有機相は、ナトリウムおよび触媒の残渣を除去するために、多段法で除去および洗浄される。一般に、反応後において有機相は、10〜20重量%のポリカーボネートを含有する。
【0006】
続いて、ポリカーボネートを有機相から単離する必要がある。ポリカーボネート溶液を濃縮すること、およびポリカーボネートを単離することに関する常套の方法は、特許文献および教科書に記載されており、当業者には既知である。好ましくは、溶液からのポリカーボネートの単離は、溶媒を熱的に揮発させることにより行われるか、または真空を用いて行われる。溶媒の揮発後に溶融層を直接得るために、この方法は、高沸点(>100℃)溶媒、例えばクロロベンゼンなどを使用する必要がある。反応の間、溶媒中におけるポリマーの溶解度を改良するために、一種以上の高沸点溶媒と低沸点ジクロロメタンの混合物も使用されている。高沸点溶媒に対するジクロロメタンの重量比は、一般に、約1:1である。
【0007】
更なる選択として、加熱ガス(特に蒸気)を導入し、揮発性成分を追い出すことが含まれる。このことには、キャリアガスでポリカーボネート溶液を噴霧し、固形分、特に水-湿潤懸濁液としてポリカーボネートを得ることが含まれる。他の単離方法は、結晶化法および沈殿法、ならびに固相中の溶媒の残留物をベーク-アウト(baking-out)することである。後の方法は、溶媒としてジクロロメタンの使用が必要である。これにより、揮発性溶媒の残留物含有量は、ジクロロメタンにおいて約2ppmとなる。
【0008】
しかしながら、ジクロロメタンの残留物は、特にポリカーボネートの崩壊を生じさせる。何故ならば、ジクロロメタンは、処理作業中に、残存水分と共に塩酸を排出することが知られており、その結果、ポリカーボネートの変色と用具の腐食をもたらし得るからである。昇温させることで、ジクロロメタンは品質、例えば後処理工程における変色とゲル形成などの損失をもたらす。
【0009】
蒸発、あるいはフラッシュ蒸発に関する既知の方法において、ポリカーボネート溶液は、わずかに上昇した圧力条件下にて、沸点より高い温度まで繰り返して加熱され、次いで、これらの過熱溶液は、容器内で減圧される。容器内の圧力は、溶液中の蒸気圧に相当する圧力よりも低くなる。一般に、工程を反復させることが有利である。何故ならば、反応後の溶液中のポリカーボネートの濃度は比較的低く、工程を反復することで、著しい過熱を回避できるからである。装置を用いて、ポリカーボネート溶液の蒸発を行う常套法は、当業者に既知である。例えば、過熱溶液は、分離器へ通じる過熱らせん管内で減圧できる。
【0010】
ポリカーボネートが特定濃度(約60重量%)よりも高い場合、フラッシュ蒸発による蒸発は、その高い粘度に起因して、より困難となる。約60%以下の蒸発は、以下予備蒸発と称する。一般に、他の方法による装置および機器を用いて残存溶媒を除去することが好ましい。例えば、これらはベント式押出機または垂直の管状脱蔵器(tubular devolatilizer)であってもよい。最終段階において、特に低い残留物含有量をもたらすために、螺旋状の脱蔵器または発泡脱蔵器を使用できる。
【0011】
先行技術に従ってポリカーボネートの蒸発を行う場合、一般に、過剰に高い装置温度がもたらされると共に、装置内での溶融体に対して過剰に長い滞留時間が付与される。この方法により、ポリカーボネート溶融体中の残存揮発性成分を十分に除去できるが、このような方法はポリカーボネートに対する損傷を生じさせる。この製品損傷は、一般に、脱蔵装置におけるポリマー溶融体に、過度の滞留時間を付与することによる、過度の熱応力に起因する直接的な影響である。この間、ポリカーボネートに副反応が生じ、該副反応は、光学特性の劣化、特に欠陥構造の形成を生じる。一般に、この欠陥の形成は、このようなポリカーボネートから製造された成形品に、紫外線光を照射することで明かとなる。このような欠陥のある構造の例は、超微粒子およびゲル体である。光学データキャリア、例えばCDまたはDVDを製造するポリカーボネートの加工において、最終製品におけるこのような欠陥構造は、許容できず避けるべきであり、これによって品質の著しい欠損が生じる。
【0012】
クロロベンゼン含有ポリカーボネート溶液の濃縮は、EP-A1265944およびEP-A1113848において開示され、その例は、65重量%ポリカーボネート溶液の調製を記載する。そこに記載された後処理工程に対比して、ポリカーボネート中の残留揮発成分を除去するために、このようなポリカーボネート溶液は、ベント式押出機を用いて更に蒸発させることができる。
【0013】
原則として、ベント式または脱蔵押出機は当業者において既知であり、例えば[1]に記載されている。脱蔵押出機の特徴は、脱蔵ドームまたは脱蔵オリフィスと称されるものを備えることである。これらは、生じる蒸気を逃すことができる開口部を備えるハウジングである。生成物を脱蔵ドーム間で逆流させる場合、異なる圧力間での密閉状態を形成することにより、種々の脱蔵ドームは種々の圧力で操作できることが知られている。
【0014】
ベント式押出機を用いて、ポリカーボネート溶液から、このような残留揮発性物質を除去することは、DE2908352およびEP1165302に記載されている。これらの2つの押出法において、押出機流入口でのいわゆる後脱蔵が記載されている。この場合、所望により予め加熱したポリマー溶液を2軸押出機内へ導入し、その内部で発泡させる。次いで、2軸押出し機のフライトを介してガスは後から、脱蔵ドームへと除去される。一般に、このような後脱蔵は先行技術であり、例えば、「コロタトリー2軸押出機(Der gleichlaufige Doppelschneckeneextruder),Klemens Kohlgruber)」,カール・ハンサー・バーグ,ISBN 978-3-446-41252-1,第193頁〜195頁に記載されている。後脱蔵の1欠点は、蒸発させる溶媒の量に制限があることである。なぜならば、スクリューチャネルが、比較的狭く、その結果、後脱蔵ドーム内への生成物のエントレインメントを生じ得る高いガス速度がもたらされるからである。65〜75重量%のポリカーボネート溶液をこれらの装置内へ導入し、ポリカーボネート中の残留溶媒含有量を、ポリカーボネート材料全体に基づき、数ppmへと濃縮させるのであれば、残留溶媒の比較的高い割合を、押出機の更なる段階で除去する必要がある。ポリカーボネートに対する熱的損傷は、例えば黄変、不溶性成分の形成、しみ、ポリマー鎖の開裂、残留モノマーおよび低分子量成分の生成などを引き起し得る。溶媒(例えばジクロロメタンなど)の残留成分を有するポリカーボネート溶液が、押出機内へ直接導入されることも欠点である。なぜならば、例えばジクロロメタンの存在下でスクリューを移動させる場合、溶液の過熱は、局所的な生成物の損傷をもたらし、これにより生成物全体の変色をもたらし得るからである。このことは当業者に既知である。
【0015】
更に、EP-A027700は、オレフィン重合からの溶液を濃縮するために、フラッシュ脱蔵とベント式押出機の併用を開示し、フラッシュ段階に先立ち、ポリマー溶融流内への共留剤流が導入されることを開示する。ポリカーボネート溶融体の場合、昇温させた水は、加水分解によるポリマー分解を生じ得る。したがって、このような方法は、ポリカーボネート溶融体から残留揮発性成分を除去するためには勧められない。また、該明細書によると、生成物は、装置の基底部にある脱蔵容器に「回収され」、脱蔵容器の底部と接触する押出機へと供給される。このことは、ポリマーの滞留時間を増加させるので、熱損傷を生じさせる。
【0016】
JP05017516においては、ポリマー溶液から残留揮発性物質を除去するためのベント式押出機の上に直接配置された管状気化器の使用を開示する。ここで記載される工程態様の欠点は、管状気化器中で形成される蒸気はその場で除去されずに、(後脱蔵を介することを含む)ベント式押出機の脱蔵オリフィスを介してある程度放出されることである。したがって、この方法は、純粋な後脱蔵に関する方法のように、狭いスクリューチャネルにおける高いガス速度から生じる同様の制限に見舞われる。生成物は、押出機中で剪断力を上昇させ、このことは、損害を与える温度上昇を不可避的に生じさせる。
【0017】
EP-A1510530は、圧力保持しながら熱交換器中で加熱されるポリマー溶液が、ベント式押出機へ供給される方法の概要を説明する。生成した気体は、前脱蔵および後脱蔵によって押出機から除去される。したがって、この方法は、後脱蔵に関する方法のように、狭いスクリューチャネルにおける高いガス速度から生じる同様の制限に見舞われると共に、ジクロロメタンの存在下でのスクリュー移動による局所的な過熱に見舞われる。ポリカーボネート溶液に関しては、EP-A1510530における実施例60〜65に記載されるように、残留溶媒含有量が1000ppmを上回る場合があり、このことは、多くの用途において容認できない。
【0018】
EP1113848B1は、蒸発の最終段階にて、管状と螺旋状の脱蔵器を併用することを開示する。このことは、まず、下流分離器を備える垂直なシェルアンドチューブ熱交換器中でポリマー溶液を濃縮し、ポリカーボネートを60〜75重量%含有する溶液から、98〜99重量%まで濃縮し、次いで、らせん構造の脱蔵器を用いて、クロロベンゼンを5〜500ppmの残留物含有量まで濃縮させることを含む。らせん構造の脱蔵器を使用する場合、ポリマー溶融体は、減圧および昇温度条件下にて、分離器中で微細なストランドへと成形され、その結果、溶媒から解放される。ストランド脱蔵技術の欠点は、効果的な脱蔵は、安定したストランドによってのみ確実に行われ、このことは装置中で断裂しできないことを意味する。ストランドの安定性は、ポリマー溶液の粘度に影響される。極めて低い粘度はストランドの崩壊をもたらす。このことは、温度および残留揮発性物質の流入口濃度に関する操作パラメーターについて制限を課す。物質移動は、単に拡散によって決定されるので、粘度への悪影響に加えて、揮発性物質の過度な流入口濃度は、もたらすことができる脱蔵についても、直接的に悪影響を及ぼす。一方、物質移動に関する表面積は、ストランド形状により固定される。ストランドを得るのに広大な面積の溶融分散路が必要となり、更に高価で大きな装置を必要とする。このような大型装置は、特に放出時において、低い流速で流れる大面積を同様に不可避的に有する。このような低い流速は壁面に近いポリカーボネートの非常に長い滞留時間をもたらすので、その場でポリカーボネートに望ましくない変化、例えば、変色およびゲルの形成を誘発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1265944号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1113848号明細書
【特許文献3】独国特許第2908352号明細書
【特許文献4】欧州特許第1165302号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第027700号明細書
【特許文献6】特開平05-017516号公報
【特許文献7】欧州特許出願公開第1510530号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】シュネルによる「ポリカーボネートの化学および物理」Polymer Reviews,第9巻、インターサイエンス・パブリッシャーズ、ニューヨーク、ロンドン、シドニー、1964年、第33頁〜第70頁
【非特許文献2】「コロタトリー2軸押出機(Der gleichlaufige Doppelschneckeneextruder),Klemens Kohlgruber)」,カール・ハンサー・バーグ,ISBN 978-3-446-41252-1,第193頁〜195頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、ポリカーボネートにおいてこのような所望ではない変化が生じることを防ぐ、溶媒含有ポリカーボネート溶液の脱蔵を行う装置および方法を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、高い溶融温度にてポリカーボネートを長期に亘る滞留時間にさらすことを妨げながらも、最終的なポリカーボネートに低い残留溶媒濃度がもたらされるように、ポリカーボネート溶液に関して現存する装置および現存する脱蔵法を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
驚くべきことに、この目的は、縦樋脱蔵器(downpipe devolatilizer)とベント式押出機を併用する装置を用いて、残留脱蔵を行うことによりもたらされる。溶媒として芳香族塩化炭化水素(例えばクロロベンゼン)を含有するポリカーボネート溶液は、この併用装置へ供給され、ポリカーボネート溶融体は第1処理過程として縦樋脱蔵器を通過し、第2の下流処理過程としてベント式押出機を通過する。
【0023】
好ましくは、縦樋脱蔵器の円錐部は、ベント式押出機の第1ハウジングの1つと垂直に配設され、縦樋脱蔵器から下方に落下する溶融体のために、スクリュー横断面の少なくとも70%、好ましくは100%に相当する、上向きに開口させた流入オリフィスが設けられる。
【0024】
したがって、本発明は、加熱可能な管状脱蔵器とベント式押出機とを結合させた装置を用いて、溶媒含有ポリマー溶融体、特に芳香族塩化炭化水素を含有するポリカーボネート溶融体から、揮発性成分を除去する装置および調製方法を提供する。
【0025】
特に好ましい実施態様において、この装置結合は、蒸気ラインを考慮して設計されているので、縦樋脱蔵器において生成された溶媒含有蒸気は、蒸気ラインを介して縦樋脱蔵器のハウジングから直接除去できる。
【0026】
本発明による方法における、更に特に好ましい実施態様は、縦樋脱蔵器上流のポリマー溶融流内への共留剤として、不活性成分、例えば窒素、アルゴン、二酸化炭素、水、メタンまたはヘリウム、またはこれらの成分の1種以上の混合物、好ましくは窒素を導入し混合することである。
【0027】
本発明に係る方法の更に特に好ましい実施態様は、不活性ガスは、ベント式押出機の1以上のハウジング中に共留剤として注入される。
【0028】
縦樋脱蔵器における蒸発(該蒸発は押出機の上流でおこなわれる)は、押出機の速度をより遅くできるので、温度の減少、すなわち製品損傷を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施例を示す。
【図2】図2は、本発明による縦樋脱蔵器の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において使用される縦樋脱蔵器は、少なくとも1つの加熱可能なシェルアンドチューブ熱交換器を具備し、分離器上に垂直に配置されると共に直接連結される。シェルアンドチューブ熱交換器から放出される濃縮ポリカーボネート溶融体が、直接ベント式押出機内へ移行できるように、ポリカーボネート溶融体で充填されたシェルアンドチューブ熱交換器のチューブは、この分離器内へ向けて非制限的な方法で開口する。続いて、それは、より低い円錐部を介して、非制限的および非閉塞的(unblockable)な方法で、ベント式押出機の押出ハウジングに直接接続される。
【0031】
特に好ましい実施態様において、分離器は、上部領域において、ガス蒸気を除去するための少なくとも1つの排出オリフィスと、それに基づいて、蒸気流により取り込まれた溶融粒子を分離できる少なくとも1つの分離容器と、および蒸気凝縮ユニットを有する。凝縮ユニットを越えて、圧力調整を用いて真空発生させるためのユニットを存在させてもよい。
【0032】
好ましい実施態様において、縦樋脱蔵器は、シェルアンドチューブ熱交換器から構成される。ポリカーボネート溶液は、出口オリフィスを介して縦樋脱蔵器の上端に導入され、分散板を介して、外部から加熱できる多数のチューブに供給される。好ましくは、加熱は、凝縮蒸気、凝縮有機熱媒体、または液体有機熱媒体を用いてもたらされる。十分に高い加熱温度を得るために他の適当な熱媒体を使用できない場合、例えば、十分に高い圧力の蒸気を利用できない場合、液体有機熱媒体、例えば、オイル(特に高い熱安定性を有するシリコーンオイル)が有利に使用される。熱媒体としてのオイルの使用は、所望により加熱温度を最大360℃まで上昇させることができるので、ここで記載されたベント式押出機と縦樋脱蔵器を結合する装置に係る縦樋脱蔵器を用いて、ポリカーボネート溶液を更に濃縮できる。このことは、下流の工程段階であるベント式押出機による工程に対しても有利である。なぜならば、ベント式押出機内の流入口において、ポリカーボネート溶液の残留溶媒含有量はそれに応じてより低くできるので、その結果、ベント式押出機をより穏やかな熱的条件下で稼働させることができるからである。このことは、最終的にポリカーボネート品質に恩恵をもたらす。チューブの内表面を介して、溶媒を気化させるための熱エネルギーは、ポリカーボネート溶融体内へと導入される。これは、溶媒フラクションを気化させ、二相性の気液混合物を形成させる。先行技術と対比して、ポリマー溶融体の過熱は、制御された方法により、本発明においては回避される。逃散する蒸気質の溶媒は、ポリカーボネート溶融体の表面更新と均一な混合をもたらし、このことは、それらのより効率的な濃縮をもたらす。このようにして、より高く濃縮されて冷却されたポリカーボネート溶融体は、ベント式押出機へ供給される。ポリカーボネート溶融体中の残留揮発性物質を、同程度またはより高く除去するので、押出機中でのポリカーボネート溶融体の滞留時間とエネルギー導入をより低くできる。その結果、この溶融体はそれほど熱的な影響を受けず、所望ではない副生成物の形成を際立って減少させる。縦樋脱蔵器から蒸気を分離除去することは、ベント式押出機全体の性能を更に改良する。
【0033】
好ましい実施態様において、本発明に係る装置は、少なくとも1種の有機溶媒を含有するポリカーボネート溶液(好ましくは、界面法から得られるポリカーボネート溶液)の脱蔵に適する。本明細書との関連で、「ポリカーボネート溶液」および「ポリカーボネート溶融体」は同等なものと考えられる。
【0034】
ポリカーボネート溶液は、ポリカーボネート溶液の総重量に基づき、好ましくは65〜95重量%のポリカーボネートを含有する。
【0035】
縦樋脱蔵器上流とベント式押出機中へ、共留ガスを更に導入することは、穏やかな方法で、ポリカーボネート溶融体中の残留揮発性物質の除去度合を更に改良する。具体的な揮発性物質であるジクロロメタンは、それが押出機の軸と接触する前に、この方法により、ほぼ完全に除去され、この結果、ジクロロメタンによる着色の悪影響が回避される。
【0036】
本発明による、ポリカーボネート残留脱蔵法における具体的な実施態様において、縦樋脱蔵器とベント式押出機の上述の組合せの上流に、更なる縦樋脱蔵器が先行し、第1工程段階で、55〜80重量%のポリカーボネート溶液が該縦樋脱蔵器内へ導入されて、予備濃縮される。従って、70〜95重量%、好ましくは80〜90重量%へ予備濃縮されているポリカーボネート溶液は、次いで、ベント式押出機へ直接接続されている上記の第二縦樋脱蔵器へと供給される。このようにして、いくつもの装置に亘るポリカーボネート溶液における揮発性成分の蒸発に必要な熱量の供給を分配することができるので、装置温度を選択することにより、ポリカーボネート溶融体の過熱と関連する副反応を回避できる。
【0037】
特に好ましい実施態様において、好ましくは、縦樋脱蔵器は、5〜30mm、好ましくは5〜15mmの外径と、0.5〜4m、好ましくは1〜2mの長さを有し、静的ミキサーが挿入されたまたは挿入されていない、垂直な加熱チューブを備えるシェルアンドチューブ熱交換器を有し、該チューブを介する熱交換チューブあたりの処理能力は、ポリマーに基づき、0.5〜10kg/時、好ましくは3〜7kg/時であり、分離器中の圧力は10kPa〜0.5MPa、好ましくは30kPa〜0.3MPa、より好ましくは70kPa〜0.2MPaである。チューブの加熱温度は240℃〜360℃、好ましくは250℃〜340℃、最も好ましくは260℃〜300℃である。シェルアンドチューブ熱交換器に関する材料は、ジクロロメタンによる腐食攻撃に対して耐久性を有するべきであり、また、ポリカーボネートを損傷させないものであるべきである。低鉄または鉄を含有しない材料を用いることが好ましい。好ましくは、鉄含有量が4重量%未満のニッケル系材料であり、より好ましくは、材料番号(「Key to Steel」2007,Verlag West GmbH):
2.4605(NiCr23Mo16Al)および2.4610(NiMo16Cr16Ti)で表わされる合金である。押出機内の流入口におけるポリマー濃度は、80〜99重量%、好ましくは90〜99重量%である。
【0038】
ベント式押出機は、単軸またはマルチシャフト型であってもよく、好ましくは、単軸、2軸または、4軸であり、最も好ましくは2軸である。マルチシャフト型のベント式押出機は、共-ロータリ型もしくはカウンター・ロータリー型、密接噛合型若しくは接触型であってもよく、あるいは、4本以上の軸を有する場合、密接噛合型と接触型の組合せである。特に好ましくは、密接噛合型の、コロタトリー(corotatory)2軸押出機である。
【0039】
好ましい実施態様において、例えば、1対のコロタトリースクリュー軸と、1対の相互に厳密に摩擦するスクリュー軸とを有するマルチシャフトスクリュー装置向けのスクリュー要素を使用することも可能である。なお、2以上のスクリューフライト(screw flight)Z、軸間距離Aおよび外径DEを有する場合、1要素対のフライトアングルの合計は、0よりも大きく下記式よりも小さい。このようなスクリュー要素は、例えば独国出願公開公報(Offenlegungschrift)DE102008029305.9(該出願は、本願出願日において未公開である)に記載されている。
【0040】
【数1】

【0041】
更に好ましい実施態様において、例えば、1対のコロタトリースクリュー軸と、1対の相互に厳密に摩擦するスクリュー軸とを有するスクリュー要素を用いることも可能であり、生成中および生成されたスクリュープロファイルは、シーリング領域-転移領域-チャネル領域-転移領域の順序を有し、1つのシーリング領域は、フライト領域-フランク領域-フライト領域の順序であり、1つのチャネル領域は、グルーブ領域-フランク領域-グルーブ領域の順序であり、および1つの転移領域は、フランク領域に始まりフランク領域で終わるスクリュープロファイル領域の順である。外部スクリュー半径に相当するスクリュープロファイルの領域は、フライト領域と称される。コア半径に相当するスクリュープロファイルの領域は、グルーブ領域と称される。外部スクリュー径よりも小さくコア半径よりも大きいスクリュープロファイルの領域は、フランク領域と称される。このようなスクリュー要素は、例えば、独国出願公開公報(Offenlegungschrift)DE102008029306.7(該出願は、本願出願日において未公開である)に記載されている。「フライト領域」の場合、スクリュー要素は、それらの最も大きな直径を有すると共に、壁を洗浄する。「グルーブ領域」の場合、スクリュー要素はそれらの最も小さい直径を有する。「転移領域」の場合、スクリュー要素は、それらの最大でもなく最小でもない直径を有する。
【0042】
脱蔵領域は、2または3つのフライトを用いて構成され、好ましくは2つのフライトで構成される。
【0043】
とりわけ、押出機が、運搬方向に複数の脱蔵領域を有すると共に、吸引装置がそれらの各々に取り付けられる、更に好ましい実施態様に従う場合、高程度の脱蔵を達成できる。極めて良好な結果は、その流入オリフィスを越えて、運搬方向に4または5つの脱蔵領域を有する、押出機であって、第1脱蔵領域に配置される脱蔵オリフィスにて生成される絶対圧が好ましくは50〜150kPaの範囲であり、第2脱蔵領域に配置される脱蔵オリフィスにて生成される絶対圧が好ましくは0.3〜10kPaの範囲であり、第3およびそれに続く更なる脱蔵領域に配置される脱蔵オリフィスにて生成される絶対圧が好ましくは0.1〜3kPaの範囲である。好ましくは、該圧力が各過程において減少する該押出機を用いる。好ましくは、脱蔵領域の各々は、生成した蒸気を除去する脱蔵ドームを有する。押出機における異なる脱蔵領域の間には、圧力降下が中間または後搬送要素によりもたらされる予備領域が配列される。その結果、押出機の自由横断面が完全に充填され、脱蔵領域の気層に異なる圧力が生じる。この目的のために、混練要素または後搬送スクリュー要素を用いることが好ましい。
【0044】
好ましい実施態様において、ベント式押出機における脱蔵は、脱蔵表面積を増加させる共留剤による良い影響を受けてもよい。本発明による方法において、好ましくは、共留剤は、運搬方向における最後から2番目の脱蔵領域と最後の脱蔵領域の間に添加される。使用される共留剤は、好ましくは窒素である。共留剤は混練領域中で分散される。供給される共留剤の体積流量は、好ましくは390rpmに相当するかそれ未満の軸速度にて、好ましくは0.05〜0.3質量%である。脱蔵領域の下流にて、添加剤と所望により溶融ポリマーの流れが添加され、それは、圧力上昇領域において主流と混合される。圧力上昇領域および混合領域は、1、2または3つのフライト型であってもよく、好ましくは2または3つのフライト型であり、特に好ましくは3つのフライト型である。事前脱蔵区画が2つのフライト型を有する場合、3つのフライト型は直径の減少を伴う。
【0045】
本発明に係る方法によって得ることができる熱可塑性ポリカーボネートは、ポリマー材料に基づき、2000ppm以下、好ましくは20〜1000ppm、より好ましくは50〜600ppmの揮発性物質(溶媒、特にモノクロロベンゼン)の残留物含有量を有する。残留するジクロロメタン含有量は、2ppm以下であり、好ましくは1ppm未満、特に好ましくは0.5ppm未満(ジクロロメタンがない)である。
【0046】
ポリカーボネートを調製するための、本発明による方法に適当なジフェノールは、先行技術において何度も記載されている。
【0047】
適当なジフェノールには、以下のものが含まれる:例えば、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、およびそれらのアルキル化、環アルキル化および環ハロゲン化化合物。
【0048】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0049】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0050】
ホモポリカーボネートの場合、ただ1種のジフェノールが使用され、コポリカーボネートの場合、複数のジフェノールが使用される。もちろん、使用されるジフェノール、合成に添加される助剤および他の化学薬品なども、それら自体の合成、処理および貯蔵に由来する不純物で汚染されていても良いが、極めて混じりけのない原料物質を用いることが望ましい。
【0051】
分子量の調節に必要な単官能性連鎖停止剤、例えばフェノールもしくはアルキルフェノール、特にフェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソオクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロ炭酸エステルまたはモノカルボン酸の酸塩化物またはこれらの連鎖停止剤の混合物を、ビスフェノキシド若しくはビスフェノキシド類と共に反応に供給するか、ホスゲンもしくはクロロ炭酸末端基が反応混合物中に存在する、合成中の任意の他の地点で添加するか、あるいは、連鎖停止剤としての酸塩化物およびクロロ炭酸エステルの場合、形成するポリマーにおいて十分なフェノール性末端基が存在する合成の任意の地点で添加する。しかし、好ましくは、連鎖停止剤は、ホスゲン化の後に、ホスゲンがもはや存在しないものの、触媒が未だ計量添加されている時または位置にて、添加される。あるいは、それは、触媒の前に、触媒と共にまたは平行して計量添加できる。
【0052】
同様に、分枝剤または分枝剤混合物は、合成に対して所望により添加される。しかしながら、通常、分枝剤は、連鎖停止剤の前に添加される。一般に、トリスフェノール、第4級フェノールまたはトリ−もしくはテトラカルボン酸の酸塩化物、またはこれらのポリフェノールもしくは酸塩化物の混合物が使用される。3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有すると共に分枝剤として適当な化合物の例には、以下のものが含まれる:フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)フェノール、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン。
【0053】
別の三官能性化合物の例は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0054】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0055】
ポリカーボネートの界面合成において好ましく使用される触媒には、以下のものが含まれる:第3級アミン、特にトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、N−i/n−プロピルピペリジン;第4級アンモニウム塩、例えばテトラブチルアンモニウム水酸化物、塩化物、臭化物、硫化水素若しくはテトラフルオロホウ酸塩、トリブチルベンジルアンモニウム水酸化物、塩化物、臭化物、硫化水素若しくはテトラフルオロホウ酸塩、テトラエチルアンモニウム水酸化物、塩化物、臭化物、硫化水素若しくはテトラフルオロホウ酸塩、ならびにアンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物。これらの化合物は、典型的な界面触媒として文献に記載されており、市販されており、当業者によく知られている。触媒は、単独で、混合物で、または相互に並行して連続的に、合成に添加でき、所望によりホスゲン化の前に添加できる。しかし、好ましくは、ホスゲンの導入後に計量添加される(ただし、オニウム化合物またはオニウム化合物の混合物を触媒として使用する場合を除く)。この場合、ホスゲンを計量添加する前に添加することが好ましい。触媒を物質中、不活性溶媒中、好ましくはポリカーボネート合成に係る溶媒中で計量添加でき、または水性溶液として計量添加でき、もしくはそのアンモニウム塩としての第三級アミンの場合、酸、好ましくは鉱酸、特に塩酸とともに計量添加できる。複数の触媒を使用する場合、触媒の総量の一部を計量添加する場合、もちろん様々な位置または様々な時間において異なる計量添加の方法を行うことも可能である。使用される触媒の総量は、用いられるビスフェノールのモルに対して0.001〜10mol%、好ましくは0.01〜8mol%、特に好ましくは0.05〜5mol%である。
【0056】
ポリカーボネート合成は、連続的に行ってもよく、回分式で行なってもよい。したがって、反応は、攪拌容器、管状反応炉、ポンプ循環反応炉または攪拌層カスケード、あるいはこれらの組合せで行われる。既に記載したように、混合ユニットを使用することにより、合成混合物が完全に反応している場合、すなわち、ホスゲンまたはクロロ炭酸エステルの加水分解性塩素をもはや含有しない場合にのみ、水相と有機相の分離を可能な限り確実とする。
【0057】
ホスゲン導入後、任意の分枝剤を添加する前のしばらくの間、有機相と水相を混合することが有利であり、ビスフェノキシドと共に計量添加されていない場合、連鎖停止剤と触媒が添加される。このような連続反応時間は、各計量添加の後に有利である。これらの連続攪拌時間は10秒〜60分、好ましくは30秒〜40分、より好ましくは1〜15分である。
【0058】
有機相は溶媒または複数の溶媒混合物から構成される。適当な溶媒は塩素化炭化水素(脂肪族および/または芳香族)、好ましくはジクロロメタン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンおよびクロロベンゼン、ならびにそれらの混合物である。しかし、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、m/p/o−キシレンなど、または芳香族エーテル、例えばアニソールなどを使用してもよく、それらを単独で、混合して、あるいは塩素化炭化水素に加えて使用できる。合成の別の実施態様は、ポリカーボネートを溶解しないが、それを単に膨潤させる溶媒を使用する。したがって、溶媒と併用して、ポリカーボネートに対する非溶媒を使用することも可能である。溶媒の組み合せが第二有機相を形成する場合、水相において使用される溶媒は、可溶性溶媒、例えばテトラヒドラフラン、1,3/1,4−ジオキサンまたは1,3−ジオキソランなどであってもよい。
【0059】
最大でも(<2ppm)のクロロ炭酸エステルの痕跡を含む、完全に反応した少なくとも二相性の反応混合物は、相分離を示すままである。水性のアルカリ性相を、水相としてポリカーボネート系内へ完全にまたは部分的に戻す場合もあり、あるいは、溶媒と触媒化合物を除去する廃水処理に付して再利用してもよい。後処理の他の変形例の場合、有機不純物の除去後(特に溶媒とポリマー残渣の除去後)、および、所望により、例えば水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、具体的なpHを確立した後、例えば塩素アルカリ電気分解に付すことができる塩を除去し、同時に、水相を所望により合成系へ送り返す。
【0060】
次いで、ポリカーボネートを含有する有機相を精製して、アルカリ性、イオン性または触媒性の全汚染物をそこから取り除くことができる。1以上の相分離の後であっても、有機相は、微細液滴状の水性のアルカリ性相と触媒(一般に第三級アミン)の一部を含有している。有機相が、沈殿槽、攪拌容器、コアレッサー若しくは分離器、またはそれらの組合せを通過するによって、所望により、相分離を促進できる。この場合、能動的または受動的な混合装置を用いる環境下、各分離工程またはいくつかの分離工程において、所望により水を計量添加できる。
【0061】
アルカリ性の水相に関するこの粗分離の後、希酸、鉱酸、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸および/またはスルホン酸を用いて、有機相を1回以上洗浄する。水性の鉱酸、特に塩酸、亜リン酸およびリン酸、またはこれらの酸の混合物が好ましい。これらの酸の濃度は、0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜5重量%の範囲である。
【0062】
さらに、脱塩水または蒸留水で有機相を繰り返して洗浄する。所望により水相の一部で分散させた、有機相は、沈殿槽、攪拌容器、コアレッサー若しくは分離器、またはそれらの組合せを用いる各洗浄工程の後に除去される。この場合、能動的または受動的な混合装置を用いる洗浄工程の間に、所望により洗浄水を計量添加できる。
【0063】
これらの洗浄工程の間または洗浄の後に、ポリマー溶液の基礎を形成する溶媒中に好ましく溶解する酸を、所望により添加してもよい。塩化水素ガス、およびリン酸または亜リン酸を用いることが好ましく、それらは、所望により混合物としても使用できる。
【0064】
次いで、後続の工程にいて、精製溶液は、本発明に係る縦樋脱蔵器/ベント式押出機を結合させた装置へ供給される。
【0065】
本発明による方法によって得られたポリカーボネートは、常套の添加剤(例えば、助剤および強化剤)を付与されることにより、変性させてもよい。添加剤および混合物の添加は、使用時間の延長(例えば、加水分解安定剤または分解安定剤)、色彩安定性の改良(例えば、熱安定剤および紫外線安定剤)、加工の容易性(例えば離型剤、流動助剤)、使用特性の改良(例えば帯電防止剤)、難燃性の改良、視覚的印象に影響を与え(例えば、有機着色剤、顔料)または特定の負荷に対するポリマー特性を調整する機能を果たす(衝撃改質剤、微細粉砕鉱物、繊維状物質、石英粉末、ガラス繊維および炭素繊維)。
【0066】
本発明は、実施例を示す下記の図1によって、詳細に説明される。
【0067】
ポリマー溶液は、供給ライン1を通って、下向きに開口する垂直なシェルアンドチューブ熱交換器2へと供給される。シェルアンドチューブ熱交換器は、3にて供給され4で除去される熱媒体で加熱される。チューブの末端にて、ポリマー溶液は、押出機上に直接配置された分離容器5内へ展開される。放出された気体は蒸気ライン6を介して除去される。生成物は、押出機の流入領域7内へ直接落下し、そして、シーリング領域8を介して、脱蔵ドーム10を有する第1脱蔵領域9へと供給される。これらは、続いて、予備領域8と脱蔵領域9を通過する。最後の脱蔵ドームの上流にて、窒素は、混練領域11中の添加位置12を介して添加される。添加位置13にて、圧力上昇および混合領域14においてポリマー流と混合される、添加剤および所望による溶融ポリマーを添加する。
【0068】
図2は、押出機の軸に対して平行に配置された本発明による縦樋脱蔵器の図を示す。ポリカーボネート溶液は上から、下向きに開口しその場で加熱されるシェルアンドチューブ熱交換器(縦樋脱蔵器)15内へ導入される。蒸気は、分離器16中で、濃縮したポリマー溶液から分離される。蒸気は、蒸気ライン17を介して凝縮される。濃縮したポリマー溶液の大部分は、押出軸20へ直接到達し、円錐部18におけるより少量のポリマーは、重力の作用により押出機軸へ流入する。押出機軸は、上部が開口する押出機ハウジング19中に配置される。
【0069】
実施例は、例示する目的で本発明を説明する機能を果たすが、限定して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0070】
黄色度指数YIは、厚さ4mmの射出成形サンプルを用いてASTM E313に従い決定した。射出温度は300℃であった。
【0071】
相対粘度は、25℃での純溶媒の粘度に対する、ジクロロメタン100ml中の0.5gポリカーのネート溶液の粘度の比である。
【0072】
実施例1
65重量%のポリカーボネートと、33.5重量%のクロロベンゼンと、1.5重量%の塩化メチレンから成る溶液から、本発明に係る装置を用いて、6.5t/時のポリカーボネートを単離した。使用されるベント式押出機は、密接噛合型の、コロタトリー(corotatory)2軸押出機として設計され、178mmのスクリュー径を有し、直径に対する押出機の長さの比が48であり、流入領域と脱蔵領域において2つのフライト構造が構成される。縦樋脱蔵器は、内径10mmの936本のパイプから構成され、縦樋脱蔵器の加熱温度は280℃である。共留剤領域において、13kg/時の窒素が供給された。単離したポリカーボネートは、1.295の相対粘度を有した。相対粘度は、25℃での純溶媒の粘度に対する、ジクロロメタン100ml中の0.5gポリカーのネート溶液の粘度の比である。
【0073】
単離したポリカーボネート中の残留クロロベンゼン含有量は、250ppmであり、ジクロロメタン含有量は検出下限の0.5ppm未満である。押出機のノズルでの最大温度は、394℃であった。ポリカーボネートの黄色度指数は1.57であった。
【0074】
比較例2
65重量%のポリカーボネートと、33.5重量%のクロロベンゼンと、1.5重量%の塩化メチレンから成る溶液から、押出機を用いる後脱蔵法により、6.5t/時のポリカーボネートを単離した。使用したベント式押出機は、本発明の実施例に類似し、密接噛合型の、コロタトリー(corotatory)2軸押出機として設計され、178mmのスクリュー径を有し、直径に対する押出機の長さの比が48であり、流入領域と脱蔵領域において2つのフライト構造が構成される。共留剤領域において、本発明に係る実施例と同じ、13kg/時の窒素が供給された。単離したポリカーボネートは、1.295の相対粘度を有した。後脱蔵前のポリマー溶液の温度は185℃であった。ここでは、縦樋脱蔵器を使用しなかった。
【0075】
単離したポリカーボネート中の残留クロロベンゼン含有量は、410ppmであり、ジクロロメタン含有量は0.5ppmであった。押出機のノズルでの温度は、409℃であった。ポリカーボネートの黄色度指数は2.3であった。
【符号の説明】
【0076】
1 供給ライン
2 シェルアンドチューブ熱交換器
5 分離容器
6 蒸気ライン
7 押出機の流入領域
8 シーリング領域(予備領域)
9 脱蔵領域
10 脱蔵ドーム
11 混練領域
12 添加位置
13 添加位置
14 圧力上昇および混合領域
15 シェルアンドチューブ熱交換器
16 分離器
17 蒸気ライン
18 円錐部
19 押出機ハウジング
20 押出軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒含有ポリカーボネート溶融体を脱蔵する装置であって、縦樋脱蔵器がベント式押出機と併用され、該縦樋脱蔵器が、該押出機の上方に直接配置されることを特徴とする、該装置。
【請求項2】
蒸気ラインが縦樋脱蔵器に装着されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
縦樋脱蔵器が、外部から加熱される複数のパイプを有するシェルアンドチューブ熱交換器から構成されることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
縦樋脱蔵器が、凝縮蒸気、凝縮有機熱媒体または液体有機熱媒体を用いて加熱されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
縦樋脱蔵器とベント式押出機の組合せの上流に、少なくとも1種の更なる縦樋脱蔵器が先行することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
ベント式押出機が2軸型または4軸型であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
ベント式押出機が、密接噛合型の、コロタトリー(corotatory)2軸押出機であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
押出機が、運搬方向に複数の脱蔵領域を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のポリカーボネート溶液の脱蔵方法であって、
少なくとも1種の有機溶媒と少なくとも1種のポリカーボネートを含有するポリカーボネート溶液が界面法によって調製され、第2工程において、このポリカーボネート溶液が、ベント式押出機を併用する縦樋脱蔵器へ供給され、該縦樋脱蔵器は、該ポリマー溶液が該ベント式押出機内へ直接落下するように該押出機の上に直接配置されることを特徴とする、該方法。
【請求項10】
縦樋脱蔵器中で生じた溶媒含有蒸気が、蒸気ラインを用いて、フラッシュ脱蔵器のハウジングから直接除去されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
共留剤としての不活性ガスが、縦樋脱蔵器上流のポリマー溶融体流内へ注入され混合されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
不活性ガスが、ベント式押出機の1以上のハウジングに、共留剤として注入されることを特徴とする、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
縦樋脱蔵器内におけるポリカーボネートの流入濃度が60重量%〜95重量%の間であることを特徴とする、請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
得られたポリカーボネートが、20ppm〜1000ppmの残留溶媒含有量を有することを特徴とする、請求項9から13のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528897(P2012−528897A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512254(P2012−512254)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003208
【国際公開番号】WO2010/139414
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】