説明

溶接機の給電装置

【課題】 溶接機へ溶接用の大電流が安定して供給され長期の使用に耐え得る溶接機の給電装置を提供する。
【解決手段】 先端に電極11を備えた加圧軸12にトランスから給電子を介して溶接電流が供給される溶接機において、溶接機本体1に並列して該溶接機本体に溶接用トランスを固定し、該溶接機本体に形成した給電ハウジング16に前記トランスの二次側端子を接続し、かつ給電ハウジングに前記加圧軸に向けてリング状の溝19を形成し、該溝に導電性の斜め巻きコイルスプリング19を収納し、該斜め巻きコイルスプリングを前記給電ハウジング及び加圧軸に接触させて給電子とした溶接機の給電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接機の給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、先端に電極を備えた加圧軸にトランスから溶接電流が供給される溶接機において、溶接機本体に並列して溶接用トランスを配置し、該トランスからフレキシブルケ―ブル,電極盤を介して溶接機本体の加圧軸に溶接電流が供給されるようにした溶接機の給電装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、給電ハウジングに設けた溝に導電性の斜め巻きコイルスプリングを収納し、該斜め巻きコイルスプリングを前記給電ハウジングと該給電ハウジングの中心部に配置されたピンとに接触させたペ―スメ―カ―等医療用の電気コネクタがある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002ー239748号公報。
【特許文献2】特表2007ー532255号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来例の前者の溶接機の給電装置において、溶接機本体に対して前後進する加圧軸に取り付けられた電極盤にトランスから給電することから、トランスの二次出力端子と電極盤との接続にフレキシブルケ―ブルまたはシャントは必要欠くべからざる構成要件であり、この部材を欠けば前記給電ができないことになる。ところが、フレキシブルケ―ブルまたはシャントは撓み導体であり長期の使用によって損傷し易く、加圧軸への安定した給電が期待できない、という問題がある。
【0006】
本発明は、従来の溶接技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、かつ引用文献2の医療用の電気コネクタの技術を溶接機の加圧軸への給電に改良して応用したものであり、その目的とするところは、溶接機へ溶接用の大電流が安定して供給され長期の使用に耐え得る溶接機の給電装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明における溶接機の給電装置は、溶接機本体に並列して該溶接機本体に溶接用トランスを固定し、該溶接機本体に形成した給電ハウジングに前記トランスの二次側端子を接続し、かつ給電ハウジングに加圧軸に向けてリング状の溝を形成し、該溝に導電性の斜め巻きコイルスプリングを収納し、該斜め巻きコイルスプリングを前記給電ハウジング及び加圧軸に接触させて給電子としたことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記加圧軸を片側同心軸とし、片側同心軸のインナ―加圧軸とアウタ―加圧軸にそれぞれ給電子を配置したことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記インナ―加圧軸とアウタ―加圧軸のいずれか一方をスプリングにより付勢してフロ―ティング軸としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明においては、溶接機本体に並列して該溶接機本体にトランスを固定し、該溶接機本体に形成した給電ハウジングにトランスの二次側端子を接続したので、シャントやフレキシブルケ―ブルが省略されて溶接機が長期の使用に耐え得るものでありながら、給電ハウジングに加圧軸に向けてリング状の溝を形成し、該溝に導電性の斜め巻きコイルスプリングを収納し、該斜め巻きコイルスプリングを給電ハウジング及び加圧軸に接触させて給電子としたので、大電流が加圧軸の進退に追随して安定して長期使用に亙って供給できる溶接機の給電装置となる。
【0011】
また、請求項2記載の発明においては、前記請求項1の効果に加えて片側同心軸の各加圧軸への給電が簡単で確実にできる溶接機の給電装置となる。
【0012】
また、請求項3記載の発明においては、前記請求項1,2の効果に加えて溶接位置の変化にも容易に対応できる溶接機の給電装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
先端に電極を備えた加圧軸にトランスから給電子を介して溶接電流が供給される溶接機において、溶接機本体に並列して該溶接機本体に溶接用トランスを固定し、該溶接機本体に形成した給電ハウジングに前記トランスの二次側端子を接続し、かつ給電ハウジングに前記加圧軸に向けてリング状の溝を形成し、該溝に導電性の斜め巻きコイルスプリングを収納し、該斜め巻きコイルスプリングを前記給電ハウジング及び加圧軸に接触させて給電子とした溶接機の給電装置。
【実施例1】
【0014】
図1,図2を参照してこの発明の実施例1について説明をする。
図1は本発明に係る給電装置を用いた溶接機の側面図、図2は図1のA―A断面図である。
【0015】
図において、1は溶接機本体であり、該溶接機本体1に並列された溶接用トランス2がブラケット3で溶接機本体1に固定されている。そして、溶接用トランス2としてはインバ―タトランスを例示したが、該トランスはインバ―タトランスに限らず通常周知の他のトランスであってもよい。
【0016】
前記溶接機本体の上部にはエア―シリンダ4が設けられ、該エア―シリンダ4はシリンダエンドカバ―5とシリンダヘッド6との間に形成されるシリンダ室7と該シリンダ室7内を前後進するピストン8と該シリンダ室7へエア―を供給するエア―供給口9と該シリンダ室7のエア―を排出するエア―排出口10とを備えている。
【0017】
前記ピストン8には先端に電極11を備えた加圧軸12が取付けられ、該加圧軸12はその先端側の電極11をワ―ク(図示せず)に向けて進退するものであり、前記シリンダヘッド6の下部に固定されたカバ―13に形成した樹脂ブッシュ14によって軸受けされている。
【0018】
前記シリンダヘッド6とカバ―13とは複数のボルト15,15…によって一体化され、該シリンダヘッド6とカバ―13とによって給電ハウジング16が溶接機本体1に形成されることになる。そして該給電ハウジング16は溶接用トランス2の二次出力端子17と給電バ―18によって接続固定されている。したがって、二次出力端子17と給電ハウジング16は相対的に位置の移動がないことから、給電バ―18は銅棒のような剛直な部材で構成することができる。
【0019】
19は給電ハウジング16に形成したリング状の溝であり、該溝19は加圧軸12に向けて開口し、溝19には例えば銅合金製の導電性の斜め巻きコイルスプリング20が収納され、該斜め巻きコイルスプリング20はその外周が複数の箇所で給電ハウジング16及び加圧軸12に接触して給電子となる。
【0020】
このように、斜め巻きコイルスプリング20を給電ハウジング16と加圧軸12との間に給電子として介在させることによって、溶接機本体1に固定された給電ハウジング16と溶接機本体1に対して進退する加圧軸12との間で斜め巻きコイルスプリング20は、その外周形状が加圧軸12の進退に対応して正確に追随して変形可能であり、給電ハウジング16及び加圧軸12に常時,外周の多数の箇所で正確に接触して、溶接用の大電流を安定して加圧軸12に供給でき、斜め巻きコイルスプリング20の組み付けに給電ハウジング16の加工や加圧軸12の精度に高精度を要することなく、また、斜め巻きコイルスプリング20の摩耗発生時にもコイルの傾斜加減でその影響を少なくすることができて長期使用に亙って給電でき、給電負荷も小さい溶接機の給電装置となる。
【0021】
なお、21は加圧軸12の冷却装置であり、冷却水の供給口22と排出口23を備えている。
【実施例2】
【0022】
前記実施例1の溶接機で、加圧軸を片側同心軸とし、片側同心軸のインナ―加圧軸とアウタ―加圧軸にそれぞれ給電子を配置したものである。
【0023】
先端に電極11を備えた加圧軸12はインナ―加圧軸であり、該インナ―加圧軸12には斜め巻きコイルスプリング20が給電子として配置されている。
【0024】
31はカバ―13に固定された複数の回り止めピン32に支持されたアウタ―加圧軸であり、該アウタ―加圧軸31は、その先端に電極33を備え前記インナ―加圧軸12と同心に配置されている。
【0025】
34はアウタ―加圧軸31用の給電ハウジングであり、該給電ハウジング34は溶接機本体1の前部カバ―を兼ねており、筒状絶縁カバ―35を介してカバ―13に接続されている。
【0026】
そして給電ハウジング34は溶接用トランス2の二次出力端子36と給電バ―37によって接続固定されている。したがって、二次出力端子36と給電ハウジング34も相対的に位置の移動がないことから、給電バ―37も銅棒のような剛直な部材で構成することができる。
【0027】
38は給電ハウジング34に形成したリング状の溝であり、該溝38はアウタ―加圧軸31に向けて開口し、溝38にも例えば銅合金製の導電性の斜め巻きコイルスプリング39が収納され、該斜め巻きコイルスプリング39はその外周が複数の箇所で給電ハウジング34及びアウタ―加圧軸31に接触して給電子となる。
【0028】
このように、片側同心軸のインナ―加圧軸12及びアウタ―加圧軸31へそれぞれ導電性の斜め巻きコイルスプリング20,39を給電子として当接させるようにする場合には、各加圧軸への給電も簡単で確実にできる溶接機の給電装置となる。
【実施例3】
【0029】
前記実施例2の溶接機で、インナ―加圧軸12とアウタ―加圧軸31のいずれか一方をスプリングにより付勢してフロ―ティング軸としたものである。
【0030】
アウタ―加圧軸31は、カバ―13に固定された複数の回り止めピン32に軸受40により支持されており、各回り止めピン32の外周にはスペ―サ―41とスプリング42が配置されている。そしてアウタ―加圧軸31は、スプリング42によって電極33側へ付勢され、電極33がワ―クから受ける抗力の反力によって浮上可能になっている。
【0031】
このように、インナ―加圧軸12とアウタ―加圧軸31のいずれか一方をスプリングにより付勢してフロ―ティング軸とした場合には、ワ―クの形状によりかつ溶接位置の変化に対して電極11と33に位相差が生じる時にも各電極11,33が容易に対応できる溶接機の給電装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る給電装置を用いた溶接機の側面図である。
【図2】図1のA―A断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 溶接機本体
2 溶接用トランス
12 加圧軸(インナ―加圧軸)
16,34 給電ハウジング
17,36 二次側端子
19,38 リング状の溝
20,39 斜め巻きコイルスプリング
31 アウタ―加圧軸
42 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に電極を備えた加圧軸にトランスから給電子を介して溶接電流が供給される溶接機において、溶接機本体に並列して該溶接機本体に溶接用トランスを固定し、該溶接機本体に形成した給電ハウジングに前記トランスの二次側端子を接続し、かつ給電ハウジングに前記加圧軸に向けてリング状の溝を形成し、該溝に導電性の斜め巻きコイルスプリングを収納し、該斜め巻きコイルスプリングを前記給電ハウジング及び加圧軸に接触させて給電子としたことを特徴とする溶接機の給電装置。
【請求項2】
前記加圧軸を片側同心軸とし、片側同心軸のインナ―加圧軸とアウタ―加圧軸にそれぞれ給電子を配置したことを特徴とする請求項1記載の溶接機の給電装置。
【請求項3】
前記インナ―加圧軸とアウタ―加圧軸のいずれか一方をスプリングにより付勢してフロ―ティング軸としたことを特徴とする請求項2記載の溶接機の給電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−131660(P2010−131660A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311995(P2008−311995)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000184366)OBARA株式会社 (72)
【Fターム(参考)】