説明

溶接用接合部材、溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法

【課題】薄型化した電気二重層キャパシタセル10を直列接続したキャパシタモジュール200を容易に製造することが可能な溶接用接合部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る溶接用接合部材100は、
第1側壁部101と、前記第1側壁部101と対向する第2側壁部102と、前記第1側壁部101と前記第2側壁部102とを連結する第1連結部105、第2連結部106と、前記第1側壁部101と前記第2側壁部102と前記第1連結部105と前記第2連結部106とで囲むように形成された挿通開口部107と、前記第1側壁部101から延在するピン端子部108と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のキャパシタセルを直列接続して構成されるキャパシタモジュールを製造するために用いられる溶接用接合部材と、このような溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び当該溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタにおいては、一般に円筒型などその他の形態に比べて積層型はエネルギー密度が高い。積層型の電気二重層キャパシタセルは、分極性電極をセパレータともに積層した積層体に引き出し電極を取り付け、さらに積層体に電解液を含浸させた後、ラミネートフィルムに入れられ、ラミネートの開口部から引き出し電極が引き出された状態で密封されてなる。
【0003】
非特許文献1に記載されているように、電気二重層キャパシタは耐電圧が低いために、複数のキャパシタセルを直列接続してキャパシタモジュールを構成して利用される。このように積層型のキャパシタセルを直列接続して利用する際には、充放電に伴いキャパシタセルが積層面に垂直な方向に膨張収縮するので適当な加圧機構を設ける(特許文献1)。また、特許文献2には、その図15に関連して、複数の電気二重層キャパシタセルの引出電極同士が直列接続されて構成されたキャパシタモジュールが開示されている。
【非特許文献1】岡村廸夫著「電気二重層キャパシタと蓄電システム」日刊工業新聞社発行、2005年9月30日第3版第1刷、第8頁〜第9頁、第150頁〜第157頁
【特許文献1】特開2005−93492号公報
【特許文献2】特開2008−153282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来のキャパシタモジュールにおける電気二重層キャパシタセル同士の接続について図12及び図13をより詳しく参照して説明する。図12に示すように、キャパシタモジュールは、複数の電気二重層キャパシタセル10を厚さ方向に積層して、隣り合うセルの引出電極同士(12、13)を、カシメ部材30を用い電気的及び機械的接続することによって製造している。図13は、キャパシタセルの引出電極同士を接続するために用いるカシメ部材30の展開図である。カシメ部材30は、不図示の噛み込み突起部が形成された第1挟持片31、第2挟持片32とこれらの間を連結する連結部33とを有しており、この連結部33で2つの挟持片を折り込むことによって構成されている。第1挟持片31には端子部34が延在するように設けられている。この端子部34は、不図示のファストン端子との電気接続のために設けられている。さらにこのファストン端子はキャパシタセルをモニタするための回路(並列モニタ。この並列モニタについては非特許文献1参照)と電気接続される。このモニタ回路は不図示の基板上に設けられており、物理的にはファストン端子を有するハーネスを基板上のコネクタに接続することに実現している。
【0005】
上記のようなカシメ部材30においては、セルの引出電極同士(12、13)を、その第1挟持片31及び第2挟持片32によって、挟み込むようにして、該突起部を引出電極に噛み込ませて、引出電極同士の電気的、機械的接続を実現すると共に、引出電極の電位を前記のファストン端子から取り出すようにしている。
【0006】
ところで、薄型化した電気二重層キャパシタセルによってキャパシタモジュールを製造
しようとすると、隣り合うカシメ部材30同士の間隔が短くなる。上記のようなカシメ部材30によって、引出電極同士(12、13)を締結する際には、所定の工具を用いるが、カシメ部材30同士の間隔が短くなると、この工具を配するスペースの余裕がなく、従来のカシメ部材30による引出電極接続方式を用いることで、薄型の電気二重層キャパシタセルからなるキャパシタモジュールを製造することが困難である、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、第1側壁部と、前記第1側壁部と対向する第2側壁部と、前記第1側壁部と前記第2側壁部とを連結する2つの連結部と、前記第1側壁部と前記第2側壁部と前記2つの連結部とで囲むように形成された挿通開口部と、前記第1側壁部から延在するピン端子部と、を有することを特徴とする溶接用接合部材である。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の溶接用接合部材において、前記第1側壁部と前記ピン端子部との間に段部が形成されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶接用接合部材において、材質がアルミニウムであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、引出電極同士を接続した複数個のキャパシタセルからなるキャパシタモジュールであって、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶接用接合部材を用いて、前記キャパシタセルの引出電極同士を接続したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載のキャパシタモジュールにおいて、複数個のキャパシタセルの積層方向で隣り合う溶接用接合部材のピン端子部は千鳥状とされることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に記載のキャパシタモジュールにおいて、複数個のキャパシタセルの端部に位置するキャパシタセルの引出電極は、溶接用接合部材によって、ダミー電極部と接続されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明は、請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のキャパシタモジュールにおいて、前記段部上に基板部材を載置したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶接用接合部材の前記挿通開口部に、キャパシタセルの引出電極を挿通し、前記挿通開口部近傍の端面部と前記引出電極とを溶接することによって一体化することで、複数個のキャパシタセルを接続したことを特徴とするキャパシタモジュールの製造方法である。
【0015】
また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載のキャパシタモジュールの製造方法において、YAGレーザー溶接が用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る溶接用接合部材、溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、薄型化した電気二重層キャパシタセル10を直列接続したキャパシタモジュール200を容易に製造することが可能となる。また、薄型化した電気二重層キャパシタセル10を用いることで、体積効率が向上する。
【0017】
また、本発明に係る溶接用接合部材、溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法では、溶接用接合部材100の材質は、引出電極12、13と同種の金属(アルミニウム)が用いられており、同種金属の溶接で一体化することで、接続部における電気抵抗を低くすることができると共に、電界腐食などによる劣化がなくなり、長期的使用による抵抗上昇率を低減することが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る溶接用接合部材、溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法では、溶接用接合部材100の材質は、引出電極12、13と同種の金属(アルミニウム)が用いられており、同種金属の溶接で部材同士が一体化されるので、接続部における機械強度が高まる。
【0019】
また、本発明に係る溶接用接合部材、溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、カシメ部材30と異なり、接続部の断面積が大きくなり、許容電流値を向上させることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、カシメ部材30締結用工具を用いる必要がなく、手作業による加工工数を削減でき生産性を向上することができると共に、締結用工具を用いることに伴う引出電極12、13へのストレスを削減することができ、品質が向上する。また、溶接用接合部材100と引出電極12、13との溶接には、自動溶接装置を利用することができ、これによれば、加工精度を向上することができ、高い品質のキャパシタモジュールを提供することができる。
【0021】
また、本発明に係る溶接用接合部材100には基板部材150を載置することが可能な段部が設けられており、これにより従来のようなハーネス接続工程を削減でき生産性を向上させることができる。また、キャパシタモジュール200を製造する際には、溶接用接合部材100のピン端子部108が千鳥状になるように配置することで、基板部材150上の回路配置においては、十分な絶縁距離を確保することが可能となる。また、基板部材150上の導電パターンとピン端子部108とを接続することができるので、従来のようなファストン端子が不要となり、ファストン端子取り付け時における引出電極12、13への応力をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールを構成する電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態に係る溶接用接合部材100を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る溶接用接合部材100と併用する終端端子部材120を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図7】キャパシタモジュールの端部位置の電気二重層キャパシタセル10への終端端子部材120の適用を説明する図である。
【図8】キャパシタモジュールの端部位置の電気二重層キャパシタセル10への終端端子部材120の適用を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係る溶接用接合部材100と共に用いる基板部材150の斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係る溶接用接合部材100を用いて製造されたキャパシタモジュール200を示す図である。
【図12】従来のキャパシタモジュールの製造工程を説明する図である。
【図13】従来のキャパシタモジュールの製造に用いたカシメ部材30を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールを構成する電気二重層キャパシタセル10の斜視図である。この電気二重層キャパシタセル10は積層型の電気二重層キャパシタセルである。より具体的には、キャパシタ本体については、正の電極体(正極体)と負の電極体(負極体)をこれらの間にセパレータを介在させつつ交互に重ねることにより所定の積層体に組成される。正極体および負極体は、集電極とその両面に形成される分極性電極(活性炭電極)とから平板状に構成される。これら集電極は、矩形状の金属箔(アルミニウム箔)からなり、矩形平面の一辺に片側へ寄せて帯状の導電部(リード)が一体形成される。導電部は同極同士が集束され接合され、正の引出電極12、負の引出電極13とされる。これら正の引出電極12、負の引出電極13はいずれもアルミニウム製である。
【0024】
そして、金属層を含む積層構造の樹脂フィルム(たとえば、アルミラミネート)から形成される容器部11の周縁において、正の引出電極12、負の引出電極13の一部が引き出され、一辺を除く三辺が熱溶着(ヒートシール)される。より具体的には、容器部11は正の引出電極12、負の引出電極13が突き出る一辺を開口可能とされており、そして、その開口部から内部に電解液を注入し、電解液の含浸処理などが終わると、真空ポンプにより空気や水分を除去した状態において、残りの一辺が熱溶着(ヒートシール)され、電気二重層キャパシタセル10が製作される。
【0025】
概略、以上のようにして構成される電気二重層キャパシタセル10は、耐電圧が低いために、複数個を直列接続した電気二重層キャパシタモジュールとして利用される。このとき、一の電気二重層キャパシタセル10の正の引出電極12と、他の電気二重層キャパシタセル10の負の引出電極13とを接続する必要があるが、本発明においては、溶接用接合部材100を用いることによって、この接続を簡便かつ効率よく行い得る特徴点を有するものであるので、これについて以下詳細に説明する。
【0026】
キャパシタモジュールを構成するために、電気二重層キャパシタセル10同士を接続する際には、正の引出電極12はX−X’線により切断しA−A’線で90°折り曲げ加工を施し、また、負の引出電極13はY−Y’線により切断しB−B’線で90°折り曲げ加工を施す。このとき、正の引出電極12と、負の引出電極13とは互いに逆方向に折り曲げ加工がなされ、図2に示すように引出電極は略L字状とされる。
【0027】
ここで、引出電極の折り曲げ工程では、図2(A)及び図2(B)の2パターンの電気二重層キャパシタセル10を用意しておき、セル同士を接続するに際しては、図3に示すように、図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(A)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→図2(B)のパターンの電気二重層キャパシタセル10→・・・の順序とする。電気二重層キャパシタモジュールを構成する際に接続する電気二重層キャパシタセル10の数は任意である。引出電極を接続する前段としては、接続する電気二重層キャパシタセル10をまとめて仮組する。
【0028】
図4は本発明の実施形態に係る溶接用接合部材100を示す図である。図4(A)は溶接用接合部材100の斜視図であり、図4(B)は溶接用接合部材100の上面図である。この溶接用接合部材100は、隣り合う電気二重層キャパシタセル10の引出電極同士を接続する機能を有するものであり、さらに、これら引出電極の電位を検出するための端子部としても機能するものであり、また検出された電位を基に電気二重層キャパシタセル10の状態をモニタする並列モニタ回路が設けられた基板部材を載置・固定するための台部材としても機能するものである。図4において、100は溶接用接合部材、101は第1側壁部、102は第2側壁部、103は第1端面部、104は第2端面部、105は第1連結部、106は第2連結部、107は挿通開口部、108はピン端子部、109は段部をそれぞれ示している。
【0029】
溶接用接合部材100の材質としては、引出電極12、13と同種の金属(アルミニウム)が用いられている。この溶接用接合部材100は、第1側壁部101と、第1側壁部101と対向する第2側壁部102とを基材として有している。そして、第1側壁部101の上面部である第1端面部103と、第2側壁部102の上面部である第2端面部104とは、後述するYAGレーザー溶接における照射経路となるようになっている。第1側壁部101と第2側壁部102とを連結するようにして、2つの第1連結部105及び第2連結部106が設けられている。第1連結部105及び第2連結部106は、いずれも第1端面部103及び第2端面部104とから延在するようにして設けられている。
【0030】
溶接用接合部材100においては、第1側壁部101と第2側壁部102と第1連結部105と第2連結部106とが四方を囲むようにして挿通開口部107が形成されている。この挿通開口部107は、隣り合う電気二重層キャパシタセル10の、接続しようとしている引出電極12、13を挿通するための開口である。この挿通開口部107は、引出電極12、13を挿通したときに、2つの引出電極が挿通開口部107に略内嵌する程度の開口広さとされる。
【0031】
また、溶接用接合部材100は、第1側壁部101から延在すると共に、上方へと立設するピン端子部108が設けられており、このピン端子部108が、基板部材上の電気配線パターンとの電気接続部として機能するようになっている。また、第1側壁部101とピン端子部108との間における、ピン端子部108の根もとには、段部109が形成されており、基板部材を載置・固定することができるようになっている。ピン端子部108には所定のメッキを施すなどして、基板部材上で用いられる金属との電気的な親和性を考慮するようにしてもよい。
【0032】
図5は本発明の実施形態に係る溶接用接合部材100と併用する終端端子部材120を示す図である。図5において、120は終端端子部材、121はダミー電極部、122は連結部、123は終端電極部をそれぞれ示している。終端端子部材120は、キャパシタセルモジュールを構成する複数の電気二重層キャパシタセル10の直列接続のうち、1番目のセルと、最後のセルとに用いられるものである。この終端端子部材120は、1番目のセルと、最後のセルの引出電極に用いることによって、これら直列接続端部に位置するセルにおいても、溶接用接合部材100を利用可能とすると共に、キャパシタモジュールとしての引出電極を提供するものである。
【0033】
終端端子部材120は、(1番目又は最後の)電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13との接続部として利用されるダミー電極部121と、キャパシタモジュールの引出電極として利用される終端電極部123と、ダミー電極部121と終端電極部123との間を連結する連結部122とからなる。終端端子部材120の材質としては、溶接用接合部材100、引出電極12、13と同種の金属(アルミニウム)が用いられている

【0034】
次に、以上のように構成される溶接用接合部材100による電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13の接続方法について説明する。図6は本発明の実施形態に係るキャパシタモジュールの製造方法における製造工程を説明する図であり、溶接用接合部材100によって引出電極12、13を接続する際の、溶接用接合部材100の取り付け方について図示したものである。
【0035】
溶接用接合部材100は、隣り合う電気二重層キャパシタセル10の引出電極12、13を、挿通開口部107に挿通させるようにして取り付ける。ここで、図6の図示最前の電気二重層キャパシタセル10を第1番目として、以後、第2番目の電気二重層キャパシタセル10、第3番目の電気二重層キャパシタセル10・・・というように数えるものとし、図6中に示すように、電気二重層キャパシタセル10の両側におけるR側と、L側とを定義する。
【0036】
溶接用接合部材100を引出電極に装着する上では、第1番目と第2番目の電気二重層キャパシタセル10の接続に用いられる溶接用接合部材100のピン端子部108はL側に配されるようにし、これとは逆に、第3番目と第4番目の電気二重層キャパシタセル10の接続に用いられる溶接用接合部材100のピン端子部108はR側に配されるようにする(以後、同様にする)。すなわち、同じ列(L側又はR側のいずれかの列)で隣り合う溶接用接合部材100のピン端子部108は、図6の矢印に示すような千鳥配置とする。溶接用接合部材100には、段部109を用いて基板部材を載置するが、このようにピン端子部108の位置が千鳥状となるように、溶接用接合部材100を取り付けることで、基板部材150上の回路配置においては、十分な絶縁距離を確保することが可能となる。
【0037】
図7はキャパシタモジュールの端部位置の電気二重層キャパシタセル10への終端端子部材120の適用を説明する図である。キャパシタセルモジュールを構成する複数の電気二重層キャパシタセル10の直列接続のうち、1番目のセルと、最後のセルとについては、終端端子部材120のダミー電極部121と、引出電極12(13)とを密接させて、これらダミー電極部121と引出電極12(13)とを、溶接用接合部材100の挿通開口部107に挿通させるようにして取り付ける。このような形態で終端端子部材120を用いることによって、1番目のセルと、最後のセルの引出電極についても、他の引出電極と同様に扱うことが可能となる。
【0038】
図8は、キャパシタモジュールを構成する全ての電気二重層キャパシタセル10に溶接用接合部材100を取り付けた状態を示している。先に説明したように、L側の列でセル積層方向において隣り合う溶接用接合部材100のピン端子部108は互い違いになるようにされる。同様に、R側の列でセル積層方向に隣り合う溶接用接合部材100のピン端子部108は互い違いになるようにされる。また、図8は80個の電気二重層キャパシタセル10を直列接続したキャパシタモジュールの例であるが、1番目の電気二重層キャパシタセル10と、80番目の電気二重層キャパシタセル10の2つのセルには終端端子部材120が適用され、それぞれの終端端子部材120の終端電極部123が、キャパシタモジュールとしての引出電極として機能するようになっている。
【0039】
図8に示すように、本発明においては、溶接用接合部材100を直上方から引出電極12、13に取り付けることによって、引出電極同士を接続させるが、このような溶接用接合部材100を用いた方法によれば、従来の締結工具を必要としていたカシメ部材30による方法とは異なり、薄型化した電気二重層キャパシタセル10を直列接続したキャパシタモジュール200を容易に製造することが可能となる。また、薄型化した電気二重層キ
ャパシタセル10を用いることで、モジュールの体積効率が向上する。
【0040】
また、本発明においては、カシメ部材30締結用工具を用いる必要がなく、手作業による加工工数を削減でき生産性を向上することができると共に、締結用工具を用いることに伴う引出電極12、13へのストレスを削減することができ、品質が向上する。
【0041】
次に、上記のように全ての電気二重層キャパシタセル10に溶接用接合部材100を取り付けた後に、溶接用接合部材100と、引出電極12、13とをYAGレーザー溶接によって、一体化する工程を実施する。図9は、溶接用接合部材100と、引出電極12、13とを上面から見た図であり、点線に示す軌跡が溶接に用いるYAGレーザーの照射経路を示している。このようなジグザグ状の経路によるYAGレーザー溶接によって、溶接用接合部材100と、引出電極12、13とが強固に接合される。ここで、溶接用接合部材100の材質には、引出電極12、13と同種の金属(アルミニウム)が用いられており、このような同種金属の溶接で一体化することで、接続部における電気抵抗を低くすることができると共に、電界腐食などによる劣化がなくなり、長期的使用による抵抗上昇率を低減することが可能となる。
【0042】
また、溶接用接合部材100の材質は、引出電極12、13と同種の金属(アルミニウム)が用いられているので、同種金属の溶接で部材同士が一体化されるので、接続部における機械強度が高まる。
【0043】
また、本発明の溶接用接合部材100による電極接続方法によれば、カシメ部材30による接続方法とは異なり、接続部の断面積が大きくなり、許容電流値を向上させることが可能となる。
【0044】
また、溶接用接合部材100と引出電極12、13との溶接には、YAGレーザー自動溶接装置を利用することができ、これによれば、加工精度を向上することができ、高い品質のキャパシタモジュールを提供することができるようになる。
【0045】
次に、並列モニタ回路(不図示)を設ける基板部材150を取り付けて、キャパシタモジュール200を完成させる工程について説明する。図10は本発明の溶接用接合部材100と共に用いる基板部材150を示しており、この基板部材150には図示するようなピン挿通開口部151が設けられている。
【0046】
図11に示すように、4つの基板部材150を、溶接用接合部材100の段部109を利用して、電気二重層キャパシタセル10上に載置する。また、基板部材150を段部109に載置するにあたっては、それぞれのピン端子部108がピン挿通開口部151を、貫通するようにして配する。ピン挿通開口部151から貫通したピン端子部108は、基板部材150上に設けられた不図示の導電パターンと電気的な接続が図られる。このような本発明の溶接用接合部材100を用いたキャパシタモジュール200では、従来のようなハーネス接続工程を削減でき生産性を向上させることができる。また、本発明の溶接用接合部材100を用いたキャパシタモジュール200では、基板部材150上の導電パターンと、これを貫通した溶接用接合部材100のピン端子部108とを接続することができるので、従来のようなファストン端子が不要となり、ファストン端子取り付け時における引出電極12、13への応力をなくすことができる。
【0047】
図8に示す電気二重層キャパシタセル10のピン端子部108は、セル積層方向で隣り合う溶接用接合部材100のピン端子部108が千鳥状配置となるようにされていが、これと対応するように、基板部材150から貫通するピン端子部108も図11に示すように千鳥状となる。このため、ピン端子部108を千鳥状配置としない場合と比べると、基
板部材150上の導体パターンなどの回路配置(不図示)においては、十分な絶縁距離を確保することが可能となる。
【0048】
ところで、図11においては、略20個分の電気二重層キャパシタセル10のピン端子部108に対して、1つの基板部材150を用い、キャパシタモジュール200全体で4つの基板部材150を用いるようにしているが、仮に、略80個分(全て)の電気二重層キャパシタセル10のピン端子部108に対応した基板部材を用いるとすると、電気二重層キャパシタセル10の厚みのバラツキに伴うピン端子部108の位置のバラツキに対応することが困難となる。これに対して、図11に示す実施形態のように、20個程度の電気二重層キャパシタセル10を一つの基板部材150で分担させるようにして、基板部材を分割構成することで、ピン端子部108の位置の誤差を吸収すると共に、基板部材150とピン端子部108との間で機械的なストレスを軽減することができ、品質を安定させることができる。
【0049】
以上のような本発明に係る溶接用接合部材、溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュール、及び溶接用接合部材を用いたキャパシタモジュールの製造方法によれば、薄型化した電気二重層キャパシタセル10を直列接続したキャパシタモジュール200を容易に製造することが可能となる。また、薄型化した電気二重層キャパシタセル10を用いることで、キャパシタモジュール200の体積効率が向上する。
【符号の説明】
【0050】
10・・・電気二重層キャパシタセル
11・・・容器部
12・・・(正の)引出電極
13・・・(負の)引出電極
30・・・カシメ部材
31・・・第1挟持片
32・・・第2挟持片
33・・・連結部
34・・・端子部
100・・・溶接用接合部材
101・・・第1側壁部
102・・・第2側壁部
103・・・第1端面部
104・・・第2端面部
105・・・第1連結部
106・・・第2連結部
107・・・挿通開口部
108・・・ピン端子部
109・・・段部
120・・・終端端子部材
121・・・ダミー電極部
122・・・連結部
123・・・終端電極部
150・・・基板部材
151・・・ピン挿通開口部
200・・・キャパシタモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側壁部と、前記第1側壁部と対向する第2側壁部と、
前記第1側壁部と前記第2側壁部とを連結する2つの連結部と、
前記第1側壁部と前記第2側壁部と前記2つの連結部とで囲むように形成された挿通開口部と、
前記第1側壁部から延在するピン端子部と、を有することを特徴とする溶接用接合部材。
【請求項2】
前記第1側壁部と前記ピン端子部との間に段部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の溶接用接合部材。
【請求項3】
材質がアルミニウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶接用接合部材。
【請求項4】
引出電極同士を接続した複数個のキャパシタセルからなるキャパシタモジュールであって、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶接用接合部材を用いて、前記キャパシタセルの引出電極同士を接続したことを特徴とするキャパシタモジュール。
【請求項5】
複数個のキャパシタセルの積層方向で隣り合う溶接用接合部材のピン端子部は千鳥状とされることを特徴とする請求項4に記載のキャパシタモジュール。
【請求項6】
複数個のキャパシタセルの端部に位置するキャパシタセルの引出電極は、溶接用接合部材によって、ダミー電極部と接続されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のキャパシタモジュール。
【請求項7】
前記段部上に基板部材を載置したことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載のキャパシタモジュール。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の溶接用接合部材の前記挿通開口部に、キャパシタセルの引出電極を挿通し、前記挿通開口部近傍の端面部と前記引出電極とを溶接することによって一体化することで、複数個のキャパシタセルを接続したことを特徴とするキャパシタモジュールの製造方法。
【請求項9】
YAGレーザー溶接が用いられることを特徴とする請求項8に記載のキャパシタモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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