説明

溶接装置

【課題】 主回路の全体に機器外部の空気を当て冷却する溶接装置において、堆積または付着した粉塵や溶接ヒューム等のメンテナンスや電源内部の部品交換を筐体内部での作業は作業性が悪い。また、補修やメンテナンスに時間を費やすという課題を有していた。
【解決手段】 電源部を構成する電気素子を機能ごとに複数の電源ユニットに分け、少なくとも1つの電源ユニットを筐体外に取り出すためのガイドレールと、ガイドレール取り付け方向の延長線上の筐体に開口部を備えることで、筐体を分解することなく、電源部を筐体外へ出すことを簡単に行うことができ、電源部の補修やメンテナンス作業を筐体の外部で行うことが可能となることから、機器の補修やメンテナンス性が飛躍的に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば溶接電極と溶接対象物との間に電力を供給する溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用機器の稼働率は非常に高くなっている。このような状況下で溶接装置のメンテナンスの容易性が重要視されている。
【0003】
従来の溶接装置として、冷却ファンを設けて冷却を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図4は従来の溶接装置の概略構成図である。
【0004】
図4において、溶接装置は、筐体101と、空気吸排口102と、ファン103と、ヒートシンク104と、主半導体105を備えている。なお、実際にはアーク溶接を行うための種々の構成物、配線等が必要であるが、本発明の説明には直接関係しないので説明を省略する。またアーク溶接を行わせるための回路構成についても同様の理由により説明を省略する。
【0005】
上記した従来のアーク溶接装置では高熱を発する主半導体105(例えば、パワートランジスタ等のスイッチング素子)を冷却する際に、ヒートシンク104を重点的に冷却して主回路全体に風を当てることで冷却を行っており、溶接装置内部の全体に機器外部の空気を排出または吸入させて冷却する構造であった。
【0006】
具体的には、図4で示すように、主半導体105にヒートシンク104を接触して一体化したものに、ファン103を動作させて外から吸入した空気を当て、空気吸排口102から熱せられた空気を排出することで溶接装置内の排熱を行っていた。
【特許文献1】特開平8−214549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の溶接装置は、主回路の全体に機器外部の空気を当てて冷却を行うため、溶接装置内部に粉塵や溶接ヒューム等が堆積あるいは付着する。従って、堆積あるいは付着した粉塵や溶接ヒューム等を定期的にエアブローする必要や、溶接装置内部の部品交換が必要な場合、アーク溶接装置筐体101の内部で作業を行わなければならず、作業性が悪いという課題を有していた。そして、補修やメンテナンスに時間を費やすという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明の溶接装置は、筐体と、溶接電極と溶接対象物との間に電力を供給するための電源部とを備えた溶接装置であって、前記電源部を、内部に空気を流通可能なトンネル形状の空洞部材と前記空洞部材の表面に設けられた前記電源部を構成する電気素子とからなる複数の電源ユニットに分け、前記筐体内において前記複数の電源ユニットを溶接装置の高さ方向に配置したものである。
【0009】
また、本願発明の溶接装置は、少なくとも1つの電源ユニットを筐体外に出すためのスライド機構を備えたものである。
【0010】
また、本願発明の溶接装置は、複数の電源ユニットとして、二次平滑回路を構成する電気素子を含む第1の電源ユニットと、一次平滑回路および二次側スイッチ回路を構成する電気素子を含む第2の電源ユニットと、インバータ回路を構成する電気素子を含む第3の電源ユニットを備え、溶接装置の底面側から、前記第1の電源ユニット、前記第2の電源ユニット、前記第3の電源ユニットの順で前記溶接装置の高さ方向に配置したものである。
【0011】
また、本願発明の溶接装置は、各空洞部材の開口部の少なくとも一方側に、前記空洞部材内に風を流す冷却ファンを設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本願発明によれば、全体あるいは部分的に電源部を筐体外へ出すことが可能となり、電源部の補修やメンテナンス作業等を筐体外で行うことも可能となることから、機器の補修やメンテナンス性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図3を用いて説明する。
(実施の形態1)
先ず、本実施の形態における溶接装置の回路構成を示すブロック図である図1を用いて、本実施の形態における溶接装置の回路構成の概略について説明する。
【0014】
溶接装置は、一次平滑ユニット12にて商用電源21から供給される電力を整流および平滑し、その後直流化する。直流化された電力は、一次インバータユニット13によってインバータ制御が行われ、所望の高周波電圧や高周波電流として出力される。さらに、主トランス14によって一次側から二次側へ昇圧され、二次平滑ユニット15により再び直流化され、正負の電圧をそれぞれ出力し、溶接電極であるワイヤ18と溶接対象物である母材19との間でアーク放電させてアーク溶接を行う。
【0015】
なお、二次側回路中にある直流リアクタ16は高周波成分をカットするものであり、また、二次スイッチングユニット17は、出力電圧や出力電流の制御を行うためのものであり、アーク溶接の品質を良化する働きをする。また、制御回路10は、アーク溶接の品質を安定させるために一次インバータユニット13や二次スイッチングユニット17の出力電圧や出力電流の制御を行うものである。
【0016】
本実施の形態では、図1に示す構成部材等を機能ごとに分け、複数の電源ユニットとする。そして、これら複数の電源ユニットを組み合わせることで電源部を構成するものである。
【0017】
次に、図2と図3を用いて、本実施の形態における溶接装置の各電源ユニットについて説明する。なお、図2(a)は溶接装置の概略構成を示す側面図であり、図2(b)は溶接装置の概略構成を示す正面図である。また、図3は溶接装置の概略構成を示す斜視図である。
【0018】
図2および図3において、第1の電源ユニット3は、二次平滑ユニット15と、主トランス14を含むものである。また、第2の電源ユニット4は、一次平滑ユニット12と、二次スイッチングユニット17と、ガイドレール7を含むものである。また、第3の電源ユニット5は、一次インバータユニット13を含むものである。第1の電源ユニット3と、第2の電源ユニット4と、第3の電源ユニット5は、それぞれ独立した構造となっている。そして、接続線等を用いて各ユニットを電気的に接続することで、電源部としての機能を実現可能としている。
【0019】
なお、各電源ユニットは、両端に開口部を有しており四角形の筒状のトンネル形状をした空洞部材の表面に、直接または間接的に上記した平滑ユニットや電気素子等を取り付けて構成されている。
【0020】
次に、図2と図3を用いて、筐体1内の各電源ユニットの位置関係について説明する。第1の電源ユニット3は、筐体1の底面部に取り付けられている。第2の電源ユニット4は、第1の電源ユニット3の上方に取り付けられている。第3の電源ユニット5は、第2の電源ユニット4の上方にガイドレール7を介して取り付けられている。なお、ガイドレール7は筐体1に設ける構成としてもよい。
【0021】
このように、電源部を複数の電源ユニットに分割し、分割した各電源ユニットを溶接装置の高さ方向に配置する構成とすることで、溶接装置の設置面積を少なくすることができる。
【0022】
次に、図3を用いて、第3の電源ユニット5を筐体1の外に取り出す方法について説明する。
【0023】
上記のように、第3の電源ユニット5はガイドレール7を介して筐体1内に取り付けられている。また、筐体1には、第3の電源ユニット5を取り出すためにガイドレール7の延長線上に開口部2が設けられている。なお、この開口部2は主にメンテナンス用とし、通常使用時は板金等で塞がれるものである。
【0024】
第3の電源ユニット5を筐体1から取り外す場合は、先ず、開口部2を塞いでいる板金等を取り外す。そして、ガイドレール7に沿って第3の電源ユニット5を筐体1の外へスライドさせることで筐体1に設けた開口部2を通して第3の電源ユニット5を筐体1の外へ取り出す。
【0025】
以上のように電源部を構成する電気素子等を機能ごとに複数の電源ユニットに分け、少なくとも1つの電源ユニットを筐体1の外に取り出すためのガイドレール7と筐体1に設けた開口部2を備える構成とすることで、筐体1を分解することなく、筐体1と電源部の分離が可能となり、電源部を筐体1の外へ出すことを極めて簡単に行うことができる。そして、電源部の補修やメンテナンス作業が筐体1の外で行うことが可能となることから、溶接装置の補修やメンテナンス性が飛躍的に向上する。
【0026】
なお、上記では第3の電源ユニット5のみを筐体1の外へ取り出す例を示したが、これに限るものではなく、第1の電源ユニット3や第2の電源ユニット4を筐体1の外へ取り出すためのガイドレールと開口部を設ける構成としてもよい。この場合は、電源部全体を筐体1の外に取り出すことも可能とり、また、必要に応じて個々の電源ユニットを筐体1の外に取り出すことも可能となる。
【0027】
また、各電源ユニットにおいて、空洞部材の少なく一方の開口部側に冷却ファンを設けるようにしても良い。このように、電源部を複数の電源ユニットに分け、各電源ユニットを各電源ユニットに設けられた冷却ファンにより冷却する構成とすることで、電源部の冷却効率を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の溶接装置によれば、電源部を筐体外へ容易に取り出すことができ、補修やメンテナンスが必要な溶接装置等として産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における溶接装置の回路構成の概略を示すブロック図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における溶接装置の概略構成を示す側面図、(b)本発明の実施の形態1における溶接装置の概略構成を示す正面図
【図3】本発明の実施の形態1における溶接装置の概略構成を示す斜視図
【図4】従来の溶接装置の概略更生を示す図
【符号の説明】
【0030】
1 筐体
2 開口部
3 第1の電源ユニット
4 第2の電源ユニット
5 第3の電源ユニット
7 ガイドレール
10 制御ユニット
12 一次平滑ユニット
13 一次インバータユニット
14 主トランス
15 二次平滑ユニット
16 直流リアクタ
17 二次スイッチングユニット
18 ワイヤ
19 母材
21 商用電源
101 筐体
102 空気吸排口
103 ファン
104 ヒートシンク
105 主半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、溶接電極と溶接対象物との間に電力を供給するための電源部とを備えた溶接装置であって、
前記電源部を、内部に空気を流通可能なトンネル形状の空洞部材と前記空洞部材の表面に設けられた前記電源部を構成する電気素子とからなる複数の電源ユニットに分け、
前記筐体内において前記複数の電源ユニットを溶接装置の高さ方向に配置した溶接装置。
【請求項2】
少なくとも1つの電源ユニットを筐体外に出すためのスライド機構を備えた請求項1記載の溶接装置。
【請求項3】
複数の電源ユニットとして、
二次平滑回路を構成する電気素子を含む第1の電源ユニットと、
一次平滑回路および二次側スイッチ回路を構成する電気素子を含む第2の電源ユニットと、
インバータ回路を構成する電気素子を含む第3の電源ユニットとを備え、
溶接装置の底面側から、前記第1の電源ユニット、前記第2の電源ユニット、前記第3の電源ユニットの順で前記溶接装置の高さ方向に配置した請求項1または2記載の溶接装置。
【請求項4】
各空洞部材の開口部の少なくとも一方側に、前記空洞部材内に風を流す冷却ファンを設けた請求項1から3のいずれか1項に記載の溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−236851(P2008−236851A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70190(P2007−70190)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】