説明

溶液中のウレトジオン形成

【課題】オリゴマー化における選択性の増大を達成するための、モノイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートをホスフィン触媒でオリゴマー化してウレトジオンを形成することにおける有機カーボネートおよび/または有機ニトリルの使用を提供すること。
【解決手段】ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法であって、
A) ホスフィンおよび
B) 有機カーボネートおよび/または有機ニトリル
を含んでなる触媒系の存在下、ポリイソシアネートをオリゴマー化することを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機カーボネートまたはニトリルの存在下、ホスフィン触媒イソシアネートオリゴマー化によって、高いウレトジオン基含量を有するポリイソシアネートを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレトジオン基を有する脂肪族イソシアネートは、とりわけ、ポリウレタン被覆物を製造するための価値ある原料である。必要に応じて分岐した、直鎖状の脂肪族ジイソシアネートに基づく生成物は、特に低い粘度を有する。脂環族ジイソシアネートに基づく生成物は、一般に、高い粘性〜固体の物質である。これは、被覆系において、排出生成物を含まない、内部でブロックされた架橋剤として使用することができる。要旨は、J. Prakt. Chem./Chem. Ztg. 1994, 336, 185-200(非特許文献1)中に提供される。
【0003】
トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン(独国特許出願公開DE-A 3 030 513(特許文献1))は、適当であれば助触媒と組み合わせて(独国特許出願公開DE-A 3 437 635(特許文献2))、ウレトジオン基の形成について良好な選択性(ウレトジオン選択性)を示す。しかしながら、それらのリンオキシド(例えば、ヘキサメチルホスホラミド)の高い発癌可能性の深刻な問題が、それらの工業的使用に関して存在する。
【0004】
独国特許出願公開DE-A 3 739 549(特許文献3)は、ウレトジオンの形成は特定の脂環族イソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の場合にのみ選択的に進行するが、4-ジアルキルアミノピリジン、例えば、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を使用する触媒的NCO二量体化を開示する。直鎖状の脂肪族イソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ならびに分岐した、直鎖状の脂肪族イソシアネート、例えば、トリメチルヘキサンジイソシアネート(TMDI)およびメチルペンタンジイソシアネート(MPDI)は、DMAPおよび関連化合物を使用する場合、主として強く着色した、不均一の反応生成物を与える。
【0005】
独国特許出願公開DE-A 1 670 720(特許文献4)は、触媒として使用される、少なくとも一つの脂肪族置換基を有する第三級ホスフィン、ならびに三フッ化ホウ素およびその付加生成物を用いる、ウレトジオン基を有する脂肪族ポリイソシアネートの製造を開示する。その製造においては、ウレトジオン選択性は温度依存性であり、通常、適当量の、粘度を上昇させるイソシアネート三量体(イソシアヌレートおよびイミノオキサジアジンジオン)と、特に>80℃の温度にて、他の望ましくない副産物、例えばカルボジイミドまたはウレトンイミンが形成される。
【0006】
ウレトジオン選択性を高め、副産物の形成を減少させる一つの方法は、特定の、大量の、P結合シクロアルキル基を有するホスフィンを使用することである(欧州特許出願公開EP-A 1 422 223(特許文献5))。
所定のホスフィン触媒についてのウレトジオン選択性は、添加剤または溶媒の添加によって改善することができるということは、特開平11-228524(特許文献6)中で試験されている。この文献によれば、7cal1/2cm−3/2より大きいヒルデブラント溶解性パラメーターを有する非芳香族溶媒は、ホスフィン触媒の存在下、ウレトジオン基が豊富なポリイソシアネートを製造するために適当である。しかしながら、本特許出願の実施例に見られるように、このことは、必ずしも信頼できることではない(クロロホルム;ヒルデブラントパラメーター9.3cal1/2cm−3/2を、N-メチルピロリドン、NMP;ヒルデブラントパラメーター11.3cal1/2cm−3/2と比べて参照のこと)。したがって、当業者は、特開平11-228524(特許文献6)から、ウレトジオン選択性を高め、副産物の形成を減少させるのにいずれの溶媒が確実に適当であるか、または適当でないかについて、いかなる一般的な教示も導き出すことはできない。
【0007】
さらに、数多くの刊行物は、一般論として、ウレトジオン選択性の改善および副産物の形成の低減を導く個々の化合物を挙げることなく、および/または化合物を具体的に示すことなく、溶媒の存在下でのイソシアネートオリゴマー化の実施を開示する。
【特許文献1】独国特許出願公開DE-A 3 030 513
【特許文献2】独国特許出願公開DE-A 3 437 635
【特許文献3】独国特許出願公開DE-A 3 739 549
【特許文献4】独国特許出願公開DE-A 1 670 720
【特許文献5】欧州特許出願公開EP-A 1 422 223
【特許文献6】特開平11-228524
【非特許文献1】J. Prakt. Chem./Chem. Ztg. 1994, 336, 185-200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オリゴマー化における選択性の増大を達成するための、モノイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートをホスフィン触媒でオリゴマー化してウレトジオンを形成することにおける有機カーボネートおよび/または有機ニトリルの使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
今日、触媒系としてホスフィンと有機カーボネートおよび/または有機ニトリルの併用がウレトジオンの形成の選択性に特に有利な効果を奏することを見出した。
したがって、本発明は、オリゴマー化における選択性の増大を達成するための、モノイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートをホスフィン触媒でオリゴマー化してウレトジオンを形成することにおける有機カーボネートおよび/または有機ニトリルの使用を提供する。
さらに、本発明は、ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法であって、ホスフィンおよび有機カーボネートおよび/または有機ニトリルを含んでなる触媒系の存在下、ポリイソシアネートをオリゴマー化することを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施例を含む、本明細書の全ての項において使用されるように、他に特定して示さない限り、全ての数値は、用語「約」が表示されていない場合であっても、用語「約」が前に付いているものと解釈することができる。また、本明細書で言及される如何なる数値範囲も、それに包含された全ての部分範囲も含むことを意図する。
【0011】
ポリイソシアネートとして、当業者に自体既知の、好適には≧2のNCO官能価を有する、全ての脂肪族、脂環族および/または芳香脂肪族ポリイソシアネートを使用することができる。これらがホスゲンを用いて、またはホスゲンを含まない方法によって製造されたものであるかどうかは、重要ではない。所望の場合、少量のモノイソシアネートも併用することができるが、好適ではない。
【0012】
好適には、脂肪族および/または脂環族ポリイソシアネートを、個々にまたは互いの任意の混合物で使用することが挙げられる。
適当なポリイソシアネートの例は、異性体ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネートおよびドデカンジイソシアネートならびにイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート、XDI)およびビス(2-イソシアナトプロパ-2-イル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート、TMXDI)である。
特に好適には、ポリイソシアネートとして、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネート(TMDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)およびノルボルナンジイソシアネート(NBDI)を、個々にまたは互いの任意の混合物で使用することが挙げられる。
【0013】
もちろん、上記ポリイソシアネートに基づく高分子量のNCO官能性反応生成物であって、イソシアヌレート、ウレトジオン、イミノオキサジアジントリオン、ウレタン、アロファネートおよび/またはビウレット構造を含有するものも、本発明の方法におけるポリイソシアネートとして使用することができる。
【0014】
ホスフィンとしては、置換基としてアルキルおよび/またはアリール基(これらも置換されていてもよい)を有する第三級ホスフィンを使用することが挙げられる。
好適な第三級ホスフィンの例は、3個のアルキル置換基を有するもの、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、シクロペンチル-ジメチルホスフィン、ペンチルジメチルホスフィン、シクロペンチルジエチルホスフィン、ペンチルジエチルホスフィン、シクロペンチル-ジプロピルホスフィン、ペンチルジプロピルホスフィン、シクロペンチルジブチルホスフィン、ペンチルジブチルホスフィン、シクロペンチルジヘキシルホスフィン、ペンチルジヘキシルホスフィン、ジシクロペンチルエチルホスフィン、ジペンチルメチルホスフィン、ジシクロペンチルエチル-ホスフィン、ジペンチルエチルホスフィン、ジシクロペンチルプロピルホスフィン、ジペンチルプロピルホスフィン、ジシクロペンチルブチルホスフィン、ジペンチルブチルホスフィン、ジシクロペンチルペンチルホスフィン、ジシクロペンチルヘキシルホスフィン、ジペンチルヘキシル-ホスフィン、ジシクロペンチルオクチルホスフィン、ジペンチルオクチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、シクロヘキシルジメチルホスフィン、ヘキシルジメチルホスフィン、シクロヘキシルジエチルホスフィン、ヘキシルジエチルホスフィン、シクロヘキシルジプロピルホスフィン、ヘキシルジプロピルホスフィン、シクロヘキシルジブチルホスフィン、ヘキシルジブチルホスフィン、シクロヘキシルジヘキシルホスフィン、シクロヘキシルジオクチルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジシクロヘキシルエチルホスフィン、ジヘキシルエチルホスフィン、ジシクロヘキシルプロピルホスフィン、ジヘキシルプロピルホスフィン、ジシクロヘキシルブチルホスフィン、ジヘキシルブチルホスフィン、ジシクロヘキシルヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルオクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ノルボルニルジメチルホスフィン、ノルボルニルジエチルホスフィン、ノルボルニルジ-n-プロピルホスフィン、ノルボルニルジイソプロピルホスフィン、ノルボルニルジブチルホスフィン ノルボルニルジヘキシルホスフィン、ノルボルニルジオクチルホスフィン、ジノルボルニルメチルホスフィン、ジノルボルニルエチルホスフィン、ジノルボルニル-n-プロピルホスフィン、ジノルボルニルイソプロピルホスフィン、ジノルボルニルブチルホスフィン、ジノルボルニルヘキシルホスフィン、ジノルボルニルオクチルホスフィン、トリノルボルニルホスフィン、ジメチル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジエチル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジ-n-プロピル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジイソプロピル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジブチル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジヘキシル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジオクチル(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、メチルビス(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、エチルビス(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、プロピルビス(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ブチルビス(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ヘキシルビス(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、オクチルビス(1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イル)ホスフィン、ジメチル(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ジエチル2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ジプロピル(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ジブチル(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ジヘキシル(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ジオクチル(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、メチルビス(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、エチルビス(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、プロピルビス(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ブチルビス(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィン、ヘキシルビス(2,6,6-トリメチルビシクロ3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィンおよびオクチルビス(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-3-イル)ホスフィンである。
これらは、ウレトジオン形成用触媒として、個々に、互いの任意の混合物で、または他の第一級、第二級および/または第三級アルキルホスフィン、アラルキルホスフィンおよび/またはアリールホスフィンとの混合物で使用することができる。
【0015】
本発明の方法において使用されるべき触媒の量は、何よりもまず、所望の反応速度に依存し、そして使用されるイソシアネートおよび触媒のモル量の合計に基づいて0.01〜5モル%である。好適には、0.05〜3モル%の触媒を使用することが挙げられる。
【0016】
B)に使用される有機カーボネートは、一般式(I)
O-C(O)-OR (I)
〔式中、RおよびRは、互いに独立して、同一または異なって、直鎖状または分枝状であるか、または環系の一部を形成し、そしてヘテロ原子を含有し得る、C〜C20基である。〕
に対応する。
【0017】
このようなカーボネートの例は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、ジオクチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジトリルカーボネート、ブチルフェニルカーボネート、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(ブチレンカーボネート)、4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン(トリメチレンカーボネート)、5-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン(ネオペンチレンカーボネート)、4-メトキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エトキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フェノキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-アセトキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、エリスリトールビス(カーボネート)および2,5-ジオキサヘキサノエートである。
【0018】
使用される有機カーボネートは、好適には環構造を有するもの、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(ブチレンカーボネート)または炭酸グリセロール(ここで、環外-CHOH基のO結合水素は、NCO非反応性置換基、例えば、必要に応じて置換されたアルキル、アシル、アリールまたはアラルキル基によって置換されている。)である。
【0019】
本発明によれば、B)に使用される有機ニトリルは、一般式(I)
R-CN (I)
〔式中、Rは、必要に応じて(特にさらなるニトリル基によって)置換された、必要に応じてヘテロ原子を含有する、直鎖状、分枝状または環状のC〜C20基である。〕
に対応する。
【0020】
このようなニトリルの例は、アセトニトリルおよび置換誘導体、例えば、ジフェニルアセトニトリルまたはフルオロフェニルアセトニトリル(または異性体)、アクリロニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリル、ヘプタンニトリル、オクタンニトリル、マロノ(ジ)ニトリル、グルタロニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル、全ての異性体トリス(シアノ)ヘキサン、ベンゾニトリル、ベンジルシアニド、ベンゾジニトリル(全ての異性体)、ベンゾトリニトリル(全ての異性体)、シアノ酢酸エステル(例えば、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルなど)、N,N-ジ置換シアノアセトアミド(例えば、N,N-ジメチル-2-シアノアセトアミド)またはO-置換シアノヒドリン(例えば、3-メトキシプロピオニトリル)である。
好適なニトリルは、アセトニトリル、アジポニトリル、スクシノニトリルおよび1,3,5-トリス(シアノ)ヘキサンである。
【0021】
本発明に使用されるべき成分B)の量は、広範囲に変化させることができる。そして、それはウレトジオンポリイソシアネートの空間/時間収率を低減させるので、できるだけ少ない量を使用することが工業的に有利である。
しかしながら、ニトリルの場合、反応の顕著な促進がしばしば起こるので、これらの添加剤を使用する場合の上記空間/時間収率が低減する欠点は、過剰にさえ補うことができる。
好適には、オリゴマー化されるイソシアネートの量に基づいて、2〜50重量%、好適には5〜30重量%の添加剤または成分B)を使用することが挙げられる。
【0022】
本発明の方法は、選択された圧力および成分B)の化合物の沸点に依存して、0℃〜150℃、好適には0℃〜80℃、特に好適には0℃〜60℃、殊更好適には0℃〜40℃の温度範囲で行われる。
本発明の方法は、NCO基の変換率が5〜90モル%、好適には10〜60モル%、殊更好適には10〜50モル%になるように行われる。
【0023】
反応は、典型的に、所望の変換率に到達した後で停止される。停止は、原理上、適当であれば高温にて、触媒と反応する、以前に記載された全ての触媒毒(独国特許出願公開DE-A 1670667、1670720、1934763、1954093、3437635、米国特許US 4614785)、例えば、アルキル化剤(例えば、硫酸ジメチル、メチルトルエンスルホネート)、有機または無機ペルオキシド、酸クロリドおよび硫黄によって行うことができる(方法A)。
方法Aにしたがって反応混合物の不活性化をした後、未反応モノマー、不活性化触媒および/または併用される成分B)の添加剤は、分離除去することができる。
【0024】
しかしながら、本方法は、触媒の化学的不活性化をすることなく行うこともできる。この場合、活性触媒は、所望の変換率に到達した後、さらなる反応を避けるために、反応混合物から分離除去される(方法B)。
同時にまたは触媒の除去後、未反応残留モノマーおよび/または添加剤は、方法Bにしたがって処理された反応混合物から分離することができる。
【0025】
本発明の方法において、全ての既知の分離技術、例えば、蒸留、抽出または結晶化/ろ過を、未反応モノマー、触媒および/または併用された添加剤ならびに必要に応じて他の構成成分を反応混合物から分離除去するために使用することができる。
好適には、蒸留、適当であれば薄膜蒸留の特定の実施態様が挙げられる。もちろん、二以上のこれらの技術の組合せも用いることができる。
【0026】
方法Bにしたがって反応を停止するため、触媒は、好適には、同時に任意の未反応モノマーおよび/または併用されたカーボネートおよび/またはニトリルを除去しながら、蒸留によって除去される。
【0027】
特に好適には、方法AまたはBによって停止した反応の結果物から、存在する残留モノマーおよび/または併用された添加剤を、蒸留によって除去することが挙げられる。
【0028】
本発明にしたがって製造されたポリイソシアネートが、例えば、(例えば、粉末被覆剤分野のための)NCOブロックト生成物または低NCO含有若しくはNCO非含有ポリウレトジオン硬化剤を製造するためのさらなる加工に関して興味がもたれるように、遊離の未反応モノマーをなお含有すべきである場合、モノマーの除去および/または併用されたカーボネートおよび/またはニトリルの除去は、反応を停止した後(方法AおよびB)、省略することができる。
【0029】
本発明の方法の実施において、該方法を、完全にまたは部分的にバッチ式でまたは連続的に行うかどうかは重要でない。
【0030】
さらに、ポリイソシアネート化学における通例の添加剤および安定化剤は、本発明の方法において任意の時点で添加することができる。その例としては、抗酸化剤(例えば、立体障害フェノール(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール))、光安定化剤(例えば、HALSアミン、トリアゾールなど)、弱酸またはNCO-OH反応用触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTL))が挙げられる。
【0031】
また、再溶解安定性を高めるため、副産物の形成傾向を抑制するため、変色を抑制するため、または、例えば生成物の保存中、遊離NCO基が互いにさらに反応するのを抑制するため、方法Aに使用されるべきタイプの触媒毒を、方法Bによる反応結果物に少量添加することも有用であり得る。
【0032】
シクロアルキル置換基を有しない、必要に応じて分岐した、直鎖状の脂肪族のジイソシアネートまたはポリイソシアネートに基づく、本発明の方法によって製造された生成物は、色が明るく、<1000mPas/23℃の粘度を有する。脂環族および/または芳香脂肪族のジイソシアネートまたはポリイソシアネートを使用する場合、高い粘性〜固体の樹脂が得られる(粘度>10000mPas/23℃)。
【0033】
低モノマー形態において、すなわち、未反応モノマーを分離除去した後、本発明の生成物は、<27重量%、好適には<25重量%のNCO含量を有する。
【0034】
本発明の方法によって製造されたポリイソシアネートは、例えば、(必要に応じて発泡した)成形体、ラッカーおよびワニス、被覆組成物、接着剤または添加剤の製造のための出発材料として役に立つ。ここで、ウレトジオン基に変換されなかった、存在する遊離NCO基は、所望によりブロックすることができる。
【0035】
当業者に既知の全ての方法は、ウレトジオン基に変換されなかった遊離NCO基をブロックするのに適当である。使用することができるブロック剤は、特に、フェノール(例えば、フェノール、ノニルフェノール、クレゾール)、オキシム(例えば、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(例えば、ε-カプロラクタム)、第二級アミン(例えば、ジイソプロピルアミン)、ピラゾール(例えば、ジメチルピラゾール)、イミダゾール、トリアゾールまたはマロン酸エステルおよび酢酸エステルである。
【0036】
本発明の方法によって製造された、主として副産物を含まない、ウレトジオン基を有するポリイソシアネートは、特に、必要に応じて先行技術の他のジイソシアネートまたはポリイソシアネート(例えば、ビウレット、ウレタン、アロファネート、イソシアヌレート、および/またはイミノオキサジアジンジオン基を含有するジイソシアネートまたはポリイソシアネート)との混合物の状態である、一および二成分のポリウレタン被覆剤を製造するために使用することができる。また、それらは、より高い粘性のポリイソシアネート樹脂の粘度を低減するために使用することもできる。
【0037】
本発明にしたがって製造されたポリイソシアネートをポリウレタンに変換するため、少なくとも二つのイソシアネート反応性官能基を有する全ての化合物を、個々にまたは互いの任意の混合物で使用することができる(イソシアネート反応性結合剤)。
【0038】
好適には、ポリウレタン化学において自体既知である一以上のイソシアネート反応性結合剤、例えば、ポリヒドロキシ化合物またはポリアミンを使用することが挙げられる。ポリヒドロキシ化合物としては、特に好適には、必要に応じて低分子量の多価アルコールを添加した、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオールおよび/またはポリカルボン酸ポリオールを使用することが挙げられる。
【0039】
ウレトジオン基に変換されなかった、そして適当であればブロックされている、イソシアネート基と、イソシアネート反応性結合剤のイソシアネート反応性官能基(例えば、OH、NHまたはCOOH)との等量比は、0.8〜3、好適には0.8〜2である。
【0040】
適当であれば高温でおよび/または触媒を添加してウレトジオン環を開裂させることにより、さらなる自由になったNCO基が導かれ、そして、これらは、過剰のイソシアネート反応性官能基と反応することができるので、過剰のイソシアネート反応性結合剤を使用することができる。結果として、形成されたポリマーの網目密度は高められ、その特性は有利なように影響を受ける。
【0041】
本発明にしたがって製造されたポリイソシアネートのイソシアネート反応性結合剤による架橋反応を促進するため、ポリウレタン化学から既知の全ての触媒を使用することができる。例えば、金属塩、例えば、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、スズ(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)、ビスマス(III)トリス(2-エチルヘキサノエート)、亜鉛(II)ビス(2-エチルヘキサノエート)または塩化亜鉛、ならびに第三級アミン、例えば、1,4-ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン、トリエチルアミンまたはベンジルジメチルアミンを使用することができる。
【0042】
ポリウレタンを処方するため、本発明にしたがって製造された、必要に応じてブロックされた、ポリイソシアネート、イソシアネート反応性結合剤、触媒、および適当であれば、通例の添加剤、例えば、顔料、充填剤、添加剤、レベリング剤、消泡剤および/または艶消剤を、適当であれば溶媒を使用して、通例の混合装置(例えば、サンドミル)中で、一緒に混合し、均質化する。
【0043】
適当な溶媒は、自体既知の全ての通例の表面被覆溶媒、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル、エチレンまたはプロピレングリコールモノメチル、モノエチルまたはモノプロピルエーテルアセテート、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、溶媒ナフサ、N-メチルピロリドンなどである。
【0044】
被覆組成物は、溶液として、または溶融物から、または適当であれば固体形態(粉末被覆剤)で、通例の方法、例えば、塗装、ローリング、鋳込み、噴霧、浸し塗り、流動床焼結法によって、または静電噴霧法によって、被覆される物品に塗布することができる。
適当な基材は、全ての既知の材料、特に、金属、木材、プラスチックおよびセラミックである。
【実施例】
【0045】
変換率または樹脂収率に関して与えられたパーセンテージは、他に示さない限り、得られた生成物(ポリイソシアネート樹脂)の量を、使用したイソシアネートモノマーの量で割り、そして100を掛けることによって算出される。全ての他のパーセンテージは、他に示さない限り、重量%である。
実施例および比較例に記載された生成物のNCO含量の決定は、DIN 53 185にしたがって滴定によって行った。
【0046】
動的粘度は、VT 550粘度計(Haake、カールスルーエ、独国)を使用して23℃で決定した。本発明にしたがって製造されたポリイソシアネートの流動挙動ならびに比較生成物の流動挙動がニュートン液体の流動挙動に対応したことは、異なる剪断速度による測定によって確かめた。したがって、剪断速度の報告は、省略することができる。
「モル%」および「互い異なる構造タイプのモル比」について報告した値は、NMR分光計測によって決定した。それらは、通常、他に示さない限り、変性されるイソシアネートの予め遊離したNCO基からの変性反応(オリゴマー化)によって形成された構造タイプの合計を基準にした。
【0047】
NMR計測は、DPX 400、AVC 400およびDRX 700機器(Bruker、カールスルーエ、独国)を用いて、乾燥CDCl中約50%の濃度を有する試料またはD-DMSO中約80%の濃度を有する試料を使用して(13C-NMR:100または176MHz、緩和時間:4秒、少なくとも2000スキャン)および/または乾燥C中約1/2%の濃度を有する試料を使用して(H-NMR:400または700MHz、16スキャン)行った。ppmスケールのための参照として、各々の溶媒中の少量のテトラメチルシラン(δ=0ppm)または溶媒自身(CDCl:δ=77.0ppm-13C-NMR;D-DMSO:δ=43.5ppm-13C-NMRまたはC:7.15ppm-H-NMR)を用いた。
【0048】
他に示さない限り、反応は、出発材料として新たに脱気したHDIを使用して行った。表現「新たに脱気した」は、この場合、使用されたHDIは、触媒反応の直前に、減圧下(<1mbar)、少なくとも30分間の攪拌によって溶解していた気体を取り除かれ、次いで窒素によって覆われていたことを意味する。
全ての反応は、乾燥窒素雰囲気下に行った。
実施例および比較例に記載した薬品および触媒は、ABCR社、Aldrich社、Bayer社、Cytec社およびFluka社から入手し、さらに精製することなく使用した。
【0049】
実施例1(添加剤を含まない比較例)
10gの新たに脱気したHDIを、セプタムによって閉じられたガラス容器中、マグネチック攪拌バーを使用して、1モル%のトリブチルホスフィン(TBP)(使用したHDI基準)の存在下、窒素下30℃にて、一定の間隔で反応混合物の屈折率(20℃でのナトリウムスペクトルのD線の光の振動数、n20)(開始時=変換なし=純粋なHDIのn20=1.4523)を測定することによって反応の進行をチェックしながら、および試料のHDI含量を内部標準法によりガスクロマトグラフィーで決定(DIN 55 956に基づく決定)しながら、攪拌した。樹脂収率(%)を、100%から、見出された遊離HDIの量を引くことによって算出する。この実験を5回繰り返し、そして得られたデータを検量線を作成するのに使用した(図1参照)。
【0050】
実施例2(添加剤を含まない比較例)
トリブチルホスフィン(TBP)の代わりに同量(モル%)のジシクロペンチルブチルホスフィン(DCPBP)を用いて、実施例1の手順を繰り返した。
図1から見られるように、反応混合物中のウレトジオン-ポリイソシアネート樹脂の収率の広い範囲に渡って、パラメーター変換率(樹脂収率)と、反応混合物のn20との間は、ほぼ直線関係であった。この関係は、顕著に異なる選択性であるにも関わらず、二つの触媒に関して非常に似ている(以下参照)。
【0051】
TBP触媒実験について、等式1:
20=0.0495*収率[%]+1.4500 (等式1)
を記載することができ、
DCPBP触媒実験について、等式2:
20=0.0477*収率[%]+1.4504 (等式2)
を記載することができる。
【0052】
選択性を決定するため、十分に異なる屈折率を有する反応混合物の選択した試料を、さらなる反応を抑制するため、存在するホスフィンの二倍モル量に対応するモル量の硫黄元素と共に混合し、そしてNMR分光法によって調べた。より明確にするために、パラメーターU/Tを、各々の変換率での選択性の評価のため、二つの三量体構造(イソシアヌレートおよびイミノオキサジアジンジオン)の合計に対するウレトジオン構造のモル比として定義した。二つのパラメーターを、グラフ中に互いに対してプロットした(図2)。見られるように、変換率への選択性パラメーターU/Tの依存性は、良好な近似式に対して直線となり、等式3:
U/T=a*収率[%]+b (等式3)
〔式中、aおよびbは、TBP 触媒反応の場合、以下の値を有する:
a=−2.4273;b=3.0702
一方、DCPBPによる触媒反応において、以下の値になる:
a=−6.1222;b=6.4761〕
によって記載することができる。
【0053】
実施例3〜7(本発明)ならびに実施例1および8〜10(比較)
10gのHDI、0.12gのTBPおよび2.5gのカーボネートまたは添加剤(実施例2〜6および8〜10)または2gのカーボネート(実施例7)を、いずれの場合も、セプタムによって閉じられたガラス容器中、マグネチック攪拌バーを使用して、窒素下30℃にて、一定の間隔で反応混合物の屈折率(n20)を測定することによって反応の進行をチェックしながら攪拌した。各々の反応バッチの均質化直後に屈折率を決定し、最初のn20として定義した。この値と純粋なHDI(1.4523)のn20との間の差を、各々の実験において測定したさらなる全ての屈折率から差し引き、そして各々の変換率を、得られた、等式1によって校正したn20値から決定した。
異なる変換率での反応混合物の構造組成(U/T)を、実施例1および2に記載したのと同様の手順によって決定した。
反応の選択性に対する種々の添加剤の効果を、個々の試料について測定した変換率の関数として、容易に比較できる方法で提供するために、U/T変換曲線を活用して、一律の20%変換率(樹脂収率)についてU/T値を算出した(表1参照)。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例11〜15(本発明)ならびに実施例2および16〜18(比較)
10gのHDI、0.14gのDCPBPおよび2.5gのカーボネートまたは添加剤(実施例11〜14および16〜18)または2gのカーボネート(実施例15)をいずれの場合も実施例3〜10の手順と同様に処理した。その結果を表2にまとめる。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例19および20(本発明)
カーボネート濃度に対する選択性の依存性
まず、表3に示すエチレンカーボネート量を、いずれの場合も、10gのHDIと、透明な溶液が得られるまで混合した。次いで、0.14gのDCPBPを添加し、そして混合物を、セプタムで閉じたガラス容器中、マグネチック攪拌バーを使用して、窒素下30℃にて攪拌した。さらなる手順を、上記実施例3〜18の手順と同様に行った。その結果を表3に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
見られるように、ウレトジオン選択性の増大は、反応混合物中のカーボネートの割合が高まるにつれて観察された。さらに、選択性は、反応混合物中、エチレンカーボネートを5%のみ用いた場合でさえも、カーボネートを使用しない場合よりも良好である。
【0060】
要約すると、ウレトジオン選択性の改善を導く添加剤の信頼できる選択は、特開平11-228524によって教示されるように、ヒルデブラントパラメーターに基づく可能性はないことが分かった。さらに、該日本の公開明細書が特に言及していない有機カーボネートが、ホスフィン触媒NCOオリゴマー化において、ウレトジオンに対する選択性を高めるのに用いることができることが明らかである。
【0061】
実施例21〜25(溶媒なし、比較実験)および実施例26〜32(プロピレンカーボネートを使用、本発明)
4200gのHDIを、攪拌機、不活性ガス吸入口(窒素/真空)に連結された還流冷却器および温度計を備えた二重壁フランジ容器中に置き、外部巡回路によって30℃に維持し、そして脱気した。窒素吸入後、45.2gのDCPBPを導入し、混合物を30℃にて表4に記載した時間攪拌した。混合物(n20)の屈折率は、結果として、1.4611まで上昇した。次いで、反応混合物を、ホスフィンを予め不活性化することなく仕上げた。結果物を、先行するプレエバポレーター(PE)を有する薄膜エバポレーター(ショートパスエバポレータータイプ(SPE))中で真空蒸留し(蒸留データ:圧力:0.08mbar、PE温度:140℃、ME温度:150℃、蒸留時間:5〜6時間)、蒸留物として活性触媒と一緒に未反応モノマーを分離除去し、そして底部の生成物としてウレトジオン基含有ポリイソシアネート樹脂を分離除去した(最初のサイクル、実施例21)。活性触媒含有蒸留物を、第一の装置と同様に構成された第二の攪拌フランジ装置中に回収し、蒸留の終了直後、回収した蒸留物を新たに脱気したHDIを用いて最初の量(4200g)にした。次いで、これを30℃にて表4に示した時間再度攪拌し、反応混合物の屈折率の測定後、上記のように蒸留によって仕上げた(実施例22)。この手順を、別に3回繰り返した(実験25まで)。
次いで、先の実験からの蒸留物をもう一度最初の量(4200g)にした後、混合物の屈折率を決定し、反応混合物中19%に対応する1000gのプロピレンカーボネートを添加し、そして均質化直後、混合物の屈折率を再度測定した。次いで、混合物を上記のように処理した。二つの測定した屈折率の間の差を使用して校正されたn20を決定した。以下の実験において、上記手順を用いた。
【0062】
実験31において、蒸留後、新鮮なHDIを添加せずに、その代わりに、少量のプロピレンカーボネートのみを、反応器をすすぐために使用した。その結果、混合物中のプロピレンカーボネートの割合は増加した。概して、プロピレンカーボネートは、樹脂中に検出されなかった(GC、検出限界約0.03%)。その結果、プロピレンカーボネートの欠損は発生しなかったと推測された。この推測を、蒸留直後に測定した実質的に同一の屈折率によって確認し、そして新鮮なHDIを用いて反応器中の先のレベルにした。実験32において、さらなるプロピレンカーボネートを添加することによって、プロピレンカーボネートの割合をさらに高めた。この実験において得られた蒸留物は、約70%のプロピレンカーボネートを含有しており、数ヶ月間透明な液体のままであった。これを仕上げて触媒を回収した。
【0063】
【表4】

【0064】
見られるように、実験26〜32(本発明)において、比較実験20〜25よりも顕著に高い選択性が見出された。同程度の反応時間後、または同程度の蒸留前の粗混合物の屈折率に到達した後、ポリイソシアネートに関連した他のパラメーター(すなわち、色数、NCO含量および残留モノマー含量ならびにモノマーの保存安定性)に関して同一である、顕著に低い粘性の樹脂が得られる。
【0065】
実施例33〜38(本発明)ならびに実施例1および39〜41(比較)
10gのHDI、0.12gのTBPおよび2.5gのニトリルまたは添加剤を、いずれの場合も、セプタムによって閉じられたガラス容器中、マグネチック攪拌バーを使用して、一定の間隔で反応混合物の屈折率(n20)を測定することによって反応の進行をチェックしながら、窒素下30℃にて攪拌した。各々の反応バッチを均質化した直後、屈折率を決定し、これを初期n20として定義した。この値と純粋なHDI(1.4523)のn20との間の差を、各々の実験において測定した、さらなる全ての屈折率から差し引き、そして各々の変換率を、等式1によって校正した得られたn20値から決定した。
異なる変換率での反応混合物の構造組成(U/T)を、実施例1および2に記載したのと同様の手順によって決定した。
反応の選択性への種々の添加剤の効果を、個々の試料について測定した変換率の関数として、容易に比較できる方法で提供するために、U/T値を、U/T変換曲線を活用して、一律の20%変換率(樹脂収率)について算出した(表5参照)。
【0066】
【表5】

【0067】
実施例42〜45(本発明)ならびに実施例2および46〜48(比較)
10gのHDI、0.14gのDCPBPおよび2.5gのニトリルまたは添加剤を、実施例33〜39の手順と同様に処理した。その結果を表6にまとめる。
【0068】
【表6】

【0069】
要約すると、ウレトジオン選択性の改善を導く添加剤の信頼できる選択は、特開平11-228524によって教示されるように、ヒルデブラントパラメーターに基づく可能性はないことが分かった。さらに、該日本の公開明細書が特に言及していないニトリルが、ホスフィン触媒NCOオリゴマー化において、ウレトジオンに対する選択性を高めるのに用いることができることが明らかである。
【0070】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。
【0071】
以下、本発明の好適な実施態様を示す。
〔1〕ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法であって、
A) ホスフィンおよび
B) 有機カーボネートおよび/または有機ニトリル
を含んでなる触媒系の存在下、ポリイソシアネートをオリゴマー化することを含む、方法。
〔2〕A)において、第三級ホスフィンを、イソシアネートの合計量に基づいて、0.05〜3モル%の量で使用することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔3〕B)において、環構造を有するカーボネートを使用することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔4〕B)において、1,3-ジオキソラン-2-オン(エチレンカーボネート)、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(プロピレンカーボネート)、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(ブチレンカーボネート)または炭酸グリセロール(その環外CH-OH基のOH基は、NCO非反応性のアルキル、アシル、アリールまたはアラルキル基によってキャップされている)を使用することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔5〕B)において、一般式(I)
R-CN (I)
〔式中、Rは、20個までの炭素原子を有し、必要に応じてヘテロ原子を含有する、直鎖状、分枝状または環状の基である。〕
で示される有機ニトリルを使用することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔6〕B)において、アセトニトリル、アジポニトリル、スクシノニトリルおよび/または1,3,5-トリス(シアノ)ヘキサンを使用することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔7〕成分B)を、オリゴマー化するイソシアネートの量に基づいて、5〜30重量%の量で使用することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔8〕イソシアネートオリゴマー化の後に蒸留によって、未反応イソシアネートおよび有機カーボネートまたはニトリルを除去することを特徴とする、上記〔1〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔9〕蒸留によって、有機カーボネートおよび/またはニトリルおよび未反応イソシアネートと一緒に、触媒を分離除去することを特徴とする、上記〔8〕に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
〔10〕上記〔1〕に記載の方法によって得られたポリイソシアネート混合物。
〔11〕上記〔10〕に記載のポリイソシアネート混合物を使用して得られたポリウレタンポリマーまたは被覆物。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、実施例1および2における、変換率(樹脂収率)と、反応混合物のn20との間の関係を示す。
【図2】図2は、実施例1および2における、変換率(樹脂収率)と、選択性パラメーターU/Tとの間の関係を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法であって、
A) ホスフィンおよび
B) 有機カーボネートおよび/または有機ニトリル
を含んでなる触媒系の存在下、ポリイソシアネートをオリゴマー化することを含む、方法。
【請求項2】
B)において、環構造を有するカーボネートを使用することを特徴とする、請求項1に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項3】
B)において、一般式(I)
R-CN (I)
〔式中、Rは、20個までの炭素原子を有し、必要に応じてヘテロ原子を含有する、直鎖状、分枝状または環状の基である。〕
で示される有機ニトリルを使用することを特徴とする、請求項1に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項4】
B)において、アセトニトリル、アジポニトリル、スクシノニトリルおよび/または1,3,5-トリス(シアノ)ヘキサンを使用することを特徴とする、請求項1に記載のウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法によって得られたポリイソシアネート混合物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリイソシアネート混合物を使用して得られたポリウレタンポリマーまたは被覆物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−199965(P2006−199965A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10985(P2006−10985)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】