説明

溶液供給器具および溶液供給方法

【課題】容易にかつ効率的に対象物に光を照射しながら溶液を供給できる溶液供給器具および溶液供給方法を提供する。
【解決手段】コア21とコア21を囲繞するとともに複数の空孔22が形成されたクラッド23とを有する第1光ファイバ2と、空孔22が接続可能に構成されるとともに空孔22へ溶液12を供給可能な溶液流路3が形成された基部4と、コア51およびコア51を囲繞するクラッド52を有し第1光ファイバ2の一端部2aと溶液流路3を介して端面どうしが対向するとともに第1光ファイバ2と同一軸線上に配設された第2光ファイバ5と、を備える。第2光ファイバ5を伝播した光Lが、溶液流路3を通過して第1光ファイバ2へ伝播可能に構成されるとともに、空孔22に空孔22の軸方向一端部から溶液12が供給され、空孔22の軸方向他端部から吐出された溶液12が神経細胞(対象物)11へ供給可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に光を照射しながら溶液を供給する溶液供給器具、および、対象物に光を照射しながら溶液を供給する溶液供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞は、電気信号や化学信号を介して細胞内あるいは細胞間の情報伝達を行っている。この神経細胞の機能を調べる際には、化学物質を投与したときの膜電位やイオン濃度の変化等の神経細胞の応答を、神経細胞内に導入された膜電位感受性色素やイオン指示薬の蛍光強度変化として光学的計測を行う方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
神経細胞活動を励起するための化学物質の投与は、神経細胞の周囲の溶液を化学物質が添加された溶液に交換したり、神経細胞近傍に化学物質が添加された溶液を滴下したりして行われている。また、神経細胞の光学的計測は、レンズや光ファイバを介して励起光を神経細胞に照射し、その蛍光像を取得して行われている。このとき、レンズは、広範囲にわたって励起光を照射するのに適しており、光ファイバは、局所的に励起光を照射することに適している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ブラッドリー・J.ベーカー他(Bradley.J.Baker, et al.)著, 「イメージング・ブレイン・アクティビティ・ウィズ・ボルテージ・アンド・カルシウム・センシティブ・ダイズ(Imaging Brain Activity With Voltage− and Calcium−Sensitive Dyes)」, セルラー・アンド・モレキュラー・ニューロバイオロジーVol.25,No.2(Cellular and Molecular Neurobiology,Vol.25,No.2),2005年,p245−282.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、神経細胞(対象物)に化学物質が添加された溶液を供給するとともに、神経細胞に光を照射するには、神経細胞に溶液を供給するための器具と、神経細胞に光を照射する器具を扱う必要があり、準備や作業が煩雑である。このため、容易にかつ効率的に神経細胞に光を照射しながら溶液を供給できる溶液供給器具および溶液供給方法が望まれている。
【0006】
本発明は、容易にかつ効率的に対象物に光を照射しながら溶液を供給できる溶液供給器具および溶液供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る溶液供給器具は、軸方向へ延在するコアと該コアを囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッドとを有する第1光ファイバと、前記空孔の軸方向一端部が接続可能に構成されるとともに前記空孔へ溶液を供給可能な溶液流路が形成された基部と、軸方向へ延在するコアおよび該コアを囲繞するクラッドを有し前記第1光ファイバの一端部と前記溶液流路を介して端面どうしが対向するとともに前記第1光ファイバと同一軸線上に配設された第2光ファイバと、を備え、前記第2光ファイバを伝播した光が、前記溶液流路を通過して前記第1光ファイバへ伝播可能に構成されるとともに、前記空孔に、該空孔の軸方向一端部から前記溶液が供給され、前記空孔の軸方向他端部から吐出された前記溶液が対象物へ供給可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、溶液流路に溶液を供給し第1光ファイバの空孔に溶液を供給するとともに第2光ファイバに光を入射させて第2光ファイバを伝播した光を第1光ファイバに伝播させることによって、対象物に光を照射しながら溶液を供給することができる。
そして、第1光ファイバを操作することによって、対象物への溶液の供給および光の照射を行うことができるため、容易にかつ効率的に作業を行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る溶液供給器具では、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの端面どうしの軸方向の間隔は、2μm以上50μm以下であることが好ましい。
このように構成されることにより、溶液流路から第1光ファイバへの溶液の供給と、第2光ファイバから第1光ファイバへの光の伝播を効率よく行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る溶液供給器具では、前記基部に、前記溶液流路に対して前記第1光ファイバおよび前記第2光ファイバを所定の位置に支持可能な支持部が形成されていることが好ましい。
このように構成されることにより、第1光ファイバおよび第2光ファイバを溶液流路に対して適切な位置に容易に設置することができる。
【0011】
また、本発明に係る溶液供給方法では、対象物へ溶液を供給する溶液供給方法であって、上記に記載の溶液供給器具を用い、前記第2光ファイバを伝播した光を前記第1光ファイバに光を伝播させるとともに、前記溶液流路に前記溶液を供給することで前記対象物へ前記溶液を供給することを特徴とする。
本発明では、容易にかつ効率的に対象物に光を照射しながら溶液を供給することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、溶液流路に溶液を供給し第1光ファイバの空孔に溶液を供給するとともに第2光ファイバに光を入射させて第2光ファイバを伝播した光を第1光ファイバに伝播させることによって、対象物に光を照射しながら溶液を供給することができる。
そして、同一の第1光ファイバを操作することによって、対象物への溶液の供給および光の照射を行うことができるため、容易にかつ効率的に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の実施形態による光センサヘッド(薬液供給器具)の一例を示す図、(b)は第1光ファイバを示す図、(c)は第2光ファイバを示す図である。
【図2】(a)は下部シリコン層の上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】第1光ファイバおよび第2光ファイバが設置された下部シリコン層の斜視図である。
【図4】第1光ファイバおよび第2光ファイバが設置された下部シリコン層および樹脂層の斜視図である。
【図5】(a)は上部シリコン層の上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による光センサヘッド(溶液供給器具)について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1(a)に示す本実施形態による光センサヘッド1は、神経細胞(対象物)11に光Lを照射しながらその神経細胞11に化学物質が添加された溶液12を供給するために使用されている。
【0015】
光センサヘッド1は、図1(b)に示すような軸方向へ延在するコア21とコア21を囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔22が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッド23とを有する第1光ファイバ2と、図1(a)に戻り空孔22の軸方向一端部が接続可能に構成されるとともに空孔22へ溶液12を供給可能な溶液流路3が形成された基部4と、図1(c)に示すような軸方向へ延在するコア51およびコア51を囲繞するクラッド52を有し第1光ファイバ2の一端部2aと溶液流路3を介して端面どうしが対向するとともに第1光ファイバ2と同一軸線上に配設された第2光ファイバ5と、を備えている。
【0016】
図1(a)および(b)に示すように、第1光ファイバ2は、ホーリーファイバと呼ばれる公知の光ファイバの一種で、クラッド23に複数の空孔22が形成されていることにより、曲げ損失特性や機械的特性に優れている。本実施形態では、クラッド23に4つの空孔22が形成されている。
そして、第1光ファイバ2は、一端部2aが基部4に支持されるとともに、溶液流路3に接続されている。そして、第1光ファイバ2は、溶液流路3と接続された一端部2a側から空孔22(図1(b)参照)へ溶液12が流入可能に構成されているとともに、空孔22を通過した溶液12が第1光ファイバ2の他端部2b側から吐出可能に構成されている。そして、第1光ファイバ2の他端部2bが、神経細胞11の近傍に設置されることにより、第1光ファイバ2の他端部2bから吐出された溶液12を神経細胞11へ供給可能に構成されている。
【0017】
図1(a)および(c)に示すように、第2光ファイバ5は、第1光ファイバ2と異なり、コア21を囲繞するクラッド23に空孔22(図1(b)参照)が形成されていない。
そして、図1(a)に示すように、第2光ファイバ5は、第1光ファイバ2と対向する一端部5aが基部4に支持されているとともに、溶液流路3に接続されている。
【0018】
これらの第1光ファイバ2および第2光ファイバ5は、それぞれ一方の端部から入射された光Lが他方の端部へ伝播するように構成されている。
そして、他端部5bから第2光ファイバ5へ光Lが入射されると、その光Lは、第2光ファイバ5を伝播するとともに第2光ファイバ5の一端部5aから放たれ、溶液流路3を通過して第1光ファイバ2の一端部2aに入射するように構成されている。このとき、溶液流路3を通過する光Lは、溶液流路3を流通する溶液12を通過するように構成されている。
これにより、第1光ファイバ2へ入射された光Lが第1光ファイバ2を伝播して他端部2bから光を放つことになる。そして、第1光ファイバ2は、その他端部2bが神経細胞11の近傍に配されているため、神経細胞11に光Lを照射することができる。
【0019】
基部4は、下側から上側へ順に配列された下部シリコン層41、樹脂層42、および、上部シリコン層43を備える3層構造に形成されている。また、基部4は、その外形が略直方体状に形成されている。
【0020】
溶液流路3は、図1(a)、図2および図3に示すように、下部シリコン層41に形成された水平方向に所定の長さに延びて上方に開口した溝部41aと、図1および図3に示すように、樹脂層42に形成され下部シリコン層41の溝部41aの長さ方向の両端部41b,41cと重なる位置でそれぞれ上下方向に貫通する貫通孔42a,42bと、図1(a)および図5に示すように、上部シリコン層43に形成され樹脂層42の貫通孔42a,42b(図1(a)参照)と重なる位置でそれぞれ上下方向に貫通する貫通孔43a,43bと、から構成されている。
【0021】
ここで、本実施形態では、溶液流路3の溝部41aの長さ方向に直交する方向に延在するように、第1光ファイバ2および第2光ファイバ5が設置されている。また、溶液流路3の溝部41aは、長さ方向に直交する方向の寸法d(図2(a)参照)が2μm以上50μm以下に形成されている。
そして、第1光ファイバ2と第2光ファイバ5とは、溶液流路3を介して対向しており、第1光ファイバ2と第2光ファイバ5との端面どうしの軸方向の間隔が上述した寸法dと同じく2μm以上50μm以下となっている。
【0022】
また、本実施形態では、上部シリコン層43の一方の貫通孔43aに溶液注入用チューブ44aが接続され、他方の貫通孔43bに溶液排出用チューブ44bが接続されている。溶液排出用チューブ44bは閉塞可能に構成されている。
【0023】
そして、溶液注入用チューブ44aへ溶液12を注入すると、溶液12は、上部シリコン層43に形成された一方の貫通孔43aおよび樹脂層42に形成された一方の貫通孔42aを通過して、下部シリコン層41に形成された溝部41aへ溝部41aの長さ方向の一方の端部41bから流入する。
そして、さらに溶液12を注入し続けると、溶液12は、溝部41aの他方の端部41cから樹脂層42の他方の貫通孔42bおよび上部シリコン層43の他方の貫通孔43bを通過して溶液排出用チューブ44bを介して基部4の外方へ流出するように構成されている。
なお、溶液排出用チューブ44bが閉塞されているときは、溶液排出用チューブ44bで溶液12が止まるように構成されている。
そして、下部シリコン層41の溝部41aは、第1光ファイバ2の空孔22と連通し、溝部41aから第1光ファイバ2の空孔22へ溶液12が流入可能に構成されている。
【0024】
また、基部4には、第1光ファイバ2の一端部2aを溶液流路3に対して所定の位置に支持する第1支持部(支持部)45と、第2光ファイバ5の一端部5a側を溶液流路3に対して所定の位置し支持する第2支持部(支持部)46とが形成されている。
【0025】
図4に示すように、第1支持部45は、下部シリコン層41に上方に開口するように形成されるとともに下部シリコン層41の溝部41aと接続された第1下側溝部45aと、樹脂層42に下方に開口するように形成され第1下側溝部45aの上側に重なる第1上側溝部45bとを備えている。
また、第1下側溝部45aおよび第1上側溝部45bの内周面は、それぞれ半円弧面状に形成され、第1下側溝部45aおよび第1上側溝部45bで、円筒状の空部を形成している。そして、この円筒状の空部は、第1光ファイバ2の一端部2a側が嵌合可能で、第1光ファイバ2の一端部2aを支持可能に構成されている。
【0026】
また、第2支持部46は、下部シリコン層41に上方に開口するように形成されるとともに下部シリコン層41の溝部41aと接続された第2下側溝部46aと、樹脂層42に下方に開口するように形成され第2下側溝部46aの上側に重なる第2上側溝部46bとを備えている。
また、第2下側溝部46aおよび第2上側溝部46bの内周面は、それぞれ半円弧面状に形成され、第2下側溝部46aおよび第2上側溝部46bで、円筒状の空部を形成している。そして、この円筒状の空部は、第2光ファイバ5の一端部5a側が嵌合可能で、第2光ファイバ5の一端部5aを支持可能に構成されている。
【0027】
また、樹脂層42には、第1上側溝部45bと第2上側溝部46bとを接続可能な内周面が半円弧面状の接続溝部47が形成されている。
この接続溝部47は、下部シリコン層41の溝部41aの第1光ファイバ2および第2光ファイバ5が接続されている箇所の上部に位置している。そして、樹脂層42に接続溝部47が形成されていることにより、第1光ファイバ2の一端部2a側の端面と、第2光ファイバ5の一端部5a側の端面が樹脂層42に覆われない構成となっている。
これにより、第1光ファイバ2の全ての空孔22へ溶液12が流入可能となるとともに、第2光ファイバ5から第1光ファイバ2への光Lの伝播を確実なものとすることができる。
【0028】
次に、上述した光センサヘッド1の製作方法について説明する。
まず、基部4を構成する下部シリコン層41、樹脂層42、上部シリコン層43に、それぞれ溶液流路3となる溝部41aおよび貫通孔42a,42b,43a,43bを形成する。また、下部シリコン層41、樹脂層42に、第1支持部45となる第1下側溝部45a,第1上側溝部45bと、第2支持部46となる第2下側溝部46a,第2上側溝部46bと、第1上側溝部45bと第2上側溝部46bとを接続溝部47とを形成する。
【0029】
続いて、図3に示すように、下部シリコン層41を設置し、下部シリコン層41の第1下側溝部45aに第1光ファイバ2の下側を嵌合させ、第2下側溝部46aに第2光ファイバ5の下側を嵌合させる。
このとき、第1光ファイバ2の一端部2a側の端面と第2光ファイバ5の一端部5a側の端面とを下部シリコン層41の溝部41aを介して対向させる。
【0030】
続いて、図4に示すように、下部シリコン層41の上に樹脂層42を重ねて設置する。そして、第1光ファイバ2の上側に第1上側溝部45bを嵌合させ、第2光ファイバ5の上側に第2上側溝部46bを嵌合させる。
このとき、下部シリコン層41の溝部41aの両端部41b,41cの上部に、樹脂層42の貫通孔42a,42bを位置させて、溝部41aと貫通孔42a,42bとを連通させる。
【0031】
続いて、図1(a)に示すように、樹脂層42の上に上部シリコン層43を重ねて設置する。
このとき、樹脂層42の貫通孔42a,42bの上部に上部シリコン層43の貫通孔43a,43bを位置させて、樹脂層42の貫通孔42a,42bと上部シリコン層43の貫通孔43a,43bを連通させる。これにより、基部4が完成し、溶液流路3が形成される。
【0032】
続いて、上部シリコン層43の一方の貫通孔43aに溶液注入用チューブ44aを設置するとともに、上部シリコン層43の他方の貫通孔43bに溶液排出用チューブ44bを設置する。
このようにして光センサヘッド1が完成する。
【0033】
次に、上述した光センサヘッド1を用いて神経細胞11へ溶液12を供給する溶液供給方法について説明する。
まず、溶液注入用チューブ44aに溶液12を供給し、溶液流路3に溶液12を流通させる。このとき、溶液排出用チューブ44bを封止しておく。
溶液流路3にさらに溶液12を供給して、溶液流路3内の溶液12に圧力をかけ、溶液流路3から第1光ファイバ2の一端部2a側から空孔22へ溶液12を流入させる。
そして、空孔22内の溶液12を第1光ファイバ2の他端部2b側から吐出させ、神経細胞11へ溶液12を供給する。
【0034】
このとき、神経細胞11へ溶液12を供給するとともに、第2光ファイバ5の他端部5b側から第2光ファイバ5のコア51へ光Lを入射させる。
これにより、第2光ファイバ5のコア51へ入射した光Lは、コア51を伝播し、第2光ファイバ5の一端部5a側から放たれる。そして、第2光ファイバ5のコア51から放たれた光Lは、溶液流路3の溶液12を通過して、対向する第1光ファイバ2のコア21に入射する。そして、第1光ファイバ2のコア21へ入射した光Lは、コア21を伝播し、第1光ファイバ2の他端部2b側から放たれて神経細胞11を照射する。
【0035】
次に、上述した光センサヘッド1の作用効果について図面を用いて説明する。
本実施形態による光センサヘッド1によれば、第1光ファイバ2から神経細胞11へ溶液12を供給するときに、第2光ファイバ5へ光Lを入射すると、第2光ファイバ5を伝播した光Lが第1光ファイバ2へ伝達し、その光Lが第1光ファイバ2を伝播して、神経細胞11を照射することができるため、容易に神経細胞11に光Lを照射しながら溶液12を供給することができる。
【0036】
また、第1光ファイバ2は、第1支持部45に支持され、第2光ファイバ5は、第2支持部46に支持されるため、第1光ファイバ2および第2光ファイバ5を溶液流路3に対して所定の位置に容易に設置することができる。
このため、第1光ファイバ2や第2光ファイバ5に対して特別な加工技術が不要であるという利点がある。そして、第1光ファイバ2および第2光ファイバ5の端面形成は、市販のファイバクリーバなどを用いれば簡易に行なうことができるし、第1光ファイバ2および第2光ファイバ5の固定も、第1支持部45および第2支持部46によって簡易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態による光センサヘッド1によれば、第1光ファイバ2および第2光ファイバ5を溶液流路3へ同時に接続することができる。通常、光源や測定器の入出力ファイバは、第1光ファイバ2のようなホーリーファイバではなく、第2光ファイバ5のような通信用ファイバであるため、光源や測定器と、溶液注入用のホーリーファイバを接続できるという効果もある。
【0038】
また、本実施形態による光センサヘッド1によれば、溶液流路3の溝部41aは、長さ方向に直交する方向の寸法dが2μm以上50μm以下に形成されているため、溝部41aから第1光ファイバ2への溶液12の流入と、第2光ファイバ5から第1光ファイバ2とへの光Lの伝播とを効率的に行うことができる。
【0039】
以上、本発明による光センサヘッド(溶液供給器具)1および溶液供給方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、基部4は、外形が略直方体の3層構造に形成されているが、これ以外の形状に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では、基部4は、下部シリコン層41、樹脂層42および上部シリコン層43から構成されているが、シリコンや樹脂以外の材料から形成されていてもよい。
また、溶液流路3は、溶液12が流通可能で第1光ファイバ2の空孔22へ溶液12を注入可能であるとともに、第2光ファイバ5から放たれた光を第1光ファイバ2へ伝播可能な構成であれは、上述した実施形態以外の形態としてもよい。
また、上述した実施形態では、溶液流路3の溝部41と第1光ファイバ2および第2光ファイバ5とが直交する方向に設置されているが、直交する方向に設置されていなくてもよい。
また、上述した実施形態では、神経細胞11へ光Lを照射しながら溶液12を供給しているが、神経細胞11以外の対象物へ溶液12を供給するときに、光センサヘッド1を使用してもよい。
また、上述した実施形態では、溶液流路3の溝部41aの長さ方向に直交する方向の寸法dは、2μm以上50μm以下としているが、この寸法dは、2μm未満でもよく、50μmを超えてもよい。要は、溶液流路3から第1光ファイバ2への溶液12の流入と、第2光ファイバ5から第1光ファイバ2とへの光Lの伝播とが可能であればよい。
【符号の説明】
【0040】
1 光センサヘッド(溶液供給器具)
2 第1光ファイバ
2a 一端部
2b 他端部
3 溶液流路
4 基部
5 第2光ファイバ
5a 一端部
5b 他端部
11 神経細胞(対象物)
12 溶液
21,51 コア
22 空孔
23,52 クラッド
45 第1支持部(支持部)
46 第2支持部(支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向へ延在するコアと該コアを囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッドとを有する第1光ファイバと、
前記空孔の軸方向一端部が接続可能に構成されるとともに前記空孔へ溶液を供給可能な溶液流路が形成された基部と、
軸方向へ延在するコアおよび該コアを囲繞するクラッドを有し前記第1光ファイバの一端部と前記溶液流路を介して端面どうしが対向するとともに前記第1光ファイバと同一軸線上に配設された第2光ファイバと、を備え、
前記第2光ファイバを伝播した光が、前記溶液流路を通過して前記第1光ファイバへ伝播可能に構成されるとともに、
前記空孔に、該空孔の軸方向一端部から前記溶液が供給され、前記空孔の軸方向他端部から吐出された前記溶液が対象物へ供給可能に構成されていることを特徴とする溶液供給器具。
【請求項2】
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの端面どうしの軸方向の間隔は、2μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶液供給器具。
【請求項3】
前記基部に、前記溶液流路に対して前記第1光ファイバおよび前記第2光ファイバを所定の位置に支持可能な支持部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶液供給器具。
【請求項4】
対象物へ溶液を供給する溶液供給方法であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の溶液供給器具を用い、前記第2光ファイバを伝播した光を前記第1光ファイバに光を伝播させるとともに、前記溶液流路に前記溶液を供給することで前記対象物へ前記溶液を供給することを特徴とする溶液供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−200207(P2012−200207A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67710(P2011−67710)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】