説明

溶融粘度が改良された熱可塑性ポリオレフィン組成物および該組成物の作製方法

【課題】所与の温度で溶融粘度が低減された熱可塑性ポリオレフィン組成物、より詳細には、より低い加工温度が必要とされる回転成形用の熱可塑性ポリオレフィンを提供する。
【解決手段】(a)ポリプロピレンと、(b)(i)コポリマーの重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、(ii)コポリマーの重量に対して少なくとも60重量%のC以上であるアルキレン残基とを含むビニル芳香族化合物とアルキレン化合物の水素化コポリマーと、加工油(f)とを含有することを特徴とする熱可塑性ポリオレフィン組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、発明の名称「内装スキン層用のスラッシュ成形可能な熱可塑性ポリオレフィン調合物」として2004年11月5日に出願した米国特許出願第10/983,010号の優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、概括的には、所与の温度で溶融粘度が低減された熱可塑性ポリオレフィン組成物、より詳細には、より低い加工温度が必要とされる回転成形用の熱可塑性ポリオレフィン組成物に関する。
【0003】
発明の背景
熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン、および/または再循環ポリマーから作製される製造品向けの代替材料として活発に検討されている。熱可塑性ポリオレフィン組成物は、自動車分野では、計器パネルスキン層、ドアパネル、エアバッグカバー、およびシートカバーを含めての内装被覆材料などの物品を製造するために使用されている。これらの物品の多くは、外形および幾何学的人工木目などの複雑な表面特徴を備えた表面外観およびデザインを有する。
【0004】
回転金型を用いる回転成形法は、多様な成形品を製造するのに有用であることが分かっている。スラッシュ成形は、一種の回転成形であり、回転金型の内表面全体より低く加熱される。すなわち、スラッシュ成形法では、予熱された金型は、未加熱のポリマー粉末を保持する貯留槽と連続的に接触している。ポリマー粉末が金型の加熱表面に接触すると、該粉末は、溶融し、金型の形状を全て充填する。従って、金型表面の該当部分は、成形されるべきポリマーが望ましい溶融粘度になるのに十分な温度まで加熱しなければならない。
【0005】
スラッシュ成形法は、複雑な表面特徴を備えた成形品を製造するのに特に有利であることが判明した。しかし、大きな金型表面を必要な温度まで加熱するのに要するエネルギーは、不利である。
【0006】
加えて、スラッシュ成形法に対して望まれる材料特性のバランスは、現状の熱可塑性ポリオレフィン組成物では実現が困難であった。通常の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、極めて高い温度で長時間にわたり加工することによって、スラッシュ成形法で溶融スキン層を形成する場合が多い。通常の熱可塑性ポリオレフィン組成物の材料組成は、加工中に劣化する恐れがあり、それが、材料強度および組成物の均一な溶融などの材料特性を変化させる場合がある。結果として、従来からの熱可塑性ポリオレフィン組成物を使用して生成したスラッシュ成形品は、受容不可能な表面外観および機械特性を有する恐れがある。
【0007】
材料特性を劣化させることなくスラッシュ成形に適したものにするために、成形プロセス中溶融粘度が非常に低い熱可塑性ポリオレフィン組成物が望まれている。もしスラッシュ成形法においてかかる組成物を使用すれば、全体のエネルギー消費はより低くなるであろう。本明細書では、本発明者らのいう任意の所与の温度における溶融粘度とは、例えばゼロせん断速度の粘度として定義されるような低せん断速度で測定される特性を指す。スラッシュ成形で使用するための熱可塑性ポリオレフィン組成物の溶融粘度は、一般に、限定されないが、平行板レオメーターによって印加されるような低せん断速度で測定した場合、180℃から260℃の加工温度範囲にわたり50Pa.sから250Pa.sの範囲の溶融粘度である。
【0008】
しかし、他の望ましい性能特性、特に外観、および「柔らかな触感」などの触覚特性と組み合わせてかかる低溶融粘度を有する熱可塑性ポリオレフィン組成物を得ることは困難であった。
【0009】
従って、スラッシュ成形で使用するための特定の成形温度においてより低い溶融粘度を有する熱可塑性ポリオレフィン組成物に対する必要性が、当技術分野で存在する。熱可塑性ポリオレフィン組成物から作製された成形品において、改良された表面特徴および外観を同時に有する、スラッシュ成形法での均一な溶融融合などの改良された材料諸特性を有する熱可塑性ポリオレフィン組成物に対するさらなる必要性が存在する。
【0010】
発明の概要
加工上の利点または最終性能特性をいかなる点においても失うことなく、溶融粘度を低下させた熱可塑性ポリオレフィン組成物を開示するものである。
【0011】
一実施形態では、開示の組成物は、ポリプロピレン(a)と、(i)水素化コポリマー(b)の重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、(ii)水素化する前でコポリマー(b)の全アルキレン含有量に対して少なくとも55重量%の4個以上の炭素を有するアルキレン残基とを含むビニル芳香族化合物とアルキレン化合物の水素化コポリマー(b)と、(f)加工油とを含む。
【0012】
溶融粘度を低下させた熱可塑性ポリオレフィン組成物を作製する方法をも開示するものである。一実施形態では、該方法は、ポリプロピレン(a)と、(i)水素化コポリマー(b)の重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、(ii)水素化前でコポリマー(b)の全アルキレン含有量に対して少なくとも55重量%のC以上であるアルキレン残基とを含むビニル芳香族化合物とアルキレン化合物の水素化コポリマー(b)と、(f)加工油とを合わせるステップを含み、(a)、(b)および(f)の得られた組成物は、(f)を含まない、(a)および(b)からなる組成物と比較して、より低い秩序/無秩序転移温度を有する。
【0013】
他の実施形態では、本発明の組成物によって調製される製造品が提供される。
【0014】
これらおよび他の特徴および利点は、以下の図面の簡単な説明、詳細な説明、および添付の特許請求の範囲および図面から明らかであろう。
【0015】
ここで、例示的であり、限定的ではない図面を参照する。
【0016】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書では、熱可塑性ポリオレフィン組成物および該組成物を調製するための方法を説明する。本発明は、該組成物から調製される製造品にも関するものである。
【0017】
一実施形態では、熱可塑性ポリオレフィン組成物は、全て75°F/25℃で、約700キログラム/平方センチメートル(kg/cm)(10,000ポンド/平方インチ(psi))未満、好ましくは約70kg/cm(1,000psi)から約490kg/cm(7,000psi)、より好ましくは約70kg/cm(1,000psi)から約210kg/cm(3,000psi)の曲げ弾性率値を有する可撓性の熱可塑性ポリマー組成物である。
【0018】
一実施形態では、適用した発泡体またはコーティングへの接着性が改良された熱可塑性ポリオレフィン組成物が開示され、該組成物は、ポリプロピレン(a)と、
(i)コポリマーの重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、(ii)水素化前でコポリマー(b)の全アルキレン含有量の重量に対して55から98重量%のC以上であるアルキレン残基とを含む水素化ビニル芳香族アルキレンコポリマー(b)と、(f)加工油とを含む。
【0019】
他の実施形態では、開示のポリオレフィン組成物は、0から30重量%の任意選択のポリマー成分(e)をさらに含むであろう。
【0020】
さらなる他の実施形態では、開示のポリオレフィン組成物は、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)および任意選択のモノアミン終端ポリアルキレンオキシドをさらに含むであろう。
【0021】
一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、(a)20から50重量%のポリプロピレンと、(b)5から60重量%の水素化ビニル芳香族アルキレンコポリマー(b)と、(f)1から10重量%の加工油とを含む。
【0022】
ポリプロピレン(a)として使用するために適したポリプロピレンとして、限定されないが、結晶性ポリプロピレンが挙げられ、ホモポリマーに加えて、他のオレフィンモノマー、例えば、エチレン、ブテン、オクテンなどをも含有するポリマーも含むことが意図される。一実施形態では、かかる他のオレフィンモノマーは、ポリプロピレンの重量に対して5から15重量%の少量において存在し得る。一実施形態では、適切なポリプロピレンポリマー(a)は、2.16キログラム(kg)の錘を用いて230℃で測定した場合、約60から約1200グラム/10分(g/10分)の範囲のメルトフローインデックスを有する。
【0023】
一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、約20重量%から約50重量%のポリプロピレン(a)を含む。本明細書で使用される「ポリマー性成分全て」という用語は、成分(a)および(b)、ならびに任意選択の成分(c)、(d)および/または成分(e)を指す。他の実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、約20重量%から約40重量%のポリプロピレンを含む。例示的な一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、約25重量%から約35重量%のポリプロピレンを含む。
【0024】
開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、アルケニルもしくはビニル芳香族化合物とアルキレン化合物の共重合から生成するコポリマー(b’)の水素化から生成する水素化コポリマー(b)をさらに含む。コポリマー(b’)は、(i)コポリマー(b’)の重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、(ii)コポリマー(b’)の全アルキレン含有量に対して55から98重量%のC以上であるアルキレン残基とを含むことを特徴とする。
【0025】
コポリマー(b’)は、ランダムまたはブロックいずれからなっていてもよい。例示的な一実施形態では、コポリマー(b’)、従って水素化コポリマー(b)は、ランダムコポリマーであろう。
【0026】
アルケニルもしくはビニル芳香族化合物は、次式によって表される
【0027】
【化1】

【0028】
[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表す;RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、塩素原子、臭素原子などを表す;ならびにR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表し、あるいはRおよびRは、中心の芳香族環と一緒になってナフチル基を形成する、あるいはRおよびRは、中心の芳香族環と一緒になってナフチル基を形成する]。
【0029】
アルケニル芳香族化合物の具体的な例として、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、クロロスチレンなど、および前記アルケニル芳香族化合物の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、およびビニルキシレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0030】
適切なアルキレン化合物として、ジエンおよびポリアルキレンが挙げられる。一実施形態では、コポリマー(b’)、従って水素化コポリマー(b)を調製するのに使用されるアルキレン化合物は、ジエンであろう。特に適切なアルキレンは、生成コポリマーの任意の水素化の前で4個以上の炭素を有するアルキレン基を含む反復単位をもたらすようなアルキレンである。例示的な一実施形態では、アルキレン化合物は、共役ジエンであろう。適切なアルキレンの具体的な例として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。一実施形態では、アルキレンは、1,3−ブタジエンおよび2−メチル−1,3−ブタジエンのうちの少なくとも1つになるであろうし、1,3−ブタジエンが、特別の例示的な実施形態で使用される。
【0031】
コポリマー(b’)、従って水素化コポリマー(b)中のアルケニル芳香族化合物から誘導される反復単位の含有量が、水素化コポリマー(b)の全重量に対して1から30重量%以下に限定されるであろうことは、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物の一態様である。一実施形態では、水素化コポリマー(b)中のアルケニル芳香族化合物から誘導される反復単位の含有量は、水素化コポリマー(b)の全重量に対して1から30重量%であろう。他の実施形態では、水素化コポリマー中のアルケニル芳香族化合物から誘導される反復単位の含有量は、水素化コポリマー(b)の全重量に対して5から20重量%であろう。例示的な一実施形態では、コポリマー(b’)、従って水素化コポリマー(b)中のアルケニル芳香族化合物から誘導される反復単位の含有量は、水素化コポリマー(b)の全重量に対して5から15重量%であろう。
【0032】
コポリマー(b’)中のアルキレン化合物から誘導されるアルキレン反復単位の含有量が、コポリマー(b’)の全重量に対して少なくとも55重量%であろうことも、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物の一態様である。一実施形態では、水素化コポリマー(b)中のアルキレン化合物から誘導される反復単位の含有量は、コポリマー(b’)、つまり水素化前の水素化コポリマー(b)の全重量に対して60から95重量%であろう。他の実施形態では、水素化コポリマー中のアルキレン化合物から誘導される反復単位の含有量は、コポリマー(b’)の全重量に対して65から90重量%であろう。例示的な実施形態では、コポリマー(b’)中の共役ジエンから誘導される反復単位の含有量は、コポリマー(b’)の全重量に対して70から90重量%であろう。
【0033】
最も例示的な実施形態では、生成水素化コポリマー(b)は、アルキレン残基を含有するエチレン−ブテンスチレンコポリマー(b’)の水素化から生成するであろうし、少なくとも60%のアルキレン残基が、コポリマー(b’)の全アルキレン含有量に対して4個以上の炭素を含むことが理解されよう。
【0034】
水素化コポリマー(b)は、好ましくは、ポリスチレン標準を使用してゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、約5,000から約500,000AMUの数平均分子量を有する。この範囲内で、数平均分子量は、好ましくは、少なくとも約10,000AMU、より好ましくは、少なくとも約30,000AMU、さらにより好ましくは、少なくとも約45,000AMUでよい。やはりこの範囲内で、数平均分子量は、好ましくは、最高約300,000AMU、より好ましくは、最高約200,000AMU、さらにより好ましくは、最高約150,000AMUでよい。
【0035】
一実施形態では、水素化コポリマー(b)は、0℃未満のガラス転移温度(T)を有するであろう。他の実施形態では、生成樹脂組成物の低温衝撃強度の観点から、コポリマー(b)は、低くとも−90℃のガラス転移点(T)を有するであろう。水素化コポリマー(b)のガラス転移温度は、前記のDSC法によって、または機械的スペクトロメーターによって観測されるような温度変化に対する粘弾性挙動から測定し得る。
【0036】
開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物の一実施形態では、水素化コポリマー(b)は、0.1:9.9から9.9:0.1の付加化合物:コポリマー(b)の比において、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)と任意選択のモノアミン終端ポリアルキレンオキシド(d)との付加化合物と熱力学的に混合可能であるように選択される。本明細書で使用される「熱力学的に混合可能である」という用語は、せん断力と無関係に1相の均一組成物になるように分子レベルで混合される2つの成分を指す。
【0037】
市販の適切な水素化コポリマー(b)の例示的な例として、日本のJapan Synthetic Rubber Corpから入手可能なDynaron(登録商標)1321P、およびKraton Corpから入手可能なKraton(登録商標)6932が挙げられる。
【0038】
一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、約5重量%から約60重量%の水素化コポリマー(b)を含む。他の実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、約20重量%から約60重量%の水素化コポリマー(b)を含む。例示的な実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、約40重量%から約60重量%の水素化コポリマー(b)を含む。
【0039】
本明細書での開示では、熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、1から15重量%の加工油(f)をも含むであろう。一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、1から12重量%の加工油(f)を含むであろう。他の例示的実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、2から10重量%の加工油(f)を含むであろう。特別な例示的一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、ポリマー性成分全ての全重量に対して、6から10%の加工油(f)を含むであろう。
【0040】
上記を超える量の加工油(f)の使用は、その後の蒸発、および周囲の表面上への堆積という点不利になる恐れがある。
【0041】
適切な加工油(f)の例示的な例は、主としてパラフィン性成分を含む炭化水素系油を含む相溶性の加工油である。一実施形態では、加工油(f)は、非芳香族加工油であろう。
【0042】
適切な加工油は、約100から約1000の範囲の平均分子量(ASTM D2502により、動粘度から計算する)を有する。加工油の平均分子量は、通常の作業の使用条件において組成物が移動するのを防止するように選択すべきである。一実施形態では、加工油(f)の平均分子量は、400から800であろう。
【0043】
適切な加工油(f)の市販の例として、それぞれChevronおよびCromptonから入手可能なParalux加工油およびHydrobrite加工油が挙げられる。
【0044】
特定の理論に拘束されたくないが、水素化コポリマー(b)と、ポリプロピレン(a)と加工油(f)の組合せとを含む熱可塑性ポリオレフィン組成物が、望ましい秩序/無秩序転移(ODT)の低温ヘのシフトを示すことが予想外にも分かった。本明細書では、「秩序/無秩序温度」もしくは「ODT」シフトという用語は、コポリマー(b)の分離した(I)ポリスチレンブロックが、コポリマー(b)の残り、つまりエチレン−ブテン中間ブロックと離れて、自由流動性の均一な溶融物(II)を形成する温度を指す。これを図4に示す。
【0045】
図3に示すように、ODTシフトの効果は、所与の当初の温度において、当初の溶融粘度が著しく低下することである。図3に示した情報は、以下の表2に示す組成物に対するものである。コポリマー(b)、つまり組成物Aは、溶融粘度が約240℃まで大きいような、高温におけるODTシフト効果を示す。組成物Bに対して示したような(a)にポリプロピレン(a)を添加することは、溶融粘度の低下に対して有益な効果であるが、不十分な効果である。加工油(f)を含有する組成物Cでは、図3に示すように、ODTシフトは、190℃未満の温度まで移動し、温度を上昇させることは、さらに著しく低下した粘度をもたらさない。例えば、溶融粘度は、220から240℃の温度において大きく変化しない。図4に示すように、組成物D〜Fは、表2に示す組成物に対して、6PHRから10PHRまで加工油(f)の量を増加させた結果としてのODTに及ぼす効果を例示する。
【0046】
従って、組成物中のコポリマー(b)と加工油(f)の組合せは、ODTシフトをもたらす、つまりODTは、より低い温度で行われることが、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物の一態様である。結果として、組成物が暴露され、従って組成物の劣化を引き起こす恐れのある温度を増加させることなく、より低い溶融粘度が、得られる。さらに、当業者には、付随するコストおよびエネルギーの節約が理解されよう。
【0047】
一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)と、任意選択のポリエーテルアミン(d)とをさらに含み得る。当業者には、存在すれば、官能化ポリオレフィン(c)とポリエーテルアミン(d)が上記で議論したように付加化合物を形成することが理解されよう。
【0048】
任意選択の官能化ポリオレフィン(c)は、その上にモノマーがグラフト化されるポリオレフィンである。
【0049】
任意選択のポリエーテルアミンと反応し、任意選択のポリエーテルアミンと反応した後、所与のポリオレフィンと一般に適合性である任意の任意選択の官能化ポリオレフィンが、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物において用い得る。
【0050】
ポリオレフィン上にモノマーをグラフト化する通常の方法は、フリーラジカル反応によるものである。本発明の実施においては、官能化ポリオレフィンは、無水マレイン酸部分が、主としてコポリマーの主鎖中に存在するような、例えば、無水マレイン酸とプロピレンのコポリマーではない。
【0051】
それに対してモノマーがグラフト化し得る適切なポリオレフィンの代表的な例として、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキシレン、ヘプテン、およびオクテンなどの多様なオレフィンのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0052】
官能化ポリオレフィン(c)を調製するのに適したモノマーは、例えば、炭素原子が12個未満であるオレフィン性不飽和モノカルボン酸、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸、および対応するtert−ブチルエステル、例えば、tert−ブチル(メタ)アクリラート、炭素原子が12個未満であるオレフィン性不飽和ジカルボン酸、例えば、フマル酸、マレイン酸、およびイタコン酸、および対応するモノ−、および/またはジ−tert−ブチルエステル、例えば、モノ−、もしくはジ−tert−ブチルフマラート、およびモノ−、もしくはジ−tert−ブチルマレアート、炭素原子が12個未満であるオレフィン性不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、無水マレイン酸、炭素原子が12個未満であるスルホ−もしくはスルホニル−含有オレフィン性不飽和モノマー、例えば、p−スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロペンスルホン酸、または2−スルホニル(メタ)アクリラート、炭素原子が12個未満であるオキサゾリニル−含有オレフィン性不飽和モノマー、例えば、ビニルオキサゾリンおよびビニルオキサゾリン誘導体、ならびに炭素原子が12個未満であるエポキシ−含有オレフィン性不飽和モノマー、例えば、グリシジル(メタ)アクリラートまたはアリルグリシジルエーテルである。
【0053】
例示的な一実施形態では、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)を調製するのに使用されるモノマーは、無水マレイン酸であろうし、一方、ポリオレフィンは、ポリプロピレンであろう。従って、例示的な一実施形態では、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)は、マレアート化ポリプロピレンであろう。
【0054】
マレアート化ポリプロピレンは、市販されており、多数の生産者によって製造されている。例えば、適切なマレアート化ポリプロピレンは、名称EPOLENE E−43としてEastman Chemicalから市販されている。
【0055】
本明細書において使用するのに適した任意選択の官能化ポリオレフィン(c)は、非常に多様な数平均分子量を有する。開示の熱可塑性組成物の実施では、ポリエーテルアミン(d)と反応することによって付加化合物が得られる任意の官能化ポリオレフィンを使用し得る。
【0056】
一実施形態では、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)は、約3,000を超える、好ましくは、約50,000未満の数平均分子量を有し得る。ポリオレフィンは、線状である場合、1つもしくは2つのモノマーと結合でき、一方、分枝である場合、2つを超えるモノマーが含まれる場合があることを理解すべきである。通常、1つもしくは2つのモノマーが存在する。
【0057】
本明細書で使用される任意選択のポリエーテルアミン(d)として、約150から約12,000の分子量を有するモノアミン、ジアミン、およびトリアミンが挙げられ、かかる化学薬品として、限定されないが、ヒドロキシルアミン、およびアミノアルコール官能化ポリエーテル材料が挙げられる。
【0058】
一実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、約200から約4,000の分子量を有するであろう。他の実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、約400から約2000の範囲の分子量を有するであろう。
【0059】
他の実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、約10:1から約3:1のモル比で、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位を含有するであろう。一実施形態では、かかるポリエーテルモノアミンは、約2000から約2200の範囲の分子量を有するであろう。より例示的な実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、約7:1のモル比で、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位を含有するであろう。
【0060】
本明細書における開示では、モノアミンおよびジアミンの使用が特に望ましい。例示的な一実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、モノアミン終端ポリオキシアルキレンであろう。
【0061】
ポリエーテルアミンの適切なポリエーテルブロックとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマー、ポリ(1,2−ブチレングリコール)とポリ(テトラメチレングリコール)のコポリマーが挙げられる。グリコールは、よく知られた方法を使用してアミノ化することによってポリエーテルアミンを生成し得る。一般に、グリコールは、メトキシもしくはヒドロキシ開始反応によるものなどのよく知られた方法を使用して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはそれらの組合せから調製する。エチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方を使用する場合、ランダムポリエーテルが所望であれば、オキシドを同時に反応させ、ブロックポリエーテルが所望であれば、オキシドを逐次的に反応させ得る。
【0062】
一実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはそれらの組合せから調製する。一般に、任意選択のポリエーテルアミン(d)が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはそれらの組合せから調製される場合、モル基準でのエチレンオキシドの量は、ポリエーテルアミンの約50%を超え、好ましくは、約75%を超え、より好ましくは、約90%を超える。本発明の一実施形態では、ポリオール、ならびにポリアルキレンポリアミンおよびアルカノールアミン、または本明細書で開示のポリエーテルアミンでない任意のアミンを含めてのアミンは、組成物に含まれなくてもよい。同様に、エーテル結合およびアミン基以外の官能基は、任意選択のポリエーテルアミン(d)に含まれなくてもよい。
【0063】
任意選択のポリエーテルアミン(d)は、米国特許第3654370号;米国特許第4152353号;米国特許第4618717号;米国特許第4766245号;米国特許第4960942号;米国特許第4973761号;米国特許第5003107号;米国特許第5352835号;米国特許第5422042号;および米国特許第5457147号において記載されているようなよく知られたアミノ化技法を使用して調製し得る。一般に、ポリエーテルアミン(d)は、Ni/Cu/Cr触媒などのニッケル含有触媒などの触媒の存在下で、ポリエーテル ポリオールなどのポリオールをアンモニアによってアミノ化することによって作製される。
【0064】
適切なモノアミンとして、JEFFAME(商標)M−1000、JEFFAMINE(商標)M−2070、およびJEFFAMINE(商標)M−2005が挙げられる。適切なジアミンとして、JEFFAMINE(商標)ED−6000、JEFFAMINE(商標)ED−4000、XTJ−502およびXTJ−418を含めてのJEFFAMINE(商標)ED−2001、JEFFAMINE(商標)D−2000、JEFFAMINE(商標)D−4000、JEFFAMINE(商標)ED−900、JEFFAMINE(商標)ED−600、ならびにJEFFAM1NE(商標)D−400が挙げられる。適切なトリアミンとして、JEFFAMINE(商標)ET−3000、JEFFAMINE(商標)T−3000、およびJEFFAMINE(商標)T−5000が挙げられる。
【0065】
例示的な一実施形態では、任意選択のポリエーテルアミン(d)は、JEFFAMINE XTJ−418の少なくとも1つであろう。
【0066】
任意選択の官能化ポリオレフィン(c)および任意選択のポリエーテルアミン(d)は、熱可塑性ポリオレフィン組成物を調製する間または調製した後いずれかで熱可塑性ポリオレフィン組成物に加えてよい。さらに、任意選択の官能化ポリオレフィン(c)および任意選択のポリエーテルアミン(d)は、別々に、または予め混合した組合せのいずれかで熱可塑性ポリオレフィン組成物に加えてよい。従って、官能化ポリオレフィン(c)とポリエーテルアミン(d)を混合して付加化合物が形成されるステップは、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物を調製する前または調製する間いずれかで行われ得る。従って、官能化ポリオレフィン(c)とポリエーテルアミン(d)を反応させて付加化合物を形成するステップは、バッチミキサー、連続ミキサー、ニーダー、および押出機を含めての通常の混合装置において行い得ることが理解されよう。大部分の用途では、混合装置は、押出機であろう。
【0067】
本明細書における開示では、官能化ポリオレフィン(c)およびポリエーテルアミン(d)の使用は、任意選択であるが、例示的な一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、少なくとも1つの官能化ポリオレフィン(c)および少なくとも1つのポリエーテルアミン(d)を含むであろう。上記で開示したように、存在する場合、ポリオレフィン(c)およびポリエーテルアミン(d)は、反応することによって付加化合物を形成するであろう。
【0068】
熱可塑性ポリオレフィン組成物は、0から最高約30重量%の任意選択のポリマー成分(e)をも含んでよい。
【0069】
一実施形態では、任意選択のポリマー成分(e)は、エチレン系ゴムなどのエチレンコポリマーエラストマーでよい。適切なエチレンコポリマーエラストマーとして、限定されないが、約−70℃以下のガラス転移温度を有するエチレン−プロピレン、エチレン−ブテン、エチレン−オクテン、エチレン−ペンテン、エチレン−ヘキセンコポリマーなど、ならびに前記エチレンコポリマーエラストマーの少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。一実施形態では、任意選択のポリマー成分(e)は、エチレンコポリマーエラストマーとして、ポリマー成分全ての0から30重量%の量において存在してよく、一方、他の実施形態では、任意選択のポリマー成分(e)は、エチレンコポリマーエラストマーとして、ポリマー成分全ての15から25重量%の量において存在してよい。
【0070】
他の適切なエチレンコポリマーエラストマーとして、エチレン−プロピレン 非共役ジエンコポリマー(EPDM)が挙げられる。非共役ジエンは、約6から約22個の炭素原子を含有し、少なくとも1つの容易に重合可能な二重結合を有する。エチレン−プロピレンコポリマーエラストマーは、EPDMの全重量に対して約60重量%から約80重量%、通常は約65重量%から約75重量%のエチレンを含有する。非共役ジエンの量は、一般に、EPDMの全重量に対して約1重量%から約7重量%、通常は約2重量%から約5重量%である。一実施形態では、エチレン−プロピレンコポリマーエラストマーは、EPDMコポリマーである。適切なEPDMコポリマーとして、限定されないが、エチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン、エチレン−プロピレン−ノルボルネン、エチレン−プロピレン−メチレン−2−ノルボルネン、およびエチレン−プロピレン−1,4−ヘキサジエン/ノルボルナジエンコポリマーが挙げられる。
【0071】
他の実施形態では、熱可塑性ポリオレフィン組成物は、任意選択のポリマー成分(e)として、約0重量%から約60重量%のスチレン性ブロックコポリマーをさらに含み得る。この任意選択のスチレン類は、水素化コポリマー(b)とは異なるものであり、その特定の要件の支配を受けないことが理解されよう。
【0072】
熱可塑性ポリオレフィン組成物は、最高約5重量%までのポリマー添加剤(複数可)を任意選択でさらに含み得る。適切なポリマー添加剤として、脂肪酸−アミド類似のオレアミドおよびエルクアミド、ならびにシロキサンなどの、引掻き耐性を改良するためのポリマー表面改質剤が挙げられる。熱可塑性ポリオレフィン組成物は、最高約5重量%、好ましくは、約0.3%から約1重量%のポリマー表面改質剤を含み得る。
【0073】
追加の実施形態では、熱可塑性ポリオレフィン組成物は、0から最高10重量%、好ましくは、約3重量%から約7重量%の、無機粒状物などの粉末流動剤をさらに含む。適切な粉末流動剤として、タルクおよびモンモリロナイト粘土などの水和シリケートが挙げられる。シリケートの粒径範囲は、約1から約40μmの範囲、好ましくは、約1から約20μmの範囲にあるべきである。
【0074】
開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、熱安定剤、光安定剤など、ならびに前記安定剤の少なくとも1つを含む組合せなどの安定剤をも、任意選択で含み得る。熱安定剤として、フェノール類、ヒドロキシルアミン、ホスファートなど、ならびに前記熱安定剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。光安定剤として、低分子量(約1,000AMU未満の数平均分子量を有する)ヒンダードアミン、高分子量(約1,000AMUを超える数平均分子量を有する)ヒンダードアミンなど、ならびに前記光安定剤の少なくとも1つを含む組合せが挙げられる。
【0075】
任意選択で、当技術分野で周知の多様な添加剤を、熱安定性、紫外波長の放射線に対する暴露安定性、長期耐久性、および加工性などの多様な特性を組成物に付与する必要に応じて使用し得る。安定剤の正確な量は、用いる反応、および最終物品の所望の特徴によって、実験的に容易に求められ、約1重量%から約4重量%、好ましくは、約1重量%から約3重量%の安定剤を含む。
【0076】
一実施形態では、スラッシュ成形に使用するための開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、平行板レオメーターによって印加されるような低せん断速度で測定した場合、180℃から260℃の加工温度にわたり、50Pa.sから1000Pa.sの範囲の溶融粘度を有することを特徴とし得る。他の実施形態では、スラッシュ成形に使用するための開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、平行板レオメーターによって印加されるような低せん断速度で測定した場合、180℃から260℃の加工温度にわたり、100Pa.sから600Pa.sの範囲の溶融粘度を有することを特徴とし得る。2.16キログラム(kg)錘(>20g/10分)を用いて230℃で測定した場合、約20グラム/10分(g/10分)を超えるメルトフローインデックス(MFI)を有する高メルトフローインデックス(ASTM D1238に従って測定した場合)材料を選択することによって組成物の低溶融粘度が得られる。
【0077】
加えて、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、成分(a)および(b)が均一な1相混合物であるので、単一組成物依存性のガラス転移温度Tを特徴とし得る。すなわち、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、相の異なるT点を示さないであろう。一実施形態では、開示の熱可塑性ポリオレフィン組成物は、−20℃から−50℃のTを有するであろう。
【0078】
表1は、熱可塑性組成物および本明細書で議論される実施例で使用するのに適した成分のリストを提供する。表1に列挙された成分は、例示のために挙げられており、本発明を限定するものではないことは理解されよう。
【0079】
【表1】

【0080】
熱可塑性ポリオレフィン組成物は、カラー顔料、またはカラー顔料の組合せを任意選択でさらに含む。適切なカラー顔料は、当業者には周知であり、カラー顔料の正確な量は、調合物および最終生成物の所望の色特徴に基づいて、実験的に容易に求められ、約1重量%から約2重量%であろう。
【0081】
熱可塑性ポリオレフィン組成物は、例えば、バンバリー型ミキサーなどの内部ミキサーを使用して、あるいは成分を良好に分配して混合するために高せん断を提供するように選択されたスクリュー部品を備えた2軸押出機を使用して高せん断条件下で成分を溶融ブレンドするステップによって調製し得る。得られた組成物は、さらに加工して、ペレット、マイクロペレット、もしくは粉末、または任意の適切な形態などのより小さい粒子にすることもできる。組成物のより小さい粒子は、均一なスキン層形成を実現するためのスラッシュ成形に特に有用である。
【0082】
一実施形態では、図1に示すように、参照番号10として示された方法は、成分12を溶融混合14することによって、熱可塑性ポリオレフィン成分12からペレット16を形成するステップを含む。溶融混合14は、2軸押出機などの押出機、またはバンバリー型ミキサーなどの内部ミキサーを使用することによって実施し得る。次いで、ペレット16は、低温粉砕18(低温において粉砕される)を受けることによって、一実施形態では、約70から約500μmの平均粒径、例示的な一実施形態では、約75から約150μmの平均粒径を有する粉末19を生成し得る。低温粉砕18は、不均一な粒子を作製するせん断/衝撃法である。本明細書には示されていないが、代替の実施形態では、該方法は、2軸押出機などの押出機を使用して成分を溶融混合するステップと、1軸押出機などの押出機を用いて生成ペレット16をさらに加工することによってマイクロペレット29を生成するステップとを含む。
【0083】
図2に示す他の実施形態では、参照番号20として示された方法は、2軸押出機24からミニビーズ金型プレートに対して高い背圧をかけるための手段としてギアポンプ26を使用して組成物のマイクロペレット29を形成するステップを含み、別の加工ステップを必要としないであろう。この方法20では、溶融圧力を増加させるためのギアポンプ26を備えた2軸押出機24などの押出機を使用してインライン押出しによって、成分22は溶融コンパウンド化される。次いで、得られた組成物は、マイクロペレタイザー27において、組成物のマイクロペレット29に形成される。組成物のマイクロペレット29は、遠心式乾燥機などの乾燥機28において加工し得る。
【0084】
組成物のマイクロペレット29は、低温粉砕粉末19の粒子より大きい球状粒子であり得、通常、約350から約900μmの範囲である。スラッシュ成形は、組成物の低温粉砕粉末19、組成物のマイクロペレット29、またはそれらからの製造品を形成するために2つを組合せたものいずれかを使用して実施し得る。
【0085】
粉末19、および/またはマイクロペレット29が、回転サイクル中、形成器具内で良好な機械的流動性を有する場合、スラッシュ成形法はうまくゆく場合がある。この機械的流動特性は、底部にオリフィスを備え、特定の容積を有するカップを空にする時間を測定することによって定量化し得る。流動性の改良は、無機粒子などの適切な粉末流動剤を添加することによって実施し得る。適切な粉末流動剤として、タルクおよびモンモリロナイト粘土などの水和シリケートが挙げられる。粉末流動剤は、熱可塑性ポリオレフィン組成物の全重量の最高約10重量%、好ましくは、約3重量%から約7重量%を占め得る。シリケートの粒径範囲は、約1から約40μmの範囲、好ましくは、約1から約20μmの範囲であるべきである。これらの粉末流動剤は、溶融コンパウンド化中、または粉末流動剤とともに、粉末19、および/またはマイクロペレット29を低温粉砕もしくは機械混合中に第2のプロセスとして、添加し得る。
【0086】
本発明の組成物、方法、およびそれらから作製される物品の実施形態は、計器パネルスキン層、ドアパネル、エアバッグカバー、屋根ライナー、およびシートカバーを含めての内装被覆材料などの車両用途に関連して主として説明したが、多数の自動車および非自動車用途において利用し得る。
【0087】
実施例
以下の実施例は、本発明を例示する。これらの実施例は、例示のために提供されており、本発明を限定するものではないことは理解されよう。実施例では、別段の指示がない限り、部数およびパーセンテージは全て、組成物の全重量に対する重量基準である。
【0088】
実施例1
以下のTPO組成物を、以下の表2に従って、溶融混合することによって調製した。粉末に加工した後、試料は、図3および4に示すような試験結果であった。
【0089】
溶融粘度を、180から260℃の温度範囲で、1ラジアン/秒の歪を印加して平行板レオメーターによって測定した。
【0090】
【表2】

【0091】
図3に示すように、ODTシフトの効果は、所与の当初の温度において、当初の溶融粘度が著しく減少することである。図3に示す情報は、以下の表2に示す組成物に対するものである。コポリマー(b)、すなわち、組成物Aは、約240℃まで溶融粘度が大きいように、高温におけるODT効果を示す。組成物Bに対して示したような(a)にポリプロピレン(a)を添加することは、溶融粘度を減少させることに対して有益であるが、不十分な効果を有する。加工油(f)を含有する組成物Cでは、図3に示すように、ODTシフトは、190℃未満の温度まで移動し、温度を上昇させることは、さらに著しく低下した粘度をもたらさない。例えば、溶融粘度は、220から240℃の温度において大きく変化しない。図4に示すように、組成物D〜Fは、表2に示す組成物に対して、6PHRから10PHRまで加工油(f)の量を増加させた結果としてのODTに及ぼす効果を例示する。
【0092】
別段の指示がない限り、明細書および特許請求の範囲において使用された成分の量;分子量、反応条件などの特性を表す数は全て、「約」という用語で全ての場合修飾されているものと理解すべきである。従って、逆の指示がない限り、本明細書において記載された数的パラメーターは、本発明によって得ようと求められた所望の特性に応じて変わり得る概略のものである。極く少なくとも、および特許請求の範囲の範囲に対する均等物のドクトリンの適用を制限する意図はないが、それぞれの数的パラメーターは、報告された有効桁数の見地から、および通常の丸めの技法を適用することによって少なくとも解釈するべきである。
【0093】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは、概略であるにもかかわらず、上記の特定の実施例において示された数値は、可能な限り精密に報告されている。しかし、いかなる数値も、それぞれの試験の測定においてみられる必然的な標準偏差に由来するある種の誤差を固有に含有する。当業者は、特許請求の範囲の範囲および意図内において本明細書に記載の具体的な実施形態に対する改変形態を作製し得ることは理解されよう。本発明は、その特定の実施形態において実施されると説明したが、それによって限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲および趣旨内において広く本発明をカバーするものである。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】熱可塑性ポリオレフィン組成物をコンパウンド化して粉末を形成する方法を示す略図である。
【図2】本発明に従って、熱可塑性ポリオレフィン組成物をインラインコンパウンド化して、マイクロペレットなどの粒子を形成する方法を示す略図である。
【図3】組成の関数として秩序/無秩序転移温度のシフトを示すグラフである。
【図4】組成の関数として秩序/無秩序転移温度のシフトを示す第2のグラフである。
【図5】秩序/無秩序転移のシフトを分子レベルで例示する略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレンと、
(b)水素化コポリマー(b)の重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、コポリマー(b)を水素化する前で全アルキレン含有量に対して少なくとも55重量%のC以上であるアルキレン残基とを含む、ビニル芳香族化合物とアルキレン化合物の水素化コポリマー(b)と、
(f)加工油と
を含む、溶融粘度が低下した熱可塑性ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
(a)、(b)および(f)の得られた組成物が、(f)を含まない、(a)および(b)からなる組成物と比較して、より低い秩序/無秩序転移温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(c)官能化ポリオレフィンと、
(d)モノアミン終端ポリアルキレンオキシドと
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
官能化ポリオレフィン(c)およびモノアミン終端ポリアルキレンオキシド(d)が、0.1:9.9から9.9:0.1の付加化合物:コポリマー比で、コポリマー(b)と熱力学的に混合可能である付加化合物を形成する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
水素化コポリマー(b)が、水素化コポリマー(b)の重量に対して(i)5から20重量%のビニル芳香族残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
水素化コポリマー(b)が、水素化コポリマー(b)の重量に対して(i)5から15重量%のビニル芳香族残基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
水素化コポリマー(b)が、コポリマー(b)を水素化する前で全アルキレン含有量に対して、(ii)少なくとも60重量%のC以上であるアルキレン残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
水素化コポリマー(b)が、コポリマー(b)を水素化する前で全アルキレン含有量に対して、(ii)60から95重量%のC以上であるアルキレン残基を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
水素化コポリマー(b)が、コポリマー(b)を水素化する前で全アルキレン含有量に対して、(ii)60から90重量%のC以上であるアルキレン残基を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
水素化コポリマー(b)が、コポリマー(b)を水素化する前で全アルキレン含有量に対して、(ii)70から90重量%のC以上であるアルキレン残基を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
水素化コポリマー(b)のガラス転移温度(T)が、0℃より低く、−90℃より高いことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
水素化コポリマー(b)のガラス転移温度(T)が、−20℃と−60℃の間にあることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
(a)ポリプロピレンと、
(b)(i)コポリマー(b)の重量に対して1から30重量%以下のビニル芳香族残基と、
(ii)コポリマー(b)の重量に対して少なくとも60重量%のC以上であるアルキレン残基と
を含む、ビニル芳香族化合物とアルキレン化合物の水素化コポリマー(b)と、
(f)加工油と
を合わせるステップを含む、ODTシフトが低下した熱可塑性ポリオレフィン組成物を作製する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物を金型に適用することによって成形スキン層を作製するステップと、
ポリマー系組成物をスキン層の少なくとも1つの表面に適用するステップと
を含み、ポリマー系組成物が、接着用プライマー、プラズマ表面処理、火炎表面処理、またはコロナ放電表面処理からなる群から選択される接着向上技法を使用することなく成形スキン層に接着する、成形複合材を作製する方法。
【請求項15】
ポリマー系組成物が、発泡体またはコーティングのうちの少なくとも1つである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
発泡体が、ポリウレタン発泡体である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項14に記載の方法によって作製される成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7574(P2009−7574A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−166680(P2008−166680)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(599023978)デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (281)
【Fターム(参考)】