説明

溶融紡績に際してマルチフィラメント糸を案内しかつ交絡する装置

本発明はマルチフィラメント溶融紡績に際してマルチフィラメント糸を案内しかつ交絡させる方法と装置とに関する。この場合には糸は2つのゴデットの間で張られた糸区分にて交絡される。交絡のために所定の糸張力を保つことができるようにするためには交絡前の糸区分と交絡後の糸区分はそれぞれ案内外套の平滑な円周領域にて案内されている。該平滑な円周領域は平均粗面度値が<0.2μmの表面を有している。この場合、交絡装置は案内外套の平滑な円周領域に対応配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念として記載した、溶融紡績に際してマルチフィラメント糸を案内しかつ交絡する方法と、請求項9の上位概念として記載した、前記方法を実施する装置とに関する。
【0002】
前記形式の方法並びに前記形式の装置はEP0940485A2号明細書によって公知である。
【0003】
溶融紡績によって合成糸を製造する場合にはポリマ溶融物が多数のノズルを有する紡績ノズルによってストランド形状のフィラメントに押出し成形される。前記のきわめて細いフィラメントが冷却したあとで、該フィラメントは合成糸に纏められる。所望される糸タイプに応じて糸の処理が例えばドラフト、リラクス化又は捲縮によって行なわれる。溶融紡績の終わりには合成糸はボビンに巻かれる。前記処理に際しても後続の加工に際しても、糸にて個々のフィラメントが纏めて保持されることを保証するためには、マルチフィラメント糸を交絡することが公知である。交絡に際してはタングリングの呼称でも知られているように、圧縮空気流が糸に向けられ、個々のフィラメントの絡みが発生し、ひいては糸にて糸結合が達成される。糸区分あたり与えられた交絡節の数と一様性とは糸結合の質の尺度となる。
【0004】
公知の方法と公知の装置では後続加工に必要な糸結合は2つのゴデットの間で張られた糸区分の交絡によって行なわれる。これによって糸は最後のゴデットから出たあとで直接巻取装置に導かれることができる。交絡装置と巻取装置との間に配置された糸のゴデット案内によって有利な形式で、交絡のための糸張力は巻取装置によって糸に発生した巻取張力の影響を受けることはなくなる。この場合には、ゴデットが複数回巻掛けられている場合には、タングル張力にドラフト張力が影響を及ぼさないため及び当該方法の簡単な操作を可能にするために交絡装置は最後の糸巻掛けにおかれていると有利である。しかし、特に糸が2つのゴデット対の間で高いドラフト張力でドラフトされるいわゆるフルドラフトヤーン(FDY)を製作する場合には交絡のための個々の糸張力をドラフト張力とは無関係にかつ巻取張力とは無関係に実現することはほとんどできない。
【0005】
したがって本発明の課題は冒頭に述べた形式のマルチフィラメントヤーンを案内するためと交絡する方法並びに該方法を実施する装置を改善して糸を交絡する場合にあらかじめ規定された糸張力ができるだけ得られるようにすることである。
【0006】
本発明の別の目的は糸にできるだけ多数の交絡節が再現可能に生ぜしめられるように、マルチフィラメント糸を案内しかつ交絡する方法と装置とを提供することである。
【0007】
前記課題は請求項1の特徴を有する方法並びに請求項9の特徴を有する装置によって解決された。
【0008】
本発明の有利な構成は各従属請求項の特徴と特徴の組合わせとによって規定されている。
【0009】
前記課題の解決は、DE19909073A1号明細書に開示されているように合成糸をドラフトする装置において引出しゴデットとドラフトゴデットとが異なる表面粗面度を有する、相前後して位置する多数の表面ゾーンを有していることとは異なるものである。この場合には引出しゴデットが特に最後の巻掛けの領域にてかつドラフトゴデットが第1の巻掛けの領域にて比較的に滑らかな表面ゾーンを有し、できるだけ高いドラフト張力を形成することが目的とされている。しかしこの状態はマルチフィラメント糸が同時に交絡されるようにするためには完全に不適当である。
【0010】
本発明は特にフルにドラフトされた糸を製作する場合に交絡するための糸張力がドラフト張力とは無関係にかつ巻取張力とは無関係に保たれるという利点がある。ゴデットの間に張られた、紡績された糸区分にて調節された糸張力は維持される。何故ならば案内外套の滑らかな円周領域にて案内された糸は案内外套の表面に対する相対運動を実施することはほぼできないからである。さらに交絡の前及び交絡後の糸区分を滑らかな円周領域によって案内することで、糸区分の固定された長さに基づき、再現可能な交絡節数を有する一様な交絡成果をもたらす糸区分の締込み長さが決定される。この場合には、糸と案内外套の滑らかな円周領域との間の十分な付着は、平均粗面度値<0.2μmを有する表面で保証される。この場合には一般的に周面を研磨又はその他の加工による平均粗面度値が小さいほど案内外套における糸のより大きな付着作用が達成される。
【0011】
この場合、糸を案内するためのゴデットは同じ直径の案内外套を有するゴデットによっても、直径の異なる案内外套を有するゴデットによっても構成されていることもできる。したがって糸を複数回の巻掛けで案内するためのゴデットは有利には、直径の大きい案内外套を有するゴデットと直径の小さい案内外套を有するゴデットとによって構成される。この場合、小さい案内外套を有するゴデットは専門領域ではオーバランニングローラ又は併走ローラとも呼ばれる。したがってマルチフィラメント糸を案内しかつ交絡するためにはゴデットが同じ案内外套を有しているか又は直径の異なる案内外套を有しているかは重要ではない。
【0012】
請求項2と10とによる本発明の構成によれば、交絡のために糸張力を変化させることが特に有利である。これによって交絡に際して糸張力の調節の可能性が与えられ、交絡節をできるだけ大きな数で調節するための好適化された運転点が得られる。
【0013】
糸張力は有利には、交絡装置の前に配置された案内外套の周速度の変化によって調節される。案内外套の滑らかな円周領域と糸との間の高い付着に基づき、変化させられた周速度は直接的に、両方のゴデットの間の糸区分における糸張力を上昇又は減退させる。交絡に際して糸張力を減退させるためには案内外套の周速度は軽く上昇させられる。より高い糸張力を得るためにはゴデットの周速度は相応に減退させられることができる。
【0014】
後置された糸案内から巻取装置への戻り作用をできるだけ回避するためには、糸がゴデットから走出するために案内外套の滑らかな円周領域にて案内されることが有利である。このためには滑らかな円周領域はそれぞれ案内外套の自由端部に構成されている。
【0015】
ゴデットにおける複数回の巻掛けで糸を案内する場合には案内外套は本発明の有利な構成によればゾーン状に並べて配置された複数の円周領域によって構成されている。この場合には滑らかな円周領域の横には0.2μmの上の大きい平均粗面度値を有する平滑でない円周領域が構成されている。これによって交絡する場合の糸張力に影響を及ぼすことなしに糸を案内する場合の補償過程を実現することができる。
【0016】
前記プロセスにて前置された処理の影響はこの場合には糸がゴデットに供給されるために同様に案内外套の滑らかな円周領域にて案内されることで回避される。
【0017】
交絡のための糸張力をより大きく変化させるためには、有利には糸は最後の巻掛けにてゴデットから走出するために案内外套の直径の小さい円周領域を案内される。これによって後置された案内外套の周速度が低減し、この結果、糸張力が減退させられる。この本発明の構成は前置された交絡があるにも拘らず、糸をできるだけ低い糸巻取り張力で巻上げるために特に適している。単位長さあたりの交絡節の数を高める特別な処置としては、糸が交絡前に80℃から250℃までの温度に加熱される本発明の変化実施例が有利である。糸の加熱は原則的にはどの形式の糸加熱によっても行なうことができる。
【0018】
合成糸を製造する場合には通常は複数本の糸、例えば8,10,12又は16本の糸が同時に1つの紡績部位にて製造される。できるだけ処理差異を回避するためには糸は有利には平行に並べて案内されかつ同時に処理される。一方ではゴデットの張出し長さをできるだけ短く保ち、他方では隣り合って案内された糸の影響をできるだけ回避するためには本発明のさらなる構成によれば、張られた隣り合った糸区分が3mmから8mmまでの領域の間隔をおいて案内される。このためには交絡装置はそれぞれ3mmから8mmの領域の間隔を間に有する多数の糸通路を有している。
【0019】
各糸通路には、走入側に配置された少なくとも1つの糸ガイドが対応配置されている。これにより糸の交絡のために重要な支持点が交絡装置の前と場合によっては後ろとにおいて規定される。
【0020】
本発明の方法と装置は原則的には、溶融紡績プロセスにて、一本の糸又は並べて案内された複数本の糸の交絡を平行に行なうために特に適している。本発明の方法はすべての公知の紡績プロセス、例えばPOY糸、FDY糸、BCF糸又は技術的な糸を製造するための紡績プロセスに統合させることができる。
【0021】
以下、本発明を添付図面の実施態様に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明による方法を実施するための本発明の装置が統合された溶融紡績装置を概略的に示した図である。
【0023】
図2は図1に示した本発明の装置の1実施例を概略的に示した図である。
【0024】
図3は本発明による装置の別の実施例を示した図である。
【0025】
図4は本発明による装置のさらに別の実施例を示した図である。
【0026】
図1には概略的に統合された、本発明による装置を有する完全な紡績装置が示されている。該紡績装置は合成糸を製造するために紡績機構1と、紡績機構1の下流側に配置された処理装置2と、糸を巻上げるために設けられた巻取装置3とを有している。
【0027】
紡績機構1においては熱可塑性の材料から紡績ノズル7によって多数のフィラメント9が押出成形される。このためには熱可塑性の材料は押出機4によって溶融され、紡績ポンプ5を介して紡績バー6に供給される。紡績バー6は加熱可能に構成され、その下面に列形の配置で保持された多数の紡績ノズル7を有している。図1には紡績ノズル7の1つが示されている。紡績ノズル7によって細いフィラメント9が押出される。フィラメント9は紡績バー6の下側に配置された冷却装置8を通して案内される。冷却装置8にてフィラメントは有利には空気流によって冷却される。冷却装置8のすぐ下でフィラメント9は一本の糸11に纏められる。このためにはフィラメント9はプレパレーション装置10によってプレパレーション剤で負荷される。
【0028】
処理装置2は糸11をドラフトするために設けられている。このためには処理装置2は相上下して配置された2つのゴデット対12.1と12.2とを有している。第1のゴデット対12.1は引出しゴデット13と併走ゴデット14とから形成されている。第2のゴデット対12.2はドラフトゴデット15と併走ゴデット16とによって形成されている。ゴデット対12.1には糸11が複数回巻掛けられ、ゴデットディオス12.1は糸11を紡績機構1から引出す。後置されたゴデット対12.2はゴデット対12.1よりも高い周速度で駆動されるので、糸11は引出しゴデット13とドラフトゴデット15との間でドラフトされる。
【0029】
ドラフトゴデット15と併走ゴデット16との間には、ドラフトゴデット15と併走ゴデット16との間に張られた糸11の糸区分29を交絡するために交絡装置22が配置されている。ドラフトゴデット15と、併走ゴデット16と交絡装置22とから形成された装置の構成と作用とについては以下に詳細に説明する。
【0030】
糸11は巻取装置3によって処理装置2から引出され、ヘッド糸ガイド17を介して巻取りゾーンに侵入する。ヘッド糸ガイド17から糸11は綾振りトライアングルと該綾振りトライアングルの端部に配置された綾振り装置20とに達する。綾振り装置20から糸11は圧着ローラ21に達し、該圧着ローラ21で糸11はボビン18の表面に押付けられる。ボビン18はボビンスピンドル19に緊定されかつスピンドルモータで駆動される。
【0031】
図1に示された紡績装置は溶融紡績された合成糸を製造するために実施されるプロセス段階を例示するためのものであるに過ぎない。この場合には個々の装置部分とプロセス装置とは糸のタイプに応じて種々異って構成されていることができる。特に処理装置2は糸タイプに応じて個別にプロセス装置で装備することができる。しかし、この場合に重要であることは、巻取装置3の上流側に配置された交絡装置22が処理装置に対応配置された2つのゴデットの間に配置されていることである。処理装置2における処理のために糸11の糸結合を高めるためには紡績機構1と処理装置2との間に別の交絡装置が配置されていることもできる。
【0032】
図2にはゴデット対12.2が、一緒に配置された交絡装置22と共に概略的に示されている。本発明の装置のこの実施例は図2では平面図で示されている。
【0033】
ドラフトゴデット15はゴデット駆動装置24と結合された案内外套23を有している。案内外套23は2つの円周領域25.1と25.2とに分けられている。この場合、円周領域25.1は案内外套23の自由端部における平滑な表面によって構成されている。平滑な円周領域25.1は平均粗面度値が<0.2μmの表面粗面度値を有している。案内外套23の支承端部まで延びる第2の円周領域25.2はより大きな粗面度で構成され、表面は0.2μmの上側の平均粗面度値を有している。
【0034】
ドラフトゴデット15から間隔をおいて併走ゴデット16が配置され、この併走ゴデット16は直径の小さい案内外套26を有している。案内外套26はゴデット駆動装置27と連結されている。案内外套26にはゾーン状の2つの円周領域28.1と28.2とが構成されている。案内外套26の自由端部における円周領域28.1は同様に滑らかな表面領域として構成され、表面粗面度は0.2μmの下の平均値を有している。案内外套26にて支承端部まで延びる円周領域28.2は平滑でない表面領域として構成され、0.2μmの上側の領域の平均粗面度値を有している。
【0035】
各ゴデット駆動装置24と27にはそれぞれ1つの制御装置33.1と33.2とが対応配置されている。これらの制御装置33.1と33.2は制御ユニット34と接続され、この制御ユニット34によって各ゴデット駆動装置が制御される。
【0036】
案内外套23と26との間には平滑な周面領域25.1と28.1の領域にて交絡装置22が配置されている。交絡装置22は複数の糸通路30を有し、これらの糸通路30によって、案内外套26と案内外套23との間で張られた糸区分が案内可能である。糸通路30は圧縮空気供給装置と接続されており、この圧縮空気供給装置で糸通路30内では糸区分29の交絡が行なわれる。
【0037】
両方のゴデット15と16によっては全部で3本の糸が同時に互いに平行に並べられて複数回巻掛けられて案内される。ゴデット15,16おける最後の巻掛けは円周領域25.1と28.1との間で案内された糸区分29で形成されている。その際、糸区分29は交絡装置22のそれぞれ対応する糸通路30によって案内されかつ圧縮空気で負荷される。糸を案内するためには案内外套23と26はまずゴデット駆動装置24,27によって等しい周速度で駆動される。ゴデット15と16との最後の巻掛けは円周領域25.1と28.1との間で案内された糸区分29によって形成される。この場合には糸区分29は交絡装置22の対応する糸通路30を通して案内されかつ圧縮空気流で負荷される。糸を案内するためには案内外套23と26はゴデット駆動装置24と27とによって等しい周速度で駆動される。ゴデット15,16の最後の巻掛けにおいて糸張力を微調節するためには制御ユニット34と制御装置33.2とを介してゴデット駆動装置27が案内外套26の周速度を微調整するために変化させられる。前置された案内外套26における糸巻掛けは円周領域28.2においては大きな粗面度で案内されているので案内外套23の周速度に対する案内外套23の周速度のわずかな差はスリップ現象で補償されることができる。これに対し、案内外套26の円周領域28.1と糸区分29との間の最後の巻掛けにおいては糸と糸案内外套26との間には高い付着力が生ぜしめられるので、案内外套26の周速度の微調節が直接的に糸の交絡の糸張力の変化をもたらす。案内外套23の平滑な円周領域25.1と案内外套26の平滑な円周領域28.1との間の糸区分29の緊締によって、糸とゴデット表面との間のスリップ現象は可能ではない。その限りにおいては糸区分29における交絡のために規定された糸張力が調節される。前置されたプロセス並びに後置されたプロセスに対する影響は存在しない。
【0038】
ゴデットの張出し長さをできるだけ短くするため又はできるだけ数多くの糸を同時に短いゴデットに亘って案内するためには、この実施例においては2本の隣り合う糸の間の間隔は、5mmの大きさに調節されている。一方では間隔が小さすぎる場合の糸の相互の影響を排除し、他方では長く張出した、ひいては振動の影響を受けやすいゴデットを回避するためには隣り合う2本の糸の間の間隔は3mmから8mmの領域で構成されていることができる。
【0039】
実施例においては案内外套23における円周領域25.1は研磨された表面で生ぜしめられる。平均粗面度値Rは0.1±0.25μmの領域にあった。これに対し案内外套23の円筒領域25.2はR=0.65±2μmの表面粗面度で鈍く構成されている。案内外套26の円周領域28.1は相応の平滑な表面とR=0.1±0.025μmの平均粗面度値で構成され、円筒領域28.2はR=0.65±0.25μmの粗面度値で構成されている。
【0040】
図3においては本発明の方法を実施する本発明の装置の別の実施例が概略的に示されている。図3による実施例は図2の実施例とほぼ同じであり、したがって図1に示されている紡績機構を使用することができる。以下、先きの記述に関連して相違点だけを詳細に説明する。この場合、同じ機能を有する構成部分には同じ符号が付けられている。
【0041】
平行に延びる複数本の糸を案内するために両方のゴデット15と16は互いに間隔をおいて配置されている。この場合、糸は複数回の巻掛けでゴデット15,16の案内外套23と26において案内されている。平行に配置された3本の糸の数は1例である。実地においては16本又はそれ以上の糸がゴデットの周面にて案内される。案内外套23と案内外套26は等しい外径を有している。この場合、案内外套23は全部で3つの互いに異なる円周領域を有し、これらの円周領域はゾーン形に並べて構成されかつ案内外套26はそれぞれ2つの円周領域28.1と28.2とを有している。案内外套26における円周領域28.1と28.2の構成は先きに述べた図2の実施例における構成と同じである。案内外套23は支承端部と自由端部にて、それぞれ1つの平滑な円周領域25.1と25.3とを有している。平滑な円周領域25.1は直径段部31に構成されているので糸区分29による糸の最後の巻掛けは外径の小さい円周領域と接触する。直径段部31によっては前置された交絡装置22における糸の交絡が低い糸張力レベルで実施されることが達成される。これによって糸における単位長さあたりの交絡節のさらなる増殖が可能である。糸区分29の固定は案内外套23,26の平滑な円周領域25.1と28.1との間で行なわれる。糸を案内するためには交絡装置22に糸通路30あたりそれぞれ1つの走入糸ガイド32が前置されている。これによって、案内外套23と26の間隔とは無関係に交絡のために短い支え長さが調節される。糸の最後の巻掛けにて糸張力を調節するためにはゴデット駆動装置17は有利には制御装置33.2を介して制御される。前置された糸巻掛けにて補償状態を達成するためには案内外套26における円周領域28.2と案内外套23における中央の円周領域25.2は適当な大きさの粗面度を有する鈍い表面をもって構成されている。案内外套26の内部には加熱装置36が設けられ、該加熱装置36によって案内外套26が加熱可能である。この場合、案内外套26は、交絡のための糸区分29が80℃から250℃までの領域にあることのできる温度を有するように加熱される。特に加熱された糸を交絡することによって糸における単位長さあたりの節数が増殖することが判明した。
【0042】
原則的には糸を図示されていない、ゴデットの間に構成された他の付加的な加熱手段で加熱することもできる。
【0043】
例えば規定されたドラフト状態で前置されたドラフトを糸に可能にするためには、ゴデット15は糸導入のために同様に平滑に構成されかつ0.2μmの最大平均粗面度値を有する円周領域25.3を有している。
【0044】
したがって図3に示された実施例は走出ガレットとしてドラフトフィールドに配置されるのに特に適している。
【0045】
図4には本発明による方法を実施するための装置の別の実施例が概略的に斜視図で示されている。該装置は互いに間隔をおいて配置された2つのゴデット15,16を有している。これらのゴデット15,16はそれぞれ、図示されていない駆動装置によって所定の周速度で駆動される案内外套23,26を有している。案内外套23,26においては互いに平行に延びる3本の糸がそれぞれ部分巻掛けで案内されている。このためには案内外套23,26はRa≦0.2μmである領域の表面粗さを示す平滑な円周領域を有している。糸11はこれによって比較的に良好な付着で案内外套23と26にて案内される。
【0046】
ゴデット15と16との間には糸区分29に配属された糸通路30を複数有している交絡装置22が存在している。各糸通路30内には走入側に走入糸ガイド32が配属されかつ走出側に走出糸ガイド35が配属されている。これにより、ゴデット15,16の間で張られた糸区分の交絡のために個別の支えが与えられる。走入糸ガイド32も走出糸ガイド35も、例えば交絡節の強度を改善するためにその位置を変化させることができる。
【0047】
本発明の方法並びに本発明の装置は、合成糸を溶融プロセスで製造する場合に強い交絡を実施できるようにするために適している。この場合の特別な利点は交絡のための糸張力が個別に調節され、後続プロセスからの反作用又は前置されたプロセスからの影響がほぼ回避されることにある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の方法を実施するための本発明による装置の1実施例が統合された溶融紡績装置を概略的に示した図。
【図2】図1に示した本発明の1実施例の概略的な平面図。
【図3】本発明による装置の別の実施例の概略図。
【図4】本発明の装置のさらに別の実施例の概略図。
【符号の説明】
【0049】
1 紡績機構
2 処理装置
3 巻取装置
4 押出し機
5 紡績ポンプ
6 紡績バー
7 紡績ノズル
8 冷却装置
9 フィラメント
10 プレパレーション装置
11 糸
12.1,12.2 ゴデット対
13 引出しゴデット
14 併走ゴデット
15 ドラフトゴデット
16 併走ゴデット
17 ベッド糸ガイド
20 綾振り装置
21 圧着ローラ
22 交絡装置
23 案内外套
24 ゴデット駆動装置
25.1,25.2,25.3 円周領域
26 案内外套
27 ゴデット駆動装置
28.1,28.2 円周領域
29 糸区分
30 糸通路
31 直径段部
32 糸ガイドバー
33.1,33.2 制御装置
34 制御ユニット
35 走出糸ガイド
36 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融紡績に際してマルチフィラメント糸を案内しかつ交絡する方法であって、糸を2つのゴデットの案内外套により、部分巻掛けで又は複数回巻掛けで案内しかつ糸をゴデットの間に張られた糸区分で交絡する方法において、前記糸区分を交絡前と交絡後にそれぞれ、平均粗面度値が0.2μmよりも小さい表面を有する、前記案内外套における平滑な円周領域にて案内することを特徴とする、溶融紡績に際してマルチフィラメント糸を案内し交絡する方法。
【請求項2】
前記ゴデットが互いに無関係に駆動され、前記案内外套の周速度が互いに無関係に制御される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記糸区分における糸張力を調節するために、糸道にて交絡に前置された案内外套の周速度を変化させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ゴデットから糸を引出すために、案内外套の平滑な円周領域にて糸を案内する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
糸を複数回巻掛けする場合に糸をゴデットに導くために、案内外套の一方の平滑な円周領域にて案内し、ゴデットに巻掛けるために該案内外套の平滑でない円周領域にて案内し、その際、平滑な円周領域と平滑でない円周領域とがゾーン状に並べて当該案内外套に構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
最後の巻掛けで糸をゴデットから引出すために案内外套の直径の縮められた円周領域の上で糸を案内する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
案内外套の間で張られた糸区分が交絡に際して80℃から250℃の領域の温度を有するように交絡の前に糸を加熱する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
複数本の糸を同時に互いに平行に並べてゴデットに案内し、その際、案内外套の間で交絡のために張られた糸区分を3mmから8mmまでの領域の間隔で案内する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
マルチフィラメント糸を溶融紡績する場合に案内しかつ交絡する装置であって、回転可能に支承された案内外套(23,26)を有する、互いに間隔をおいて配置された2つのゴデット(15,16)と、該ゴデット(15,16)の間に配置された交絡装置(22)とを有し、少なくとも一方のゴデット(15)が駆動される案内外套(23)を有しており、少なくとも1本の糸(1)が部分巻掛け又は複数回の巻掛けで案内外套(23,26)にて案内される形式のものにおいて、案内外套(23,26)がそれぞれ、0.2μmよりも小さい平均粗面度の表面を有する少なくとも1つの平滑な円周領域(25.1,28.1)を有しておりかつ糸道にて交絡装置(22)に対応配置されていることを特徴とする、マルチフィラメント糸を溶融紡績する場合に案内しかつ交絡する装置。
【請求項10】
ゴデット(15,16)がそれぞれ1つの制御可能なゴデット駆動装置(24,27)を有し、該ゴデット駆動装置(24,27)によって案内外套(23,26)が所定の周速度で駆動可能である、請求項9記載の装置。
【請求項11】
平滑な円周領域(25.1,28.1)が案内外套(23,26)の自由端部に構成されている、請求項9又は10記載の装置。
【請求項12】
案内外套(23,26)が0.2μmよりも大きい平均粗面度値を有する表面を備えた平滑でない円周領域(25.2,28.2)を有し、該円周領域(25.2,28.2)が平滑な円周領域(25.1,28.1)の横ゾーン状に案内外套(23,26)に構成されている、請求項9から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
糸を走入させるために前置されたゴデット(15)が案内外套(23)に、該案内外套(23)の支承された端部に構成された第2の平滑な円周領域(25.3)を有している、請求項12記載の装置。
【請求項14】
糸を走出させるために後置されたゴデット(15)が案内外套(23)に直径段(31)を有し、該直径段(31)が当該案内外套(23)の自由端部に形成されている、請求項12又は13記載の装置。
【請求項15】
ゴデット(15,16)の少なくとも1つが加熱装置(36)を有し、該加熱装置(36)によって案内外套(23,26)が加熱可能である、請求項9から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
ゴデット(15,16)の案内外套(23,26)が、同時に複数本の糸を並べて案内可能である長さに構成されている、請求項9から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
交絡装置(22)が、それぞれ3mmから8mmの領域の間隔を間に形成する複数本の糸を案内するために複数の糸通路(30)を有している、請求項16記載の装置。
【請求項18】
各糸通路(30)に少なくとも走入側にて1つの糸ガイド(32)が対応配置されている、請求項17記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−522048(P2008−522048A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543748(P2007−543748)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012632
【国際公開番号】WO2006/058667
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】