説明

溶融金属のためのフィルタを濾過準備する方法

フィルタボックスに実質的に水平に配置された多孔質セラミックフィルタ若しくは耐熱性フィルタを有する直列配列溶融金属濾過装置を濾過準備するための方法が開示されている。このフィルタボックスは、溶融金属のための吸入口と排出口とを有し、当該排出口は、フィルタの下流側に繋がる出口通路にあって、閉じることができる。本発明に係る方法は、ある深さの溶融金属でフィルタの上流側を完全に被覆するに十分な量の溶融金属をフィルタボックスに加え、出口通路の排出口を一時的に密閉する工程を含む。その後、溶融金属が上記フィルタを通って流れ始めるまで、ファン若しくはエアーベンチュリーにより上記出口通路から空気の流れを吸引することにより、0.1〜10kPa/秒の速度で、閉じられた出口通路を徐々に真空引きする。あるポイントで、真空が急速に開放され、溶融金属排出口が開放される。一旦フィルタがこのように濾過準備されると、フィルタの吸入口サイドにおいて溶融金属ヘッドが比較的低くても、金属がフィルタを通って流れ続ける。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、溶融金属、例えば溶融アルミニウの濾過に関する。
【0002】
背景技術
濾過により、例えば溶融アルミニウム等の溶融金属から、微小な含有物を取り除くことが工業的に共通のプラクティスとなっている。このような濾過に使用される典型的な材料は、溶融金属を通過させる多孔質セラミックス材料若しくは耐熱性材料である。これらのセラミックス材料若しくは耐熱性材料は、容易には溶融金属により溶解されない。また、このような材料が相対的に細かい気孔径を有する場合、フィルタを通過させて金属を流すことを始める際(フィルタを濾過準備する際)、かなりの困難に直面する。このような材料では一般的に濾過準備で発生する困難を解消するに十分な高さのメタルヘッドとすることができるような深いフィルタボックスを使用することが必要である。濾過効果を改善するため、これらのフィルタ材料の気孔径が微細である種類のものが様々な製造業者により開発されているが、濾過準備における困難がそれらの有益性を制限している。
【0003】
この問題に対する1つの解決手段が、日本特許公開公報JP60−5829において提案されている。この日本特許公開公報JP60−5829には、超純粋な金属を製造する際に使用される、溶融金属を濾過するためのフィルタを濾過準備するため真空フードを使用することが教示されている。フィルタは微細な気孔径を有するため、フィルタを濾過準備するためには、十分大きな金属ゲージ圧が必要である(具体例において、およそ大気圧以下のゲージ圧が示されている。)。この日本特許公開公報によれば、真空フードへの導管を介して緩衝用タンク(buffer volume)に接続された真空ポンプにより真空が生み出される。この真空ポンプを使用して、フィルタの下流側において当該フィルタに繋がる緩衝用タンクを排気する。一旦濾過準備が行われると真空を解除することができるように、急速真空開放バルブを設けてもよい。
【0004】
日本特許公開公報JP06−49551には、連続的直列配列されたフィルタ装置が開示されており、当該装置は、多孔質チューブフィルタに基づいており、チューブ排出口からフィルタエレメントを通って通過する金属に力を加えるためファンが使用されている。このファンは、送風するためだけに作動し、如何なる吸引も行われない。
【0005】
また、WO88/07165に炉内攪拌装置が開示されている。このWO88/07165には、閉じられた側方チャンバ内の溶融金属を、繰り返し上昇させたり下降させたりして、金属を、成形された開口部に通過させ、それによりメインの炉内において混合を行う。閉じられたサイドチャンバにおいて金属の上部にあるガスに対して作用するファンを用いて、圧力を加えたり吸引したり交互に行うことにより、この金属を上昇させたり下降させたりする。しかしながら、このようなファンをフィルタと共に使用することは提案されていない。
【0006】
本発明者らは、厚さに比して比較的大きな断面を有する比較的大きな商業用フィルタを濾過準備しようとする際に問題に直面した。このようなフィルタの場合、比較的大きな出口通路を有する。そのため、JP60−5829の明細書に記載されているようなシステムでは適当でないことが分かった。例えば、JP60−5829のシステムで必要とされる真空レベルとするためには真空ポンプが必要であり、一般的な真空ポンプでは、商業用出口通路から空気を十分速くは取り除くことができない。より大きなフィルタを用いる商業オペレーションにおいては、高いレベルの真空とするのではなく、十分速い速度で出口通路から空気を取り除くことができることが必要である。
【0007】
十分大きな断面を有し、特に微細な気孔径を有する商業用金属フィルタを濾過準備することは複雑な技術的問題である。ある限度範囲外の速度で真空引きすると濾過準備が失敗に終わる。真空引きする速度が大きすぎるとフィルタエレメントが破裂する。他方、真空引きの速度が遅すぎると、真空がある限界レベルに到達したときフィルタエレメントが、限られた場所だけしか濾過準備されず、それによりそれらの場所だけしか金属がフィルタを通過しない。このようなことが起こる場合、進行した真空が開放されてもフィルタがもはや濾過準備されず、濾過準備されていない領域を金属が通過しない。結果として得られる濾過領域が大幅に減少し、その結果濾過効果が低下し、フィルタを介した金属レベルの降下が増加し、ある場合ではプロセスを中断する必要がある。
【0008】
また、JP60−5829に示したような真空タンクを使用する試みが成されている。このJP60−5829では、当該真空タンクが、最終的な所望の圧力において十分なガス体積を収容することができるサイズに形成されており、その圧力は、フィルタに接続する前に分離した真空ポンプによりなされる。これは、真空ポンプがシステムに接続する前にタンクから分離される点で参照文献と異なる。大きな真空タンクが必要でないので、この方法は、制御が不可能であって、最初高い排気速度を発生させる傾向がある。システムに漏れがない場合、密閉されていることにより濾過準備を可能とするには最終圧力が不十分となる。大きな商業的濾過作業において満足できる構成であるかは分からない。
【0009】
本発明は、気孔径が小さすぎて、浅いフィルタボックスにおいて濾過準備をすることができないような大きな商業用フィルタを使用する際に用いられる濾過準備システムを提供することを目的とする。
【0010】
(発明の開示)
第1の発明は、フィルタボックスに実質的に水平に配置された多孔質セラミックスフィルタ若しくは耐熱性フィルタを有する、溶融金属のための直列配列濾過装置を濾過準備する方法に関する。このフィルタボックスは、溶融金属の吸入口と、溶融金属の排出口とを有する。この排出口は、フィルタの下流側に繋がる出口通路にあり、閉鎖することができる。本発明に係る方法は、ある深さの溶融金属により、フィルタの上流側を全体的に被覆するに十分な量の溶融金属をフィルタボックスに加え、密閉可能な被覆部材により出口通路の排出口を一時的に閉じる工程を具備する。その後、溶融金属がフィルタを通過し始めるまで、ファンを用いて、出口通路から空気の流れを引き込み、0.1〜10kPa/分の速度で、閉じられた出口通路を徐々に真空引きする。密閉可能な被覆部材が溶融金属排出口から取り除かれ、あるポイントで、急速に真空が開放される。一旦フィルタがこのように濾過準備されると、フィルタの吸入口側において溶融メタルヘッドが比較的低い場合でも、フィルタを金属が流れ続ける。
【0011】
当該方法でファンを使用することにより、いくつかの重要な利点が得られることが分かってきた。第1に、真空タンクは必要でなく、ファンは、フィルタの濾過準備に必要な真空レベルに非常に急速に到達することができるように、非常に急速に出口通路から空気を取り除くことができる。第2に、ファンに直接的に接続することにより、濾過準備がなされると、行きすぎることなく非常に急速に真空を開放することができる。
【0012】
本発明の別の実施の形態では、ファンの代わりにエアーベンチュリーを使用してもよく、同様の結果を得ることができる。
【0013】
また、本発明は、溶融金属を濾過するための新規な装置に関する。この装置は、フィルタボックスと、溶融金属を当該フィルタボックスに供給することができる供給容器と、溶融金属を上記供給容器から受け取るため上記フィルタボックス内に実質的に水平に設けられた多孔質セラミックスフィルタ若しくは耐熱性フィルタとを備える。出口通路が、濾過された溶融金属を受け取るため上記フィルタの下に配置されている。この出口通路は、上記フィルタボックスに亘って横方向に、かつ放出容器の底部の下に延在する。濾過された溶融金属が、出口通路から放出容器に流れることができるように、放出容器の底部にある開口部が出口通路に連通する。垂直に移動可能なクロージャ部材が用いられ、放出容器と出口通路との間の開口部を塞ぎ密閉する。空気用導管が、第1端部においてクロージャ装置に接続され、第2端部において、上記出口通路から空気を吸引するためのファン若しくはエアーベンチュリーに接続される。この装置は、クロージャ部材を上昇若しくは下降させるための手段と、上記出口通路内に形成された真空を開放するためのバルブとをさらに備える。
【0014】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明に係る真空制御にとって、真空の量を徐々に増加させることは重要である。すなわち、濾過準備のスタートから真空が開放されるポイントまで真空が減少することはない。徐々に増加することには、一連のステップを介して増加する形態若しくは直線的に増加する形態を含んでいてもよい。
【0015】
濾過準備に使用されるファンは、大気に放出するためのバルブを有する導管を介して出口通路に接続されていることが好ましい。真空が開放されるときこのバルブは大気に対して開放される。
【0016】
ファンの必要条件は、使用されるフィルタのサイズに依存し、一般的に2〜20kPaの真空まで吸引することができ、フィルタの排出口での体積を約1〜120秒、好ましくは2〜30秒内に所望の真空まで排気する。2〜20kPaの真空とは、標準大気圧(101kPa)より2〜20kPa低いことを意味する。一般的に、この条件を満たすファンのタイプは、ダクトファン若しくは再生可能な送風機(regenerative blower)である。しかしながら、これらの条件を満たすものであればどのようなものを使用してもよい。この条件を満たす大きさのエアーベンチュリーを使用してもよい。一般的な商業用フィルタの取り付けに適し、そして上記条件を満たすファンは、6kPaの真空において320標準リットル/分の排気速度を有する。
【0017】
溶融金属排出口を具備する出口通路を閉じるクロージャ部材によりファン用の導管を出口通路に接続することが好ましい。クロージャ部材が適切な場所にあるとき、出口通路と排出口は大気から密閉される。このクロージャ部材は、真空が開放されたとき、出口通路の上面及び容器から持ち上げられ、出口通路が大気圧まで急速に戻り、濾過された溶融金属を受け取るように容器が開放される。
【0018】
ファンは、変更可能な速度制御装置が備えられ、吸引速度をゆっくりと増加させることができる。しかし、好ましい実施の形態では、導管は三方向弁を含んでいても良い。この三方向弁は、2つのストリーム間のバルブポジションを変更することにより、ファンが外側から空気を引き込むことができ、若しくはフィルタに対して真空引きすることができ、若しくは中間のコンビネーションとすることもできる。一般的なオペレーションにおいて、バルブは、ファンが空気を外側だけから引き込むことができるポジションに配置され、そしてこのポジションにおいてファンが回転を始めフルスピードになる(フィルタは隔離されている)。その後、バルブは例えばモータ制御により徐々に他方のストリームポジションに向かって移動し、ファンはフィルタボックスからの空気の割合が次第により高くなった空気の流れを引き込む。これにより、クロージャ部材とフィルタとの間の密閉が変わるか若しくはリークしてしまうときでさえ、真空の上昇を徐々に緩やかに制御することができる。
【0019】
本発明に係る濾過装置の特定の実施形態を図1及び2に示している。この濾過装置は、側壁と底壁14とを有する濾過ボックス10を備える。これらの壁は、断熱性材料から形成されている。溶融金属18をボックスに供給するための供給容器16が、当該装置の一方のサイドにある。側壁と内部分離壁22との間に支持された水平の濾過エレメント20が、当該ボックス内にある。出口通路23が、フィルタ20の下に設けられ、必要なときにフィルタボックスを空にする排出管32であって、閉じることが可能な排出管32が設けられている。
【0020】
出口通路23は、溶融金属を容器28に放出するための排出開口部25を備える。濾過準備のため、フィルタ20、開口部25、及び出口通路23が、クロージャ部材24により閉じられ、このクロージャ部材24は、図1に示されたように排出開口部25上に配置されこれを密閉する。クロージャ部材24の開口部は、コネクタ30により導管34に接続され、導管34はバルブ38を含むファン取込ダクト36に接続されている。このバルブ38は、導管を介してポンプ吸引ダクト36まで流すことができるポジションと、大気から中へ空気を引き込むため切り換えられるポジションとの間をモータ駆動により移動することができる。バルブ38は、これら2つのストリームの間のポジションで、ファンが大気から空気の一部を取り込むことができ、導管34から残りの部分を取り込むことができる。コネクタ30は、大気に接続された、急速作用可能なソレノイドバルブ31を備える。
【0021】
図1に示したポジションにおいて、図示されているように最初フィルタ装置は溶融金属18により充填され、ファン40は、バルブ38が大気に完全に開放された状態で開始され、導管34はファンから隔離される。モータ駆動により他方のストリームに向かってバルブ38を移動させることにより、出口通路23から来る空気の流れの割合を徐々に増加させフィルタの下のスペースに真空を創り出す。金属の流れがフィルタ20を通り、濾過準備がなされるポイントに到達するまで、ファン40及びバルブ38の作用により真空を急速に緩やかに増加させる。このポイントにおいて、真空を急速に開放することが重要であり、これは、バルブ31を大気開放することにより行われる。真空の急速な開放を行うために、バルブ31は、例えば電気回路の完成により金属を検出する伝導性プローブにより、壁面23の底面において溶融金属が検出されると開放されるソレノイドバルブであることが好ましい。
【0022】
一旦真空が開放されると、クロージャ部材24は、図2に示すようにフィルタボックスから持ち上げられ、出口通路23の全開放端が大気に曝され、勿論これにより金属の流れに対して放出容器28が開放される。
【0023】
本発明に係るより詳細なバージョンが、図3及び4の斜視図に示されている。商業的なセラミック多孔性濾過装置のために使用されるサイズ及びタイプに特有の耐熱性直列配列濾過ボックス10が設けられている。多孔性濾過エレメント20は、当該ボックス内に実質的に水平に配置されている。我々は、これは、濾過エレメントが水平に対して約10°以内で配置されていることを意味する。この多孔性濾過エレメントは例えば捕捉されたガスを開放するために設けられる。直列配列された耐熱性容器を含む吸入口16及び排出口28が設けられ、これらは、従来の金属配送システムに接続されている。図3及び4では見ることはできないけれども、図1及び2に示されたように、濾過エレメントの下で、出口通路23が排出開口部25に接続されている。
【0024】
取り外し可能なカバー41が、フィルタボックスのため設けられている。このカバーは、使用前にフィルタエレメントを予め加熱するバーナー42を備える。このカバーは、垂直ポスト43上に配置され持ち上げられ、必要でないときは取り外すことができる。
【0025】
開口底部を有するホロ状ボックスの形態のクロージャ部材24が設けられている。このクロージャ部材24はポスト44上に配置され、ホール25を覆いそして密閉することができそれによりフィルタエレメントの下にある出口通路23を密封するために、クロージャ部材24を適切なポジションに移動させ、そして排出口容器28まで下降させる。クロージャボックス24は、パイプ34によりファン40に接続されている。金属が出口通路において検出されるとき真空を開放することができる急速開放ソレノイドバルブ45が、接続パイプ34上であってクロージャの近くに配置されている。当該ポストの制御装置46により制御された気体式手段により金属が検出されたとき自動的にクロージャが上昇することができる。金属は、クロージャを通過して供給される電気コンタクト47により検出される。これらは、スチールロッド若しくはグラファイトチップスチールロッド(graphite tipped steal rods)の形態を取る。
【0026】
濾過準備は、約1〜120秒、好ましくは約2〜30秒の時間内に行われる。これは、約25.8〜10130平方センチメートル(4〜1570平方インチ)の断面積を有する濾過装置を備えるフィルタを用いてなされる。濾過領域は、好ましくは少なくとも645平方センチメートル(100平方インチ)である。このフィルタは、一般的に約1.25〜10.2センチメートル(0.5〜4.0インチ)の厚さを有し、好ましくは約2.5〜7.6センチメートル(1〜3インチ)の厚さを有する。
【0027】
使用されるフィルタは、商業的に入手可能な様々なフィルタから選択することができ、一般的に平均値約150〜500μmのフィルタ気孔径を有する。この平均気孔径は、平均的な「窓」若しくは相互作用するネック部のサイズ若しくは多孔質耐熱性媒体のセル間の通過として定義することができる。
【0028】
平均気孔径は以下のようにして測定することができる。具体例が、媒体の中央において、流れ方向に対して垂直な方向にフィルタ媒体から切断されている。サンプルを走査型電子顕微鏡により観察することにより、セラミックネック部間に見られる「窓」のサイズが測定され、サンプルの平均値が決定される。図5は、そのような測定の一般的な結果を示している。測定された全ての気孔径の平均値が50%以下である気孔は、最終的な平均気孔径計測において考慮されない。なぜならば、これらは溶融金属により濾過準備されないからである。
【0029】
500μm以上の平均気孔径を有するフィルタは、一般的に、濾過準備をすることなく始めることができ、一方150μm以下の平均気孔径を有するフィルタは、出口通路に真空を加えることにより濾過準備されることができるが、真空でない状態で濾過を続けるためには、フィルタより上の金属溶湯ヘッドを非常に大きくする必要がある。
【0030】
このタイプのフィルタは、従来ポアパーインチ(ppi)で定義されている。しかし、このパラメータは、それが使用される製造方法に依存するため、平均気孔径に特有な定義ではない。比較のため、ある商業的に入手可能なフィルタ媒体を以下の表1にリストアップした。
【表1】

【0031】
この上記表の最初の4つの項目は、商業的に鋳造プラントにおいて金属を濾過するための浅いCFFボックスに一般的に使用されるフィルタ材料である。最後の5つの材料は、非常に高い金属ヘッドを濾過準備のため設けられないならば従来のシステムにおいて使用されない。それらは、本発明と共に従来使用されたフィルタ媒体に特有である。
【0032】
フィルタに亘る金属の深さは、容器における金属の高さ、並びに容器底部からフィルタ上部までの垂直距離(VDTF)の合計として定義される。容器における金属の高さは、一般的に約20〜30cm(8〜12インチ)の範囲にある。本発明に係る手順によれば、一般的にVDTFは、約0〜10cm(0〜4インチ)の範囲にあり、そのためフィルタより上の金属の深さは、一般的に約20〜40cm(8〜16インチ)となるであろう。一般的なフィルタにおいて、VDTFは、0〜50cm(0〜20インチ)の範囲にあり、そのためフィルタを超える金属の深さは、20〜80cm(8〜32インチ)の範囲にあるだろう。
【0033】
そのため、フィルタボックスサイズ(即ち、フィルタ上に金属ヘッドを収容するために必要なフィルタ断面及び深さ)が、従来のセラミックス濾過装置より本発明において小さいか、若しくは現存する従来のセラミックスフィルタと実質的に同じスペースに導入される。さらに、本発明において低い平均気孔径の媒体が使用されるので、濾過降下は、従来のセラミックスフィルタより高く、実質的により大きい体積を占める深いベッドのフィルタの効果とより近い。本発明において、従来のセラミックフィルタ装置とベッドフィルタの両方と比較して体積がより小さいことは、フィルタ交換時において排出される金属が少ないことを意味する。
【0034】
本発明は、フィルタボックスに配置された単一のフィルタエレメントにより示されている。しかし、当該技術分野において既知の他の構成を本発明と共に使用することができることは理解できるであろう。例えば、単一のフィルタエレメントを、2以上のものと置き換え、互いの側に配置してもよい。これにより単一のエレメントで可能な面積より大きい断面積とすることができる。さらに、例えばSelee社に譲渡された米国特許5、673、902号に例示されたフィルタボックスにおいて他方の上に一方が配置された2つのフィルタエレメントを本発明と共に使用することも可能である。
【0035】
(実施例1)
図1に示された設計のパイロット濾過装置に対して試験を行った。使用されたフィルタは、70ポアパーインチ(PPI)の気孔率を有する、入手可能なフィルタであった。これは、5.1cm(2インチ)の厚さを有し、929平方センチメートル(144平方インチ)の断面積を有する。出口通路をダクトファン(スペンサータービン社(ウインドサー、CT USA)により製造されたSpencerVB−055)の吸い込み口に導管を介して接続した。この導管は、ファンに引き込まれる空気に大気を引き込むための通気バルブと三方向弁を含む。
【0036】
フィルタより約20cm(8インチ)の深さまで、溶融アルミニウム合金を濾過装置に加えた。出口通路及び溶融金属排出口容器が閉じられた状態で、ファンをスタートし、三方向弁をモータにより徐々に移動させ、出口通路からの空気の割合を増加させ、大気からの空気の割合を減少させた。真空が約6kPaのレベルに達するポイントで、フィルタを約10秒間濾過準備する。このポイントで、導管内の通気バルブを開放し、出口通路及び溶融金属排出口を急速に開放する。その結果が、図6に示されている。図6では、ライン42が徐々に減少する圧力を示し、ポイント44が、金属が出口通路26の底部において検出されるポイントを示しており、このポイント44が濾過準備が達成されたことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を例示した図面において、図1は、本発明に係る濾過装置の部分を概略的に例示した図面である。
【図2】図2は、図1の図面を修正したものである。
【図3】図3は、本発明に係る濾過装置の斜視図である。
【図4】図4は、図3の濾過装置を異なる方向から見た別の斜視図である。
【図5】図5は、孔径がいくらを示しているかを示したグラフである。
【図6】図6は、時間に関する、真空の増加を示したプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属のための吸入口と排出口とがフィルタボックスに設けられ、該フィルタボックス内に多孔質セラミックフィルタ若しくは耐熱性フィルタが実質的に水平に設けられ、上記排出口が、上記フィルタの下流側に繋がる出口通路にあって閉鎖可能である、直列配列溶融金属濾過装置を準備する方法であって、
ある深さの溶融金属でフィルタの上流側を完全に被覆するため十分な量の溶融金属をフィルタボックスに加える工程と、
密閉可能な被覆部材により、出口通路の溶融金属排出口を一時的に閉じる工程と、
上記溶融金属が上記フィルタを通過して流れ始めるまで、ファン若しくはエアーベンチュリーにより上記出口通路から空気の流れを引き込み、0.1〜10kPa/秒の速度で、閉じられたチャンバに対して徐々に真空引きする工程と、
その後上記溶融金属排出口から密閉可能な被覆部材を取り外して、急激に真空を開放する工程と、を備える濾過準備方法。
【請求項2】
上記空気の流れが、ファンにより上記出口通路から引き込まれることを特徴とする請求項1記載の濾過準備方法。
【請求項3】
上記空気の流れが、エアーベンチュリーにより上記出口通路から引き込まれることを特徴とする請求項1記載の濾過準備方法。
【請求項4】
上記ファンが、大気に対して通気するバルブを備える導管を介して上記フィルタボックスの出口通路と接続され、上記大気に対して当該バルブを開くことにより真空が開放されることを特徴とする請求項2記載の濾過準備方法。
【請求項5】
上記導管が、上記密閉可能な被覆部材に接続され、真空が開放されるとき上記密閉可能な被覆部材が上記出口通路及び溶融金属排出口から取り外されることを特徴とする請求項4記載の濾過準備方法。
【請求項6】
上記導管が、上記ファンに引き込まれる空気の流れに大気を注ぎ込むための三方向弁を含むことを特徴とする請求項3記載の濾過準備方法。
【請求項7】
上記濾過準備が、約1〜120秒の時間内に行われることを特徴とする請求項6記載の濾過準備方法。
【請求項8】
上記時間が、約2〜30秒であることを特徴とする請求項7記載の濾過準備方法。
【請求項9】
上記フィルタが約25〜10130平方センチメートル(4〜1570平方インチ)の濾過領域を有することを特徴とする請求項7記載の濾過準備方法。
【請求項10】
上記濾過領域が、少なくとも645平方センチメートル(100平方インチ)であることを特徴とする請求項7記載の濾過準備方法。
【請求項11】
上記フィルタが、約1.25〜10.2センチメートル(0.5〜4.0インチ)の膜厚を有することを特徴とする請求項7記載の濾過準備方法。
【請求項12】
上記フィルタの膜厚が、約2.5〜7.6センチメートル(1〜3インチ)であることを特徴とする請求項11記載の濾過準備方法。
【請求項13】
上記フィルタが、約150〜500μmの平均気孔径を有することを特徴とする請求項11記載の濾過準備方法。
【請求項14】
フィルタボックスと、上記フィルタボックスに溶融金属を供給するための供給容器と、上記供給容器から溶融金属を受け取るため上記フィルタボックス内に実質的に水平に配置された多孔質セラミックスフィルタ若しくは耐熱性フィルタと、上記フィルタの下に延在し濾過された溶融金属を受け取るための出口通路であって、上記フィルタボックスに亘って横方向にかつ上記出口通路に上記放出容器を連通する開口部を有する放出容器底部の下に延在する出口通路と、上記放出容器と出口通路との間の開口部に配置され当該開口部を密閉するために用いられる、垂直に移動可能なクロージャ部材と、第1端部において上記クロージャ部材に接続され、第2端部において上記出口通路から空気を吸引するためのファン若しくはエアーベンチュリーに接続された空気用導管と、上記出口通路に設けられた、大気を開放するためのバルブと、上記クロージャ部材を上昇若しくは下降させるための手段と、を備える、溶融金属を濾過するための装置。
【請求項15】
上記空気用導管の第2端部がファンの吸込み口に接続されることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項16】
上記空気用導管の第2端部が、上記出口通路から引き込まれる導管内の空気に大気を注ぎ込むための三方向弁を有することを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
上記ファンが、0.1〜10kPa/秒の速度で、閉じられたチャンバに対して徐々に真空引きするために用いられることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項18】
上記真空開放バルブが、垂直に移動可能なクロージャ部材に接続されていることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項19】
上記垂直に移動可能なクロージャ部材が、溶融金属の存在を検出するため、その底面から延びる電気コンタクトを備えることを特徴とする請求項18記載の装置。
【請求項20】
上記フィルタボックスが、取り外し可能な被覆部材を含むことを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項21】
上記フィルタが約25〜10130平方センチメートル(4〜1570平方インチ)の濾過領域を有することを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項22】
上記濾過領域が、少なくとも645平方センチメートル(100平方インチ)であることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項23】
上記フィルタが、約1.25〜10.2センチメートル(0.5〜4.0インチ)の膜厚を有することを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項24】
上記フィルタの膜厚が、約2.5〜7.6センチメートル(1〜3インチ)であることを特徴とする請求項14記載の装置。
【請求項25】
上記フィルタが、約150〜500μmの平均気孔径を有することを特徴とする請求項14記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−534494(P2007−534494A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500020(P2007−500020)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000248
【国際公開番号】WO2005/080028
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(591074002)アルキャン・インターナショナル・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】ALCAN INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】