溶解炉システム
【課題】低コストで実現可能な溶解炉システムを提供する。
【解決手段】アルミニウム溶湯103を収納する溶解炉102と溶解炉の側壁及び底壁に対向させた攪拌装置101であって、ある軸線の回りに配列された、永久磁石製の、第1の磁石体11と第2の磁石体11とを備え、前記第1及び第2の磁石体を前記軸線の回りに回転駆動する駆動機構を備え、前記第1及び第2の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれN極及びS極となるように磁化され、前記第1の磁石体と前記第2の磁石体は前記軸線の回りに交互に配置され、前記第1の磁石体及び第2の磁石体の磁場強度を、前記第1あるいは第2の磁石体からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記収納空間に至り、前記収納空間からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記第2あるいは第1の磁石体に至るものに設定した攪拌装置とを備える。
【解決手段】アルミニウム溶湯103を収納する溶解炉102と溶解炉の側壁及び底壁に対向させた攪拌装置101であって、ある軸線の回りに配列された、永久磁石製の、第1の磁石体11と第2の磁石体11とを備え、前記第1及び第2の磁石体を前記軸線の回りに回転駆動する駆動機構を備え、前記第1及び第2の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれN極及びS極となるように磁化され、前記第1の磁石体と前記第2の磁石体は前記軸線の回りに交互に配置され、前記第1の磁石体及び第2の磁石体の磁場強度を、前記第1あるいは第2の磁石体からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記収納空間に至り、前記収納空間からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記第2あるいは第1の磁石体に至るものに設定した攪拌装置とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解炉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムスクラップ等を溶解し、アルミニウムをインゴットにして製品化することが行われている。この際、インゴットの品質を均一化するためには、溶解炉中のアルミニウムを十分に撹拌する必要がある。このため、撹拌棒を溶解炉中に入れて、熔解アルミニウムを人為的に撹拌したり、あるいは、炉底下に電気駆動式の撹拌装置を設置し、この装置により熔解アルミニウムの撹拌を行っていた。
【0003】
さらには、特許文献1に示すように、溶解炉にバイパス(連通路)を設け、このバイパス中の溶湯を電磁力で駆動することにより、溶解炉中の溶湯を攪拌するものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の特許文献1のものは、溶解炉にバイパスを設けるものであるため、溶解炉の製造コストが嵩むのが避けられない。また、既存の溶解炉にバイパスを設けるのは理論上可能ではあるが、コストや設置場所等の要因によって、実際上不可能の場合もあり得る。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、低コストで実現可能な溶解炉システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶解炉システムは、
側壁と底壁とにより収納空間を有する容器状に形成された、アルミニウムの溶湯を収納する、溶解炉と、
前記溶解炉の前記側壁及び前記底壁のうちの少なくとも一方に対向させた攪拌装置であって、ある軸線の回りの円上に配列された、永久磁石製の、少なくとも1つの第1の磁石体と少なくとも1つの第2の磁石体とを備え、前記第1及び第2の磁石体は前記軸線の回りに回転駆動する駆動機構を備え、前記第1の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれN極及びS極となるように磁化され、前記第2の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれS極及びN極となるように磁化され、前記円上に前記第1の磁石体と前記第2の磁石体が交互に配置され、前記第1の磁石体及び第2の磁石体の磁場強度を、前記第1あるいは第2の磁石体からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記収納空間に至り、前記収納空間からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記第2あるいは第1の磁石体に至るものに設定した、攪拌装置と、
を備えるものとして構成される。
【発明の効果】
【0008】
低コストで実現可能な溶解炉システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの全体構成の平面説明図。
【図2】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの全体構成の縦断説明図。
【図3】攪拌装置本体の具体的構成の一例を示す、縦断説明図。
【図4】磁石体の配置を示す平面説明図。
【図5】磁石体の構成例を示す斜視図、磁石体を構成する第1、第2の層と、第3の層を示す平面図。
【図6】本発明の実施形態との比較のために示す、基本型磁石体の構成例を示す斜視図、磁石体を構成する第1―第3の層を示す平面図。
【図7】本発明の実施形態の磁石体による得られる磁束強度を、基本型磁石体によるそれとの比較で示す、特性曲線。
【図8】本発明の実施形態から得られる磁力線の分布を示す特性説明図。
【図9】図8において、基点からの距離による、溶解炉中の溶湯に加えられる電磁力の大きさを示す特性曲線。
【図10】図8において、基点(溶解炉の側壁の外表面上の1点)からの距離と磁束密度との関係を示す特性曲線。
【図11】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの変形例の全体構成を示す、平面説明図。
【図12】本発明によるアルミニウム溶解炉システムのさらに異なる変形例の全体構成を示す、平面説明図。
【図13】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの別の変形例の全体構成を示す、縦断説明図。
【図14】図13の例における平面説明図。
【図15】本発明によるアルミニウム溶解炉システムのさらに別の変形例の全体構成を示す、縦断説明図。
【図16】本発明によるアルミニウム溶解炉システムのさらに別の変形例の全体構成を示す、縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明に係る溶解炉システム100の全体構成の平面説明図及び縦断説明図である。この溶解炉システム100は、溶解炉102と攪拌装置101とを有するものとして構成される。攪拌装置101は、この実施形態においては、特に図2から分かるように、溶解炉102に隣接して立設状態に設けられている。
【0011】
前記溶解炉102としては、公知のものを採用することもできる。即ち、この溶解炉102は、投入されたアルミニウムスクラップを各種のバーナー(図示せず)で加熱して溶解し、溶湯103とするものとして構成されている。さらには、溶解炉102として本発明とは関係無しに既に設置されたものを、あとから本発明の実施形態の一部として用いることもできる。つまり、既設の溶解炉に、前記攪拌装置101を付設することにより、本発明の溶解炉システム100とすることができる。
【0012】
この溶解炉102の4つの側壁のうちの1つの側壁の外側に、特に図2からわかるように、前記攪拌装置101が設けられている。
【0013】
なお、図1では、溶解炉102の側壁を全て同じ厚さWtのものとして構成しているが、攪拌装置101と向かい合う側壁だけを、必要に応じて、薄く構成することもできる。例えば、攪拌装置101と向かい合う側壁のみを25mmとし、それ以外の側壁を50mmとすることができる。
【0014】
この攪拌装置101は、内部の攪拌装置本体101Aと、それを収納するケース101Bとを有する。このケース101Bは、後述のように、外側の3側面を磁気シールドするものである。
即ち、ケース101Bは、図1から分かるように、第1−第4の側面部111−114、底面部115、上面部116を有する。溶解炉本体102に向かい合う第1の側面部111は非磁性材で構成され、それ以外の3つの第2―第4の側面部112−114、底面部115、上面部116は磁性材あるいは強磁性材で構成されている。これにより、攪拌装置本体101Aは、1つの側面のみが磁気的に解放され、それ以外の3つの側面が磁気シールドされていることになる。よって、後述するところからも分かるように、攪拌装置本体101Aから射出する/に戻る磁力線は前記第1の側面部111のみを通過して外部に/外部から出射/入射されることになる。なお、前記第1の側面部111を省略し、解放状態のものとして構成することもできる。
【0015】
この攪拌装置本体101Aとしては、各種の構成のものを採用できる。例えば、図3に記載のものを用いることができる。この図3に記載のものは、本発明の発明者の先の発明、特許出願にかかるものである(特開2006−177612号公報)。ただし、攪拌装置本体101Aの磁石体11は、後述する図3(a)―(c)の構成を有し、本発明に独自のものである。また、図面上、視覚的には、各部分の寸法の比率は多少変えてある。
【0016】
上記攪拌装置本体101Aは、概略的には、ほぼ垂直な軸線の回りに複数の磁石体11,11,……を配置し、それらの磁石体11を前記軸線の回りに回転させるようにしたものである。これにより、磁石体11から出てアルミニウムの溶湯103を通過している磁力線(磁場)が回転する。これにより、磁力線がアルミニウムの溶湯103中を移動して、電磁力が生じる。この電磁力により、溶湯103を強制的に図1の矢印Aに沿って左回りに流動させるものである。なお、その際に熱が発生するが、その熱を空冷する機構を備えるものとして構成されている。
【0017】
なお、図1において、外側がN極とされている磁石体11を第1の磁石体11Aと呼び、外側がS極とされている磁石体11を第2の磁石体11Bと呼ぶ。
【0018】
より詳しくは、前記攪拌装置本体101Aは以下のように構成されている。
【0019】
即ち、図3において、ステンレス等の非磁性部材製のケースとしての外筒1は上蓋2を備えている。この外筒1の内部には回転磁石体4がほぼ垂直な軸線Lのまわりに回転可能に軸支されている。つまり、外筒1の底面内側には下側軸受5が取り付けられている。また、上蓋2の外面には上側軸受6が取り付けられている。一方、これらの軸受5,6に軸支される前記回転磁石体4は、上下に隔てた上支持板としての上鏡板8と下支持板としての下鏡板9を有し、これらの間に、4本の永久磁石の磁石体11,11,……が固定されている。前記磁石体11については追って詳しく説明するが、複数の磁石を独自の態様で組み合わせたものとして構成したものである。
【0020】
これらの磁石体11の数は4に限定されるものではなく、その他の任意の複数、例えば、6等にすることもできる。
【0021】
上鏡板8を取り除いた説明図としての図4からわかるように、これらの磁石体11,11,……はほぼ90°間隔で配置されている。各磁石体11は、内側と外側がN,Sの磁極となるように磁化されたものである。これらの磁石体11,11,……は、90°おきに、極性が逆となるように配置されている。これにより、図4に示すように、磁力線MLが走ることになる。つまり、ある磁力線MLはある水平面内に含まれるが、図1の設置状態にあっては、ある磁石体11からある水平面に沿って射出し、水平溶解炉102中の溶湯を貫通し、その後その水平面に沿って前記磁石体11に戻るように入射する。
【0022】
つまり、図2を参照していえば、ある磁石体11からのある磁力線MLは、その磁石体11から水平に出て、溶解炉102の炉壁を貫通し、溶湯103中を走った後、再び炉壁を貫通して、最終的に磁石体11に戻るように、構成されている。
【0023】
さらに、前記上及び下鏡板8,9には、これを回転させるための上下の回転軸としての上中空シャフト13、下中空シャフト14が貫通状態に固定されている。つまり、上中空シャフト13は、上蓋2の送風用の開口2bを貫通している。これらの上及び下中空シャフト13,14が、前記上及び下側軸受6,5に回転可能に軸受けされている。
【0024】
前記上蓋2上にはこの回転磁石体4を回転駆動するための駆動モータ15が固定されている。このモータ15の駆動軸15aには駆動側スプロケット16が取り付けられ、前記上中空シャフト13には従動側スプロケット17が取り付けられている。これらの一対のスプロケット15,16間には動力伝達用のチエーン18が巻き掛けられている。これにより、前記駆動モータ15の駆動力によって、回転磁石体4が回転させられる。
【0025】
さらに前記上蓋2上にはブロワー19が取り付けられている。このブロワー19の吐出口19aは前記上中空シャフト13に、カップリング22を介して、連通状態に固定されている。このカップリング22は、図中下側の回転する中空シャフト13と、図中上側のブロワー19の静止状態の吐出口19aとを、連通状態に支持している。これにより、ブロワー19からの風は、磁石体11,11,……の間を横向きに通り抜けると共に、下鏡板9に穿けた通風孔9a,9a,……及び下中空シャフト14を下向きに流れる。さらに、これらの風は、上向きに流れを変え、上蓋2に穿けた排風孔2a,2a,……及び排風チューブ20,20,……から外気に放出する。このような流れの過程において電磁力(渦電流)に基づいて外筒1に発生する熱が冷却されることとなる。なお、外筒1は、耐熱樹脂で構成することもできる。この場合には、ジュール熱による自己発熱はしないが、ブロワー19による冷却は、溶湯等からの輻射熱の冷却に有効に作用することになる。
【0026】
なお、攪拌装置本体101Aは、必ずしも以上に説明した上記の構造と全く同じ構造を採る必要はない。しかしながら、前記回転磁石体4を回転可能とすることは最小限必要である。
【0027】
このような構成の攪拌装置本体101Aの高さと前記溶解炉102の深さの関係について述べれば以下の通りである。
【0028】
図2に、前記攪拌装置本体101Aの高さ、特に磁石体11の高さH1と、溶解炉102中の溶湯103の深さD1と、の関係が、示される。つまり、磁石体11の高さH1と、溶解炉102中の溶湯103の深さD1とを、ほぼ等しくすることが、エネルギー効率から考えられる。なお、図2は、攪拌装置本体101Aを、その要部がわかるように要部のみを概略的に表示した図である。
【0029】
次に、図5(a)―(c)を参照しながら、図1の攪拌装置本体101Aで用いた前記磁石体11の構成について説明する。この図5の磁石体11は、図2からわかるように、立てて使用していた磁石体11を横に倒した状態で示される。
【0030】
この図5(a)から分かるように、この磁石体11は、縦l、横w、高さtのディメン ジョンを有している。この磁石体11は、この図5から分かるように、厚さ方向に複数の層を有するものとして構成される。図5(a)においては、第1乃至第3の3つの磁石体磁石体層ly1、ly2、ly3を有している。前記第1乃至第3の磁石体層ly1、ly2、ly3は、それぞれ永久磁石としての複数の第1単位磁石11a、第2単位磁石11b、第3単位磁石11cのうちの2種類のものをある規則に沿ってあるXY平面に沿って配列したものとして構成される。
【0031】
つまり、これらの第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cは、それぞれ、同じ厚さを持ち、上面側がN極に磁化され、下面側がS極に磁化されている。ただし、それらの長さあるいは幅は、図5(b)、(c)から分かるように、異なる。つまり、仮に第1単位磁石11aが基本の磁石と考える。そして、第2単位磁石11bは、前記第1単位磁石11aの長さを半分としたものであり、第3単位磁石11cは第1単位磁石11aの幅を半分としたものである。それ以外の点においては、前記3つの第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cほぼ同じ磁石として構成される。
【0032】
このような、第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cのうちの第1単位磁石11aと第2単位磁石11bで構成される前記第1及び第3の磁石体層ly1、ly3の平面図は図5(b)に示され、第2の磁石体層ly2の平面図は図5(c)に示される。
【0033】
図5(b)に示される第1の磁石体層ly1(及び第3の磁石体層ly3)は、長さ方向の中央部に位置する4つの第1単位磁石11aと、長さ方向両端に位置する4つの第2単位磁石11bを備えている。
【0034】
また、図5(c)に示される第2の磁石体層ly2は、幅方向の中央部に縦に並んで位置する3つの第1単位磁石11aと、幅方向両側に位置する6つの第3単位磁石11cとを備えている。
【0035】
このような第1乃至第3の単位磁石11a、11b、11cは、XYいずれの方向に隣り合う場合にあっても、第1単位磁石11a同士の間、第2単位磁石11b同士の間、第3単位磁石11c同士の間、第1単位磁石11aと第2単位磁石11bの間、及び第1単位磁石11aと第3単位磁石11cとの間には、同極同士による互いに反発する磁力が働くのは避けられない。つまり、前記第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cのうちの隣り合う単位磁石間においては、上面側においてはN極同士が対向し、下面側においてはS極同士が横方向に対向しているからである。このことから、図5(a)―(c)からわかるように、論理的には、XYいずれの方向に隣り合う単位磁石間にも空隙Gが存するのが避けられない。この空隙Gは、各単位磁石の大きさにもよるが、例えば、1−2mmとなる。
【0036】
而して、前記磁石体11は、前記第1の磁石体層(第1タイプの磁石体層)ly1、第2の磁石体層(第2タイプの磁石体層)ly2、第3の磁石体層(第1タイプの磁石体層)ly3が厚さ方向に順次積層されたものとして構成される。しかしながら、特に図5(b),(c)に示される2つの層ly1(ly3)とly2を重ねることにより分かるように、前記空隙Gの位相が、上下に並ぶ第1と第2の層ly1、ly2、第2と第3の層ly2、ly3で、互いにずれており、3つの層ly1、ly2、ly3の空隙Gが上下に位相が揃った状態に重なり合うことはない。上下の層ly1、ly2、ly3の空隙Gが上下に揃った状態で重なり合わないことにより、これら3層ly1、ly2、ly3における単位磁石が上下に強固に磁力的に吸引し合って、1つの一体の磁石体11を構成することになる。つまり、特に、図5(a)からわかるように、上下3層ly1、ly2、ly3のうちの重なり合う2つの層の一方の層におけるある1つの単位磁石は、他方の層の複数の単位磁石に直接的に接触し合う。これは、重なり合う2つの層における全ての単位磁石同士についていえる。これにより、上下に重なり合う全ての単位磁石同士が互いに強力に吸引しあって、1つの磁石体11として一体化することになる。
【0037】
より詳しくは、例えば、第1の層ly1と第2の層ly2との重なりについてみる。図5(b)の第1の層ly1の第1単位磁石11a(11)は、図5(c)の第2の層ly2の第3単位磁石11c(21)、11c(22)と第1単位磁石11a(21)、11a(22)bの4つの単位磁石と、直接的に重なり合って、磁気的に吸引し合っている。これは他の単位磁石についても同様である。よって、3つの層ly1、ly2、ly3の各単位磁石は強固に吸引し合い、その配列状態が強く維持され、一体化することとなる。
【0038】
而して、層ly1、ly2、ly3の1層だけを見ると、縦横に並ぶ各単位磁石が磁気的に反発し合って離れようとする。つまり、空隙Gを生じさせ、且つこれを大きくしようとする。しかし、上述のように、上下に並ぶ層ly1、ly2、ly3における単位磁石同士が直接上下に強く吸引し合っている。このため、3つの層ly1、ly2、ly3を1つのまとまりとして見ると、各層における全ての単位磁石が、各層毎の互いに離反しようとする反発力に打ち勝って、強固に一体化される。
【0039】
これにより、上述のように都合3層ly1、ly2、ly3により、強固な一体型の磁石体11が構成されることになる。
【0040】
なお、図5(a)―(c)に示す、第1−第3タイプの磁石体層11A−11cの構成は次のように見ることもできる。
【0041】
前記第1タイプの磁石体層ly1,ly3及び前記第2タイプの磁石体層ly2は、それぞれ、XYZ方向にそれぞれある値を採る単位磁石11a―11cの複数を備える。
【0042】
前記第1タイプの磁石体層ly1,ly3を、前記第1タイプの磁石体層ly1,ly3のXY面における中心CT1を第1座標中心とみたてて、前記第1座標中心の回りの4象限にそれぞれ1つずつ都合4つの前記単位磁石11aを配し、且つ、前記4つの単位磁石11aのそれぞれにXY方向に連続的に隣り合うようにさらに別の前記複数の単位磁石11bを配することにより、構成する。
【0043】
前記第2タイプの磁石体層ly2を、前記第2タイプの磁石体層ly2のXY面における中心CT2を第2座標中心とみたてて、前記第2座標中心に、1つの前記単位磁石11a(21)をその中心が重なるように配し、且つ、前記1つの単位磁石11a(21)にXY方向に連続的に隣り合うように前記複数の単位磁石11a、11cを配することにより、構成する。
【0044】
前記磁石体11を上記のように構成したので、強力な磁場を発生させることができる。
【0045】
このことを、本発明者が先に用いていた図6(a)、(b)に示す基本型磁石体21と比較しながら説明する。
【0046】
まず、比較のための基本型磁石体21について説明する。図6(b)からわかるように、この基本型磁石体21は、図5(b)に示される3種類の単位磁石11a、11b、11cのうちの1種類としての単位磁石11aのみを複数を用いたものである。つまり、単位磁石11a、11a、……をXY方向に6個並べたものとして、各層ly10、ly20、ly30が構成される。各層ly10、ly20、ly30において、これらの単位磁石11a、11a、……の間には、前述と同様の空隙G0が存在している。而して、これらの層ly10、ly20、ly30を図6(a)のように積み重ねることにより、基本型磁石体21が構成される。
【0047】
この基本型磁石体21においては、各層ly10、ly20、ly30の空隙G0の位相が揃っている。例えば、一番下の第1層ly10とその上の第2の層ly20についてみる。第1層ly10のある単位磁石11a(11)は、これと上下に重なり合う、第2層ly20の単位磁石11a(21)とのみ重なり合って互いに磁力で引き合っている。しかし、第1層ly10中のある単位磁石11a(11)は、第2層ly20の単位磁石11a(21)とは重なり合うが、第2層ly20におけるそれ以外のいずれの単位磁石11aとも重なり合わない。このため、図6(a)から分かるように、上下に重なり合う3つの単位磁石11a、11a、……はひとかたまりとなり複合単位磁石211とはなるものの、これらの複合単位磁石211、211、・・・同士は互いに磁気的に反発し合うのみであり、互いには引き合わない。このため、図6(a)における基本型磁石体21においては、前記空隙G0はさらに広がる傾向にあり、一体型の磁石としては機能し得ない。言い換えれば、前記空隙G0が磁石としてのパーミアンス(動作点)を下げて、磁束が遠くへ飛ぶのを妨げている。つまり、基本型磁石体21は一体型の磁石とはなり得ず、これからは強い磁場は発生し得ない。
【0048】
これに対し、図5(a)―(c)の磁石体11においても、各層ly1、ly2、ly3において、単位磁石11a、11b、11c間に空隙Gは存在するのは避けられない。しかしながら、前述のように、各層ly1、ly2、ly3中の各単位磁石11a、11b、11cは上下に積み重なった層の位相のずれた単位磁石11a、11b、11cと直接的に接し、互いに磁気力により吸引しあって一体となっている。これにより、あたかも、空隙Gが存在しない一体型の磁石、つまり、初めから一体型の磁石と同等の高いパーミアンス(動作点)が得られる磁石と同等に機能するものとなった。これにより、図5(a)―(c)に示す磁石体11からは、より遠くまで磁力線を飛ばすことが可能となった。つまり、図1からわかるように、溶解炉102の壁厚Wtの炉壁を十分貫通する強度の磁場を得ることができる。
【0049】
図7は、本発明者が、図5の磁石体11による効果を調べるために行った実験結果を示す特性図である。本実験においては、図5の磁石体11と図6の基本型磁石体21の両方の特性を採った。この特性図は、磁石体11を用いた攪拌装置101と、基本型磁石体21を用いた攪拌装置(図示せず)を、実際に図1、図2の如くに設置して、磁束分布(磁束の到達距離)を測定したものである。磁束分布曲線MFD1は図5の磁石体11を用いた際のものであり、磁束分布曲線MFD2は図6の磁石体21を用いた際のものである。
【0050】
図7の磁束分布曲線MFD1によって、図5の磁石体11を用いた場合には、溶解炉102中の溶湯103を攪拌するのに必要な強度及び距離の磁束分布が得られることが分かる。図7の磁束分布曲線MFD1、D2にける底の部分のWtは、前述のように、溶解炉102の炉壁の壁厚に対応する、攪拌に寄与しない部分を示す。よって、各磁束分布曲線のうち、L0及びL1の部分が、溶解炉102中の溶湯103を攪拌する力として用いられることになる。
【0051】
この図7の磁束分布曲線MFD1,2からわかるように、図5の磁石体11によれば図6の基本型磁石体21よりも一段と大きな磁場が得られることが分かった。この理由は、前記したことから解析される。つまり、磁石体11では全ての単位磁石11a、11b、11cが一体に集合しているのに対し、基本型磁石体21では単位磁石11a、11a、……が3つずつの複合単位磁石211、211、・・・とはなるものの、それらの複合単位磁石211同士は反発し合うだけで、互いには引き合わないからである、と考えられる。
【0052】
図8は図1の要部を示す説明図である。この図8は回転する攪拌装置本体101Aの1瞬間を捕らえたものである。この瞬間においては、磁束MFが図示のように表される。図中、Leは磁束MFが届く、磁石体11の表面からの最遠距離を示す。図10は、溶解炉102の外表面からの距離(磁石体11の表面からの距離と実質的に等しい)Lと、その地点における磁束密度Φとの関係を示すグラフである。而して、図8において、攪拌装置本体101Aを回転させると、図10の磁束密度との関係から、図9に示すように、溶解炉102の内壁面ISからの距離に応じて、速度曲線Fm&Vに示される速度で、溶解炉102内の溶湯103が図1の矢印Aのように攪拌される。
【0053】
図11は、図1の溶解炉システム100の変形例である。この図11は、攪拌装置101を2つ用いた例を示す。攪拌装置101は3以上の任意の数を採用することができる。また、複数の攪拌装置101は、溶解炉102の周囲の任意の位置に設置することができる。
【0054】
図12は、同じく図1の溶解炉システム100の変形例である。この図12では、溶解炉102として、円筒形のものを用いている。
【0055】
図13は、攪拌装置101を、溶解炉102の底の外部下方に設けた例を示す。図14は図13の平面説明図である。つまり、例えば、設置すべき地面に穴Hを掘り、この穴H1内に攪拌装置101を横向きの横臥状態に設置し、この上に、溶解炉102を設置している。この攪拌装置101における攪拌装置本体101Aの回転によって、溶湯103は図13に示すように、水平な軸線の回りに、矢印で示す向きに、回転駆動させられる。
【0056】
図15は、攪拌装置101を溶解炉102の外側に横向きに設置した例を示す。
【0057】
図16は、図13のシステムにさらに2つ目の攪拌装置101を付加した例を示す。
【0058】
図1溶解炉システム100において、攪拌装置101の攪拌装置本体101Aが回転すると、特に図8からわかるように、磁力線MLが溶解炉本体102内のアルミニウムの溶湯103中をある水平面に沿って移動する。これにより生じる電磁力によって、溶解炉102中の溶湯103が図1の矢印Aに示すように循環し、攪拌される。
而して、この攪拌装置101においては、図3に示すように、ブロワー19からの風を内部に強制的に送り込むようにしている。これにより、磁石体11,11、・・・の回転に伴い渦電流により外筒1に発生するジュール熱は、上記ブロワー19からの風によって冷却されることとなる。
【0059】
さらに、上述の実施形態では、回転磁石体4として、上下2枚の鏡板8,9の間に4本の永久磁石の磁石体11,11……を立てた状態に固定した例を示したが、この構造に限るものでないのは明らかである。即ち、図4に示すように又はそれに準じて磁力線が発生するような構造の磁石構造物であればよい。
【0060】
以上に説明した本発明の実施形態によれば、以下の通りの利点が得られる。
【0061】
即ち、本発明の実施形態によれば、連通路を設ける必要がないので、イニシャルコストを抑えることができる。且つ、連通路を有しないため、溶解炉を構造的に堅固なものとして構成することができ、溶湯の漏れ等が生じるおそれもなく、安全面でも優れたものとできる。さらに、連通路のメンテナンスも当然必要なく、ランニングコストを抑えることもできる。
【符号の説明】
【0062】
100 溶解炉システム
101 攪拌装置
101A 攪拌装置本体
101B ケース
102 溶解炉
103 溶湯
11 磁石体
11A 第1の磁石体
11B 第2の磁石体
11a、11b、11c 単位磁石
G、G0 空隙
ly1−ly3 磁石体層
ly1,ly3 第1タイプの磁石体層
ly2 第2タイプの磁石体層
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解炉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムスクラップ等を溶解し、アルミニウムをインゴットにして製品化することが行われている。この際、インゴットの品質を均一化するためには、溶解炉中のアルミニウムを十分に撹拌する必要がある。このため、撹拌棒を溶解炉中に入れて、熔解アルミニウムを人為的に撹拌したり、あるいは、炉底下に電気駆動式の撹拌装置を設置し、この装置により熔解アルミニウムの撹拌を行っていた。
【0003】
さらには、特許文献1に示すように、溶解炉にバイパス(連通路)を設け、このバイパス中の溶湯を電磁力で駆動することにより、溶解炉中の溶湯を攪拌するものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の特許文献1のものは、溶解炉にバイパスを設けるものであるため、溶解炉の製造コストが嵩むのが避けられない。また、既存の溶解炉にバイパスを設けるのは理論上可能ではあるが、コストや設置場所等の要因によって、実際上不可能の場合もあり得る。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、その目的は、低コストで実現可能な溶解炉システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶解炉システムは、
側壁と底壁とにより収納空間を有する容器状に形成された、アルミニウムの溶湯を収納する、溶解炉と、
前記溶解炉の前記側壁及び前記底壁のうちの少なくとも一方に対向させた攪拌装置であって、ある軸線の回りの円上に配列された、永久磁石製の、少なくとも1つの第1の磁石体と少なくとも1つの第2の磁石体とを備え、前記第1及び第2の磁石体は前記軸線の回りに回転駆動する駆動機構を備え、前記第1の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれN極及びS極となるように磁化され、前記第2の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれS極及びN極となるように磁化され、前記円上に前記第1の磁石体と前記第2の磁石体が交互に配置され、前記第1の磁石体及び第2の磁石体の磁場強度を、前記第1あるいは第2の磁石体からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記収納空間に至り、前記収納空間からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記第2あるいは第1の磁石体に至るものに設定した、攪拌装置と、
を備えるものとして構成される。
【発明の効果】
【0008】
低コストで実現可能な溶解炉システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの全体構成の平面説明図。
【図2】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの全体構成の縦断説明図。
【図3】攪拌装置本体の具体的構成の一例を示す、縦断説明図。
【図4】磁石体の配置を示す平面説明図。
【図5】磁石体の構成例を示す斜視図、磁石体を構成する第1、第2の層と、第3の層を示す平面図。
【図6】本発明の実施形態との比較のために示す、基本型磁石体の構成例を示す斜視図、磁石体を構成する第1―第3の層を示す平面図。
【図7】本発明の実施形態の磁石体による得られる磁束強度を、基本型磁石体によるそれとの比較で示す、特性曲線。
【図8】本発明の実施形態から得られる磁力線の分布を示す特性説明図。
【図9】図8において、基点からの距離による、溶解炉中の溶湯に加えられる電磁力の大きさを示す特性曲線。
【図10】図8において、基点(溶解炉の側壁の外表面上の1点)からの距離と磁束密度との関係を示す特性曲線。
【図11】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの変形例の全体構成を示す、平面説明図。
【図12】本発明によるアルミニウム溶解炉システムのさらに異なる変形例の全体構成を示す、平面説明図。
【図13】本発明によるアルミニウム溶解炉システムの別の変形例の全体構成を示す、縦断説明図。
【図14】図13の例における平面説明図。
【図15】本発明によるアルミニウム溶解炉システムのさらに別の変形例の全体構成を示す、縦断説明図。
【図16】本発明によるアルミニウム溶解炉システムのさらに別の変形例の全体構成を示す、縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明に係る溶解炉システム100の全体構成の平面説明図及び縦断説明図である。この溶解炉システム100は、溶解炉102と攪拌装置101とを有するものとして構成される。攪拌装置101は、この実施形態においては、特に図2から分かるように、溶解炉102に隣接して立設状態に設けられている。
【0011】
前記溶解炉102としては、公知のものを採用することもできる。即ち、この溶解炉102は、投入されたアルミニウムスクラップを各種のバーナー(図示せず)で加熱して溶解し、溶湯103とするものとして構成されている。さらには、溶解炉102として本発明とは関係無しに既に設置されたものを、あとから本発明の実施形態の一部として用いることもできる。つまり、既設の溶解炉に、前記攪拌装置101を付設することにより、本発明の溶解炉システム100とすることができる。
【0012】
この溶解炉102の4つの側壁のうちの1つの側壁の外側に、特に図2からわかるように、前記攪拌装置101が設けられている。
【0013】
なお、図1では、溶解炉102の側壁を全て同じ厚さWtのものとして構成しているが、攪拌装置101と向かい合う側壁だけを、必要に応じて、薄く構成することもできる。例えば、攪拌装置101と向かい合う側壁のみを25mmとし、それ以外の側壁を50mmとすることができる。
【0014】
この攪拌装置101は、内部の攪拌装置本体101Aと、それを収納するケース101Bとを有する。このケース101Bは、後述のように、外側の3側面を磁気シールドするものである。
即ち、ケース101Bは、図1から分かるように、第1−第4の側面部111−114、底面部115、上面部116を有する。溶解炉本体102に向かい合う第1の側面部111は非磁性材で構成され、それ以外の3つの第2―第4の側面部112−114、底面部115、上面部116は磁性材あるいは強磁性材で構成されている。これにより、攪拌装置本体101Aは、1つの側面のみが磁気的に解放され、それ以外の3つの側面が磁気シールドされていることになる。よって、後述するところからも分かるように、攪拌装置本体101Aから射出する/に戻る磁力線は前記第1の側面部111のみを通過して外部に/外部から出射/入射されることになる。なお、前記第1の側面部111を省略し、解放状態のものとして構成することもできる。
【0015】
この攪拌装置本体101Aとしては、各種の構成のものを採用できる。例えば、図3に記載のものを用いることができる。この図3に記載のものは、本発明の発明者の先の発明、特許出願にかかるものである(特開2006−177612号公報)。ただし、攪拌装置本体101Aの磁石体11は、後述する図3(a)―(c)の構成を有し、本発明に独自のものである。また、図面上、視覚的には、各部分の寸法の比率は多少変えてある。
【0016】
上記攪拌装置本体101Aは、概略的には、ほぼ垂直な軸線の回りに複数の磁石体11,11,……を配置し、それらの磁石体11を前記軸線の回りに回転させるようにしたものである。これにより、磁石体11から出てアルミニウムの溶湯103を通過している磁力線(磁場)が回転する。これにより、磁力線がアルミニウムの溶湯103中を移動して、電磁力が生じる。この電磁力により、溶湯103を強制的に図1の矢印Aに沿って左回りに流動させるものである。なお、その際に熱が発生するが、その熱を空冷する機構を備えるものとして構成されている。
【0017】
なお、図1において、外側がN極とされている磁石体11を第1の磁石体11Aと呼び、外側がS極とされている磁石体11を第2の磁石体11Bと呼ぶ。
【0018】
より詳しくは、前記攪拌装置本体101Aは以下のように構成されている。
【0019】
即ち、図3において、ステンレス等の非磁性部材製のケースとしての外筒1は上蓋2を備えている。この外筒1の内部には回転磁石体4がほぼ垂直な軸線Lのまわりに回転可能に軸支されている。つまり、外筒1の底面内側には下側軸受5が取り付けられている。また、上蓋2の外面には上側軸受6が取り付けられている。一方、これらの軸受5,6に軸支される前記回転磁石体4は、上下に隔てた上支持板としての上鏡板8と下支持板としての下鏡板9を有し、これらの間に、4本の永久磁石の磁石体11,11,……が固定されている。前記磁石体11については追って詳しく説明するが、複数の磁石を独自の態様で組み合わせたものとして構成したものである。
【0020】
これらの磁石体11の数は4に限定されるものではなく、その他の任意の複数、例えば、6等にすることもできる。
【0021】
上鏡板8を取り除いた説明図としての図4からわかるように、これらの磁石体11,11,……はほぼ90°間隔で配置されている。各磁石体11は、内側と外側がN,Sの磁極となるように磁化されたものである。これらの磁石体11,11,……は、90°おきに、極性が逆となるように配置されている。これにより、図4に示すように、磁力線MLが走ることになる。つまり、ある磁力線MLはある水平面内に含まれるが、図1の設置状態にあっては、ある磁石体11からある水平面に沿って射出し、水平溶解炉102中の溶湯を貫通し、その後その水平面に沿って前記磁石体11に戻るように入射する。
【0022】
つまり、図2を参照していえば、ある磁石体11からのある磁力線MLは、その磁石体11から水平に出て、溶解炉102の炉壁を貫通し、溶湯103中を走った後、再び炉壁を貫通して、最終的に磁石体11に戻るように、構成されている。
【0023】
さらに、前記上及び下鏡板8,9には、これを回転させるための上下の回転軸としての上中空シャフト13、下中空シャフト14が貫通状態に固定されている。つまり、上中空シャフト13は、上蓋2の送風用の開口2bを貫通している。これらの上及び下中空シャフト13,14が、前記上及び下側軸受6,5に回転可能に軸受けされている。
【0024】
前記上蓋2上にはこの回転磁石体4を回転駆動するための駆動モータ15が固定されている。このモータ15の駆動軸15aには駆動側スプロケット16が取り付けられ、前記上中空シャフト13には従動側スプロケット17が取り付けられている。これらの一対のスプロケット15,16間には動力伝達用のチエーン18が巻き掛けられている。これにより、前記駆動モータ15の駆動力によって、回転磁石体4が回転させられる。
【0025】
さらに前記上蓋2上にはブロワー19が取り付けられている。このブロワー19の吐出口19aは前記上中空シャフト13に、カップリング22を介して、連通状態に固定されている。このカップリング22は、図中下側の回転する中空シャフト13と、図中上側のブロワー19の静止状態の吐出口19aとを、連通状態に支持している。これにより、ブロワー19からの風は、磁石体11,11,……の間を横向きに通り抜けると共に、下鏡板9に穿けた通風孔9a,9a,……及び下中空シャフト14を下向きに流れる。さらに、これらの風は、上向きに流れを変え、上蓋2に穿けた排風孔2a,2a,……及び排風チューブ20,20,……から外気に放出する。このような流れの過程において電磁力(渦電流)に基づいて外筒1に発生する熱が冷却されることとなる。なお、外筒1は、耐熱樹脂で構成することもできる。この場合には、ジュール熱による自己発熱はしないが、ブロワー19による冷却は、溶湯等からの輻射熱の冷却に有効に作用することになる。
【0026】
なお、攪拌装置本体101Aは、必ずしも以上に説明した上記の構造と全く同じ構造を採る必要はない。しかしながら、前記回転磁石体4を回転可能とすることは最小限必要である。
【0027】
このような構成の攪拌装置本体101Aの高さと前記溶解炉102の深さの関係について述べれば以下の通りである。
【0028】
図2に、前記攪拌装置本体101Aの高さ、特に磁石体11の高さH1と、溶解炉102中の溶湯103の深さD1と、の関係が、示される。つまり、磁石体11の高さH1と、溶解炉102中の溶湯103の深さD1とを、ほぼ等しくすることが、エネルギー効率から考えられる。なお、図2は、攪拌装置本体101Aを、その要部がわかるように要部のみを概略的に表示した図である。
【0029】
次に、図5(a)―(c)を参照しながら、図1の攪拌装置本体101Aで用いた前記磁石体11の構成について説明する。この図5の磁石体11は、図2からわかるように、立てて使用していた磁石体11を横に倒した状態で示される。
【0030】
この図5(a)から分かるように、この磁石体11は、縦l、横w、高さtのディメン ジョンを有している。この磁石体11は、この図5から分かるように、厚さ方向に複数の層を有するものとして構成される。図5(a)においては、第1乃至第3の3つの磁石体磁石体層ly1、ly2、ly3を有している。前記第1乃至第3の磁石体層ly1、ly2、ly3は、それぞれ永久磁石としての複数の第1単位磁石11a、第2単位磁石11b、第3単位磁石11cのうちの2種類のものをある規則に沿ってあるXY平面に沿って配列したものとして構成される。
【0031】
つまり、これらの第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cは、それぞれ、同じ厚さを持ち、上面側がN極に磁化され、下面側がS極に磁化されている。ただし、それらの長さあるいは幅は、図5(b)、(c)から分かるように、異なる。つまり、仮に第1単位磁石11aが基本の磁石と考える。そして、第2単位磁石11bは、前記第1単位磁石11aの長さを半分としたものであり、第3単位磁石11cは第1単位磁石11aの幅を半分としたものである。それ以外の点においては、前記3つの第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cほぼ同じ磁石として構成される。
【0032】
このような、第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cのうちの第1単位磁石11aと第2単位磁石11bで構成される前記第1及び第3の磁石体層ly1、ly3の平面図は図5(b)に示され、第2の磁石体層ly2の平面図は図5(c)に示される。
【0033】
図5(b)に示される第1の磁石体層ly1(及び第3の磁石体層ly3)は、長さ方向の中央部に位置する4つの第1単位磁石11aと、長さ方向両端に位置する4つの第2単位磁石11bを備えている。
【0034】
また、図5(c)に示される第2の磁石体層ly2は、幅方向の中央部に縦に並んで位置する3つの第1単位磁石11aと、幅方向両側に位置する6つの第3単位磁石11cとを備えている。
【0035】
このような第1乃至第3の単位磁石11a、11b、11cは、XYいずれの方向に隣り合う場合にあっても、第1単位磁石11a同士の間、第2単位磁石11b同士の間、第3単位磁石11c同士の間、第1単位磁石11aと第2単位磁石11bの間、及び第1単位磁石11aと第3単位磁石11cとの間には、同極同士による互いに反発する磁力が働くのは避けられない。つまり、前記第1乃至第3単位磁石11a、11b、11cのうちの隣り合う単位磁石間においては、上面側においてはN極同士が対向し、下面側においてはS極同士が横方向に対向しているからである。このことから、図5(a)―(c)からわかるように、論理的には、XYいずれの方向に隣り合う単位磁石間にも空隙Gが存するのが避けられない。この空隙Gは、各単位磁石の大きさにもよるが、例えば、1−2mmとなる。
【0036】
而して、前記磁石体11は、前記第1の磁石体層(第1タイプの磁石体層)ly1、第2の磁石体層(第2タイプの磁石体層)ly2、第3の磁石体層(第1タイプの磁石体層)ly3が厚さ方向に順次積層されたものとして構成される。しかしながら、特に図5(b),(c)に示される2つの層ly1(ly3)とly2を重ねることにより分かるように、前記空隙Gの位相が、上下に並ぶ第1と第2の層ly1、ly2、第2と第3の層ly2、ly3で、互いにずれており、3つの層ly1、ly2、ly3の空隙Gが上下に位相が揃った状態に重なり合うことはない。上下の層ly1、ly2、ly3の空隙Gが上下に揃った状態で重なり合わないことにより、これら3層ly1、ly2、ly3における単位磁石が上下に強固に磁力的に吸引し合って、1つの一体の磁石体11を構成することになる。つまり、特に、図5(a)からわかるように、上下3層ly1、ly2、ly3のうちの重なり合う2つの層の一方の層におけるある1つの単位磁石は、他方の層の複数の単位磁石に直接的に接触し合う。これは、重なり合う2つの層における全ての単位磁石同士についていえる。これにより、上下に重なり合う全ての単位磁石同士が互いに強力に吸引しあって、1つの磁石体11として一体化することになる。
【0037】
より詳しくは、例えば、第1の層ly1と第2の層ly2との重なりについてみる。図5(b)の第1の層ly1の第1単位磁石11a(11)は、図5(c)の第2の層ly2の第3単位磁石11c(21)、11c(22)と第1単位磁石11a(21)、11a(22)bの4つの単位磁石と、直接的に重なり合って、磁気的に吸引し合っている。これは他の単位磁石についても同様である。よって、3つの層ly1、ly2、ly3の各単位磁石は強固に吸引し合い、その配列状態が強く維持され、一体化することとなる。
【0038】
而して、層ly1、ly2、ly3の1層だけを見ると、縦横に並ぶ各単位磁石が磁気的に反発し合って離れようとする。つまり、空隙Gを生じさせ、且つこれを大きくしようとする。しかし、上述のように、上下に並ぶ層ly1、ly2、ly3における単位磁石同士が直接上下に強く吸引し合っている。このため、3つの層ly1、ly2、ly3を1つのまとまりとして見ると、各層における全ての単位磁石が、各層毎の互いに離反しようとする反発力に打ち勝って、強固に一体化される。
【0039】
これにより、上述のように都合3層ly1、ly2、ly3により、強固な一体型の磁石体11が構成されることになる。
【0040】
なお、図5(a)―(c)に示す、第1−第3タイプの磁石体層11A−11cの構成は次のように見ることもできる。
【0041】
前記第1タイプの磁石体層ly1,ly3及び前記第2タイプの磁石体層ly2は、それぞれ、XYZ方向にそれぞれある値を採る単位磁石11a―11cの複数を備える。
【0042】
前記第1タイプの磁石体層ly1,ly3を、前記第1タイプの磁石体層ly1,ly3のXY面における中心CT1を第1座標中心とみたてて、前記第1座標中心の回りの4象限にそれぞれ1つずつ都合4つの前記単位磁石11aを配し、且つ、前記4つの単位磁石11aのそれぞれにXY方向に連続的に隣り合うようにさらに別の前記複数の単位磁石11bを配することにより、構成する。
【0043】
前記第2タイプの磁石体層ly2を、前記第2タイプの磁石体層ly2のXY面における中心CT2を第2座標中心とみたてて、前記第2座標中心に、1つの前記単位磁石11a(21)をその中心が重なるように配し、且つ、前記1つの単位磁石11a(21)にXY方向に連続的に隣り合うように前記複数の単位磁石11a、11cを配することにより、構成する。
【0044】
前記磁石体11を上記のように構成したので、強力な磁場を発生させることができる。
【0045】
このことを、本発明者が先に用いていた図6(a)、(b)に示す基本型磁石体21と比較しながら説明する。
【0046】
まず、比較のための基本型磁石体21について説明する。図6(b)からわかるように、この基本型磁石体21は、図5(b)に示される3種類の単位磁石11a、11b、11cのうちの1種類としての単位磁石11aのみを複数を用いたものである。つまり、単位磁石11a、11a、……をXY方向に6個並べたものとして、各層ly10、ly20、ly30が構成される。各層ly10、ly20、ly30において、これらの単位磁石11a、11a、……の間には、前述と同様の空隙G0が存在している。而して、これらの層ly10、ly20、ly30を図6(a)のように積み重ねることにより、基本型磁石体21が構成される。
【0047】
この基本型磁石体21においては、各層ly10、ly20、ly30の空隙G0の位相が揃っている。例えば、一番下の第1層ly10とその上の第2の層ly20についてみる。第1層ly10のある単位磁石11a(11)は、これと上下に重なり合う、第2層ly20の単位磁石11a(21)とのみ重なり合って互いに磁力で引き合っている。しかし、第1層ly10中のある単位磁石11a(11)は、第2層ly20の単位磁石11a(21)とは重なり合うが、第2層ly20におけるそれ以外のいずれの単位磁石11aとも重なり合わない。このため、図6(a)から分かるように、上下に重なり合う3つの単位磁石11a、11a、……はひとかたまりとなり複合単位磁石211とはなるものの、これらの複合単位磁石211、211、・・・同士は互いに磁気的に反発し合うのみであり、互いには引き合わない。このため、図6(a)における基本型磁石体21においては、前記空隙G0はさらに広がる傾向にあり、一体型の磁石としては機能し得ない。言い換えれば、前記空隙G0が磁石としてのパーミアンス(動作点)を下げて、磁束が遠くへ飛ぶのを妨げている。つまり、基本型磁石体21は一体型の磁石とはなり得ず、これからは強い磁場は発生し得ない。
【0048】
これに対し、図5(a)―(c)の磁石体11においても、各層ly1、ly2、ly3において、単位磁石11a、11b、11c間に空隙Gは存在するのは避けられない。しかしながら、前述のように、各層ly1、ly2、ly3中の各単位磁石11a、11b、11cは上下に積み重なった層の位相のずれた単位磁石11a、11b、11cと直接的に接し、互いに磁気力により吸引しあって一体となっている。これにより、あたかも、空隙Gが存在しない一体型の磁石、つまり、初めから一体型の磁石と同等の高いパーミアンス(動作点)が得られる磁石と同等に機能するものとなった。これにより、図5(a)―(c)に示す磁石体11からは、より遠くまで磁力線を飛ばすことが可能となった。つまり、図1からわかるように、溶解炉102の壁厚Wtの炉壁を十分貫通する強度の磁場を得ることができる。
【0049】
図7は、本発明者が、図5の磁石体11による効果を調べるために行った実験結果を示す特性図である。本実験においては、図5の磁石体11と図6の基本型磁石体21の両方の特性を採った。この特性図は、磁石体11を用いた攪拌装置101と、基本型磁石体21を用いた攪拌装置(図示せず)を、実際に図1、図2の如くに設置して、磁束分布(磁束の到達距離)を測定したものである。磁束分布曲線MFD1は図5の磁石体11を用いた際のものであり、磁束分布曲線MFD2は図6の磁石体21を用いた際のものである。
【0050】
図7の磁束分布曲線MFD1によって、図5の磁石体11を用いた場合には、溶解炉102中の溶湯103を攪拌するのに必要な強度及び距離の磁束分布が得られることが分かる。図7の磁束分布曲線MFD1、D2にける底の部分のWtは、前述のように、溶解炉102の炉壁の壁厚に対応する、攪拌に寄与しない部分を示す。よって、各磁束分布曲線のうち、L0及びL1の部分が、溶解炉102中の溶湯103を攪拌する力として用いられることになる。
【0051】
この図7の磁束分布曲線MFD1,2からわかるように、図5の磁石体11によれば図6の基本型磁石体21よりも一段と大きな磁場が得られることが分かった。この理由は、前記したことから解析される。つまり、磁石体11では全ての単位磁石11a、11b、11cが一体に集合しているのに対し、基本型磁石体21では単位磁石11a、11a、……が3つずつの複合単位磁石211、211、・・・とはなるものの、それらの複合単位磁石211同士は反発し合うだけで、互いには引き合わないからである、と考えられる。
【0052】
図8は図1の要部を示す説明図である。この図8は回転する攪拌装置本体101Aの1瞬間を捕らえたものである。この瞬間においては、磁束MFが図示のように表される。図中、Leは磁束MFが届く、磁石体11の表面からの最遠距離を示す。図10は、溶解炉102の外表面からの距離(磁石体11の表面からの距離と実質的に等しい)Lと、その地点における磁束密度Φとの関係を示すグラフである。而して、図8において、攪拌装置本体101Aを回転させると、図10の磁束密度との関係から、図9に示すように、溶解炉102の内壁面ISからの距離に応じて、速度曲線Fm&Vに示される速度で、溶解炉102内の溶湯103が図1の矢印Aのように攪拌される。
【0053】
図11は、図1の溶解炉システム100の変形例である。この図11は、攪拌装置101を2つ用いた例を示す。攪拌装置101は3以上の任意の数を採用することができる。また、複数の攪拌装置101は、溶解炉102の周囲の任意の位置に設置することができる。
【0054】
図12は、同じく図1の溶解炉システム100の変形例である。この図12では、溶解炉102として、円筒形のものを用いている。
【0055】
図13は、攪拌装置101を、溶解炉102の底の外部下方に設けた例を示す。図14は図13の平面説明図である。つまり、例えば、設置すべき地面に穴Hを掘り、この穴H1内に攪拌装置101を横向きの横臥状態に設置し、この上に、溶解炉102を設置している。この攪拌装置101における攪拌装置本体101Aの回転によって、溶湯103は図13に示すように、水平な軸線の回りに、矢印で示す向きに、回転駆動させられる。
【0056】
図15は、攪拌装置101を溶解炉102の外側に横向きに設置した例を示す。
【0057】
図16は、図13のシステムにさらに2つ目の攪拌装置101を付加した例を示す。
【0058】
図1溶解炉システム100において、攪拌装置101の攪拌装置本体101Aが回転すると、特に図8からわかるように、磁力線MLが溶解炉本体102内のアルミニウムの溶湯103中をある水平面に沿って移動する。これにより生じる電磁力によって、溶解炉102中の溶湯103が図1の矢印Aに示すように循環し、攪拌される。
而して、この攪拌装置101においては、図3に示すように、ブロワー19からの風を内部に強制的に送り込むようにしている。これにより、磁石体11,11、・・・の回転に伴い渦電流により外筒1に発生するジュール熱は、上記ブロワー19からの風によって冷却されることとなる。
【0059】
さらに、上述の実施形態では、回転磁石体4として、上下2枚の鏡板8,9の間に4本の永久磁石の磁石体11,11……を立てた状態に固定した例を示したが、この構造に限るものでないのは明らかである。即ち、図4に示すように又はそれに準じて磁力線が発生するような構造の磁石構造物であればよい。
【0060】
以上に説明した本発明の実施形態によれば、以下の通りの利点が得られる。
【0061】
即ち、本発明の実施形態によれば、連通路を設ける必要がないので、イニシャルコストを抑えることができる。且つ、連通路を有しないため、溶解炉を構造的に堅固なものとして構成することができ、溶湯の漏れ等が生じるおそれもなく、安全面でも優れたものとできる。さらに、連通路のメンテナンスも当然必要なく、ランニングコストを抑えることもできる。
【符号の説明】
【0062】
100 溶解炉システム
101 攪拌装置
101A 攪拌装置本体
101B ケース
102 溶解炉
103 溶湯
11 磁石体
11A 第1の磁石体
11B 第2の磁石体
11a、11b、11c 単位磁石
G、G0 空隙
ly1−ly3 磁石体層
ly1,ly3 第1タイプの磁石体層
ly2 第2タイプの磁石体層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と底壁とにより収納空間を有する容器状に形成された、アルミニウムの溶湯を収納する、溶解炉と、
前記溶解炉の前記側壁及び前記底壁のうちの少なくとも一方に対向させた攪拌装置であって、ある軸線の回りに配列された、永久磁石製の、少なくとも1つの第1の磁石体と少なくとも1つの第2の磁石体とを備え、前記第1及び第2の磁石体を前記軸線の回りに回転駆動する駆動機構を備え、前記第1の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれN極及びS極となるように磁化され、前記第2の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれS極及びN極となるように磁化され、前記第1の磁石体と前記第2の磁石体は前記軸線の回りに交互に配置され、前記第1の磁石体及び第2の磁石体の磁場強度を、前記第1あるいは第2の磁石体からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記収納空間に至り、前記収納空間からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記第2あるいは第1の磁石体に至るものに設定した、攪拌装置と、
を備えることを特徴とする溶解炉システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の磁石体は、それぞれ、一面側がN極に磁化され他面側がS極に磁化された少なくとも1つの第1タイプの磁石体層と、一面側がN極に磁化され他面側がS極に磁化された少なくとも1つの第2タイプの磁石体層と、を積層したものとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶解炉システム。
【請求項3】
前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層は、それぞれ、一面側がN極に磁化され他面側がS極に磁化された複数の単位磁石をある面に沿ってマトリクス状に配列したものとして構成され、前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層のいずれも、前記ある面に沿って隣り合う前記単位磁石間に作用する同極同士の反発に伴う空隙を備え、前記前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層は、前記第1タイプの磁石体層の前記空隙と前記第2タイプの磁石体層の前記空隙が重なり合わないように位相をずらした状態で積層されている、ことを特徴とする請求項2に記載の溶解炉システム。
【請求項4】
前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層のうちの一方における単位磁石は、他方における複数の単位磁石と直接的に同時に重なり合って、互いに磁力により吸引し合い、前記第1の磁石体あるいは前記第2の磁石体を構成する、ことを特徴とする請求項3に記載の溶解炉システム。
【請求項5】
前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層は、それぞれ、XYZ方向にそれぞれある値を採る単位磁石の複数を備え、
前記第1タイプの磁石体層を、前記第1タイプの磁石体層のXY面における中心を第1座標中心とみたてて、前記第1座標中心の回りの4象限にそれぞれ1つずつ都合4つの前記単位磁石を配し、且つ、前記4つの単位磁石のそれぞれにXY方向に連続的に隣り合うようにさらに別の前記複数の単位磁石を配することにより、構成し、
前記第2タイプの磁石体層を、前記第2タイプの磁石体層のXY面における中心を第2座標中心とみたてて、前記第2座標中心に、1つの前記単位磁石をその中心が重なるように配し、且つ、前記1つの単位磁石にXY方向に連続的に隣り合うように前記複数の単位磁石を配することにより、構成した、
ことを特徴とする請求項2乃至4請求項に記載の溶解炉システム。
【請求項6】
前記単位磁石として、XYZ方向にある大きさの第1単位磁石と、前記第1単位磁石のX方向に半分の寸法の第2単位磁石と、Y方向に半分の寸法の第3単位磁石を用いた、ことを特徴とする請求項5に記載の溶解炉システム。
【請求項7】
前記攪拌装置は、前記攪拌装置を磁気シールド状態に収納するケースを備え、少なくとも前記ケースのうちの前記溶解炉と対向する面は非シールド面として構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の溶解炉システム。
【請求項8】
前記攪拌装置は、前記溶解炉のある側壁に、立設状態に設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至7に記載の溶解炉システム。
【請求項9】
前記攪拌装置は、前記溶解炉の側壁の周囲に複数設けられていることを特徴とする請求項8に記載の溶解炉システム。
【請求項10】
前記攪拌装置は、前記溶解炉の底壁の外部下側に対向させて、横臥状態に設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至7に記載の溶解炉システム。
【請求項11】
前記溶解炉のある側壁に対向させて、横臥状態に設けられた攪拌装置をさらに備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の溶解炉システム。
【請求項12】
前記攪拌装置は冷却機構を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項11に記載の溶解炉システム。
【請求項1】
側壁と底壁とにより収納空間を有する容器状に形成された、アルミニウムの溶湯を収納する、溶解炉と、
前記溶解炉の前記側壁及び前記底壁のうちの少なくとも一方に対向させた攪拌装置であって、ある軸線の回りに配列された、永久磁石製の、少なくとも1つの第1の磁石体と少なくとも1つの第2の磁石体とを備え、前記第1及び第2の磁石体を前記軸線の回りに回転駆動する駆動機構を備え、前記第1の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれN極及びS極となるように磁化され、前記第2の磁石体は外周面側及び内周面側がそれぞれS極及びN極となるように磁化され、前記第1の磁石体と前記第2の磁石体は前記軸線の回りに交互に配置され、前記第1の磁石体及び第2の磁石体の磁場強度を、前記第1あるいは第2の磁石体からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記収納空間に至り、前記収納空間からの磁力線が前記側壁あるいは前記底壁を貫通して前記第2あるいは第1の磁石体に至るものに設定した、攪拌装置と、
を備えることを特徴とする溶解炉システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の磁石体は、それぞれ、一面側がN極に磁化され他面側がS極に磁化された少なくとも1つの第1タイプの磁石体層と、一面側がN極に磁化され他面側がS極に磁化された少なくとも1つの第2タイプの磁石体層と、を積層したものとして構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溶解炉システム。
【請求項3】
前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層は、それぞれ、一面側がN極に磁化され他面側がS極に磁化された複数の単位磁石をある面に沿ってマトリクス状に配列したものとして構成され、前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層のいずれも、前記ある面に沿って隣り合う前記単位磁石間に作用する同極同士の反発に伴う空隙を備え、前記前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層は、前記第1タイプの磁石体層の前記空隙と前記第2タイプの磁石体層の前記空隙が重なり合わないように位相をずらした状態で積層されている、ことを特徴とする請求項2に記載の溶解炉システム。
【請求項4】
前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層のうちの一方における単位磁石は、他方における複数の単位磁石と直接的に同時に重なり合って、互いに磁力により吸引し合い、前記第1の磁石体あるいは前記第2の磁石体を構成する、ことを特徴とする請求項3に記載の溶解炉システム。
【請求項5】
前記第1タイプの磁石体層及び前記第2タイプの磁石体層は、それぞれ、XYZ方向にそれぞれある値を採る単位磁石の複数を備え、
前記第1タイプの磁石体層を、前記第1タイプの磁石体層のXY面における中心を第1座標中心とみたてて、前記第1座標中心の回りの4象限にそれぞれ1つずつ都合4つの前記単位磁石を配し、且つ、前記4つの単位磁石のそれぞれにXY方向に連続的に隣り合うようにさらに別の前記複数の単位磁石を配することにより、構成し、
前記第2タイプの磁石体層を、前記第2タイプの磁石体層のXY面における中心を第2座標中心とみたてて、前記第2座標中心に、1つの前記単位磁石をその中心が重なるように配し、且つ、前記1つの単位磁石にXY方向に連続的に隣り合うように前記複数の単位磁石を配することにより、構成した、
ことを特徴とする請求項2乃至4請求項に記載の溶解炉システム。
【請求項6】
前記単位磁石として、XYZ方向にある大きさの第1単位磁石と、前記第1単位磁石のX方向に半分の寸法の第2単位磁石と、Y方向に半分の寸法の第3単位磁石を用いた、ことを特徴とする請求項5に記載の溶解炉システム。
【請求項7】
前記攪拌装置は、前記攪拌装置を磁気シールド状態に収納するケースを備え、少なくとも前記ケースのうちの前記溶解炉と対向する面は非シールド面として構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の溶解炉システム。
【請求項8】
前記攪拌装置は、前記溶解炉のある側壁に、立設状態に設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至7に記載の溶解炉システム。
【請求項9】
前記攪拌装置は、前記溶解炉の側壁の周囲に複数設けられていることを特徴とする請求項8に記載の溶解炉システム。
【請求項10】
前記攪拌装置は、前記溶解炉の底壁の外部下側に対向させて、横臥状態に設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至7に記載の溶解炉システム。
【請求項11】
前記溶解炉のある側壁に対向させて、横臥状態に設けられた攪拌装置をさらに備えている、ことを特徴とする請求項10に記載の溶解炉システム。
【請求項12】
前記攪拌装置は冷却機構を備えている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項11に記載の溶解炉システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−106689(P2011−106689A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259051(P2009−259051)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(593059223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(593059223)
【Fターム(参考)】
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