説明

溶解装置及びそれを備えた給湯装置

【課題】簡単な構成、コンパクト、低消費電力で、湯水に安定した溶解濃度の無機化合物を供給できる溶解装置を提供すること。
【解決手段】水経路13と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物である無機化合物11を収納する無機化合物収納容器12とを備え、前記無機化合物11を溶解させた湯水を前記水経路13から流出させるとともに、前記湯水の量を0.5〜3L/minとしたことを特徴とする溶解装置14で、通過する湯水量範囲が狭いので、特別な溶解濃度抑制手段を必要とせず、無機化合物の溶解濃度の変動を抑え安定した濃度を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物等を水へ供給する機能を具備した溶解装置及びそれを備えた給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の溶解装置は、目的の成分を含む材料を電気分解にて水中に溶解させ、この溶解した水を目的とする回路へ供給している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、特許文献1に記載された技術を示すものである。図12に示すように、亜鉛陽極51と、陰極52と、ケーシング55と、直流電源59から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−190882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、目的とする成分(亜鉛陽極1)の水への溶解方法は、電気分解の原理によるため、直流電源59と、回路を流れる水への漏電を防止するための絶縁回路(図示せず)が必要となる。従って、装置のサイズアップ、コストアップとともに、直流電源59においては電力を必要とするため消費電力量も増加する。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、電気回路を必要とせず、小型化かつ低ランニングコストで、所定濃度の無機化合物等の供給を可能とする溶解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の溶解装置は、水経路と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物である無機化合物を収納する無機化合物収納容器とを備え、前記無機化合物を溶解させた湯水を前記水経路から流出させるとともに、前記湯水の量を0.5〜3L/minとしたことを特徴とするものである。
【0008】
これによって、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となる。従って、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減でき、コンパクト化と低コスト化を容易に実現することができる。電力不要の原理であるため、消費電力量を抑えることができる。また、溶解装置を通過する湯水量範囲が小さいので、特別な溶解濃度抑制手段を必要とせず、無機化合物の溶解濃度の変動を抑え安定した濃度を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気回路を必要とせず、小型化かつ低ランニングコストで、所定濃度の無機化合物等の供給を可能とする溶解装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における溶解装置の構造図
【図2】同無機化合物の速度境界層の状態図
【図3】同無機化合物(酸化亜鉛)の流量と溶解度特性の関係図
【図4】本発明の実施の形態2における給湯装置の構成図
【図5】同溶解装置の回路図
【図6】同分岐部間の注湯経路と、溶解装置を含む並列分岐経路の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフ
【図7】同他の溶解装置の回路図
【図8】本発明の実施の形態3における溶解装置の回路図
【図9】同異なる分配比ごとの、注湯経路と並列分岐経路の流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフ
【図10】同無機化合物(酸化亜鉛)の流量と溶解度の関係図
【図11】同他の溶解装置の回路図
【図12】従来の溶解装置の回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、水経路と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物である無機化合物を収納する無機化合物収納容器とを備え、前記無機化合物を溶解させた湯水を前記水経路から流出させるとともに、前記湯水の量を0.5〜3L/minとしたことを特徴とする溶解装置である。
【0012】
これにより、水と無機化合物の間の溶解濃度差で物質が移動する、物質拡散(フィックの法則)の原理で、水に無機化合物を溶解させることが可能となる。従って、これまで必要としていた電源回路と絶縁回路が削減でき、コンパクト化と低コスト化を容易に実現することができる。また、電力不要の原理であるため、消費電力量を抑えることができる。さらに、溶解装置を通過する湯水量範囲が狭いので、特別な溶解濃度抑制手段を必要とせず、無機化合物の溶解濃度の変動を抑え安定した濃度を得ることができる。
【0013】
第2の発明は、前記湯水を注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路とを備え、前記並列分岐経路に第1の発明の溶解装置を配設したことを特徴とする給湯装置である。
【0014】
これにより、浴槽への湯張り時に、従来と変わらない湯張り時間で所定濃度の無機化合物等を溶解させた湯水を注湯することが可能となる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明の給湯装置において、前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水流量の分配比を調整する湯水流量分配比調整手段を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
これにより、湯水流量分配比調整手段によって一部の湯水のみが溶解装置を通過するため、無機化合物等の溶解濃度の変動を抑え安定した供給を可能とするとともに、溶解装置を通過しない湯水と合流し、従来と変わらない湯張り時間で所定濃度の無機化合物等を有した湯水を注湯することが可能となる。さらに、湯水流量分配比調整手段により、並列分岐経路への湯水流量の任意の増減および分配停止が可能となり、浴槽への注湯時の無機化合物等の供給の有無を、任意に使い分けることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における溶解装置の構造図を示すものである。
【0019】
図1において、無機化合物11は、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状と
の混合物であり、無機化合物収納容器12に収納される。無機化合物11は、水に対して溶解性を持つ。
【0020】
図1中の無機化合物11は径が異なる顆粒状のものであり、これを多層状となるように構成すると、無機化合物収納容器12内には多孔質の空間が形成される。濾過手段16は、無機化合物収納容器12内の水勢によって無機化合物11の顆粒が無機化合物収納容器12から流出しようとした場合、これを防止するものである。無機化合物収納容器12は、水経路13によって連通され、溶解装置14を構成する。
【0021】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0022】
水経路13から溶解装置14に流入する水は、無機化合物収納容器12に形成される多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に無機化合物11の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。
【0023】
図2はその速度境界層の状態を示す図である。無機化合物11の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。無機化合物11は水に対して溶解性を持つため、無機化合物11の表面近傍の11の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。
【0024】
これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、無機化合物11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
【0025】
図3は、無機化合物11として、酸化亜鉛を使用した場合の、前記フィックの法則による、溶解装置14内の水流量に対する、溶解装置14出口の水に含まれる亜鉛濃度を示した溶解度特性グラフである。このグラフにおいて、流量1L/minまでは、流量増加とともに物質伝達が促進され濃度は上昇する。
【0026】
流量が1〜2L/minの間で濃度のピークが存在し、2L/min以上では、濃度低下傾向となっている。これは、2L/min以上では、前記のフィックの法則による亜鉛化合物の溶解絶対量が飽和してくるため、亜鉛濃度が流量の増加に伴い低下していると見なせる。従って、0.5L/minから3L/minの範囲であれば、有意性のある濃度を確保することができる。
【0027】
溶解装置を通過する湯水量を0.5L/minから3L/minの範囲としたことで、有意性のある濃度を確保できるので、別途溶解抑制手段等を必要とせず、コンパクトかつ簡単な構成で無機化合物を所定濃度で湯水に溶解させることが可能となり、低コスト化を実現することができる。
【0028】
なお、無機化合物11として用いることが出来る材料は酸化亜鉛以外に、亜鉛化合物として、酸化亜鉛(ZnO)、塩基性炭酸亜鉛(mZnCO・nZn(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、亜鉛置換型ゼオライト、亜鉛置換型キレート、亜鉛シリカゲル担持物、であり、これらを単一または組み合わせて用いることができる。また、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、鉄化合物(酸化鉄、水酸化鉄)、酸化銅、酸化ケイ素、二酸化マンガン、水酸化コバルト、酸化チタン、塩化銀、硫酸バリウムを用いることができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、無機化合物と、無機化合物収納容器とを有し、無機化合物収納容器を水回路で接続した溶解装置を備えた給湯装置とした。
【0030】
尚、無機化合物を、亜鉛を含む亜鉛化合物(酸化亜鉛、炭酸亜鉛など)とした場合、以下の効果を得ることができる。亜鉛は比較的要求量の多いヒトの必須元素の一つであり、通常の食事からの供給では欠乏しやすく、栄養強化目的で、食品に添加される元素である。これに対しては、浴槽に亜鉛を溶解させた水を供給することで、入浴中に経皮吸収による栄養強化を行うことができる。
【0031】
また、亜鉛化合物の酸化亜鉛は、日本薬局方や化粧品原料基準に定められた規格に準拠することで、医薬品や化粧品として使用することができる材料であり、主にヒトの肌の角質層に対して収斂作用、消炎作用などの作用を与え、肌の角質層の状態を良好に保つことができる。
【0032】
(実施の形態2)
図4は、本発明の第2の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。図5は、同実施の形態における溶解装置の回路図を示すものである。尚、第1の実施の形態と同じ構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0033】
図4おいて、圧縮機22、給湯熱交換器23、減圧手段24、蒸発器25を冷媒回路26で順に環状に接続してヒートポンプユニット21を構成している。貯湯ユニット27の貯湯タンク28には水が貯留されており、出湯回路30は貯湯タンク28、給湯水ポンプ29、給湯熱交換器23、貯湯タンク28を順に接続する回路である。
【0034】
浴槽水加熱回路35は、貯湯タンク28、風呂熱交換器33、浴槽水加熱ポンプ34、貯湯タンク28を順に接続する回路であり、風呂熱交換器33の他方の回路には浴槽42が接続されている。
【0035】
浴槽水循環回路41は、浴槽42、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ40、風呂熱交換器33を順に接続する回路である。
【0036】
浴槽水注湯回路39は、貯湯タンク28の湯水を、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42へ注湯する回路である。この回路には貯湯タンク28の高温の湯と水道水を混合する浴槽水混合弁36、注湯する水温を検知する温度検知手段37、浴槽水注湯回路39の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁38を順に備える。
【0037】
図5に示すように、浴槽水注湯回路39内の注湯経路1の途中に2ヶ所の分岐部2を設け、両分岐部2を並列分岐経路3で接続し、並列分岐経路3上に溶解装置14を貯湯ユニット27の本体筺体内に収納するように配設したものである。
【0038】
また、注湯経路1の管径aに対して、並列分岐経路3の管径bをa<bとすることで、注湯経路1と、並列分岐経路3の間で圧力損失差を作り、注湯経路1を流れる湯水の一部を並列分岐経路3側に分流し、溶解装置14にて酸化亜鉛が溶解され、再び下流側の分岐部2を経て、注湯経路1の湯水と合流し、浴槽42に注湯される。
【0039】
ヒートポンプユニット21で貯湯タンク28に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク28の水は、給湯水ポンプ29によって給湯熱交換器23へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ29は給湯熱交換器23で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路30の流
量を制御する。
【0040】
浴槽42への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路39の浴槽水混合弁36は、温度検知手段37で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、貯湯タンク28の高温の湯と水道水の混合割合を調整する。
【0041】
所定温度となった湯水は、浴槽水注湯回路39、浴槽水循環回路41を順に経由して浴槽42へ流出する。一方、浴槽42の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク28の高温の湯を、浴槽水加熱ポンプ34によって風呂熱交換器33へ搬送し、浴槽水ポンプ40より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器33で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、貯湯タンク28の下部より内部へ流入する。
【0042】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。利用者が浴槽42へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁36で調整された湯水が、浴槽水注湯弁38を閉から開に制御した場合に、浴槽水注湯弁38から、浴槽水注湯回路39内の注湯経路1に流入する。
【0043】
注湯経路1の管径aに対して、並列分岐経路3の管径bをa<bとしたことで、注湯経路1と並列分岐経路3間に圧力損失差を作り、注湯経路1を流れる湯水の一部を並列分岐経路3側に分流し、溶解装置14にて酸化亜鉛が溶解され、下流側の分岐部2を経て注湯経路1の湯水と合流し、浴槽42に注湯される。
【0044】
前記溶解装置14内においては、流入した湯水が無機化合物収納容器12に充填された酸化亜鉛の粒子で形成された多孔質の空間を通過する。この際、前述したフィックの法則により、酸化亜鉛は多孔質空間内の湯水に溶解する。
【0045】
ここで、給湯装置は、設置される家庭毎に、給水源として使用される水道の水圧や、浴室が2階以上に設置される等の配置に起因して、浴槽水注湯回路39を流れる湯水量は、概ね10から20L/minの範囲で変動する。そのため、溶解装置14を注湯経路1に直接配設した場合、最大で△10L/minの流量変化が生じ、図3の溶解度特性において、図示していないが、10L/min以上における酸化亜鉛の湯水への溶解濃度は、殆ど0ppmに近いレベルとなることが明らかである。
【0046】
本発明の給湯装置は、並列分岐経路3に溶解装置14を配設し、注湯経路1に流れる湯水の一部を並列分岐経路3側に分流して、溶解装置14を通過することにより、酸化亜鉛の安定した濃度を確保することができる。この構成のメリットを図6を用いて説明する。
【0047】
図6は、分岐部2間の注湯経路1と、溶解装置14を含む並列分岐経路3の圧力損失比を1:9とした場合の、流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。圧力損失比が1:9であることから、それぞれの流量分配比は、9:1となり、並列分岐経路3側に全湯水流量の1/10が分流されることとなる。
【0048】
この図6のグラフからわかるように、圧力損失比(流量分配比)は、流量Qの変動に対しても一定であり、全湯水流量が半分になると、同様に並列分岐経路3を流れる湯水流量も半分となる。
【0049】
このことから、給湯装置の設置環境に起因する溶解装置14への流量変化を容易に予想できるだけでなく、全湯水流量が最大△10L/min変化しても溶解装置14を通過す
る湯水変化量を△1L/minに抑えることができ、図3の溶解度特性を有する溶解装置14を用いた場合には、溶解装置14出口部での酸化亜鉛濃度を0.5ppm以上確保することができ、この酸化亜鉛溶解水を注湯経路1の湯水と合流することで希釈され、0.05ppm以上の安定した濃度を有する湯水を浴槽へ注湯することが可能となる。
【0050】
以上のように、本実施の形態においては、湯水を浴槽42へ注湯する浴槽水注湯回路39と、前記浴槽水注湯回路39を開閉する浴槽水注湯弁38と、浴槽水注湯弁38の下流側の注湯経路1上に2ヶ所以上の分岐部2を設け、分岐部2間を接続した並列分岐経路3を設けるとともに、前記並列分岐経路3上に溶解装置14を配設したものであり、浴槽水注湯回路39内の注湯経路1を湯水が流れる際、一部の湯水は、上流側の分岐部2を経て並列分岐経路3側に分流し、溶解装置14を通過した際に、無機化合物が溶解され、下流側の分岐部2を経て注湯経路1を流れる残りの湯水に合流される構成とした。
【0051】
これにより、溶解装置14に全湯水流量が通過する構成に対して、本発明は、一部の湯水だけが溶解装置14内を通過するため、元の湯水流量が変動した場合でも、溶解装置14内を流れる湯水流量の変動幅は小さくて済み、無機化合物の溶解濃度の変動を抑制できる。
【0052】
尚、注湯経路1の湯水流量と、溶解装置14を含む並列分岐経路3の湯水流量との流量比を作る手段としては、図7に示すように、浴槽水注湯弁38側の注湯経路1の管径より小さい管径の圧損手段18を、分岐部2間に組み込んでも、並列分岐経路3側への分流を作ることができる。
【0053】
尚、溶解装置14は浴槽水注湯弁38の下流側とした。これにより、溶解装置14は浴槽への湯はり停止時などに生じるウォーターハンマー現象(浴槽水注湯回路等の水圧上昇)の影響を受けないため、溶解装置14の耐圧構造を簡素化することができる。
【0054】
本発明において、溶解装置14は給湯機の本体筐体に収納し、浴槽水注湯回路39を構成しているが、浴槽水循環回路41に設けても、浴槽42へ無機化合物11が溶解された湯水を供給することが出来る。
【0055】
また、本体筐体外部の浴槽水循環回路41に設けることも可能であるが、本体筐体内部の雰囲気温度は、低外気温時であっても貯湯タンク28からの放熱により、筐体内部の雰囲気は適度に加温されるため、溶解装置14の凍結防止などの断熱が不要、または構成の簡素化が可能となる。
【0056】
また、給湯機を貯湯式給湯機とした場合、貯湯タンクには高温の湯を貯湯するので、この高温の湯を溶解装置へ供給することによって機器の殺菌、滅菌を行うことができる。また、水中に溶け込んでいる残留塩素が貯留中に少なくなるので、本体の材質は耐腐食性材料ではなく、安価な汎用部品を使うことができる。
【0057】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における溶解装置の回路図である。尚、第1の実施の形態と同じ構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0058】
図8において、19は、湯水流量分配比調整手段であり、上流側の分岐部2に配設されている。湯水流量分配比調整手段19としては、分岐部2から下流の注湯経路1と、溶解装置14を含む並列分岐経路3に流す湯水流量の分配比率を調整する目的として設置しており、分配比を段階的ないし無段階に調整できる点で、流量調整弁を用いるのが好ましく、さらに予めマイコンにプログラムされた分配比率に自動調整できる点で、モーター等電
気動力手段で分配比を調整できる電動式の流量調整弁を用いるのが、さらに好ましい。
【0059】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。浴槽水注湯弁38の下流で、かつ分岐部2に設置された湯水流量分配比調整手段19は、例えば使用者が浴室のリモコンを用いて、酸化亜鉛の溶解濃度を増減したい場合に、湯水流量分配比調整手段19は、分岐部2間の注湯経路1と、溶解装置14を含む並列分岐経路3に流れる湯水の流量比をリモコンの所定の濃度レベルに合わせて調整する。
【0060】
図9は、2つの異なる流量分配比ごとの、注湯経路1と並列分岐経路3の流量Qと圧力損失Pの関係を示すグラフである。また、図10の溶解装置14の溶解度特性によると、溶解装置14への湯水流量を増加させることで、溶解装置14の出口の酸化亜鉛の溶解濃度が低下することが分かる。この溶解度特性を用いた場合、初期設定の流量分配比(注湯経路:並列分岐経路)が、(ア)9:1となっている場合、湯水流量分配比調整手段19を作動させて、分配比を図中(イ)の7:3とすることで、溶解装置14出口の湯水の酸化亜鉛濃度は、およそ0.25ppmとなり、注湯経路1の湯水と合流後は、およそ0.08ppmと濃い溶解濃度の湯水を浴槽42に注湯可能となる。
【0061】
以上のように本実施の形態の給湯装置は、上流側の分岐部2、または並列分岐経路3、または上流側分岐部2と下流側分岐部2の間に位置する注湯経路1の少なくとも1カ所以上に、注湯経路1と並列分岐経路3に流れる湯水流量の分配比を調整する湯水流量分配比調整手段19を配設したものであり、湯水流量分配比調整手段19により、並列分岐経路3への湯水流量の変化範囲が小さくても、無機化合物濃度を増減、および分配停止を使い分けることができる。
【0062】
尚、本発明における溶解装置14に流れる水流方向については、前記実施の形態では、上から下方向、つまり天から地への流れで示しているが、図11に示すように溶解装置14に対して、地から天への流れで構成してもよく、この場合、無機化合物11の粒子が水流で持ち上げられて水の流路を確保するため、無機化合物11の粒子に起因する圧力損失を大幅に低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明に係る給湯装置は、コンパクト化、低コスト化、構成の簡素化、信頼性向上、運転効率向上に繋がり、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機にも利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 注湯経路
2 分岐部
3 並列分岐経路
11 無機化合物
12 無機化合物収納容器
13 水経路
14 溶解装置
16 濾過手段
18 圧損手段
19 湯水流量分配比調整手段
21 ヒートポンプユニット
27 貯湯ユニット
28 貯湯タンク
36 浴槽水混合弁
37 温度検知手段
38 浴槽水注湯弁
39 浴槽水注湯回路
42 浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水経路と、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物である無機化合物を収納する無機化合物収納容器とを備え、前記無機化合物を溶解させた湯水を前記水経路から流出させるとともに、前記湯水の量を0.5〜3L/minとしたことを特徴とする溶解装置。
【請求項2】
前記湯水を注湯する注湯経路と、前記注湯経路からの湯水を分流させるように形成した並列分岐経路とを備え、前記並列分岐経路に前記請求項1に記載の溶解装置を配設したことを特徴とする給湯装置。
【請求項3】
前記注湯経路と前記並列分岐経路とを流れる湯水流量の分配比を調整する湯水流量分配比調整手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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