説明

溶質を金属スレッド上に堆積させる方法

【課題】溶質(34)を金属スレッド(4)上に堆積させる方法を提供する。
【解決手段】揮発性溶媒と前記溶質(34)から形成された液体溶液(3)をスレッド(4)上に堆積させる工程;及び次いで、スレッド(4)の温度を溶媒の蒸発温度を超える温度まで急速に上昇させて、前記スレッド(4)の表面に接触して置かれた溶媒を蒸発させるとともに、膨張によって、スレッドの周辺部上に残っている液体(33)を放出する圧力パルスを生成させる蒸気気泡(32)を形成する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コード及びスレッドを製造する分野に関し、より詳細には、これらのスレッドに処理が行われる工程に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのプロセスにおいて、続く製造工程におけるスレッドがより容易に処理されることができるように、スレッドの表面上に所定の物質の制御された厚さの層を堆積させるのが有益であることが分かる。
例えば、必要とされる機械的特性を有しない材料を補強するための繊維としてスレッドを用いるのが望まれる場合である。そのとき、スレッドが当の材料のマトリックスに完全に接着するように、これら2つの構成要素ができるだけ効果的に協働するように結合物質をスレッドの表面上に堆積させることによって、スレッドを処理する必要がある。このタイプの用途は、タイヤ工業又は補強されたプラスチック工業において広く用いられる。
【0003】
本説明との関連において、用語“スレッド”は、モノフィラメント、マルチフィラメント、ケーブルヤーン、合糸、又は金属スレッドから形成された同等の集合体を包含する、非常に一般的な意味で理解されるべきである。
結合物質をスレッド上に堆積させる方法の1つは、所定の溶媒に処理物質を希釈し或いは溶解させ、次いで、処理の第1の工程において、スレッドの表面上に液体を堆積させ、第2の工程において、溶媒を蒸発させることによって取り除くことからなる。
それ故、スレッドの表面上に堆積された液体の正確な量に対して、非常に特別な注意を払わなければならない。実際には、スレッドの特性が、スレッドの全長にわたって確実に均一となるように、一般的に薄い厚さを有する堆積された液体層を確実にできるだけ均一にすることが重要である。
【0004】
このために、湿潤或いはコーティングの既知の技術は、堆積させることが望まれる溶質を含有する揮発性溶媒から形成される液体槽にスレッドを通過させることからなる。スレッドを槽中に浸漬させることによって、液体溶液が、スレッド上に堆積する。次いで、スレッドは、乾燥されて、溶媒が抽出され、堆積した溶質がスレッド上に残る。乾燥工程は、“外部”熱エネルギーと呼ばれるものを供給することによって行われ、この熱エネルギーは、熱源からスレッド上に堆積した液体の外面までの放射或いは伝導によって、また、スレッド上に堆積された液体の外面からスレッドと液体の境界面まで、次いで、スレッドの表面からスレッドの内部までの伝導によって伝達される。
しかしながら、スレッド上に堆積された液体の制御された量は、例えば、スレッドが槽を通過する速度の変化或いは溶液のレオロジー特性の変化のために、異なってもよい。
【0005】
これらの変化の結果、スレッド上に堆積した溶液は、多かれ少なかれ比例して変化する。これは、溶媒が次第に蒸発するにつれて、液体の表面張力とスレッドの曲率のために、溶媒がまだ存在する領域、即ち、堆積した液体がより厚い領域、例えば、スレッドを構成している個々のフィラメントの間の空間、或いはスレッドがいくつかの合糸で構成されているときにケーブルヤーン内の空間に溶質が濃縮するためである。スレッドを顕微鏡下で観察するときに、この再濃縮現象は、例えば、ケーブルヤーン内、及びスレッドの裏などのいかなるコーティングも無い領域内に、高溶質濃度を有する局部的なメニスカスをもたらす。この現象は、後で見られるように、図3に概略的に示される。
メニスカスの出現は、本質的に、覆われるべきスレッドが、少なくとも2つの個々のフィラメントの集合体から作られるときに生じるということになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、この問題への解決を提供すること、即ち、スレッドの表面上に溶質膜を堆積させることによって金属スレッドを処理することが目標であるときにスレッドの表面上に堆積されたコーティングのより良い均一性を追求することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
スレッドが液体槽を通過し、次いでスレッドの温度を急速に上昇させるときに、スレッドの表面上に堆積された液体は、急に液相から気相に変化することが示された。蒸発した溶媒の部分に固定されない溶質は、次いで、スレッドの表面上に堆積され、スレッドの表面上に成長する蒸気気泡によって形成された圧力波が、余分の液体を押し出す。
それ故、スレッドの表面上に存在する溶質が、押し出された液体によって運び去られず、堆積された溶質の量が、蒸発した液体に含有される溶質の部分にほぼ対応し、その分析が回収された液体の量とスレッドの取り込み質量を測定することによって容易に行うことができることが見い出された。
【0008】
本発明によれば、金属スレッド上に溶質を堆積させる方法であって:
揮発性溶媒と前記溶質から形成された液体溶液が、スレッド上に堆積される工程、及び
次いで、溶媒の蒸発温度を超える温度までスレッドの温度を急速に上昇させて、前記スレッドの表面と接触して置かれた溶媒を蒸発させるとともに、膨張によって、スレッドの周辺部上に残っている液体を押し出す圧力パルスを生成する蒸気気泡を形成する工程
を含むことを特徴とする。
【0009】
スレッド上に溶質を堆積させるためのデバイスは、スレッドを所定の速度で前記デバイスに通過させる手段と、溶媒と前記溶質とから形成された溶液を堆積させる手段と、コーティング手段の下流に配置された加熱手段とを備える。前記加熱手段は、スレッドの表面で温度を急速に上昇させることのできる手段を備える。
導電体によってスレッドに分配されるエネルギーは、熱エネルギーに変換され、これは、スレッドの表面からの伝導によって液体に伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明によるデバイスを示す概略図である。
【図2】図2は、蒸気気泡形成時と液体押し出し時のスレッドを示す概略図である。
【図3】図3は、溶質層で被覆されたスレッドを示す図であり、フィラメント間メニスカスが前記スレッド上に現れている。
【図4】図4は、本発明の方法を用いて被覆されたスレッドを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明の目的は、1つの特定の実施形態及び図1〜図4に基づいて、本発明の実施を示すことにある。
図1は、スレッド4が通過する、本発明のデバイス1を示す図である。スレッドを流すための手段(図示せず)は、矢印Cの方向に前記スレッドを前進させる。以下で分かるように、また、本説明の主題を形成する本発明の実施形態によれば、スレッドが良好な導電体であること、及び急速な加熱に幾分感受性がないことが重要である。その結果、最初の解決法では、本方法及びデバイスの使用は、金属スレッドに限定される。
【0012】
スレッドは、溶媒と溶質から構成される液体3を含有する槽によって形成されたコーティング手段2を通過する。溶質は、イオン形態或いはエマルジョン又は粒子の分散液の形態であり得る。
【0013】
液体槽の中を通過することによって、スレッドは、液体3の層31で被覆される。コーティング法は、先行技術からそれ自体既知であるが、図1に示されるように、スレッドが水平に或いは、スレッドの通過方向と逆流して液体が流れる垂直ダクトによって通過する槽を含んでもよい。
【0014】
槽を出るときに、スレッド4は、電流が流れる導電体5を通過する。導電体は、スレッドを、溶媒の蒸発温度を充分に超える温度まで突然に上昇させる。これは、図2に示されるように、スレッド4の表面上に蒸気気泡32を形成させる作用を有する。蒸発気泡32の急速な成長により、スレッド4の周辺部に残る液体がしぶき33の形で押し出される。回収システム21は、液体を槽中で再使用するために余分な液体を集めるために用いられる。
【0015】
導電体5の出力は、スレッドの表面から液体を押し出すための急速な作用を生じることのできる表面温度を得るようにスレッドの通過速度により調整される。それ故、スレッドの表面での温度上昇が急速であるように、比較的短い導電体を有することが可能である。更に、導電体を通って流れる大電流のために、巻数もまた小さくなる。
【0016】
気泡32は、膨張蒸気の推進作用が最大になるように、スレッド4の表面から形成されることが重要である。従って、スレッドの金属性質は、導電体5を通過するスレッドの部分に誘導電流が流れ込み、スレッドの周辺部上の液体よりもずっと素早くスレッドを加熱させる。主にトレッドの表面から液体に伝導することによって熱が液体に伝わる
【0017】
導電体の出力或いはスレッドを通過速度を調整することによって、スレッドの表面上に堆積した溶質の固形分を調整することが可能である。これは、スレッド上に堆積した溶質の量が、溶媒における所定の溶質濃度の放出相中に生じた蒸気の量にほぼ比例することが見い出されたからである。
【0018】
導電体の出力が高くなるにつれて、気泡形成がより速く激しくなることとなる。更に、導電体が消散した出力を増大させることによって、或いはスレッドの通過速度を遅くさせることによって、デバイスを出るときにスレッドの表面上に残っている固形分の量が減少する。導電体の出力を増大させることによって、或いはスレッドの通過速度を増大させることによって、放出現象は、より穏やかになり、スレッドの表面上存在する全ての液体を放出するために、気泡の形態で、溶媒のより多くの量を蒸発させることが必要である。スレッド上に堆積された溶質の量が増加することとなる。
【0019】
しかしながら、導電体の出力がある限度より下に減少しないように注意しなければならない。これは、出力が不十分なときに、液体が部分的に放出され、望ましい作用の品質を損なうからである。
【0020】
放出有効性を向上させるために、導電体からのエネルギーの供給が迅速な蒸発気泡形成に直接役立つことができるように、槽中の液体を溶媒の蒸発温度よりもわずかに低い温度にすることが可能である。用語“わずかに低い”は、溶媒の蒸発温度より5℃〜10℃低い温度を意味すると理解される。
【0021】
本説明の主題を形成するデバイスは、また、スレッドが前記加熱手段5に接触することなしに、前記スレッドが乾燥手段を通過することを可能にする利点を有する。従って、デバイスを出るときにスレッドを案内するための手段を慎重に配置ことによって、溶媒が完全に取り除かれる前に、形成されたコーティングを損傷しやすいスレッドといかなる機械的な接触も避けることができる。
【0022】
誘導デバイスを出るとき、スレッド4の表面は、実際には、液体が無い。スレッドの内部構造の中に浸潤されたわずかな微量の液体のみが残る。次いで、スレッドが引っ張られ、最後に乾燥されて、それによって溶媒の最後の微量が蒸発する。最後の乾燥工程は、必要ならば、乾燥空気流を吹き付けるような既知の手段(図示せず)を用いて行われる。通常の場合では、プロセス後のスレッドの温度は、熱慣性によって、溶媒35のこれらの微量を蒸発させるのに充分である。
【0023】
スレッド4の表面は、濃度の割合に関して、蒸発された溶媒の量に実質的に対応する溶質34の薄層で被覆される。従って、スレッド上に堆積する溶質34の量は、ベース液体3の溶質の濃度と、導電体の作用によって形成される蒸気の量に本質的に左右される。この蒸気の量は、スレッドの通過速度或いは導電体の出力のようなプロセス制御パラメータに左右される。膜の厚さは、スレッドの表面上の全ての点でほぼ一定且つ均一であり、メニスカスのような局部的な過度な厚さは無い。
【0024】
最後に、本方法は、加熱手段に入るときにスレッドによって運び去られる液体の量に関わらず、溶質の比較的一定の量をスレッドの表面上に堆積させることを可能にすることが見い出された。これは、液体の突然の放出を引き起こす蒸気気泡の急速な形成のために、スレッドと直接接触する液体の部分のみが蒸発する。蒸発気泡の推進効果は、液体の残りの量を放出するのに充分である。従って、スレッドに分配されるエネルギー量を調整することによってスレッドの表面上の比較的均一なコーティングを達成することが可能である。
【0025】
更に、現象が比較的突然であるために、乾燥時間がより長いときに見られる、スレッドの表面上に存在する溶質の濃縮とメニスカスの形成が防止される。このようにして、溶質は、スレッドの表面の上に極めて均一に分配される。後者の性質は、処理された金属スレッドがタイヤに用いられる補強繊維を製造することを意図するときに特に重要である。これらのスレッドは、一般的に、ゴムに封入され、カーカス或いはクラウンベルト用の補強プライを構成する。それ故、金属スレッドとゴムとの間の結合を促進する必要がある。
【0026】
更に、この結合が、シランベースの組成物の薄層をスレッド上に堆積させることによって改善されることが知られている。コーティングの均一性を向上させることによって、結合の質、その結果、タイヤの強度が向上する。
このタイプのコーティングは、前記スレッドが封入されるゴム材料へのスレッドの接着強度を非常に実質的に向上させることを可能にする。これらの向上した性質は、タイヤに用いられるときに補強プライの強度と、また、スレッドを腐食し、その強度を変化させがちな酸化剤の浸透に対する抵抗を増大させるのを助ける。
【0027】
従来の方法が、シランを堆積させるのに用いられるときに、水/シラン溶液を含む槽にスレッドを通過させ、次いで、外部熱エネルギーが供給される炉にスレッドを通過させることによって、シランコーティングは、実質的な局在的な過剰厚さを有する。これらの過剰厚さ、或いはメニスカスは、1〜30μmである。図3は、3つの個々のフィラメント41の集合によって形成され、シラン層31で覆われたスレッド4の場合を示す図である。メニスカス36が、フィラメントの間にある空間に見える。
シランは、好ましくは、以下の式を有する。
【0028】
【化1】

【0029】
(式中、Rは、補強材が封入されているゴム組成物と少なくとも反応することのできる少なくとも1つの官能基を含有する有機基を示す。各OR’は、鋼の表面上の酸化物或いは水酸化物と反応することのできる基を示し;各R”は、独立して、水素、環式又は非環式の有機基又は水素を示し;aは、0又は最大2に等しい値を取ることになる。)
【0030】
基Rは、好ましくは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ポリアミノアルキル、エポキシアルキル、特にグリシジルアルキル、ハロアルキル、メルカプトアルキル、硫化アルキル、場合によりシリコン原子を含んでいてもよいアルキルポリスルフィド、アジドアルキル又は少なくとも1つのエチレン二重結合、好ましくは活性エチレン二重結合を含有する環式又は非環式基を含む。
【0031】
“活性”結合は、良く知られているように、ここでの場合は、ジエンエラストマーと反応することのできる、より反応性に作られた結合であることが思い出される。基Rのエチレン二重結合(>C=C<)は、好ましくは、隣接する電子吸引基、即ち、エチレン二重結合の2つの炭素原子の1つに結合した基、の存在によって活性化され、この電子吸引基又は“活性化する”基は、特に、以下の結合の少なくとも1つを含む基より選ばれる:C=O、C=C、C≡C、OH、O-アルキル又はO-アリル、或いは少なくとも1つの硫黄原子及び/又は窒素原子、又は少なくとも1つのハロゲン。定義によって、“電子吸引”基は、問題となっている分子の同じ場所を占める場合には、水素原子がするであろうよりも多くの電子をそれ自体に吸引することのできる官能基或いはラジカルである。
【0032】
基R’は、同一か又はそれらのいくつかがある場合には異なり(a=0又は1)、特に、水素、環式又は非環式の有機基又は有機金属基より選ばれる。R’が有機金属基のときには、好ましくは、少なくとも1つのシリコン原子を含む。好ましくは、各R’は、独立して、水素、炭素原子1〜6個を有するアルキル、炭素原子1〜6個及び少なくとも1つのシリコン原子を有する有機金属基である。
基R”は、同一か又はこれらのいくつかがある場合には異なり(a=2)、好ましくは、炭素原子1〜6個を有するアルキル、例えば、メチル基及び/又はエチル基より選ばれる。
【0033】
出発有機シランは、好ましくは、アミノ(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、アクリルオキシ(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、メタクリルオキシ(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、グリシドキシ(C1-C6)アルキル(C1−C6)アルコキシシラン、メルカプト(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、アルキル(C1-C20)(C1-C6)アルコキシシランのジスルフィド、アルキル(C1-C20)(C1-C6)アルコキシシランのポリスルフィド、マレイミドアルキル(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、イソマレイミドアルキル(C1-C6)(C1-C6)アルコキシシラン、N-[(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシリル]マレアミド酸、又はこれらの化合物の混合物によって形成される群から選ばれる。
【0034】
本発明による複合物の相間接着に用いることができるようなシランの具体例として、以下を挙げることができる:3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノエトリトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-β-アミノエチル-3-アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノブチルトリエトキシシラン、3-アミノエチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ビストリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、ビストリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、3-マレイミドプロピルトリエトキシシラン、(N-プロピルトリエトキシシリル)マレアミド酸。
【0035】
有機シランの他の具体例として、以下を挙げることができる:p-(トリメトキシシリル)ベンジルジアゾアセテート、4-(トリメトキシシリル)シクロヘキシルスルホニルアジド、6-(トリメトキシシリル)ヘキシルスルホニルアジド。
シランは、より好ましくは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-マレイミドプロピルトリエトキシシラン、ビス-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド、及びこれらの有機シランの混合物によって形成される群より選ばれる。
【0036】
有利には、アミノ(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、特に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン又はマレイミド(C1-C6)アルキル(C1-C6)アルコキシシラン、特に、3-マレイミドプロピルトリエトキシシランが用いられる。
【実施例1】
【0037】
一例を示すために、10mmの作動長と、1000Wのrms電力を有する、2つの巻きを備える導電体を用いて、水に5%まで希釈したシランを含む溶液で被覆された、直径が0.8mmの金属スレッドを300m/分の速度で通過させる。
スレッドの温度を、約170℃まで上昇させる。スレッドの表面上の全ての点で10nmと100nmの間、好ましくは30nmと50nmの間の厚さのシランの膜が堆積される。この厚さは、均一であり、過剰厚さも、いかなるメニスカスも存在しない。
それ故、膜の厚さは、スレッドの表面上の全ての点でメニスカスの厚さよりも小さく保たれ、メニスカスの厚さは、上記から分かるように、1μmから30μmまで異なることがあり得る。このシラン膜の厚さは、0.1μmより非常に小さくさえある。
【0038】
図4は、3つの基本フィラメント41を備えるスレッド4の場合を示す図であり、スレッド4の直径は、0.05mmから0.3mmまで異なってもよい、タイヤ工業で広く用いられているスレッドの直径に対応する。スレッド4は、膜31で被覆され、膜の厚さはスレッドの表面全体にわたってほぼ一定であり、フィラメント間のメニスカスは無い。
水中のエマルジョンとしてラテックスを含有する溶液で行った試験もまた良好な結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶質(34)を金属スレッド(4)上に堆積させる方法であって:
- 揮発性溶媒と前記溶質(34)から形成された液体溶液(3)をスレッド(4)上に堆積させる工程;及び
- 次いで、スレッド(4)の温度を溶媒の蒸発温度を超える温度まで急速に上昇させて、前記スレッド(4)の表面に接触して置かれた溶媒を蒸発させるとともに、膨張によって、スレッドの周辺部上に残っている液体(33)を放出する圧力パルスを生成させる蒸気気泡を形成する工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
金属スレッド(4)の温度を、高周波電気誘導ヒータ(5)によって上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒における所定の溶質濃度について、スレッド上に堆積される溶質量が、ヒータによって消散される出力に逆比例する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
スレッド上に堆積される溶質量が、加熱システムによって消散される出力を変化させることによって調整される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
液体溶液(3)が、スレッド上に液体溶液を堆積させる工程中、溶媒の蒸発温度よりわずかに低い温度にされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
液体溶液(3)が、水と混合されたシランから形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−530298(P2010−530298A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512631(P2010−512631)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057022
【国際公開番号】WO2008/155237
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】