説明

溶鋼用取鍋

【課題】溶鋼を排出する際に渦の発生を軽減でき、しかも受鋼時に受ける負荷や熱スポーリングに対して耐用性の高い溶鋼用取鍋を提供すること。
【解決手段】溶鋼を排出するための排出孔5を底に備える溶鋼用取鍋において、排出孔5の中心軸と側壁内面2aとの最短距離Lを排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼を排出するための排出孔を底に備える溶鋼用取鍋に関し、とくに溶鋼を排出孔から排出する際に、溶鋼の渦が生じて浮遊しているスラグを巻き込みながら溶鋼が排出されるのを軽減する構造を持った溶鋼用取鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼用取鍋の底の排出孔から溶鋼を排出する際、とくにその後半時期においては、溶鋼は渦となって溶鋼用取鍋から排出される。この渦が生じた場合、溶鋼の上面に浮遊しているスラグを巻き込みながら溶鋼が排出されるため、排出された溶鋼にスラグが混入し清浄性が大きく損なわれることになる。
【0003】
このような溶鋼へのスラグの混入を軽減して溶鋼の清浄性を確保するための方法として、溶鋼の残量がある程度の量以下になった段階で鋳造を止めて残鋼処理を行う方法があるが、大きな歩留まりロスが発生してしまうという問題がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、垂直方向の軸線を有するノズルの上方にそらせ板を配置し、このそらせ板によって、ノズルを、液体(溶鋼)の表面から直接下方へ向かう流れから隔離するようにした流れ制御装置が開示されている。また、この流れ制御装置では、仕切りを、そらせ板をノズルから垂直方向に離隔するように配置し、この仕切りによって、液体の流れを案内しかつ制御するとともに、前記軸線を中心とした回転流を阻止しかつ液体がノズルに入る前に前記軸線へ向けてそらせ板の下を放射状に流れることができるようにしている。
【0005】
また、特許文献2には、出湯用ノズルを配設するためのウエルブロックを構成する基部に、突起する壁(溶鋼渦発生防止用突起部)を設けることにより、出湯口付近における溶鋼の流動を抑えて溶鋼渦の発生を軽減し、ノロ等の溶鋼中への巻き込みによる溶鋼の混濁を避け、金属製品の品質低下を防ぐことができるようにした溶融金属用容器が開示されている。
【0006】
しかし、上記特許文献1及び特許文献2の構造では、容器底面の排出孔周りに別個の構造体が設置されており、これらの構造体は容器の底面により支持されているのみであるため、受鋼時等の溶鋼流による強い曲げモーメント及び熱衝撃を受けたときに、強度が足りず破壊されてしまうおそれがある。
【0007】
また、上記特許文献1及び特許文献2の構造では、容器の底面から上方に突出した部分が溶鋼により高温に晒されて過熱されるため、熱間強度が低下し、損耗する。しかも、溶鋼に晒された部分と比較的低温に保たれる容器底面との間に温度差が生じ、熱スポーリングが起こりやすい。
【0008】
このように、上記特許文献1及び特許文献2の構造は、耐用性が悪く、実用的ではない。
【特許文献1】特表平8−502209号公報
【特許文献2】特開2000−218362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、溶鋼を排出する際に渦の発生を軽減でき、しかも受鋼時に受ける負荷や熱スポーリングに対して耐用性の高い溶鋼用取鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
溶鋼用取鍋において排出孔が中心付近にある場合、溶鋼排出にともなって発生する渦は排出孔を中心としてその外縁は側壁内面にまで達することができ、大きく強いものとなる。一方、排出孔が側壁近くにある場合、側壁が障害になっているため渦は排出孔を中心としたものより小さく弱いものとなる。このため、排出孔の位置は側壁に近いほど渦によるスラグの巻き込み量が少なくなると考えられる。溶鋼用取鍋は、通常内径が2mから4m、一般的には3m前後もあることから、排出孔の位置が渦の大きさに与える影響は極めて大きいと考えられる。
【0011】
そこで、本発明者は、水モデル実験により、渦の強さと排出孔の位置との関係について調査した結果、排出孔が側壁に近いほど渦は弱く、そして、排出孔の中心軸と溶鋼用取鍋の側壁内面との最短距離が排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下にすると渦が大幅に軽減されることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、溶鋼を排出するための排出孔を底に備える溶鋼用取鍋において、排出孔の中心軸と側壁内面との最短距離を排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下としたことを特徴とするものである。
【0013】
このような構成とすることで、溶鋼を排出する際の渦発生を軽減し、溶鋼にスラグを巻き込むことを激減させることができるとともに、渦発生軽減のために上記特許文献1及び特許文献2のような特別な構造体を必要としないので、溶鋼用取鍋の耐用性が低下することもない。
【0014】
一方、設備的問題により、排出孔の中心軸と溶鋼用取鍋の側壁内面との最短距離を排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下として排出孔を設置することができない場合がある。具体的には、スライディングノズル装置の取り付け位置、スライディングノズル装置の耐火物を交換するための作業スペースあるいは連続鋳造時のタンディッシュに対する溶鋼用取鍋の配置の関係等から、現在の溶鋼用取鍋において排出孔を側壁近くに設けるとこれらに支障を来たす場合が考えられる。
【0015】
この場合には、溶鋼用取鍋の羽口れんがを含む底面に側壁内面と密着させて模擬壁を設置し、排出孔の中心軸と模擬壁内面との最短距離を排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下とすることにより、溶鋼の渦を軽減し排出された溶鋼にスラグを巻き込むことを激減させることができる。ここで、模擬壁は、溶鋼用取鍋の底面のほかに側壁内面によっても支持されており、その形状も単純にできるため、受鋼時等の溶鋼流による強い曲げモーメント及び熱衝撃に対して十分な耐用性を持ち、溶鋼用取鍋の耐用性の低下は最小限に抑えられ、また施工性も良好である。
【0016】
以上のように、本発明では、溶鋼用取鍋の排出孔を側壁(模擬壁)内面近くに配置するが、排出孔の中心軸と側壁(模擬壁)内面との最短距離が排出孔の最小内径Dに対して0.5D未満になると、排出孔の一部を側壁(模擬壁)が覆うことになり、溶鋼の排出が阻害されるので、前記最短距離の下限は0.5Dとした。なお、模擬壁内面とは、模擬壁の側面のうち排出孔側の面を言う。
【0017】
また、溶鋼用取鍋の排出孔の中心軸と側壁(模擬壁)内面との最短距離の上限は、2Dとし、好ましくは1.5Dである。2Dより大きくなると、渦が強くなるためスラグの巻き込み量が多くなる。なお、Dは一般的に使用されている溶鋼用取鍋の排出孔の最小内径から、40mm以上120mm以下の範囲が好ましい。
【0018】
本発明で言う排出孔とは、溶鋼用取鍋の底に溶鋼を排出するために設ける貫通孔であり、通常は上ノズル(鋳造用ノズルあるいは注湯ノズル等とも呼ばれている)のノズル孔のことである。この上ノズルの下に流量制御手段としてプレートれんが取り付けられていることが多いが、プレートれんがのノズル孔は本発明の排出孔とは言わない。さらに上ノズルの排出孔は下流側に内径が縮小している場合があるが、本発明の最小内径Dは、この縮小している部分の内径の最も小さい部分のこととする。
【0019】
また、溶鋼用取鍋の底面に模擬壁を設置する場合、模擬壁の高さはD以上3D以下、最小幅は0.5D以上とすることが好ましい。模擬壁の高さがD未満になると壁として機能せず渦が発生しやすくなり、3Dを超えると効果は変わらないが、模擬壁の体積が増加し溶鋼の受鋼量が減少してしまい、ロスが生じる。また最小幅が0.5D未満になると強度が弱くなり問題となる。ここで、模擬壁の高さとは、溶鋼用取鍋の底面を基準として模擬壁の実質的な頂部までの高さを言う。
【0020】
模擬壁は、溶鋼用取鍋の底面から突出して設け溶鋼用取鍋の底面と側壁内面とに密着していれば、とくにその形状は限定されるものではなく、例えば、平面視が矩形、扇形、あるいは台形等にすることができる。また、模擬壁は、溶鋼用取鍋の耐火物をライニングする際に、不定形耐火物を流し込み施工することで同時に形成することもできる。また、ブロック状の耐火物を製造しておき、溶鋼用取鍋の底面と側壁との間に接着材としてのモルタル等を介して配置することもできる。
【0021】
また、模擬壁は、側壁との密着部の長さが側壁の内周長さに対して1/50以上1/2以下、より好ましくは1/36以上1/3以下であれば模擬壁を支える強度は十分である。側壁との密着部の長さが側壁の内周長さの1/50より小さい場合には強度が不十分となり倒れやすくなり、1/2を超えると模擬壁が大きくなり溶鋼用取鍋の容積が少なくなる。
【0022】
さらに、模擬壁を設けることで排出孔を溶鋼用取鍋の底のより中心側に設けることができるため、スライディングノズル装置などの溶鋼流量制御装置を取り付けるためのスペースを確保することができ、既存の設備をそのまま使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の溶鋼用取鍋によれば、排出孔から溶鋼を排出する際の渦の発生を軽減でき、溶鋼の上面に浮遊しているスラグを巻き込みながら溶鋼が排出されるのを軽減できる。しかも、溶鋼用取鍋の内部に複雑な構造体を設置する必要がないので、施工しやすく耐用性の面においても優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の第1の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【0026】
図1(a)及び図1(b)において、鉄皮1の内側の底と側壁に耐火物2がライニングされている。取鍋の底には羽口れんが3が埋設され、羽口れんが3には上ノズル4が装着され、上ノズル4の内孔が溶鋼の排出孔5となっている。上ノズル4は羽口れんが3に対して着脱可能なようにモルタルを介して取鍋の下側から装着されている。この上ノズル4の下には図示しないが、溶鋼流量を制御するためのスライディングノズル装置が取り付けられている。
【0027】
以上の構成において、図1(c)に示す排出孔5の中心軸と側壁内面2aとの最短距離Lが、排出孔5の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下(好ましくは1.5以下)となるようにしている。
【0028】
このように排出孔5の中心軸と側壁内面2aとの最短距離Lを0.5D以上2D以下(好ましくは1.5以下)とすることによって、排出孔5から溶鋼を排出する際に、溶鋼の渦発生を軽減する効果が得られる。
【実施例2】
【0029】
図2は、本発明の第2の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【0030】
この実施例2においても、先の実施例1と同様に耐火物2がライニングされており、羽口れんが3及び上ノズル4が装着されている。
【0031】
さらに、この実施例2では模擬壁6を側壁内面2aに密着させて底面2bに設置しており、模擬壁6の排出孔5側の内面6aは羽口れんが3の内壁の上部に位置している。模擬壁6は不定形耐火物のプレキャストブロックであり、底面2bとの間及び側壁内面2aとの間にはモルタルを充填することで接合している。そして、この模擬壁6の内面6aと排出孔5の中心軸との最短距離Lが排出孔5の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下(好ましくは1.5D以下)となるようにしている。また、図2(a)に示すように、模擬壁6は排出孔5側から側壁内面2aに向かってテーパ状に広がった扇型をしており、その最小幅Wは排出孔5の最小内径Dに対して0.5D以上としている。また、側壁内面2aとの密着部の長さSは、側壁の内周長さに対して1/36以上1/3以下としている。
【0032】
なお、溶鋼排出用の上ノズル4は取鍋下面側から挿入して設置・取り替えを行うので、模擬壁6を上ノズル4と接しないように(干渉しないように)設置すると上ノズル4の施工が容易となる。
【0033】
この実施例2のように、排出孔5の中心軸と模擬壁内面6aとの最短距離Lを0.5D以上2D以下(好ましくは1.5D以下)とすることによっても、排出孔5から溶鋼を排出する際に、溶鋼の渦発生を軽減する効果が得られる。そして模擬壁6は、側壁内面2aに密着しているため、受鋼時の溶鋼流による衝撃や熱衝撃に十分耐えることができ、さらに側壁に熱が放散するために過熱による熱間強度の低下を軽減できるため、耐用性が向上する。
【実施例3】
【0034】
図3は、本発明の第3の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【0035】
この実施例3は、先の実施例2と同様に模擬壁6を設置したものであるが、図3(c)に示すように、模擬壁6の排出孔5側の内面6aが排出孔6の最小内径部分の内壁直上に位置している。すなわち、排出孔5の中心軸と模擬壁内面6aとの最短距離Lは0.5Dである。
【0036】
このように、模擬壁内面6aを排出孔5に最大限に接近させることにより、より溶鋼の渦の発生を軽減する効果が得られる。
【0037】
なお、図3(c)では溶鋼排出用の上ノズル4のテーパ部上部から羽口れんが3上部の延長線上まで模擬壁6が設置されているが、この部分は空洞になっていてもよい。
【実施例4】
【0038】
図4は、本発明の第4の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【0039】
この実施例4は、先の実施例3と同様に模擬壁6を設置したものであるが、この実施例4の模擬壁6には、図4(a)に示すようにテーパがない。
【0040】
模擬壁6をこのような形状にすることにより、模擬壁6と側壁内面2aとの密着面積、すなわち模擬壁6を支持する面積が大きくなるので、受鋼時に受ける負荷や熱スポーリングに対して耐用性が向上するという効果が得られる。
【実施例5】
【0041】
図5は、本発明の第5の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【0042】
この実施例5は、先の実施例4と同様に模擬壁6を設置したものであるが、この実施例5の模擬壁6には、図5(b)に示すように、模擬壁6上面から底面にかけてテーパが設けられている。
【0043】
このように模擬壁6上面にテーパを設けることにより、先の実施例4に比べて溶鋼用取鍋の容積を大きくすることができるとともに、溶鋼流による模擬壁6の溶損が軽減される。また、溶鋼の渦の発生を軽減する効果に関しては排出孔5周りの模擬壁6の高さが重要となるため、実施例4と同様の効果が得られる。
【実施例6】
【0044】
図6は、本発明の第6の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【0045】
この実施例6は、先の実施例5と同様に模擬壁6を設置したものであり、実施例5の形状を縮小した模擬壁6を設置し、溶鋼用取鍋の容積をより大きくしたものである。
【実施例7】
【0046】
この実施例は水モデル実験結果を示す。
【0047】
図7は水モデル実験装置の模式図である。溶鋼用取鍋を想定した内径840mmの容器7の底に、内径Dが20mmの排出孔5を設けた。この排出孔5の位置は、排出孔5の中心軸と容器の側壁内面7aと最短距離Lが、420mm(21D)、160mm(8D)、60mm(3D)、40mm(2D)、26mm(1.3D)、10mm(0.5D)の6箇所となるように設定した。この容器7に水を初期水位が600mm(質量は約330kg)となるように入れ、さらに水面に比重の軽いビーズを3300g投入し浮遊させ、水:ビーズの質量比を約100:1とした。
【0048】
水モデル実験においては、6箇所の排出孔5のうち5箇所を塞ぎ、あらかじめ容器7内の水に旋回流を付与した後、1つの排出孔5から水を排出した。水が排出され水位が下がるにしたがって、水面のビーズ8が渦に巻き込まれ水に混入して排出される。この排出されたビーズ8の量とそのときの容器7内の水位を6箇所の排出孔5それぞれにおいて測定した。
【0049】
また、模擬壁の効果を検討するために、図8に示すように模擬壁6を設置した。模擬壁6の高さHは20mmとし、幅Wは40mmとした。また、排出孔4の中心軸と容器の側壁内面7aとの最短距離L1は60mm(3D)とし、排出孔4の中心軸と模擬壁内面6aとの最短距離L2は10mm(0.5D)とした。この模擬壁6を設置したものについても上記の測定方法と同様にビーズ8の量とそのときの容器7内の水位を測定した。
【0050】
図9は上記の水モデル実験結果を示している。ビーズの排出量は、それぞれの水位になるまでに排出されたビーズの重量/容器に入れたビーズの全重量で示した。例えば、L=21Dの場合には、水位が200mmになったときに最初に入れたビーズのうち約24%が排出され、さらに水位が100mmになったときには約96%のビーズが排出されている。
【0051】
容器の側壁内面7aから排出孔5の中心軸までの最短距離Lが420mm(21D)、すなわち排出孔5を容器7の中心に設けた場合、初期の段階から容器内に渦が発生してビーズを巻き込みながら水が排出されていることがわかる。また、容器の側壁内面から排出孔の中心軸までの最短距離Lが小さくなるにしたがってビーズの排出量が減少しており、前記最短距離Lが10mm(0.5D)のときに最もビーズ排出量が少なくなっている。また、L=8Dの場合、水位が20mmになったときに約82%のビーズが排出されているが、L=2Dの場合では約24%、L=1.3Dの場合には約13%と大きく減少していることがわかる。また、発生する渦も非常に小さくなっている。つまり、溶鋼用取鍋においても、排出孔の位置をL=2D以下、好ましくはL=1.3D以下とすることでスラグの排出量が激減することがわかる。なお、この水モデル実験と実際の溶鋼中での挙動との相関性が高いことは、過去の多くの実験報告から証明されている。
【0052】
また、図8のように模擬壁を設置した場合には、模擬壁のない場合(最短距離L=60mm(3D))よりもビーズ排出量は減少し、しかもL=0.5Dの場合と非常に近い値になっており、模擬壁を設置することによる渦の抑制効果が現れている。
【0053】
さらに、図10には、水位が20mmになるまでに排出されたビーズの割合と前記最短距離Lとの関係を示す。この図10から、Lが3Dから2Dになるときにビーズの排出量が大きく低下し、1.3Dになるときによりビーズの排出量が低下していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【図2】本発明の第2の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【図3】本発明の第3の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【図4】本発明の第4の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【図5】本発明の第5の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【図6】本発明の第6の実施例を示し、(a)は溶鋼用取鍋の底の一部を示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)は(a)におけるB−B断面である。
【図7】水モデル実験装置の模式図である。
【図8】模擬壁を水モデル実験装置の模式図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図9】水モデル実験結果を示す。
【図10】水モデル実験における容器の側壁内面から排出孔の中心軸までの最短距離Lとビーズ排出量との関係を示す。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄皮
2 耐火物
2a 側壁内面
2b 底面
3 羽口れんが
4 上ノズル
5 排出孔
6 模擬壁
6a 模擬壁内面
7 容器
7a 側壁内面
8 ビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼を排出するための排出孔を底に備える溶鋼用取鍋において、排出孔の中心軸と側壁内面との最短距離を排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下としたことを特徴とする溶鋼用取鍋。
【請求項2】
溶鋼を排出するための排出孔を底に備える溶鋼用取鍋において、模擬壁を側壁内面に密着させて底面に設置し、排出孔の中心軸と模擬壁内面との最短距離を排出孔の最小内径Dに対して0.5D以上2D以下としたことを特徴とする溶鋼用取鍋。
【請求項3】
模擬壁の高さがD以上3D以下、最小幅が0.5D以上である請求項2に記載の溶鋼用取鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−221240(P2008−221240A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59218(P2007−59218)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】