説明

滅菌インジケータテストパック

滅菌手順の有効性を試験するための滅菌インジケータテストパックが提供される。非チャレンジ型およびチャレンジ型の両方のテストパックが開示される。非チャレンジ型テストパックは、通常、滅菌インジケータを保持するためのトレイを含み、該トレイは、トレイの周囲を画定する隆起したリム表面と、滅菌インジケータを受容するための窪んだトラフとを含有する。リム表面は、リムを通って窪んだトラフまで延在する、その全長に沿って離間された複数の溝を含有する。該非チャレンジ型テストパックは、トレイの窪んだトラフ内の滅菌インジケータと、トレイ内の溝と共に複数のチャネルを形成して、滅菌剤がチャネルを通ってトレイ内に入り、滅菌インジケータと接触できるようにする蓋とを含有む。チャレンジ型テストパックは、通常、滅菌インジケータを保持するためのトレイを含有し、該トレイは、実質的に平らな表面と、滅菌インジケータを受容するための窪んだトラフと、窪んだトラフを通って延在し、トレイのエッジを貫通する確定した長さおよび断面積の窪んだ溝とを含む。該チャレンジ型テストパックは、トレイの窪んだトラフ内の滅菌インジケータと、トレイの平らな表面と共に実質的に滅菌剤不浸透性のシールを形成して、トレイ内の窪んだ溝と共にルーメンパスを形成する蓋とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は滅菌手順の有効性を試験するための滅菌インジケータに関し、特に、その活性が微生物の生存と相関する酵素の活性を測定する滅菌インジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌インジケータは、病院で外科手術用器具を滅菌するために使用されるものなどの滅菌器が、滅菌手順の間に、適切に機能して滅菌チャンバ内に存在する微生物を死滅させているかどうかを決定するための手段を提供する。
【0003】
生物学的インジケータは、当該技術分野では、滅菌手順の有効性を試験するための正確および精密な手段を提供するとして認められている。従来の生物学的インジケータは、自然汚染により普通に存在し得るほとんどの生物体よりも滅菌プロセスに対して何倍も耐性である、生物学的インジケータ内に含有される試験微生物の生存を監視することによって、滅菌手順の有効性を測定する。生物学的インジケータは滅菌サイクルに暴露され、次に、生存している試験微生物の成長を促進できる条件下でインキュベートされる。滅菌サイクルが失敗であれば、生物学的インジケータは、生物試料が生存したということを示す検出可能な信号を発生する。検出可能な信号は、一般に、色の変化もしくは発光性または蛍光性信号の放出などの表示である。
【0004】
1つのよく知られたタイプの生物学的インジケータは、滅菌に対して非常に耐性のある細菌または真菌からの胞子を用いて、滅菌手順の有効性を試験する。米国特許第3,661,717号明細書(ネルソン(Nelson))は、試験胞子集団の生存を測定することによって滅菌手順の有効性を監視するための自己充足型(self−contained)の生物学的インジケータを開示する。生物学的インジケータは、圧縮性のプラスチック材料で製造された外管と、ガラスなどの破壊可能な材料で製造された密封された内管とを有する。細菌不浸透性でガス透過性の外管上の覆いは、滅菌手順の間に、滅菌剤が外管に入れるようにする。キャリヤ材料片上の生きた胞子は、外管と内管の壁の間に配置されている。内管は、生きた胞子の成長を刺激する成長培地を含有する。滅菌手順の間、滅菌剤はキャップを通って外管に入り、キャリヤストリップ上の胞子と接触する。滅菌手順の後、外管を圧縮することにより内管が破砕され、成長培地が解放されてキャリヤストリップ上の胞子と接触させられる。次に、インジケータは、胞子の成長を刺激する条件下でインキュベートされる。滅菌手順が無効であれば、生存胞子が成長して成長培地中のpHインジケータの色を変化させる。これは、滅菌サイクルが試験微生物集団を死滅できなかったことと、滅菌器の装填物に存在する汚染微生物を死滅できていないかもしれないことを示す。胞子の成長に依存する生物学的インジケータは正確ではあるが、これらは時間がかかり、一般に、最終結果を提供するために1〜7日が必要とされる。このインキュベーション期間中、滅菌手順に暴露された物品は、好ましくは、最終的なインジケータ結果が得られるまで隔離されなければならない。しかしながら、このように長い期間中、物品を隔離して保持することは、そうでなければ他の目的で使用され得る空間の実質的な拘束を必要とし、効率的な在庫調整を複雑にする。
【0005】
近年、滅菌手順の間、その活性が汚染微生物の破壊と相関する酵素の活性を測定することによって滅菌手順の有効性を測定する滅菌インジケータが開発されている。酵素滅菌インジケータは、米国特許第5,252,484号明細書および同第5,073,488号明細書に開示されている。胞子の成長だけを測定する生物学的インジケータとは対照的に、酵素インジケータは、多くの場合およそ数時間で、迅速な応答を提供する。インジケータは、圧縮性の外管と、破壊可能な内管と、細菌不浸透性であるがガス透過性のキャップとを有する。活性酵素は外側と内側の容器の壁の間に位置するキャリヤストリップ上に含浸され、活性酵素と反応する基質は、密封された内管内に含有される。滅菌手順の間、滅菌剤は外管に入り、キャリヤストリップ上の活性酵素と接触する。滅菌手順の後、内側バイアルは破砕され、酵素ストリップは基質に暴露され、インキュベートされる。滅菌手順が適切に機能すれば、酵素は手順の間に不活性化され、インキュベーション後に検出可能な変化はない。しかしながら、滅菌手順が無効であれば、酵素は不活性化されず、基質と反応して検出可能な生成物を形成し得る。酵素−基質生成物は、色の変化として、あるいは蛍光性または発光性信号として検出可能であり得る。
【0006】
二重迅速読取りインジケータは、滅菌手順に曝露した後、酵素活性および胞子成長の両方を測定することによって滅菌手順の有効性を試験する滅菌インジケータである。酵素系は滅菌サイクルの有効性の迅速な表示を与え、これは次に、より長い期間にわたって胞子増殖を測定することによって確認される。二重迅速読取りインジケータでは、インジケータの胞子増殖部分で用いられる生きた胞子は、アッセイの酵素活性部分のための活性酵素源としての役割も果たすことができる。迅速酵素試験は、胞子に関連する酵素の活性を測定し、胞子自体は、次に、インキュベートされて滅菌手順を生き残った胞子の増殖を促進する。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニー(3M Company,St.Paul,MN)から入手可能な3M(登録商標)アテスト(Attest)(登録商標)1291および1292迅速読取り生物学的インジケータは、インジケータ中のバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)胞子に関連する酵素の活性と、胞子自体の生存との両方を測定することによって滅菌サイクルの有効性を試験する二重迅速読取りインジケータである。
【0007】
酵素滅菌インジケータは、ほとんどの蒸気滅菌手順の有効性を試験するために迅速かつ正確であるが、特定の予備真空(prevacuum)または真空で補助された蒸気滅菌手順が使用される場合には、汚染微生物の全てが死滅する前に、インジケータ内の酵素が早期に不活性化され得る。その結果、滅菌インジケータは、滅菌手順が有効であったという誤った表示、すなわち「偽陰性」結果を提供し得る。早期不活性化の問題の存在は、二重迅速読取りインジケータで検出されており、疑わしい滅菌手順に暴露された後、酵素試験によりマイナスの結果が提供され、胞子成長試験により矛盾したプラスの結果が提供される。蒸気が導入される前に滅菌チャンバ内が真空にされる121℃の予備真空滅菌サイクルでは、滅菌インジケータ内の酵素の早期不活性化が観察されており、問題であることが分かっている。この問題の基礎を成す精密なメカニズムははっきり分かっていないが、酵素と接触してこれを不活性化する濃縮された滅菌剤によって発生し得ることが確信される。
【0008】
また、酵素の早期不活性化は、過酸化水素プラズマ滅菌手順に暴露された二重迅速読取りインジケータにおいても観察されている。過酸化水素プラズマを用いる滅菌プロセスは当該技術分野で知られており、例えば、ジェイコブス(Jacobs)らに発行された米国特許第4,643,876明細書に記載されている。プラズマとは、滅菌剤のガスまたは蒸気の部分を意味し、これは、滅菌剤に電界が印加されたときに生成される電子、イオン、フリーラジカル、解離した原子および分子を含み、電界印加後に滅菌剤により生成される任意の放射を含む。過酸化水素プラズマ滅菌手順では、滅菌チャンバ内は通常真空にされ、過酸化水素蒸気が注入され、チャンバ全体に拡散させられ、滅菌されることが目的である全ての品目の表面と接触する。次に真空にされて過酸化水素蒸気が除去され、ラジオ周波数(RF)電源などの電源によって、チャンバ内でプラズマが発生される。この出力は、チャンバ内の任意の微生物を死滅させるプラズマを形成するのに十分な時間の間、継続される。過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化の原因となる精密なメカニズムは分かっていない。
【0009】
当該技術分野では、滅菌インジケータにおける酵素の早期不活性化を防止するための努力が成されてきた。本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第08/954,218号明細書(アルバート(Albert))は、濃縮滅菌剤がインジケータと接触するのを防止することによって、酵素インジケータまたは二重迅速読取りインジケータにおける酵素の早期不活性化を減じる保護ハウジングを開示している。保護ハウジングは、生物学的インジケータを含有するための管と、濃縮滅菌剤が管内で生物学的インジケータと接触するのを防止するように設計されたキャップアセンブリとを含有する。キャップアセンブリは開孔を含み、非濃縮滅菌剤はこの開孔を通ってハウジング内に入り、生物学的インジケータと接触することができる。キャップアセンブリ内の吸収材料は濃縮滅菌剤を保持し、流体が管内に入って生物学的インジケータと接触するのを防止するが、非濃縮滅菌剤はハウジング内に入れるようにする。従って、アルバートの特許出願は、濃縮滅菌剤が酵素と接触するのを防止する物理的なバリヤを提供することによって、早期不活性化を間接的に防止する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当該技術分野では、化学処理によって酵素が早期不活性化に対して耐性にされた酵素ベースの滅菌インジケータが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、滅菌手順の有効性を試験するために有用な滅菌テストパックの様々な実施形態を提供する。本発明の滅菌テストパックは、概括的に、「非チャレンジ(non−challenge)型」テストパックおよび「ルーメン−チャレンジ(lumen−challenge)型」テストパックの2つのカテゴリーに入る。
【0012】
非チャレンジ型テストパックは、滅菌インジケータを所定の位置に保持するが、滅菌手順に対して増大した耐性、すなわち「チャレンジ」を実質的に提供しない。非チャレンジ型テストパックは、一般に、トレイ、滅菌インジケータ、および蓋を含有する。トレイは、トレイの周囲を画定する隆起したリムと、滅菌インジケータを保持するための窪んだトラフとを含有する。リムは、リムを通って窪んだトラフまで延在する複数の溝を含有する。蓋は、トレイの上に配置されると、リム表面と共に実質的に滅菌剤不浸透性のシールを形成し、リムの溝と共に複数のチャネルを形成する。非チャレンジ型テストパックが滅菌手順を受けると、滅菌剤はチャネルを通って移動して、トレイ内の滅菌インジケータと接触する。
【0013】
ルーメン−チャレンジ型テストパックは、滅菌インジケータが確定した長さおよび断面積を有するルーメン内に置かれた場合に経験され得る耐性と等しいレベルまで、滅菌インジケータの耐性を増大させる。ルーメン−チャレンジ型テストパックは、一般に、滅菌インジケータを保持するためのトレイ、滅菌インジケータ、および蓋を含む。トレイは、トレイの外周を画定するエッジの付いた実質的に平らな表面と、滅菌インジケータを保持するための窪んだトラフと、トラフを通って延在し、少なくとも1つ(一般には2つ)の地点でトレイのエッジを貫通する確定した長さおよび断面積の窪んだ溝とを含有する。蓋がトレイの上に配置されると、蓋とトレイの実質的に平らな表面との間に実質的に不浸透性のシールが形成され、蓋とトレイの窪んだ溝との間にルーメンパス(lumen path)が形成される。滅菌手順の間、滅菌剤はルーメンパスを通ってテストパック内に入り、滅菌インジケータと接触することができる。
【0014】
その他の態様では、本発明は、活性酵素源が滅菌剤耐性の化学薬品で処理された滅菌インジケータを提供することによって、酵素ベースの滅菌インジケータにおける酵素の早期不活性化の問題に対処する。本発明の滅菌インジケータは、活性酵素源と、活性酵素源と関連された滅菌剤耐性の化学薬品と、活性酵素と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる基質とを含む。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、ポリグリセリンアルキルエステルまたはポリグリセリンアルキルエーテルでよい。もう1つの実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、エトキシル化多価アルコールエステルまたはエトキシル化多価アルコールエーテルでよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、滅菌インジケータは、自己充足型の生物学的インジケータであり、酵素は、早期不活性化に対するその耐性を高めるために化学的に処理されている。生物学的インジケータは、圧縮性の外側容器と、破壊可能な内側容器と、滅菌剤耐性の化学薬品と関連された活性酵素源と、酵素と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる基質と、を含む。外側容器は少なくとも1つの開口部を有し、滅菌手順の間、滅菌剤が外側容器内に入れるようにする。内側容器は両端部が密封され、反応性の基質を含有する。活性酵素源は、外側容器と内側容器の壁の間に配置される。
【0017】
また本発明は、滅菌剤耐性の化学薬品で処理された胞子で作られた滅菌インジケータを用いて、滅菌手順の有効性を試験するための方法も提供する。この方法は、滅菌インジケータを提供するステップと、滅菌インジケータに滅菌手順を受けさせるステップと、滅菌インジケータ内で酵素と基質を結合させるステップと、滅菌サイクルの失敗を表示する検出可能な信号について滅菌インジケータを検査するステップと、を含む。
【0018】
更に、本発明は、早期不活性化に対するその耐性を高めるために酵素が化学的に処理された、過酸化水素プラズマ滅菌手順における特定の使用のための滅菌インジケータを提供する。滅菌インジケータは、活性酵素源と、活性酵素源と関連された滅菌剤耐性の化学薬品と、活性酵素と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる基質と、を含有する。この実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、好ましくは、デカオレイン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリン、モノオレイン酸テトラグリセリン、トリ−オレイン酸デカグリセリル、ヘキサオレイン酸デカグリセリン、ジオレイン酸ヘキサグリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(60)グリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、およびジ−ステアリン酸ヘキサグリン(hexaglyn di−stearate)からなる群から選択される。
【0019】
好ましい実施形態では、過酸化水素プラズマ手順で使用するための滅菌インジケータは自己充足型の生物学的インジケータである。インジケータは、早期不活性化に対するその耐性を高めるために化学的に処理された活性酵素源を用いる。自己充足型の生物学的インジケータは、圧縮性の外側容器と、破壊可能な内側容器と、滅菌剤耐性の化学薬品と関連された活性酵素源と、酵素と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる基質と、を含む。外側容器は少なくとも1つの開口部を有し、滅菌手順の間、滅菌剤が外側容器内に入れるようにする。内側容器は両端部が密封され、反応性の基質を含有する。活性酵素源は、外側容器と内側容器の壁の間に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の滅菌インジケータは、米国特許第5,252,484号明細書および同第5,073,488号明細書(これらは参照によってその全体が本明細書中に援用される)に記載される酵素滅菌インジケータおよび二重迅速読取りインジケータなどの、酵素を使用して滅菌手順の有効性を試験する生物学的インジケータで経験される問題に対処する。特に、本発明の1つの実施形態では、滅菌インジケータは、滅菌インジケータ内の酵素の早期不活性化の問題を軽減するように設計される。この目的は、インジケータを組み立てる前に、活性酵素源として使用される胞子を滅菌剤耐性の化学薬品で処理することによって達成される。
【0021】
酵素滅菌インジケータはいくつかの異なるタイプの滅菌サイクルで使用されるが、酵素の早期不活性化は、その全てに関する問題ではない。主として、蒸気が導入される前に滅菌チャンバ内が真空にされる特定の種類の予備真空滅菌手順に関する問題である。予備真空滅菌サイクルは、チャンバが滅菌温度に到達する前に真空駆動されるコンディショニング相を使用するものである。
【0022】
図3〜図5は、一般に使用される3つの異なる予備真空滅菌手順における圧力の経時変化を示すグラフである。図3に表される手順は、酵素滅菌インジケータにおいて酵素の早期不活性化および偽陰性を起こし易くないものである。この手順では、蒸気は、真空が付与される前に滅菌チャンバ内に注入される。滅菌サイクル中の初期圧力は、蒸気が滅菌チャンバ内に注入されるときは大気圧に対して正であるが、次に、チャンバ内に真空が付与されると大気圧に対して負になる。図3に示されるもののような滅菌サイクルに酵素滅菌インジケータが暴露されると、酵素は、胞子が死滅した直後に不活性化されるはずである。米国において最も一般的に使用される予備真空蒸気手順では、蒸気は、真空が与えられる前に滅菌チャンバ内に注入される。
【0023】
対照的に、図4〜図5は、蒸気が導入される前に滅菌チャンバ内が真空にされる2つの予備真空蒸気滅菌手順を示す。ヨーロッパで一般に使用されるこれらの手順は、酵素滅菌インジケータにおいて酵素の早期不活性化および偽陰性を生じ易い。図4に表される滅菌手順では、滅菌チャンバ内の圧力は、蒸気の導入の前に真空にされると、大気圧に対して負になる。図5に表される滅菌サイクルでは、チャンバが滅菌温度に到達する前に、チャンバに4つの真空パルスがかけられた後、蒸気注入が行われる。これらのサイクルにおける酵素の不活性化の精密なメカニズムは、はっきり分かっておらず、出願人は、特定の動作理論により束縛されることは望まないが、酵素は、濃縮滅菌剤と接触された場合に不活性化され得ると確信される。
【0024】
1つの代表的な本発明の滅菌インジケータは、図1および図2に示される。滅菌インジケータ10は、滅菌サイクルの完了後まで系の様々な成分を互いに分離する入れ子状の容器を含む。滅菌インジケータ10は、外管12、密封された内管18、および通気孔付キャップ26を含む。外管12は、好ましくは、圧縮性のプラスチックで製造される。内管18は、ガラスまたはその他の壊れやすい材料で製造される。閉鎖部材22は、好ましくは、外管12の開放端部14に適合する細菌不浸透性でガス透過性のバリヤである。キャリヤストリップ16は、その表面に、活性酵素源、微生物胞子または精製酵素のいずれかを含有し、内管18と外管12の壁の間に配設される。活性酵素源は、滅菌サイクルの間の酵素の早期不活性化を防止するために滅菌剤耐性の化学薬品で処理されている。内管18は、キャリヤストリップ16上の酵素と反応して、滅菌手順が無効である場合に検出可能な信号を発生する基質を含有する。
【0025】
滅菌手順の間、滅菌剤は、キャップ26の通気孔28を通って外管12に入り、キャリヤストリップ16上の活性酵素源と接触するが、密封された内管18内の基質溶液とは接触しない。滅菌サイクルの後、外管12の側面が圧縮され、内管18が破壊されて、酵素と基質とが互いに接触させられる。次に、滅菌手順が無効であったかもしれないことを示す発光、蛍光、または色の変化などの検出可能な信号を生成する酵素修飾生成物を形成するために、残存している活性酵素が基質と反応するのに十分な時間の間、滅菌インジケータはインキュベートされる。
【0026】
本発明の滅菌インジケータ10の1つの実施形態では、キャリヤストリップ16上の活性酵素源は、細菌または真菌の胞子などの生きた微生物である。1つの好ましい実施形態では、胞子が活性酵素源であり、滅菌インジケータ10は、酵素活性および胞子増殖の両方を測定することによって滅菌手順の有効性を監視する二重迅速読取りインジケータである。この実施形態では、内管18は胞子の成長培地および酵素基質を含有する。滅菌サイクルが完了したら、内管18が破壊され、キャリヤストリップ16はその内容物に暴露され、インキュベートされる。酵素試験は、数時間以内に目に見える結果を生じ、生きた微生物の成長試験はこれらの結果を7日間以内に確認する。
【0027】
酵素インジケータの動作の基礎を成す理論は、酵素の不活性化がインジケータ内の試験微生物の死滅と相関し得ることである。生物学的インジケータで使用するために選択される酵素は、少なくとも、汚染物質として存在する可能性のある微生物と同程度に滅菌手順に対して耐性でなければならず、好ましくは、このような微生物よりも耐性である。酵素は、汚染微生物を死滅させることができない滅菌サイクルの後、検出可能な酵素−基質生成物を形成するために十分活性のままでなければならないが、汚染微生物を死滅させる滅菌サイクルによって不活性化されなければならない。
【0028】
本発明の滅菌インジケータで使用するのに適切な酵素および基質は、米国特許第5,252,484号明細書および同第5,073,488号明細書に記載されている。適切な酵素には、バチルス・ステアロサーモフィラスおよび枯草菌(Bacillus subtilis)などの胞子形成微生物に由来する酵素が含まれる。本発明の生物学的インジケータにおいて有用な胞子形成微生物からの酵素には、胞子形成微生物に由来のベータ−D−グルコシダーゼ、アルファ−D−グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、ブチレートエステラーゼ、カプリレートエステラーゼリパーゼ、ミリステートリパーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、バリンアミノペプチダーゼ、キモトリプシン、ホスホヒドロラーゼ、アルファ−D−ガラクトシダーゼ、ベータ−D−ガラクトシダーゼ、チロシンアミノペプチダーゼ、フェニルアラニンアミノペプチダーゼ、ベータ−D−グルクロニダーゼ、アルファ−L−アラビノフラノシダーゼ、N−アセチル−B−グルコサミノダーゼ、ベータ−D−セロビオシダーゼ、アラニンアミノペプチダーゼ、プロリンアミノペプチダーゼ、および脂肪酸エステラーゼが含まれる。
【0029】
酵素と反応して検出可能な生成物を形成し、本発明の滅菌インジケータにおいて使用するのに適切である発色性および蛍光発生性の基質は、当該技術分野においてよく知られている(M.ロス(Roth)、生化学分析法(Methods of Biochemical Analysis)、第17巻、D.ブロック(Block)編、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)、ニューヨーク、1969年、89頁、Sユーデンフレンド(Udenfriend)、生物学および医学における蛍光アッセイ(Fluorescence Assay in Biology and Medicine)、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク、1962年、312頁、D.J.R.ローレンス(Lawrence)、酵素学者のための蛍光技法、酵素学における方法(Fluorescence Techniques for the Enzymologist,Methods in Enzymology)、第4巻、S.P.コロウィック(Colowick)およびN.O.カプラン(Kaplan)編、アカデミック・プレス、ニューヨーク、1957年、174頁、参照によって本明細書中に援用される)。これらの基質は、視覚的に検出可能な信号を発生する方法に基づいて2つのグループに分類され得る。第1のグループの基質は、酵素と反応して、それ自体が発色性または蛍光性である酵素修飾生成物を形成する。第2のグループの基質は、色または蛍光性信号を発生するために更なる化合物と更に反応しなければならない酵素修飾生成物を形成する。
【0030】
本発明のインジケータにおいて活性酵素源としての役割を果たすために特に好ましい微生物には、バチルス・ステアロサーモフィラスおよび枯草菌が含まれ、これらは、滅菌手順を監視するために用いられる胞子増殖インジケータにおいて試験微生物として一般に使用される微生物である。二重迅速読取りインジケータが使用される場合には、これらの微生物は、迅速酵素試験における活性酵素源と、胞子増殖試験のための試験微生物との両方の役割を果たす。バチルス・ステアロサーモフィラスは、蒸気および過酸化水素プラズマ滅菌手順の両方を監視するために特に好ましい。枯草菌は、エチレンオキシド滅菌手順を監視するために特に好ましく、過酸化水素プラズマ滅菌手順を監視するために使用され得る。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)1291および1292迅速読取りインジケータは、バチルス・ステアロサーモフィラスからの酵素アルファ−D−グルコシダーゼの活性と、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)の生きた胞子の成長とを測定する二重迅速読取りインジケータである。
【0031】
本発明の滅菌インジケータのいくつかの実施形態で使用される滅菌剤耐性の化学薬品は、活性酵素源と関連された場合に、早期不活性化が回避されるように、滅菌剤に対する酵素の耐性を増大させる任意の化学薬品でよい。滅菌インジケータ10において使用される活性酵素源が、バチルス・ステアロサーモフィラスまたは枯草菌などの微生物の胞子である場合、胞子は、好ましくは、キャリヤストリップ16上に配置される前に、滅菌剤耐性の化学薬品で処理される。
【0032】
滅菌剤耐性の化学薬品は、好ましくは、インジケータ内で活性酵素源と関連されたときに、滅菌チャンバ内に存在する汚染微生物を死滅させることができない無効な滅菌手順によって酵素が不活性化されるのを防止し得るものである。滅菌インジケータが、酵素活性および胞子増殖の両方を測定する二重迅速読取りインジケータである場合には、滅菌剤耐性の化学薬品は、好ましくは、活性酵素源と関連された場合に、無菌試験の増殖部分のためにインジケータ内で使用される試験微生物を死滅させるのに十分でない滅菌手順によって、酵素が不活性化されるのを防止し得るものである。
【0033】
活性酵素源が本発明の滅菌剤耐性の化学薬品で処理される場合、滅菌を監視するために一般に使用される少なくとも1つの試験微生物に対して亜致死性の滅菌サイクルの後では、好ましくは、酵素は十分な活性を有し、酵素に対して有効量の基質と反応して24時間より短い時間で検出可能な酵素修飾生成物を生成するが、試験微生物に対して致死性の滅菌サイクルの後には、酵素はバックグラウンドまで低下した活性を有するであろう。最も好ましくは、本発明の滅菌剤耐性の化学薬品で処理された活性酵素源は、微生物の増殖がないことによって測定されるときに1×106個の試験微生物集団をゼロに減少させるのにちょうど十分である滅菌サイクルにさらされると、活性酵素と反応して検出可能な酵素修飾生成物を生成することができる有効量の基質との反応により測定されるときにバックグラウンドに等しい活性を有するが、1×106個の試験微生物集団を少なくとも約1ログ(log)であるが約6ログ未満だけ減少させるのに十分な滅菌サイクルにさらされると、有効量の基質との反応によって測定されるときにバックグラウンドよりも大きい活性を有する。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、同一分子に疎水性領域と親水性領域とを有する一般構造Rabの界面活性剤であり、式中、Rは疎水性基を表し、Lは親水性基を表し、aおよびbはそれぞれ1〜4の数である。Rは、好ましくは、少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは少なくとも8個の炭素原子、最も好ましくは少なくとも12個の炭素原子のアルキル基である。Lは、カルボキシル基およびその塩と、ヒドロキシル基と、スルホネート基およびその塩と、サルフェート基およびその塩と、ホスフェートと、ホスホネートと、両性イオン基と、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー基と、ソルビタンまたはポリアルコキシル化ソルビタンのエステルまたはエーテル基と、ポリアルコキシル化脂肪酸エステルまたはエーテルと、ベタインと、構造−NHC(O)R”’または−C(O)NHR”’(式中、R”’は水素または1〜10個の炭素原子のアルキル基であり、任意で、N、O、およびS原子により可能な位置で置換される)を有するアミド基と、短鎖アルコールまたは酸のエステル基と、エーテル基と、1〜20個のグリセリン単位、好ましくは2〜12個のグリセリン単位、より好ましくは3〜10個のグリセリン単位を有するポリグリセリンエステルまたはエーテル基と、第2級アミン基と、第3級アミン基とを含む群から適切に選択され得る。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、界面活性剤および疎水性添加剤を含むことができる。疎水性添加剤は、水溶性でなく、水に自己分散性でないと定義され、それ自体、界面活性剤による乳化を必要とする。適切な疎水性添加剤には、室温においてワックスおよび油である化合物が含まれる。滅菌剤耐性の化学薬品の一部として使用するのに適切な疎水性添加剤には、長鎖(直鎖または分枝鎖)アルキルまたはアルケニルアルコールまたは酸(C8〜C36)の短鎖アルキルまたはアリールエステル(C1〜C6)およびそのポリエトキシル化誘導体と、−OHにより可能な位置において任意で置換されたC4〜C12二酸またはジオールの短鎖アルキルまたはアリールエステル(C1〜C6)と、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコールのアルキルまたはアリールC1〜C9エステルと、ポリプロピレングリコールのC12〜C22アルキルエステルまたはエーテルと、ポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールコポリマーのC12〜C22アルキルエステルまたはエーテルと、ポリエーテルポリシロキサンコポリマーと、環状ジメチコン(dmethicones)と、ポリジアルキルシロキサンと、ポリアリール/アルキルシロキサンと、長い直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニルアルコールまたは酸の長鎖(C8〜C36)アルキルおよびアルケニルエステルと、長い直鎖または分枝鎖(C8〜C36)アルキルまたはアルケニルアミンまたは酸の長鎖(C8〜C36)アルキルまたはアルケニルアミドと、スクアレン、スクアラン、ポリエチレンワックス、ラノリン、ペトロラタムおよび鉱物油などの直鎖および分枝鎖アルカンおよびアルケンを含む炭化水素と、ポリシロキサンポリアルキレンコポリマーと、ジアルコキシジメチルポリシロキサンと、OHにより可能な位置において任意で置換されたC12〜C22二酸またはジオールの短鎖アルキルまたはアリールエステル(C1〜C6)と、C12〜C22アルキルおよびアルケニルアルコールとが含まれる。適切な疎水性添加剤としては、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、アジピン酸ジイソプロピル、スクアラン、鉱物油、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチコン、ラノリンおよびペトロラタムが挙げられる。
【0036】
もう1つの好ましい実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、ポリグリセリンアルキルエステルまたはエーテル、もしくはポリグリセリンアルキルエステルまたはエーテルを含む化学薬品の混合物である。もう1つの好ましい実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、エトキシル化グリセリンエステルまたはエーテル、もしくはエトキシル化グリセリンエステルまたはエーテルを含む化学薬品の混合物である。また滅菌剤耐性の化学薬品は、好ましい実施形態では、デカグリセリン、ソルビトール、またはこれらのうちの1つを含む化学薬品の混合物を含むことができる。もう1つの好ましい実施形態では、滅菌剤耐性の化学薬品は、モノステアリン酸デカグリセリンおよびソルビトールの混合物である。
【0037】
滅菌剤耐性の化学薬品として使用することができるポリグリセリンアルキルエステルまたはエーテルは、式
【化1】

を有する化学薬品から選択することができる。この式では、nは0〜50であり、Rは、H、あるいは式R’または
【化2】

のエーテルまたはエステル基のいずれかであり、ここでR’は、H、もしくはC1〜C50の直鎖または分枝アルキル、アルキレン、アラルキルまたはアルケニル基でよく、これらはN、OおよびSによって可能な位置で置換されてもよい。ポリグリセリン部分は、線状、分枝状、または環状の異性体を含有することができ、一般に広い範囲の分子量で利用可能である。
【0038】
本発明で滅菌剤耐性の化学薬品として使用するのに好ましいポリグリセリンアルキルエステルまたはエーテルとしては、モノステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、ジパルミチン酸デカグリセリル、ジステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリン、モノオレイン酸テトラグリセリル、およびトリオレイン酸デカグリセリルがある。
【0039】
滅菌剤耐性の化学薬品として使用できるエトキシル化グリセリンエステルまたはエーテルは、式
【化3】

を有する化学薬品から選択することができる。この式では、nは0〜50であり、R”は、C5〜C50直鎖または分枝アルキル、アルキレン、アラルキル、またはアラルケニル基でよく、これらはN、OおよびSによって可能な位置で置換されてもよい。R”’は、H、あるいはC1〜C50直鎖または分枝アルキル、アルキレン、アラルキル、またはアルケニル基でよく、これらはN、OおよびSによって可能な位置で置換されてもよい。好ましくは、R”は、6〜20個の炭素の線状アルキル基であり、nは2〜10であり、R”’は、6〜20個の炭素の線状アルキル基である。
【0040】
滅菌剤耐性の化学薬品として使用するのに特に好ましいエトキシル化グリセリンエステルまたはエーテルとしては、グリセレス−7−ジイソノナノアート(glycereth−7−diisononanoate)、およびモノステアリン酸ポリオキシテチレン(polyoxythethylene)(5)グリセリルがある。
【0041】
本発明の滅菌インジケータ10は、米国特許第5,252,484号明細書および同第5,073,488号明細書に記載される方法に従って作製することができる。滅菌インジケータ10において活性酵素源として胞子が使用される場合、胞子は培養皿で成長され、次に取り出されて、連続的な水中懸濁および遠心分離によって洗浄される。次に胞子は、滅菌剤耐性の化学薬品を含有する溶液中に懸濁され、ピペッティングによりキャリヤストリップ16に移される。任意の数の胞子が滅菌インジケータ10で使用されるキャリヤストリップ16に適用されてもよいが、本発明の好ましい実施形態では、1×106個の胞子が各ストリップに移される。
【0042】
当業者は、過度の実験を行なうことなく、本発明を実施する際に使用される様々な滅菌剤耐性の化学薬品の最適濃度を確定できるであろう。従って、本発明は、特定された化学薬品の特定の濃度または濃度範囲における使用に限定されない。しかしながら、滅菌剤耐性の化学薬品の好ましい濃度は以下のとおりである。
滅菌剤耐性の化学薬品 好ましい範囲(mg/ml)
モノステアリン酸デカグリセリル 10−100
モノステアリン酸ヘキサグリセリル 5−30
モノステアリン酸テトラグリセリル 5−40
モノラウリン酸デカグリセリル 50−100
モノラウリン酸ヘキサグリセリル 50−100
モノオレイン酸テトラグリセリル 50−100
トリオレイン酸デカグリセリル 50−100
モノオレイン酸デカグリセリル(Decaglyceryl monoleate) 100
ジパルミチン酸デカグリセリル(Decaglyceryl dipalmtate) 50−100
ジステアリン酸ヘキサグリセリル 25−100
モノオレイン酸デカグリセリル 100
モノミリスチン酸デカグリセリル 100
モノイソステアリン酸デカグリセリル 50−100
ジイソステアリン酸デカグリセリル 50−100
グリセレス−7−ジイソノナノアート 20−40
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(5)グリセリル 50−100
デカグリセリン 100
ソルビトール 100
【0043】
本発明の滅菌インジケータを適切に使用して、蒸気、過酸化水素蒸気相、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシドガス、乾熱、プロピレンオキシドガス、臭化メチル、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、および過酢酸(単独または蒸気相と共に)、ならびにその他の気体または液体薬剤を使用する滅菌手順を含む任意のタイプの滅菌手順の有効性を監視することができる。より好ましくは、生物学的インジケータは、滅菌サイクルの間に、酵素が早期に不活性化される恐れのある滅菌手順の有効性を監視するために使用され得る。本発明の滅菌インジケータは、最も好ましくは、図4および図5のグラフにより示されるもののように蒸気が導入される前にチャンバ内が真空にされるコンディショニング相を用いる蒸気滅菌プロセスの有効性を監視するために使用される。
【0044】
本発明のもう1つの実施形態では、滅菌インジケータ10は、特に、過酸化水素プラズマ滅菌手順の間の早期不活性化に対して特に耐性である1つまたは複数の滅菌剤耐性の化学薬品で活性酵素源を処理することによって、過酸化水素プラズマ滅菌手順の有効性を監視する際に使用するために製造される。これらのインジケータは単独で使用されてもよいし、滅菌インジケータに加えてトレイおよび蓋を含むテストパックの一部として使用されてもよい。以下で議論されるように、テストパックの設計を調整して、滅菌インジケータに、過酸化水素プラズマ手順に対する可変量の更なる耐性を提供することができる。1つの実施形態では、テストパックは、単独で使用される場合のインジケータの耐性に対して更なる耐性を提供せず、別の実施形態では、テストパックは、確定した断面積および長さを有するルーメン内にインジケータが配置されたときに経験し得る更なる耐性に等しい更なる耐性を、インジケータに提供し得る。
【0045】
本発明のこのような滅菌インジケータは、例えば、米国特許第4,643,876号明細書に記載される手順を含む当該技術分野において既知の過酸化水素プラズマ滅菌手順の有効性を監視するために使用することができる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の過酸化水素プラズマインジケータは、上記のように酵素インジケータまたは二重迅速読取りインジケータのいずれかであり、ここで、活性酵素源は、1つまたは複数の滅菌剤耐性の化学薬品で処理済である。適切な滅菌剤耐性の化学薬品には、デカオレイン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリン、モノオレイン酸テトラグリセリン、トリオレイン酸デカグリセリル、ヘキサオレイン酸デカグリセリン、ジオレイン酸ヘキサグリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(60)グリセリン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンおよびジ−ステアリン酸ヘキサグリンが含まれる。
【0047】
適切な滅菌剤耐性の化学薬品は、式
【化4】

を有する化合物から選択されるソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含むことができる。この式では、R1、R2およびR3は、H、あるいは
【化5】

であり、ここでR4およびR5は、少なくとも4個の炭素原子、好ましくは少なくとも12個の炭素原子、最も好ましくは少なくとも16個の炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキルまたはアルケニル炭化水素鎖であり、vは0〜200、好ましくは2〜30である。最も好ましいポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(POE)(20)ソルビタンである。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、過酸化水素プラズマインジケータは、微生物の胞子が、酵素活性試験のための活性酵素源と、胞子増殖試験のための試験微生物との両方としての役割を果たす二重迅速読取りインジケータである。適切な微生物としては、バチルス・ステアロサーモフィラスおよび枯草菌がある。最も好ましい実施形態では、バチルス・ステアロサーモフィラス胞子がインジケータにおいて使用される。
【0049】
過酸化水素プラズマインジケータにおいて使用するための胞子は、上記で詳述した手順を用いて、滅菌剤耐性の化学薬品で処理される。培養された胞子を培養皿から取り出され、連続的な水中懸濁とその後の遠心分離によって洗浄される。次に、所定の数、好ましくは1×106個の胞子は、滅菌剤耐性の化学薬品を含有する溶液中に懸濁され、キャリヤストリップ16に移される。当業者は、過度の実験を行なうことなく、本発明の実施において使用される様々な滅菌剤耐性の化学薬品の最適濃度を確定できるであろう。従って、本発明は、特定された化学薬品の特定の濃度または濃度範囲における使用に限定されない。しかしながら、過酸化水素プラズマ滅菌手順で使用するための滅菌剤耐性の化学薬品の好ましい濃度は以下のとおりである。
滅菌剤耐性の化学薬品 好ましい範囲(mg/ml)
デカオレイン酸デカグリセリル 5−25
ペンタオレイン酸デカグリセリン 10−50
モノオレイン酸テトラグリセリン 10−50
トリオレイン酸デカグリセリル 10−50
ヘキサオレイン酸デカグリセリン 5−25
ジオレイン酸ヘキサグリセリン 10−50
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(60)グリセリン 10−50
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 10−50
ジステアリン酸へキサグリン 10−50
【0050】
過酸化水素プラズマ手順と共に使用するための滅菌インジケータは、好ましくは、上記で議論した方法に従って作製され、図1に示されるインジケータ10の構成を有する。しかしながら、インジケータが過酸化水素プラズマ手順を監視するために使用される場合には、閉鎖部材22は、好ましくは、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de NeMours and Co.,Wilmington,Delaware)から市販されているタイベック(TYVEK)(登録商標)高密度ポリエチレン繊維材料などの高密度繊維材料で製造される。
【0051】
使用の際、滅菌インジケータ10は滅菌チャンバ内に配置され、過酸化水素プラズマ滅菌手順に暴露される。滅菌剤は通気孔28および閉鎖部材22を通ってインジケータ10に入り、酵素キャリヤ16上に配置された活性酵素源と接触する。手順が完了した後、インジケータ10は滅菌チャンバから取り出され、外管12の側面が圧縮され、壊れやすい内管18が破壊され、酵素基質が放出され、従ってキャリヤストリップ16上の酵素源と接触できる。次に、インジケータ内に残存する活性酵素が基質と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成するのに十分な時間の間、滅菌インジケータ10は、インキュベートされる。酵素修飾生成物は、蛍光、発光または色の変化として検出可能であり得る。滅菌手順が有効であり、全ての活性酵素が不活性化されていれば、インキュベーションにおいて検出可能な信号は発生されない。
【0052】
図6〜7に示される過酸化水素プラズマ滅菌手順で使用するための滅菌インジケータ30のより好ましい実施形態では、酵素キャリヤ36は、管の閉鎖端部付近で外管12内に配置され、バリヤ38がキャリヤストリップ36と内管18の間に位置している。バリヤは、好ましくは、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから「シンサレート(THINSULATE)(登録商標)200−Bブランド断熱材」として市販されている200g/平方メートルの重量を有するポリプロピレンのブローンマイクロファイバ(blown microfiber)材料ディスクである。
【0053】
本発明の滅菌インジケータ10、30はどれも、テストパックの一部として使用することができる。インジケータは、化学的、生物学的、または酵素の滅菌インジケータ、もしくは1つまたは複数のこのようなインジケータの組み合わせでよい。適切な化学的インジケータは、例えば、米国特許第第6,488,890号明細書、同第6,485,979号明細書、同第6,485,978号明細書、同第6,346,417号明細書、同第6,287,518号明細書、同第6,063,631号明細書、同第5,916,816号明細書、同第5,895,627号明細書、同第5,064,576号明細書と、PCT特許公開国際公開第0110473号パンフレットおよび国際公開第0140792号パンフレットとに記載されている。図8に示される本発明の1つの実施形態では、本発明の非チャレンジ型テストパック40は、滅菌インジケータ10だけの耐性を越える滅菌手順に対する更なる耐性を提供しない。非チャレンジ型テストパックは、滅菌手順の間、ただ1つの位置に滅菌インジケータをしっかりと保持するという点で、テストパックを用いないインジケータの使用よりも利点を提供する。非チャレンジ型テストパックは、従って、通常は小型であり転がりやすい滅菌インジケータが、滅菌手順の間、材料の装填中に、移動されたり、誤って配置されたりする場合に生じる問題を軽減する。
【0054】
非チャレンジ型滅菌テストパック40は、滅菌インジケータ10(入れ子状容器で構成されるインジケータが図8に示されているが、別の構造または設計のその他の適切な滅菌インジケータが使用されてもよいことはよく理解される)を保持するためのプラスチックトレイ42と、滅菌剤がテストパックに自由に入り、滅菌インジケータ10自体が提供する耐性以外の耐性を持たない滅菌インジケータと接触できるような形でトレイ42と関連されるプラスチック蓋50とを含む。プラスチックトレイ42は任意の形状を有することができるが、好ましくは、矩形または正方形である。プラスチックトレイ42は、トレイの周囲を画定する隆起したリム表面44と、滅菌手順の間、滅菌インジケータ10を所定の位置に保持するための窪んだトラフ46とを有する。複数の離間された溝48a〜48fは、トレイ42の周囲に沿ってリム表面44内に窪みを設けて形成され、蓋50の表面と共に一連のチャネル52を形成する。チャネルを通る滅菌剤の流れに対して顕著な妨害物を形成することなくテストパックの外部からの滅菌剤を滅菌インジケータ10へ導くために、チャネルは、断面積が十分大きくなければならない。好ましい実施形態では、チャネルは、0.25インチ(0.635cm)の直径を有する円の面積とほぼ等しい断面積を有し、トレイのそれぞれの角部に1つと、それぞれの側面に沿って1つの6つのチャネルが存在する。しかしながら、チャネルの数およびその直径はいずれも、本発明の範囲から逸脱することなく変更され得ることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0055】
好ましくは、蓋50と、蓋50と接触するリム表面44の一部とは、滅菌剤に対して実質的に不浸透性であるシールを形成する。このようなシールは、好ましくは、互いに接触する蓋50の表面とリム表面44との間に接着剤層を配置することによって形成することができる。より好ましくは、シールは、プラスチック蓋50をリム表面44にヒートシールすることによって形成され得る。
【0056】
滅菌手順の間、チャネルは、滅菌チャンバからの滅菌剤を、窪んだトラフ46内の滅菌インジケータ10に導く。次に、滅菌剤はインジケータ10に入り、既に記載したように、活性酵素源と接触する。インジケータ10は、次に、非チャレンジ型テストパック40から取り出され、外管18が圧縮され、内管18が破壊され、キャリヤストリップ16上の酵素と接触するように基質が放出される。次にインジケータ10は、基質が活性酵素と反応して、検出可能な酵素修飾生成物を形成するのに十分な時間の間、インキュベートされる。酵素修飾生成物は、蛍光、発光または色の変化などの信号として検出可能であり得る。検出可能な酵素修飾生成物の出現は、滅菌手順が失敗し、滅菌チャンバ中に存在する汚染微生物を死滅できなかったかもしれないことの表示である。
【0057】
非チャレンジ型テストパック40のトレイ42および蓋50はいずれも、好ましくは、滅菌手順の後に残留滅菌剤を保有しない耐熱性のプラスチック材料で製造される。本明細書における使用では、「耐熱性」という用語は、変形、収縮、溶融、または分解することなく、特定の滅菌手順で達成される最高温度に耐えられることを意味する。滅菌手順の間に達成される最高温度は、使用されている滅菌手順のタイプによって変化する。例えば、2多くの蒸気滅菌手順は121℃またはそれ以上の温度で実行されるが、過酸化水素プラズマ滅菌手順は、一般に、60℃よりも低い温度で行なわれる。トレイで使用するために適切な耐熱性プラスチックを選択する際、様々な滅菌手順の間のこれらの温度の違いは、適切に考慮されなければならず、インジケータが使用される滅菌手順の最高温度より高いガラス転移温度を有するプラスチックが選択されるべきである。
【0058】
過酸化水素プラズマ滅菌手順において使用するのに適切な非チャレンジ型テストパックの好ましい実施形態では、トレイは、グリコール添加剤を有するポリエチレンテレフタレート(PETG)で製造される。テストパックトレイ42で使用するために適切な耐熱性プラスチックのその他の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリエーテルアミド、ポリスルホン、クロロトリフルオロエチレン(chorotrifluoroethylene)、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、ポリスチレン、およびポリエステルが挙げられる。
【0059】
蓋50は、トレイ42と同じ材料で製造することができる。好ましくは、蓋20は、半透明または透明なプラスチック材料で製造される。過酸化水素プラズマ滅菌手順で使用するために適切な最も好ましい実施形態では、蓋50は透明フィルムで製造され、リム表面44にヒートシールされる。適切な透明フィルムの一例は、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーからスコッチパック(SCOTCHPAK)(登録商標)ポリエステルフィルムとして市販されているポリエチレンおよびエチレン酢酸ビニルのブレンドで被覆されたポリエステルフィルムである。
【0060】
図9は、確定した断面積および長さを有するルーメン内に配置された場合にインジケータが経験し得る耐性と等しい更なる耐性を滅菌インジケータに提供する、本明細書ではルーメン−チャレンジ型テストパックと称される別のテストパックを示す。ルーメン−チャレンジ型テストパックは、管のような器具内部の深くに位置し得る微生物を死滅させることにおいて滅菌手順が有効であるかどうかを決定する正確な方法を提供する。
【0061】
ルーメン−チャレンジ型テストパック60は、滅菌インジケータ10を保持するためのトレイ72(この場合も、入れ子状容器で構成されるインジケータが図8に示されているが、別の構造または設計のその他の適切な滅菌インジケータが使用されてもよいことはよく理解される)と、蓋68とを含む。トレイ72は耐熱性プラスチックで製造され、トレイ72の周囲を画定するエッジ62を有する実質的に平らな表面74を有する。滅菌インジケータ10を保持するためのトラフ64は、平らな表面74内に窪みを設けて形成される。確定した長さを有する溝66は、平らな表面内に窪みを設けて形成され、窪んだトラフ64を通って延在し、2つの地点76、78でエッジ62を貫通する連続通路を形成する。蓋68は、実質的に平らな表面74と共に、滅菌剤に対して実質的に不浸透性であるシールを形成する。シールは、互いに接触している平らな表面74と蓋68の表面との間に接着剤層を配置することによって、あるいは、ヒートシールすることによって形成することができる。蓋68と溝66の間の空間はルーメンパス70を画定し、ここを通って、滅菌剤は滅菌チャンバから滅菌インジケータ10へ導かれる。
【0062】
ルーメンパス70は、確定した長さおよび断面積を有する。ルーメンパスの直径は、既知の直径を有するルーメンにおける条件を再現するように選択または調整することができる。好ましくは、過酸化水素プラズマ滅菌手順の有効性を試験するために使用され得るテストパックの好ましい実施形態では、ルーメンパスは、長さが約12インチ(30.48cm)程度であり、大体0.25インチ(0.635cm)の直径を有する円の面積である断面積を有する。しかしながら、ルーメンの長さおよび断面積は選択することができ、全てが本発明の範囲内であると考えられる。例えば、図10は、ルーメンパスが図8に示されるルーメンパス70とは異なる長さを有する、ルーメン−チャレンジ型テストパック80の別の実施形態を示す。
【0063】
使用の際、テストパック60は滅菌チャンバ内に配置されて、滅菌手順に暴露され、この間、滅菌剤はルーメンパス76に沿って移動し、滅菌インジケータ10と接触する。手順の最後に、滅菌インジケータ10はテストパックから取り出され、非チャレンジ型テストパックを参照して上記で議論したように処理される。
【0064】
トレイ72および蓋68は、非チャレンジ型テストパックに関して上記で説明したようにして選択されるべきである耐熱性プラスチック材料で製造される。過酸化水素プラズマ手順で使用するために適切な好ましい実施形態では、トレイ72は、グリコール添加剤を有するポリエチレンテレフタレート(PETG)で製造され、蓋は、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーからスコッチパック(登録商標)ポリエステルフィルムとして市販されているポリエチレンおよびエチレン酢酸ビニルのブレンドを含む透明フィルムで製造される。フィルム68は、トレイ72へヒートシールすることができる。
【0065】
ルーメン型チャレンジテストパックの2つの別の実施形態は、図11および図12に示される。図11は、確定した長さおよび断面積のルーメンパス70を有するルーメン−チャレンジ型テストパック90を示す。ルーメンパスは、ほぼ「Z」型構成である。過酸化水素プラズマ滅菌プロセスのために設計されたインジケータでは、ルーメンは、好ましくは、約150mmの長さおよび約5mmの断面積を有する。図9および図10に示される設計と類似した形で、ルーメンパスは、滅菌インジケータ10を保持するためのトラフ64を含む。図示されるデバイスでは、インジケータは、活性酵素源を含有する錠剤の形の酵素インジケータである。このようなインジケータは、米国特許第5,486,459号明細書(バーナム(Burnham)ら)に記載されており、その記載は参照によって本明細書中に援用される。このようなインジケータシステムでは、錠剤は、少なくとも1つの、そして好ましくは一群の、確定した酵素系の成分を含有する。滅菌プロセスが行なわれた後、インジケータは露出され(例えば、蓋68を部分的または完全に除去することによって)、特定のインジケータ試薬の混合物がインジケータに添加され、混合物を形成する。次に、混合物は、酵素系の酵素と試薬との相互作用から生成物を形成できるように十分な時間の間、インキュベートされる。酵素の相互作用は、表示システムにおいて設計されたように、例えば、可視的な色の変化によって、あるいは放射能、電気または蛍光活性によって表示され得る。このようなシステムの設計は当該技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,486,459号明細書に記載されている。また、滅菌剤バリヤ(図示せず)が、インジケータ10上でトラフ64内に配置されてもよい。このようなバリヤは拡散制限環境を提供し、デバイスの耐性に寄与する。滅菌剤バリヤのサイズ、形状、圧縮または組成を変化させると、デバイスが設計される特定の必要性に従って、デバイスの耐性を変更することができる。一般に好ましいバリヤは、米国特許第5,830,683号明細書(ヘンドリックス(Hendricks)ら)に記載されるものなどの連続気泡フォーム材料で製造され得る。
【0066】
図12は、酵素インジケータシステムのための自己充足型ルーメン−チャレンジ型テストパックを示す。インジケータ100の構成は、図11に示されるものと同様である。図11のデバイスのように、ルーメンパス70内のトラフ64内に配設された錠剤タイプの酵素インジケータ10を含有して示されるが、トレイ72は、インジケータ錠剤10を含有するトラフ64と流体連通する第2のトラフ92も含む。図11に示されるデバイスの場合と同様、滅菌剤バリヤは、インジケータ10上でトラフ64内に配置され得る。第2のトラフ92は、上記のインジケータ試薬混合物が充填された密封リザーバを含有する。密封リザーバは、例えば、ホイルバブル(foil bubble)型パッケージの形でよい。滅菌および滅菌剤へのインジケータ錠剤10の付随する暴露の後、バブル型パッケージは指圧で開封され、インジケータ錠剤を含有するトラフ内に試薬混合物を放出し、それにより、蓋68を除去する必要なく読み取ることができる(例えば、色の変化を表示する反応によって)。
【0067】
図13は、もう1つのチャレンジ型テストパックを示す。テストパック110は、上記のような酵素インジケータ錠剤10を含有するチャンバ96と流体連通するルーメン94を含む。一般に、テストパックは、半剛性のホイルポーチ(foil pouch)の形で製造されるのが好ましいと考えられる。ルーメン94は、適切な剛性材料で製造された所定の長さおよび断面積の中空管を含むことができ、ホイル本体の端部に挿入されるか、あるいは、ルーメンは、ポーチ構成の一体化部分として製造されてもよい。最初は密封された第2のチャンバ92はインジケータ試薬混合物を含有し、チャンバ96と流体連通する。チャンバは、ホイルテストパックのバブル部分として便宜上構成され、図12に示されるデバイスと同様に、滅菌サイクルの完了後に、バブルは破壊され、内容物はインジケータ錠剤10と接触することができる。インジケータシステムが、活性酵素源が所定のレベルの滅菌剤に暴露されたことの表示として色の変化を用いるタイプのものである場合、チャンバ96は、インジケータを開けることを必要とせずに、ユーザーが色の変化を見ることを可能にする透明窓96を含むことができる。
【0068】
本発明のもう1つの実施形態では、チャレンジ型滅菌テストパックは、滅菌インジケータ(例えば、上記のような錠剤の酵素インジケータ)および滅菌剤バリヤ(例えば、圧縮性のフォーム)が中に配置されるウェルを有する実質的に平面または平らなトレイで構成され得る。インジケータおよび滅菌剤バリヤを含有するトレイは、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーから入手可能なタイベック(登録商標)医療用パッキング材料などの、滅菌剤が貫通できる材料を含む蓋で密封され得る。このようなデバイスでは、蓋材料および滅菌剤バリヤにより提供される耐性の組み合わせによってチャレンジ機能が達成され、この効果は、テストパックが意図される特定の用途の必要性に従って変化され得る。
【0069】
本発明の作用は、以下の詳細な実施例に関して更に説明されるであろう。これらの実施例は、様々な特定の好ましい実施形態および技法を更に説明するために提供される。しかしながら、本発明の範囲を超えずに多くの変化および修正が成され得ることは、理解されるべきである。
【実施例】
【0070】
実施例1〜5は、表1〜5に記載される化学薬品で処理された胞子と共に作製された滅菌インジケータが、予備真空蒸気滅菌サイクルにおける酵素の早期不活性化に対する耐性の増大を実証するかどうかを決定するための試験の結果を報告する。実施例6〜9は、表6〜9に記載される化学薬品で処理された胞子と共に作製された滅菌インジケータが、過酸化水素プラズマ滅菌手順における酵素の早期不活性化に対する耐性の増大を実証するかどうかを決定するための試験の結果を報告する。実施例10は、本発明の非チャレンジ型テストパックおよびルーメン−チャレンジ型テストパックの有効性を実証する試験の結果を報告する。
【0071】
インジケータの作製
実施例1〜5のための滅菌インジケータを、米国特許第5,252,484号明細書に示される方法に従って、図1および2示されるように構成した。実施例のために作製したインジケータは、迅速な酵素ベースの有効性試験と、確認のための胞子増殖試験との両方を提供する二重迅速読取りインジケータであった。キャリヤストリップ16上に被覆された胞子は活性酵素源としての役割を果たし、その活性を迅速酵素試験により測定した。次に、試験の胞子増殖部分において、これらの同じ胞子をインキュベートした。
【0072】
メリーランド州ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection,Rockville,MD)からATCC7953で市販されているバチルス・ステアロサーモフィラスを、トリプトシン大豆ブイヨン中で58℃において一晩(16時間)成長させた。この培養物を用いて、8g/lの栄養ブイヨン、4g/lの酵母エキス、0.1g/lの塩化マンガン、および20g/lの寒天からなるpH7.2の寒天プレートの表面を播種した。プレートを58℃で72時間インキュベートした。プレートから胞子を削り取り、滅菌蒸留水に懸濁させた。4℃で20分間、懸濁液を7000rpmで遠心分離することによって、胞子を栄養の残骸(vegetative debris)から分離した。上澄みを捨て、滅菌蒸留水に胞子を再度懸濁した。クリーニング手順を数回繰り返した。最終的な洗浄後、約1×108胞子/ミリリットルの濃度で胞子を滅菌蒸留水に懸濁した。
【0073】
次に、表1〜5に特定される化学薬品で胞子を処理した。試験した全ての化学薬品は、商業的な供給源から入手した。胞子を6000rpmで10分間遠心分離した。上澄みを取り、表に示される濃度のコーティング化学薬品と混合した。上澄みおよびコーティング化学薬品混合物を60〜80℃で数分間加熱し、ボルテックスさせて、材料を溶液にした。次に胞子を滅菌剤耐性の化学薬品溶液中に混合した。滅菌剤耐性の化学薬品溶液を、各ストリップに10〜15マイクロリットルをピペッティングすることによって、ストリップあたり約1×106の胞子の最終集団で5×25mmの591Aペーパーストリップ(ニューハンプシャー州キーンのシュライヒャー・シュル社(Schleicher & Schuell,Inc.,Keene,N.H.)に施した。ストリップを37℃で16時間乾燥させた。
【0074】
処理済の胞子ストリップをインジケータ10の外側容器12の底部に配置し、胞子ストリップ16と、酵素基質を含有する内側容器18との間にバリヤを挿入した。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから「シンサレート(登録商標)200−Bブランド断熱材」として市販されている200g/m2の重量を有するポリプロピレンブローンマイクロファイバ材料の1.75mm(11/16インチ)ディスクをバリヤとして使用した。内側容器18は、17gの細菌ペプトンおよび0.17g/lのL−アラニンからなる0.67mlの栄養培地と、200マイクロリットルのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解された0.1gの4−メチルウンベリフェリル−アルファ−D−グルコシド(ミズーリ州セントルイスのシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Company,St.Louis,MO)から市販)と、水1リットルあたり0.03gのブロモクレゾールパープルpHインジケータ染料とを含有した。酵素基質および栄養培地溶液のpHを0.1Nの水酸化ナトリウムで7.6に調整した。
【0075】
外側バイアル12およびキャップ26はいずれもポリプロピレンで製造される。外側バイアル12は、長さ5.08cm(2.0インチ)であり、外径85.1mm(0.335インチ)および内径77.0mm(0.303インチ)を有した。キャップ26は、長さ1.275cm(0.510インチ)であり、内径83.3mm(0.328インチ)を有した。内側容器18はガラスで製造され、長さが3.96cm(1.56インチ)であり、外径65.5mm(0.258インチ)および壁厚2.5mm(0.010インチ)を有した。閉鎖部材22は、直径1.27mm(0.5インチ)の滅菌グレードのろ紙片であった。
【0076】
実施例6〜9のための滅菌インジケータは、滅菌インジケータの閉鎖部材22を、デラウェア州ウィルミントンのE.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーから市販されているタイベック(登録商標)高密度ポリエチレン繊維材料で構成した点を除いては、上記のとおりに作製した。
【0077】
実施例1
この実施例は、未処理の胞子で製造されたインジケータと比較して、表1の化学薬品で処理された胞子で製造された滅菌インジケータが、改善された精度を実証することを提供する。表1の化学薬品は、ポリグリセリンアルキルエステルまたはエトキシル化グリセリンエステルである。
【0078】
表1に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。未処理の胞子を用いてコントロールインジケータを製造した。インジケータを金属器具トレイ内に配置し、0.075〜0.085バールの真空レベルおよび各パルスに対して1.00バールまでの蒸気パルスを有する121℃の4パルスの予備真空サイクルを用いて、121℃において、ゲティンゲ(Getinge)蒸気滅菌器(ニュージャージー州レークウッド、トウビン・アベニュー1100のゲティンゲ・インターナショナル社(Getinge International,Inc.,1100 Towbin Ave.,Lakewood,NJ))内で暴露した。滅菌器内でインジケータを7〜13分間暴露させた。このサイクルは、図5の時間−圧力図に示される。暴露後、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕し、インジケータを60℃でインキュベートした。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダー(Rapid Autoreader)を用いて、インジケータを蛍光について検査した。更に、60℃で168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0079】
試験した化学薬品は、商業的な供給源から入手した。モノステアリン酸デカグリセリン、モノステアリン酸ヘキサグリセリルおよびモノステアリン酸テトラグリセリルは、日本の東京の日光ケミカルズ社(Nikko Chemicals Co.,Tokyo,Japan)から入手した。グリセレス−7−ジイソノナノアート(Glycereth−7−diisononanoate)は、ニュージャージー州マタワンのアルゾ社(Alzo Co.of Matawan,New Jersey)から入手した。
【0080】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表1に記録される。1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、および6時間で蛍光も実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表1に記録される。表1における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が蛍光陽性として検出され、偽陰性が検出されなかったことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
実施例2
この実施例は、未処理の胞子で製造したインジケータと比較した場合に、アルキルエステルまたはエーテルを用いずにポリグリセリン化合物による胞子の処理が、処理済胞子で製造した滅菌インジケータの精度に対して有する効果の証拠を提供する。
【0084】
表2に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。未処理の胞子を用いてコントロールインジケータを製造した。インジケータを金属器具トレイ内に配置し、0.075〜0.085バールの真空レベルおよび各パルスに対して1.00バールまでの蒸気パルスを有する121℃の4パルスの予備真空サイクルを用いて、121℃において、ゲティンゲ蒸気滅菌器(ニュージャージー州レークウッド、トウビン・アベニュー1100のゲティンゲ・インターナショナル社)内で暴露した。滅菌器内で7〜13分間インジケータを曝露した。このサイクルは、図5の時間−圧力図に示される。暴露後、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕し、インジケータを60℃でインキュベートした。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、インジケータを蛍光について検査した。更に、60℃で168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0085】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表2に記録される。1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、および6時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表2に記録される。表2における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0086】
胞子コーティングとして使用される場合、ヘキサグリセリンおよびトリグリセリンは、滅菌インジケータの精度を改善しなかった。
【0087】
試験した化学薬品は、商業的な供給源から入手した。デカグリセリン、ヘキサグリセリンおよびトリグリセリンは、ニュージャージー州フェアローンのロンザ社(Lonza,Inc.,Fairlawn,New Jersey)から入手した。
【0088】
【表3】

【0089】
実施例3
この実施例は、未処理の胞子またはソルビトール単独で処理した胞子で製造した滅菌インジケータと比較した場合に、モノステアリン酸デカグリセリルおよびソルビトールの混合物、あるいはモノステアリン酸デカグリセリン単独で処理した胞子で製造した滅菌インジケータが、改善された精度を実証するという証拠を提供する。
【0090】
表3に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。未処理の胞子を用いてコントロールインジケータを製造した。インジケータを金属器具トレイ内に配置し、0.075〜0.085バールの真空レベルおよび各パルスに対して1.00バールまでの蒸気パルスを有する121℃の4パルスの予備真空サイクルを用いて、121℃において、ゲティンゲ蒸気滅菌器(ニュージャージー州レークウッド、トウビン・アベニュー1100のゲティンゲ・インターナショナル社)内で曝露した。滅菌器内で7〜15分間インジケータを暴露した。このサイクルは、図5の時間−圧力図に示される。暴露後、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕し、インジケータを60℃でインキュベートした。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、インジケータを蛍光について検査した。更に、60℃で168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0091】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表3に記録される。1時間、2時間、3時間、および4時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合は、表3に記録される。表2における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0092】
試験した化学薬品は、商業的な供給源から入手した。ソルビトールは、ミネソタ州ミネアポリスのパドック・ラボラトリーズ(Paddock Laboratories,Minneapolis,Minnesota)から入手した。モノステアリン酸デカグリセリルは、日本の東京の日光ケミカルズ社から入手した。
【0093】
【表4】

【0094】
実施例4
この実施例は、未処理の胞子で製造した滅菌インジケータと比較した場合に、表4の化学薬品のいくつかは、滅菌インジケータで使用される胞子を処理するために使用されると、インジケータの精度を改善するという証拠を提供する。
【0095】
表4に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。未処理の胞子を用いてコントロールインジケータを製造した。インジケータを金属器具トレイ内に配置し、0.075〜0.085バールの真空レベルおよび各パルスに対して1.00バールまでの蒸気パルスを有する121℃の4パルスの予備真空サイクルを用いて、121℃において、ゲティンゲ蒸気滅菌器(ニュージャージー州レークウッド、トウビン・アベニュー1100のゲティンゲ・インターナショナル社)内で曝露した。滅菌器内で7〜18分間インジケータを暴露した。このサイクルは、図5の時間−圧力図に示される。暴露後、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕し、インジケータを60℃でインキュベートした。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、インジケータを蛍光について検査した。更に、60℃で168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0096】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表4に記録される。1時間、2時間、3時間、および4時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合は、表4に記録される。表4における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0097】
インジケータで使用される胞子を、モノステアリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、ジパルミチン酸デカグリセリン、およびジステアリン酸ヘキサグリセリルで処理した場合に、滅菌インジケータの精度が改善された。この効果は、胞子をより高い濃度の化学薬品で処理した場合に増大した。
【0098】
試験した化学薬品は、商業的な供給源から入手した。モノステアリン酸デカグリセリン、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、およびトリオレイン酸デカグリセリルは、日本の東京の日光ケミカルズ社からから入手した。モノオレイン酸デカグリセリル、ジパルミチン酸デカグリセリル、ジオレイン酸ヘキサグリセリル、ヘキサオレイン酸デカグリセリル、ジステアリン酸ヘキサグリセリル、およびデカオレイン酸デカグリセリルは、ニュージャージー州フェアローンのロンザ社から入手した。
【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
実施例5
この実施例は、未処理の胞子で製造したインジケータと比較した場合に、表5の化学薬品のいくつかは、滅菌インジケータで使用される胞子を処理するために使用されると、インジケータの精度を改善したという証拠を提供する。
【0103】
表5に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。未処理の胞子を用いてコントロールインジケータを製造した。インジケータを金属器具トレイ内に配置し、0.075〜0.085バールの真空レベルおよび各パルスに対して1.00バールまでの蒸気パルスを有する121℃の4パルスの予備真空サイクルを用いて、121℃において、ゲティンゲ蒸気滅菌器(ニュージャージー州レークウッド、トウビン・アベニュー1100のゲティンゲ・インターナショナル社)内で曝露した。滅菌器内で7〜13分間インジケータを暴露した。このサイクルは、図5の時間−圧力図に示される。暴露後、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕し、インジケータを60℃でインキュベートした。ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、インジケータを蛍光について検査した。更に、60℃で168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0104】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表5に記録される。1時間、2時間、3時間、および4時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表5に記録される。表5における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0105】
インジケータで使用される胞子を、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(5)グリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、およびモノミリスチン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリルおよびジイソステアリン酸デカグリセリルで処理した場合に、滅菌インジケータの精度が改善された。この効果は、胞子をより高い濃度の化学薬品で処理した場合に増大した。
【0106】
全ての化学薬品は、日本の東京の日光ケミカルズ社から入手した。
【0107】
【表8】

【0108】
【表9】

【0109】
実施例6
この実施例は、表6に記載される化学薬品で処理された胞子に関連された酵素が、未処理の胞子に関連された酵素よりも、過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化に対して耐性であるかどうかを決定するための実験の結果を報告する。
【0110】
表6に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度で被覆した胞子を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。インジケータを器具トレイ内に配置し、カリフォルニア州アービンのアドバンスド・ステリライゼーション・プロダクツ社(Advanced Sterilization Products Co.,Irvine,CA)から入手したステラッド(STERRAD)(登録商標)100SI GMP滅菌器において、45〜55℃で過酸化水素プラズマ滅菌手順に曝露した。滅菌手順の間、圧力が300ミリトルに低下するまで5〜6分間滅菌チャンバ内を真空にした。次に、1.8ml分量の58〜60%の過酸化水素水溶液を、約6分の時間をかけて滅菌チャンバ内に注入し、6〜7mg/ml過酸化水素の空のチャンバ濃度をもたらし、過酸化水素蒸気を6〜10トルで1〜22分間、チャンバ全体に拡散させた。次に真空にして、圧力を500ミリトルまで低下させ、全ての検出可能な過酸化水素蒸気をチャンバから除去した。次に、400ワットおよび13.56MHzでRF電源を放射させることにより、500ミリトルで約15〜16分間、チャンバ内でプラズマ相を発生させ、その後、チャンバ内が大気圧に達するまでチャンバを3〜4分間通気させた。
【0111】
滅菌手順に曝露した後、インジケータを滅菌器から取り出し、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕した。次に、インジケータを60℃でインキュベートし、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、5時間の間、蛍光について毎時検査した。更に、168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0112】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表6に記録される。1時間、2時間、3時間、4時間、および5時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表6に記録される。表6における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0113】
表6のデータは、デカオレイン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリン、モノオレイン酸テトラグリセリン、ヘキサオレイン酸デカグリセリン、および1,2,3−プロパントリアール(Propantrial)で処理された胞子でインジケータが作製される場合には、未処理の胞子で製造されたインジケータと比較して、過酸化水素プラズマ滅菌手順において、暴露の1〜3時間後に滅菌インジケータの精度が改善されることを示す。データから、これらの化学薬品による処理が過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化に対する酵素の耐性を増大させると推察することができる。
【0114】
表6に記載される全ての化学薬品は、商業的な供給源から入手した。デカオレイン酸デカグリセリル、ヘキサオレイン酸デカグリセリン、ジオレイン酸ヘキサグリセリンおよびペンタオレイン酸デカグリセリンは、ニュージャージー州フェアローンのロンザ社から入手した。モノオレイン酸テトラグリセリンおよびトリオレイン酸デカグリセリンは、日本の東京の日光ケミカルズ社から入手した。
【0115】
【表10】

【0116】
実施例7
この実施例は、表7に記載される化学薬品で処理された胞子に関連された酵素が、未処理の胞子に関連された酵素よりも、過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化に対して耐性であるかどうかを決定するための実験の結果を報告する。
【0117】
表7に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度で被覆した胞子を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。インジケータを器具トレイ内に配置し、カリフォルニア州アービンのアドバンスド・ステリライゼーション・プロダクツ社から入手したステラッド(登録商標)100SI GMP滅菌器において、45〜55℃で過酸化水素プラズマ滅菌手順に曝露した。滅菌手順の間、圧力が300ミリトルに低下するまで5〜6分間滅菌チャンバ内を真空にした。次に、1.8ml分量の58〜60%の過酸化水素水溶液を、約6分の時間をかけて滅菌チャンバ内に注入し、6〜7mg/ml過酸化水素の空のチャンバ濃度をもたらし、過酸化水素蒸気を6〜10トルで1〜22分間、チャンバ全体に拡散させた。次に真空にして、圧力を500ミリトルまで低下させ、全ての検出可能な過酸化水素蒸気をチャンバから除去した。次に、400ワットおよび13.56MHzでRF電源を放射させることにより、500ミリトルで約15〜16分間、チャンバ内でプラズマ相を発生させ、その後、チャンバ内が大気圧に達するまでチャンバを3〜4分間通気させた。
【0118】
滅菌手順に曝露した後、インジケータを滅菌器から取り出し、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕した。次に、インジケータを60℃でインキュベートし、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、5時間の間、蛍光について毎時検査した。更に、168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0119】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表7に記録される。1時間、2時間、3時間、4時間、および5時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表7に記録される。表7における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0120】
表7のデータは、デカオレイン酸デカグリセリル、モノステアリン酸POE(60)グリセリンおよびモノステアリン酸POE(20)ソルビタンで処理された胞子でインジケータが作製される場合には、未処理の胞子で製造されたインジケータと比較して、過酸化水素プラズマ滅菌手順において、暴露の2〜3時間後に滅菌インジケータの精度が改善されることを示す。データから、これらの化学薬品による処理が過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化に対する酵素の耐性を増大させると推察することができる。
【0121】
表7に記載される全ての化学薬品は、商業的な供給源から入手した。デカオレイン酸デカグリセリルは、ニュージャージー州フェアローンのロンザ社から入手した。モノステアリン酸デカグリセリル、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸POE(60)グリセリン、およびモノステアリン酸POE(20)ソルビタンは、日本の東京の日光ケミカルズ社から入手した。
【0122】
【表11】

【0123】
実施例8
この実施例は、表8に記載される化学薬品で処理された胞子に関連された酵素が、未処理の胞子に関連された酵素よりも、過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化に対して耐性であるかどうかを決定するための実験の結果を報告する。
【0124】
表8に記載されるそれぞれの化学薬品および濃度で被覆した胞子を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。インジケータを器具トレイ内に配置し、カリフォルニア州アービンのアドバンスド・ステリライゼーション・プロダクツ社から入手したステラッド(登録商標)100SI GMP滅菌器において、45〜55℃で過酸化水素プラズマ滅菌手順に曝露した。滅菌手順の間、圧力が300ミリトルに低下するまで5〜6分間滅菌チャンバ内を真空にした。次に、1.8ml分量の58〜60%の過酸化水素水溶液を、約6分の時間をかけて滅菌チャンバ内に注入し、6〜7mg/ml過酸化水素の空のチャンバ濃度をもたらし、過酸化水素蒸気を6〜10トルで1〜22分間、チャンバ全体に拡散させた。次に真空にして、圧力を500ミリトルまで低下させ、全ての検出可能な過酸化水素蒸気をチャンバから除去した。次に、400ワットおよび13.56MHzでRF電源を放射させることにより、500ミリトルで約15〜16分間、チャンバ内でプラズマ相を発生させ、その後、チャンバ内が大気圧に達するまでチャンバを3〜4分間通気させた。
【0125】
滅菌手順に曝露した後、インジケータを滅菌器から取り出し、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕した。次に、インジケータを60℃でインキュベートし、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、5時間の間、蛍光について毎時検査した。更に、168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0126】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表8に記録される。1時間、2時間、3時間、4時間、および5時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表8に記録される。表8における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0127】
表8のデータは、ジ−ステアリン酸へキサグリンで処理された胞子でインジケータが作製される場合には、未処理の胞子で製造されたインジケータと比較して、過酸化水素プラズマ滅菌手順において、暴露の1〜3時間後に滅菌インジケータの精度が改善されることを示す。データから、この化学薬品による処理が過酸化水素プラズマ滅菌手順における早期不活性化に対する酵素の耐性を増大させると推察することができる。
【0128】
表8に記載される全ての化学薬品は、商業的な供給源から入手した。アルキルポリグルコシドは、ニュージャージー州ホーボーケンのヘンケル社(Henkel Co.,Hoboken,New Jersey)から入手した。ジ−ステアリン酸ヘキサグリンおよびジパルミチン酸デカグリセリンは、ニュージャージー州フェアローンのロンザ社から入手した。POE(8)オレイルエーテルリン酸ナトリウムは、日本の東京の日光ケミカルズ社から入手した。
【0129】
【表12】

【0130】
実施例9
この実施例は、過酸化水素プラズマ滅菌手順において、未処理の胞子における酵素よりも、胞子に関連された酵素の早期不活性化を防止するために、胞子の処理で使用するためのデカオレイン酸デカグリセリルの有効な濃度範囲を決定するための実験の結果を報告する。
【0131】
表9に記載されるそれぞれの濃度のデカオレイン酸デカグリセリルで被覆した胞子を用いて、滅菌インジケータを上記のように製造した。インジケータを器具トレイ内に配置し、カリフォルニア州アービンのアドバンスド・ステリライゼーション・プロダクツ社から入手したステラッド(登録商標)100SI GMP滅菌器において、45〜55℃で過酸化水素プラズマ滅菌手順に曝露した。滅菌手順の間、圧力が300ミリトルに低下するまで5〜6分間滅菌チャンバ内を真空にした。次に、1.8ml分量の58〜60%の過酸化水素水溶液を、約6分の時間をかけて滅菌チャンバ内に注入し、6〜7mg/ml過酸化水素の空のチャンバ濃度をもたらし、過酸化水素蒸気を6〜10トルで1〜22分間、チャンバ全体に拡散させた。次に真空にして、圧力を500ミリトルまで低下させ、全ての検出可能な過酸化水素蒸気をチャンバから除去した。次に、400ワットおよび13.56MHzでRF電源を放射させることにより、500ミリトルで約15〜16分間、チャンバ内でプラズマ相を発生させ、その後、チャンバ内が大気圧に達するまでチャンバを3〜4分間通気させた。
【0132】
滅菌手順に曝露した後、インジケータを滅菌器から取り出し、酵素基質および栄養培地を含有する内側容器を破砕した。次に、インジケータを60℃でインキュベートし、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、5時間の間、蛍光について毎時検査した。更に、168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0133】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表9に記録される。1時間、2時間、3時間、4時間、および5時間で蛍光を実証したこれらの成長陽性のインジケータの割合も、表9に記録される。表9における滅菌インジケータの精度を判断する目的で、100%の蛍光陽性の割合は完全であり、全ての成長陽性が検出されたことを示す。これに反して、100%未満の蛍光陽性数は、1つまたは複数の偽陰性が存在し、蛍光では陰性であったインジケータのうちのいくつかが、後で胞子成長に陽性であると検出されたことを示す。
【0134】
表9のデータは、5〜100mg/mlの濃度のデカオレイン酸デカグリセリルで処理された胞子でインジケータが作製される場合には、未処理の胞子で製造されたインジケータと比較して、過酸化水素プラズマ滅菌手順において、暴露の2〜3時間後に滅菌インジケータの精度が改善されることを示す。
【0135】
デカオレイン酸デカグリセリルは、ニュージャージー州フェアローンのロンザ社から入手した。
【0136】
【表13】

【0137】
実施例10
この実施例は、本発明のルーメン−チャレンジ型テストパックが、過酸化水素プラズマ滅菌手順に対するテストパック内の滅菌インジケータの耐性を増大させるかどうかを決定するための実験の結果を報告する。
【0138】
本発明に従って製造した非チャレンジ型テストパック、実験室用ルーメン−チャレンジ型デバイス、およびテストパックなしで暴露させた滅菌インジケータと共に、本発明に従って製造したルーメン−チャレンジ型テストパックを、過酸化水素プラズマ手順の部分サイクルおよび完全サイクルに曝露した。実施例で使用したルーメン−チャレンジ型テストパックおよび非チャレンジ型テストパックは、5mg/mlのデカオレイン酸デカグリセリンで処理した胞子を用いて上記のとおりに作製した滅菌インジケータを含有した。実験用ルーメン−チャレンジ型デバイスは、テストパックで使用される滅菌インジケータ中のキャリヤストリップと同一であるキャリヤストリップを含有した。実験結果は、表10に報告される。
【0139】
長さがそれぞれ12インチ(30.48cm)、9インチ(22.86cm)、6インチ(15.24cm)および3インチ(7.62cm)のルーメンパスを有する4つのタイプのルーメン−チャレンジ型テストパックを作製した。各テストパックは、直径0.25インチ(0.635cm)の円の面積に等しい断面積のルーメンを有した。テストパックは、テストパックトレイ、滅菌インジケータおよび蓋を含有した。
【0140】
マサチューセッツ州ハイアンニーズのセンコープ社(Sencorp,Inc.,Hyannis,Mass)から得られるセンコープ(Sencorp)モデル1600機において、真空および熱により駆動される圧空成形プロセスを用いて、ニューヨーク州ロチェスターのイーストマン・コダック(Eastman Kodak,Rochester,New York)から得られるグリコール添加剤を有するポリエチレンテレフタレート(PETG)を成形することによって、テストパックトレイを製造した。トレイの製造で使用したモールドは、カリフォルニア州チャッツワースのギディング&ルイス(Gidding & Lewis,Inc.,Chatsworth,CA)の子会社であるファダル・エンジニアリング(Fadal Engineering)から入手可能なファダル(Fadal)切断機において製造した。テストパックトレイは形状が矩形であり、実質的に平らな表面を有した。トレイ内の窪んだ溝はトレイ表面のU形状の通路に沿って延在し、2箇所でトレイのエッジを貫通し、2つのルーメンパス開口部を形成し、滅菌手順の間、この開口部を通って滅菌剤がテストパックに入り、テストパックから出て行くことができる。ルーメンパス開口部の間の距離は、3.398インチ(8.630cm)であった。滅菌手順の間、滅菌インジケータを所定位置に保持するために、半径0.219インチ(0.55626cm)および長さ2.435インチ(6.191cm)を有する半円筒形のトラフを、ルーメンパスの中間点でトレイに窪みを設けて形成した。ルーメンパス開口部を含むトレイの側面およびその側面に対向する側面の長さは、4.300インチ(10.922cm)であった。ルーメンパスの長さによってさまざまである他方の側面の長さは、12インチ(30.48cm)ルーメンパステストパックでは5.700インチ(14.478cm)であり、9インチ(22.86cm)ルーメンパステストパックでは4.313インチ(10.955cm)であり、6インチ(15.24cm)ルーメンパステストパックでは3.063インチ(7.780cm)であり、3インチ(7.62cm)ルーメンパステストパックでは1.938インチ(4.922cm)であった。滅菌インジケータをテストパックトレイのトラフ内に配置し、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから得られるスコッチパック(登録商標)ポリエステルフィルム、0.85ミル厚、No.29312の蓋でトレイを被覆した。普通のアイロンを用いてフィルムをトレイにヒートシールした。
【0141】
非チャレンジ型テストパックは、テストパックトレイ、滅菌インジケータ、および蓋を含有した。ルーメン−チャレンジ型テストパックトレイを製造するために使用したのと同じ成形プロセスおよび機械を用いて、テストパックトレイをPETGで製造した。トレイは形状が矩形であり、長さ2.50インチ(6.35cm)の2つの側面と、長さ4.20インチ(10.668cm)の2つの側面とを有した。平らな上部表面を有する隆起したリムは、トレイのそれぞれの側面から内側に0.50インチ(1.27cm)延出する。滅菌手順の間、滅菌インジケータを所定位置に保持するために、半径0.219インチ(0.55626cm)および長さ2.435インチ(6.191cm)を有する半円筒形のトラフを、トレイの中央に窪みを設けて形成した。各角部および各側面の中間点において、直径0.25インチ(0.635cm)を有する溝を、隆起したリムに窪みを設けて形成した。溝は隆起したリムを貫通して延在し、滅菌手順の間、滅菌剤を窪んだトラフ内の滅菌インジケータへ運ぶためのチャネルを形成した。滅菌インジケータをトレイのトラフ内に配置し、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから得られるスコッチパック(登録商標)ポリエステルフィルム、0.85ミル厚、No.29312の蓋でトレイを被覆した。普通のアイロンを用いてフィルムをトレイにヒートシールした。
【0142】
実施例で使用される実験室用ルーメン−チャレンジ型デバイスは長さが30cmであり、長さ5cmであり1.2cmの内径を有するステンレス鋼の中心部分と、それぞれ長さが10cmであり4mmの内径を有する2つのステンレス鋼の末端部分とを含有した。中心部分の端部にねじ山を付け、長さ2.5cmの溝付アダプタへ接続させ、これをゴム管で末端部分に取り付けた。処理済胞子を有するキャリヤストリップを中心部分内に配置した。
【0143】
1セットのデバイスを器具トレイ内に配置し、カリフォルニア州アービンのアドバンスド・ステリライゼーション・プロダクツ社から入手したステラッド(登録商標)100SI GMP滅菌器において、45〜55℃で過酸化水素プラズマ滅菌手順の完全サイクルに曝露した。滅菌手順の間、圧力が300ミリトルに低下するまで5〜6分間滅菌チャンバ内を真空にした。次に、1.8ml分量の58〜60%の過酸化水素水溶液を、約6分の時間をかけて滅菌チャンバ内に注入し、6〜7mg/ml過酸化水素の空のチャンバ濃度をもたらし、過酸化水素蒸気を6〜10トルで44分間、チャンバ全体に拡散させた。次に真空にして、圧力を500ミリトルまで低下させ、全ての検出可能な過酸化水素蒸気をチャンバから除去した。次に、400ワットおよび13.56MHzでRF電源を放射させることにより、500ミリトルで約15〜16分間、チャンバ内でプラズマ相を発生させ、その後、チャンバ内が大気圧に達するまでチャンバを3〜4分間通気させた。
【0144】
第2のセットのデバイスを器具トレイ内に配置し、ステラッド(登録商標)100SI GMP滅菌器において、45〜55℃で過酸化水素プラズマ滅菌手順の部分サイクルに曝露した。完全サイクルにおけるはるかに長い拡散時間と比べて、部分サイクルでは、過酸化水素蒸気をチャンバ全体に9分間だけ拡散させた。その他の点では、部分サイクルおよび完全サイクルは同一であった。
【0145】
滅菌手順に曝露した後、テストパック、滅菌インジケータおよび実験室用ルーメン−チャレンジデバイスを滅菌器から取り出し、滅菌インジケータをテストパックから取り出した。キャリヤストリップを実験用ルーメン−チャレンジデバイスから無菌的に取り出し、上記のように、テストパックで使用される滅菌インジケータと同一の滅菌インジケータを製造するのに必要な他の成分と合わせた。次に、酵素基質および栄養培地を含有する滅菌インジケータの内側容器を破砕した。次に、インジケータを60℃でインキュベートし、ミネソタ州セントポールの3Mカンパニーから市販されている3M(登録商標)アテスト(登録商標)モデル190ラピッド・オートリーダーを用いて、5時間後に蛍光について検査した。更に、168時間のインキュベーションの後、紫色から黄色への色の変化で示される胞子の成長を視覚的に決定した。
【0146】
168時間のインキュベーションの後に検出された成長が陽性のインジケータの数は、表10に記録される。5時間後に検出された蛍光陽性の数も表10に記録される。
【0147】
表10の部分サイクルデータは、本発明の6インチ、9インチおよび12インチのルーメン−チャレンジ型テストパックが、テストパックなしで暴露された滅菌インジケータにより提供されるチャレンジよりも大きい過酸化水素プラズマ滅菌手順に対するチャレンジを提供することと、本発明の非チャレンジ型テストパックが、テストパックなしで暴露された滅菌インジケータと同等のチャレンジを提供することとを示す。
【0148】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の滅菌インジケータの好ましい実施形態の分解図である。
【図2】図1に示されるデバイスの断面図である。
【図3】真空にされる前に蒸気が滅菌チャンバ内に導入される予備真空蒸気滅菌サイクルにおける圧力の経時変化を示すグラフである。
【図4】蒸気が注入される前に滅菌チャンバ内が真空にされる予備真空蒸気滅菌サイクルにおける圧力の経時変化を示すグラフである。
【図5】蒸気が注入される前にチャンバ内に一連の真空パルスがかけられる予備真空蒸気滅菌サイクルにおける圧力の経時変化を示すグラフである。
【図6】本発明の滅菌インジケータの別の好ましい実施形態の分解図である。
【図7】図6に示されるデバイスの断面図である。
【図8】本発明の非チャレンジ型テストパックの好ましい実施形態の斜視図である。
【図9】本発明のルーメン−チャレンジ型テストパックの1つの実施形態の斜視図である。
【図10】本発明のテストパックの別の実施形態の斜視図である。
【図11】本発明のテストパックのもう1つの別の実施形態の斜視図である。
【図12】本発明のテストパックのもう1つの別の実施形態の斜視図である。
【図13】本発明のテストパックのもう1つの別の実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トレイの周囲を画定する隆起したリム表面と、滅菌インジケータを受容するための窪んだトラフとを含む、滅菌インジケータを保持するためのトレイであって、前記リム表面が、前記リムを通って前記窪んだトラフまで延在する、その全長に沿って離間された複数の溝を含有するトレイと、
(b)滅菌手順の有効性を試験するための、前記トレイの窪んだトラフ内の滅菌インジケータと、
(c)前記トレイのリム表面と関連され、前記リム表面と共に実質的に滅菌剤不浸透性のシールを形成する蓋であって、前記トレイ内の溝と共に複数のチャネルを形成して、滅菌剤が前記チャネルを通って前記トレイに入り、前記滅菌インジケータと接触できるようにする蓋と、
を含む、滅菌手順の有効性を試験するための滅菌テストパック。
【請求項2】
前記滅菌インジケータが、活性酵素源を含む請求項1に記載の滅菌テストパック。
【請求項3】
前記滅菌インジケータが、
(i)滅菌手順の間、滅菌剤が外側容器に入れるようにするために少なくとも1つの開口部を有する圧縮性の外側容器と、
(ii)前記外側容器内に含有される活性酵素源であって、前記酵素が、滅菌手順の有効性を監視するために一般に使用される少なくとも1つの試験微生物の生存と相関する酵素活性を有し、前記酵素が前記試験微生物に対して致死性の滅菌手順によって実質的に不活性化され、しかし前記酵素が前記試験微生物に対して亜致死性の滅菌手順によって実質的に不活性化されない活性酵素源と、
(iii)滅菌手順で使用される滅菌剤に対して不浸透性であり、基質を含有する、前記外側容器内の破壊可能な内側容器であって、前記内側容器が、前記外側容器を圧縮することによって破壊されて前記基質を前記酵素と接触可能にするように適合され、前記基質が、活性酵素と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる内側容器と、
を含む請求項1に記載の滅菌テストパック。
【請求項4】
活性酵素源が、微生物である請求項2に記載の滅菌テストパック。
【請求項5】
前記微生物が、バチルス・ステアロサーモフィラス胞子である請求項4に記載の滅菌テストパック。
【請求項6】
前記微生物が、枯草菌胞子である請求項4に記載の滅菌テストパック。
【請求項7】
活性酵素源が、精製酵素である請求項2に記載の滅菌テストパック。
【請求項8】
前記滅菌手順が、蒸気、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシドガス、乾熱、プロピレンオキシドガス、臭化メチル、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、および過酢酸からなる群から選択される1つまたは複数の滅菌剤を用いる請求項1に記載の滅菌テストパック。
【請求項9】
前記活性酵素源が相互作用的な酵素系を含み、前記滅菌インジケータが更に、前記活性酵素源と流体連通するチャンバ内に含有される1つまたは複数の酵素インジケータ試薬を含み、前記チャンバが初めは密封されているが、開封されると前記酵素インジケータ試薬を前記活性酵素源と接触させて滅菌の表示を提供できるようにする請求項1に記載の自己充足型滅菌テストパック。
【請求項10】
(a)実質的に平らな表面と、トレイの外周を画定するエッジと、滅菌インジケータを受容するための窪んだトラフと、前記窪んだトラフを通って延在し、前記トレイの前記エッジを少なくとも1つの地点で貫通する、確定した長さおよび断面積の窪んだ溝とを含む、滅菌インジケータを保持するためのトレイと、
(b)前記トレイの窪んだトラフ内の滅菌インジケータであって、前記滅菌インジケータが、滅菌手順の有効性を監視するために一般に使用される少なくとも1つの試験微生物の生存と相関する酵素活性を有する活性酵素源を含み、前記酵素が前記試験微生物に致死性の滅菌手順により実質的に不活性化され、しかし前記酵素が前記試験微生物に亜致死性の滅菌手順によって実質的に不活性化されない滅菌インジケータと、
(c)前記トレイと関連され、前記トレイの平らな表面と共に実質的に滅菌剤不浸透性のシールを形成し、前記トレイ内の窪んだ溝と共にルーメンパスを形成する蓋であって、前記ルーメンパスが前記窪んだ溝の確定した長さおよび断面表面積を有し、滅菌手順の間、滅菌剤が、前記ルーメンパスの少なくとも1つの端部でテストパックに入り、前記滅菌インジケータと接触することができる蓋と、
を含む、滅菌手順の有効性を試験するための滅菌テストパック。
【請求項11】
前記滅菌インジケータが、更に、前記活性酵素と反応して前記滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる基質を含む請求項10に記載の滅菌テストパック。
【請求項12】
活性酵素源が、微生物である請求項10に記載の滅菌テストパック。
【請求項13】
前記微生物が、バチルス・ステアロサーモフィラス胞子である請求項10に記載の滅菌テストパック。
【請求項14】
前記微生物が、枯草菌胞子である請求項12に記載の滅菌テストパック。
【請求項15】
活性酵素源が、精製酵素である請求項10に記載の滅菌テストパック。
【請求項16】
前記窪んだトラフが、前記ルーメンパスの確定した長さのほぼ中間点に配置される請求項10に記載の滅菌テストパック。
【請求項17】
前記滅菌手順が、蒸気、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシドガス、乾熱、プロピレンオキシドガス、臭化メチル、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、および過酢酸からなる群から選択される1つまたは複数の滅菌剤を用いる請求項10に記載の滅菌テストパック。
【請求項18】
前記活性酵素源が相互作用的な酵素系を含み、前記滅菌インジケータが更に、前記活性酵素源と流体連通するチャンバ内に含有される1つまたは複数の酵素インジケータ試薬を含み、前記チャンバが初めは密封されているが、開封されると前記酵素インジケータ試薬を前記活性酵素源と接触させて滅菌の表示を提供できるようにする請求項10に記載の自己充足型滅菌テストパック。
【請求項19】
(a)実質的に平らな表面と、トレイの外周を画定するエッジと、滅菌インジケータを受容するための窪んだトラフと、前記窪んだトラフを通って延在し、前記トレイの前記エッジを少なくとも1つの地点で貫通する、確定した長さおよび断面積の窪んだ溝とを含む、滅菌インジケータを保持するためのトレイと、
(b)(i)滅菌手順の間、滅菌剤が外側容器に入れるようにするために少なくとも1つの開口部を有する圧縮性の外側容器と、
(ii)前記外側容器内に含有される活性酵素源であって、前記酵素が、滅菌手順の有効性を監視するために一般に使用される少なくとも1つの試験微生物の生存と相関する酵素活性を有し、前記酵素が前記試験微生物に対して致死性の滅菌手順によって実質的に不活性化され、しかし前記酵素が前記試験微生物に対して亜致死性の滅菌手順によって実質的に不活性化されない活性酵素源と、
(iii)滅菌手順で使用される滅菌剤に対して不浸透性であり、基質を含有する、前記外側容器内の破壊可能な内側容器であって、前記内側容器が、前記外側容器を圧縮することによって破壊されて前記基質を前記酵素と接触可能にするように適合され、前記基質が、活性酵素と反応して、滅菌手順の失敗の検出可能な表示を提供する酵素修飾生成物を形成することができる内側容器と、
を含む、前記トレイの窪んだトラフ内の滅菌インジケータと、
(c)前記トレイと関連され、前記トレイの平らな表面と共に実質的に滅菌剤不浸透性のシールを形成し、前記トレイ内の窪んだ溝と共にルーメンパスを形成する蓋であって、前記ルーメンパスが前記窪んだ溝の確定した長さおよび断面表面積を有し、滅菌手順の間、滅菌剤が、前記ルーメンパスの少なくとも1つの端部でテストパックに入り、前記滅菌インジケータと接触することができる蓋と、
を含む、滅菌手順の有効性を試験するための滅菌テストパック。
【請求項20】
活性酵素源が、微生物である請求項19に記載の滅菌テストパック。
【請求項21】
前記微生物が、バチルス・ステアロサーモフィラス胞子である請求項20に記載の滅菌テストパック。
【請求項22】
前記微生物が、枯草菌胞子である請求項20に記載の滅菌テストパック。
【請求項23】
活性酵素源が、精製酵素である請求項19に記載の滅菌テストパック。
【請求項24】
前記窪んだトラフが、前記ルーメンパスの確定した長さのほぼ中間点に配置される請求項19に記載の滅菌テストパック。
【請求項25】
前記滅菌手順が、蒸気、過酸化水素、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシドガス、乾熱、プロピレンオキシドガス、臭化メチル、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、および過酢酸からなる群から選択される1つまたは複数の滅菌剤を用いる請求項19に記載の滅菌テストパック。
【請求項26】
前記活性酵素源が相互作用的な酵素系を含み、前記滅菌インジケータが更に、前記活性酵素源と流体連通するチャンバ内に含有される1つまたは複数の酵素インジケータ試薬を含み、前記チャンバが初めは密封されているが、開封されると前記酵素インジケータ試薬を前記活性酵素源と接触させて滅菌の表示を提供できるようにする請求項19に記載の自己充足型滅菌テストパック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2006−518592(P2006−518592A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502885(P2006−502885)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/001301
【国際公開番号】WO2004/075932
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】