説明

滅菌装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、医療用品等を殺菌する滅菌装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の蒸気滅菌装置は、滅菌槽を加熱するための滅菌槽加熱手段として、前記滅菌槽の外周に、これを取り囲むように蒸気ジャケットを設けている。そして、電源スイッチをオンにすると、前記蒸気ジャケット蒸気を送り込むことで滅菌槽の予熱を行う。その後、通常運転を行うようになっており、この通常運転前記滅菌槽内に被滅菌物を入れて、扉を閉じた状態でスタートスイッチをオンにすると前処理工程滅菌槽内蒸気を供給して被滅菌物を滅菌する滅菌工程が順次実行される。前記前処理工程とは、前記滅菌槽およ前記滅菌槽内に収容した被滅菌物を所定の温度に昇温するとともに、前記滅菌槽内の空気を排除する工程であり、前記滅菌工程の前に実施される。また前記前処理工程は、前記蒸気ジャケットによる加熱と前記滅菌槽内の真空引により行うものが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】こうした滅菌装置においては、前記滅菌槽の予熱は、前記蒸気ジャケット蒸気を導入するだけで行うものや、前記蒸気ジャケット蒸気を導入して前記滅菌槽を予熱した後、さら前記滅菌槽内の洗浄のために空運転(被滅菌物を前記滅菌槽内に入れないで蒸気を導入する)を行うものであった。前者の方式では、前記滅菌槽加熱手段を熱容量の大きい前記蒸気ジャケットではなく、比較的熱容量の小さいものとした場合には、前記滅菌槽の予熱に長時間を要してしまうとともに、前記滅菌槽内の洗浄を行うことができない
【0004】また、後者の方式では、予熱と洗浄を別に行うようにしているため、2度手間となり、長時間を要してしまうという課題があった。さらに、短時間滅菌作業を完了しなければならないという要求に答えることができないものであった。この発明は、これらの課題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、滅菌槽と、この滅菌槽を加熱する滅菌槽加熱手段と、前記滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する通常運転を実行する制御手段とを備えた滅菌装置において、前記制御手段は、前記滅菌槽の温度低下を判定する判定手段と、この判定手段が温度低下を判定したとき、前記滅菌槽加熱手段へ蒸気を供給すると同時に、前記滅菌槽内へ蒸気を導入し、前記滅菌槽内の蒸気を真空吸引して排出する暖気運転を前記通常運転の前に実行する暖気運転実行手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】この特徴によれば、長時間の前記滅菌装置の運転停止により、前記滅菌槽温度が低下したことが判定されると、前記通常運転の前に前記暖気運転が実施される。これにより、前記滅菌槽加熱手段蒸気が供給されると同時に、前記滅菌槽内蒸気が導入されるので、蒸気の導入により前記滅菌槽の予熱が効果的に行われるとともに、前記滅菌槽内蒸気が導入排出されることで前記滅菌槽内が洗浄される。
【0007】また、請求項2に記載の発明は、滅菌槽と、この滅菌槽を加熱する滅菌槽加熱手段と、電源の投入を制御する第1制御スイッチと、通常運転の開始を制御する第2制御スイッチと、前記第1制御スイッチおよび第2制御スイッチのオン時に前記滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する通常運転を実行する制御手段とを備えた蒸気滅菌装置において、前記制御手段は、前記第1制御スイッチのオン時に前記滅菌槽の温度低下を判定する判定手段と、この判定手段が温度低下を判定したとき、前記滅菌槽加熱手段へ蒸気を供給すると同時に、前記滅菌槽内へ蒸気を導入し、前記滅菌槽内の蒸気を真空吸引して排出する暖気運転が必要であることを報知する暖気運転要報知手段と、前記暖気運転を実行するか省略するかを選択する暖気運転選択手段と、この暖気運転選択手段により前記暖気運転の実行が選択されたとき、前記通常運転の前に前記暖気運転を実行する暖気運転実行手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】この特徴によれば、前記第1制御スイッチが長時間オフの後、再度オンにされたとき前記滅菌槽温度の低下が判定され、前記暖気運転選択手段により前記暖気運転が選択されると、前記通常運転の前に前記暖気運転が実施される。これにより、前記滅菌槽加熱手段蒸気が供給されると同時に、前記滅菌槽内蒸気が導入されるので、蒸気の導入により前記滅菌槽の予熱が効果的に行われるとともに、前記滅菌槽内蒸気が導入排出されることで前記滅菌槽内が洗浄される。、オペレータが前記暖気運転を必要としないと判断したときには、前記暖気運転行うことなく、前記通常運転へ移行する。
【0009】また請求項3に記載の発明は、前記判定手段が、電源オフからオンまでの時間が所定時間以上であるかどうかを判定して前記滅菌槽の温度低下を判定することを特徴としている。
【0010】この特徴によれば、前記滅菌槽の温度低下は、電源オフからオンまでの時間長さにより判定される。
【0011】また請求項4に記載の発明は、前記滅菌槽加熱手段が、前記滅菌槽の周壁に設けた加熱用の管状蒸気流路からなることを特徴としている。
【0012】この特徴によれば、前記暖気運転時には管状蒸気流路蒸気が供給され、前記滅菌槽内直接供給される蒸気と前記管状蒸気流路とにより、前記滅菌槽が加熱され、効果的に予熱が実行される。
【0013】さらに、請求項5に記載の発明は、前記制御手段が、前記暖気運転およ前記通常運転時における前記滅菌装置の構成要素の駆動停止開閉手順と異なる駆動停止開閉手順により前記構成要素が正常かどうかを判定する自己診断を前記暖気運転時に実施することを徴としている。
【0014】この特徴によれば、前記暖気運転時には前記暖気運転およ前記通常運転時における前記滅菌装置の構成要素の駆動停止開閉手順と異なる手順による比較的時間を要する自己診断が実施される。これにより、前記自己診断により安全性を確認した上で、前記通常運転移行するので、安全性が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施形態は、滅菌槽と、この滅菌槽を加熱する滅菌槽加熱手段と、前記滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する通常運転を実行する制御手段とを備えた滅菌装置において、前記制御手段は、前記滅菌槽の温度低下を判定する判定手段と、この判定手段が温度低下を判定したとき、前記滅菌槽加熱手段へ蒸気を供給すると同時に、前記滅菌槽内へ蒸気を導入し、前記滅菌槽内の蒸気を真空吸引して排出する暖気運転を前記通常運転の前に実行する暖気運転実行手段とを備えたものである。以下に、これを詳述する。
【0016】前記滅菌装置は、前記滅菌槽の少なくとも一面に被滅菌物を搬入搬出する開口部を有し、この開口部を密閉できる開閉自在の扉を有する。前記開口部の周辺また前記における前記開口部の周辺と対向する部分の一方にパッキン溝を形成し、このパッキン溝内パッキン部材を出没自在とし、このパッキン部材を加圧空気で他方押しつけるシール手段が採用される。そして、前記滅菌槽(前記扉を含む)自体の加熱のため滅菌槽加熱手段を有する。前記滅菌槽加熱手段としては、前記滅菌槽の外周周壁に設けた管状蒸気流路とし、この管状蒸気流路へ高温蒸気を供給するものとする。しかしながら、この発明は、前記滅菌槽(内壁)の外周にこれと間隔を存して外壁をなす外槽を設けて、前記滅菌槽と前記外槽とで二重缶状の蒸気ジャケットを構成し、この蒸気ジャケット内蒸気を供給するものにも適用できる。
【0017】前記通常運転(通常滅菌運転と称してもよい)は、前記滅菌槽内に被滅菌物を入れ、この被滅菌物を滅菌するための運転である。前記通常運転は、好ましくは前処理工程とその後の滅菌工程後処理工程を含み、これらの工程は、マイクロコンピュータ等の前記制御手段により制御される。前記前処理程はその実行時に、前記滅菌槽加熱手段蒸気を供給し、好ましくは、前記前処理工程実行時、前記滅菌槽内加圧状態の蒸気を導入する。これにより、前記滅菌槽の内外から、前記滅菌槽およ前記滅菌槽に収容した被滅菌物を加熱し被滅菌物を所定温度に昇温するととも、前記滅菌槽内の空気の排出を行う。この蒸気導入排出の方式は、蒸気の導入と前記滅菌槽から蒸気の排出とを交互に行う方式か、蒸気の導入と同時に前記滅菌槽から蒸気を排出する方式が採用される。
【0018】前記滅菌工程は、蒸気滅菌装置においてはその実行時に前記滅菌槽内蒸気が導入されるが、ガス滅菌装置においては滅菌ガスが導入される。前記滅菌工程時も前記滅菌槽加熱手段蒸気が導入される。前記滅菌工程の後には、通常、前記後処理工程が実行される。前記後処理工程は、通常は前記滅菌槽内の排気と被滅菌物の乾燥の工程を含む。
【0019】前記通常運転の前に実行される前記暖気運転は、前記滅菌槽加熱手段高温蒸気を供給すると同時に、前記滅菌槽内高温蒸気を導入排出することで行われる。前記暖気運転における蒸気導入排出は、滅菌槽の予熱と前記滅菌槽内の洗浄のために必要なものである。その方式は、前記前処理工程と同様に行うことができるが、前記滅菌槽内所定圧まで蒸気を導入した後、蒸気を排出するようにして、前記滅菌槽内正圧のパルスを加えるのが、予熱と洗浄を効果的に行う上で好ましい。この正圧パルスの印加は複数回行うことが望ましい。また、蒸気の前記滅菌槽内への導入を前記滅菌槽の上部から行い、蒸気排出を前記滅菌槽の底部から行うことが好ましいが、これに限定されない。
【0020】この発明の実施形態においては、前記滅菌槽の温度低下を判定する前記判定手段を備える。前記判定手段は、運転停止の時間また前記滅菌槽内の温度により判定される。前者の運転停止の時間で判定する場合は、第1制御スイッチ(電源スイッチ)の直前のオフからオンまでの時間が所定時間以上かどうかで判定する。所定時間以上のときは、前記滅菌槽の温度低下と判定する。前記滅菌装置においては、前記第1制御スイッチをオンにすると、前記滅菌槽加熱手段蒸気が供給され、前記第1制御スイッチオフにするとその蒸気供給が停止され、前記滅菌槽温度は時間の経過とともに低下する。このような前記滅菌装置における運転停止の時間は、前記第1制御スイッチのオフからオンまでの時間で計算する。
【0021】後者の前記滅菌槽内の温度低下で判定する場合は、たとえば前記滅菌槽内の上部等適所に設けた温度検出器により検出される温度が、所定時間以上前記扉が閉じているという条件下で所定値以下となると、前記判定手段により前記滅菌槽の温度低下として判定する。前記判定手段による判定のタイミングは、好ましくは運転開始のために、前記第1制御スイッチをオンにしたときとする。こうすることで、不要な暖気運転を実行するのを防止できる。しかしながら、判定のタイミングを前記第1制御スイッチのオン時とするという条件を外してもく、それ以外のタイミング,たとえば前記第1制御スイッチをオンにする時刻が、略決まっているときには、前記第1制御スイッチのオン時刻前の所定範囲内で、前記判定手段による判定のタイミングを設定できる。
【0022】前記判定手段が温度低下を判定したときには、前記暖気運転実行手段により前記暖気運転(予熱運転)が前記通常運転の前に実行される。前記暖気運転は、前記滅菌槽の温度低下が判定されないときは、実行しない。温度低下が判定されたときは、前記暖気運転を自動的に行うようにするか、若しくはつぎに説明するように前記暖気運転の要否をオペレータが選択できるようにする。
【0023】すなわち、後者の前記暖気運転の選択を行うために、前記滅菌槽の温度低下判定時に前記暖気運転が必要であることを報知する暖気運転要報知手段と、暖気運転を省略してつぎ前記前処理工程へ移行できるようにする暖気運転選択手段を設ける。これは、どうしても滅菌完了を早めたいという要求に答えることができるようするものである。こうして前記暖気運転要報知手段と前記暖気運転選択手段を設けることにより、前記暖気運転を常に実行することがなくなり、前記通常運転の前に所定の時間を使用することによる滅菌運転終了の遅延が防止される。前記暖気運転要報知手段としては、視覚的な報知による表示手段を用いるが、聴覚な報知によるものであってもい。前記暖気運転選択手段は、前記暖気運転を省略するかどうかを選択する選択手段と、前記暖気運転実行を指示する暖気運転指示手段とを含むものであり、両手段を別に設けてもいし、前記選択手段により、前記暖気運転を省略しない方を選択したとき、自動的に前記暖気運転を実行するような構成としてもい。
【0024】前記暖気運転の後、前記扉を開いて被滅菌物を前記滅菌槽内搬入し、前記扉を閉じる。その後、第2制御スイッチ(通常運転スタートスイッチ)をオンすると、前記前処理工程,前記滅菌工程,前記後処理工程が自動的に順次実行される。
【0025】前記暖気運転が実行されるときには、前記暖気運転およ前記通常運転時における前記滅菌装置の構成要素の駆動停止開閉手順と異なる駆動停止開閉手順により前記構成要素が正常かどうかの判定を行う自己診断(詳細自己診断)を前記暖気運転時に実施することが望ましい。これは、前記滅菌槽の温度低下が判断され、前記暖気運転が実行されるのは、通常朝1番の1日で最初の滅菌作業時となることが多いが、この最初の滅菌作業時に、比較的時間を要する前記詳細自己診断のための時間を使用するのは、ユーザーにとっても許容され易く、つ1日の最初に前記自己診断を行うことで安全性が確保される。このため、前記自己診断は、前記暖気運転の回数と無関係に1日に実施する回数を,たとえば1回に限定する。前記自己診断としては、前記詳細自己診断の他に、前記暖気運転およ前記通常運転における前記滅菌装置の開閉弁等の構成要素に対して行う駆動停止開閉制御手順以外に余分な駆動停止開閉手順を追加することなく行うことができる自己診断(簡易自己診断)があり、この簡易自己診断は、前記各通常運転毎に行われる。ここで、圧力等の検出手段による検出検出結果による異常判定は、ここでいう余分な手順に含まない。前記暖気運転時の前記自己診断を行うタイミングは、好ましくは前記暖気運転の前とする。
【0026】
【実施例】以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、図1は、同実施例の概略的な平面形状配管系統の構成を説明するための図面図2は、同実施例の空気系統の構成を説明する図面、図3R>3は、図1に示す実施例における要部を拡大して説明する図面、図4〜7は同実施例の制御手順を示すフローチャート図、図8は、同実施例における蒸気の導入と排出のパターンの一例を説明する図面である。
【0027】図1において、滅菌槽1は、その周面の一つに扉4を設けた被滅菌物の出入口用の開口部1Aを設けている。前記扉4を閉じ、かつ後述のシール手段によりシールすることで前記滅菌槽1内を完全に密閉することができるように構成する。前記扉4は、図示する実施例においては、スライド式のもので、前記滅菌槽1の両側に設けたガイド兼支持部材5によって案内され、図1の紙面に対して垂直方向に移動し前記開口部1Aを開閉するように構成している。
【0028】前記滅菌槽1の外周壁には、滅菌槽加熱手段としての管状蒸気流路2を形成している。この管状蒸気流路2は、図示する実施例では、管を屈曲させて蛇行する流路を形成したものとする。前記管状蒸気流路2の一端は、蒸気発生装置3から延びる給蒸用第1配管6に接続しており、他端をドレン用第2配管7を介して後述の第3配管11に接続している。前記第2配管7にはその途中に第1スチームトラップ8および第1逆止弁(符号省略)をそれぞれ設けている。
【0029】前記管状蒸気流路2について、さらに説明すると、前記管状蒸気流路2は、前記滅菌槽1の周壁のうち、前記扉4を設けた面に隣り合う周壁について、その各表面(すなわち、4面)に沿わせ、つ接触状態に配置している。前記管状蒸気流路2を構成する管は図3R>3に示すように溶接によって固定することが望ましい。また前記管状蒸気流路2は、前記扉4を設けた面に隣り合う4つの周壁について設けてあるが、前記を設けた面に対向する側の周壁の表面にも設けてもい。また、前記滅菌槽1の周壁の少なくとも一面に設けてあればよく、また前記管状蒸気流路2は、周壁の各面において必ずしも完全に均一に配置する必要はなく、加熱を充分行うことができる状態にあればよい。
【0030】前記滅菌槽1には、さら前記蒸気発生装置3から延び、前記滅菌槽1内に連通する第4配管10を接続しており、さら前記滅菌槽1内に連通する第3配管11および給気用第5配管12をそれぞれ接続している。前記第1配管6には、給蒸用第1開閉弁13と第1蒸気圧調節弁14とを設けており、前記第4配管10には、給蒸用第2開閉弁15と第2蒸気圧調節弁16とを設けている。前記第5配管12の一端には、空気フィルタ17を接続しており、前記第5配管12の途中には第2逆止弁(符号省略)および給気用第3開閉弁18をそれぞれ設けている。
【0031】前記第3配管11は、途中で真空排気用第6配管19,排気用第7配管20およびドレン用第8配管21の3系統に分岐する。前記第6配管19には第4開閉弁22第3逆止弁(符号省略)凝縮用熱交換器30真空ポンプ23および第4逆止弁(符号省略)をそれぞれ設け前記第7配管20には排気用第5開閉弁24および第5逆止弁(符号省略)をそれぞれ設前記第8配管21には第6開閉弁25第2スチームトラップ26および第6逆止弁(符号省略)をそれぞれ設けている。前記管状蒸気流路2の下流側に接続した前記第2配管7と前記第3配管11との接続個所は、前記第8配管21の後流(出口)側としている。ここ、図1における前記各逆止弁は、矢示の方向の流れを許容し逆の流れを阻止する機能を有している
【0032】さらに、以上の構成の前記滅菌装置においては、従来同様に、前記滅菌槽1の周壁外側を周知の断熱材27によって覆ってあり、これによって放熱を防止し、熱的なロスを防止し、保温性を高めている。
【0033】制御装置28は、前記滅菌装置における暖気運転および通常運転等を制御するもので、詳細は後述する。この制御装置28には、電源スイッチ(第1制御スイッチ)SW1,スタートスイッチ(第2制御スイッチ)SW2,キャンセルスイッチ(第3制御スイッチ)SW3がそれぞれ接続されている。また、表示器HSは、前記制御装置28から出力される表示制御信号により種々の表示を行う。勿論、この表示器HSの替わりに、音声を加えた,あるいは音声のみとした報知器を用いることができる。
【0034】つぎに、前記滅菌槽1の前記開口部1Aの周辺のエアーシールに関する構成を図2にしたがい説明する。前記滅菌槽1には、前記開口部1Aを取り囲むようにその周辺に環状をなす所定深さのパッキン溝31を形成し、このパッキン溝31内に同様に環状をなすパッキン部材32を出没自在に嵌め込んでいる。このパッキン部材32における前記扉4と当接する面と逆の面(反当接側面)と、前記パッキン溝31内周面とで形成される前記パッキン溝31の空間に連通するように加圧気体供給用第9配管33を接続している。
【0035】前記第9配管33には、その上流端に気体(この実施例においては、空気)を加圧する加圧装置(コンプレッサー)34を接続している。また前記第9配管33には、前記加圧装置34と前記パッキン溝31との間に位置するように、上流側から、加圧気体タンク35,加圧空気用第7開閉弁36および第7逆止弁37をそれぞれ設けている。
【0036】さらに、前記第9配管33には、前記パッキン溝31と前記第7逆止弁37との間に、前記パッキン溝31内排気用の第10配管38の上流端を接続している。この第10配管38は、途中に第8開閉弁39第8逆止弁40をこの順に設けてあり、下流端は前記真空ポンプ23に接続している。前記真空ポンプ23は、後述するように、前記滅菌槽1内を真空排気するとともに、前記パッキン溝内の空気の排出のために用いられるもので、前記第10配管38とは別系統の前記第6配管19によって前記滅菌槽1内と接続している。前記第6配管19には、その途中に前記第4開閉弁22をて、前記第4開閉弁22と前記第8開閉弁39との開閉を切り換えることで、前記パッキン溝31内の吸引と前記滅菌槽1内の吸引とを切り替えるように構成している。
【0037】前記パッキン溝31には、第1圧力検出器44を接続しており、前記加圧気体タンク35には、第2圧力検出器45を接続している。前記第1圧力検出器44は、前記パッキン溝31内の圧力を監視するものであるから、前記パッキン溝31またはこれに連通する配管の何れかに接続してあればく、この実施例では、前パッキン溝31に直接接続している。前記第1圧力検出器44は、前記第7開閉弁36を開閉することで、前パッキン溝31内の圧力を所定範囲内に保持し、前記第2圧力検出器45は、前記加圧装置34をオンオフ制御することで、前記加圧気体タンク35内の圧力を所定範囲内に保持するために設けている。
【0038】ここで、前記第1,第2圧力検出器44,45は、この実施例においては、圧力スイッチを用いている。この圧力スイッチは、圧力が上昇して第1設定値に達するとオン状態切り替わり、圧力が低下して前記第1設定値より低い第2設定値に達するとオフ状態切り替わるものとしている。ここで前記第1,第2圧力検出器44,45は圧力スイッチでなく、圧力センサを用いて、前記制御装置28にて設定値かどうかを判定するように構成できることは言うまでもない。この実施例において、前記第1圧力検出器44の第1設定値は、前記滅菌槽の気密保持をうために、前記パッキン部材32を前記扉4に確実に押し付けることができる加圧空気の供給圧力,あるいはそれより若干高い圧力とする。
【0039】前記滅菌槽1内の圧力を検出する第3圧力検出器46は、この実施例では圧力スイッチではなく、圧力センサとして構成される。この第3圧力検出器46は、前記滅菌槽1内の圧力を監視するとともに、第1開閉弁13の制御のための圧力を検出するためのものである。温度検出器47は、前記滅菌槽1内上部の温度を監視するものである。前記加圧装置34,前記第7開閉弁36,前記第8開閉弁39,前記真空ポンプ23,前記第1圧力検出器44,前記第2圧力検出器45,前記第3圧力検出器46および前記温度検出器47は、前記制御装置28にそれぞれ接続されている。前記制御装置28は、図4〜図7に示すような処理手順を記憶させた記憶装置およびこの処理手順を実行する演算処理装置を含み、前記第1圧力検出器44,前記第2圧力検出器45等からの検出信号を入力し、前記加圧装置34,前記第7開閉弁36,前記第8開閉弁39,前記真空ポンプ23等の制御信号を出力するとともに、前記表示器HSに対して警報信号等の各種表示信号を出力する。
【0040】以上のような構成の実施例の動作を主に図4R>4〜図7にしたがい説明する。ここで、以下の説明において、前記各開閉弁はその動作を明記してなければ基本的に閉じているものとする。
【0041】図4のステップS1において、前記電源スイッチSW1がオンかどうかを判定する。NOの場合は、このステップS1に留まる。YESの場合は、ステップS2へ移行し、前記電源スイッチSW1が前回オフになってから今回オンになるまでの時間が、所定の設定時間T0(たとえば、3時間)以上かどうかを判定する。
【0042】YESの場合は、ステップS4へ移行し、暖気(予熱)運転が必要であることの表示,たとえば「暖気運転要」の表示を前記表示器HSにて行い、ステップS5へ移行する。このステップS5では、前記キャンセルスイッチSW3が操作(オン)されたかどうかを判定する。前記キャンセルスイッチSW3がオンでない場合は、ステップS6へ移行し、前記スタートスイッチSW2がオンかどうかを判定する。前記キャンセルスイッチSW3はオペレータが暖気運転を省略して通常運転移行する場合にオンにするスイッチである。今、キャンセルスイッチSW3をオンにせずに、前記スタートスイッチSW2をオンにしたとすると、前記ステッS6でYESが判定され、ステップS7へ移行する。このステッS7では、図5に示すような前記滅菌装置の詳細自己診断が実施される。ここで、自己診断は、扉4の閉鎖が条件となるので、前記ステップS6では前記扉4の閉鎖の確認も行う。また前記ステップS6における前記スタートスイッチSW2のオン操作は暖気運転実行の指示を意味する。
【0043】この実施例の滅菌装置が行う自己診断としては、詳細自己診断と簡易自己診断とがる。前記詳細自己診断は、暖気運転および通常運転における前記滅菌装置の開閉弁等の構成要素に対して行う駆動停止開閉手順以外に特別な制御を追加して行う自己診断である。詳細自己診断は、1日に実施される回数を1回とするものであり、たとえば暖気運転が2回行われても、1日で最初の暖気運転時のみ実施する。前記詳細自己診断の手順の一例は、図5および図6に示すようなものである。また前記簡易自己診断は、暖気運転および通常運転における前記滅菌装置の開閉弁等の構成要素に対して行う駆動停止開閉手順以外に特別な制御を追加することなく行うことができる自己診断である。この手順の一例は、図7に示すようなものである。
【0044】図5において、前記詳細自己診断は、給蒸ラインチェックのステップ20,パッキンライン詳細チェックのステップ30および槽内気密リークチェックのステップ40を順次行うものである。ここで、図8R>8のパッキンラインチェックの工程において、前記ステップ20および前記ステップ30の処理を行い、リークチェックの工程にて、前記ステップ40の処理を行う。
【0045】前記ステップ20は、前記第2開閉弁15の異常チェック等を含み、つぎのようにして行われる。
(1) ず、前記電源スイッチSW1をオンにし、前記第2開閉弁15およびその上流側の元蒸気弁(図示しない)を閉じた状態で、前記第2開閉弁15の上流側に設けた元蒸気温度センサ(図示しない)の温度が所定値(たとえば、118)以上かどうかを判定し、NOであれば元蒸気異常と判定し、前記表示器HSに表示する。
(2) この(1) における判定がYESの場合、前記第2開閉弁15および前記元蒸気弁を開き、前記第3圧力検出器46による前記滅菌槽1内の検出圧力が所定時間内に所定値まで上昇するかどうかを判定する。
(3) この判定がNOの場合、前記元蒸気温度センサの温度が前記所定値以上かどうかを判定し、YESの場合は、前記第2開閉弁15異常の表示を行い、NOの場合は、元蒸気異常の表示を行う。
(4) (2) の検出圧力上昇の判定で、YESとなると、前記元蒸気温度センサの温度が前記所定値以上かどうかを判定し、YESであれば全て正常として処理を終え、NOの場合は、前記元蒸気温度センサの不良と判断し、表示する。
【0046】つぎに、前記ステップ30は、前記第1,第2圧力検出器44,45が不良かどうかの判定前記各開閉弁36,39の固着,前記パッキン部材32の劣化,前記パッキン部材32の汚れの判定等を行うものである。前記パッキン部材32の劣化および汚れの判定は、たとえば図6のような手順にて行われる。これを以下に説明する。
【0047】前記加圧装置34を停止して初期の状態とし(ステップ51)、前記第7開閉弁36およ前記第8開閉弁39を開くことにより(ステップ52)、前記パッキン溝31および前記加圧気体タンク35を第10配管38を介して大気と連通させ、前記加圧タンク35内の圧力を大気と同一としておく。このとき、前記真空ポンプ23は、停止状態では吸気口と排出口とが大気と連通状態にあるものとする。つぎに、前記第7開閉弁36を閉じ、前記加圧装置34を起動する(ステップ53)ことにより、前記第2圧力検出器45の圧力検出信号に変化がるかどうかを検出する(テップ54)。
【0048】そして、前記第7開閉弁36を開くとともに、前記第8開閉弁39を短時間閉じ(ステップ)、前記第1圧力検出器44の圧力検出信号に変化を検出する(ステップ56)。この実施例では、前記第1,第2圧力検出器44,45における圧力が前記第1設定値以上に上昇すればオン状態の信号が出力され、それ以下であればオフ状態の信号が出力される。つぎに、ステップ57の判断Aにおいて、前記第1,第2圧力検出器44,45の出力信号が変化した場合には、前記加圧装置34,前記第7開閉弁36および前記第1,第2圧力検出器44,45は正常と判断し、前記パッキン部材32の異常を検出するステップS60へ移行する。
【0049】前記ステップ57の判断Aにおいて、第1,第2圧力検出器44,45の全ての出力信号が変化しない場合には、前記加圧装置34の不良,あるい前記第7開閉弁36の不良と判断し、前記表示器HSに警報信号を出力表示して待機状態に入る(ステップ58)。また、どれか1つの圧力検出器44,45の出力信号が変化した場合には、変化しない圧力検出器の不良と判断し、警報信号を出力して待機状態に入る(ステップS58)が、前記第1圧力検出器44の出力信号のみが変化した場合には、前記第2圧力検出器45が不良と判断し、前記滅菌装置の全作業終了後に警報信号を出力するように記憶し(ステップ59)、ステップ0へ移行する。以上の処理手順は、前記パッキン部材32の異常の検出に先立って、他の機器が正常かどうかを判断するためのものである。
【0050】前記処理により、前記加圧装置34,前記第7開閉弁36,前記第1圧力検出器44,前記第2圧力検出器45等の他の機器が正常であることを確認した後、前記加圧装置34を作動させ、前記第7開閉弁36を閉じる(ステップ60)。この状態では、前記第8開閉弁39は、前記ステップ55で閉じた状態となっているため、前記パッキン溝31は空気加圧源および排気口(大気中)から遮断状態となる。
【0051】この後は、前記第1圧力検出器44によって、前記パッキン溝31内の圧力の変化を監視し、この圧力が前記第1設定値から前記第2設定値に達するまでの時間を計測する(ステップ61)。つぎステップ62の判断Bにおいては、前記パッキン溝31内の圧力が予め設定した設定時間内に前記第2設定値に低下した場合、前記パッキン部材32の異常と判断し、それ以外の場合には、前記パッキン部材32に異常はないものと判断し、ステップ64へ移行する。前記パッキン部材32の異常が検出された場合には、その旨の警報信号を前記表示HS出力する(ステップ63)。
【0052】ここで、前記ステップ62の判断Bの基準となる所要時間はT01,T02(0<T01<T02)の2つの値に設定し、前記第2設定値まで変化する所要時間が、短い方の所要時間T01よりも短ければ、前記パッキン部材32の劣化が激しいものとして、「パッキン交換」等の警告を出力し、長い方の所要時間T02より短く、短い方の所要時間T01よりも長い場合には、前記パッキン部材32の汚れによるものと判断し、「掃除」等の警告を出力する。所要時間が長い方の所要時間T02以上の場合には、前記パッキン部材32は正常なものと判断する。
【0053】つぎステップ64において、前記第7開閉弁36を開き、前記第9配管33を通して前記加圧気体タンク35と前記パッキン溝31とを連通させる。これにより、加圧空気により前記パッキン部材32が押し出されて前記扉4に圧接し、前記滅菌槽1と前記扉4との間の気密封止を行う
【0054】ここで、前記詳細自己診断との対比のために、図4におけるステップ10の通常運転毎に行う前簡易自己診断について、図7にしたがい説明する。簡易自己診断の一例としては、前記第7開閉弁36を開いて前記パッキン溝31加圧空気を供給する度に、また前記第8開閉弁39を開き前記第7開閉弁36を閉じて前記パッキン溝31の加圧空気を排出する度に、記第1圧力検出器44およ前記加圧装置34の異常をチェックするものである。
【0055】前記簡易自己診断においては、圧力検出と異常判定の処理手順は付加されるが、前記各開閉弁の開閉,前記真空ポンプ23およ前記加圧装置34の駆止の操作は、自己診断のために変更追加されておらず、自己診断のために要する時間は殆どかからない。なわち、ステップ71にて前記第7開閉弁36を開き、前記加圧気体タンク35から前記パッキン溝31加圧空気を供給する。
【0056】いで、ステップ72にて、前記第1圧力検出器44がオフからオンへ変化したかどうかを判定する。NOの場合は、ステップ73へ移行し、前記第2圧力検出器45が、オンオフかを判定し、オンの場合は、ステップ75にて前記第1圧力検出器44不良を表示する。オフの場合は、ステップ74にて前記加圧装置34の異常を表示する。前記ステップ72にてYESが判定されると、前記第1圧力検出器44およ前記加圧装置34は正常と判断する。つぎに、ステップ81にて前記第7開閉弁36を閉じ、前記第8開閉弁39を開き、前記真空ポンプ23をオンにする。いで、ステップ82にて、前記第1圧力検出器44がからオフへ変化したかどうかを判定する。NOの場合は、ステップ83へ移行し、前記第1圧力検出器44の異常を報知し、YESの場合は前記第1圧力検出器44は正常と判定する。
【0057】つぎに、図前記ステップS40は、滅菌槽1のリークチェックと前記第3圧力検出器47のチェックを含む。
【0058】具体的には、前記滅菌槽1のリークチェックは、つぎのようにして行う。すなわち、前記パッキン部材32と前記扉4と密着状態を含め、前記滅菌槽1が気密に保たれているかどうかを判断する。前記扉4を閉じ、前記第8開閉弁39を閉じ、前記第4開閉弁22を開いた状態で一定時間前記真空ポンプ23を運転し、滅菌槽1内部が所定の負圧状態に到達するかを検出する。いで、前記第4開閉弁22を閉じ、前記真空ポンプ23を停止して、前記滅菌槽1内の圧力の変化を前記第3圧力検出器47にて検出する。すなわち、前記滅菌槽1内が一定時間内に所定の負圧状態に達した場合、第4開閉弁22を閉鎖し、前記真空ポンプ23停止後に圧力に変化が無ければ、正常と判断する。この圧力に変化がれば、前記滅菌槽1に漏れが生じていることになり、前記パッキン部材32と前記扉4との密着状態に異常がるか、前記第4開閉弁22やその他の開閉弁に不具合が発生しているものと判断する。一方、前記滅菌槽1内が一定時間内に所定の負圧状態に達しなかった場合、前記第4開閉弁22を閉鎖し、前記真空ポンプ23停止後の圧力変化が所定の値以下であれば、前記真空ポンプ23の能力低下などの異常と判断し、圧力変化が所定値以上であれば、前記と同様に前記パッキン部材32と前記扉4との密着状態に異常がるか、前記第4開閉弁22やその他の開閉弁に不具合が発生しているものと判断する。
【0059】また前記第3圧力検出器47のチェックは、つぎのようにして行う。前記滅菌槽1内のリークチェック時、検出圧力の変動が所定値(たとえば、0.2Kg/cm2)以上あるかどうかを判定し、YESの場合正常と判定し、NOの場合異常と判定する。
【0060】図4において、前記自己診断を終えると、ステップS8へ移行して、暖気運転が行われる。この暖気運転は、つぎのようにして行われる。前記蒸気発生装置3からの蒸気を前記第1配管6を介して前記管状蒸気流路2内供給するとともに、前記第4配管10を介して前記滅菌槽1内供給する。前記滅菌槽1内への給蒸は、図8に示すように、前記第2開閉弁15を開いて滅菌槽1内へ蒸気を導入し、所定の圧力(約2乃至3気圧)まで蒸気を供給した後、前記第5開閉弁24を開き蒸気を前記滅菌槽1外へ排出する。こうした正圧パルス状の蒸気圧力制御により、前記滅菌槽1の予熱と記滅菌槽1内の洗浄が行われる。いで、前記第5開閉弁24を閉じ、前記第2開閉弁15を開いて、前記滅菌槽1内へ蒸気を所定圧まで再度導入し、この所定圧を一定時間保持する。この所定圧の保持は、前記第2開閉弁15のオンオフ制御により達成される。これにより、滅菌槽1の予熱が一層効果的となる。ここでこの暖気運転は、通常運転の1時間に対して約20分間実施される。また前記滅菌槽1内への蒸気の導入排出は、種々の方式を採用することができる
【0061】このように、前記滅菌槽1および前記管状蒸気流路2蒸気を供給することにより、前記滅菌槽1は、周壁の内外側から加熱されるとともに、前記扉4は、内面側から加熱される。そして、前記滅菌槽1およ前記扉4の温度が上昇した状態で、前記第2開閉15を閉じ、前記滅菌槽1への給蒸を停止した後、前記真空ポンプ23を起動させるとともに前記第4開閉弁22を開く。これにより、前記滅菌槽1内の蒸気を前記第3配管11から排出し、前記第3開閉弁18を開いて、前第5配管12から前記空気フィルタ17を介して前記滅菌槽1内空気を導入する。その結果、前記滅菌槽1内の蒸気排出と前記滅菌槽1内の真空乾燥が行われる。この際、前記第1開閉弁13はそのままの状態とし、記管状蒸気流路2への蒸気の導入を継続することにより、前記滅菌槽1は前記設定温度で保温される。
【0062】こうした暖気運転の実施により、つぎのような作用効果を発揮する。前記滅菌槽1の予熱と前記滅菌槽1内の洗浄が同時に行われ、結果として通常運転を早く終了できる。前記滅菌槽1内の洗浄について説明する、長時間前記電源スイッチSW1がオフ状態とされ、前記滅菌装置が使用されずにおかれた場合に生じる前記滅菌槽1内の汚染が、前記滅菌槽1内への蒸気導入と、前記滅菌槽1からの蒸気排出により除去され、前記滅菌槽1内をクリーンな状態にすることができる。
【0063】この暖気運転が終了すると、ステップS9へ移行する。ここでこのステップS9の前にオペレータは前記扉4を開いて、被滅菌物を前記滅菌槽1内へ搬入し、再び前記扉4を閉める。前記ステップでは、前記扉4が閉鎖という条件下で、前記スタートスイッチSW2がオンかどうかを判定する。NOの場合は、前記ステップS9に留まり、YESの場合は、ステップへ移行し、通常運転が実施される。
【0064】この通常運転は、図8に示すように、前処理工程滅菌工程後処理工程の順で行う。ず、前記前処理程においては、前記第2開閉弁15を開いて第4配管10から前記滅菌槽1内蒸気の導入を行う。この状態では、前記管状蒸気流路2内は蒸気が導入されているため、前記滅菌槽1の内側壁からの輻射熱によっても、前記滅菌槽1内の被滅菌物が予熱される。前記前処理程の際、初期の段階では、図8に示すように、前記第5開閉弁24を一定の時間開いておいてもよい。すなわち、蒸気を前記滅菌槽1内導入し、そのまま排出する(所謂パージ操作)ことにより、比重の大きい空気は、比重の小さい蒸気によって上方から下方に押し込まれるようにして、前記第3配管11向かい、記第7配管20を経て排出される。
【0065】前記空気と蒸気の比重差を効果的に利用するには、蒸気を前記滅菌槽1の上方から導入し、前記滅菌槽の下方から排出する構成とするのが望ましい。に、蒸気の導入に際して、ディフューザ等の拡散手段を用いて、前記滅菌槽1全体に蒸気を分散してまんべんなく供給することにより、空気を均一に押し出し、所要時間の短縮を図ることができる。
【0066】以上のパージ操作を一定時間行った後、第5開閉弁24を閉じると、前記滅菌槽1内の圧力は、導入される蒸気により、時間の経過とともに図8に示すように上昇する。この蒸気の供給は、前記滅菌槽1内が所定の圧力(2乃至3気圧)となるまで継続して行い、この圧力に到達した時点で、前記第2開閉弁15を閉じ、前記第5開閉弁24を開放し、蒸気を排出する。この排出の際には、前記滅菌槽1に残留する空気が再び蒸気によって押し出されるようにして排除される。そして、前記滅菌槽1内部の蒸気が略排出され、前記滅菌槽1内の圧力が略大気圧となった時点で、前記第5開閉弁24を閉じ、前記と同様の手順で蒸気の導入および排出を行う。この蒸気の導入と排出の繰返しにより、前記滅菌槽1内,さらに被滅菌物内に取込まれている空気の排除を行う。この蒸気の排出および蒸気導入を交互に数回繰り返し行うことで、被滅菌物中に含まれる空気まで十分に排出し、後の滅菌程における蒸気の加熱むら等を軽減する。
【0067】このように蒸気の導入および排出は、前記第2開閉弁15および前記第5開閉弁24の開閉操作のみによって行うことができるため、従来のように空気を排出するための真空吸引手段を必ずしも必要としない。ここで前記真空ポンプ23を使用する場合には、前記滅菌槽1からの排気の際に、前記滅菌槽1内が大気圧となる前に前記第4開閉弁22を開放し、前記真空ポンプ23を作動させることにより、この排出の時間を短縮することができる。
【0068】つぎの滅菌程においては、前記第5開閉弁24を閉じ、前記第2開閉弁15を開くことにより、前記第4配管10を通して、前記滅菌槽1内に高温高圧の蒸気を充満させる。この後、前記滅菌槽1内が設定滅菌温度(圧力)になった時点で滅菌程に入る。
【0069】所定の滅菌時間後、前記第2開閉弁15を閉じて前記滅菌槽1内への給蒸を停止し、前記第5開閉弁24を開いて前記第7配管20から前記滅菌槽1内の蒸気を排出する。そして、前記滅菌槽1内の圧力を大気圧近くまで下げた後、被滅菌物の乾燥を行う後処理程に入る。
【0070】つぎの後処理工程においては前記第4開閉弁22を開いて前記真空ポンプ23を駆動することにより、前記配管19を通して前記滅菌槽1内を減圧し、被滅菌物の湿気を排除する(真空乾燥)。いで前記第3開閉弁18を開き、前記空気フィルタ17を通して清浄な空気を前記滅菌槽1内導入する。
【0071】この後処理程終了後は、前記第3開閉弁18を開いて、前記滅菌槽1を前記空気フィルタ17を介して外部と通じさせ、大気圧と同圧にする。以後、記管状蒸気流路2への給蒸は、継続して行って、前記滅菌槽1を所定の温度に保温することによって、再度の滅菌作業時に前記滅菌槽の予熱時間を省略することができる。この後、前記を開いて被滅菌物を取り出し、前記通常運転を終了する。
【0072】図4の前記ステップS5において、前記キャンセルスイッチSW3のオンが判定されると、ステッ11へ移行し、前記スタートスイッチSW2がオンかどうかを判定する。前記スタートスイッチSWが判定されると、ステップ12へ移行し、前記ステップS7と同じ自己診断を実施した後、前記暖気運転を実行することなく、前記ステップS10の通常運転へ移行してこれを実施する。このように前記暖気運転の省略により、前記通常運転の完了を早めることができ、急ぎの滅菌作業を必要とするとき有効となる。
【0073】前記ステップにおいて、前記電源スイッチSW1のオフからオンまでの時間が設定時間以内のときは、ステップS3へ移行して、前記管状蒸気流路2へ給蒸する加熱管給蒸の処理を行う。ここでは、前記蒸気発生装置3から、前記第1配管6を通して前記管状蒸気流路2蒸し前記滅菌槽1の槽を加熱する。いで、前記ステップS9を経て前記ステップ10へ移行して前記通常運転を実施する。
【0074】以上の説明においては、前記滅菌槽1内への蒸気の導入は、所定の圧力に到達した時点で終了、排気移っているが、図8に二点鎖線で示すように、蒸気を所定圧力まで導入した後、この圧力を一定時間保持するように供給してもよい。また、図4において、加熱管給蒸処理の前記ステップS3を省略し、その代わりに、加熱管給蒸処理のステップを前記ステップS1と記ステップS2との間に設けてもく、また前記ステッS5と前記ステップ11との間に設けてもい。
【0075】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、前記滅菌槽の温度低下が判定されたとき、前記通常運転の前に前記暖気運転が実施されるので、前記滅菌槽の予熱効果的に短時間で行うことができるとともに、前記滅菌槽内の洗浄同時に行うことができ、結果として前記通常運転の終了を早めることができる。前記滅菌槽の温度低下が判定されないときには、前記暖気運転は行われないので、不必要な前記暖気運転を防止できる。
【0076】また、請求項2に記載の発明によれば、オペレータが前記暖気運転を必要としないと判断したときには、前記暖気運転を行わず、前記通常運転へ移行でき、滅菌完了までの時間を短縮できる。
【0077】また、請求項3に記載の発明によれば、滅菌槽の温度低下を、電源のオフからオンまでの時間長さにより判定でき、前記滅菌槽の温度低下検出のための素子を別個に設ける必要がない。
【0078】また、請求項4に記載の発明によれば、滅菌槽加熱手段を前記管状蒸気流路としており、比較的熱容量が小さくなっても、前記滅菌槽内へ蒸気を直接導入するようにしているので、前記滅菌槽の予熱を効果的に行うことができるとともに、前記滅菌槽の構成を軽量小型化できる。
【0079】さらに、請求項5に記載の発明によれば、前記暖気運転およ前記通常運転時における前記滅菌装置の構成要素の駆動開閉手順と異なる手順により前記構成要素が正常かどうかの判定を行う自己診断を前記暖気運転時に実施するものであるから、前記自己診断により安全性を確認した上で、前記通常運転移行するので、安全性の高い滅菌装置の運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る滅菌装置の一実施例の概略的な平面形状配管系統を説明するための図面である。
【図2】この発明に係る滅菌装置の一実施例の概略的な空気系統の構成を説明するための断面図である。
【図3】図1に示す実施例における要部を拡大して説明するための図面である。
【図4】この発明に係る滅菌装置における処理手順を説明するためのフローチャート図である。
【図5】図4の要部の詳細を示すフローチャート図である。
【図6】図5の要部の詳細を示すフローチャート図である。
【図7】図1に示す実施例の他の処理手順を示すフローチャート図である。
【図8】この発明に係る滅菌装置における蒸気の導入と排出のパターンの一例を説明するための図面である。
【符号の説明】
1 滅菌槽
1A 開口部
管状蒸気流路
3 蒸気発生装置
4 扉
28 制御装置
31 パッキン溝
32 パッキン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 滅菌槽と、この滅菌槽を加熱する滅菌槽加熱手段と、前記滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する通常運転を実行する制御手段とを備えた滅菌装置において、前記制御手段は、前記滅菌槽の温度低下を判定する判定手段と、この判定手段が温度低下を判定したとき、前記滅菌槽加熱手段へ蒸気を供給すると同時に、前記滅菌槽内へ蒸気を導入し、前記滅菌槽内の蒸気を真空吸引して排出する暖気運転を前記通常運転の前に実行する暖気運転実行手段とを備えたことを特徴とする滅菌装置。
【請求項2】 滅菌槽と、この滅菌槽を加熱する滅菌槽加熱手段と、電源の投入を制御する第1制御スイッチと、通常運転の開始を制御する第2制御スイッチと、前記第1制御スイッチおよび第2制御スイッチのオン時に前記滅菌槽内の被滅菌物を滅菌する通常運転を実行する制御手段とを備えた蒸気滅菌装置において、前記制御手段は、前記第1制御スイッチのオン時に前記滅菌槽の温度低下を判定する判定手段と、この判定手段が温度低下を判定したとき、前記滅菌槽加熱手段へ蒸気を供給すると同時に、前記滅菌槽内へ蒸気を導入し、前記滅菌槽内の蒸気を真空吸引して排出する暖気運転が必要であることを報知する暖気運転要報知手段と、前記暖気運転を実行するか省略するかを選択する暖気運転選択手段と、この暖気運転選択手段により前記暖気運転の実行が選択されたとき、前記通常運転の前に前記暖気運転を実行する暖気運転実行手段とを備えたことを特徴とする滅菌装置。
【請求項3】 前記判定手段が、電源のオフからオンまでの時間が所定時間以上であるかどうかを判定して前記滅菌槽の温度低下を判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の滅菌装置。
【請求項4】 前記滅菌槽加熱手段が、前記滅菌槽の周壁に設けた加熱用の管状蒸気流路からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の滅菌装置。
【請求項5】 前記制御手段が、前記暖気運転および前記通常運転時における前記滅菌装置の構成要素の駆動停止開閉手順と異なる駆動停止開閉手順により、前記構成要素が正常かどうかの判定を行う自己診断を前記暖気運転時に実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の滅菌装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【特許番号】特許第3414167号(P3414167)
【登録日】平成15年4月4日(2003.4.4)
【発行日】平成15年6月9日(2003.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−303908
【出願日】平成8年10月29日(1996.10.29)
【公開番号】特開平10−127740
【公開日】平成10年5月19日(1998.5.19)
【審査請求日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(391010219)株式会社三浦研究所 (1)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−97362(JP,A)
【文献】特開 平3−210267(JP,A)
【文献】特開 平6−102908(JP,A)
【文献】特開 平2−114964(JP,A)
【文献】特開 平4−58955(JP,A)
【文献】特開 昭59−160462(JP,A)
【文献】特開 昭62−292164(JP,A)
【文献】特開 昭59−51852(JP,A)
【文献】特開 昭59−57657(JP,A)
【文献】特開 昭63−311959(JP,A)
【文献】実開 昭62−87641(JP,U)
【文献】実開 昭48−93696(JP,U)
【文献】実開 昭57−139340(JP,U)
【文献】実開 平4−128747(JP,U)
【文献】特公 昭64−3503(JP,B2)
【文献】実公 昭31−18797(JP,Y1)
【文献】実公 昭62−35483(JP,Y2)
【文献】実公 平4−31069(JP,Y2)
【文献】特許12668(JP,C2)
【文献】登録実用新案11273(JP,Z2)