滑り・躓きの評価方法とその試験装置
【課題】人間の動作における滑りについて、人が静止し、全体重がかかった状態から踏み出す際の滑りを評価するとの観点だけでなく、人の歩行動作にともなう静摩擦係数から動摩擦係数の連続的な測定を可能として、一歩踏み込んだ際に、体重が十分に乗り移らない状態での滑り現象の評価を可能とする滑り試験機を提供する。
【解決手段】床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速度を設定し、あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させ、床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定する。
【解決手段】床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速度を設定し、あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させ、床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材と靴底もしくは床材と素足間等の滑り性や躓き性を評価する方法とそのための試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室や、雨天時のエントランスや路上、階段など濡れた床面等で、人が歩行時に滑り転倒する事故が多数発生しており、高齢化社会を迎えた近年においてその事故数は増加傾向にある。滑り転倒事故を防止・抑制するための靴や床材の開発が鋭意行われているが、性能面で優れた製品が少なく、設計・施工・運用方法も確立されているとは言えない。
【0003】
このような状況に対応するためには、まずは、滑りおよび躓きによる転倒事故の防止・抑制の前提となる「滑り」および「躓き」の評価手段を確立しておくことが必要となる。その背景には、日本国内はもとより、世界的にも評価手段の統一化が実現されていないことと、最も実際的に合理的で妥当性のある評価方法についての科学技術的な検討が深化されていないという事情がある。
【0004】
たとえば評価手段として、従来より知られている英国式(振り子式)ASTM E303で用いる試験機においては振り子の先端に滑り試験片を付け、床上で滑らせた際に損失するエネルギーから滑り抵抗を算出する機構になっているが、試験片部が動く軌跡や速度、試験片にかかる荷重、試験片の材質などの仕様は実際の人間の動作や滑り時の試験片にかかる荷重や材質と相関を考慮に入れたものではなく、自動車の滑りを測定することを目的として道路面とタイヤの間で生じる滑り抵抗を主眼においたものであった。このため、人間の動作にともなう滑りとの対応性を欠いていると言わざるを得ない。
【0005】
一方、日本国内における滑り性を評価する代表的な滑り試験機としては、JIS
A 1454にも規定されている東工大式すべり試験機(以下O−Y PSMとする)が知られている。この試験機によれば、人間の動作における滑りについての検討が一面的ではあるが客観的に可能になったと言える。実際、本発明者らによって、この試験機での評価を踏まえたノンスリップ性人造石の開発も実現されている(特許文献1)。
【0006】
ただ、その後の更なる検証によれば、このO−YPSMによる評価方式は、最大静止摩擦係数を測定することを可能とするが、一元的な断面で評価するものであって、人が静止し、全体重がかかった状態から踏み出す際の滑りを模擬的に評価するのに向いているものの、一歩踏み込んだ際に、体重が十分に乗り移らない状態で、滑る現実的に起こっている現象を必ずしも適切に評価できないという改善されるべき点がある。つまり、人の歩行動作に発生する滑り時の動摩擦係数が測定、評価できないという問題がある。
【0007】
従って、滑って転倒し、最悪の場合、死に至る滑りが、多くの場合、軸足側でなく踏み出した側の足で、十分に体重移動する前に滑りを生じていることを考慮すると、その現象を再現した状況で評価することは非常に重要な課題である。また、人の歩行動作にともなう平面上での床つまずきについても実際に沿っての評価が必要とされているが、国際的に見てもその評価手法を論じた文献は見当たらない。
【特許文献1】特許第3975234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のとおりの背景から、人間の動作における滑りについて、人が静止し、全体重がかかった状態から踏み出す際の滑りを評価するとの観点だけでなく、前記のように、人の歩行動作にともなう静摩擦係数から動摩擦係数の連続的な測定を可能として、一歩踏み込んだ際に、体重が十分に乗り移らない状態での滑り現象の評価を可能とする新しい滑り試験機を提供することを課題としている。そして、実際のすべり時の現象を再現し、床材のすべり性を的確に評価し、すべり対策として有効な床材の開発に寄与することを目的としている。また、床に極端に滑り性が欠如している場合、つまり摩擦係数が大きすぎる場合には躓き転倒の原因になることからも、この床の躓きに係わる床滑り性の評価のための新しい手段を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の滑り・試験装置は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
<1> 床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速度を設定し、あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させ、床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定する滑り・躓きの評価方法。
<2> 鉛直方向の載荷範囲を1〜800N(ニュートン)とし、鉛直方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
<3> 水平方向の押し、または引張りによる力の範囲を10〜2000N(ニュートン)とし、水平方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の評価方法。
<4> 滑りの評価時において、床材面には、あらかじめ滑りの要因となる液体介在物を塗布しておく上記いずれかの評価方法。
<5> 床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価するための試験装置であって、試験開始直前まで試験片を床材面から離しておき、試験開始時にはあらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させることのできる試験片保持・入射手段と、試験片に対しての鉛直力付加のための鉛直駆動手段と水平力付加のための水平駆動手段、並びに床材が試験片から受ける鉛直力と水平力の測定手段とを備え、鉛直駆動手段によって試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の床材に掛かる荷重速度並びに水平駆動手段による水平方向の速度と加速度を設定し、前記測定手段によって床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定可能とする機構を備えている。
<6> 上記試験装置だけでは、鉛直手段が錘、空気圧、油圧、またはサーボモータ駆動力による。
<7> 鉛直方向の載荷範囲が1〜800N(ニュートン)および荷重速度範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)である。
<8> 水平方向の押し、または引張りによる水平駆動手段がサーボモータまたはリニアアクチュエータを用いたプログラム制御によるものである。
<9> 水平力が10〜2000N(ニュートン)の範囲で、水平方向荷重速度の範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)である。
<10> 試験片と錘(鉛直力)との間に制振材を介することにより試験片が床材面に接地する際の衝撃を吸収緩和する機構を備えている。
<11> 床材面下側や側面に床反力計またはロードセルを設置し、3次元方向の反作用を測定機構を備えている。
<12> 錘(鉛直荷重)と試験片の間にロードセルを設置し、鉛直方向の反作用を測定する。
<13> 水平駆動手段において、試験片配設部との連結中間部にロードセルを介することにより摩擦力(水平方向抵抗力)に応じて水平駆動手段による作用を制御する機構を備えている。
<14> 水平駆動手段において、試験片を含む錘全体との連結中間部にバネを介することにより水平方向駆動の荷重速度を可変させる機構を備えている。
<15> 試験片を含む錘全体の重心に応じて水平方向駆動の作用点を高さ方向に変更できる機構を備えている。
有することを特徴とする請求項5から14のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
<16> 試験片保持・入射手段は、入射角が任意に設定でき、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく入射することのできる入射調整手段を備える案内板を有し、案内板形状を可変とすることにより試験片の床材面への入射軌跡を案内板の形状に沿ったものとする機構を備えている。
<17> 案内板の傾斜角を調整することで鉛直方向の荷重速度を任意に設定変更可できる機構を備えている。
<18> 力点、作用点、力の方向が同一直線上にある水平駆動手段を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、前記のとおり、床材面に対しての試験片を、鉛直力と水平力の付加とをもって滑りや躓きを評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と、接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速を設定し、床材が試験片から受ける鉛直力と、水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きリスクを判定する滑り・躓きの評価方法とそれを実施可能するための装置を提案している。
【0011】
このような、本発明によれば、歩行時の滑りや躓きに関係する床面の状態や性質を、実際の人の歩行動作における静摩擦係数と定速度移動時の動摩擦係数の測定をもって評価可能としている。
【0012】
本発明の装置によれば、滑りや躓きの防止、抑制を図ることのできる床材そのものの開発のための評価の基準とその方法の確立に大きく前進することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記の特徴を有する本発明の実施の形態について、説明する。ここで、本発明に係わる用語とその定義について若干の説明を行うと以下のとおりである。
1)鉛直力
床材面が試験片から受ける床材面に対し垂直方向(90度)の力
2)水平力
床材面が試験片から受ける床材面と同一方向(0度)の力
3)摩擦係数
水平力を鉛直力で除した値
4)試験片
評価試験に用いる素足裏の代替物やくつ底材もしくはその代替物等。
5)鉛直荷重速度
床材面に対してかかる単位時間当たりの鉛直力
本発明の滑り・躓きの評価方法においては、その手順として、以下のとおりとなる。
<A>試験片を床材面から浮かせた待機状態とする。
<B>あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させる。
【0014】
この入射接地に際しては、試験片の床材面に対しての、
(B−1)接地までの鉛直方向の速度、
(B−2)接地後の鉛直荷重速度、
(B−3)水平方向の速度、
(B−4)水平方向の加速度、
をあらかじめ設定しておく。
<C>水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定する。
【0015】
上記<B>での試験片の入射角や、(B−1)(B−2)(B−3)(B−4)の要件の認定では、人の移動(歩行)動作や床材面への接地状態、たとえば素足裏であるのか、どのような靴底であるのか等の実態に沿ってたとえば後述の具体例のように、任意に設定することができる。
【0016】
鉛直力に関わる鉛直方向の載荷範囲としては、通常は、1〜800Nとして、荷重速度については0.1〜20N/msとすることが好適に考慮される。一方、水平力に係わる押し、または引張による力の範囲は、10〜200N、荷重速度は0.1〜20N/msとするのが好適に考慮される。
【0017】
なお、床材面には、あらかじめ滑りの要因となる水や油、あるいは石けん水等の液体介在物を塗布しておいてもよい。これらの介在物が存在する場合の床材面の評価が可能になる。
【0018】
そこで、以下により具体的な例示をもって説明する。
<滑りの評価>
試験片の動作は、たとえば、図1および表1にその概要を示すことができる。
【0019】
表1で、具体的に例示している条件、つまり鉛直力や水平力、動作速度・加速度、荷重速度に係わる条件は、65歳以上の被験者15人について、すべり易い床材面上で実際に素足歩行してもらい、足の踏み出し時〜滑った瞬間までの各々の連続的な実測データから導いた値を用いている。
【0020】
被験者による滑り時の連続的な実測データより、滑り動作は図1に対応する表1に示す条件としている。実際に滑りが発生した被験者動作(平均)は図1の1から5までの大きく5段階で推移しており、足の踏み出し時〜滑った瞬間までの間において速度は0になること(止まる)なく動作が繋がっている。そして、たとえば素足裏の代替物としての図2に示す形状の滑り試験片(硬度50のシリコンゴム)を図3にその概要を示した一実施形態の滑り試験装置に取り付ける。そして、図1及び表1に示す条件での動作を忠実に再現し、動作開始から終了にかけて代替石鹸(25wt%ポリビニルアルコール水溶液)が塗布された床材A(実施例1)と床材B(実施例2)及び水が散布された床材C(実施例3)が試験片から受ける連続的な鉛直力及び水平力を測定してみる。これにより、図4に示すX点およびY点での摩擦係数(α)X1、Y1を表2のように算出することができる。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
更に詳しく解説すると、試験片の水平方向の移動速度(滑り速度)が100mm/sの時の摩擦係数がX1、滑り速度が500mm/sの時の摩擦係数がY1である。
【0024】
安全靴の日本工業規格(JIS)においては、0.2以上の摩擦抵抗(動摩擦係数)を有するものが滑りにくい安全靴とされており、このことからも動摩擦係数が0.15付近であれば滑りのリスクがやや高くなり、更に0.1以下であれば非常にリスクが高くなるものとされている。
【0025】
本発明においても、滑りのリスク評価ではこの基準に従うことができる。してみると、表2の結果から、滑り速度に関係なくほぼ0.01〜0.02と非常に低い摩擦係数の床材A(実施例1)は、非常にリスク度の高い床材であることが評価でき、滑り始め時(すべり速度100mm/sの時)は動摩擦係数が0.13とやや滑りリスクが高いが、加速度がかかり、滑り速度が500mm/sになった時には動摩擦係数が0.23と高くなるため、床材B(実施例2)は滑りリスクがかなり低い床材であると評価できる。
【0026】
また、床材面上の介在物が水の床材C(実施例3)の場合、静摩擦係数が0.27(滑りリスクが低い)であるのに対し、滑り始め時(滑り速度100mm/sの時)は動摩擦係数が0.14とやや滑りリスクが高くなり、更に加速度が加わり、滑り速度が500mm/sになった時には動摩擦係数が0.05と極端に低下するため、高速で着地した場合、滑りリスクがかなり高い床材であると評価できる。このような床材の場合、静摩擦係数0.27のみで滑りリスクを評価すると滑り難い(滑りリスクが低い)床材ということになってしまうため、現実の歩行動作(動摩擦)でのリスクを見逃してしまうことになる。
【0027】
本発明においては、たとえば以上の観点からも、滑りのリスク評価基準とリスク総合評価基準について、たとえば好適には表3のように定めることができる。
【0028】
【表3】
【0029】
<躓きの評価>
被験者による水を散布した躓き易い床面上で実際に素足で摺り足歩行してもらっての足の踏み出し時〜躓いた瞬間までの足の速度や床面が受ける鉛直力、水平力の連続的な実測データより、躓く寸前の足の速度が約100〜1500mm/s(平均で約850mm/s程度)かつ床面が受ける鉛直力が100〜500N(平均で約300N)であることが把握されている。
【0030】
そこで、例示として、図5に示す形状の滑り試験片(硬度50のシリコンゴム)を前記の図3に示した一実施形態の滑り試験装置に取り付け、試験片速度が0〜850mm/sで床面が受ける鉛直力が100〜300Nとなるような動作組合せ条件にて、水が散布された床材D(実施例4)及び床材E(実施例5)が試験片から受ける鉛直力及び水平力を測定し、摩擦係数を算出してみる。これにより図6および図7の結果が得られる。
【0031】
ここで、被験者による水を散布した歩行実験で、床材Dは「つまずき易い」という評価を受けた床材で、床材Eは「すべり難いが、つまずかない」という評価を受けた床材である。
【0032】
図6より水が散布された床材Dの場合、試験片速度が0mm/sかつ鉛直力100Nの組合せ動作の場合の摩擦係数が0.5、試験片速度が100mm/sかつ鉛直力100Nの組合せ動作の場合の摩擦係数が0.44であったのに対し、その他の組合せ条件(特に早い動作や床に重い荷重が掛かっている時)は全て0.3前後とかけ離れたものとなっている。これは、実際の摺り足歩行など動作速度や床に掛かる荷重が変化する中で、摩擦係数が大きく変化するということであり、無意識に歩行する中で急に摩擦係数が高くなったことで、足だけが床材で止められ、体全体の重心移動に対応しきれなくなり、「躓く」結果につながったものと推測される。
【0033】
一方、床材Eは図7に示す結果の通り、どの条件の組合せにおいても摩擦係数が0.6とほぼ一定であった。
【0034】
つまり、動作速度や床に掛かる荷重の変化(組合せ)で摩擦係数が大きく異なる床材は「躓き」リスクが高い床材であるという評価ができる。
【0035】
さらに、図5に示す形状の滑り試験片(硬度50のシリコンゴム)を図8にその概要を示した一実施形態の滑り試験装置に取付け、試験片速度及び床面が受ける鉛直力などが表4及び図9に示すような連続的な動作になるようにプログラムして動作させ、水が散布された床材D(実施例6)及び床材E(実施例7)が試験片から受ける鉛直力及び水平力を測定し、摩擦係数を算出してみる。つまり、図6と図7の実施例4、5では各条件の組合せの測定を実施したのに対し、表5にその結果を示した実施例6、7では1回の連続動作で全ての組合せの測定を実施したことになる。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
表5から床材Dは摩擦係数の最大値0.52は最小値0.25と2倍以上を示したのに対し、床材Eは全ての組合せ条件において0.6前後であった。
【0039】
よって、それぞれの条件組合せを単独で動作させた実施例4と実施例5とほぼ同様の結果が得られたことになり、床材のつまずきリスク評価も同じ評価となった。
<試験装置>
次に上記の特徴を有する本発明の評価方法を実施するための装置についてその実施の形態について説明する。
【0040】
図3および図10は、床材面下側に床圧力計を接地した場合の例として、リニアアクチュエータを備えた水平駆動手段による作用力の方向が相互に正逆の関係のある実施形態を示したものである。
【0041】
この装置では、試験片は鉛直力付加のための鉛直駆動手段の一例としての錘と、試験片保持、入力手段の一部を構成する試験片固定治具とによって取付固定されて、入射調整手段としての案内板に沿って固定治具に配置したローラー等が前下方へ移動することで、固定治具に取付けてある試験片は錘全体とともに一緒に下降して床材面に入射接触するようにしている。水平駆動手段であるリニアアクチュエータによる水平駆動力は、図中に示したように力点、作用点、力の方向が一直線になるようにしている。
【0042】
図11にも図3の模式的部分図として示したように、試験片面が試験開始直前まで床材面2から浮いた状態にあり、試験片11と錘10全体の床材面2に対しての接触するまでの入射角αは、除々に小さくなり、試験片面1が床材面2に対して平行な状態で入射接触するようにしている。
【0043】
案内板においては、ローラーやボール、その他適宜な手段で試験片とその固定治具が錘とともに降下するようにしてよい。図3および図10のように案内板は板状であって、その傾斜角を変えることで、試験片の入射角αの減少度合を設定することができ、また、錘による荷重速度を任意に設定可能とすることができる。
【0044】
もちろん、本発明の装置における入射調整手段は、以上の例のような案内板に限られることはない。ワイヤー移動による吊り下げ機構や、その他各種であってよい。
【0045】
このような本発明の装置では、リニアアクチュエータ等の動力源を有する水平駆動手段では、人の歩行動作を再現可能とするために、作用の速度、加速度、そして水平方向荷重速度が任意に設定できる。
【0046】
上記のような試験片の入射接地と水平駆動手段のシステムによって、これまでに実現されていない実際の人の歩行動作における滑り、つまずきの態様も適切に評価できるようになる。
【0047】
図13の例は、錘と試験片との間にロードセルを設置し、鉛直方向の反作用を測定できるようにしている。また水平駆動手段としては、図3、図10のリンク機構に代えてワイヤーと滑車の手段を採用している。図14は、この例において、案内板の形状を変化させた例を示している。
【0048】
図15は、水平駆動手段において、図3の場合に、試験片を含む錘全体との連結中間部にロードセルを介在させ、すべり抵抗力を可変とさせた例を示している。また、図16は、バネを介在させることで、水平方向荷重速度を可変とさせた例を示している。
【0049】
本発明の装置では、これらの例示において、水平駆動手段では、サーボモータを用いてプログラム制御することで、速度、加速度および荷重速度を可変・組み合わせ動作可能としてよい。また、試験片と錘との間にはゴム、スポンジ、バネ等の制振材を介在させて、試験片が床材面に接地する際の衝撃を吸収緩和するようにしてもよいし、試験片を含む錘全体の作用点を横方向の重心に応じて高さ方向に変更できるようにしてもよい。
【0050】
なお、図8は試験装置の実施形態の一例を示した概要断面図であるが、この装置では水平駆動手段では、サーボモータを用い、鉛直駆動及び鉛直方向荷重速度を空気圧で調整する形態を採っている。また、試験中の鉛直力は床材の下に配置した3個のロードセルで計測し、水平力は床材の横に配置したロードセルで計測する機構としている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】滑り試験での試験片動作について例示した概要図である。
【図2】試験片の平面形状を例示した図である。
【図3】試験装置の実施形態の一例を示した概要断面図である。
【図4】時間的推移と摩擦係数との関係を例示した概要図である。
【図5】試験片の平面形状を例示した図である。
【図6】躓き試験の結果の一例を示した図である。
【図7】躓き試験の結果の別の例を示した図である。
【図8】試験装置の実施形態の一例を示した概要断面図である。
【図9】躓き試験についての試験片の動作について示した概要図である。
【図10】図3とは水平力の作用方向が逆の場合の概要断面図である。
【図11】図3の場合の試験片と床材面との関係を模式的に示した図である。
【図12】錘と試験片との間にロードセルを配した例の概要断面図である。
【図13】案内板の形状を変化させた例の概要断面図である。
【図14】連結中間部にロードセルを配した例の概要断面図である。
【図15】連結中間部にロードセルとバネを配した例の概要断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 試験片面
2 床材面
10 錘
11 試験片
【技術分野】
【0001】
本発明は床材と靴底もしくは床材と素足間等の滑り性や躓き性を評価する方法とそのための試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室や、雨天時のエントランスや路上、階段など濡れた床面等で、人が歩行時に滑り転倒する事故が多数発生しており、高齢化社会を迎えた近年においてその事故数は増加傾向にある。滑り転倒事故を防止・抑制するための靴や床材の開発が鋭意行われているが、性能面で優れた製品が少なく、設計・施工・運用方法も確立されているとは言えない。
【0003】
このような状況に対応するためには、まずは、滑りおよび躓きによる転倒事故の防止・抑制の前提となる「滑り」および「躓き」の評価手段を確立しておくことが必要となる。その背景には、日本国内はもとより、世界的にも評価手段の統一化が実現されていないことと、最も実際的に合理的で妥当性のある評価方法についての科学技術的な検討が深化されていないという事情がある。
【0004】
たとえば評価手段として、従来より知られている英国式(振り子式)ASTM E303で用いる試験機においては振り子の先端に滑り試験片を付け、床上で滑らせた際に損失するエネルギーから滑り抵抗を算出する機構になっているが、試験片部が動く軌跡や速度、試験片にかかる荷重、試験片の材質などの仕様は実際の人間の動作や滑り時の試験片にかかる荷重や材質と相関を考慮に入れたものではなく、自動車の滑りを測定することを目的として道路面とタイヤの間で生じる滑り抵抗を主眼においたものであった。このため、人間の動作にともなう滑りとの対応性を欠いていると言わざるを得ない。
【0005】
一方、日本国内における滑り性を評価する代表的な滑り試験機としては、JIS
A 1454にも規定されている東工大式すべり試験機(以下O−Y PSMとする)が知られている。この試験機によれば、人間の動作における滑りについての検討が一面的ではあるが客観的に可能になったと言える。実際、本発明者らによって、この試験機での評価を踏まえたノンスリップ性人造石の開発も実現されている(特許文献1)。
【0006】
ただ、その後の更なる検証によれば、このO−YPSMによる評価方式は、最大静止摩擦係数を測定することを可能とするが、一元的な断面で評価するものであって、人が静止し、全体重がかかった状態から踏み出す際の滑りを模擬的に評価するのに向いているものの、一歩踏み込んだ際に、体重が十分に乗り移らない状態で、滑る現実的に起こっている現象を必ずしも適切に評価できないという改善されるべき点がある。つまり、人の歩行動作に発生する滑り時の動摩擦係数が測定、評価できないという問題がある。
【0007】
従って、滑って転倒し、最悪の場合、死に至る滑りが、多くの場合、軸足側でなく踏み出した側の足で、十分に体重移動する前に滑りを生じていることを考慮すると、その現象を再現した状況で評価することは非常に重要な課題である。また、人の歩行動作にともなう平面上での床つまずきについても実際に沿っての評価が必要とされているが、国際的に見てもその評価手法を論じた文献は見当たらない。
【特許文献1】特許第3975234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のとおりの背景から、人間の動作における滑りについて、人が静止し、全体重がかかった状態から踏み出す際の滑りを評価するとの観点だけでなく、前記のように、人の歩行動作にともなう静摩擦係数から動摩擦係数の連続的な測定を可能として、一歩踏み込んだ際に、体重が十分に乗り移らない状態での滑り現象の評価を可能とする新しい滑り試験機を提供することを課題としている。そして、実際のすべり時の現象を再現し、床材のすべり性を的確に評価し、すべり対策として有効な床材の開発に寄与することを目的としている。また、床に極端に滑り性が欠如している場合、つまり摩擦係数が大きすぎる場合には躓き転倒の原因になることからも、この床の躓きに係わる床滑り性の評価のための新しい手段を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の滑り・試験装置は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
<1> 床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速度を設定し、あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させ、床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定する滑り・躓きの評価方法。
<2> 鉛直方向の載荷範囲を1〜800N(ニュートン)とし、鉛直方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
<3> 水平方向の押し、または引張りによる力の範囲を10〜2000N(ニュートン)とし、水平方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の評価方法。
<4> 滑りの評価時において、床材面には、あらかじめ滑りの要因となる液体介在物を塗布しておく上記いずれかの評価方法。
<5> 床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価するための試験装置であって、試験開始直前まで試験片を床材面から離しておき、試験開始時にはあらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させることのできる試験片保持・入射手段と、試験片に対しての鉛直力付加のための鉛直駆動手段と水平力付加のための水平駆動手段、並びに床材が試験片から受ける鉛直力と水平力の測定手段とを備え、鉛直駆動手段によって試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の床材に掛かる荷重速度並びに水平駆動手段による水平方向の速度と加速度を設定し、前記測定手段によって床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定可能とする機構を備えている。
<6> 上記試験装置だけでは、鉛直手段が錘、空気圧、油圧、またはサーボモータ駆動力による。
<7> 鉛直方向の載荷範囲が1〜800N(ニュートン)および荷重速度範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)である。
<8> 水平方向の押し、または引張りによる水平駆動手段がサーボモータまたはリニアアクチュエータを用いたプログラム制御によるものである。
<9> 水平力が10〜2000N(ニュートン)の範囲で、水平方向荷重速度の範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)である。
<10> 試験片と錘(鉛直力)との間に制振材を介することにより試験片が床材面に接地する際の衝撃を吸収緩和する機構を備えている。
<11> 床材面下側や側面に床反力計またはロードセルを設置し、3次元方向の反作用を測定機構を備えている。
<12> 錘(鉛直荷重)と試験片の間にロードセルを設置し、鉛直方向の反作用を測定する。
<13> 水平駆動手段において、試験片配設部との連結中間部にロードセルを介することにより摩擦力(水平方向抵抗力)に応じて水平駆動手段による作用を制御する機構を備えている。
<14> 水平駆動手段において、試験片を含む錘全体との連結中間部にバネを介することにより水平方向駆動の荷重速度を可変させる機構を備えている。
<15> 試験片を含む錘全体の重心に応じて水平方向駆動の作用点を高さ方向に変更できる機構を備えている。
有することを特徴とする請求項5から14のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
<16> 試験片保持・入射手段は、入射角が任意に設定でき、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく入射することのできる入射調整手段を備える案内板を有し、案内板形状を可変とすることにより試験片の床材面への入射軌跡を案内板の形状に沿ったものとする機構を備えている。
<17> 案内板の傾斜角を調整することで鉛直方向の荷重速度を任意に設定変更可できる機構を備えている。
<18> 力点、作用点、力の方向が同一直線上にある水平駆動手段を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、前記のとおり、床材面に対しての試験片を、鉛直力と水平力の付加とをもって滑りや躓きを評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と、接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速を設定し、床材が試験片から受ける鉛直力と、水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きリスクを判定する滑り・躓きの評価方法とそれを実施可能するための装置を提案している。
【0011】
このような、本発明によれば、歩行時の滑りや躓きに関係する床面の状態や性質を、実際の人の歩行動作における静摩擦係数と定速度移動時の動摩擦係数の測定をもって評価可能としている。
【0012】
本発明の装置によれば、滑りや躓きの防止、抑制を図ることのできる床材そのものの開発のための評価の基準とその方法の確立に大きく前進することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記の特徴を有する本発明の実施の形態について、説明する。ここで、本発明に係わる用語とその定義について若干の説明を行うと以下のとおりである。
1)鉛直力
床材面が試験片から受ける床材面に対し垂直方向(90度)の力
2)水平力
床材面が試験片から受ける床材面と同一方向(0度)の力
3)摩擦係数
水平力を鉛直力で除した値
4)試験片
評価試験に用いる素足裏の代替物やくつ底材もしくはその代替物等。
5)鉛直荷重速度
床材面に対してかかる単位時間当たりの鉛直力
本発明の滑り・躓きの評価方法においては、その手順として、以下のとおりとなる。
<A>試験片を床材面から浮かせた待機状態とする。
<B>あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させる。
【0014】
この入射接地に際しては、試験片の床材面に対しての、
(B−1)接地までの鉛直方向の速度、
(B−2)接地後の鉛直荷重速度、
(B−3)水平方向の速度、
(B−4)水平方向の加速度、
をあらかじめ設定しておく。
<C>水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定する。
【0015】
上記<B>での試験片の入射角や、(B−1)(B−2)(B−3)(B−4)の要件の認定では、人の移動(歩行)動作や床材面への接地状態、たとえば素足裏であるのか、どのような靴底であるのか等の実態に沿ってたとえば後述の具体例のように、任意に設定することができる。
【0016】
鉛直力に関わる鉛直方向の載荷範囲としては、通常は、1〜800Nとして、荷重速度については0.1〜20N/msとすることが好適に考慮される。一方、水平力に係わる押し、または引張による力の範囲は、10〜200N、荷重速度は0.1〜20N/msとするのが好適に考慮される。
【0017】
なお、床材面には、あらかじめ滑りの要因となる水や油、あるいは石けん水等の液体介在物を塗布しておいてもよい。これらの介在物が存在する場合の床材面の評価が可能になる。
【0018】
そこで、以下により具体的な例示をもって説明する。
<滑りの評価>
試験片の動作は、たとえば、図1および表1にその概要を示すことができる。
【0019】
表1で、具体的に例示している条件、つまり鉛直力や水平力、動作速度・加速度、荷重速度に係わる条件は、65歳以上の被験者15人について、すべり易い床材面上で実際に素足歩行してもらい、足の踏み出し時〜滑った瞬間までの各々の連続的な実測データから導いた値を用いている。
【0020】
被験者による滑り時の連続的な実測データより、滑り動作は図1に対応する表1に示す条件としている。実際に滑りが発生した被験者動作(平均)は図1の1から5までの大きく5段階で推移しており、足の踏み出し時〜滑った瞬間までの間において速度は0になること(止まる)なく動作が繋がっている。そして、たとえば素足裏の代替物としての図2に示す形状の滑り試験片(硬度50のシリコンゴム)を図3にその概要を示した一実施形態の滑り試験装置に取り付ける。そして、図1及び表1に示す条件での動作を忠実に再現し、動作開始から終了にかけて代替石鹸(25wt%ポリビニルアルコール水溶液)が塗布された床材A(実施例1)と床材B(実施例2)及び水が散布された床材C(実施例3)が試験片から受ける連続的な鉛直力及び水平力を測定してみる。これにより、図4に示すX点およびY点での摩擦係数(α)X1、Y1を表2のように算出することができる。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
更に詳しく解説すると、試験片の水平方向の移動速度(滑り速度)が100mm/sの時の摩擦係数がX1、滑り速度が500mm/sの時の摩擦係数がY1である。
【0024】
安全靴の日本工業規格(JIS)においては、0.2以上の摩擦抵抗(動摩擦係数)を有するものが滑りにくい安全靴とされており、このことからも動摩擦係数が0.15付近であれば滑りのリスクがやや高くなり、更に0.1以下であれば非常にリスクが高くなるものとされている。
【0025】
本発明においても、滑りのリスク評価ではこの基準に従うことができる。してみると、表2の結果から、滑り速度に関係なくほぼ0.01〜0.02と非常に低い摩擦係数の床材A(実施例1)は、非常にリスク度の高い床材であることが評価でき、滑り始め時(すべり速度100mm/sの時)は動摩擦係数が0.13とやや滑りリスクが高いが、加速度がかかり、滑り速度が500mm/sになった時には動摩擦係数が0.23と高くなるため、床材B(実施例2)は滑りリスクがかなり低い床材であると評価できる。
【0026】
また、床材面上の介在物が水の床材C(実施例3)の場合、静摩擦係数が0.27(滑りリスクが低い)であるのに対し、滑り始め時(滑り速度100mm/sの時)は動摩擦係数が0.14とやや滑りリスクが高くなり、更に加速度が加わり、滑り速度が500mm/sになった時には動摩擦係数が0.05と極端に低下するため、高速で着地した場合、滑りリスクがかなり高い床材であると評価できる。このような床材の場合、静摩擦係数0.27のみで滑りリスクを評価すると滑り難い(滑りリスクが低い)床材ということになってしまうため、現実の歩行動作(動摩擦)でのリスクを見逃してしまうことになる。
【0027】
本発明においては、たとえば以上の観点からも、滑りのリスク評価基準とリスク総合評価基準について、たとえば好適には表3のように定めることができる。
【0028】
【表3】
【0029】
<躓きの評価>
被験者による水を散布した躓き易い床面上で実際に素足で摺り足歩行してもらっての足の踏み出し時〜躓いた瞬間までの足の速度や床面が受ける鉛直力、水平力の連続的な実測データより、躓く寸前の足の速度が約100〜1500mm/s(平均で約850mm/s程度)かつ床面が受ける鉛直力が100〜500N(平均で約300N)であることが把握されている。
【0030】
そこで、例示として、図5に示す形状の滑り試験片(硬度50のシリコンゴム)を前記の図3に示した一実施形態の滑り試験装置に取り付け、試験片速度が0〜850mm/sで床面が受ける鉛直力が100〜300Nとなるような動作組合せ条件にて、水が散布された床材D(実施例4)及び床材E(実施例5)が試験片から受ける鉛直力及び水平力を測定し、摩擦係数を算出してみる。これにより図6および図7の結果が得られる。
【0031】
ここで、被験者による水を散布した歩行実験で、床材Dは「つまずき易い」という評価を受けた床材で、床材Eは「すべり難いが、つまずかない」という評価を受けた床材である。
【0032】
図6より水が散布された床材Dの場合、試験片速度が0mm/sかつ鉛直力100Nの組合せ動作の場合の摩擦係数が0.5、試験片速度が100mm/sかつ鉛直力100Nの組合せ動作の場合の摩擦係数が0.44であったのに対し、その他の組合せ条件(特に早い動作や床に重い荷重が掛かっている時)は全て0.3前後とかけ離れたものとなっている。これは、実際の摺り足歩行など動作速度や床に掛かる荷重が変化する中で、摩擦係数が大きく変化するということであり、無意識に歩行する中で急に摩擦係数が高くなったことで、足だけが床材で止められ、体全体の重心移動に対応しきれなくなり、「躓く」結果につながったものと推測される。
【0033】
一方、床材Eは図7に示す結果の通り、どの条件の組合せにおいても摩擦係数が0.6とほぼ一定であった。
【0034】
つまり、動作速度や床に掛かる荷重の変化(組合せ)で摩擦係数が大きく異なる床材は「躓き」リスクが高い床材であるという評価ができる。
【0035】
さらに、図5に示す形状の滑り試験片(硬度50のシリコンゴム)を図8にその概要を示した一実施形態の滑り試験装置に取付け、試験片速度及び床面が受ける鉛直力などが表4及び図9に示すような連続的な動作になるようにプログラムして動作させ、水が散布された床材D(実施例6)及び床材E(実施例7)が試験片から受ける鉛直力及び水平力を測定し、摩擦係数を算出してみる。つまり、図6と図7の実施例4、5では各条件の組合せの測定を実施したのに対し、表5にその結果を示した実施例6、7では1回の連続動作で全ての組合せの測定を実施したことになる。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
表5から床材Dは摩擦係数の最大値0.52は最小値0.25と2倍以上を示したのに対し、床材Eは全ての組合せ条件において0.6前後であった。
【0039】
よって、それぞれの条件組合せを単独で動作させた実施例4と実施例5とほぼ同様の結果が得られたことになり、床材のつまずきリスク評価も同じ評価となった。
<試験装置>
次に上記の特徴を有する本発明の評価方法を実施するための装置についてその実施の形態について説明する。
【0040】
図3および図10は、床材面下側に床圧力計を接地した場合の例として、リニアアクチュエータを備えた水平駆動手段による作用力の方向が相互に正逆の関係のある実施形態を示したものである。
【0041】
この装置では、試験片は鉛直力付加のための鉛直駆動手段の一例としての錘と、試験片保持、入力手段の一部を構成する試験片固定治具とによって取付固定されて、入射調整手段としての案内板に沿って固定治具に配置したローラー等が前下方へ移動することで、固定治具に取付けてある試験片は錘全体とともに一緒に下降して床材面に入射接触するようにしている。水平駆動手段であるリニアアクチュエータによる水平駆動力は、図中に示したように力点、作用点、力の方向が一直線になるようにしている。
【0042】
図11にも図3の模式的部分図として示したように、試験片面が試験開始直前まで床材面2から浮いた状態にあり、試験片11と錘10全体の床材面2に対しての接触するまでの入射角αは、除々に小さくなり、試験片面1が床材面2に対して平行な状態で入射接触するようにしている。
【0043】
案内板においては、ローラーやボール、その他適宜な手段で試験片とその固定治具が錘とともに降下するようにしてよい。図3および図10のように案内板は板状であって、その傾斜角を変えることで、試験片の入射角αの減少度合を設定することができ、また、錘による荷重速度を任意に設定可能とすることができる。
【0044】
もちろん、本発明の装置における入射調整手段は、以上の例のような案内板に限られることはない。ワイヤー移動による吊り下げ機構や、その他各種であってよい。
【0045】
このような本発明の装置では、リニアアクチュエータ等の動力源を有する水平駆動手段では、人の歩行動作を再現可能とするために、作用の速度、加速度、そして水平方向荷重速度が任意に設定できる。
【0046】
上記のような試験片の入射接地と水平駆動手段のシステムによって、これまでに実現されていない実際の人の歩行動作における滑り、つまずきの態様も適切に評価できるようになる。
【0047】
図13の例は、錘と試験片との間にロードセルを設置し、鉛直方向の反作用を測定できるようにしている。また水平駆動手段としては、図3、図10のリンク機構に代えてワイヤーと滑車の手段を採用している。図14は、この例において、案内板の形状を変化させた例を示している。
【0048】
図15は、水平駆動手段において、図3の場合に、試験片を含む錘全体との連結中間部にロードセルを介在させ、すべり抵抗力を可変とさせた例を示している。また、図16は、バネを介在させることで、水平方向荷重速度を可変とさせた例を示している。
【0049】
本発明の装置では、これらの例示において、水平駆動手段では、サーボモータを用いてプログラム制御することで、速度、加速度および荷重速度を可変・組み合わせ動作可能としてよい。また、試験片と錘との間にはゴム、スポンジ、バネ等の制振材を介在させて、試験片が床材面に接地する際の衝撃を吸収緩和するようにしてもよいし、試験片を含む錘全体の作用点を横方向の重心に応じて高さ方向に変更できるようにしてもよい。
【0050】
なお、図8は試験装置の実施形態の一例を示した概要断面図であるが、この装置では水平駆動手段では、サーボモータを用い、鉛直駆動及び鉛直方向荷重速度を空気圧で調整する形態を採っている。また、試験中の鉛直力は床材の下に配置した3個のロードセルで計測し、水平力は床材の横に配置したロードセルで計測する機構としている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】滑り試験での試験片動作について例示した概要図である。
【図2】試験片の平面形状を例示した図である。
【図3】試験装置の実施形態の一例を示した概要断面図である。
【図4】時間的推移と摩擦係数との関係を例示した概要図である。
【図5】試験片の平面形状を例示した図である。
【図6】躓き試験の結果の一例を示した図である。
【図7】躓き試験の結果の別の例を示した図である。
【図8】試験装置の実施形態の一例を示した概要断面図である。
【図9】躓き試験についての試験片の動作について示した概要図である。
【図10】図3とは水平力の作用方向が逆の場合の概要断面図である。
【図11】図3の場合の試験片と床材面との関係を模式的に示した図である。
【図12】錘と試験片との間にロードセルを配した例の概要断面図である。
【図13】案内板の形状を変化させた例の概要断面図である。
【図14】連結中間部にロードセルを配した例の概要断面図である。
【図15】連結中間部にロードセルとバネを配した例の概要断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 試験片面
2 床材面
10 錘
11 試験片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速度を設定し、あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させ、床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定することを特徴とする滑り・躓きの評価方法。
【請求項2】
鉛直方向の載荷範囲を1〜800N(ニュートン)とし、鉛直方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
水平方向の押し、または引張りによる力の範囲を10〜2000N(ニュートン)とし、水平方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
滑りの評価時において、床材面には、あらかじめ滑りの要因となる液体介在物を塗布しておくことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の評価方法。
【請求項5】
床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価するための試験装置であって、試験開始直前まで試験片を床材面から離しておき、試験開始時にはあらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させることのできる試験片保持・入射手段と、試験片に対しての鉛直力付加のための鉛直駆動手段と水平力付加のための水平駆動手段、並びに床材が試験片から受ける鉛直力と水平力の測定手段とを備え、鉛直駆動手段によって試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の床材に掛かる荷重速度並びに水平駆動手段による水平方向の速度と加速度を設定し、前記測定手段によって床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定可能とすることを特徴とする滑り・躓きの試験装置。
【請求項6】
鉛直手段が錘、空気圧、油圧、またはサーボモータ駆動力によることを特徴とする請求項5に記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項7】
鉛直方向の載荷範囲が1〜800N(ニュートン)および荷重速度範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)であることを特徴とする請求項3に記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項8】
押し、または引張りによる水平駆動手段がサーボモータまたはリニアアクチュエータを用いたプログラム制御によるものであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項9】
水平力が10〜2000N(ニュートン)の範囲で、水平方向荷重速度の範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)であることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項10】
試験片と錘(鉛直力)との間に制振材を介することにより試験片が床材面に接地する際の衝撃を吸収緩和する機構を有することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の滑り・及び躓き試験装置。
【請求項11】
床材面下側や側面に床反力計またはロードセルを設置し、3次元方向の反作用を測定することが可能であることを特徴とする請求項5から10のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項12】
錘(鉛直荷重)と試験片の間にロードセルを設置し、鉛直方向の反作用を測定することが可能であることを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置
【請求項13】
水平駆動手段において、試験片配設部との連結中間部にロードセルを介することにより摩擦力(水平方向抵抗力)に応じて水平駆動手段による作用を制御ができることを特徴とする請求項5から12のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項14】
水平駆動手段において、試験片を含む錘全体との連結中間部にバネを介することにより水平方向駆動の荷重速度を可変させることができることを特徴とする請求項5から13のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項15】
試験片を含む錘全体の重心に応じて水平方向駆動の作用点を高さ方向に変更できる機構を有することを特徴とする請求項5から14のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項16】
試験片保持・入射手段は、入射角が任意に設定でき、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく入射することのできる入射調整手段を備える案内板を有し、案内板形状を可変とすることにより試験片の床材面への入射軌跡を案内板の形状に沿ったものとしていることを特徴とする請求項5から15のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項17】
案内板の傾斜角を調整することで鉛直方向の荷重速度を任意に設定可能とされていることを特徴とする請求項16に記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項18】
力点、作用点、力の方向が同一直線上にある水平駆動手段を備えていることを特徴とする請求項5から17のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項1】
床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価する方法であって、試験開始直前まで試験片面を床材面から浮かせ、試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の鉛直荷重速度並びに水平方向の速度と加速度を設定し、あらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させ、床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定することを特徴とする滑り・躓きの評価方法。
【請求項2】
鉛直方向の載荷範囲を1〜800N(ニュートン)とし、鉛直方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
水平方向の押し、または引張りによる力の範囲を10〜2000N(ニュートン)とし、水平方向の荷重速度を0.1〜20N/ms(ニュートン/ミリセコンズ)の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の評価方法。
【請求項4】
滑りの評価時において、床材面には、あらかじめ滑りの要因となる液体介在物を塗布しておくことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の評価方法。
【請求項5】
床材面に対しての試験片の滑りや躓きを鉛直力と水平力の付加とをもって評価するための試験装置であって、試験開始直前まで試験片を床材面から離しておき、試験開始時にはあらかじめ設定した入射角度から、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく試験片を床材面上に入射接地させることのできる試験片保持・入射手段と、試験片に対しての鉛直力付加のための鉛直駆動手段と水平力付加のための水平駆動手段、並びに床材が試験片から受ける鉛直力と水平力の測定手段とを備え、鉛直駆動手段によって試験片の床材面に対しての接地までの鉛直方向の速度と接地後の床材に掛かる荷重速度並びに水平駆動手段による水平方向の速度と加速度を設定し、前記測定手段によって床材が試験片から受ける鉛直力と水平力を測定し、水平力を鉛直力で除した摩擦係数の推移から床材の滑りや躓きのリスク度を判定可能とすることを特徴とする滑り・躓きの試験装置。
【請求項6】
鉛直手段が錘、空気圧、油圧、またはサーボモータ駆動力によることを特徴とする請求項5に記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項7】
鉛直方向の載荷範囲が1〜800N(ニュートン)および荷重速度範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)であることを特徴とする請求項3に記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項8】
押し、または引張りによる水平駆動手段がサーボモータまたはリニアアクチュエータを用いたプログラム制御によるものであることを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項9】
水平力が10〜2000N(ニュートン)の範囲で、水平方向荷重速度の範囲が0.1〜20N/ms(ニュートン毎ミリセコンズ)であることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項10】
試験片と錘(鉛直力)との間に制振材を介することにより試験片が床材面に接地する際の衝撃を吸収緩和する機構を有することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の滑り・及び躓き試験装置。
【請求項11】
床材面下側や側面に床反力計またはロードセルを設置し、3次元方向の反作用を測定することが可能であることを特徴とする請求項5から10のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項12】
錘(鉛直荷重)と試験片の間にロードセルを設置し、鉛直方向の反作用を測定することが可能であることを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置
【請求項13】
水平駆動手段において、試験片配設部との連結中間部にロードセルを介することにより摩擦力(水平方向抵抗力)に応じて水平駆動手段による作用を制御ができることを特徴とする請求項5から12のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項14】
水平駆動手段において、試験片を含む錘全体との連結中間部にバネを介することにより水平方向駆動の荷重速度を可変させることができることを特徴とする請求項5から13のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項15】
試験片を含む錘全体の重心に応じて水平方向駆動の作用点を高さ方向に変更できる機構を有することを特徴とする請求項5から14のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項16】
試験片保持・入射手段は、入射角が任意に設定でき、試験片面が床材面に対して平行な状態で接地すべく入射することのできる入射調整手段を備える案内板を有し、案内板形状を可変とすることにより試験片の床材面への入射軌跡を案内板の形状に沿ったものとしていることを特徴とする請求項5から15のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項17】
案内板の傾斜角を調整することで鉛直方向の荷重速度を任意に設定可能とされていることを特徴とする請求項16に記載の滑り・躓き試験装置。
【請求項18】
力点、作用点、力の方向が同一直線上にある水平駆動手段を備えていることを特徴とする請求項5から17のいずれかに記載の滑り・躓き試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図2】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−236733(P2009−236733A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84173(P2008−84173)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(503094542)株式会社アベイラス (5)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(503094542)株式会社アベイラス (5)
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