説明

滑り止め機能を有する手工具

【課題】 低摩擦の固い表面を有する少なくとも1つのハンドルを有する手工具のハンドルを制御可能な範囲でプレスするために手による力以上の力を利用できるように改良された手工具を提供する
【解決手段】 本発明は、ハンドル(4、5、6,7)とあご(12、14)とを含み、これらあご(12、14)がハンドル(4、5、6、7)によって操作される手工具(2)に関し、滑り止め手段(20)が工具のハンドル(4、5、7)の末端(24)の外側(22)に設けられ、工具のハンドル(4、5、7)が低摩擦の硬い表面(26、28、30)を有し、これにより使用者がハンドルを握りしめた際にハンドルのこの硬い表面(26、28、30)上で指を滑らせることができ、かつ、使用者が手の力以上の力(F)を用いて工具のハンドル(4、5、6、7)を互いに押し合わせることができるように、この滑り止め手段(20)が支持面(23)に対して支持されるように配置されていることを特徴とする手工具によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルとあごとを含み、これらあごがハンドルによって操作される手工具に関する。
【背景技術】
【0002】
手工具は、例えばケーブルまたはワイヤーを電力用同軸光ファイバーまたはモジュラー・コネクタに接続する際のケーブルの成端(cable termination)に使用される。ケーブル成端用手工具は、切断工具、皮むき工具、圧着工具などを含む。圧着の場合、コネクター、即ちターミナル、スプライスまたはこれらに類似の装置が、これらを変形させることによってケーブル、例えばワイヤーなどの伝導体に機械的に固定され、これにより確実な機械的および電気的接続を有する強固な接続が形成される。圧着接合を供する圧着作業は、圧着ダイなどを用いて行われる。
【0003】
手工具は、比較的柔らかな面、例えば外方カバーを有するハンドルを含み、ハンドルを握りしめる際に工具を快適に保持できるようにしている。
【0004】
下記特許文献1には、工具を落とした際に工具を保護するためにハンドル端部は衝撃に対する強度を有し、耐摩耗性のための保護がなされている対称型手工具が開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、ハンドル部に柔らかなカバーが設けられた対称型手工具が開示されている。
【0006】
下記特許文献3には、ハンドルの両方に握りやすくするための外方カバーを有する非対称型手工具が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような柔らかいハンドルには、低摩擦の固いハンドルに沿って使用者の指を滑らせるものと較べて使用者の指と動くハンドルとの間の摩擦が多く、従って使用者の指がハンドル表面上を滑りにくくなるためハンドルを押し込みにくくなるという欠点がある。
【0008】
下記特許文献4には、ポリカーボネートからなるハンドルを有する対称型手工具が開示されている。
【0009】
この手工具には、手工具のハンドルを押すのに必要とされる力が、非常に大きくなる場合、例えば強度のある加工物を圧着する場合などは、たとえ低摩擦面を有するハンドルであっても使用者の手の力だけでは、ハンドルをプレスするのが困難な場合があるという問題点がある。
【特許文献1】米国特許第6,024,000号
【特許文献2】米国特許第6,270,134号
【特許文献3】米国特許第5,105,648号
【特許文献4】米国特許出願第2008/0078273号
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主たる目的は、低摩擦の固い表面を有する少なくとも1つのハンドルを有する手工具のハンドルを制御可能な範囲でプレスするために手による力以上の力を利用できるように改良された手工具を提供することである。この目的は、滑り止め手段が工具のハンドルの末端の外側に設けられ、このハンドルが、低摩擦の硬い表面を有し、これにより使用者がハンドルを握りしめた際にハンドルのこの硬い表面上で指を滑らせることができ、かつ、使用者が手の力以上の力を用いて工具のハンドルを互いに押し合わせることができるように、この滑り止め手段が支持面に対して支持されるように配置されていることを特徴とする手工具によって達成される。
【0011】
これらの特徴および他の特徴は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0012】
本発明を本発明の装置の好ましい態様を例示した添付の図面を参照し、以下により具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による非対称型手工具が開放位置にある、即ちハンドルを互いに押し合わせる前の状態を示す略式側面図である。
【図2】図1の非対称型手工具が閉鎖位置にある、即ちハンドルが互いに押し合わされた状態を示す略図である。
【図3】本発明による非対称型手工具を略式に示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、ここでは圧着工具として示されている非対称型手工具2の開放位置、即ち工具のハンドル4、6が互いに押し合わされる前の状態を示す略式側面図である。非対称型手工具2は、特定の配置、即ち工具の第1の下方ハンドル4と第2の上方ハンドル6が図に示すような位置にある状態で使用され、機能するように設計されている。また図に示した手工具2は、例えば金属製の胴体8を含む。第1のハンドル4と第2のハンドル6は、相互に可動であり、即ちある機構(図示せず)によって機械的に旋回可能に相互連結されている。この態様において、第2のハンドル6と胴体8は一体であり、使用者の掌に滑り防止効果を与え、使いにくさを最小限にし、ハンドル4、6を握りしめた際のクッションの役割を果たすために滑り防止のカバーを有する。これとは別に第2のハンドル6が、胴体8に対して可動であってもよい。この態様では手工具2は、さらにあご12、14を含み、これらのあごは、互いに可動な圧着ダイ16、18を含む。あご12、14に設けられた圧着ダイ16、18は、ハンドル4、6を互いに押し合わせた際に互いに引き合わせられるように構成されており、これによりあご12、14の間で加工品9を締め付ける、この態様ではあご12、14に設けられた圧着ダイ16、18の間で加工品9を圧着する。さらに戻りバネ(図示せず)が、使用者がハンドル4、6を開放した際に第1のハンドル4を第2のハンドル6から押し離すために配されている。
【0015】
上述したようにハンドル4、6を押し合わせる際に使用者の指が掴む下方のハンドル4は、使用者の指が可能な限り楽にハンドル表面上を滑ることができるように低摩擦材料の表面を有する必要があり、これにより片手でハンドル4、6を押し合わせる際に使用者の掴む力を最大限にし、手工具の効率を最大限にする。それでもハンドル4、6を押し合わせるのに必要な力が、使用者の握力より大きい場合がある。このような場合にハンドル4、6を押し合わせることができるようにするために、下方ハンドル4の末端24の外側に滑り防止手段20が設けられ、この滑り防止手段20は、例えばテーブルの表面などの支持面23上に置かれ、これにより上手く手工具2のハンドル4、6を互いに押し合わせるために使用者が手工具2に体重を掛けて、手による力以上の力Fを使用者の掌を介して手工具2の上方ハンドル6に加えることができ、工具2のあご12、14およびこの態様では圧着ダイ16、18が、支持面23に沿った予期せぬ、制御不能な工具2の滑りの危険がなく、手による力以上の力を利用して圧着ダイ16、18を互いに押し合わせることができる。
【0016】
滑り防止手段20は、ハンドル面26より好ましくは柔らかいゴムまたはSantropren(商品名)などの柔らかいプラスチックのような高摩擦材料からなる。下方ハンドル4がナイロンで覆われていたり、またはナイロンで作製されている場合、使用者の掌が上方ハンドル6の面で制御できないほどに滑るのを防ぎ、かつ使用者の指がハンドル4、6を押し合わせる際に下方ハンドル4の面で滑るようにするために、滑り防止手段20をゴムで作製し、上方ハンドル6の表面をSantropren(商品名)などの熱可塑性エラストマーでコートしてもよい。下方ハンドル4と滑り防止手段20は、一緒に成型するのが好ましいが、これらを接着してもよい。ハンドル4、6に加えることが可能な力を減少させることなく使用者の使い心地を向上させるために、手工具が非対称型、即ち特定の上方ハンドル6と特定の下方ハンドル4を有する場合、上方ハンドル6は、少なくともその上面または全体に亘って柔らかい材料にコーティングを含むのが好ましい。一方、手工具2が対称型、即ちいずれの向きでも使用できる種類のものである場合、ハンドル4、6の両方が低摩擦面を含み、上述のように配置される末端滑り止め手段20を含むのが好ましい。
【0017】
図2は、図1の手工具2が閉じた位置にある、即ち上述したように手による力以上の力Fが上方ハンドル6に加わる位置でテーブルの表面などの支持面23に対して当接する下方ハンドル4の末端の滑り止め手段20によってハンドル4、6が互いに押し合わされた状態を略式に示している。
【0018】
図3は、2つのあご12、14と2つの可動なハンドル5、7とを含む対称型の手工具2を略式に示しており、各ハンドル5、7は、低摩擦面28、30を有し、上述の末端滑り止め手段20を含む。
【0019】
本発明の手工具の作動を図1を参照し、圧着工具2は、より新しい種類の手工具であるので、圧着工具2を例に取り説明する。
【0020】
図1の工具の場合、本発明によるクリンピング工具2は、次のように作動する。
【0021】
最初に導線またはそれに類似するもののような圧着される加工品9が、圧着ダイ16、18によって限界が定められた開口部17内に挿入される。
【0022】
加工品を挿入した後、圧着工具2は、ハンドル4、6を軽く握りしめて、あご12、14および従って圧着ダイ16、18を互いの方へと僅かに移動させて、圧着される加工品9を変形させずに所定の位置に保持されるように加工品9と接触させて力を加えることによって作動する。これによりケーブル11、例えばワイヤーの皮が剥かれた部分を簡単に加工品9内に挿入することができる。
【0023】
加工品9とケーブル11が上手く位置合わせされた時に、ハンドル4、6は、さらに握りしめられ、圧着ダイ16、18をさらに互いの方へと移動させる。ハンドルは、この圧着工具2を使用する人が、加工品9の圧着のためにハンドル4、6をさらに引き合わせるためにハンドル4、6により大きな力を加えることができる手の最適な掴む範囲が得られるような寸法を有することが好ましい。圧着される加工品9の寸法に応じた寸法の交換可能なダイ16、18を手工具2に設けることが好ましい。ここで言う最適な掴む範囲とは、手を握りしめた際に手と指が最大の力を加えることができる掌と指の位置の範囲を意味する。この最適な掴む範囲は、当業界で知られている表に記載されている(例えば、2004年夏に刊行されたHuman factors and Ergonomics SocietyによるHUMAN FACTORSのVol. 46、No.2、224−251頁に記載されている論文”Grip force Vectors for Varying Handle Diameters and Hand Sizes”を参照のこと)。
【0024】
ハンドル4、6がさらに引き合わせられると、この例ではケーブル11の周囲に加工品9が圧着された実質的に円形の断面の圧着接合が得られる。
【0025】
圧着するのにより大きな力を必要とする場合、使用者は、下方ハンドル4に上述し、図2に示したように滑り止め手段20が設けられているので、上方ハンドル6に体重を掛けてあご12、14および圧着ダイ16、18に大きな力Fを加えることができる。
【0026】
最後にハンドル4、6は、開放され、あご12、14を移動させて圧着ダイ16、18を引き離して圧着工具2から圧着された導線9を取り除くことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(4、5、6,7)とあご(12、14)とを含み、これらあご(12、14)がハンドル(4、5、6、7)によって操作される手工具(2)において、滑り止め手段(20)が工具のハンドル(4、5、7)の末端(24)の外側(22)に設けられ、工具のハンドル(4、5、7)が低摩擦の硬い表面(26、28、30)を有し、これにより使用者がハンドルを握りしめた際にハンドルのこの硬い表面(26、28、30)上で指を滑らせることができ、かつ、使用者が手の力以上の力(F)を用いて工具のハンドル(4、5、6、7)を互いに押し合わせることができるように、この滑り止め手段(20)が支持面(23)に対して支持されるように配置されていることを特徴とする手工具。
【請求項2】
滑り止め手段(20)がゴムなどの高摩擦材料からなることを特徴とする請求項1記載の手工具。
【請求項3】
手工具(2)が相互に可動であり、あご(12、14)に配置された圧着ダイ(16、18)をさらに含み、これら圧着ダイ(16、18)は、ハンドル(4、6)を互いに押し合わせた際に互いに引き合わせられ、これら圧着ダイ(16、18)の間で加工品(9)を圧着することを特徴とする請求項1または2記載の手工具。
【請求項4】
手工具(2)が非対称型であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の手工具。
【請求項5】
手工具(2)がさらに胴体(8)を含むことを特徴とする請求項4記載の手工具。
【請求項6】
第1のハンドル(4)が、ハンドル(4、6)を互いに押し合わせる際に使用者が指で握る下方ハンドル(4)であり、この下方ハンドル(4)が、滑り止め手段(20)と、使用者の指が可能な限り楽にハンドル表面上を滑ることができるように低摩擦の硬い表面(26)とを含み、これにより片手でハンドル(4、6)を押し合わせる際に使用者の掴む力を最大限にし、かつ手工具(2)の効率を最大限にし、第2のハンドル(6)が上方ハンドル(6)であり、胴体(8)と一体であることを特徴とする請求項5記載の手工具。
【請求項7】
上方ハンドル(6)が、使用者がハンドル(4、6)を押し合わせる際に使用者の掌に滑り止め効果を供し、かつ、使用者が握る際の不快感を最小限にし、クッションを供するために滑り止めカバー(10)を有することを特徴とする請求項6記載の手工具。
【請求項8】
下方ハンドル(4)がナイロンで覆われている、またはナイロンからなり、上方ハンドル(6)の表面(10)が熱可塑性エラストマーがコートされていることを特徴とする請求項7記載の手工具。
【請求項9】
手工具(2)が対称型であり、各ハンドル(5、7)が低摩擦の表面(28、30)を有し、末端に滑り止め手段(20)を含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の手工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−99827(P2010−99827A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234139(P2009−234139)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(507033152)プレスマスター アーベー (4)