説明

滑り止め用ホットメルト組成物ならびにカーペット及びフロアー材

【課題】本発明は、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能な滑り止め用ホットメルト組成物、及び当該ホットメルト組成物を裏面に塗工して製造されるカーペット、フロアー材等を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ホットメルト配合に於いて、スチレン系ブロック共重合エラストマー(A)を100重量部に、オイル(B)を200〜600重量部、粘着付与樹脂(C)を200〜300重量部含有することを特徴とする滑り止め用粘着ホットメルト組成物、さらにはその組成物を用いたカーペット、フロアー材等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能な滑り止め用ホットメルト組成物、及び当該ホットメルト組成物を裏面に塗工して製造されるカーペット、フロアー材等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能なカーペット、フロアー材等の滑り止め部材としてアクリルエマルジョン系の粘着剤が使用されていた。ただし、これらは塗工後乾燥工程が必要であること及びその臭気の問題があった。また、従来のアクリルエマルジョンでは粘着剤を別途現場施工しなければならないとういう問題もあった。
【0003】
カーペットや床材の滑り止め剤としてとしてスチレンブロックと水素添加型のポリオレフィンからなる共重合体、ポリスチレンブロック補強樹脂、可塑剤及び/又は非晶性ポリオレフィンから成るホットメルト組成物が公表されている。このホットメルト組成物はポリスチレンブロックに対する補強樹脂を必須としている。このため組成物自体の自着性、表面タック性が不足してしまうという欠点がある。
【特許文献1】特開2001−19926
【0004】
また、スチレン系ブロック共重合体エラストマー100重量部、ポリプロピレン10〜200重量部、鉱物性オイル5〜150重量部からなる組成物が公表されている。この組成物はポリプロピレンを必須としているためポリプロピレン部の結晶化により自着性、表面タック性が不足してしまうという欠点がある。また、オイルが150重量部を超えた場合の欠点として組成物の硬度が低すぎて成形物が外圧によって変形し易くなることが記載されている。
【特許文献2】特開平10−279747
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能なホットメルト組成物、及びカーペット、フロアー材等の滑り止め加工に使用される耐候性、熱安定性が優れたホットメルト組成物を提供することである。また、事前にホットメルト組成物をフロアー材に塗工することによって現場施工を簡素化することができるフロアー材を提供することである。さらに、ホットメルト組成物面同士に於いても再剥離可能であり離型紙を使用しない自着性・表面タック性のあるフロアー材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段としてスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)を100重量部に、オイル(B)を200〜600重量部、粘着付与樹脂(C)を200〜300重量部含有することを特徴とするホットメルト組成物を提供することであり、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能なカーペット、フロアー材等の滑り止め部材に使用されるホットメルト組成物として好適である。
また、本発明において、23℃、20g/cm2荷重におけるステンレス板に対するせん断強度が少なくとも10N/5cm×5cmでありかつ再剥離を可能とするために成分(A)、(B)、(C)を使用した組成物であることが好ましい。
また、更に好ましい滑り止め用粘着ホットメルト組成物はスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)100重量部に対してオレフィン系ブロック共重合エラストマー(D)を20〜60重量部含有する組成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能な滑り止め用ホットメルト組成物、及び当該ホットメルト組成物を裏面に塗工して製造されるカーペット、フロアー材等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)とは、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEBS)の単独あるいはSEBSとSBS、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、SISの水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEPS)の二種以上の混合物等がある。SEBSは支持体への接着性および被着体への粘着性が良好でありかつ再剥離性が良好である。SEBS及びSEPSのようなABA型の水素添加物の方がオイル保油性が良好である。
【0009】
本発明はホットメルト配合に於いて、スチレン系ブロック共重合エラストマー(A)を100重量部に、オイル(B)を200〜600重量部、粘着付与樹脂(C)を200〜300重量部含有することを特徴とする滑り止め用ホットメルト組成物でありスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)が100重量部以下では凝集力が不足し、それ以上では粘度が高くなり塗工性が劣る。
【0010】
次に本発明に用いられるオイル(B)とは、たとえばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイルあるいはその混合物およびそれらの水素添加物である。本発明はスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)を100重量部に対して、200〜600重量部使用される。200重量部を下回ると再剥離面に対する接着性が上がり再剥離性が劣化し、600重量部を超えると凝集力が不足する。
【0011】
次に、本発明に用いられる粘着付与樹脂(C)は、例えばロジン系、テルペン系、脂肪族系、芳香族系、脂環族系等あるいはその混合物である。粘着付与剤の軟化点は好ましくは90〜150℃のものがよい。90℃未満では耐熱性、ブロッキング性に欠け、150℃以上では塗工性が悪くなる。更に使用される被着体に対する接着性を考慮して配合するのが好ましい。本発明はスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)を100重量部に対して、粘着付与樹脂(C)が200〜300重量部使用される。200重量部を下回ると支持体に対する接着性が不足し、300重量部を超えると滑り止めとしての柔軟性が不足する。また、接着性が上がり再剥離性が劣化する。
【0012】
本発明において、23℃、20g/cm2荷重におけるステンレス板に対する断強度が少なくとも10N/5cm×5cmでありかつ再剥離を可能とするために成分(A)、(B)、(C)を使用した組成物であることが好ましい。
【0013】
更に好ましい滑り止め用粘着ホットメルト組成物はスチレン系ブロック共重合エラストマー(A)100重量部に対してオレフィン系ブロック共重合エラストマー(D)を20〜60重量部含有する組成である。本発明のオレフィン系ブロック共重合エラストマー(D)とはオレフィン−エチレン−ブチレンブロック共重合体エラストマー(CEBC)、スチレン−エチレン−ブチレン−オレフィンブロック共重合体エラストマー(SEBC)の単独あるいは二種以上の混合物である。オレフィン系ブロック共重合エラストマー(D)が20重量部を下回ると保油性の向上効果が得られず、60重量部を超えると凝集力が低下する。
【0014】
本発明において、ホットメルト組成物に必要に応じて例えばステアリン酸アミドのような滑剤、例えばステアリン酸カルシウムのようなブロッキング防止剤、例えば炭酸カルシウムのような充填剤、例えばヒンダードフェノールのような酸化防止剤等を適宜加えても良い。
【0015】
本発明のホットメルト組成物の調製は、加熱タイプ溶融撹拌槽などの溶融溶解槽に、好ましくは真空下、窒素気流下、通常温度150℃以上250℃以下で、撹拌羽根の回転により、各成分を順に溶融混合する方法、ニーダーの双状回転羽根により、加熱下シェアをかけて溶融混合する方法、単軸又は2軸の押出機のスクリューにより溶融混合する方法などにより行われる。
【0016】
本発明における、ホットメルト組成物を使用したカーペット、フロアー材の製造方法は、カーペット、フロアー材の裏面に溶融させた当該ホットメルト組成物をホットメルトコーターにて塗工することによって得られる。
【0017】
本発明に使用されるカーペット、フロアー材については特に規定はない。一般に上市されているもので構わない。ただし、使用されるカーペット、フロアー材に軟質塩ビが使用されている場合において、PETフィルム等の可塑剤をバリアする層を設けてもよい。また、カーペット、フロアー材の裏面に対して当該ホットメルト組成物が十分な接着強度を得られない場合、機械的な接着強度を得るためにポリエステル不織布等の繊維状層を設けてもよい。
【実施例】
【0018】
まず、本発明の実施例、比較例の評価方法について記載する。
評価方法の記載
イ 滑り止め効果の評価方法
滑り止め効果を確認する方法として、せん断強度の測定を行った。タイルカーペット(東リ(株)社製GAタイプ)に片面にプライマー処理し、他面にポリエチレンをラミネートしポリエステルスパンボンド不織布を貼り合わせたポリエステルフィルムをタイルカーペットの塩化ビニールバッキング層にアイロンを用いて接着し、ポリエステルスパンボンド不織布側にロールコーター(塗工温度180℃)でホットメルト組成物を50g/m2加工する。このホットメルト組成物面とステンレス板を重ね、2kgローラー2往復で圧着し試験片とする。これを23℃、20g/cm2の荷重で水平水平方向に引張速度100mm/minにてせん断接着強度を測定した。単位はN/5cm×5cm。
【0019】
ロ 再剥離性の評価方法
再剥離性の確認として次のような評価を行った。タイルカーペット(東リ(株)社製GAタイプ)に片面にプライマー処理し、他面にポリエチレンをラミネートしポリエステルスパンボンド不織布を貼り合わせたポリエステルフィルムをタイルカーペットの塩化ビニールバッキング層にアイロンを用いて接着し、ポリエステルスパンボンド不織布側にロールコーター(塗工温度180℃)でホットメルト組成物を50g/m2加工する。このホットメルト組成物面とステンレス板を重ね、60℃、40g/cm2荷重、1週間放置したものを23℃、無荷重、12時間以上静置し試験片とする。これを手で剥離したときの糊残り状態を観察した。評価結果はホットメルトとステンレス板の界面剥離を○、ホットメルトの凝集破壊を×とした。一部凝集破壊を△とした。
【0020】
ハ 自着性の評価方法
自着性の確認として次のような評価を行った。タイルカーペット(東リ(株)社製GAタイプ)に片面にプライマー処理し、他面にポリエチレンをラミネートしポリエステルスパンボンド不織布を貼り合わせたポリエステルフィルムをタイルカーペットの塩化ビニールバッキング層にアイロンを用いて接着し、ポリエステルスパンボンド不織布側にロールコーター(塗工温度180℃)でホットメルト組成物を50g/m2加工する。このホットメルト組成物面同士を重ね、60℃、40g/cm2荷重、1週間放置したものを23℃、無荷重、12時間以上静置し試験片とする。これの剥離接着強度を引張速度100mm/minにて測定した。単位はN/5cm。
【0021】
実施例
以下に本発明の実施例、比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1〜6
スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEBS)A 品番:クレイトンポリマー社製クレイトンG−1726(スチレン含量:30%、MFR:65g/10min(200℃、5kg))、スチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEBS)B 品番:クレイトンポリマー社製クレイトンG−1654(スチレン含量:31%)、オレフィン−エチレン−ブチレンブロック共重合体エラストマー(CEBC)A 品番:クラレ社製セプトン6200P(MFR:2.5g/10min(230℃、2.16kg))、パラフィン系オイルA 品番:出光興産社製プロセスオイルPW−90(比重:0.870)、粘着付与樹脂(TF)A 品番:ヤスハラケミカル社製クリアロンP−125(水添テルペン樹脂)、粘着付与樹脂(TF)B 品番:ヤスハラケミカル社製ポリスターU−130(テルペンフェノール樹脂)を表1に示す配合で、ラボニーダーを用いて180℃でおよそ60分間加熱混合し配合物を得た。この配合物を用いて各評価を行い、結果を表2に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、自着性・表面タック性がありながら再剥離可能なホットメルト組成物、及びカーペット、フロアー材等の滑り止め加工に使用される耐候性、熱安定性が優れたホットメルト組成物を提供することである。また、事前にホットメルト組成物をフロアー材に塗工することによって現場施工を簡素化することができるフロアー材を提供することである。さらに、ホットメルト組成物面同士に於いても再剥離可能であり離型紙を使用しない自着性・表面タック性のあるフロアー材を提供することである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト配合に於いて、スチレン系ブロック共重合エラストマー(A)を100重量部に、オイル(B)を200〜600重量部、粘着付与樹脂(C)を200〜300重量部含有することを特徴とする滑り止め用粘着ホットメルト組成物。
【請求項2】
23℃、20g/cm2荷重におけるステンレス板に対するせん断強度が少なくとも10N/5cm×5cmでありかつ再剥離可能であることを特徴とする請求項1記載の滑り止め用粘着ホットメルト組成物。
【請求項3】
ホットメルト配合に於いて、スチレン系ブロック共重合エラストマー(A)100重量部に対してオレフィン系ブロック共重合エラストマー(D)を20〜60重量部含有することを特徴とする請求項1、2記載の滑り止め用粘着ホットメルト組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のホットメルト組成物をカーペットおよびフロアー材の裏面に塗工して製造されたカーペットおよびフロアー材。

【公開番号】特開2007−224101(P2007−224101A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44675(P2006−44675)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】