滓池塗滓の回収方法
【課題】 水洗式塗装ブースの循環水に吸収して、増加してくるオーバースプレー塗料の塗滓を、効率的に自動除去する方法を提供する。
【解決手段】 循環水洗式塗装ブースの滓池に塗滓を浮上させる薬剤を添加しておき、分散浮上した塗滓をフロートポンプで回収し、回収した塗滓を含む滓池の循環水を、更に円心回転する円筒状の垂直浮上型の加圧浮上装置に回転方向と交流になるように円筒状の底部へ送り、浮上した塗滓をスクープにより連続濃縮回収する。
【解決手段】 循環水洗式塗装ブースの滓池に塗滓を浮上させる薬剤を添加しておき、分散浮上した塗滓をフロートポンプで回収し、回収した塗滓を含む滓池の循環水を、更に円心回転する円筒状の垂直浮上型の加圧浮上装置に回転方向と交流になるように円筒状の底部へ送り、浮上した塗滓をスクープにより連続濃縮回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は比較的大規模な循環式水洗塗装ブースの溜め槽、通称滓池の循環水に混入してくる、オーバースプレー塗料カスの除去回収方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
自動車ボディーや部品などを連続的に塗装する際、スプレーガンから被塗物に塗料を吹き付けて、被塗物に塗着しなかった塗料飛沫をオーバースプレー塗料と呼ぶ。
このオーバースプレー塗料を、水洗塗装ブースとよばれる装置の循環水に吸収させ、水洗ブースの使用を繰り返していると、オーバースプレー塗料が次第に循環水中に塗料カスとして堆積してくる。
循環水にはペイントキラー剤と呼ばれる、塗料カスに非粘着性を与える薬剤を少量添加しておき、水に混合した塗料カスがベタベタしないように処理されている。水に混合した塗料カス（今後、塗滓と呼称する）は循環水の溜め池（以後、滓池と呼称する）に沈降したり、浮上したりするので、各種方法を駆使して除去している。
もっとも簡単な除去方法としては「たも」で浮上している塗滓を作業者が掬い、バスケットに溜める作業が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、滓池に混入してくる塗滓は次第に蓄積され、滓池に堆積してくることになる。
この塗滓を物理的な除去方法を用いて自動的に連続除去し、滓池に堆積してくる塗滓によるポンプの閉塞や、ブース配管の詰まりなどができるだけ起きないようにしている。
それでも次第に塗滓は増えてくるので、時々全面的に滓池の水を棄てて、堆積した塗滓を滓池から取り出すメンテナンス清掃作業も行われる。
【０００４】
このメンテナンス清掃作業は、とても大変な作業であるので、出来るだけ効率の良い、物理的な除去方法の開発が望まれていた。
物理的な除去方法には各種あるが、扱う滓池の水量が非常に多いので、それに伴って塗滓の除去装置も、大型にならざるを得ないのが実情であった。
また、物理的な除去方法には各種の方法があるが、どれも一長一短があり高効率の塗滓除去方法はなかった。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上述の課題を解決するために、本発明では滓池内から塗滓を回収する手段と、高効率の加圧浮上装置を組み合わせることで、塗滓を効率良く循環水系外に除去する方法を提案するものである。
さらに除去回収した高濃度懸濁物質（ＳＳ）は、必要に応じて各種脱水装置と組み合わせ、減容化することができる。
【０００６】
例えば滓池内から塗滓を回収する手段としては、滓池の底部に沈降する塗滓は、水中ポンプで循環水とともに吸い出し、分散浮上している塗滓についてはフロート式スカム回収ポンプに吸い込ませて、加圧浮上装置へ送液する方法がある。本特許では主に分散浮上塗滓の回収手段を用いるが、沈降塗滓を分散させて加圧浮上装置へ導入することも有効な手段である。
【０００７】
加圧浮上装置は大量の処理水を効率良く処理できるコンパクトなものがよい。
本発明では各種ある加圧浮上装置を詳細に調査検討し、米国ＫＷＩ社製ＳＰＣ加圧浮上装置（米国特許）が排水処理のスカム状物質の除去に使用されていることを見いだし、この加圧浮上装置を塗滓除去に応用使用したところに特徴がある。
【０００８】
ＫＷＩ社のＳＰＣ型加圧浮上装置の技術的な特徴は、回収液を流入させる加圧浮上槽での液体の水流（横流速度）を、浮上懸濁物質の掻き取りのためのスクープで起こす向流で相殺し、槽内横流速度をゼロまたは殆ど無くすことで、懸濁物質の浮上を垂直に近い状態になるように調整し、浮上速度が最も早くなる処理条件を創出していることである。
【０００９】
このように浮上速度を極めて早く出来ることにより、浮上槽内に滞留させる液体の容量が少なくて済む。
【発明の効果】
【００１０】
本発明では水洗塗装ブース滓池の塗滓の回収を、分散浮上塗料と沈降塗料の両方の塗滓を別々のポンプで行うので、滓池内の塗滓の状態に関わらず、どのような状態でも回収できる。
そのため、どのようなタイプの塗料に対しても対応できる。
【００１１】
また加圧浮上装置は、横流れ水流がほぼ停止される状態に近ずけられるので、浮上速度がはやくなり、従来と同じ容量の浮上槽では大量の処理水を扱うことが出来、または従来とおなじ処理水量なら、従来よりも小さい容量の浮上槽で良いことになる。
【００１２】
このように、これまでの滓池の塗滓回収除去システムでは、大きな加圧浮上装置を必要とし、効率の悪さを設備の大きさで補う必要があったが、本発明のシステムでは前記した回収方法と組み合わせたことにより、各種塗料滓に対応可能となり、設備に関しても大幅に縮小改善され、省スペース化される。
設備がコンパクト化できるため、設備投資にかかる金額も大幅に削減できることになる。
さらに浮上槽の深さを抑えてあるので、メンテナンス性が格段に改善されるなど、発明の効果は多岐に波及し得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
図１は本発明のシステムの概要を示すフローシートである。
本発明を実施するための最良の形態を図１により説明する。
図１において１は滓池で、２は塗装ブースの循環水配管のもどり配管である。
塗装ブースで循環水に吸収されたオーバースプレー塗料飛沫は、２の配管を通って滓池１に導入される。
３，４は滓池の底に設置された水中ポンプで、沈降性の塗滓を回収するために設置されている。
７，８は滓池に戻ってきた循環水の底部に、沈隆性の塗滓がよどむのを防止するための攪拌機であり、循環水戻り箇所の底部に設置された堰の内側にそれぞれ配設される。
５は滓池液面６近辺に分散浮上している塗滓を回収するためのフロートポンプであり、３，４，５の各回収ポンプにて回収された塗滓は、循環水と共に送り配管９を通ってクッション槽１０に送られる。
【００１４】
クッション槽１０に送られた回収液は、懸濁物質（塗滓）を選択的に収集した回収循環水で、ある程度分散させるために、クッション槽内は攪拌機１１により常時攪拌を行っている。
クッション槽１０内の塗滓を含む循環水はポンプ１２により、送り配管１３を通って円筒状の加圧浮上装置１５内の、底部排出口１４から排出される。
【００１５】
クッション槽１０から加圧浮上装置本体１５内に送られる配管１３の途中に、加圧浮上装置１５内から送り配管２０を通った循環水が、ポンプ１６により送られ、空気溶解チューブ１９を通過して混入する構造になっている。
１８はコンプレッサーで空気溶解チューブへ圧縮エアーを送り加圧供給している。
【００１６】
２８は浮上塗滓を掬うスパイラル・スクープ（らせん状のひしゃく）を回転させるギヤーモーターである。図１では図示していないがスパイラルスクープは反時計回り方向に回転させている。
加圧浮上装置に送られる循環液は、排出口１４から加圧浮上装置本体１５内へ排出するが、排出方向は時計回り方向に排出されているため、槽内の液はスパイラルスクープによる旋回流と、配管１３を通って排出口１４から排出される循環処理水による回転が向流となるため、横方向の流速が相殺され、殆ど速度ゼロに調整することができる。
そのため、循環処理水は空気が混合された圧縮水となっているので、垂直に塗滓を抱き込んだ状態で急速に浮上する。
【００１７】
スパイラルスクープで掬われた浮上塗滓は、加圧浮上槽の中央にある分離部２９に集められ、濃厚な塗滓を含む処理水となって排出管１７を経由してクッション均一槽２２に送られる。
クッション均一槽では既に十分な塗滓回収濃度に濃縮されているが、さらに減容化する場合は、ポンプ２３により送り配管２４を経由させて、例えば高速遠心分離脱水機２５に送って脱水を行う。
一方、塗滓分離部２９内の下部清澄水は円筒堰をオーバーフローして、返送配管３０を通って滓池１に返送される。
２６は高速遠心脱水機で脱水処理された、塗滓を一時的に収容するバスケットであり、２７は高速遠心脱水機により固形分が分離された循環水の返送管で、滓池１に返送する。
【００１８】
以上説明したように、塗装ブースでオーバースプレー塗料を吸収した塗滓を含む循環水は、滓池から加圧浮上装置を経由してくる間に、塗滓が殆ど分離されて固形分の除去された循環水として、再び滓池にもどり繰り返し塗装ブースにサイクルして使用される。
【実施例】
【００１９】
次に本発明の具体的な装置での実施例を〔図１〕のフローシートに沿って説明する。
滓池１はＳ社の自動車部品を塗装している水洗塗装ブースに循環水を供給しており、槽内の総水量は約２５０ｍ３である。
その循環水量はおよそ３０〜４０ｍ３／分であり、塗装ブースでは約４３０ｋｇ／１６時間（４５０ｇ／分）の塗料がオーバースプレーされており、滓池にはペイントキラー剤としてケミコート社製品がオーバースプレー塗料の１０％になるように薬液タンク３１から、定量補給ポンプ３２により補給されている。
ペイントキラー剤は塗滓を浮上させるタイプの薬剤で、図では示していないが、３種類の薬剤をそれぞれべつのポンプで補給しており、その合計量がオーバースプレー塗料の約１０％になるようにしてある。
【００２０】
この時、滓池内の懸濁物質量は３，０００〜６，０００ｐｐｍとなっていた。
滓池内のフロート式回収ポンプ５（吸い込み能力５０〜１００リットル／分）により浮上している塗滓を回収し、循環水とともにクッション槽１０を経由させて加圧浮上装置１５に約７５リットル／分で送液した。
加圧浮上装置１５は日本ユー・エス・マシナリー社が日本国総代理店である、米国ＫＷＩ社のＳＰＣ型加圧浮上装置（処理能力１００リットル／分）で、直径１．２ｍ、液高さ６０ｃｍのコンパクトな円筒状装置である。
【００２１】
加圧浮上装置１５で浮上分離された懸濁物質を含む分離液の、懸濁物質濃度は１５，０００〜２０，０００ｐｐｍであった。
集められた塗滓を高濃度に含む浮上物は、クッション均一槽２２に送られた後、遠心分離機２５（処理能力１５〜３０分／回、分離槽容積３０リットル）に送り、２０分間脱水処理し４０〜６０％の含水率の固形物７〜９ｋｇ／回を得た。
固形物は３３０〜４３０ｋｇ／日となり、オーバースプレー塗料の約５０％程度が回収された。
【産業上の利用可能性】
【００２２】
実施例で示したように水中に噴霧された塗滓が、高効率で回収されるという試験結果を得たことから、これまで人力で「たも」により浮上した塗滓を掬ったり、各種回収方法で除去していたこれら塗滓除去法では、極めて効率が悪かったが本発明の方法を適用することで、非常に効率が良くなると考えられる。また、その導入も装置そのものが非常にコンパクトであること、設備費が従来の装置と比べて安価で済むこと、メンテナンス性に優れているなどから利用可能性は極めて有望である。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
図１は本発明のシステムの概要を示すフローシートであり、１が滓池で塗装ブースには滓池内に貯留されている循環水が、ポンプにより送られ、滓池と塗装ブースの間を循環している。
滓池の液表面には塗装ブースにて吸収された塗滓を浮上させるので、この浮上塗滓を吸引収集するためのフロート式スカム回収ポンプ５が、滓池表面に浮上した状態で設置されている。
【００２４】
フロート式スカム回収ポンプで回収された、塗滓を含む循環水はクッション槽１０に送られた後、加圧浮上装置により塗滓が濃縮されてクッション均一槽２２に排出管１７により移送される。
加圧浮上装置では塗滓除去後の清澄液は、滓池に返送される。
【００２５】
クッション均一槽に集められた、塗滓を多量に含む循環水は更に遠心分離器に送られ、脱水されて含水率４０％〜６０％程度の固形物とした後、廃棄または有効利用される。
一方、脱水された遠心分離循環水は滓池に返送される。
【符号の説明】
【００２６】
１…塗滓 １７…排出管
２…循環水のもどり配管 １８…コンプレッサー
３〜４…水中ポンプ １９…空気溶解チューブ
５…フロートポンプ ２０…送り配管
６…滓池表面 ２１…攪拌機
７〜８……攪拌機 ２２…クッション均一槽
９…送り配管 ２３…ポンプ
１０…クッション槽 ２４…送り配管
１１…攪拌機 ２５…高速遠心分離脱水機
１２…ポンプ ２６…バスケット
１３…送り配管 ２７…循環水返送管
１４…底部排出口 ２８…スパイラルスクープ
１５…加圧浮上装置本体 ２９…塗滓分離部
１６…ポンプ ３０…返送配管
【図１】
【技術分野】
【０００１】
本発明は比較的大規模な循環式水洗塗装ブースの溜め槽、通称滓池の循環水に混入してくる、オーバースプレー塗料カスの除去回収方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
自動車ボディーや部品などを連続的に塗装する際、スプレーガンから被塗物に塗料を吹き付けて、被塗物に塗着しなかった塗料飛沫をオーバースプレー塗料と呼ぶ。
このオーバースプレー塗料を、水洗塗装ブースとよばれる装置の循環水に吸収させ、水洗ブースの使用を繰り返していると、オーバースプレー塗料が次第に循環水中に塗料カスとして堆積してくる。
循環水にはペイントキラー剤と呼ばれる、塗料カスに非粘着性を与える薬剤を少量添加しておき、水に混合した塗料カスがベタベタしないように処理されている。水に混合した塗料カス（今後、塗滓と呼称する）は循環水の溜め池（以後、滓池と呼称する）に沈降したり、浮上したりするので、各種方法を駆使して除去している。
もっとも簡単な除去方法としては「たも」で浮上している塗滓を作業者が掬い、バスケットに溜める作業が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、滓池に混入してくる塗滓は次第に蓄積され、滓池に堆積してくることになる。
この塗滓を物理的な除去方法を用いて自動的に連続除去し、滓池に堆積してくる塗滓によるポンプの閉塞や、ブース配管の詰まりなどができるだけ起きないようにしている。
それでも次第に塗滓は増えてくるので、時々全面的に滓池の水を棄てて、堆積した塗滓を滓池から取り出すメンテナンス清掃作業も行われる。
【０００４】
このメンテナンス清掃作業は、とても大変な作業であるので、出来るだけ効率の良い、物理的な除去方法の開発が望まれていた。
物理的な除去方法には各種あるが、扱う滓池の水量が非常に多いので、それに伴って塗滓の除去装置も、大型にならざるを得ないのが実情であった。
また、物理的な除去方法には各種の方法があるが、どれも一長一短があり高効率の塗滓除去方法はなかった。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
上述の課題を解決するために、本発明では滓池内から塗滓を回収する手段と、高効率の加圧浮上装置を組み合わせることで、塗滓を効率良く循環水系外に除去する方法を提案するものである。
さらに除去回収した高濃度懸濁物質（ＳＳ）は、必要に応じて各種脱水装置と組み合わせ、減容化することができる。
【０００６】
例えば滓池内から塗滓を回収する手段としては、滓池の底部に沈降する塗滓は、水中ポンプで循環水とともに吸い出し、分散浮上している塗滓についてはフロート式スカム回収ポンプに吸い込ませて、加圧浮上装置へ送液する方法がある。本特許では主に分散浮上塗滓の回収手段を用いるが、沈降塗滓を分散させて加圧浮上装置へ導入することも有効な手段である。
【０００７】
加圧浮上装置は大量の処理水を効率良く処理できるコンパクトなものがよい。
本発明では各種ある加圧浮上装置を詳細に調査検討し、米国ＫＷＩ社製ＳＰＣ加圧浮上装置（米国特許）が排水処理のスカム状物質の除去に使用されていることを見いだし、この加圧浮上装置を塗滓除去に応用使用したところに特徴がある。
【０００８】
ＫＷＩ社のＳＰＣ型加圧浮上装置の技術的な特徴は、回収液を流入させる加圧浮上槽での液体の水流（横流速度）を、浮上懸濁物質の掻き取りのためのスクープで起こす向流で相殺し、槽内横流速度をゼロまたは殆ど無くすことで、懸濁物質の浮上を垂直に近い状態になるように調整し、浮上速度が最も早くなる処理条件を創出していることである。
【０００９】
このように浮上速度を極めて早く出来ることにより、浮上槽内に滞留させる液体の容量が少なくて済む。
【発明の効果】
【００１０】
本発明では水洗塗装ブース滓池の塗滓の回収を、分散浮上塗料と沈降塗料の両方の塗滓を別々のポンプで行うので、滓池内の塗滓の状態に関わらず、どのような状態でも回収できる。
そのため、どのようなタイプの塗料に対しても対応できる。
【００１１】
また加圧浮上装置は、横流れ水流がほぼ停止される状態に近ずけられるので、浮上速度がはやくなり、従来と同じ容量の浮上槽では大量の処理水を扱うことが出来、または従来とおなじ処理水量なら、従来よりも小さい容量の浮上槽で良いことになる。
【００１２】
このように、これまでの滓池の塗滓回収除去システムでは、大きな加圧浮上装置を必要とし、効率の悪さを設備の大きさで補う必要があったが、本発明のシステムでは前記した回収方法と組み合わせたことにより、各種塗料滓に対応可能となり、設備に関しても大幅に縮小改善され、省スペース化される。
設備がコンパクト化できるため、設備投資にかかる金額も大幅に削減できることになる。
さらに浮上槽の深さを抑えてあるので、メンテナンス性が格段に改善されるなど、発明の効果は多岐に波及し得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
図１は本発明のシステムの概要を示すフローシートである。
本発明を実施するための最良の形態を図１により説明する。
図１において１は滓池で、２は塗装ブースの循環水配管のもどり配管である。
塗装ブースで循環水に吸収されたオーバースプレー塗料飛沫は、２の配管を通って滓池１に導入される。
３，４は滓池の底に設置された水中ポンプで、沈降性の塗滓を回収するために設置されている。
７，８は滓池に戻ってきた循環水の底部に、沈隆性の塗滓がよどむのを防止するための攪拌機であり、循環水戻り箇所の底部に設置された堰の内側にそれぞれ配設される。
５は滓池液面６近辺に分散浮上している塗滓を回収するためのフロートポンプであり、３，４，５の各回収ポンプにて回収された塗滓は、循環水と共に送り配管９を通ってクッション槽１０に送られる。
【００１４】
クッション槽１０に送られた回収液は、懸濁物質（塗滓）を選択的に収集した回収循環水で、ある程度分散させるために、クッション槽内は攪拌機１１により常時攪拌を行っている。
クッション槽１０内の塗滓を含む循環水はポンプ１２により、送り配管１３を通って円筒状の加圧浮上装置１５内の、底部排出口１４から排出される。
【００１５】
クッション槽１０から加圧浮上装置本体１５内に送られる配管１３の途中に、加圧浮上装置１５内から送り配管２０を通った循環水が、ポンプ１６により送られ、空気溶解チューブ１９を通過して混入する構造になっている。
１８はコンプレッサーで空気溶解チューブへ圧縮エアーを送り加圧供給している。
【００１６】
２８は浮上塗滓を掬うスパイラル・スクープ（らせん状のひしゃく）を回転させるギヤーモーターである。図１では図示していないがスパイラルスクープは反時計回り方向に回転させている。
加圧浮上装置に送られる循環液は、排出口１４から加圧浮上装置本体１５内へ排出するが、排出方向は時計回り方向に排出されているため、槽内の液はスパイラルスクープによる旋回流と、配管１３を通って排出口１４から排出される循環処理水による回転が向流となるため、横方向の流速が相殺され、殆ど速度ゼロに調整することができる。
そのため、循環処理水は空気が混合された圧縮水となっているので、垂直に塗滓を抱き込んだ状態で急速に浮上する。
【００１７】
スパイラルスクープで掬われた浮上塗滓は、加圧浮上槽の中央にある分離部２９に集められ、濃厚な塗滓を含む処理水となって排出管１７を経由してクッション均一槽２２に送られる。
クッション均一槽では既に十分な塗滓回収濃度に濃縮されているが、さらに減容化する場合は、ポンプ２３により送り配管２４を経由させて、例えば高速遠心分離脱水機２５に送って脱水を行う。
一方、塗滓分離部２９内の下部清澄水は円筒堰をオーバーフローして、返送配管３０を通って滓池１に返送される。
２６は高速遠心脱水機で脱水処理された、塗滓を一時的に収容するバスケットであり、２７は高速遠心脱水機により固形分が分離された循環水の返送管で、滓池１に返送する。
【００１８】
以上説明したように、塗装ブースでオーバースプレー塗料を吸収した塗滓を含む循環水は、滓池から加圧浮上装置を経由してくる間に、塗滓が殆ど分離されて固形分の除去された循環水として、再び滓池にもどり繰り返し塗装ブースにサイクルして使用される。
【実施例】
【００１９】
次に本発明の具体的な装置での実施例を〔図１〕のフローシートに沿って説明する。
滓池１はＳ社の自動車部品を塗装している水洗塗装ブースに循環水を供給しており、槽内の総水量は約２５０ｍ３である。
その循環水量はおよそ３０〜４０ｍ３／分であり、塗装ブースでは約４３０ｋｇ／１６時間（４５０ｇ／分）の塗料がオーバースプレーされており、滓池にはペイントキラー剤としてケミコート社製品がオーバースプレー塗料の１０％になるように薬液タンク３１から、定量補給ポンプ３２により補給されている。
ペイントキラー剤は塗滓を浮上させるタイプの薬剤で、図では示していないが、３種類の薬剤をそれぞれべつのポンプで補給しており、その合計量がオーバースプレー塗料の約１０％になるようにしてある。
【００２０】
この時、滓池内の懸濁物質量は３，０００〜６，０００ｐｐｍとなっていた。
滓池内のフロート式回収ポンプ５（吸い込み能力５０〜１００リットル／分）により浮上している塗滓を回収し、循環水とともにクッション槽１０を経由させて加圧浮上装置１５に約７５リットル／分で送液した。
加圧浮上装置１５は日本ユー・エス・マシナリー社が日本国総代理店である、米国ＫＷＩ社のＳＰＣ型加圧浮上装置（処理能力１００リットル／分）で、直径１．２ｍ、液高さ６０ｃｍのコンパクトな円筒状装置である。
【００２１】
加圧浮上装置１５で浮上分離された懸濁物質を含む分離液の、懸濁物質濃度は１５，０００〜２０，０００ｐｐｍであった。
集められた塗滓を高濃度に含む浮上物は、クッション均一槽２２に送られた後、遠心分離機２５（処理能力１５〜３０分／回、分離槽容積３０リットル）に送り、２０分間脱水処理し４０〜６０％の含水率の固形物７〜９ｋｇ／回を得た。
固形物は３３０〜４３０ｋｇ／日となり、オーバースプレー塗料の約５０％程度が回収された。
【産業上の利用可能性】
【００２２】
実施例で示したように水中に噴霧された塗滓が、高効率で回収されるという試験結果を得たことから、これまで人力で「たも」により浮上した塗滓を掬ったり、各種回収方法で除去していたこれら塗滓除去法では、極めて効率が悪かったが本発明の方法を適用することで、非常に効率が良くなると考えられる。また、その導入も装置そのものが非常にコンパクトであること、設備費が従来の装置と比べて安価で済むこと、メンテナンス性に優れているなどから利用可能性は極めて有望である。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
図１は本発明のシステムの概要を示すフローシートであり、１が滓池で塗装ブースには滓池内に貯留されている循環水が、ポンプにより送られ、滓池と塗装ブースの間を循環している。
滓池の液表面には塗装ブースにて吸収された塗滓を浮上させるので、この浮上塗滓を吸引収集するためのフロート式スカム回収ポンプ５が、滓池表面に浮上した状態で設置されている。
【００２４】
フロート式スカム回収ポンプで回収された、塗滓を含む循環水はクッション槽１０に送られた後、加圧浮上装置により塗滓が濃縮されてクッション均一槽２２に排出管１７により移送される。
加圧浮上装置では塗滓除去後の清澄液は、滓池に返送される。
【００２５】
クッション均一槽に集められた、塗滓を多量に含む循環水は更に遠心分離器に送られ、脱水されて含水率４０％〜６０％程度の固形物とした後、廃棄または有効利用される。
一方、脱水された遠心分離循環水は滓池に返送される。
【符号の説明】
【００２６】
１…塗滓 １７…排出管
２…循環水のもどり配管 １８…コンプレッサー
３〜４…水中ポンプ １９…空気溶解チューブ
５…フロートポンプ ２０…送り配管
６…滓池表面 ２１…攪拌機
７〜８……攪拌機 ２２…クッション均一槽
９…送り配管 ２３…ポンプ
１０…クッション槽 ２４…送り配管
１１…攪拌機 ２５…高速遠心分離脱水機
１２…ポンプ ２６…バスケット
１３…送り配管 ２７…循環水返送管
１４…底部排出口 ２８…スパイラルスクープ
１５…加圧浮上装置本体 ２９…塗滓分離部
１６…ポンプ ３０…返送配管
【図１】
【特許請求の範囲】
【請求項１】
（１）循環式水洗塗装ブースの溜め池に混入したオーバースプレー塗料の分散浮上塗滓を、フロート式回収ポンプで回収し、回収した塗滓を含むブース循環水を、円筒状のタンク底部からタンク液表面と水平に吐出するように送り込み、タンク内に旋回流を起こさせるとともに、タンクの液表面では循環水が送り込まれたことにより起きる旋回流とは逆の回転のスクープにより、浮上した懸濁物質（塗滓）を掬い集めながら、旋回流に対する向流を発生させ、旋回流を相殺することにより、実質的に横流速を調整して浮上方向を垂直に近づけることにより、懸濁物質（塗滓）の浮上速度を速めるようにした加圧浮上装置で、循環水中の塗滓を除去する装置。
【請求項１】
（１）循環式水洗塗装ブースの溜め池に混入したオーバースプレー塗料の分散浮上塗滓を、フロート式回収ポンプで回収し、回収した塗滓を含むブース循環水を、円筒状のタンク底部からタンク液表面と水平に吐出するように送り込み、タンク内に旋回流を起こさせるとともに、タンクの液表面では循環水が送り込まれたことにより起きる旋回流とは逆の回転のスクープにより、浮上した懸濁物質（塗滓）を掬い集めながら、旋回流に対する向流を発生させ、旋回流を相殺することにより、実質的に横流速を調整して浮上方向を垂直に近づけることにより、懸濁物質（塗滓）の浮上速度を速めるようにした加圧浮上装置で、循環水中の塗滓を除去する装置。
【公開番号】特開２００６−６１８９２（Ｐ２００６−６１８９２Ａ）
【公開日】平成１８年３月９日（２００６．３．９）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−２７４１８３（Ｐ２００４−２７４１８３）
【出願日】平成１６年８月２４日（２００４．８．２４）
【出願人】（５９１０６９８９１）株式会社ケミコート (11)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年３月９日（２００６．３．９）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年８月２４日（２００４．８．２４）
【出願人】（５９１０６９８９１）株式会社ケミコート (11)
【Ｆターム（参考）】
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