説明

滴定装置及び方法

滴定すべき非流動性サンプル溶液用の滴定容器、選定されたイオンのイオン源溶液を含むイオン源容器、イオンを上記イオン源溶液から上記滴定容器に通すが、バルク液流は遮断し得るイオン交換膜バリア、上記イオン源容器と電気接続している第1電極、及び、上記滴定容器と電気接続している第2電極を含む滴定装置。また、前記滴定装置内で使用するための電解滴定剤生成器も特許請求している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滴定装置及び方法に関し、更に詳細には、電解滴定剤生成を使用する滴定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの総酸度又は総アルカリ度を測定することは、今日、多くの産業研究所におけるサンプル特性決定の日常的業務である。この測定を達成する簡単な方法は、適切な滴定剤、通常は酸又は塩基滴定剤を、pH又は伝導率のようなサンプル特性をモニターしながら撹拌サンプルに添加する容量測定ビュレットを含む容量滴定装置を使用する。検出器応答対滴定剤容量の特性プロット及び関連の終点から、与えられたサンプル中の酸又は塩基の当量を判定する。滴定の分野は、100年を超え古く、滴定の種々の状況を対象とする意義のある文献が存在する。また、滴定理論及び終点判定の基本的局面を対象とする基礎分析化学における幾つかの書物も存在する (例えば、Analytical Chemistry HandBook, by John A. Dean, McGraw Hill Inc, 1995のGravimetric and Volumetric Analysisと題するChapter 3)。
【0003】
最近の滴定装置は、例えば、電動式シリンジを使用することによる液体滴定剤の自動化分配手段を使用している。滴定剤の分配は、一定容量を有する各増分による一定方式において或いは滴定剤を大アリコートに添加する動的方式において実施しており、終点近くでは、添加回数を減らして終点の正確な判定を得ている。動的方式は、分析を迅速に処理し、分析時間を短縮する。進展しているにもかかわらず、最近の滴定装置は、頻繁に調製し補充して分解又は汚染物の蓄積が確実にないようにすることを必要とする液体滴定剤試薬を依然として使用している。例えば、塩基滴定剤による滴定は、塩基性転移点を有する指示薬(フェノールフタレイン)による炭酸塩誤差をもたらす。塩基性滴定剤においては、製造及び保存中の適切な予防措置を講じる必要がある。
【0004】
電量分析は、滴定分野において確立された方法である。典型的には、容量滴定においては、サンプル中の酸又は塩基を中和するのに必要な液体滴定剤の容量を測定する。電量滴定においては、滴定剤を電気化学的に生成させ、電荷の量を測定する。電量滴定法は、第一種及び第二種滴定として分類し得る。第一種滴定法においては、滴定剤を電極から直接誘導する。このタイプの電極の例は、銀金属、水銀又は水銀アマルガム或いは銀‐ハロゲン化銀によってコーティーングした電極であり、これらの電極は滴定に必要なイオンを発生させる、例えば、銀金属アノードは、塩化物を滴定するのに使用し得る銀イオンを生成する。第二種滴定法は、更に一般的であり、支持電解質に添加するプレカーサーから生成させた中イオンを使用する。上記中イオンは、100%の電流効率でもって生成させなければならず、測定する物質と迅速に且つ化学量論的に反応しなければならない。例えば、Fe(II)のFe(III)への電量滴定においては、その方法は、過剰のCe (III)をプレカーサーとして支持電解室硫酸に添加しない限り、100%の電流効率ではない。
【0005】
電量滴定における電流は、通常、一定に維持され、時間を秒でモニターすることによって、1つの種を滴定するのに必要とするクローン数ひいては当量数を容易に導き出せる。滴定の終点の検出は、指示薬の添加による色変化のような通常の手段によって生じる。また、電流測定、pH又は導電度検出を使用するような他の手段も一般的に使用される。
【0006】
文献の再検討によれば、滴定の種々の局面に関連する幾つかの特許及び刊行物が存在することが明らかである。米国特許第2,744,061号は、試薬を滴定セルとは別個のセル内で調製し、その後、試薬を滴定容器(vessel)に導入する滴定装置を開示している。そのような方式は、酸及び塩基を1M 硫酸ナトリウム溶液の電気分解から生成させ、どちらか一方の流を滴定に導入し得る。この方法は、上記電解質の全てを酸又は塩基の形成に使用してなく、このために、検出が塩の存在に感受性のある検出器に限られるので、a) サンプル希釈ミス、b) 硫酸ナトリウム供給流を制御する必要性、c) 塩溶液のサンプルへの添加に遭遇している。例えば、導電度検出器を、上記方式においては使用できない;何故ならば、1M塩溶液の導電度は、検出器応答を圧倒し、少量の酸及び塩基の存在からの導電殿僅かな変化を検出することを困難にしているからである。
【0007】
銀陽極から発生させた銀イオンを使用する電量滴定装置のもう1つの変形は、米国特許第3,032,493号において論じられている。滴定装置の更にもう1つの変形は、米国特許第3,308,041号において論じられている。この変形は、プロセス活用のための連続滴定装置である。滴定剤を電量的に生成させ、その後、液体サンプルと混合して反応物生成物を調製し、これを、検出のための検知手段に向けている。また、生成させた滴定剤の制御を可能にする検知と滴定剤間のある種のフィードバックメカニズムも論じられている。
【0008】
米国特許3,856,633号は、銀陽極及び白金陰極からサンプルシアン化物イオンの存在下に電量的に生成させた銀イオンを使用する濃度測定方法を開示している。銀イオンは、シアン化物イオンと反応して遊離の銀イオン利用率を低下させる、その後、この利用率を硫化銀膜を通して電位測定によりモニターする。サンプルと反応していない遊離の銀イオンは上記膜の1面上に存在し、既知量の銀イオンを含む標準は上記幕の他の面上に存在する。発生した電位から、サンプルイオンに対する検出器本発明構想が活用可能であった。もう1つの実施態様においては、硫化銀幕を銀陽極と白金陰極の間に置いて銀陽極をサンプル中の硝酸塩のような反応性種への暴露から保護している。
【0009】
米国特許4,007,105号は、銀陽極及び白金陰極を酸電解質媒体中で使用する血液サンプル中の塩化物の電量滴定用の滴定装置を開示している。印加電流に比例して生成した銀イオンはサンプル中の塩化物と反応して塩化銀を生じる、その滴定を一対の電流測定電極を使用してモニターしている。また、上記電極セルの配列も開示している。
【0010】
上記の試みの多くにおいて、分析物イオンの酸化又は還元は、生成電極において、溶液から分析物が激減とき生じるので、濃度分極と称する作用が生じる。従って、電位を増大させ定電流操作を維持しなければならない。この高めの電位は、そのことがまた、電極表面上での望ましくない副反応による低電流効率を生じる。
【0011】
通常の電量滴定は反応させるべき分析物の全部を必要とするけれども、電極近くのサンプル流の一部のみを滴定する“フラッシュ滴定”と称するこの方法の変形は、全体的滴定時間を有意に短縮している。その方法論は拡散調整法であるので、上記方法は、各種サンプル酸及び塩基の種々の拡散速度、温度及びサンプル粘度に対して感受性である。マトリックス調整係数と称する較正処置が上記の作用を補うのに必要である。
【発明の概要】
【0012】
本発明の1つの実施態様は、滴定すべき非流動性サンプル溶液用の滴定容器(reservior)、正又は負の選定されたイオンのイオン源溶液を含むイオン源容器(reservior);正又は負の電荷のイオンは上記イオン源溶液から上記滴定容器に通すが、バルク液流は遮断し得るイオン交換膜バリア、上記イオン源容器と電気接続している第1電極、及び、上記イオン源容器と電気接続している第2電極を含む滴定装置であって、上記第1電極が、電流を上記第1及び第2電極間に加えたときに不活性であることを特徴とする。
【0013】
他の実施態様は、イオン源容器、上記イオン源容器内に配置した第1電極、第1及び第2の側面を有し、第1側面が、上記イオン源容器に隣接し且つ正又は負電荷のイオンは輸送するがバルク液流は遮断し得るイオン交換膜バリア、及び、上記膜バリアの第2側面に隣接して配置した第2電極を含む滴定装置内で使用する電解滴定剤生成器(generator)であって、該滴定剤生成器は、滴定すべきサンプル溶液用の滴定容器を含まないが、滴定容器内のサンプル溶液中に浸漬するように設定されていることを特徴とする。
【0014】
さらなる実施態様は、上記タイプの滴定装置を使用する液体サンプルの滴定のための電気分解方法である。上記方法は、上記第1及び第2電極間に電位を加えて、上記選定されたイオンを前記イオン源容器から上記膜バリアを介して上記滴定容器内のサンプル溶液中に輸送せしめて、上記サンプル溶液を終点まで滴定する工程(上記第1電極は上記電位の適用中は不活性であること)、及び、上記滴定終点を検出する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従う滴定剤生成器の分解概略図である。
【図2】図1の滴定剤生成器の囲いの上面図である。
【図3】本発明に従う滴定装置の概略図である。
【図4】本発明方法を使用しての試験滴定結果をプロットしているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、電解滴定剤生成器、電解滴定剤生成器を組込んでいる滴定装置及びそのような装置を使用する滴定方法の各実施態様を包含する。本発明を、先ず、滴定剤生成器に関連して説明する。
【0017】
上記滴定剤生成器は、滴定すべき非流動性サンプル溶液を典型的に含む滴定容器に取付けることのできるポータブル装置の形であり得る。一般に、上記滴定剤せいせい器は、以下のように作動する。イオンを、上記生成器の隔離チャンバー内のイオン源溶液からイオン交換膜バリアを介してサンプル溶液の上記滴定容器中に輸送する。第1電極を上記イオン源容器内に配置し、第2電極を上記イオン源容器からは上記膜バリアの他の面に隣接して配置する。可搬性のためには、上記滴定剤生成器は、上記滴定容器とは別個であり得、サンプル溶液中に浸漬するように設定されている。従って、上記滴定剤生成器は、滴定容器のサンプル溶液中に浸漬させるために十分に小さい。水性イオン源容器からの滴定又は膜バリアを通してこのバリアの他の面上の水溶液中に電場の影響下での輸送のためにイオンを供給する原理は、米国特許第6,225,129号に開示されているような電解溶離剤生成器の操作と同様である。上記‘129号特許に開示されているそのような原理及び種々の装置は、参考として本明細書に合体させる。
【0018】
滴定剤生成器の1つの形態は、図1の分解概略図に例示しているアッセンブリ28である。上記滴定剤生成器は、選択的正又は負のイオン26源を充たしたイオン源貯留器即ち容器12を含む。そのような源は、酸、塩基又は塩の水溶液であり得、或いは、選定したイオンの交換性イオンを有するイオン交換樹脂であり得る。電極16は、容器10内のイオン源中に突出してイオン源と電気的に接触するように取付けられている。例示しているように、電極16は、容器12を囲い且つ電極16のための電気接続の経路付けをしている任意構成要素としての容器ふた14に取付けられている。ガス通気孔を、ふた14中のおけるようにして容器12に含ませて、電気的に発生したガスを上記容器から除去し得る。膜バリア20は、1枚、2枚、3枚又はそれ以上のイオン交換膜を含み得、容器12と交差し容器12と密封係合して容器底部近くに取り付ける。例示しているように、アッセンブリ28は、円筒形である。従って、例示しているような数的に3枚のバリア20のイオン交換膜は、積重ねたディスク形状にある。
【0019】
膜バリア20は、液流を実質的に遮断する。本明細書において使用するとき、実質的に遮断とは、少量の液漏出を除く全ての流れを遮断することを意味する。好ましくは、本質的に全てのバルク液流を遮断する。上記バリアは1枚のイオン交換膜であり得、或いは1枚以上のイオン交換膜をバリアとして使用し得る。上記バリアにおける膜の枚数は、好ましくは10枚未満、より好ましくは7枚未満、最も好ましくは約4枚未満、とりわけ1〜3枚の膜数である。複数の膜を有する理由は、イオン源溶液のサンプル中への濾出を最小限にすること及びイオン源溶液中へのサンプル逆流を実質的に遮断することである。
【0020】
電極24は、膜バリア20に容器12からは膜の反対側上で隣接する滴定容器内のサンプル溶液と接触させるために生成器28の底部近くに配置する。開口10A (図示していない)を有する囲い10を使用して電極24及びイオン交換膜バリア20を保持する。囲い10は、容器12に対して、テフロン(登録商標)のような不活性プラスチック材料から形成し得る“O”リングシール22を使用して、雄機械ネジ山18のような適切な取付け手段を使用して容器12に密封する。例示した実施態様においては、囲い10は、容器12の底部上の雄ネジ山18と一致する内部(雌)ネジ山を有して、シール22、膜バリア20及び電極24を囲って無漏出シールを形作っている。出力空洞(output cavity)と称する開口10Aには、滴定容器内のサンプル溶液への暴露のために電極24がはめ込まれている。
図2は、囲い10の上面図を示している。囲いの外径は、Aと表示し;電極及び膜をはめ込んだ出力空洞10Aの内部開口は、“B”と表示し;“O”リングシールをイオン源貯溜容器12の下部と密封するように取付けている密封表面は、“C”と表示している。
【0021】
アッセンブリ28の容器12は、フタ14内の入口から或いはこのふたを取外すことによってイオン源溶液で充たす。アッセンブリ底部の電極24は、完成滴定装置の一部としてサンプル溶液中に浸漬させているときには、滴定容器内のサンプル溶液と開放接触している。生成器アッセンブリ28は、好ましくは電極24の露出表面を滴定溶液中に浸漬させるような方向で、滴定容器に直接又は間接的に取付け得る。好ましい実施態様においては、電極24は、膜バリア20に対し近位の電極平坦表面の1つ及び滴定溶液との直接接触のために露出している上記膜バリアに対して遠位の電極表面と実質的に平坦である。適切には、電極24のこの遠位表面領域の大部分を環境に対して露出させて、電極を滴定容器の滴定すべき溶液中に浸漬させたときに、電極24の大表面積が、膜と電極を通しての電極の送電において利用可能であるようにする。図示していない別の実施態様においては、滴定での使用前に取外す着脱可能なふたを電極上に置き電極を輸送等において保護し得る。
【0022】
図示していない他の実施態様においては、上記滴定剤生成器は、矩形断面を有する形状のような円筒体以外の形状であり得る。同様に、電極24は、滴定溶液に浸漬させたときに膜と電気接続している限りは、膜バリア20と同じ断面及び配向を有する必要はない。例示しているように、膜バリア20は電極24と接触している。しかしながら、それらの間にはスペースが存在し得る。また、膜バリア20は、滴定溶液と直接接触していてもよい。
【0023】
任意の形状又は構造の電極及び膜は、好ましくは、滴定装置内の上記出力空洞と密接に適合させる。出力空洞は、小遅延容量を有し、それによって空洞からの一掃による如何なる問題も排除することが望ましい。遅延容量が大き過ぎる場合、生成滴定剤を取出しこれをサンプル中に分散させることが困難であり得る。好ましくは、出力空洞は、サンプルに対する露出電極面積と同じ寸法を有する。開放出力空洞の百分率として現す電極表面積は、好ましくは5〜100%の範囲内、より好ましくは少なくとも50%又は80%、最も好ましくは約100%である。
【0024】
好ましい実施態様においては、電極16及び24は、電位をこれら電極に加えたとき、酸又は塩基に対して不活性である。本明細書において使用するとき、“不活性”なる用語は、滴定及び選定した滴定イオン源として作動する電極の電解条件下において実質的に劣化する材料を除外する。従って、好ましい不活性電極は、従来技術において銀イオン源として使用している銀電極を除外する。電極用の好ましい不活性材料としては、白金、パラジウム、イリジウム等のような貴金属がある。
【0025】
図3は、図1において説明しているような滴定剤生成器アッセンブリ28を含む本発明に従う滴定装置を例示している。例示滴定装置においては、滴定剤生成器コンポーネントは、滴定槽にクランプ等によって適切に取付けられる上記で説明したポータブル生成器の形状であり得る。また、上記滴定剤生成器は、上記の槽内に突出するように構築され、直接取付けられている非ポータブルコンポーネントであり得る。
【0026】
とりわけ図3に関しては、滴定すべきサンプル水溶液30を含む滴定容器32を例示している。 好ましい実施態様においては、溶液30は、滴定中では実質的に非流動性である。撹拌機を有する撹拌棒(図示していない)は、滴定剤をサンプルと効率的に混合してサンプルを中和するようにサンプルを混合するのに使用し得る。本明細書において使用するとき、撹拌溶液は、非流動性であるとみなす。
【0027】
例示しているように、滴定剤生成器28は、図1に例示したタイプである。この滴定剤生成器は、電線34及び36によって接続されたDC電源38を使用して電力供給される。検出器プローブ40、例えば、pH又は導電度プローブは、容器32内の溶液中に突出するように設置して滴定の進行をモニターする。検出器プローブ40は、pH又は導電度検出器のような適切な検出器42に接続する。
【0028】
酸サンプルの滴定において使用する塩基滴定剤を生成させるための操作においては、容器12を、塩基の形成において必要なカチオンを供給するカチオン源で充たす。例えば、水酸化ナトリウム滴定剤を調製するに当っては、その源は、水酸化ナトリウム水溶液濃縮物のようなナトリウム源であり得る。滴定剤イオン源ではない電極16及び24は、不活性金属の白金ホイルから製造されている。電極16を、この実施態様においては、陽極としている。囲い10に、陰極とする白金ホイル24を、次いで、3層のカチオン交換膜20をはめ込む。次に、テフロン(登録商標)“O”リング22を取付け、囲い10を導管12上に装着する。組み立てた滴定剤生成器アッセンブリ28によって、電極24をアッセンブリ底部において露出する。電極24は、水分解反応及び滴定剤の生成において利用可能であり、カチオン形の、即ち、交換可能なカチオンを含むイオン交換膜バリア20の直近に存在する。酸滴定剤用のアニオンの生成に当っては、全ての極性を逆転させ、滴定剤生成器アッセンブリ28をアニオン交換膜と一緒に組立て、容器12を、酸形成において必要なアニオンを供給するアニオン源で充たす。
【0029】
電極24は、サンプル溶液30と接触している。水を分解するのに十分に大きい電位を印加した時点で、ヒドロニウムイオンが陽極16において生成し、一方、水酸化物イオンが、陰極24において、電極表面での水分解反応によって生成する。
【0030】
100%ファラデー効率でもって生成させた滴定剤濃度は、下記の等式から算出し得る:
C = 60I/F (等式1)
Iは、アンペアでの電流である。
Fは、ファラデー定数(96500 クーロン/当量)である。
Cは、任意の段階での生成滴定剤の濃度であり、M又は当量で示す。
50mAの電流は、31.088μ当量の滴定剤を生成する。
酸又は塩サンプルを中和するのに必要な分での時間tに基づき、サンプル中の酸又は塩基のグラムミリ当量は、下記の通りに算出し得る:
m.eq = Ix 60x t/ F (等式2)
【0031】
本発明の通りに、陰極での水分解反応において必要とする水は、サンプル溶液に由来することに留意すべきである。ナトリウムイオンは、容器12からカチオン交換膜バリア20を通って進み、陰極において生成した水酸化物と結合して水酸化ナトリウム滴定剤を形成する。水酸化ナトリウム滴定剤を、今度は、サンプル中の酸の中和のためにサンプル中に分散させる。サンプル容量の実質的変化は、観察されない。陰極で生成させた各水酸化物に対して、1個のナトリウムイオンをサンプル溶液中に輸送する。陰極で生成させた各水酸化物に対して、陽極で生成させたヒドロニウムイオンが、上記源容器中の塩基を中和するのに消費される。時間経過につれ、源容器内の塩基は欠乏し、より希釈した形に転換する。容器に加えた電圧をモニターすることによって、源イオンを補充し得る。
【0032】
イオン源容器12の容量は、適切には約1ml〜2000ml、より好ましくは5ml〜1000ml、最も好ましくは約10ml〜約400mlである。液体源を使用するときのその源濃度は、好ましくは10M未満、より好ましくは約4M未満、最も好ましくは約2M未満である。滴定剤生成のための適用電流は、好ましくは約2A未満、より好ましくは約400mA未満、最も好ましくは約100mA未満である。イオン源容器は、必要に応じて、自動化方式において既知の方法を使用して補充し得る。
【0033】
本発明の滴定剤生成装置の利点は、下記の通りである:
(1) サンプル容量において最小限の変化しかなく、従って、サンプル希釈に関連する如何なるミスも本発明によって実質的に排除される;
(2) 滴定剤が中和反応において直ちに消費されるので、二酸化炭素のような溶解ガスの侵入による問題及び関連する炭酸塩誤差は生じない;
(3) 滴定剤は適用電流に比例して必要な限りにおいて精製形で調製されるので、保存(短期又は長期保存の双方)又は汚染による問題は存在しない;
(4) 滴定剤の生成は自動化方式で生じ、調製によるミスを排除している;更に、
(5) 濃度分極及び関連する電位を上げる必要性による問題は存在しない。滴定剤の生成は、本発明の通りに、分析物相互作用から分断されている。
【0034】
本発明は、(a) 現行方法が純粋な水分解反応において不活性貴金属を使用していることからの、電極由来試薬の必要性;(b) 中イオン生成のためにプレカーサーを添加する必要性;及び、(c) フラッシュ滴定法が求めているようなマトリックス係数調整を追求する必要性のような電量滴定の制約を克服している。
【0035】
本発明の塩基滴定剤生成器は、本発明の酸生成器と組合せたとき、要求に応じた酸及び塩基滴定剤の双方を生成することができる。従って、両滴定剤装置は、逆滴定応用も可能にし得る。この実施態様における最も簡単な形態においては、両滴定剤生成器は、2つの別個の装置である。また、2つの装置を一体化して、塩のような1つの源容器を有すること、更に、塩の源形のアニオン又はカチオンから酸又は塩基を調製することも可能である。1つの実施態様においては、上記装置は、酸生成用のアニオン交換膜及び塩基生成用のカチオン交換膜をそれぞれ上述したような適切な極性の電極と一緒に有する2基の滴定剤アッセンブリ28を含む2つの垂直なコンポーネントを有する“H”型装置であろう。水平型“H”部分は、酸及び塩基アッセンブリ28に連結して上記2つの垂直部分間に流体連通が存在するようにする導管であろう。操作においては、それぞれのアッセンブリの電極24及び16は、場合に応じて、適用電流に応答して酸又は塩基滴定剤を生じるように電力供給される。
【実施例1】
【0036】
塩基滴定剤生成器
Dionex Corporation社からの9×100mmのクロマトグラフィーカラムPEEKハードウェアを、この実施例において使用した。最終取付けの詳細は、図2に示している。これらの修正は、電極及び膜積重ね層を図1に示すように組立てることを可能にした。テフロン(登録商標)“O”リングを使用して9×100mm導管又は容器に対する最終シールを作成した。電極を、25.4μm (0.001インチ)厚の有孔白金ホイルから作成し、12.7mm (0.5インチ)の直径を有する円の形に切断した。カチオン交換膜CMI 7000を、Membrane International, Inc社(ニュージャージー州グレンロック)から入手し、12.7mm (0.5インチ)の直径を有する円の形に切断した。3枚の膜を上記アッセンブリにおいて使用した。陽極は、白金電極の矩形片(25.4mm×152mm (1×6インチ))であり、図1に示すようにして9×50mmのカラム内に配置した。両電極を、白金線を使用して接続し、その後、DC電源(HP社)にワニ口クリップを有する標準リード線を使用して接続した。2M NaOH溶液を、50% NaOH原液(ミズーリ州セントルイスのSigma Aldrich社)から調製し、9×100mmのカラム内の源濃縮物として使用した。
【実施例2】
【0037】
実施例1からの滴定剤生成器を、サンプル容器 (50mlビーカー)内に入れ、容器の底からおよそ50.8mm(2インチ)高い垂直方向にクランプを使用して配向させた。pHプローブ (カリフォルニア州サニーベールのDionex Corporation社からのEG50 Combination pH/Ag‐AgCl電極)をプローブとして使用して、滴定の進行をモニターした。pH計からの出力を、mVシグナルとしてプロットした。20mMのメタンスルホン酸を含有するサンプルを、メタンスルホン酸(ミズーリ州セントルイスのSigma Aldrich Chemicals社)の原濃縮物から正確に調製し、15mlの調製した酸をサンプル容器に添加した。滴定剤生成器に、50mAの定電流条件で電源供給した。設定は、図2に示した設定と同様であった。撹拌棒を容器内に配置し、溶液を、撹拌板を使用して撹拌した。滴定の進行をモニターした。サンプルは正確に分かっていたので(20mM×15mL = 300μ当量)、予測当量点を50mAの適用電流に又は1分当り31.056μ当量の塩基の生成に基づいて算出ことは可能であった。理論当量点を9.660分として算出した。モニターした電位対時間のプロット及び微分プロットは、理論数に極めて近い当量点を示しており、図4に示しているように、9.667分であると推定した。このことは、理論と実際の観察間の優れた相関を示している。また、このことは、本発明通りに、上記滴定剤生成器の実用性も立証している。
【実施例3】
【0038】
実施例1の装置を200mAで試験して、高濃度の滴定剤を生成させた(124μ当量/分)。当該装置は、下記の表1に示すように、600μ当量の酸を成功裏に滴定することができた。



装置電圧をモニターし、装置電圧が10V上昇したとき、源濃縮物を補充した。また、装置を、他のサンプル及び表1に示した条件で試験した。設定は、開始時間を手動で始動させた点で半自動であった。理論と実験の間での良好な相関を実現させた。
【実施例4】
【0039】
酸滴定剤生成器
実施例1からのハードウェアを、本発明通りの酸生成器を組立てるのに使用した。アッセンブリの態様は、Membrane International, Inc社 (ニュージャージー州グレンロック)のアニオン交換膜AMI 7001をカチオン交換膜の代りに使用した以外は、全て実施例1と同様であった。2M メタンスルホン酸溶液を、ミズーリ州セントルイスのSigma Aldrich社から入手した濃酸から調製し、9×100mmのカラム内の源濃縮物として使用した。電極の極性を逆転させ、サンプルと接触する電極は陽極であり、酸源と接触する電極は陰極であった。装置は、もはや酸生成に適している。
【実施例5】
【0040】
20mM NaOH × 5mL又は100μ当量を含むサンプルを、これまでと同様にサンプル容器に添加し、実施例4の酸生成器でもって試験した。およそ20mLの脱イオン水を添加して、酸生成器及びpHプローブがサンプル容器中に完全に浸漬するのを確実にした。セットアップを、およそ31μ当量の酸に相当する50mAの電流で試験し、塩基を中和するのに使用した。中和完了の予測時間は3.22分であり、観察時間は3.24分であり、理論との優れた相関を示唆していた。
【符号の説明】
【0041】
10 囲い
10A 開口
12 イオン源容器
14 容器ふた
16 (陽)電極
18 雄機械ネジ山
20 イオン交換膜バリア
22 テフロン(登録商標)“O”リング
24 (陰) 電極(白金ホイル)
26 正又は負のイオン
28 滴定剤生成器アッセンブリ
30 滴定溶液
32 滴定容器
34 電線
36 電線
38 DC電源
40 検出器プローブ
42 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滴定装置であって、
(a) 滴定すべき非流動性サンプル溶液用の滴定容器、
(b) 正又は負の選定されたイオンのイオン源溶液を含むイオン源容器、
(c) 正又は負の電荷のイオンは前記イオン源溶液から前記滴定容器に通すが、バルク液流は遮断し得るイオン交換膜バリア、
(d) 前記イオン源容器と電気接続している第1電極、及び、
(e) 前記滴定容器と電気接続している第2電極、
を含み、前記第1及び第2電極が、電流を前記第1及び第2電極間に加えたとき、不活性であることを特徴とする滴定装置。
【請求項2】
前記滴定容器内に配置した滴定検出プローブを更に含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
滴定すべき非流動性サンプル溶液を前記滴定容器内に更に含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記滴定容器内に撹拌器を更に含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
滴定装置内で使用される電解滴定剤生成器であって、
(a) イオン源容器、
(b) 前記イオン源容器内に配置した第1電極、
(c) 第1及び第2の側面を有し、第1側面が、前記イオン源容器に隣接し且つ正又は負電荷のイオンは輸送するがバルク液流は遮断し得るイオン交換膜バリア、及び、
(d) 前記膜バリアの第2側面に隣接して配置した第2電極、
を含み、
前記電解滴定剤生成器が、滴定すべきサンプル溶液用の滴定容器を含まないが、滴定容器内のサンプル溶液中に浸漬するように設定されていることを特徴とする電解滴定剤生成器。
【請求項6】
(e) 前記滴定剤生成器を滴定すべき非流動性サンプル溶液用の滴定容器内に取付けるように設定されている取付け用コネクタを更に含む、請求項5記載の滴定剤生成器。
【請求項7】
前記第1電極が、酸又は塩基対して不活性である、請求項5記載の滴定剤生成器。
【請求項8】
前記第1電極が銀ではない、請求項5記載の滴定剤生成器。
【請求項9】
前記第2電極が実質的に平坦であり、前記膜バリアに対して近位の1表面と前記膜バリアに対して遠位の1表面を有し、前記遠位電極表面の少なくとも80%が環境に対して露出しているか、或いは着脱可能なふたによって保護されていて、取外したときに、少なくとも80%を周囲環境に対して露出する、請求項5記載の滴定剤生成器。
【請求項10】
前記滴定剤生成器を、滴定容器に、前記第2電極を前記滴定容器内のサンプル溶液中に浸漬するように配置している、滴定容器と組合せた、請求項5記載の滴定剤生成器。
【請求項11】
滴定すべきサンプル溶液用の滴定容器、正又は負の選定されたイオンのイオン源溶液を含むイオン源容器、正又は負の電荷のイオンは前記イオン源溶液から前記滴定容器に輸送するがバルク液流は遮断し得るイオン交換膜バリア、前記イオン源容器と電気接続している第1電極、及び、前記滴定容器と電気接続している第2電極を含む滴定装置を使用する液体サンプル滴定のための電解法であって、下記の工程、
(a) 前記第1及び第2電極間に電位を加えて、前記選定されたイオンを前記イオン源容器から前記膜バリアを介して前記滴定容器内のサンプル溶液中に輸送せしめて、前記サンプル溶液を終点まで滴定する工程であって、前記第1及び第2電極は前記電位の適用中は不活性である工程、及び、
(b) 前記滴定終点を検出する工程、
を含むことを特徴とする電解法。
【請求項12】
前記検出を、滴定容器内に突出しているプローブによって実施する、請求項11記載の電解法。
【請求項13】
前記滴定容器内の前記サンプル溶液が、実質的に非流動性である、請求項11記載の電解法。
【請求項14】
前記サンプル溶液を撹拌する工程を更に含む、請求項11記載の電解法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−506930(P2011−506930A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537040(P2010−537040)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/085466
【国際公開番号】WO2009/076144
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)