説明

漂白助剤組成物およびパルプ漂白方法

【課題】過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れた漂白助剤組成物およびパルプ漂白方法の提供。
【解決手段】過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用され、キレート剤(A)と銅化合物(B)とを含有することを特徴とする漂白助剤組成物。キレート剤(A):一般式(a0−1)で表される基と、一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有する化合物。[式(a0−1)中、X1は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子。式(a0−2)中、R01およびR02は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。ただし、当該炭化水素基の水素原子の一部又は全部は、−COOX2で置換されていてもよい。X2は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白助剤組成物、および当該漂白助剤組成物を使用したパルプ漂白方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学パルプは、針葉樹や広葉樹等のパルプ用材を蒸解した後の未漂白パルプに対して、漂白処理を行うことにより製造されている。
未漂白パルプの漂白処理には、従来、漂白剤成分として塩素が使用されていた。しかし、塩素の使用は、ダイオキシン等の有機塩素化合物(副生成物)が生成するため、環境に与える影響が問題となっていた。
現在、未漂白パルプの漂白処理は、塩素に代わり、漂白剤成分として酸素、過酸化水素、二酸化塩素等を使用した漂白、いわゆるECF(Elemental Chlorine Free)漂白、が主流となっている。
【0003】
未漂白パルプを漂白する方法としては、たとえば、未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行い、その後、漂白剤成分として二酸化塩素、オゾンおよび過酸化水素等を使用して多段階で漂白(多段漂白)処理を行う方法が行われている。
【0004】
また、蒸解処理後の未漂白パルプに、銅イオン又は銅錯体を添加した後、アルカリ性媒体中で加圧酸素を供給して加熱処理を行う酸素脱リグニン処理方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−183170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
漂白剤成分として使用されている二酸化塩素は、漂白力が高く、現行のパルプ漂白方法において汎用されている。しかしながら、二酸化塩素の使用は、微量の有機塩素化合物が生成するため、環境に与える影響が懸念される。また、二酸化塩素は、経済的にも高くて不利である。
また、漂白剤成分として使用されている過酸化水素は、塩素や二酸化塩素と比べて漂白力が弱いため、漂白力の向上が課題であり、他の漂白剤成分の補助的な役割で使用されるに留まっている。
【0007】
特許文献1に記載された方法は、通常、木材チップをアルカリ蒸解した後に行う酸素を用いた脱リグニン処理(酸素漂白)に関するものであり、過酸化水素を使用した漂白処理(過酸化水素漂白)とは技術範囲が異なり、当該過酸化水素漂白には適さない。
また、酸素漂白だけでは、パルプ中のリグニンの除去やパルプ白色度の向上は不充分であり、さらなる白色度の向上が求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れた漂白助剤組成物およびパルプ漂白方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明は、パルプ漂白工程で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用される漂白助剤組成物において、下記キレート剤(A)と銅化合物(B)とを含有することを特徴とする漂白助剤組成物である。
キレート剤(A):
下記一般式(a0−1)で表される基と、下記一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基とを有する化合物。
【0010】
【化1】

[式(a0−1)中、X1は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。式(a0−2)中、R01およびR02は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。ただし、当該炭化水素基の水素原子の一部又は全部は、−COOX2で置換されていてもよい。X2は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【0011】
本発明の漂白助剤組成物においては、前記キレート剤(A)が、下記一般式(a1−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0012】
【化2】

[式(a1−1)中、X10は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−CH2COOX11、又は−CH(CH2COOX12)COOX13を表す。R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−OH、−CH2COOX14、又は−CH(OH)COOX15を表す。X11〜X15は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【0013】
また、本発明の漂白助剤組成物においては、前記キレート剤(A)が、下記一般式(a2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
【化3】

[式(a2−1)中、X20は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−CH2COOX21、−CH(OH)COOX22、又は−CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH2OHを表す。X21およびX22は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【0015】
また、本発明の漂白助剤組成物においては、前記パルプ漂白工程が、蒸解工程後の未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行う工程(i)と、過酸化水素を使用して漂白処理を行う工程(ii)とを含む工程であって、当該漂白助剤組成物は、前記工程(ii)で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用されることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、パルプ漂白工程において、下記キレート剤(A)および銅化合物(B)を含有する漂白助剤組成物を、過酸化水素と併用し、かつ、pH7〜10で使用することを特徴とするパルプ漂白方法である。
キレート剤(A):
下記一般式(a0−1)で表される基と、下記一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基とを有する化合物。
【0017】
【化4】

[式(a0−1)中、X1は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。式(a0−2)中、R01およびR02は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。ただし、当該炭化水素基の水素原子の一部又は全部は、−COOX2で置換されていてもよい。X2は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【発明の効果】
【0018】
本発明の漂白助剤組成物によれば、過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れる。
また、本発明のパルプ漂白方法により、パルプから作られる紙の白色度を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のパルプ漂白方法を含む、漂白クラフトパルプの製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪漂白助剤組成物≫
本発明の漂白助剤組成物は、パルプ漂白工程で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用されるものであり、上記特定のキレート剤(A)と銅化合物(B)とを含有する。
【0021】
[キレート剤(A)]
キレート剤(A)(以下「(A)成分」という。)は、前記一般式(a0−1)で表される基と、前記一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基とを有する化合物である。
【0022】
前記式(a0−1)中、X1は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。
X1において、アルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。たとえばカルシウム(Ca)の場合、「−COOX1」は「−COOCa1/2」と表される。
なかでも、X1は、アルカリ金属原子であることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。
未漂白パルプに対して漂白処理を行う際、(A)成分を、水分を含むパルプ中に投入すると、前記式(a0−1)で表される基は、「−COOX1」の一部又は全部が「−COO−」となり、前記式(a0−2)で表される基や水酸基とともに、銅化合物(B)から解離する銅イオンとの錯体の形成が可能となる。
【0023】
前記式(a0−2)中、R01およびR02は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。
R01、R02の炭化水素基において、炭素数は1〜3であり、炭素数1〜2が好ましい。
当該炭化水素基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
ただし、当該炭化水素基の水素原子の一部又は全部は、−COOX2で置換されていてもよい。
X2は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。
X2において、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子は、前記式(a0−1)におけるX1のアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子と同じものが挙げられ、アルカリ金属原子であることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。
【0024】
上記のなかで、(A)成分の好適なものとしては、過酸化水素と併用してパルプの漂白により優れることから、前記一般式(a1−1)で表される化合物(以下「(A1)成分」という。)、前記一般式(a2−1)で表される化合物(以下「(A2)成分」という。)が挙げられる。
【0025】
・(A1)成分
(A1)成分は、前記一般式(a1−1)で表される化合物(いわゆるモノアミノカルボン酸又はその塩)であり、たとえば多座配位子になり得るものが好適なものとして挙げられる。
前記式(a1−1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−CH2COOX11、又は−CH(CH2COOX12)COOX13を表す。
R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−OH、−CH2COOX14、又は−CH(OH)COOX15を表す。
X10およびX11〜X15は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。
X10、X11〜X15において、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子は、前記式(a0−1)におけるX1のアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子と同じものが挙げられ、アルカリ金属原子であることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。
【0026】
(A1)成分のなかでより好適なものとしては、グリシン、アラニン、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、アラニンジ酢酸(メチルグリシンジ酢酸)、イミノジコハク酸、2−ヒドロキシイミノジコハク酸、又はこれらの塩が挙げられる。これら例示の成分は、いずれも化学物質の審査および製造等の規制に関する法律に登録されている物質(化審法登録物質)であり、また、安価で安全性上の問題もないことから好ましい。
また、化審法登録物質であれば、上記例示の成分以外の(A1)成分も好適に用いることができる。
【0027】
・(A2)成分
(A2)成分は、前記一般式(a2−1)で表される化合物(いわゆるヒドロキシカルボン酸又はその塩)であり、たとえば多座配位子になり得るものが好適なものとして挙げられる。
前記式(a2−1)中、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−CH2COOX21、−CH(OH)COOX22、又は−CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH2OHを表す。
X20、X21およびX22は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。
X20、X21、X22において、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子は、前記式(a0−1)におけるX1のアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子と同じものが挙げられ、アルカリ金属原子であることが好ましく、ナトリウムであることがより好ましい。
【0028】
(A2)成分のなかでより好適なものとしては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、又はこれらの塩が挙げられる。これら例示の成分は、いずれも化学物質の審査および製造等の規制に関する法律に登録されている物質(化審法登録物質)であり、また、安価で安全性上の問題もないことから好ましい。
また、化審法登録物質であれば、上記例示の成分以外の(A2)成分も好適に用いることができる。
【0029】
(A)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なかでも、(A)成分としては、(A1)成分又は(A2)成分を用いることが好ましい。また、(A1)成分と(A2)成分とを併用してもよい。
(A)成分は、上記のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩若しくはカルボン酸を用いてもよく、又はカルボン酸をアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物で予め中和混合したものを用いてもよい。
【0030】
[銅化合物(B)]
銅化合物(B)(以下「(B)成分」という。)は、水と混合した際、水溶性が高く、容易に銅イオンを解離するものが好ましく、なかでも銅を含む水溶性塩がより好ましい。
(B)成分として具体的には、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅、ギ酸銅、過塩素酸銅、ヨウ素酸銅、リン酸銅、トリフルオロ酢酸銅等の2価の銅を含む水溶性塩が挙げられ、硫酸銅、塩化銅が特に好ましい。
また、(B)成分は、水和物であってもよい。
【0031】
(B)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0032】
本発明の漂白助剤組成物において、(A)成分と(B)成分は、両方の成分を混合した混合物の形態で用いてもよく、未漂白パルプを漂白処理する際に(A)成分および(B)成分をそれぞれ個別に用いてもよい。
(A)成分と(B)成分との混合物は、たとえば水溶媒中にて、(A)成分と(B)成分とを室温で撹拌して調製した水溶液の形態でも利用でき、又は、水溶媒を留去することにより調製した粉体の形態でも利用できる。
【0033】
本発明の漂白助剤組成物は、パルプ漂白工程で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用される。
また、本発明においては、前記パルプ漂白工程が、蒸解工程後の未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行う工程(i)と、過酸化水素を使用して漂白処理を行う工程(ii)とを含む工程であって、本発明の漂白助剤組成物は、前記工程(ii)で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用されることが好ましい。
【0034】
本発明の漂白助剤組成物が、パルプ漂白工程で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用される方法として具体的には、後述する≪パルプ漂白方法≫が好適な方法として挙げられる。
本発明の漂白助剤組成物において、(A)成分および(B)成分の含有割合と混合割合は、後述する≪パルプ漂白方法≫についての説明における両成分の使用量および配合割合とそれぞれ同様の割合であることが好ましい。
【0035】
以上説明した、本発明の漂白助剤組成物によれば、過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れる。かかる効果が得られる理由は、定かではないが以下のように推測される。
本発明の漂白助剤組成物は、前記一般式(a0−1)で表される基と、前記一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基とを有する化合物からなるキレート剤(A)と、銅化合物(B)とを含有する。
(A)成分と(B)成分は、上記のように両成分同士を混合することにより、又は未漂白パルプを漂白処理する際にそれぞれ個別に配合することにより、金属錯体を形成する。当該金属錯体は、併用される過酸化水素をより活性化する。これにより、パルプに対する漂白作用が強まり、パルプの漂白に優れると推測される。
【0036】
また、本発明の漂白助剤組成物は、未漂白パルプを漂白する際、強アルカリ条件とする必要がなく、pH7〜10の中性から弱アルカリの範囲で充分な漂白効果が得られ、高い白色度の紙を作製できる。また、本発明の漂白助剤組成物は、特許文献1に記載された方法のように、強アルカリ条件下で加熱処理等を行う必要がないため、取扱いやすく、作業性に優れるばかりでなく、強アルカリに調整するために添加するアルカリ剤の使用量を低減することができ、経済的にも有利である。
また、(A)成分と(B)成分とを混合して形成される金属錯体は、過酸化水素を活性化する触媒として従来提案されている金属錯体に比べて、人体や環境への負荷が小さく、また、経済的にも有利である。
【0037】
≪パルプ漂白方法≫
本発明のパルプ漂白方法は、パルプ漂白工程において、上記特定のキレート剤(A)および銅化合物(B)を含有する漂白助剤組成物を、過酸化水素と併用し、かつ、pH7〜10で使用する方法である。
かかるパルプ漂白方法において、漂白助剤組成物は、上記本発明の漂白助剤組成物と同じである。
本発明のパルプ漂白方法においては、過酸化水素と併用してパルプの漂白により優れることから、前記キレート剤(A)が、前記一般式(a1−1)で表される化合物であることが好ましい。
また、本発明のパルプ漂白方法においては、過酸化水素と併用してパルプの漂白により優れることから、前記キレート剤(A)が、前記一般式(a2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0038】
本特許請求の範囲および本明細書において、「パルプ漂白工程」とは、パルプ用材に対して漂白処理を行う操作段階を意味し、当該操作は、たとえば、パルプに残留するリグニンの除去、パルプの白色度の向上等を目的とした操作全般を包含するものとする。
当該操作には、たとえば後述する、蒸解工程後の未漂白パルプに対する酸素脱リグニン処理、工程(i)後の酸素漂白パルプに対する過酸化水素を使用した漂白処理が含まれる。
本発明のパルプ漂白方法においては、前記パルプ漂白工程が、蒸解工程後の未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行う工程(i)と、過酸化水素を使用して漂白処理を行う工程(ii)とを含む工程であって、前記工程(ii)において、前記漂白助剤組成物を、過酸化水素と併用し、かつ、pH7〜10で使用することが好ましい。
【0039】
本発明のパルプ漂白方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
図1は、本発明のパルプ漂白方法を含む、漂白クラフトパルプの製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
本実施形態のパルプ漂白方法は、パルプ漂白工程において、蒸解工程後の未漂白パルプに対して漂白処理を行う方法であり、パルプ漂白工程が、酸素脱リグニン処理を行う工程(i)(図1では「酸素漂白」と表記)と、過酸化水素を使用して漂白処理を行う工程(ii)(図1では「過酸化水素漂白」と表記)とからなる工程の例である。
以下、図1を参照しながら、本発明のパルプ漂白方法について説明する。
【0040】
本発明のパルプ漂白方法において、パルプ用材は、針葉樹、広葉樹等の木材原料;ケナフ、竹、麻、イネ、バカス等の非木材原料、又はこれらの混合物を用いることができる。
本実施形態では、木材原料が用いられている。
【0041】
[蒸解工程]
木材チップの蒸解は、一般に実施されている方法により行うことができる。たとえば、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができる。パルプの品質やエネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。
具体的には、木材チップを、蒸解釜内でアルカリ剤および水と混合し、高温で数時間加熱することにより未漂白クラフトパルプが得られる。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
[パルプ漂白工程:酸素脱リグニン処理を行う工程(i)酸素漂白]
工程(i)では、蒸解工程の後、洗浄、脱水された未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行う。
蒸解工程後の洗浄、脱水は、一般に実施されている方法により行うことができる。
未漂白パルプに対する酸素脱リグニン処理は、一般に実施されている方法により行うことができ、たとえば未漂白パルプを、アルカリ剤および水と混合し、加圧された酸素を供給して加熱することにより行う。未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行うことにより酸素漂白パルプが得られる。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、硫化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等を用いることができる。
【0043】
[パルプ漂白工程:過酸化水素を使用して漂白処理を行う工程(ii)過酸化水素漂白]
工程(ii)では、工程(i)の後、洗浄、脱水された酸素漂白パルプに対して、過酸化水素を使用した漂白処理を行う。
工程(i)後の洗浄、脱水は、一般に実施されている方法により行うことができる。
工程(ii)における漂白処理は、上記漂白助剤組成物を、過酸化水素と併用し、かつ、pH7〜10で使用することにより行う。
【0044】
漂白助剤組成物を使用する際のpHは7〜10であり、pH8〜10で使用することが好ましい。漂白助剤組成物をpH7以上で使用すると、過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れる。漂白助剤組成物をpH10以下で使用すると、パルプの漂白性に優れることに加えて、取扱いやすくて作業性に優れる。また、pHを調整するためのアルカリ剤の使用量を低減でき、経済的にも有利となる。
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。
本発明において、pHの測定は、pHメータ(製品名:IQ200、IQ Scientific Instruments社製)とpH電極(製品名:PH15−SS、IQ Scientific Instruments社製)とを用いて、約25℃で上記の(A)成分および(B)成分を添加した後の酸素漂白パルプ中にpH電極を差し込み、60秒間経過後の指示値を読み取ることにより行う。
【0045】
工程(ii)での漂白処理における配合順序は、特に限定されず、過酸化水素の分解がより抑制されることから、アルカリ剤又は酸と、漂白助剤組成物と、過酸化水素とをこの順序で配合することが好ましい。
具体例としては、アルカリ剤又は酸と、水との水溶液を酸素漂白パルプに添加した後、漂白助剤組成物を配合し、次いで過酸化水素を配合する例が挙げられる。
漂白助剤組成物は、上述したように、(A)成分と(B)成分とを予め混合して調製した混合物の形態で配合してもよく、(A)成分および(B)成分をそれぞれ個別に配合してもよい。
(A)成分および(B)成分をそれぞれ個別に配合する場合、それぞれの成分の水溶液を用いて配合することもできる。また、過酸化水素も、過酸化水素水溶液として用いてもよい。
アルカリ剤としては、上記と同様のものを用いることができる。
酸としては、硫酸、塩酸等を用いることができる。
【0046】
過酸化水素の使用量は、乾燥パルプ100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。過酸化水素の使用量が下限値以上であると、パルプに対する漂白力がより向上し、上限値以下であれば、漂白助剤組成物との併用により充分な漂白力が得られる。
なお、工程(ii)でいう「乾燥パルプ100質量部に対して」とは、工程(i)の後、洗浄、脱水された酸素漂白パルプ濃度(固形分)を100質量部とすることを意味する(以下本明細書において同じ)。
【0047】
漂白助剤組成物の使用量は、(A)成分の使用量として、乾燥パルプ100質量部に対して0.01〜1質量部であることが好ましく、0.1〜1質量部であることがより好ましく、0.2〜0.8質量部であることがさらに好ましい。
(A)成分の使用量が下限値以上であると、パルプの漂白がより優れる。(A)成分の含有割合が上限値以下であると、過酸化水素の分解が抑制され、充分な漂白力が得られて紙の白色度が高まる。また、(B)成分との配合バランスをとることができる。
【0048】
また、漂白助剤組成物において、(A)成分と(B)成分との配合割合は、モル比[(A)成分/(B)成分]で1/2〜5/1が好ましく、1/1〜3/1がより好ましい。
(B)成分に対する(A)成分の割合が下限値以上であると、単独で溶存する(B)成分の量が低減し、(A)成分との配合バランスをとることができる。また、過酸化水素の分解が抑制され、充分な漂白力が得られて紙の白色度が高まる。一方、(B)成分に対する(A)成分の割合が上限値以下であると、パルプの漂白がより優れる。
【0049】
アルカリ剤又は酸は、酸素漂白パルプのpHを7〜10に調整する量が使用され、アルカリ剤の使用量は、乾燥パルプ100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましい。
酸の使用量は、乾燥パルプ100質量部に対して0.01〜1質量部が好ましく、0.1〜0.5質量部がより好ましい。
水の使用量は、酸素漂白パルプのパルプ濃度が8〜20質量%となる量が好ましく、10〜15質量%となる量がより好ましい。
【0050】
過酸化水素を使用した漂白処理を行う際の温度条件は40〜90℃に加温することが好ましく、50〜80℃に加温することがより好ましい。
過酸化水素、漂白助剤組成物、アルカリ剤又は酸、水の全部を配合した後の漂白時間は30〜120分間とすることが好ましく、50〜100分間とすることがより好ましい。
【0051】
工程(ii)の後、洗浄、脱水することにより漂白クラフトパルプ(図1では「漂白パルプ」と表記)が得られる。
工程(ii)後の洗浄、脱水は、一般に実施されている方法により行うことができる。
【0052】
本発明のパルプ漂白方法は、図1に示すように、前段が工程(i)、後段が工程(ii)からなるパルプ漂白工程に限定されず、たとえば前段が工程(ii)、後段が工程(i)であってもよい。
【0053】
また、本発明のパルプ漂白方法は、工程(ii)の前後のいずれか一方又は両方の段に、過酸化水素以外の漂白剤成分を使用した漂白処理を行う工程が設けられていてもよい。このように、複数の漂白剤成分を使用して多段階で漂白処理を連続的に行うことにより、パルプから作られる紙の白色度をより高くできる。
過酸化水素以外の漂白剤成分としては、二酸化塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム等を用いることができる。
【0054】
以上説明した、本発明のパルプ漂白方法によれば、過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れ、パルプから作られる紙の白色度を高くできる。
そして、本実施形態の漂白クラフトパルプの製造方法により、白色度の高い紙を製造できる。
【0055】
また、パルプの漂白においては、パルプから作られる紙の白色度を高めることに加えて、パルプの経時に伴う退色(色戻り、白色度の低下)を抑制することも重要である。
このパルプの経時に伴う退色を抑制するため、従来、パルプ中に残留するリグニンを除去する(カッパー価を小さくする)方法が用いられている。一方、パルプの経時に伴う退色においては、ヘキセンウロン酸の生成が問題となっている。ヘキセンウロン酸は、パルプに含まれている4−O−メチルグルクロン酸がアルカリ蒸解工程において加水分解されて生成する物質である、と云われている。このヘキセンウロン酸は、直接パルプの白色度には影響を与えないが、パルプが経時に伴って退色する、さらにはパルプを漂白処理する際に漂白剤成分の過剰な消費に繋がる原因物質である、と考えられている。
本発明の漂白助剤組成物およびパルプ漂白方法によれば、パルプの漂白に優れ、かつ、パルプ中に残留するリグニンを除去する(カッパー価を小さくする)効果およびヘキセンウロン酸を除去する効果に優れ、パルプの経時に伴う退色も抑制される。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に示す実施例において、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
表1に示す、(A)成分、(B)成分、および(A)成分と(B)成分との混合物の配合割合は、乾燥パルプ100質量部に対する割合(質量部)をそれぞれ表す。
(A)成分および(B)成分の配合割合は、以下に示す原料自体の配合量(有り姿の量;(B)成分は水和物としての量)をそれぞれ表す。
「(A)成分と(B)成分との混合物:グルコン酸Cu」の配合割合は、後述するように、グルコン酸Naと硫酸銅(II)5水和物とを混合して形成されるグルコン酸銅錯体の配合量を示す。
【0058】
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0059】
[キレート剤(A)]
MGDA−3Na:メチルグリシンジ酢酸3Na(BASF製、商品名:trilon M)。
NTA−3Na:ニトリロトリ酢酸3Na(関東化学製、特級試薬)。
IDS−4Na:2,2’−イミノジコハク酸4Na(ランクセス(株)製、商品名:Baypure CX−100;純度 約80質量%)。
HIDS−4Na:3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4Na((株)日本触媒製)。
グリシンNa:関東化学製、特級試薬。
クエン酸3Na:関東化学製、特級試薬。
リンゴ酸2Na:関東化学製、特級試薬。
グルコン酸Na:関東化学製、特級試薬。
【0060】
[キレート剤(A)の比較成分(A’)]
n−ジブチルアミン:和光純薬工業製、特級試薬。
アセトキシム:関東化学製、特級試薬。
ピリジン:関東化学製、特級試薬。
ジ−μ−ヒドロキソ−ビス[(テトラメチルエチレンジアミン)銅]クロリド:東京化成工業製、特級試薬。
【0061】
[銅化合物(B)]
CuSO4・5H2O:硫酸銅(II)5水和物(関東化学製、試薬特級)。
CuCl2・2H2O:塩化銅(II)2水和物(和光純薬工業製、試薬特級)。
【0062】
[その他の成分]
H2SO4:硫酸、濃度1N(関東化学製、試薬特級)。
NaOH:水酸化ナトリウム、濃度1N(関東化学製、試薬特級)。
【0063】
過酸化水素:30%過酸化水素水(関東化学製)。
【0064】
針葉樹クラフトパルプ:
針葉樹を常法によりアルカリ蒸解、酸素脱リグニン処理したクラフトパルプで、白色度30.4、カッパー価11.9のものを使用した。
【0065】
[(A)成分と(B)成分との混合物:グルコン酸Cuの調製方法]
イオン交換水20mlに、グルコン酸Naの4.4gと、硫酸銅(II)5水和物2.5gとを添加し、室温で10分間撹拌した。その後、150℃に保持された油浴上で、イオン交換水を減圧(4kPa)留去し、乾燥した固体を回収することにより、グルコン酸銅錯体を含む混合物を得た。
【0066】
<パルプ漂白方法>
本実施例においては、蒸解、酸素脱リグニン処理後の酸素漂白パルプ(上記針葉樹クラフトパルプ)に対して、過酸化水素を使用した漂白処理(過酸化水素漂白)を行った。
なお、当該過酸化水素漂白は、上述した≪パルプ漂白方法≫の工程(ii)における操作に対応する。
具体的には、以下のようにして行った。
針葉樹クラフトパルプ1g(固形分)を、円筒状の50mLガラス瓶に量り取った。
次いで、硫酸又は水酸化ナトリウムを混合し、続けて、各例の漂白助剤組成物を混合した。その際、実施例10を除く漂白助剤組成物は、(A)成分又は(A’)成分と、(B)成分とをそれぞれ個別に配合した。
最後に、パルプ濃度が10質量%となるように、過酸化水素水溶液と水道水とを配合した。
そして、温度60℃の温浴中で60分間静置して漂白処理を行った。
【0067】
<パルプの漂白性の評価>
(評価用紙の作製)
漂白処理(過酸化水素漂白)後のパルプを、水道水で洗浄し、ろ過した。その後、水道水約400mLに分散させ、絶乾質量1g当たり約0.5mLの割合でEDTA溶液(EDTA−2Na濃度 5g/L)を加え、水酸化ナトリウム(約1mol/L)又は硫酸(約0.5mol/L)溶液を用いて、パルプ懸濁液のpHが4.0〜5.5の範囲になるようにpHを調整した。
その後、懸濁パルプを約200g/m2になるように吸引濾過して試験シートを作製し、プレス、乾燥処理を施して評価用紙を作製した。
【0068】
(評価用紙の白色度の測定)
評価用紙の白色度の測定は、日本工業規格JIS P8211に準拠して行った。
具体的には、評価用紙上の所定位置4箇所を設定し、日本電色社製のSE−2000(製品名)を用いて、当該所定位置4箇所の白色度を測定し、その平均値(ISO白色度)を算出した。その結果を表1に示す。
なお、評価用紙の白色度の差が1.0ポイント以上あれば、目視であっても白さの相違が明確に分かるレベルである。
【0069】
<カッパー価の評価>
カッパー価の測定は、日本工業規格JIS P8211に準拠して行った。
すなわち、漂白処理(過酸化水素漂白)後のパルプを、水道水で洗浄し、ろ過した。
その後、当該パルプを秤量して調製した試料(絶乾質量で約0.5g)を200mLビーカーに入れ、水80mLを添加して繊維束がばらばらになるまで解離し、恒温槽内で25±0.2℃に保った。そして、撹拌しながら0.02mol/L−過マンガン酸カリウム溶液10mLと、3mol/L−硫酸溶液6.7mLとを加え、撹拌機でかき混ぜながら10分間反応させた。その後、10%−ヨウ化カリウム溶液3.35mLを試料液に加えて反応を停止させた。
そして、試料液の繊維をろ別することなく、遊離したヨウ素を0.1mol/L−チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、以下の計算式からカッパー価を算出した。
計算式:Κ=V1×d/m
V1=(V2−V3)×C/(0.02×5)
d=10{0.00093×(10×V1―50)}
Κ:カッパー価
V1:試料によって消費された0.02mol/L−過マンガン酸カリウム溶液の量(mL)
d:補正係数
m:試料の絶乾質量(g)
V2:空試験によって要した0.02mol/L−チオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)
V3:滴定に要した0.02mol/L−チオ硫酸ナトリウム溶液の量(mL)
C:チオ硫酸ナトリウム溶液のモル濃度(mol/L)
【0070】
<ヘキセンウロン酸の分解率の評価>
漂白処理(過酸化水素漂白)後のパルプ1.5g(固形分)を水道水で洗浄し、ろ過した。その後、当該パルプを200mLオートクレーブに入れ、そこへpH3のギ酸―ギ酸ナトリウム緩衝液75mLを添加した。オートクレーブ内を窒素ガス置換して密閉し、110℃で1時間の加熱処理を施した。オートクレーブを冷却後、パルプを取り出し、イオン交換水で3回ろ過洗浄し、そのろ液を、イオン交換水で500mLになるまでメスアップした。
そして、分光光度計にてヘキセンウロン酸由来の2−フランカルボン酸に該当する245nmの吸光度を測定し、以下の計算式からヘキセンウロン酸の分解率を算出した。
計算式:S=(Aa/Ab)×100
S:漂白処理におけるヘキセンウロン酸の分解率(%)
Aa:漂白処理後のパルプにおける245nmの吸光度
Ab:漂白処理前のパルプにおける245nmの吸光度
【0071】
【表1】

【0072】
以上の結果から、本発明の実施例1〜10の組成物はいずれも、比較例1〜10の組成物に比べて、評価用紙の白色度が高いことから、過酸化水素と併用してパルプの漂白に優れることが確認できた。
【0073】
また、本発明の実施例1〜10の組成物はいずれも、比較例1〜10の組成物に比べて、カッパー価が小さいことから、漂白処理(過酸化水素漂白)後のパルプに残存しているリグニン量が少ないことが確認できた。
さらに、本発明の実施例1〜10の組成物はいずれも、比較例1〜10の組成物に比べて、ヘキセンウロン酸の分解率が高いことから、漂白処理(過酸化水素漂白)後のパルプに残存しているヘキセンウロン酸量が少ないことが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ漂白工程で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用される漂白助剤組成物において、
下記キレート剤(A)と銅化合物(B)とを含有することを特徴とする漂白助剤組成物。
キレート剤(A):
下記一般式(a0−1)で表される基と、下記一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基とを有する化合物。
【化1】

[式(a0−1)中、X1は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。式(a0−2)中、R01およびR02は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。ただし、当該炭化水素基の水素原子の一部又は全部は、−COOX2で置換されていてもよい。X2は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【請求項2】
前記キレート剤(A)が、下記一般式(a1−1)で表される化合物である請求項1記載の漂白助剤組成物。
【化2】

[式(a1−1)中、X10は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−CH2COOX11、又は−CH(CH2COOX12)COOX13を表す。R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−OH、−CH2COOX14、又は−CH(OH)COOX15を表す。X11〜X15は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【請求項3】
前記キレート剤(A)が、下記一般式(a2−1)で表される化合物である請求項1記載の漂白助剤組成物。
【化3】

[式(a2−1)中、X20は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、−CH3、−CH2COOX21、−CH(OH)COOX22、又は−CH(OH)CH(OH)CH(OH)CH2OHを表す。X21およびX22は、それぞれ、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]
【請求項4】
前記パルプ漂白工程が、蒸解工程後の未漂白パルプに対して酸素脱リグニン処理を行う工程(i)と、過酸化水素を使用して漂白処理を行う工程(ii)とを含む工程であって、
前記工程(ii)で過酸化水素と併用され、かつ、pH7〜10で使用される請求項1〜3のいずれかに記載の漂白助剤組成物。
【請求項5】
パルプ漂白工程において、下記キレート剤(A)および銅化合物(B)を含有する漂白助剤組成物を、過酸化水素と併用し、かつ、pH7〜10で使用することを特徴とするパルプ漂白方法。
キレート剤(A):
下記一般式(a0−1)で表される基と、下記一般式(a0−2)で表される基および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基とを有する化合物。
【化4】

[式(a0−1)中、X1は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。式(a0−2)中、R01およびR02は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を表す。ただし、当該炭化水素基の水素原子の一部又は全部は、−COOX2で置換されていてもよい。X2は、水素原子、アルカリ金属原子、又はアルカリ土類金属原子を表す。]

【図1】
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【公開番号】特開2010−1594(P2010−1594A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120147(P2009−120147)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】