説明

漂白活性化剤及び該化合物を含有する漂白剤組成物

【課題】ペルオキシ化合物等の漂白性能を向上させることのできる漂白活性化剤及び該化合物を含有する漂白剤組成物を提供するものである。
【解決手段】オキソメタレートアニオンを含有する漂白活性化剤であって、該オキソメタレートアニオンは、下記一般式(1);
[W(O(HO)2− (1)
で表されるものを必須とする漂白活性化剤、及び、上記漂白活性化剤を必須とする漂白剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漂白活性化剤及び該化合物を含有する漂白剤組成物に関する。より詳しくは、業務用、家庭用の漂白活性化剤として高い洗浄力を発揮する漂白活性化剤、該化合物を含有する漂白剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
漂白剤としては、酸素系漂白剤が知られており、衣服等についたしみの漂白、陶磁器やガラス、プラスチック製の食器についた茶渋等の汚れを除去する等の機能を有している。酸素系漂白剤の代表的な化合物には、過酸化水素、有機/無機過酸(例えば、過ホウ酸、過炭酸)等があり、汚れ成分の酸化剤としての役割を果たしている。また、漂白剤の効率を向上させる目的で、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)やノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)等の漂白活性化剤を併用することがある。これらの漂白活性化剤は、過酸化物を形成することにより漂白効率向上させるものであり、過酸化物の形成反応は量論反応であるため、効果を得るには漂白活性化剤の添加量を充分なものとする必要があり、コスト上昇につながるものであった。
【0003】
従来の漂白剤に関し、漂白剤及び漂白活性化剤から形成されるペルオキシ化合物を活性化させるために、特定の構造を有するポリオキソメタレートを漂白触媒に利用することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この漂白触媒の構造としては、金属イオンと酸素とを含むイソポリオキソメタレート、及び、金属イオンと酸素に加えて非金属、半金族及び/又は遷移金属イオンを含むヘテロポリオキソメタレートを含むものである。そして、結晶構造中であるべき原子が欠けている欠損構造を有する場合には、金属元素を含有するもの、すなわちポリ原子が他の金属元素に置換されたものである。また、この漂白触媒は、Mn、V、Ti、Fe、Co、Cu、Zn、Ni等の2〜8の亜族のいずれかを必ず含有するポリオキソメタレートであり、実施例ではMn含有ポリオキソメタレートについて開示している。また、水溶性モリブデン化合物もしくは水溶性タングステン化合物の少なくとも一種類を含有する酸素系漂白剤の漂白活性剤が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、漂白剤の有効利用率を向上させ、また、漂白剤の無効な分解が極力抑制され、生成する酸化活性種が基質の酸化に有効に利用されるものとする工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平9−118899号公報(第2−8頁)
【特許文献2】特開平6−41593号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ペルオキシ化合物等の漂白性能を向上させることのできる漂白活性化剤及び該化合物を含有する漂白剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、漂白活性化剤について種々検討したところ、オキソメタレートアニオンが漂白活性化剤として有用であることに着目し、特定の安定な活性構造を有するオキソメタレートアニオンを用いることで、効率よく、高い選択率で、すばやく漂白効果を発揮することができることを見いだした。また、漂白剤(例えば、過酸化水素(H))と共に用いると、Hの無効分解が極力抑制され、生成する酸化活性種が基質の酸化に有効に利用されるという特性が発揮されることから、H等の有機過酸や無機過酸の有効利用率を高いものとすることができるだけでなく、酸化反応の選択率が上昇し、漂白効果も更に上昇させることができることを見いだした。また、漂白剤及び漂白活性化剤から形成されるペルオキシ化合物を活性化させるだけでなく、漂白剤(無機過酸塩)等を触媒的に活性化することができ、従来のTAEDやNOBSに比較して、その使用量を削減することが可能であることから、よりシンプルで経済的になることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。
【0006】
すなわち本発明は、オキソメタレートアニオンを含有する漂白活性化剤であって、上記オキソメタレートアニオンは、下記一般式(1);
[W(O(HO)2− (1)
で表されるものを必須とする漂白活性化剤である。
本発明はまた、上記漂白活性化剤を必須とする漂白剤組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の漂白活性化剤は、上記一般式(1)で表されるオキソメタレートアニオンを含有するものである。本明細書では、このようなオキソメタレートアニオンをWという。
上記Wは、漂白剤と併用して、又は、単独で、黒ずみや、発色団の生成の原因となるエチレン性二重結合を少なくとも1個有する化合物を酸化することにより、漂白効果を発揮するものである。その一例として、下記反応式で表されるように、Wは、不飽和結合を酸化することによりエポキシ基を生成し、漂白効果を示すことになる。
【0008】
【化1】

【0009】
上記オキソメタレートアニオン(W)の構造としては、上記反応式に示されるように、2つのタングステン原子が1つの酸素を介して結合し、各々のタングステン原子は、W=O結合による酸素原子1つと、W−(HO)による水分子1つと、酸素原子が三角形の頂点に2つ位置し、タングステン原子と2つ酸素原子とで三角形を形成しているものを2組有するものである。このような構造は、オキソメタレートアニオン塩のX線結晶構造解析、元素分析、FT−IR(フーリエ変換赤外分光)分析等によりその構造を特定することができる。なお、上記反応式(1)において表されるWは、X線結晶構造解析により求めたものの概念図を示しているものであり、特に上記式(1)の立体構造に限定されるものではない。このように、Wは骨格内にペルオキシ基を有しており、Wの原料からは大きくその構造が異なり、この構造が漂白活性化剤として優れた性能を発現させることになる。
【0010】
上記Wを漂白活性化剤として作用させる場合、例えば、あらかじめ単離したWを必要量、洗浄時に添加する形態等が好適である。このような形態とすることで、選択率を高いものとし、すばやく漂白効果を生じるという効果を発揮する。なお、本発明においては、Wを生じさせるタングステン種やケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンを過酸化水素等の漂白剤を共存させて、系中でWを発生させ、漂白効果を発揮する形態であってもよい。
【0011】
上記Wを調製するためのタングステン種としては、タングステン酸、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸セシウム、タングステン酸マグネシウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸亜鉛、タングステン酸アルミニウム、タングステン酸アンモニウム、酸化タングステン等、6価のタングステン原子を有する化合物が好ましい。
【0012】
上記Wを調製するためのケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとしては、下記一般式(2);
[XW(HO)d− (2)
(式中、Xは、ケイ素原子又はリン原子を表す。aは、9〜11の整数を表す。bは、0〜6の整数を表す。cは、28〜39の正数を表す。dは価数を表し、正数である。)で表されるものであってもよい。
上記一般式(2)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンにおいては、構成するアニオンの一部又は全部が、ポリ原子に結合する酸素原子の一部が水分子に置き換わった構造を有していてもよく、ポリ原子のすべてに酸素原子が結合したアニオンであってもよい。また、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンを必須とする漂白活性化剤においては、該アニオンは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0013】
上記一般式(2)で表されるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの構造としては、ヘテロ原子がケイ素原子(Si)又はリン原子(P)であり、該ヘテロ原子にポリ原子としてタングステン原子(W)が酸素原子を介してa個(9〜11個)配位した結晶構造となり、結晶構造中であるべきポリ原子が12−a個欠けている欠損構造部位を有することになる。これらの1、2及び3欠損構造のなかでも、Xがケイ素原子で、かつ2以上の欠損構造部位を有することが好ましい。
【0014】
またケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの構造における好ましい形態としては、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオン中の欠損部分の構造に着目した場合、W=O結合のうち欠損部位に位置する酸素原子(ターミナル酸素)を有するW部位において、W=O結合が部分的にW−HO結合になっている形態である。より好ましくは、2欠損部位の4つのW=O結合のうち対角に位置する2つのW=O結合がW−HO結合になっている形態である。このような構造は、X線解析、元素分析やFT−IR分光測定から特定することができる。
【0015】
上記Wを生じさせるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、塩の形態で得ることができる。その調製方法としては、例えば、イノーガニック・シンセシス(Inorganic syntheses)、第27巻、p.71に記載された方法により得られる1〜3欠損ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの塩が生成するようにすることが好ましい。また、この塩の水溶液を調製し、該水溶液のpHを調整することにより、欠損部位のW=O結合が、W−HOに変換されたケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンを塩の形態で製造することもできる。このようなケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの製造方法においては、ポリ原子に結合する酸素原子の一部が水分子に置き換わった構造を有することになるか否かについてpH依存性を示し、本発明において上記水溶液のpHとしては、−1.0以上、7.0以下とすることが好ましい。より好ましくは、0以上、5.0以下であり、更に好ましくは、1.5以上、3.0以下であり、最も好ましくは、2.0以上、2.5以下である。
【0016】
上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンが塩の形態のものである場合、その塩は対カチオンを有するものであり、対カチオンとしては、例えば、プロトン、アルカリ金属カチオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン)、アルカリ土類金属カチオン(ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン)や、第四級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリブチルメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、トリラウリルメチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、テトラペンチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩)、第四級フォスフォニウム塩(テトラメチルフォスフォニウム塩、テトラエチルフォスフォニウム塩、テトラプロピルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩、テトラフェニルフォスフォニウム塩、エチルトリフェニルフォスフォニウム塩、ベンジルトリフェニルフォスフォニウム塩)等の有機カチオンを含むカチオンが好適である。好ましくは、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、テトラメチルフォスフォニウム塩、テトラエチルフォスフォニウム塩、テトラプロピルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩、セチルピリジニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩であり、より好ましくは、プロトン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、セチルピリジニウム塩である。ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンの塩を構成するカチオンは、1種又は2種以上であってもよい。
【0017】
上記他のケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとしてはまた、上記一般式(2)におけるaが8以下の自然数である欠損型(4以上の欠損型)のものが挙げられる。また、上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、周期律表3〜16族の元素の群から選ばれる1種以上であり、本発明のケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンが有するポリ原子であるタングステン原子とは異なるものである。他の元素の種類としては、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンのヘテロ原子の種類等に応じて適宜選択すればよいが、周期律表3〜11族の元素の群から選ばれる1種以上の原子が好適である。他の元素としては、例えば、モリブデン、鉄、コバルト、マンガン、バナジウム、クロム、ルテニウム等が好適である。
【0018】
上記他の元素の含有量としては、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオン中のヘテロ原子1個に対して、0.0001個以上であることが好ましく、よりに好ましくは、0.01個以上である。また、6個以下であることが好ましい。より好ましくは、5個以下であり、更に好ましくは、3個以下である。
【0019】
上記他の元素の形態としては、カチオンとして、ヘテロポリオキソメタレートアニオンと電荷とのバランスをとってもよく、酸化物等の形態をとってもよい。
この場合における、他の元素とケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとの存在形態としては、該ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンと他の元素とが共に存在することになればよいが、例えば、以下の(i)及び(ii)に記載する結合形態が好適である。
【0020】
(i)他の元素が錯体化合物、例えば、[XW(HO)d− −B−[XW(HO)d− のように、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンによって配位されて存在する形態。
上記(i)の形態において、他の元素とケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとが結合した構造は、X線解析、元素分析やFT−IR分光測定から決定又は推定することができる。
【0021】
(ii)他の元素がケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンに担持されたり、吸着されたりして存在する形態。この場合、ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンにおける、他の元素が担持される部位や吸着される部位は特に限定されるものではない。このような形態は、元素分析、FT−IR分析等から推定される。
また上記(i)及び(ii)のいずれの場合においても、ケギン型ヘテロポリオキソメタレート中のケイ素原子及び/又はリン原子であるヘテロ原子と、他の元素との相違は、X線解析により決定・確認をすることができる。
【0022】
上記Wを生じさせるケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンとして例えば[SiW10368− (SiW10)を用いる場合、系中では、過酸化水素等の漂白剤の存在下で反応が進行し、SiW10からWが生じることになるが、これを反応式であらわすと、下記のようになる。
【0023】
【化2】

【0024】
上記Wは、上記反応により生じるものであり、また、再結晶操作、ろ過操作、洗浄操作、遠心分離操作等により、単離、精製することができる。
【0025】
本発明のケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンは、上記一般式(1)で表されるWを必須とする限り、他のケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオン及びその他の成分を含むものであってもよい。
【0026】
本発明のオキソメタレートアニオン(W)を必須とする漂白活性化剤は、活性種の形態のものを必須とするものであるため、洗浄効果をすばやく発揮することができる。また、洗浄の際の選択率が高く、黒ずみや、発色団の生成の原因となるエチレン性二重結合を少なくとも1個有する化合物を酸化することにより、漂白効果を示すことができる。上記漂白活性化剤は、漂白剤である過酸が存在しなくてもその作用効果を発揮することができるものであるが、漂白剤と併用する場合においても有用なものである。漂白剤として過酸化水素を用いる場合は、W上に過酸(ペルオキシ化合物)が生じることとなり、酸化反応が促進されるとともに、漂白活性化剤を用いることによって過酸化物の分解反応が抑制され、例えば、衣類を傷めることなく漂白能力が向上することになる。このように、上記漂白活性化剤は、漂白剤と共に用いてもよく、必要に応じて更に漂白活性化剤を併用することができる。漂白活性化剤を併用する場合は、W上に過酸(ペルオキシ化合物)が生じるだけでなく、漂白活性化剤を過酸化することによって更に酸化反応を促進することになり、酸化力が向上することになる。
【0027】
本発明のオキソメタレートアニオン(W)を必須とする漂白活性化剤は、更に以下の(1)〜(9)等の作用効果を発揮することができる。
すなわち(1)上記エチレン性二重結合において、アルデヒド類、ケトン類を生成する異性化反応がおこりにくく、エポキシ化合物への選択率が高くなること、(2)上記エチレン性二重結合の酸化により生じるエポキシ化合物が水により開環して生成するグリコール類と、上記エチレン性二重結合を少なくとも1個有する化合物とが反応して生成するグリコールモノアルキルエーテル類等の生成量が少なく、これによってもエポキシ化合物への選択性が極めて高くなること、(3)反応系に水やアルコール類が多量に存在しても、異性化反応や開環反応等の副反応が起こりにくく、エポキシ化合物の選択率が高くなるので、低い濃度の過酸化水素等の酸化剤が使用可能であること、(4)酸化剤が過酸化水素の場合、酸素への分解等が少なく、酸化剤のエポキシ化合物への有効利用率が高くなること、(5)上記エチレン性二重結合を少なくとも1個有する化合物に対して使用する過酸化水素の比率が低くても、反応活性が高く、選択性がよくなること、(6)活性化剤が高い活性を有すること、(7)副生成物として生成するアセトン等のケトン類が少なく、ケトン類から生成する有機過酸化物ができにくいので、爆発等の危険性が低くなること、(8)漂白中に有機過酸化物の蓄積による過酸化水素等の酸化剤の消費が起こりにくくなること、(9)生分解性のものであり、使用後の環境への付加が小さいこと等が挙げられる。
【0028】
本発明のオキソメタレートアニオン(W)を漂白活性化剤として使用する場合、漂白溶液のpHは1以上、14以下であることが好ましい。より好ましくは、2.0以上、13.8以下である。更に好ましくは、2.5以上、13.0以下である。
【0029】
上記漂白活性化剤としては、上記オキソメタレートアニオンを主成分とすることが好ましいが、本発明の作用効果を奏する限り漂白活性化剤調製過程で生じる不純分や、他の成分を含有していてもよく、また、オキソメタレートアニオン以外の他の漂白活性可能な活性化剤と併用してもよい。
【0030】
本発明はまた、上記漂白活性化剤を含有する漂白剤組成物でもある。
上記漂白剤組成物は、衣服や食器の汚れ除去機能等を有する、いわゆる洗剤、漂白剤等と呼称されるものであり、通常では酸素系漂白剤においては、過酸(塩)からなる漂白剤、該漂白剤による酸化反応を活性化する漂白活性化剤等を含むか、これらを組み合わせて使用されることになる。このような漂白剤組成物は、本発明の好ましい形態の一つである。
上記漂白剤組成物は、漂白活性化剤の他に、通常漂白剤を含むものであり、漂白活性化剤及び漂白剤を必須とする漂白剤組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
上記漂白剤としては、有機及び無機過酸(塩)、過酸化水素が好適である。これらは、1種又は2種以上用いることができる。なお、このような漂白剤は、上記Wを生じさせる過程において好適に用いることができ、また、Wを漂白活性化剤として用いる際に併用する漂白剤としても好ましいものである。
【0031】
上記有機過酸(塩)としては、t−ブチルパーオキシド、過酢酸、パーオキシ安息香酸、パーオキシノナン酸、パーオキシラウリン酸及びモノパーオキシフタル酸等のモノパーオキシカルボン酸及びこれらの塩;2−アルキルパーオキシ−1,4−ブタン二酸、1,7−ヘプタンジパーオキシカルボン酸、1,9−ノナンジパーオキシカルボン酸、1,12−ドデカンジパーオキシカルボン酸及びジパーオキシフタル酸等のジパーオキシカルボン酸及びこれらの塩;N−デカノイルアミノパーオキシカプロン酸、5−(N−ノニルカルバモイル)パーオキシバレリアン酸及び3−(N−ノニルカルバモイル)パーオキシプロピオン酸等の炭化水素鎖中にアミド結合を有するパーオキシカルボン酸及びこれらの塩;4,4’−スルホニルジパーオキシ安息香酸、3,3’−スルホニルジパーオキシプロピオン酸、4−メチルスルホニルパーオキシ安息香酸及び3−デシルスルホニルパーオキシプロピオン酸等のスルホニルパーオキシカルボン酸及びこれらの塩、N,N’−フタロイルアミノパーオキシ−n−ヘキサン酸(PAP)及びN,N’−フタロイルアミノパーオキシラウリン酸等の置換されていない若しくはモノ−又はポリ置換されたフタロイルアミノパーオキシカルボン酸等が好適である。
【0032】
上記無機過酸(塩)としては、過ホウ酸、過炭酸、過燐酸、過硫酸、過酸化水素及びこれらの塩等が好ましい。
上記有機及び無機過酸が塩形態である場合において、その対カチオンとしては、上記ケギン型ヘテロポリオキソメタレートアニオンが塩の形態のものである場合に例示したカチオンであることが好ましい。
上記漂白剤としてより好ましくは、過ホウ酸、過炭酸、過硫酸、過酸化水素であり、更に好ましくは、過ホウ酸、過炭酸、過酸化水素である。
なお漂白活性化剤を粉末状製品中で使用する場合には、漂白剤として過ホウ酸ナトリウム一水和物又は四水和物等の過ホウ酸塩、過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩、過硫酸(塩)であることが好ましい。
【0033】
上記漂白剤組成物は、また、他の漂白活性化剤を含んでいてもよい。漂白活性化剤を併用することにより、漂白剤の効率を向上させることができる。
上記漂白活性化剤は、漂白活性効果を有するものであれば特に限定されず、例えば、N−アシル化アミン、N−アシル化ジアミン、N−アシル化アミド及びグリコールウリル、テトラアセチルメチレンジアミン、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、ジアセチルアニリン、ジアセチル−p−トルイジン、1,3−ジアセチル−5,5−ジメチルヒダントイン、テトラアセチルグリコールウリル、テトラプロピオニルグリコールウリル、1,4−ジアセチル−2,5−ジケトピペラジン、1,4−ジアセチル−3,6−ジメチル−2,5−ジケトピペラジン及びジアセチルジオキソヘキサヒドロトリアジン(DADHT)、ノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)及びベンゾイルオキシベンゼンスルホネート(BOBS)等のアシルオキシベンゼンスルホネート;ペンタアセチルグルコース(PAG)等のアシル化糖;糖アミド等の糖誘導体;活性カルボン酸エステル;無水イザト酸、無水マレイン酸、無水コハク酸及び無水クエン酸等のカルボン酸無水物;ラクトン;アシラール;ノナノイル−及びベンゾイルカプロラクタム等のアシルラクタム;アルカンニトリル及びアレーンニトリル等が好適である。より好ましくは、TAED、NOBSである。これらの漂白活性化剤は、1種又は2種以上用いることができる。
【0034】
上記漂白剤組成物は、更に、その他の添加物を含んでいてもよい。
上記その他の添加物としては、陰イオン性、非イオン性、双性(両性)又は陽イオン性界面活性剤等の界面活性化合物、ビルダー、コビルダー、酵素、その他の成分等が挙げられる。上記界面活性剤は、天然のものでも合成したものでもよく、例えば、硫酸アルキル、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルファースルホ脂肪酸メチルエステル、石鹸及びアルキルエーテルスルホネート等が挙げられる。アルキルポリグリコールエーテル、アルキルポリグルコシド、グルカミド、糖エステル及びアミンオキシド等の非イオン性界面活性剤も使用できる。
【0035】
上記ビルダー及びコビルダーとしては、ポリ燐酸ナトリウム等の燐酸塩、A、X及びPタイプのゼオライト、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属炭酸水素塩、非晶性及び結晶性ケイ酸塩等が好適であり、ケイ酸塩としては、フィロケイ酸塩、二ケイ酸塩等がより好ましい。上記コビルダーとしては、クエン酸及びアミノ酸等の有機カルボン酸;ポリアクリル酸タイプのポリマー、及び、アクリル酸及びマレイン酸又はこれらの誘導体からなるコポリマーが好ましい。更にホスホネート類又は他の錯化剤を添加してもよい。
【0036】
上記酵素としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ及びペルオキシダーゼが好適である。またその他の成分としては、セルロースエーテル、シリコン、ベントナイト、蛍光増白剤及び香料が挙げられる。
上記その他の添加物は、1種又は2種以上用いることができる。
【0037】
本発明の漂白剤組成物を構成する漂白活性化剤、漂白剤、及び、他の漂白活性化剤の割合としては、漂白活性化剤100質量部に対し、漂白剤が、0.005〜200000質量部であることが好ましく、0.5〜100000質量部であることがより好ましい。また、他の漂白活性化剤は、0〜200000質量部であることが好ましく、0〜100000質量部であることがより好ましい。更に、その他の添加物は、必要に応じて添加することができ、0〜100000質量部であることが好ましく、0〜90000質量部であることがより好ましい。
【0038】
上記漂白剤組成物は、洗剤及び洗浄剤、例えば、衣類用洗剤、ヘビーデュティー洗剤、多成分洗剤(モジュールシステム)、しみ抜き塩、しみ前処理剤、自動食器洗浄機用洗浄剤、硬質表面のための洗浄剤、消毒剤及び義歯用洗浄剤として用いることができる。また、漂白作用の他に、染料転移防止剤等としての作用も有する。
【0039】
上記漂白剤組成物を用いる場合の使用量としては、ヘビーデュティー洗剤の場合、2〜40質量%であり、しみ抜き塩及び洗濯前処理剤の場合、20〜100質量%であり、皿洗い機用洗浄剤の場合、1〜30質量%であり、硬質表面のための洗浄剤及び消毒洗浄剤の場合、2〜50質量%であり、義歯用洗浄剤の場合、2〜20質量%である。上記規漂白剤組成物は、粉末材料の形又は顆粒物として洗剤及び洗浄剤中に加えることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の漂白活性化剤及び該化合物を含有する漂白剤組成物は、上述の構成よりなり、ペルオキシ化合物等の漂白性能を向上させることのできるものであり、衣服等についたしみを漂白したり、陶磁器やガラス、プラスチック製の食器についた茶渋等の汚れを除去したりするのに有用な漂白活性化剤及び該化合物を含有する漂白剤組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
[W(O(HO)]の合成
WO・2HO(8g、22mmol)に水30mLを加えて溶解させ、ここに35%過酸化水素30mLを加えた。直ちに濃塩酸を加えてpHを2.5に設定した後、冷蔵庫で一夜間放置した。溶液にKCl(3g)を加えて得られた白色固体を濾過し、少量の冷水及びエタノールで洗浄して、目的のK[W(O(HO)](11.6g、17.6mmol、収率80%)を得た。
【0043】
実施例1
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を40℃に設定した。このビーカーに本発明の漂白活性化剤K[W(O(HO)](1.66g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、5分間攪拌した。この時の回転速度指示計値は100に合わせた。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より次式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
白色上昇率(%)=(C−B)/(A−B)×100
A:赤ワイン汚染前の白布の白色度
B:赤ワイン汚染布の白色度
C:漂白試験後の白色度
【0044】
実施例2
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を40℃に設定した。このビーカーに本発明の漂白活性化剤K[W(O(HO)](1.66g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、5分間攪拌した。この時の回転速度指示計値は100に合わせた。続いて過炭酸ナトリウム(3.5g)を添加した後、1分間攪拌した。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より上式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
【0045】
実施例3
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を40℃に設定した。このビーカーに本発明の漂白活性化剤K[W(O(HO)](1.66g)及び過炭酸ナトリウム(3.5g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、15分間攪拌した。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より上式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
【0046】
実施例4
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を20℃に設定した。このビーカーに本発明の漂白活性化剤K[W(O(HO)](1.66g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、5分間攪拌した。続いて過炭酸ナトリウム(3.5g)を添加した後、1分間攪拌した。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より上式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
【0047】
比較例1
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を40℃に設定した。このビーカーに漂白活性化剤NaWO(1.65g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、5分間攪拌した。この時の回転速度指示計値は100に合わせた。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より上式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
【0048】
比較例2
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を40℃に設定した。このビーカーに漂白活性化剤NaWO(1.65g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、5分間攪拌した。続いて過炭酸ナトリウム(3.5g)を添加した後、1分間攪拌した。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より上式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
【0049】
比較例3
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所製)のビーカーに純水1Lを入れ、温度を20℃に設定した。このビーカーに漂白活性化剤NaWO(1.65g)を添加した後、赤ワインで汚染した木綿布(5×4.5cm)を加えて、5分間攪拌した。続いて過炭酸ナトリウム(3.5g)を添加した後、1分間攪拌した。漂白後、直ちに木綿布をビーカーから取り出し、純水でよく洗浄した後、アイロンで乾燥した。乾燥後、木綿布の白色度を色差計SE−2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、漂白前後の白色度より上式を用いて白色上昇率を算出し、漂白性の程度を評価した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキソメタレートアニオンを含有する漂白活性化剤であって、
該オキソメタレートアニオンは、下記一般式(1);
[W(O(HO)2− (1)
で表されるものを必須とすることを特徴とする漂白活性化剤。
【請求項2】
請求項1記載の漂白活性化剤を必須とすることを特徴とする漂白剤組成物。


【公開番号】特開2006−193593(P2006−193593A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5670(P2005−5670)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】