説明

漏水検出器およびボイラ

【課題】ボイラケーシングの底部に溜まった漏水の存在を確実に検出するとともに、メンテナンスが殆ど不要な漏水検出器および漏水検出器を備えたボイラを提供する。
【解決手段】ボイラケーシングの底部に滞留する漏水を検出する漏水検出器7において、上端が開放された本体容器11と、前記ボイラケーシングの底部と本体容器11の底部を連通する連通管12と、本体容器11に内挿されて、連通管12につながる本体容器11の底部の開口を掩蓋するフロート13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラケーシングの底面に溜まった漏水の存在を検出する漏水検出器及びこの漏水検出器を備えたボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶のディーゼル主機の排ガス中の熱を回収して省エネルギー化を図る排熱回収ボイラを船舶の動力プラントに組み込むことが知られている。排熱回収ボイラは、ボイラケーシングの内部に熱交換器を備えて、前記ボイラケーシングの中にディーゼル主機の高温排気ガスを導いて、前記熱交換器内を循環するボイラ水と前記高温排ガスの間で熱交換を行って蒸気を発生させるボイラである。このような船舶用の排熱回収ボイラを一般に排ガスエコノマイザと呼んでいる(例えば、特許文献1)。
【0003】
さて、何らかの原因で熱交換器に破口が生じると、ボイラ水が漏洩してボイラケーシングの底に溜まる。漏洩水を放置すると、排ガス中の二酸化硫黄が漏洩水中に溶解して亜硫酸が生じ、亜硫酸は更に酸化して硫酸になりボイラケーシングを腐食させるので、熱交換器からの漏水を速やかに検知する必要がある。しかしながら、熱交換器はボイラケーシングの内部に装置されているので、破口や漏洩を外部から直接視認することはできない。そのため、ボイラケーシングの底に溜まった漏洩水を検出する漏洩検出手段が各種提案されている。
【0004】
例えば、特許文献2には陸用のコンバインドサイクル発電プラントに用いる排熱回収ボイラに次のような漏洩検出手段を取り付けたものが開示されている。
【0005】
(1)ボイラケーシングに漏洩水を受容する漏洩水受容部を設けると共に、前記漏洩水受容部に滞留した漏洩水を外部に排出する排水管を備えて、前記排水管に設けたバルブを開いて漏洩水の滞留の有無を検出する。
(2)前記漏洩水受容部に滞留した漏洩水をボイラケーシングの外部に備えたマノメータに導いてその水位を確認する。
(3)前記マノメータの内部に一対の電極を備えて、漏洩水の存在によって生じる前記電極間の電気抵抗の変化を検出する。
【特許文献1】特開2003−148701号公報
【特許文献2】特開2001−336705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された漏洩検出手段によれば、熱交換器からの漏水をケーシングの外で検出することができる。
【0007】
しかしながら、前記(1)の漏洩検出手段は、ボイラの運転中にバルブを開放すると排気ガスが噴出するので、ボイラの運転中に漏水を検出することができない。また、点検の都度バルブを開閉しなければならないので、操作が煩わしいという問題がある。
【0008】
また、前記(2)の漏洩検出手段は監視員がマノメータに目を近づけて目視しなければならないので、監視員の肉体的あるいは精神的な負担が大きいという問題がある
【0009】
また、前記(3)の漏洩検出手段は電極間の電気抵抗の変化を利用しているので、遠隔検出が可能だが、漏洩検出手段が正常に動作することを確認するためには、前記漏洩水受容部に水を溜める必要がある。そのため漏洩検出手段それ自体の点検に係る手間が大きいという問題がある。
【0010】
本発明はこのような背景の下、ボイラケーシングの底部に溜まった漏水の存在を確実に検出するとともに、メンテナンスが殆ど不要な漏水検出器および漏水検出器を備えたボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による漏水検出器の第1の構成は、ボイラケーシングの底部に滞留する漏水を検出する漏水検出器において、上端が開放された本体容器と、前記ボイラケーシングの底部と前記本体容器の底部を連通する連通管と、前記本体容器に内挿されて、前記連通管につながる前記本体容器の底部の開口を掩蓋する閉塞子を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、本体容器に内挿されて本体容器の底部の連通管と連通する開口を掩蓋する閉塞子を備えるので、ボイラケーシングの底部に漏水が存在しない時は、閉塞子が開口を閉塞して、ボイラケーシング内のガスの外部への流出を防ぐともに、ボイラケーシングの底部に漏水が溜まると、水圧によって閉塞子が持ち上げられて、漏水が本体容器に流入し、やがて本体容器から溢れ出すので、漏水の存在をボイラケーシングの外側で知ることができる。
【0013】
本発明による漏水検出器の第2の構成は、前記第1の構成において、前記閉塞子は、前記本体容器内の漏水の水位が所定の水準を超えた場合に浮上する浮子であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、閉塞子が本体容器内の漏水の水位が所定の水準を超えた場合に浮上する浮子であるので、本体容器に漏水が流入すると浮子が浮上して本体容器の底部の開口が開放され、漏水の流入速度が大きくなる。そのため、漏水の存在を速やかに知ることができる。
【0015】
本発明によるボイラは、前記第1または第2の構成に係る漏水検出器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の漏水検出器の構造は非常に簡単なので、メンテナンスが殆ど不要で確実に漏水を検出できる。そのためボイラの保全を容易にし、ボイラの致命的な損傷を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の実施例を示す舶用ディーゼル機関の排気系の構成図である。図1に示すように、ディーゼル機関1の高温の排気ガスは排気管2を通って排ガスエコノマイザ3に導かれ、排ガスエコノマイザ3でボイラ水と熱交換して低温になった排気ガスは煙突4から大気に排出される。排ガスエコノマイザ3は排気ガスの通路となるケーシング5と、ケーシング5の内部に配置されてボイラ水が循環する熱交換器6と、漏水検知器7とから構成され、架台8の上に載置されている。また、漏水検知器7はケーシング5の底面から約2m低い位置に取り付けられ、熱交換器6から漏洩してケーシング5の底面に溜まったボイラ水を検出する。
【0019】
図2および図3は、漏水検知器7の構造図であり、図2は漏水検知器7の側断面を示し、図3(a)は図1のA方向から見た平面形を、図3(b)は図1においてBB’線で切断した断面形を示す。図2および図3に示すように、漏水検知器7は本体容器11と連通管12と、フロート13とから構成される。本体容器11は、上面が開放された円筒容器である。連通管12は本体容器11の底面とケーシング5の底面を連絡する管であり、熱交換器6から漏洩してケーシング5の底面に溜まったボイラ水が連通管12を通って、本体容器11の底面に達する。フロート13は本体容器11に内挿された中空容器であり、本体容器11底面の連通管12と連通する開口を取り囲むリング状のシート14に載置されている。フロート13の下面とシート14の上端は十分に摺り合わされて、隙間無く接触している。また、本体容器11の側面上部には、本体容器11内に溜まったボイラ水を溢流させる溢水開口15が開口している。また、本体容器11の底面及び連通管12の底面には排水栓16,17が取付けられ、必要に応じて開栓して、漏水検知器7内に溜まったボイラ水を排出することができる。
【0020】
このように、連通管12につながる本体容器11の底部の開口をフロート13で掩蓋して閉塞しているので、熱交換器6からの漏水が生じていない場合は、ケーシング5から連通管12を通って本体容器11に向かう排ガスはフロート13で封止される。勿論、フロート13の下面の円板とシート14の間の接触は単なるメタルタッチなので、完全な気密は保てないが、ケーシング5内の排気ガスの圧力(ゲージ圧)はおよそ2.5乃至3.5KPa(250mmAq〜350mmAq)程度に過ぎないので、実用上十分に排気ガスを封止することができる。
【0021】
図4は漏水検知器7による漏洩の検出原理の説明図である。ケーシング5内に漏水が溜まっていない状態では、フロート13はシート14の上に水平に載置されて、ケーシング5内の排気ガスの流出を封止している(図4(1))。熱交換器6から漏洩してケーシング5の底部に溜まったボイラ水が連通管12に流入すると、フロート13は水圧で持ち上げられて傾き、フロート13とシート14の間に隙間が生じて、ボイラ水が本体容器11内に流入する(図4(2))。前述したように、漏水検知器7はケーシング5の底面から約2m低い位置にあるので、フロート13に加わる水圧は約20KPa程度であり、排気ガスの圧力に比べて十分大きい。そのため、フロート13は排気ガスの流れを封止することができるが、ボイラ水の流入を止めることはできない。ボイラ水が本体容器11内に流入し、漏水の水位が所定の高さになると、フロート13は浮揚する(図4(3))。本体容器11内へのボイラ水の流入が更に進むと、漏水は溢水開口15から溢れ出す(図4(4)。フロート13の浮揚あるいは漏水の溢出によって、排ガスエコノマイザ3の近傍を巡回する監視者は容易にボイラ水の漏洩を知ることができる。
【0022】
なお、フロート13に代えて、適当な質量を有する蓋体、つまり3.5KPa程度の圧力の有する排気ガスの流れを蓋体の自重で押し返すことができるが、20KPa以上の水圧が加わると持ち上げられるような蓋体であって、浮揚性の無いもの(例えば、中実金属円板)でシート14を掩蓋するようにしてもよい。
【0023】
また、フロート13の挙動を検出するセンサ(例えば、フロート13が所定の高さまで浮揚すると作動するリミットスイッチ)、あるいは溢水開口15から溢流するボイラ水を検出するセンサ(例えば、電気抵抗値の変化で水の存在を検出するセンサ)等を付加すれば、漏水検知器7を漏水の存在を機関制御室等に自動的に通報する遠隔検出器にすることもできる。
【0024】
また、実施例においては舶用の排ガスエコノマイザに本発明を適用した例を示したが、本発明は舶用の排ガスエコノマイザにのみ適用されるものではない。陸用の排熱回収ボイラに適用することもできる。また、排熱回収ボイラだけでなくボイラ一般つまり、ケーシングの中に燃焼機と熱交換機を収めたボイラ、燃焼機を備えるボイラと排熱回収ボイラを組み合わせた複合ボイラにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例を示す舶用ディーゼル機関の排気系の構成図である。
【図2】本発明の実施例を示す漏水検知器の構造図である。
【図3】本発明の実施例を示す漏水検知器の構造図である。
【図4】漏水検知器による漏水の検出原理の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ディーゼル機関
2 排気管
3 排ガスエコノマイザ
4 煙突
5 ケーシング
6 熱交換器
7 漏水検知器
8 架台
11 本体容器
12 連通管
13 フロート
14 シート
15 溢水開口
16 排水栓
17 排水栓



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラケーシングの底部に滞留する漏水を検出する漏水検出器において、
上端が開放された本体容器と、
前記ボイラケーシングの底部と前記本体容器の底部を連通する連通管と、
前記本体容器に内挿されて、前記連通管につながる前記本体容器の底部の開口を掩蓋する閉塞子を備える
ことを特徴とする漏水検出器。
【請求項2】
前記閉塞子は、前記本体容器内の漏水の水位が所定の水準を超えた場合に浮上する浮子である
ことを特徴とする請求項1に記載の漏水検出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の漏水検出器を備えるボイラ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−315623(P2007−315623A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142776(P2006−142776)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(592250540)株式会社大島造船所 (32)