説明

漏洩防止工具

【課題】OFケーブルの鉛工部に生じた漏洩箇所からの漏油をも容易かつ確実に防止できるようにする。
【解決手段】漏洩防止工具1の閉塞部材3には、OFケーブル2の表面に密着すべく、弾性変形可能とされた弾性閉塞部12が設けられ、閉塞部材3を支持する支持本体4には、この支持本体4と取付部材5とでOFケーブル2を周方向に囲む状態で取付部材5をこの支持本体4に対して締め付ける締付手段と、この締付手段によって支持本体4が締め付けられ、かつ閉塞部材3の弾性閉塞部12が漏油箇所を閉塞する状態で、この閉塞部材3をOFケーブル2の表面に対して押圧させる押圧手段51とが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉛工処理が施されたOFケーブル等の配管に生じる漏洩箇所から内部の液体の漏洩を防止する漏洩防止工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような漏洩防止工具には、例えば、油遮断シートと、この油遮断シートの一方の面に設けられるとともに、漏油箇所(漏洩箇所)を囲むようにしてOFケーブルに接触する環状リブと、油遮断シートをOFケーブルに固定するための締付ベルトを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この漏洩防止工具は、環状リブが弾性変形可能なゴムによって構成されており、油遮断シートをOFケーブルの漏油箇所に固定したときに、環状リブが弾性変形をすることによって、その環の外側に油が漏れ出ないように構成されている。
【特許文献1】特開2006−333674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、OFケーブルの配設には、例えば、その終端接続部または中間接続部において、鉛工処理が施される。この鉛工処理は、作業者の手作業によって行われ、その接続部分は、鉛が球状に盛り上がった形状となる(以下、この部分を「鉛工部」という)。この鉛工部は、このように手作業によって処理されるため、OFケーブルの中途部と比べて、その表面が滑らかではなく、しかも、球状になっていることから、OFケーブルの管径方向における幅が、このOFケーブルの長手方向において不均一な形状となっている。
【0005】
OFケーブルが漏油する場合、OFケーブルの中途部からの漏油の他に、この鉛工部にピンホールが生じて油が漏れ出すこともある。
【0006】
このように、鉛工部から漏油した場合、この鉛工部の形状が球状に構成され、その表面も滑らかでないことから、従来の漏洩防止工具では、環状リブが鉛工部の表面に密着できず、環状リブと鉛工部の表面との間に隙間が生じ、これによって油が漏れ出てしまうおそれがあった。
【0007】
また、鉛工部の漏油(漏洩)防止の応急措置として、例えば、ゴム製テープやゴムチューブが、漏油箇所を覆うとともにOFケーブルに巻き付けられる場合があるが、この場合は、OFケーブルの表面が油で滑るため、強く巻き付けるのに熟練した技術が必要であり、慣れていない作業者ではこの応急措置を行うことが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、OFケーブルの鉛工部に生じた漏油箇所からの漏油をも容易かつ確実に防止できる漏洩防止工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためのものであって、液体が流通又は充填される配管に生じる漏洩箇所からの液体の漏洩を防止すべく、この漏洩箇所を塞ぐ閉塞部材と、閉塞部材を支持する支持本体と、支持本体に連結されるとともに、支持本体を配管に取り付ける取付部材とを備えた漏洩防止工具であって、閉塞部材には、配管の表面に密着すべく弾性変形可能とされた弾性閉塞部が設けられ、支持本体には、この支持本体と取付部材とで配管を周方向に囲む状態で取付部材をこの支持本体に対して締め付ける締付手段と、締付手段によって支持本体が締め付けられ、しかも、閉塞部材の弾性閉塞部が漏洩箇所を覆う状態で、この閉塞部材を配管の表面に対して押圧させる押圧手段とが設けられることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、支持本体と取付部材を連結し、これらによって配管の周囲を囲むようにした状態で、取付部材および支持本体を締付手段によって締め付けることで、支持本体を所定の取付箇所に固定(仮止め)し、閉塞部材が漏洩箇所を覆っている状態で、押圧手段によって閉塞部材を押圧することにより、この閉塞部材を漏洩箇所に密着させることで、漏洩箇所から液体が漏れ出すのを確実に防止できる。
【0011】
しかも、閉塞部材には、弾性閉塞部が設けられていることから、押圧部材によって閉塞部材を押圧したときに、この弾性変形部が、取付箇所の表面の形状に応じるように弾性変形し、これによって、その閉塞面が確実に漏洩箇所を閉塞するようになる。
【0012】
また、締付手段および取付部材によって閉塞部材を支持する支持本体を配管の所定の取付位置に固定した後に、押圧手段によって閉塞部材を押圧するようにできることから、押圧手段の押圧部材を操作するときに、閉塞部材が漏洩箇所からずれることもなく、漏洩箇所の閉塞作業を容易に行うことができるようになる。
【0013】
特に、この漏洩防止工具をOFケーブルの接続部分に形成された鉛工部に生じた漏油箇所に用いる場合、取付部材によって支持本体を鉛工部に取り付けるとともに、押圧手段によって閉塞部材を押圧することで、閉塞部材の弾性閉塞部が弾性変形を伴って漏洩箇所を閉塞するため、鉛工部表面に油等が付着している場合であっても閉塞部材の位置ずれが生じることはなく、しかも、鉛工部において不均一な表面の曲面形状に適応して、漏洩箇所を確実に閉塞できる。
【0014】
また、本発明は、OFケーブルに生じる漏油箇所からの漏油を防止すべく、この漏油箇所を塞ぐ閉塞部材と、閉塞部材を支持する支持本体と、支持本体に連結されるとともに、支持本体をOFケーブルに取り付ける取付部材とを備えた漏洩防止工具であって、閉塞部材には、OFケーブルの表面に密着すべく弾性変形可能とされた弾性閉塞部が設けられ、支持本体には、この支持本体と取付部材とでOFケーブルを周方向に囲む状態で取付部材を支持本体に対して締め付ける締付手段と、締付手段によって支持本体が締め付けられ、しかも、閉塞部材の弾性閉塞部が漏油箇所を覆う状態で、この閉塞部材をOFケーブルの表面に対して押圧させる押圧手段とが設けられることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、支持本体と取付部材を連結し、これらによってOFケーブルの鉛工部を囲むようにした状態で、取付部材および支持本体を締付手段によって締め付けることで、支持本体を所定の取付箇所に固定(仮止め)し、閉塞部材が漏油箇所を覆っている状態で、押圧手段によって閉塞部材を押圧することにより、この閉塞部材を漏油箇所に密着させることで、この漏油箇所から油が漏れ出すのを確実に防止できる。
【0016】
しかも、閉塞部材には、弾性閉塞部が設けられていることから、押圧部材によって閉塞部材を押圧したときに、この弾性変形部が、取付箇所である鉛工部の表面の形状に応じるように弾性変形し、これによって、その閉塞面が確実に漏油箇所を閉塞できるようになる。
【0017】
また、締付手段および取付部材によって閉塞部材を支持する支持本体を鉛工部に固定した後に、押圧手段によって閉塞部材を押圧するようにできることから、押圧手段の押圧部材を操作するときに、閉塞部材が漏油箇所からずれることもなく、漏油箇所の閉塞作業を容易に行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る漏洩防止工具は、前記押圧手段が、閉塞部材を支持本体に接近・離反可能に移動させることでOFケーブルの表面に閉塞部材を押圧・押圧解除させる押圧部材と、押圧部材が閉塞部材を押圧する押圧状態を維持すべく、押圧部材を所定位置で支持本体に固定する固定部材とを備える構成を採用できる。
【0019】
かかる構成によれば、固定部材によって押圧部材を固定することによって、閉塞部材が漏油箇所を閉塞する状態を長期間維持できるようになる。
【0020】
また、本発明に係る漏洩防止工具は、前記取付部材が、長尺の帯状に形成され、その両端部が支持本体に連結可能に構成され、前記締付手段が、支持本体に設けられるとともに取付部材を巻き取る巻取部材と、巻取部材が取付部材を巻き取った状態を維持すべく、巻取部材を固定する固定部材とを備える構成を採用できる。
【0021】
かかる構成によれば、巻取部材によって取付部材を巻き取り、この巻取部材を固定部材で固定し、取付部材を支持本体に対して締め付けることによって、支持本体を所定の取付位置に確実に固定できるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、OFケーブルの鉛工部に生じた漏油箇所からの漏油をも容易かつ確実に防止できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。図1〜図6は、漏洩防止工具の一実施形態を示している。漏洩防止工具1は、例えば、給水・給湯配管のように、水等の液体が流通する配管や、水等の液体を排出する排液配管(排水配管)、またはOFケーブル(oil filled cable)2のように、内部に油等の液体が充填される配管といった種々の配管の中途部、接続部または終端部において、その一部が破損し、破損箇所から液体が漏洩する場合に、応急措置として、この漏洩箇所を閉塞するためのものである。
【0024】
本実施形態では、配管の例として、絶縁油が充填されたOFケーブル2(図1参照)を示し、このOFケーブル2の接続部に鉛工処理が施されている場合(図1、図5、図6参照)において、この鉛工部2aに漏洩箇所(漏油箇所)Aが生じた場合(図1参照)に、この漏洩箇所Aを閉塞する漏洩防止工具1を例示する。
【0025】
図1に示すように、漏洩防止工具1は、例えば、OFケーブル2の鉛工部2aに生じた漏油箇所(ピンホール)Aを塞ぐ閉塞部材3と、この閉塞部材3を支持する支持本体4と、この支持本体4をOFケーブル2に取り付ける長尺帯状の取付部材5とを備える。
【0026】
閉塞部材3は、本体部11と、OFケーブル2の表面に密着すべく、弾性変形可能とされた弾性閉塞部12とを有する。本体部11には、支持本体4側に連結される連結部13が設けられている。連結部13は、本体部11の一方の面から突出する突出部となっており、内部が中空に構成されている。この連結部13の突出端には、その内部に貫通する貫通孔14が形成されている。
【0027】
弾性閉塞部12は、例えばゴム等の弾性部材により構成されている。弾性閉塞部12は、OFケーブル2の表面または鉛工部2aの表面に密着可能な閉塞面15を有する。この閉塞面15は、OFケーブル2の表面に密着できるように、側面視において所定の曲率半径の円弧状の曲面となっている。この閉塞面15の曲率半径は、取り付けられる配管の半径または、漏洩箇所A周辺の鉛工部2aの曲率半径よりも大きくされていることが望ましい。
【0028】
支持本体4は、側面視において円弧状に湾曲形成された長尺状の板部材で構成される。支持本体4の各端部には、ヒンジ等の連結手段20,20を介して連結された板状の連結部(以下、一方の連結部を「第1連結部」といい、他方の連結部を「第2連結部」という)21a,21bが設けられている。
【0029】
図1に示すように、第1連結部21aには、取付部材5の一端部を係止する係止手段22が設けられている。この係止手段22は、取付部材5の一端部を係止可能な係止フック体23と、この係止フック体23を締め付ける締付体24を備える。
【0030】
係止フック体23は、フック部23aと、胴部23bとを有し、胴部23bには、雄ねじが形成されている。なお、本実施形態では、締付体24として、この胴部23bに嵌め込まれるナットが採用されている。
【0031】
なお、第1連結部21aは、側面視でほぼコ字状に形成されており、支持本体4に連結される第1片部26と、この第1辺部26に対してほぼ直角に曲げられた第2片部27と、さらに、この第2片部27に対してほぼ直角に曲げられた第3片部28とを有する。
【0032】
第1片部26は、前記ヒンジ等の連結手段20によって支持本体4に連結されている。第2片部27には、その板厚方向に貫通する貫通孔29が形成されており、その内面に雌ねじが形成されている。第1片部26と第3片部28とは、第2片部27を間に挟んで対向するように設けられ、その間に締付体24であるナットが位置するように、所定の間隔で離間されている。
【0033】
第2連結部21bには、取付部材5を巻き取る巻取部材31と、巻取部材31が取付部材5を巻き取った状態を維持すべく、この巻取部材31を固定する固定部材32が設けられている。
【0034】
図3に示すように、巻取部材31には、取付部材5を巻き取る巻取軸部33と、固定部材32に固定される固定部34と、この巻取部材31を操作するための操作部35とが設けられている。
【0035】
巻取軸部33は、第2連結部21bの一方の面から突出形成された一対のブラケット36,36に取り付けられている。各ブラケット36,36には、巻取軸部33が挿通される挿通孔37が形成されており、巻取軸部33は、この挿通孔37に挿通されることにより、ブラケット36,36に枢支されている。
【0036】
巻取軸部33の中途部には、取付部材5を挿通する挿通孔33aが形成されている。また、巻取軸部33の一方の端部には、前記操作部35が設けられ、巻取部の中途部に固定部34が設けられている。なお、巻取軸部33の他方の端部には、巻取軸部33がブラケット36から抜けはずれないようにする抜け止め部38が設けられている。
【0037】
本実施形態では、巻取部材31が取付部材5を巻き取った状態を維持するように固定する手段として、固定部材32と固定部34とによってラチェット機構が構成されている。固定部34は、図1に示すように、周方向に複数の歯41,41…を有する歯車状に構成され、固定部材32は、その先端部42がこの固定部34の歯41,41…を係止するようになっている。固定部材32は、その中途部が枢支軸32aを介して一方のブラケット36に回動自在に取り付けられている。固定部材32は、その枢支軸32aまわりに操作されることにより、固定部34の歯41を係止する状態を解除できるようになっている。
【0038】
巻取部材31の操作部35は、ほぼ長方形の板状に構成されている。この操作部35には、その板厚方向に貫通した貫通孔43が形成されている。
【0039】
また、支持本体4には、閉塞部材3が漏洩箇所(漏油箇所)Aを覆った状態で、この閉塞部材3をOFケーブル2の表面に押圧させる押圧手段51が設けられている。この押圧手段51は、閉塞部材3を支持本体4に接近・離反可能に移動させることでOFケーブル2の表面にこの閉塞部材3を押圧・押圧解除させる押圧部材52と、押圧部材52が閉塞部材3を押圧する押圧状態を維持すべく、押圧部材52を所定位置で支持本体4に固定する固定部材53とを備える。
【0040】
押圧部材52は、長尺状で断面円形状の棒材によって構成される。この押圧部材52の外面には雄ねじが形成されている。また、支持本体4には、この雄ねじが嵌るねじ孔4aが形成されており、押圧部材52は、この押圧部材52の雄ねじをこのねじ孔4aに螺合させることにより、支持本体4に連結されている。
【0041】
押圧部材52の一端部には、この押圧部材52を操作するための操作部57が設けられ、押圧部材52の他端部は、閉塞部材3の連結部13に連結されている。この押圧部材52の他端部には、閉塞部材3の連結部13に係止される係止部58が設けられている。
【0042】
押圧部材52の操作部57は、ほぼ長方形の板状に構成されている。この操作部57には、その板厚方向に貫通する貫通孔59が形成されている。
【0043】
図4に示すように、係止部58は、押圧部材52よりも直径の大きい円板状に構成されている。この係止部58は、閉塞部材3の連結部13に形成された貫通孔14よりも大きく構成されており、連結部13の内部に位置することで、この連結部13に係止されている。これにより、押圧部材52は、閉塞部材3と連結され、閉塞部材3は、この押圧部材52を介して支持本体4に支持されることになる。
【0044】
押圧部材52は、漏洩防止工具1が、所定の取付箇所に取り付けられたときに、その長手方向(軸心方向)が、OFケーブル2の長手方向に交差するように配置されるべく、支持本体4に連結されている。押圧部材52は、操作部57を操作することによって、その軸心まわりに回転するとともに、支持本体4に対して、その長手方向に相対的に移動可能となっている。
【0045】
固定部材53としては、押圧部材52の雄ねじに螺合する複数(図例では2つ)のナット53,53が採用されている。このナット53,53は、その1つが支持本体4に当接した状態で締め付けられ、他の1つが支持本体4に当接するナット53に当接した状態で締め付けられることにより、支持本体4に対して押圧部材52が移動しないように、この押圧部材52を固定できるようになっている。
【0046】
取付部材5は、その一端部が巻取軸部33の挿通孔33aに挿通可能とされるとともに、その他端部に、係止フック体23に係止されるリング体55が設けられている。この取付部材5は、一端部が巻取軸部33の挿通孔33aに挿通され、他端部のリング体55が係止フック体23に係止されることにより、支持本体4に連結される。
【0047】
漏洩防止工具1は、このように取付部材5が支持本体4に連結された状態で、この取付部材5と支持本体4とによって、OFケーブル2の鉛工部2aの周囲を囲むことができ(図1参照)、この状態で巻取部材31によって取付部材5を巻き取って締め付けることで取付部材5を締め付け、支持本体4をOFケーブル2の鉛工部2aに取り付けることができるようになっている。
【0048】
このように、支持本体4には、この支持本体4と取付部材5とでOFケーブル2を周方向に囲む状態で取付部材5をこの支持本体4に対して締め付ける締付手段が設けられているということができる。すなわち、この巻取部材31と固定部材32とによって、取付部材5を支持本体4に対して締め付け、支持本体4を所定の取付箇所に対して締め付ける締付手段が構成されている。
【0049】
以下、漏洩防止工具1を用いて漏洩箇所(漏油箇所)Aを閉塞する方法について説明する。例えば、OFケーブル2の鉛工部2aに漏洩箇所Aが発見された場合、この漏洩箇所Aが覆われるように、鉛工部2aの表面に閉塞部材3の弾性閉塞部12を当てる。
【0050】
そして、取付部材5の一端部のリング体55を支持本体4の第1連結部21aの係止フック体23に係止させる。このとき、OFケーブル2の大きさ、または鉛工部2aの大きさに応じて、この係止フック体23を胴部23bの軸心まわりに回転させることにより、フック部23aが第1連結部21aから突出する突出位置を調整することができる。この調整を行った後、締付体24であるナットを締め付けることにより、係止フック体23は、第1連結部21aに対して回転不能に固定される。
【0051】
次に、取付部材5の他端部を、第2連結部21bに設けられた巻取部材31の挿通孔33aに挿通し、取付部材5と支持本体4とによって鉛工部2aを囲むようにする。
【0052】
次に、締付手段によって支持本体4および取付部材5を締め付ける。具体的には、巻取軸部33が回転するように、巻取部材31の操作部35を操作する。巻取軸部33が回転することにより、支持本体4とともに鉛工部2aを囲む取付部材5の長さが短くなる。このとき、巻取部材31の固定部34は、巻取軸部33とともに回転し、これに伴って、固定部材32の先端部42は、回転によって移行する固定部34の歯41,41…を随時係止する。
【0053】
なお、巻取部材31によって取付部材5を強く締め付ける場合には、例えば、ドライバー等の尖端工具を操作部35の貫通孔43に差し込んで、この尖端工具を介して操作部35を回転操作するとよい。
【0054】
このように、巻取部材31によって取付部材5を巻き取って締め付けていくと、支持本体4に対して連結手段20を介して回動自在に連結されている第1連結部21aおよび第2連結部21bは、取付部材5が締め付けられることにより、徐々に鉛工部2aに近づいていく。
【0055】
以上のように、支持本体4と取付部材5を締め付けることによって支持本体4を鉛工部2aに固定した後、押圧部材52を操作して閉塞部材3を鉛工部2aに押圧させる。このとき、押圧部材52が平面視において時計回りに回転するように操作部57を回転操作する。また、このとき、押圧部材52は、漏洩箇所Aに対して垂直に、すなわち、この漏洩箇所Aが生じた鉛工部2aの曲面の法線方向に沿って配置されることが望ましい。
【0056】
操作部57を回転操作することで、支持本体4のねじ孔4aに螺合する押圧部材52は、支持本体4に対し、相対的に鉛工部2a側に近づくように移動する。これによって、閉塞部材3が支持本体4から離れていき(離反していき)、閉塞部材3と支持本体4の間隔が広がって、閉塞部材3は、漏洩箇所(漏油箇所)Aを覆った状態でその周りの鉛工部2a表面に押しつけられ、その弾性閉塞部12が弾性変形し、その閉塞面15が鉛工部2a表面に密着する。これによって、閉塞部材3は漏洩箇所Aを閉塞する。
【0057】
なお、押圧部材51によって閉塞部材3をより強く押圧する場合には、押圧部材51の操作部57の貫通孔59にドライバー等の尖端工具を差し込み、この尖端工具を介して操作部57を操作するとよい。
【0058】
閉塞部材3によって漏洩箇所Aを閉塞した後、この閉塞部材3と押圧部材52の状態(位置)を維持すべく、押圧部材52の雄ねじに螺合されている固定部材(ナット)53,53を締め付けることにより、押圧部材52を支持本体4に対して固定する。これによって、漏洩防止工具1は、閉塞部材3が漏洩箇所Aを閉塞した状態を維持できるようになる。
【0059】
漏洩防止工具1を取付箇所から取り外すには、押圧部材52を支持本体4に固定しているナットを緩め、押圧部材52が平面視において反時計回りに回転するように、その操作部57を操作する。これにより、閉塞部材3が支持本体に接近し、これによって、支持本体4と閉塞部材3との間隔が小さくなり、閉塞部材3が鉛工部2aの表面を押圧する力が弱まる。
【0060】
そして、ラチェット機構の巻取部材31を固定している固定部材32を操作して、固定部34の歯41に対する固定部34の係止を解除する。そして、取付部材5を引っ張ると、この取付部材5の一部を巻き取っていた巻取部材31から、取付部材5を取り外すことができる。以上によって、支持本体4および取付部材5を取付箇所から取り外すことができる。
【0061】
鉛工部2aに漏洩箇所Aが発見された場合には、鉛工処理を施すことによって漏洩箇所Aを塞ぐことになるが、この漏洩防止工具1は、その準備が整うまでの応急処理として、この漏洩箇所Aを一定期間閉塞し、鉛工処理の準備が整えば、上記の手順で取付箇所から取り外される。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る漏洩防止工具1によれば、支持本体4と取付部材5を連結し、これらによってOFケーブル2の鉛工部2aを囲むようにした状態で、取付部材5および支持本体4を締付手段によって締め付けることで、支持本体4を所定の取付箇所に固定(仮止め)し、閉塞部材3が漏洩箇所(漏油箇所)Aを覆っている状態で、押圧手段51によって閉塞部材3を押圧することにより、この閉塞部材3を漏洩箇所Aに密着させることで、漏洩箇所Aから油が漏れ出すのを確実に防止できる。
【0063】
しかも、閉塞部材3には、弾性閉塞部12が設けられていることから、押圧部材52によって閉塞部材3を押圧したときに、この弾性閉塞部12が、取付箇所である鉛工部2aの表面の形状に応じるように弾性変形し、これによって、その閉塞面15が確実に漏洩箇所Aを閉塞できるようになる。
【0064】
また、締付手段および取付部材5によって閉塞部材3を支持する支持本体4を鉛工部2aに固定した後に、押圧手段51によって閉塞部材3を押圧するようにできることから、押圧手段51の押圧部材52を操作するときに、閉塞部材3が漏洩箇所Aからずれることもなく、漏洩箇所Aの閉塞作業を容易に行うことができる。特に、押圧部材52を、漏洩箇所Aが生じた鉛工部2aの曲面の法線方向に向くように配置することによって、押圧部材52に鉛工部2aの周方向の力が作用することがなく、閉塞部材3の位置がずれることなく、確実かつ容易に漏洩箇所Aを閉塞できる。
【0065】
また、従来のように、例えば、ゴム製テープやゴムチューブ等を巻き付けて漏洩箇所Aを閉塞する場合には、ゴム製テープ等を鉛工部2aの閉塞箇所に巻き付ける際に、そのゴムテープ等に、OFケーブル2の周方向の力が作用することになり、すでに漏れて鉛工部2aに付着している油によって、このゴムテープ等がずれるおそれがあったが、この漏洩防止工具1は、押圧部材52がOFケーブル2の長手方向に交差する方向で閉塞部材3を押圧するため、閉塞部材3には、OFケーブル2の周方向の力が作用し難くなっている。したがって、漏洩防止工具1は、閉塞部材3がOFケーブル2の周方向にずれることがなく、容易かつ確実に漏洩箇所Aを閉塞できるようになっている。
【0066】
また、漏洩防止工具1は、押圧部材52を固定部材(ナット)53によって支持本体4に固定することにより、押圧部材52が閉塞部材3を押圧して、この閉塞部材3が漏洩箇所Aを閉塞している状態を常に維持できるようになっている。
【0067】
しかも、この漏洩防止工具1は、支持本体4の第2連結部21bに設けられた締付手段の巻取部材31によって取付部材5を巻き取ることで、支持本体4を所定の取付位置に固定するようになっていることから、ゴムテープ等を鉛工部2aに巻き付けるときのような周方向の力は作用せず、容易に支持本体4を取付箇所に固定できるようになっている。
【0068】
また、支持本体4において、取付部材5の端部が連結される第1連結部21aおよび第2連結部21bは、ヒンジ等の連結手段20によって、支持本体4に対して回動自在に設けられていることから、この回動によって、支持本体4が取り付けられる配管、鉛工部2aその他の取付箇所の大小に適応することができる。これにより、この漏洩防止工具1は、配管等の取付箇所の大小にかかわらず、種々の大きさの配管等に確実に取り付け可能となる。
【0069】
また、上記構成のような漏洩防止工具1であれば、例えば図5に示すように、支持本体4と取付部材5とが、OFケーブル2の鉛工部2aの周方向に沿って設けられた場合のみならず、図6に示すように、鉛工部2aの周方向に対して斜めに交差するように取り付けられた場合であっても、押圧部材51が閉塞部材3を鉛工部2aの表面に押圧することで、漏洩箇所Aを確実に閉塞できるようになる。
【0070】
なお、本発明は、上記の実施形態に限らず、種々の変更・変形が可能である。
【0071】
例えば、上記実施形態では、第1連結部21aの第2片部27に貫通孔29を形成し、この貫通孔29の雌ねじに係止フック体23の胴部23bの雄ねじをはめ込み、係止フック体23のフック部23aが支持本体4から突出する突出量を調整できるようにした例を示したが、これに限らず、係止フック体23aのフック部23aを第1連結部21aに一体に固定してもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、ヒンジ等の連結手段20を介して、支持本体4に第1連結部21a、21bを連結するとともに、これらの連結部21a,21bに、締結手段、係止フック体23を設けた例を示したが、支持本体4に連結部21a,21bを設けずに、締結手段、係止フック体23を支持本体4に直接設けるようにしてもよい。
【0073】
また、鉛工部分2aに既にゴム製テープやタイヤチューブが巻き付けられている場合に、これらの上から漏洩箇所Aを特定できるような場合には、このゴム製テープ等の上から、閉塞部材3によって漏洩箇所Aを閉塞するようにしてもよい。勿論、このゴム製テープ等を取り除いて漏洩箇所Aを閉塞してもよい。
【0074】
上記実施形態では、支持本体4と取付部材5を締め付ける締付手段として、ラチェット機構を応用した例を示したが、これに限らず、取付部材5を巻き取った巻取部材31を固定できる他の手段を採用してもよい。
【0075】
上記実施形態では、支持本体4側に係止フック体23のフック部23aを設け、取付部材5の端部にリング体55を設けて互いに係止させる構成を例示したが、これに限らず、支持本体4側にリング体を設け、取付部材5の端部にフック部を設けて互いに係止させる構成を採用してもよい。また、支持本体4にリング体を設けずに、フック部を係止可能な貫通孔を支持本体に形成して、取付部材5のフック部を係止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】漏洩防止工具の側面図である。
【図2】漏洩防止工具の平面図である。
【図3】締結手段の側面図である。
【図4】閉塞部材の連結部に係止される押圧部材の一端部の拡大図である。
【図5】鉛工部に漏洩防止工具が取り付けられた状態を示す側面図である。
【図6】鉛工部に漏洩防止工具が取り付けられた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0077】
1…漏洩防止工具、2…OFケーブル、3…閉塞部材、4…支持本体、4a…ねじ孔、5…取付部材、11…本体部、12…弾性閉塞部、13…連結部、14…貫通孔、15…閉塞面、20…連結手段、21…連結部、21a…第1連結部、21b…第2連結部、22…係止手段、23…係止フック体、23a…フック部、23b…胴部、24…締結体、26…第1片部、27…第2片部、28…第3片部、29…貫通孔、31…巻取部材、32…固定部材、33…巻取軸部、33a…挿通孔、34…固定部、35…操作部、36…ブラケット、37…挿通孔、38…抜け止め部、41…歯、42…先端部、43…貫通孔、51…押圧手段、52…押圧部材、53…固定部材、55…リング体、57…操作部、58…係止部、59…貫通孔、A…漏洩箇所(漏油箇所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流通又は充填される配管に生じる漏洩箇所からの液体の漏洩を防止すべく、この漏洩箇所を塞ぐ閉塞部材と、閉塞部材を支持する支持本体と、支持本体に連結されるとともに、支持本体を配管に取り付ける取付部材とを備えた漏洩防止工具であって、
閉塞部材には、配管の表面に密着すべく弾性変形可能とされた弾性閉塞部が設けられ、
支持本体には、この支持本体と取付部材とで配管を周方向に囲む状態で取付部材をこの支持本体に対して締め付ける締付手段と、締付手段によって支持本体が締め付けられ、しかも、閉塞部材の弾性閉塞部が漏洩箇所を覆う状態で、この閉塞部材を配管の表面に対して押圧させる押圧手段とが設けられることを特徴とする漏洩防止工具。
【請求項2】
OFケーブルに生じる漏油箇所からの漏油を防止すべく、この漏油箇所を塞ぐ閉塞部材と、閉塞部材を支持する支持本体と、支持本体に連結されるとともに、支持本体をOFケーブルに取り付ける取付部材とを備えた漏洩防止工具であって、
閉塞部材には、OFケーブルの表面に密着すべく弾性変形可能とされた弾性閉塞部が設けられ、
支持本体には、この支持本体と取付部材とでOFケーブルを周方向に囲む状態で取付部材を支持本体に対して締め付ける締付手段と、締付手段によって支持本体が締め付けられ、しかも、閉塞部材の弾性閉塞部が漏油箇所を覆う状態で、この閉塞部材をOFケーブルの表面に対して押圧させる押圧手段とが設けられることを特徴とする漏洩防止工具。
【請求項3】
前記押圧手段は、閉塞部材を支持本体に接近・離反可能に移動させることでOFケーブルの表面に閉塞部材を押圧・押圧解除させる押圧部材と、押圧部材が閉塞部材を押圧する押圧状態を維持すべく、押圧部材を所定位置で支持本体に固定する固定部材とを備える請求項2に記載の漏洩防止工具。
【請求項4】
前記取付部材は、長尺の帯状に形成され、その両端部が支持本体に連結可能に構成され、前記締付手段は、支持本体に設けられるとともに取付部材を巻き取る巻取部材と、巻取部材が取付部材を巻き取った状態を維持すべく、巻取部材を固定する固定部材とを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の漏洩防止工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−171749(P2009−171749A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7642(P2008−7642)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】