説明

漏電警報付き配線用遮断器

【課題】簡易な構造でトリップフリー機能を付与した漏電警報付き配線用遮断器の漏電警報ユニットを提供する。
【解決手段】漏電警報付き配線用遮断器の漏電警報ユニット15が、漏電検出回路5の出力信号で作動するトリップユニット16、該トリップユニットの動作に連動する警報スイッチ12、リセット釦兼用のポップアップ式漏電表示釦13からなるものにおいて、漏電表示釦を押し込んだままの拘束状態でも、電路に地絡電流が流れた際にはトリップユニットを自由に作動させて警報スイッチより漏電警報を出力させるトリップフリー機構として、トリップユニットのスライダ17に単体部品構造のカム式操作レバー20を装備して漏電表示釦13に連係し、該操作レバーを介して漏電警報ユニットをセット,トリップ,リセット,およびトリップフリーの各動作に対応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断器本体に漏電警報ユニットを搭載した警報付き配線用遮断器に関し、詳しくはトリップフリー機能を備えた漏電警報ユニットの構成に係わる。
【背景技術】
【0002】
電路に漏電事故が生じた場合でも電源を落としたくない重要回路では、漏電遮断器を使わずに漏電警報付き配線用遮断器を使用して電路の漏電発生を検知するようにしている。
【0003】
この漏電警報付き配線用遮断器として、過負荷,短絡保護機能を備えた遮断器本体に零相変流器,漏電検出回路,および漏電警報リレーを搭載し、電路に漏電が生じて地絡電流が流れた際には、電路を断路せずに漏電警報リレーから漏電警報を出力するようにした構成の漏電警報付き配線用遮断器が公知であり(例えば、特許文献1参照)、その回路図を図15に示す。
【0004】
図15において、1は3相電路に接続した漏電警報付き配線用遮断器、2は遮断器の主回路(U,V,W相)、3は主回路2の開閉接点、4は主回路2を一次導体として電路の漏電発生により主回路に流れる地絡電流を検出する零相変流器、5は零相変流器4に接続した漏電検出回路、6は漏電検出回路5の出力側に接続した漏電リレー、6aはリレー接点、7はリレー接点6aの各端子から外部に引き出した漏電警報出力用のリード線、8は漏電表示用LED(Light Emitting Diode)、9は漏電検出回路5のリセット釦、10は漏電テスト釦である。
【0005】
上記の漏電警報付き配線用遮断器において、電路に漏電事故が発生して主回路2に地絡電流が流れると、零相変流器4が地絡電流を検出する。そして、地絡電流があらかじめ漏電検出回路5で設定した感度電流を超えると漏電リレー6が作動してそのリレー接点6aを切換え、出力リード線7を通じて外部に漏電警報を出力する。また、同時に遮断器に設けた漏電表示用のLED8が点灯する。ここで、漏電リレー6からの漏電警報出力,LED8の点灯は、回路遮断器に付設した前記リセット釦10を押して漏電検出回路5から出力する漏電検出信号を絶つか、あるいは電路の電源がオフになって電気的な接続状態が解除されるまで継続する。
【0006】
ところで、漏電リレー6を装備した上記の漏電警報付き配線用路遮断器では、機能面で次記のような問題がある。すなわち、回路遮断器の使用状態で、リセット釦10が押されたままになった不測の状態(例えば、リセット釦の動作不備が原因で釦がリセット位置に引っ掛かって自動的にセット位置に復帰しない、あるは遮断器の表面に外部から異物が当たってリセット釦がリセット位置に押されたまま拘束されているなど)で電路に漏電が生じた場合には、漏電検出回路5からの出力が停止しているために漏電リレー6が動作せず、またLED8も点灯しない。このために、電路に発生した漏電事故が的確に検知できなくなる。
【0007】
一方、前記の問題に対処して、漏電検出部のリセット釦が押されたままリセット位置に拘束された不測の状態でも、この間に電路に発生した漏電事故を正しく検知して外部に漏電警報を出力できるように機能をアップさせた漏電警報付き配線用遮断器が知られている(特許文献2参照)。
【0008】
次に、前記特許文献2に開示されている警報付き配線用遮断器の回路図を図16に示す。この漏電警報付き配線用遮断器では、図15における漏電リレー6,漏電表示用LED8の代わりに、次記のような組立体になる漏電警報ユニットを用いている。すなわち、トリップコイル(電磁石)11、該トリップコイル11の動作に連動して外部に漏電警報を出力する警報スイッチ(マイクロスイッチ)12、リセット釦を兼ねたポップアップ式の漏電表示釦13、およびトリップコイル11の可動鉄心と漏電表示釦13との間を連係するトリップフリー機構14とで漏電警報ユニット15を組立て構成し、この漏電警報ユニット15を配線用遮断器の本体ケースに搭載している。
【0009】
ここで、トリップフリー機構14の構造,機能は特許文献2に詳しく述べられており、漏電表示釦13に連結したトリップバーと、トリップコイル11の可動鉄心に連係させたトリップレバーと、トリップバーとトリップレバーを連係する操作ばね付きのアクチュエータ(いずれも不図示)の組立体で構成されている。この構成により、漏電表示釦13がリセット位置に押し込まれたままの拘束状態でも、この間に電路に漏電事故が発生した場合には、漏電表示釦13に妨げられることなしにトリップコイル11が動作して警報スイッチ12を切換え、該警報スイッチを通じて外部に漏電警報を出力する。
【特許文献1】特開平2−239533号公報
【特許文献2】特開2001−160354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した特許文献2の漏電警報付き配線用遮断器によれば、漏電表示釦がリセット位置に押し込まれたままの拘束状態でも、電路に漏電事故が発生した場合にはトリップコイルが動作して警報スイッチを切換え、該警報スイッチを通じて外部に漏電警報を出力することができる。なお、この機能を「トリップフリー機能」と称する。
【0011】
しかしながら、前記構成の漏電警報ユニットでは、その中核をなすトリップフリー機構は構造が複雑な専用部品の組立体で部品点数も多く、このために漏電警報ユニットを小形,コンパクトに構成することが困難であるほか、製作費もコスト高となる。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は前記課題を解決し、既存の漏電遮断器に標準装備されている漏電トリップユニットの主要部品を転用してこれに僅かな専用部品を追加することにより、低コストで小形コンパクトな漏電警報ユニットを構成して特許文献2と同様なトリップフリー機能を付与した漏電警報付き配線用遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、過負荷,短絡保護機能を備えた配線用遮断器に零相変流器,漏電検出回路,および漏電警報ユニットを搭載し、電路に漏電が生じて地絡電流が流れた際に電路を断路せずに漏電警報ユニットから漏電警報を出力する漏電警報付き配線用遮断器であって、前記漏電警報ユニットが漏電検出回路の出力信号を受けて作動するトリップユニットと、該トリップユニットの動作に連動して外部に漏電警報を出力する警報スイッチ、およびリセット釦兼用のポップアップ式漏電表示釦からなるものにおいて、
前記漏電表示釦を押し込んだままの状態で電路に地絡電流が流れた際に、トリップユニットを自由に作動させて警報スイッチより漏電警報を出力させるトリップフリー機構として、前記トリップユニットの操作端と漏電表示釦との間を連係して常時は漏電表示釦を押込み位置(セット位置)に係止保持し、トリップユニットのトリップ動作により漏電表示釦を釈放して漏電表示位置にポップアップさせ、さらに漏電表示釦をリセット位置に押し込んだままの拘束状態でもトリップユニットの自由な動作を妨げないように機能するカム式操作レバーを備えるものとし(請求項1)、具体的には前記カム式操作レバーを含めて漏電警報ユニットを次記のような態様で組立て構成する。
(1)前記トリップフリー機構のカム式操作レバーは、その先端部に漏電表示釦をセット位置に係止保持する庇状の係合段部、該係合段部に直交する係合釈放用の傾斜カム面、および頂部先端にリセット用の傾斜カム面を形成し、かつ縦軸の支軸ピン,付勢ばねを介してトリップユニットの操作端に回動可能に連結する(請求項2)。
(2)前記のトリップユニットは、可動鉄心,該可動鉄心をセット位置に吸着保持する永久磁石,および逆励磁により前記永久磁石の磁力を打ち消す励磁コイルからなるプランジャ形電磁石と、前記可動鉄心の先端軸部に連結してその一端を警報スイッチに対峙させたスライダと、該スライダと電磁石との間に介装した駆動ばね(圧縮コイルばね)と、前記可動鉄心の軸上に嵌挿して可動鉄心とスライダとの間に介装した復帰ばねとから構成する(請求項3)。
(3)前項(2)において、スライダを可動鉄心の先端軸部に遊嵌した上で、該先端軸部とスライダとの間に軸方向の摺動抵抗部材として機能するゴム製のOリングを介装して相互連結する(請求項4)。
(4)前記のトリップユニット,警報スイッチ,および漏電表示釦をユニットケースに組込み、さらにこのユニットケースに漏電検出回路を含む制御基板を搭載して漏電警報ユニットを構成する(請求項5)。
(5)前記の警報スイッチがユニットケースにカセット式に装着するマイクロスイッチであり、このスイッチ装着位置でマイクロスイッチのアクチュエータをトリップユニットのスライダ先端に対峙させて配置する(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成において、トリップコイル,リセット釦を兼用する漏電表示釦,警報スイッチ,漏電検出回路,およびユニットケースなどは、現在市場に展開している漏電遮断器の製品に標準装備されている漏電トリップ機構の部品を転用したもので、そのトリップコイルにスライダ,トリップフリー機構のカム式操作レバー,Oリングなどの部品を追加してトリップフリー機能に対応する漏電警報ユニットを構成している。これにより、新たに設計,製作した専用部品を組合せて構成した特許文献2の漏電警報ユニットと比べて部品点数,製作コストの低減化が図れる。
【0015】
しかも、本発明の漏電警報ユニットは、在来の漏電遮断器に標準装備されている漏電トリップ機構と同等なコンパクトサイズで構成されていることから、漏電遮断器の本体ケースと同じ外形サイズの配線用遮断器でもこの漏電警報ユニットを問題なく搭載して漏電警報付き配線用遮断器を構成できる。
【0016】
ここで、トリップフリー機構として、カム式操作レバー(請求項2)をトリップユニットの操作端(スライダ)に組み付けて漏電表示釦との間を連係させたことにより、この単体部品のカム式操作レバーを介してトリップユニットをセット,トリップ,リセット,およびトリップフリーの各動作に対応させることができ、先記した特許文献2のトリップフリー機構と比べて構造を大幅に簡略化できる。
【0017】
また、トリップユニットの可動鉄心に対して、その先端軸部とスライダとの間に軸方向の摺動抵抗部材として機能するOリングを介装して相互連結した(請求項4)ことにより、リセット操作からセット状態に移行する過程で駆動ばね(圧縮コイルばね)の蓄勢ばね力が瞬発的に放勢するのを抑えて、トリップユニットを安定よくリセット操作できる。
【0018】
さらに、漏電警報ユニットとこれに関連する漏電検出回路を組み合わせて各部品をユニットケースに一括収納して組立てたユニット構成(請求項5)により、配線用遮断器への組込み構造が簡単となる。
【0019】
また、警報スイッチをマイクロスイッチとして漏電警報ユニットのユニットケースにカセット式に装着する(請求項6)ことで、警報スイッチの組立,メンテナンス性の簡便化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図14に示す実施例に基づいて説明する。なお、図1〜図4は漏電警報ユニット全体の組立構造図、図5〜図7はトリップユニット,およびトリップフリー機構の詳細な構造図、図8〜図10は漏電警報ユニットのセット状態,トリップ動作,トリップフリー動作の説明図、図11〜図13はトリップユニットのセット,トリップ,リセット動作状態を表す詳細図、図14は漏電警報付き配線用遮断器の回路図であり、図16に対応する部材には同じ符号を付している。
【0021】
まず、図14に示す本発明の実施例の回路は、基本的に特許文献2に開示されている漏電警報付き配線用遮断器の回路(図16参照)と類似しているが、トリップコイル11、該トリップコイル11と漏電表示釦13との間を連係するトリップフリー機構14、および漏電警報ユニット15の組立構造については、後記のように特許文献2に開示されている構造と異なる。
【0022】
次に、本発明の実施例による漏電警報ユニットの組立構造を図1〜図4に示す。漏電警報ユニット15は、大きく分けてトリップコイル11にスライダ17を連結したトリップユニット16と、トリップコイル11の動作に連動して外部に漏電警報を出力する警報スイッチ12と、リセット釦を兼ねたポップアップ式の漏電表示釦13と、前記のスライダ17に装着して漏電表示釦13との間を連係するカム式操作レバー(トリップフリー機構)20と、これらの各部品と漏電検出回路5を含む制御基板を組み込んだユニットケース21との組立体になる。
【0023】
ここで、前記ユニットケース21は下部ケース21a,上部ケース21b,ケースカバー21cからなり、下部ケース21aにはトリップユニット16,漏電表示釦13,警報スイッチ12を搭載し、上部ケース21bには漏電検出回路5,漏電テストスイッチ10a,定格感度電流/動作時間の設定スイッチ22を備えた制御基板(プリント板)23を搭載してユニットを構成している。
【0024】
また、前記のトリップコイル11は、図5で示すように可動鉄心11a,該可動鉄心をセット位置に吸着保持する永久磁石11b,逆励磁により永久磁石11の磁力を打ち消す励磁コイル11c,および磁気ヨーク11dからなるプランジャ形電磁石である。また、このトリップコイル11の可動鉄心11aの先端軸部にはスライダ17を連結した上で、該スライダ17とトリップコイル11のフレーム11eとの間に跨がって駆動ばね18(圧縮コイルばねで、そのばね力は永久磁石11bによる可動鉄心11aの吸着力よりも小さく設定されている)を介装し、さらに可動鉄心11aの軸部に形成した括れ部分の段部とスライダ17との間に遊嵌した復帰ばね(コイルばね)19とでトリップユニット16を構成している。
【0025】
なお、前記可動鉄心11aはその先端軸部11a−1をスライダ17に穿孔した段付きの連結穴17bに嵌挿した上で、可動鉄心11aの括れ部周面とスライダ17に穿孔した連結穴17bの内周面との間には軸方向の摺動抵抗部材として機能する弾性材(例えばゴム製)のOリング26を介装し、該Oリング26を介して可動鉄心11aとスライダ17との間を連結している。また、スライダ17の形状はL形で、側方に延在する脚部をユニットケース21の下部ケース21aの側面に形成したガイドレールで前後方向へスライド可能に案内支持している。
【0026】
さらに、ポップアップ式の漏電表示釦13は、その基部から側方に係合突起13aが突き出し、駆動ばね(圧縮コイルばね)13bと組み合わせて前記ユニットケース21の下部ケース21aに上下可動に装着支持している。
【0027】
一方、本発明の中核部品であるカム式操作レバー20は、図6で示すようにレバー先端部に庇状に突き出した係合段部20aと、該係合段部20aの庇下面に直交して前後方向に形成した釈放用傾斜カム面20bと、係合段部20aの庇上面に形成したリセット用傾斜カム面20cを有し、レバー基部に縦向きの貫通軸穴20dを形成した構造になる。そして、図5で示すように支軸ピン24、および操作レバー20を漏電表示釦13の係合突起13aに向けて押圧する付勢ばね(捩じりコイルばね)25を介して前記スライダ17へ回動可能に装着されている。
【0028】
また、図1に戻って、警報スイッチ12はそのケース下面にアクチュエータが突き出し、上部からリード線7を引出したマイクロスイッチであり、ユニットケース21の下部ケース21aの側面に形成したポケット状の凹所へカセット式に差し込んで装着する。この装着位置では、前記スライダ7の先端部17a(図5参照)がユニットケース21の側壁を貫通して警報スイッチ12のアクチュエータに対峙する。
【0029】
図7(a)〜(c)は前記漏電警報ユニット15のトリップユニット16と漏電表示釦13との連係を表す組立図である。ここで、トリップコイル11の可動鉄心11aがセット位置に吸着保持され、かつ漏電表示釦13を押し込んだ図示状態(セット状態)では、スライダ17に装着したカム式操作レバー20の係合段部20aが漏電表示釦13の係合突起13aの上に重なって漏電表示釦13を押込み位置に係止保持している。
【0030】
次に、漏電警報ユニット15のセット状態およびトリップ,トリップフリーの各動作を図8〜図10で説明する。また、図11〜図13にセット,トリップ動作,およびリセット操作に対応したトリップユニットの状態を示す。
【0031】
まず、図8(a)〜(e)、および図11(a),(b)は定常時のセット状態(図7参照)を表している。このセット状態ではトリップコイル11の可動鉄心11aに連結したスライダ17が図示の左側に引き寄せられて永久磁石11bに吸着保持され、この吸着位置でスライダ17の先端部17aが警報スイッチ12をONにするとともに、スライダ17に装着したカム式操作レバー20の係合段部20aが漏電表示釦13の係合突起13aに係合して該表示釦を押し込んだセット位置に拘束保持する。
【0032】
この状態から電路に漏電が生じて配線用遮断器1(図14参照)の主回路2に地絡電流が流れると、この地絡電流を零相変流器4が検出し、漏電検出回路5を通じてトリップコイル11のコイル11cを逆励磁する。これにより、永久磁石11bの磁力が打ち消され、可動鉄心11aに連結したスライダ17が駆動ばね18のばね力を受けて図9のトリップ位置に移動し、警報スイッチ12をOFFに切換えて漏電警報(電気信号)を外部に出力する(図10(e)参照)。なお、この場合にスライダ17に連結した可動鉄心11aもスライダと一緒にトリップ位置に移動する(図12(a),(b)参照)。また同時に、スライダ17に装着したカム式操作レバー20は、釈放用傾斜カム面20bを漏電表示釦13の係合突起13aに押し当てながら付勢ばね25に抗して時計方向に回動し、係合段部20aと係合突起13aとの間の係合を釈放する。
【0033】
これにより、漏電表示釦13は押込みの拘束が解けて駆動ばね13bのばね力によりポップアップ動作し、釦の先端を遮断器ケースから上方に突き出して漏電が生じたことを表示する。また、このポップアップ動作で漏電表示釦13の係合突起13aがカム式操作レバー20から上方に移行すると、操作レバー20は付勢ばね25のばね力を受けて反時計方向に回動して係合突起13bの下側に潜り込む。なお、漏電警報ユニット15のトリップ動作では漏電警報を発するのみで、配線用遮断器1の主回路接点3は閉じたままで電路を遮断しない。
【0034】
そして、このトリップ動作による漏電警報を確認して管理者が電路の漏電発生原因を点検,修復した上で、遮断器ケースから突き出している漏電表示釦13を押し込んでリセット操作すると、トリップユニット16は次記のように動作して当初のセット状態に復帰する。すなわち、図9のトリップ動作状態から漏電表示釦13を押し込むと、係合突起13aが上方からカム式操作レバー20のリセット用傾斜カム面20cを押す。これにより、スライダ17は駆動ばね18を圧縮しながら図示の左方向に移動し、同時にスライダ17が復帰ばね19を介してトリップコイルの可動鉄心11aを押し戻すと、可動鉄心11aはセット位置に戻って永久磁石11bに吸着保持される。なお、このリセット操作の過程では、先記したOリング26がスライダ17の連結穴17bの穴内周面を摺動して図13(b)の位置に移動する。
【0035】
また、図13の位置から漏電表示釦13をさらに深く押し込むと、係合突起13aがカム式操作レバー20に形成した係合段部20aの庇先端を乗り越えてその下側の傾斜カム面20bに当接する。同時に前記のリセット操作により蓄勢されていた駆動ばね18のばね力を受けてスライダ17が右方向に移動して当初のセット状態に復帰する。
【0036】
なお、この場合に駆動ばね18に蓄勢されていたばね力が瞬発的に放出し、この放出ばね力が過渡的にトリップコイル11の可動鉄心11aを吸着保持している永久磁石11bの磁力に打ち勝つようになると、スライダ17に連結されている可動鉄心11aがトリップ位置に移動して漏電表示ユニットがトリップ動作してしまうおそれがある。かかる点、図示実施例では可動鉄心11aの先端軸部とスライダ17との間に摺動抵抗部材として機能するOリング26が介装されており、このOリング26がスライダ17の穴内周面を摺動することによりスライダ17を介して可動鉄心11aを永久磁石11bから引き離す駆動ばね18の瞬発的なばね力の放出にブレーキが掛かる。これにより、可動鉄心11aをセット位置に吸着保持したまま、スライダ17がセット位置に復帰して一連のリセット操作を安全に行うことができる。
【0037】
次に、本発明の主目的である漏電警報ユニットのトリップフリー動作を図10(a)〜(e)で説明する。すなわち、図10(a)のように漏電表示釦13の上に異物27(例えば、配線用遮断器を収設した盤の扉など)が当たって漏電表示釦13が押込み位置に拘束されたままの状態で、電路に漏電が生じてトリップコイル11が逆励磁されると、駆動ばね18(図5参照)のばね力を受けてスライダ17がトリップ位置に向けて移動する。この場合にスライダ17に装着したカム式操作レバー20は、その釈放用傾斜カム面20bが漏電表示釦の係合突起13aに押し退けられて時計方向に回動する(図10(b)参照)。これにより、カム式操作レバー20の側面が係合突起13aに重なった状態のまま(図10(d)参照)、スライダ17が漏電表示釦13に邪魔されることなくトリップ位置に移動して警報スイッチ12をOFFに切換える。これにより、漏電表示釦13は押し込まれたままで漏電表示を機能しないが、警報スイッチ12を通じて外部に漏電警報を出力することができる。
【0038】
以上の説明で判るように、図示実施例の漏電警報ユニット15によれば、トリップフリーの機能手段として図5,図6で述べた単体構造部品になるカム式操作レバー20をトリップユニットの操作端(スライダ17)に装着して漏電表示釦13との間を連係させることにより、このカム式操作レバー20を介して漏電警報ユニットをセット,トリップ,リセット,およびトリップフリー動作に対応させることができる。
【0039】
しかも、その構造は先記の特許文献2に開示されているトリップフリー機構と比べて部品点数も少なくて済み、またトリップコイル,漏電表示釦などの部品は既存の漏電遮断器に標準装備されている部品をそのまま転用して使用することができて安価に製作できる。また、図1で述べたように図示実施例の組立構造では、漏電警報ユニット15の構成部品と一緒に、漏電検出回路5,テスト釦10,感度電流/動作時間設定スイッチ22など装備した制御基板23をユニットケース21に搭載してユニットを構成したことにより、装置全体の小形,コンパクト化が図れるほか、当該ユニットをオプション品として配線用遮断器に追加装備することにも簡単に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例による漏電警報ユニットの組立構造を示す分解斜視図
【図2】図1の組立状態の外観斜視図
【図3】図2の側面図
【図4】図3における矢視X−X断面図
【図5】図1におけるトリップユニットおよび漏電表示釦の分解斜視図
【図6】図5におけるカム式操作レバーの詳細構造を示す外形斜視図
【図7】図5の組立状態図で、(a)は側面図、(b)は(a)における主要部の底面図、(c)は(b)の矢視X−X断面図
【図8】本発明実施例の漏電警報ユニットのセット状態図で、(a)はユニット前端の側面図、(b),(c)はトリップユニットの斜視図,および底面図、(d)は(c)におけるA部拡大図、(e)は警報スイッチの回路図
【図9】本発明実施例の漏電警報ユニットのトリップ動作状態図で、(a)はユニット前端の側面図、(b),(c)はトリップユニットの斜視図,および底面図、(d)は(c)におけるA部拡大図、(e)は警報スイッチの回路図
【図10】本発明実施例の漏電警報ユニットのトリップフリー動作状態図で、(a)はユニット前端の側面図、(b),(c)はトリップユニットの斜視図,および底面図、(d)は(c)におけるA部拡大図、(e)は警報スイッチの回路図
【図11】図8のセット状態に対応したトリップユニットの詳細図で、(a)はトリップユニット組立体を底面側から見た横断面図、(b)は(a)のP部拡大図
【図12】図9のトリップ状態に対応したトリップユニットの詳細図で、(a)はトリップユニット組立体を底面側から見た横断面図、(b)は(a)のP部拡大図
【図13】リセット操作状態に対応したトリップユニットの詳細図で、(a)はトリップユニット組立体を底面側から見た横断面図、(b)は(a)のP部拡大図
【図14】本発明の実施例による漏電警報付き配線用遮断器の回路図
【図15】従来の漏電リレーを搭載した漏電警報付き配線用遮断器の回路図
【図16】従来の漏電警報ユニットを搭載した漏電警報付き配線用遮断器の回路図
【符号の説明】
【0041】
1 漏電警報付き配線用遮断器
2 主回路
4 零相変流器
5 漏電検出回路
11 トリップコイル
11a 可動鉄心
11b 永久磁石
11c 励磁コイル
12 警報スイッチ
13 漏電表示釦
13a 係合突起
13b 釦の駆動ばね
14 トリップフリー機構
15 漏電警報ユニット
16 トリップユニット
17 スライダ
18 駆動ばね
19 復帰ばね
20 カム式操作レバー
20a 係合段部
20b 釈放用傾斜カム面
20c リセット用傾斜カム面
21 ユニットケース
23 制御基板
24 カム式操作レバーの支軸ピン
25 カム式操作レバーの付勢ばね
26 Oリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
過負荷,短絡保護機能を備えた配線用遮断器に零相変流器,漏電検出回路,および漏電警報ユニットを搭載し、電路に漏電が生じて地絡電流が流れた際に電路を断路せずに漏電警報ユニットから漏電警報を出力する漏電警報付き配線用遮断器であり、
前記漏電警報ユニットが、漏電検出回路の出力信号を受けて作動するトリップユニットと、該トリップユニットの動作に連動して外部に漏電警報を出力する警報スイッチ、およびリセット釦兼用のポップアップ式漏電表示釦とからなるものにおいて、
前記漏電表示釦を押し込んだままの状態で電路に地絡電流が流れた際に、トリップユニットを自由に作動させて警報スイッチより漏電警報を出力させるトリップフリー機構として、前記トリップユニットの操作端と漏電表示釦との間を連係して常時は漏電表示釦を押込み位置に係止保持し、トリップユニットの動作により漏電表示釦を釈放して漏電表示位置にポップアップさせ、さらに漏電表示釦を押し込んだままの拘束状態でもトリップユニットの自由な動作を妨げないように機能するカム式操作レバーを設けたことを特徴とする漏電警報付き配線用回路遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の漏電警報付き配線用回路遮断器において、トリップフリー機構のカム式操作レバーは、その先端部に漏電表示釦をセット位置に係止保持する庇状の係合段部、該係合段部に直交する係合釈放用の傾斜カム面、および頂部先端にリセット用の傾斜カム面を形成し、かつ縦軸の支軸ピン,付勢ばねを介してトリップユニットの操作端に回動可能に連結したことを特徴とする漏電警報付き配線用回路遮断器。
【請求項3】
請求項1に記載の漏電警報付き配線用回路遮断器において、トリップユニットが、可動鉄心,該可動鉄心をセット位置に吸着保持する永久磁石,および逆励磁により前記永久磁石の磁力を打ち消す励磁コイルからなるプランジャ形電磁石と、前記可動鉄心の先端軸部に連結してその一端を警報スイッチに対峙させたスライダと、該スライダと電磁石との間に介装した駆動ばねと、前記可動鉄心の軸上に嵌挿してスライダとの間に介装した復帰ばねとから構成したことを特徴とする漏電警報付き配線用回路遮断器。
【請求項4】
請求項3に記載の漏電警報付き配線用回路遮断器において、スライダを可動鉄心の先端軸部に遊嵌した上で、該先端軸部とスライダとの間に軸方向の摺動抵抗部材として機能するOリングを介装して相互連結したことを特徴とする漏電警報付き配線用遮断器。
【請求項5】
請求項1に記載の漏電警報付き配線用回路遮断器において、トリップユニット,警報スイッチ,および漏電表示釦を漏電警報ユニットのユニットケースに組込み、さらに該ユニットケースに漏電検出回路を含む制御基板を搭載して漏電警報ユニットを構成したことを特徴とする漏電警報付き配線用回路遮断器。
【請求項6】
請求項5に記載の漏電警報付き配線用回路遮断器において、警報スイッチがユニットケースにカセット式に装着するマイクロスイッチであり、このスイッチ装着位置でマイクロスイッチのアクチュエータをトリップユニットのスライダ先端に対峙させて配置したことを特徴とする漏電警報付き配線用遮断器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−4101(P2009−4101A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161017(P2007−161017)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(503361927)富士電機アセッツマネジメント株式会社 (402)
【Fターム(参考)】