説明

演色性ガラス粒子およびその製造方法

【課題】本発明は、演色性ガラス粒子およびその製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明の演色性ガラス粒子は、ガラス微粒子と希土類元素化合物の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%とすることで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演色性ガラス粒子およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
演色(可逆的変色)性化合物は、種々の外部光源を照射することによって、それぞれ異なった色に変化して見えるものであり、酸化ネオジウムや酸化ホロミウム等の希土類酸化物が知られている。これらの化合物は、化学的構造変化を伴って色相変化を示すフォトクロミック材料とは異なり、照射する光源の種類によって波長の異なる光を反射することによって色が変化して見えるものであり、化学的変化を伴わず、安定性した発色性が得られる。このような現象を利用し、演色性化合物は携帯電話機等の塗装製品(特許文献1)や陶磁器顔料や陶磁器用上絵具等(特許文献2)に使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−205181
【特許文献2】特開2002−255673
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、演色性を示す製品は、特許文献1、2に記載されるように、プラスチックやセラミック成形体、珪砂、ガラス等の基体を、演色性顔料を含む演色性塗料や上絵具等でコーティングすることで得られている。しかしながら、従来の製品では、コーティング材中の希土類酸化物が直接反射する光のみが色相として視認されるため、その演色性は不十分なものであった。
また、建築材料、土木材料、設備機器等への意匠性骨材として用いる場合、耐候性、耐久性の面から、無機系のものが好まれる。しかしながら、このような骨材は、無機質の基体に上記の演色性顔料を含む演色性塗料や上絵具等をコーティングすることで得られるため、上述のように演色性が不十分であり、また製造時の工程が煩雑になる場合があった。
そこで、本発明では、より高い演色性を示す粒子状の骨材を簡便な方法により得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述のような問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の構成からなり、複数の独立気泡を有するガラス製の粒子中に希土類酸化物を混在させることで、高い演色性を示す粒子が簡便に得られることを見出した。
すなわち、本発明は、下記の演色性ガラス粒子およびその製造方法に係る。
【0006】
1.平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)とホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることを特徴とする演色性ガラス粒子。
2.平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)と平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることを特徴とする演色性ガラス粒子。
3.平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)及び/または平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)と平均粒子径200μm以下の中空ガラス微粒子(C)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることを特徴とする演色性ガラス粒子。
4.平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)とホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)を混合、凝集させて、粒子径0.1mm〜50mmで成形し凝集体を得る工程、該凝集体を200℃〜1500℃で熱処理する工程を含む、1.に記載の演色性ガラス粒子の製造方法。
5.平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)と平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)を混合、凝集させて、粒子径0.1mm〜50mmで成形し凝集体を得る工程、該凝集体を200℃〜1500℃で熱処理する工程を含む、2.に記載の演色性ガラス粒子の製造方法。
6.平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)及び/または平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)と平均粒子径200μm以下の中空ガラス粒子(C)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)を混合、凝集させて、粒子径0.1mm〜50mmで成形し凝集体を得る工程、該凝集体を200℃〜1500℃で熱処理する工程を含む、3.記載の演色性ガラス粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の演色性ガラス粒子は、ガラス微粒子と特定の希土類元素化合物の凝集体に由来するものであり、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し空隙率が1%〜50%である。この演色性ガラス粒子は、複数の独立気泡を内包するため、光の反射(乱反射)・屈折が生じ、外部光源を照射した際に、希土類酸化物の反射光が乱反射し、高い演色性を得ることができる。また、本発明の製造方法では、比較的簡便な方法によって演色性ガラス粒子を製造することができる。さらに、凝集体製造時に、粒子を予め成形するため、目的とする形状の粒子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0009】
本発明の演色性ガラス粒子は、ガラス微粒子とホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(以下(D)ともいう)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることによって、優れた演色性を有することを特徴とする。
【0010】
本発明では、粒子が複数の独立気泡を内包することにより、光の反射(乱反射)・屈折効果によって、粒子の透明性を低下させるとともに、これによって効果的に演色性が発揮できる。本発明における独立気泡の必要個数は、目的とする粒子の粒子径や、独立気泡自体の大きさ等により異なるため、最低必要な個数を明確にすることは困難であるが、少なくとも、目視によりガラス粒子が半透明から不透明と認識されるために必要な個数であり、本発明では、この個数を「複数」と表現している。
このような粒子の独立気泡の割合は、空隙率が体積比率で1%〜50%(好ましくは2%〜40%、さらには3%〜30%)である。このような範囲であることによって、半透明から不透明の粒子を作製することができる。空隙率が1%より小さい場合、粒子内層部の透明性が高くなり、光の反射・屈折効果が得られにくく、演色性が低下する。空隙率が50%より大きい場合、粒子の強度が低下するおそれがあり、演色性も低下する。
【0011】
このような独立気泡の直径としては、特に限定されないが、100μm以下、さらには0.1μm以上80μm以下、さらには0.2μm以上50μm以下であることが好ましい。このような直径100μm以下の独立気泡が空隙率1%〜50%にて存在していれば、本発明の効果を損なわない程度に直径100μm超の独立気泡が存在していてもよい。
【0012】
このような粒子の独立気泡は、ガラス微粒子と(D)の凝集体に由来するものであり、微粒子凝集体の粒子間に存在する空孔等により独立気泡が生成される。
【0013】
このような凝集体のガラス微粒子は、平均粒子径の上限が200μm以下で、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下のガラス微粒子(A)(以下(A)ともいう)である。このような(A)の平均粒子径の下限は、通常0.1μm以上で、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。このような場合、粒子間の間隙等により独立気泡が生成しやすい。また、空隙率が高く、大きさ100μm以下の独立気泡が生成されやすい。また、本発明において、(A)は、融点が650〜850℃、比重が2〜4の扁平状であることが好ましい。なお、本発明の粒子径とは、粒子の長径である。
【0014】
さらに、作製したガラス粒子の、形状安定性や強度の向上、独立気泡の調整の為に、(A)と、粒子径、融点、形状等の異なるガラス粒子を適宜混合することができる。
【0015】
例えば、(A)に対して、粒子径が5〜100倍のガラス粒子(B)(以下(B)ともいう)を混合することにより、成形時における粒子形状の安定性効果が得られる。特に、扁平状粒子の成形時における形状安定性に有効である。このときの(A)と(B)の混合比は、重量比率で100:1〜100:200、好ましくは100:2〜100:150、さらに好ましくは100:5〜100:100である。100:200以上、(B)を過剰に混合した場合、空隙率が低下するおそれがある。また、(B)は、平均粒子径が100〜1500μm、融点が650〜850℃、比重が2〜4の扁平状であることが好ましい。
【0016】
また、作製したガラス粒子において、空隙率を調整したい場合、(A)の一部を融点が約450〜650℃未満、比重が2〜4のガラス微粒子(A−2)(以下(A−2)ともいう)で置換することができる。この場合の(A)と(A−2)の混合比は重量比率で、100:1〜100:200、好ましくは100:5〜100:100である。(A−2)を過剰に混合した場合、空隙率が低下するおそれがある。
【0017】
さらに、(A)、(A−2)、(B)のうち任意に混合した混合物に対して、平均粒子径の上限が200μm以下、さらには150μm以下、さらには100μm以下の中空ガラス微粒子(C)(以下(C)ともいう)を混合することにより、意図的に空隙を調整することができる。このような(C)の平均粒子径の下限は、通常0.5μm以上、さらには1μm以上である。例えば、上記のような、(A)、(A)+(A−2)の混合物、(A)+(B)の混合物に、(C)を混合することで空隙率を向上させることができる。また、(A−2)、(B)、(A−2)+(B)の混合物、(A)+(A−2)+(B)の混合物において、空隙率を向上させることができる。このときの混合比は、(A)、(A−2)、(B)のうち任意に混合した混合物100重量部に対して、(C)を1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部である。このような(C)は、融点が650〜850℃、かさ比重が0.05〜1.5であることが好ましい。
本発明において、凝集体を構成するガラス微粒子としては、上記の(A)、(A−2)、(B)、(C)の少なくとも1種を含むものが使用できる。
【0018】
ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)は、これらの化合物が、焼成後、最終的に得られるガラス粒子中において希土類酸化物(D−2)(以下(D−2)ともいう)となるものであればよい。(D)としては、例えば、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム、エルビウムの塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ホウフッ化塩、臭化物塩、フッ化物塩、ヘキサフルオロリン塩、アルギン酸塩、酸化物、水酸化物、金属単体、酸化物コロイド、水酸化コロイド等が挙げられる。
【0019】
最終的に得られるガラス粒子には(D−2)が含まれる。得られたガラス粒子中の(D−2)の比率は、上記の(A)、(A−2)、(B)、(C)のうち任意に混合した混合物100重量部に対して、(D−2)が0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜75重量部、さらに好ましくは1〜50重量部である。100重量部を超える場合は粒子形成が不十分となるおそれがあり、0.1重量部より少ない場合は演色効果が得られにくい。
(D)は、(D−2)が上記比率になるように換算して混合すればよい。
【0020】
演色性を示す(D−2)、すなわち、酸化ホルミウム、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム、酸化エルビウムの平均粒子径としては、小さいものほど演色性効果が高く、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。50μmを超える場合、効果的な演色性を得ることができないおそれがある。
【0021】
作製した演色性ガラス粒子の形状は、例えば、球状や楕円状、りん片状、板状、円盤状、半球状、星型状、花弁状、リボン状、ヒトデ状、不定形状、多角板状、楕円板状等の扁平状、その他に、棒状、針状、紡錘状等があげられる。
【0022】
本発明の演色性ガラス粒子の比重は、使用する成分にもよるが、0.5以上3.0以下であることが好ましい。通常の独立気泡を有さないガラス粒子の比重は、2.0以上4.5以下程度であるが、本発明のガラス粒子は、独立気泡を有しているため、通常の独立気泡を有さないガラス粒子に比べて、軽量となっている。
よって、軽量であるが故、建築材料、土木材料、プラスチック材料、設備機器等として用いた場合、基材へかかる重量負荷を低減することができ、脱落やずれ落ち等を抑制することができる。また、輸送費用等のコストも低減することができる。
【0023】
なお、比重は、JIS Z 8807−1976 固体比重測定方法 「6.体積からの測定方法」に準じて測定した値である。
【0024】
また、必要に応じ、凝集体製造時、演色性を示す希土類元素化合物の他に、非演色性の無機金属顔料又は金属酸化物を添加してもよい。さらに、演色性ガラス粒子表面に、着色層や、保護層が積層されていてもよい。保護層としては、例えば、耐水性、耐酸性、耐塩基性、耐光性、耐候性、耐摩耗性、抗菌性等の性能を付与することができ、保護層で用いる結合材としては、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング材等の無機結合剤や、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等の有機結合剤等が挙げられ、必要に応じ、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、難燃剤、防虫剤、化学物質吸着剤、吸放湿性物質、香料、触媒、光触媒、蓄光剤、蛍光剤、光輝性顔料等の添加剤を混合することもできる。
【0025】
なお、粒子径、空隙率、独立気泡の直径は、走査型電子顕微鏡(日本電子製:JSM5301LV)で観察し、算出した値である。
具体的に、独立気泡の直径は、粒子の断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子製:JSM5301LV)で観察した値であり、空隙率は、観察した顕微鏡写真における独立気泡の面積から算出した値である。但し、空隙率は、独立気泡の直径が0.1μm以上のものについて測定し、算出した値である。
【0026】
本発明では、上記のガラス微粒子と(D)を混合、凝集させ成形後、該凝集体を熱処理することにより、演色性ガラス粒子を得ることができる。このときの焼成温度は、使用するガラス微粒子の融点に応じ適宜設定すればよいが、通常200℃以上1500℃以下、好ましくは300℃以上1200℃未満である。
【0027】
該ガラス微粒子と(D)の凝集体の成形方法としては、ガラス微粒子と(D)を、固着材、溶剤と混合した溶液を凝集させ成形すればよい。その方法としては、造粒法、滴下法、型枠成形法等があげられる。特に、滴下法及び型枠成形法が好ましい。さらに、必要に応じて形成した凝集体を破砕、切断することもできる。このように作製した粒子の形状は、球状や楕円状、りん片状、板状、円盤状、半球状、星型状、花弁状、リボン状、ヒトデ状、不定形状、多角板状、楕円板状等の扁平状、その他に、棒状、針状、紡錘状等があげられ、所望の形状に調整することができる。
【0028】
このようなガラス微粒子と(D)の凝集体を、乾燥後、熱処理すると、粒子間隙に入り込んだ、固着材、溶剤等により独立気泡が生成される場合と、粒子凝集体の粒子間に存在する空孔、中空粒子等により独立気泡が生成される場合がある。ガラス微粒子の大きさや、固着材、溶剤等の添加剤を適宜選定することにより、所望の空隙率を有する演色性ガラス粒子を製造することができる。
【0029】
固着材としては、例えば、澱粉、変性澱粉、カゼイン、大豆蛋白、セルロース誘導体、グァーガム、ガティガム、トラガントガム、キサンタンガム、プルラン、カシアガム、アラビノガラクタン、スクレロガム、カラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、タラガム、アラビアガム、タマリンドガム、ジェランガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、例えば、水、アルコール類、ポリオール類、ケトン類、ポリエーテル類、エステル類、カルボン酸類、ポリカルボン酸類、セルロース類、糖類、スルホン酸類、アミノ酸類、アミン類等が挙げられ、本発明では特に、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グルセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール等を用いることが好ましい。
【0030】
上記のような固着材及び溶剤に、ガラス微粒子と該希土類元素化合物(D)を混合、成形(凝集)、乾燥することで、所望の形状を有したガラス凝集体を得ることができる。さらに、ガラス微粒子、固着材、溶剤に加え、必要に応じ、融剤、硬化剤、凝集剤、酸化剤、還元剤、分散剤、錯化剤、着色成分等の添加剤を混合してもよい。また、この場合のガラス微粒子の濃度、分散液の粘度等は、上記の溶剤により適宜調整することができる。
【0031】
具体的に、以下に例示する方法で凝集体を成形することができる。
(1)(A)と(D)を、固着材、溶剤に混合、凝集させ、(A)と(D)由来の凝集体を成形する。
【0032】
(2)(A)と、(B)と(D)を固着材、溶剤に混合、凝集させ、(A)、(B)、および(D)由来の凝集体を成形する。(A)と(B)の混合比率は、重量比率で100:1〜100:200、好ましくは100:2〜100:150、さらに好ましくは100:5〜100:100である。
【0033】
(3)(A)と、(A−2)と(D)を固着材、溶剤に混合、凝集させ、(A)、(A−2)、および(D)由来の凝集体を成形する。(A)と(A−2)の混合比率は、重量比率で100:1〜100:200、好ましくは100:5〜100:100である。
【0034】
(4)(A)、(A−2)、(B)から選ばれる1種以上と、(C)と(D)を固着剤、溶剤に混合、凝集させ、凝集体を成形する。このとき(A)、(A−2)、(B)を任意に混合した混合物100重量部に対して、(C)は1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部、さらに好ましくは3〜30重量部混合する。
【0035】
上記(1)〜(4)において、(D)の混合比は、(D)の種類にもよるが、該ガラス微粒子(A)、(A−2)、(B)、(C)のうち任意に混合した混合物100重量部に対して、0.1〜200重量部、好ましくは0.5〜150重量部、さらに好ましくは1〜100重量部である。最終的に得られるガラス粒子中の(D−2)の比率が0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜75重量部、さらに好ましくは1〜50重量部となるように混合すればよい。
【0036】
本発明では、上記のガラス微粒子と(D)の凝集体を熱処理することによって演色性ガラス粒子を得ることができる。熱処理温度は、通常200℃〜1500℃、さらには400℃〜1300℃、処理時間は、通常1〜120分程度であることが好ましい。
【0037】
本発明ではこのような製造方法によって、着色ムラが少なく、演色性に優れたガラス粒子を得ることができる。また、ガラス微粒子凝集体を作製する工程において、粒子を予め成形するため、成形時に特別な装置等の必要はなく、目的とする形状の粒子を容易に製造することができるため好ましい。
【0038】
本発明の演色性ガラス粒子は、建築材料、土木材料、プラスチック材料、設備機器等の分野で使用することが可能であり、例えば塗料、舗装材、シート建材、プラスチック成形物等を構成する成分、骨材として用いることができる。また、本発明の演色性ガラス粒子は、強度に加えて、耐火性、防火性等にも優れており、このような性能が要求される材料にも使用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0040】
(実施例1)粒子径15μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)40重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重8.3)10重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ホルミウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集成形物を800℃で15分間焼成し、演色性ガラス粒子1を得た。
得られた演色性ガラス粒子1は、粒子端にややソリのある板状の形状を有し、空隙率が20%(平均サイズ1μmの複数の独立気泡)、比重が2.7、長径5mm、短径2.9mm、厚さ0.7mmであった。
また、演色性ガラス粒子1は、太陽光、白熱電球光源下では鮮明な黄色、3波長蛍光灯光源下では鮮明なピンク色を示し、高い演色性を示した。
また、得られた演色性ガラス粒子1の強度を評価するため、得られた演色性ガラス粒子1を100個用意し、プレス機にて0.2kN/cmの加重を加え、10秒間加圧した。圧を取り除いた後、割れた粒子の数を求めることによって、その強度を評価した。その結果、演色性ガラス粒子1では、割れた粒子は無く、初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0041】
(実施例2)粒子径15μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)30重量%、粒子径160μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)10重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重8.3)10重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ホルミウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集成形物を800℃で15分間焼成し、演色性ガラス粒子2を得た。
得られた演色性ガラス粒子2は、板状の形状を有し、空隙率が23%(平均サイズ2μmの複数の独立気泡)、比重が2.6、長径が5.2mm、短径3.1mm、厚さ0.7mmであった。
また、演色性ガラス粒子2は、太陽光、白熱電球光源下では鮮明な黄色、3波長蛍光灯光源下では鮮明なピンク色を示し、高い演色性を示した。
また、演色性ガラス粒子2について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性ガラス粒子2は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0042】
(実施例3)粒子径15μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)30重量%、粒子径160μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)10重量%、酸化ネオジウム微粒子(粒子径:1μm、比重:7.3)10重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ネオジウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集成形物を800℃で15分間焼成し、演色性ガラス粒子3を得た。
得られた演色性ガラス粒子3は、板状の形状を有し、空隙率が23%(平均サイズ2μmの複数の独立気泡)、比重が2.4、長径が5.2mm、短径3.1mm、厚さ0.7mmであった。
また、演色性ガラス粒子3は、太陽光、白熱電球光源下では藤色、3波長蛍光灯光源下では鮮明な水色を示し、高い演色性を示した。
また、演色性ガラス粒子3について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性ガラス粒子3は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0043】
(実施例4)粒子径15μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)35重量%、粒子径160μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)10重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重8.3)5重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ホルミウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集成形物を800℃で15分間焼成し、演色性ガラス粒子4を得た。
得られた演色性ガラス粒子4は、板状の形状を有し、空隙率が17%(平均サイズ2μmの複数の独立気泡)、比重が2.6、長径が5.3mm、短径が3.0mm、厚さ0.7mmであった。
また、演色性ガラス粒子4は、太陽光、白熱電球光源下では鮮明な黄色、3波長蛍光灯光源下では鮮明なピンク色を示し、高い演色性を示した。
また、演色性ガラス粒子4について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性ガラス粒子4は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0044】
(実施例5)粒子径15μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)30重量%、粒子径80μmのガラス微粒子(比重:2.6、融点:600℃)10重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重8.3)10重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ホルミウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集成形物を800℃で15分間焼成し、演色性ガラス粒子5を得た。
得られた演色性ガラス粒子5は、板状の形状を有し、空隙率が16%(平均サイズ2μmの複数の独立気泡)、比重が2.8、長径が4.8mm、短径が2.7mm、厚さ0.8mmであった。
また、演色性ガラス粒子5は、太陽光、白熱電球光源下では鮮明な黄色、3波長蛍光灯光源下では鮮明なピンク色を示し、高い演色性を示した。
また、演色性ガラス粒子5について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性ガラス粒子5は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0045】
(実施例6)粒子径15μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)20重量%、粒子径160μmのりん片状ガラス微粒子(比重:2.6、融点:750℃)10重量%、粒子径80μmのガラス微粒子(比重:2.6、融点:600℃)10重量%、粒子径13μmの中空状ガラス微粒子(比重:0.4、融点:750℃)5重量%、酸化ホルミウム(粒子径:1μm、比重8.3)5重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ホルミウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集成形物を800℃で15分間焼成し、演色性ガラス粒子6を得た。
得られた演色性ガラス粒子6は、板状の形状を有し、空隙率が22%(平均サイズ10μmの複数の独立気泡)、比重が1.9、長径が5.3mm、短径が3.1mm、厚さ0.7mmであった。
また、演色性ガラス粒子6は、太陽光、白熱電球光源下では鮮明な黄色、3波長蛍光灯光源下では鮮明なピンク色を示し、高い演色性を示した。
また、演色性ガラス粒子6について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、ガラス粒子6は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0046】
(比較例1)粒子径80μmのガラス微粒子(比重:2.6、融点:600℃)40重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重:8.3)10重量%、及びアルギン酸ナトリウム1重量%を含む水溶液を長径7mm、短径4mm、厚さ1mmの型枠に流し込み板状に成型後、5重量%の塩化カルシウムを含む溶液を噴霧し、50℃で3時間乾燥させ、ガラス微粒子及び酸化ホルミウム微粒子の凝集成形物を得た。この凝集物を800℃で30分間焼成し、演色性ガラス粒子7を得た。
得られた演色性ガラス粒子7は、半球状の形状を有し、空隙率が0.5%(平均サイズ1μmの複数の独立気泡)、比重が2.9、長径が3.2mm、短径が2.6mm、厚さ1.4mmであった。
また、演色性ガラス粒子7は、透明性を有しており、太陽光、白熱電球光源下ではベージュ、3波長蛍光灯光源下では肌色を示し、演色性を示したが、色相の変化は演色性ガラス粒子1〜6と比較して乏しかった。
また、演色性ガラス粒子7について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性ガラス粒子7は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0047】
(比較例2)平均粒子径6mmに破砕した白色の硬質タイルの表面に、透明釉薬(比重:3.5、融点:700℃)40重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重8.3)10重量%、及びカルボキシメチルセルロース2重量%を含む水溶液を塗付し、50℃で3時間乾燥させた後、800℃で60分間焼成し、演色性粒子8を得た。
得られた演色性粒子8の表面釉薬層は、空隙率0%、比重が4.3、厚さ0.3mmであった。
また、演色性粒子8は、太陽光、白熱電球光源下ではベージュ、3波長蛍光灯光源下では桃肌色を示し、演色性を示したが、色相の変化は演色性ガラス粒子1〜6と比較して乏しかった。
また、演色性粒子8について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性粒子1は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。
【0048】
(比較例3)白色の硬質タイルの表面に、透明釉薬(比重:3.5、融点:700℃)40重量%、酸化ホルミウム微粒子(粒子径:1μm、比重8.3)10重量%、及びカルボキシメチルセルロース2重量%を含む水溶液を塗付し、50℃で3時間乾燥させた後、800℃で60分間焼成した。得られた演色性を示すタイルを破砕し、演色性粒子9を得た。
得られた演色性粒子9の表面釉薬層は、空隙率0%、比重が4.3、厚さ0.4mmであった。
また、演色性粒子9は、太陽光、白熱電球光源下ではベージュ、3波長蛍光灯光源下では桃肌色を示し、演色性を示したが、色相の変化は演色性ガラス粒子1〜6と比較して乏しかった。また、粒子の断面は演色性を示さなかった。
また、演色性粒子9について、実施例1と同様の強度試験を行った結果、演色性粒子9は、割れた粒子は無く、全ての粒子の初期の形状が保たれており、優れた強度を有していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)とホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることを特徴とする演色性ガラス粒子。
【請求項2】
平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)と平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることを特徴とする演色性ガラス粒子。
【請求項3】
平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)及び/または平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)と平均粒子径200μm以下の中空ガラス微粒子(C)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)の凝集体に由来し、直径100μm以下の独立気泡を複数内包し、空隙率が1%〜50%であることを特徴とする演色性ガラス粒子。
【請求項4】
平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)とホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)を混合、凝集させて、粒子径0.1mm〜50mmで成形し凝集体を得る工程、該凝集体を200℃〜1500℃で熱処理する工程を含む、演色性ガラス粒子の製造方法。
【請求項5】
平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)と平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)を混合、凝集させて、粒子径0.1mm〜50mmで成形し凝集体を得る工程、該凝集体を200℃〜1500℃で熱処理する工程を含む、演色性ガラス粒子の製造方法。
【請求項6】
平均粒子径200μm以下のガラス微粒子(A)及び/または平均粒子径が該ガラス微粒子(A)の5〜100倍であるガラス粒子(B)と平均粒子径200μm以下の中空ガラス粒子(C)、ホルミウム、プラセオジウム、ネオジウム及びエルビウムから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を含む化合物(D)を混合、凝集させて、粒子径0.1mm〜50mmで成形し凝集体を得る工程、該凝集体を200℃〜1500℃で熱処理する工程を含む、演色性ガラス粒子の製造方法。