説明

潜在性活性剤を含む基材マーキング用コーティング組成物

本発明は、潜在性活性剤を含む組成物を提供する。本発明は、また、その組成物の製造方法、その組成物でコーティングされた基材およびその製造方法、その組成物を用いるマーキングされた基材の製造方法、並びに後者製造方法により得られるマーキングされた基材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材マーキング用コーティング組成物、その組成物の製造方法、その組成物でコーティングされた基材およびその製造方法、その組成物を用いるマーキングされた基材の製造方法、並びに後者製造方法により得られるマーキングされた基材に関する。
【0002】
パッケージは通常、情報、たとえばロゴ、バーコード、有効期限またはバッチ番号をマーキングする必要がある。これを実現する一つの方法は、エネルギー、たとえば熱で処理すると可視マーキングを形成する組成物で、パッケージをコーティングすることによる。エネルギーとしてレーザ照射を使用する場合、マーキングは実に小さいのでヒトの眼に対して見えないかほとんど見えない。
【0003】
国際公開公報第02/068205号には、物体が、官能基を有する材料、たとえばポリヒドロキシ化合物、並びに金属化合物、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化鉄または塩および有機金属を含む配合物を含むか、その配合物でコーティングされる、物体をマーキングする方法が記載されている。レーザを照射すると、二つの成分が反応してコントラストのある色の生成物を形成する。
【0004】
国際公開公報第02/068205号の水ベースの組成物には、それらは黄色または灰色/緑色マーキングを提供するだけであり、黒色マーキングは提供しないという欠点がある。黒色マーキングは有機溶剤ベースの系を用いて得られるだけである。さらに、記載された組成物は、紙またはプラスチックのコーティングに適切ではない。
【0005】
本発明の目的は、エネルギー照射で高コントラストの黒っぽいマーキングを生じる、紙のコーティングに適切なコーティング組成物を提供することである。
【0006】
これらの目的は、請求項1記載のコーティング組成物、請求項11、13および14記載の方法、並びに請求項12および17記載の基材により解決される。
【0007】
本発明の組成物は、潜在性活性剤を含む。
【0008】
潜在性活性剤は、酸とアミンの塩、または酸誘導体のいずれかとすることができる。
【0009】
酸は無機でも有機でもよい。無機酸の例は、硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、ニトロシル硫酸、チオ硫酸、スルファミン酸、亜硫酸、ホルムアミジンスルフィン酸、硝酸、リン酸、チオリン酸、フルオロリン酸、ヘキサフルオロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、塩酸、塩素酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびフッ化水素酸である。有機酸の例は、硫黄系有機酸、たとえば4−スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリ(4−スチレンスルホン酸)および4−スチレンスルホン酸単位を含むコポリマー、たとえばポリ(4−スチレンスルホン酸−コマレイン酸)、リン系有機酸、たとえばフェニルホスホン酸、メタンホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸二水素2−アミノエチル、フィチン酸、2−ホスホ−L−アスコルビン酸、グリセロジヒドロジェンホスフェート、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)および1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、およびカルボン酸、たとえば酒石酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸およびマレイン酸である。
【0010】
好ましくは、酸は、無機酸、硫黄系有機酸、リン系有機酸、カルボン酸およびこれらの混合物よりなる群から選択される。より好ましくは、酸は、硫酸、チオ硫酸、亜硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸、塩酸、硫黄系有機酸、リン系有機酸、カルボン酸およびこれらの混合物よりなる群から選択される。一つの最も好ましい態様では、酸は硫酸、塩酸、硫黄系有機ポリ酸およびこれらの混合物よりなる群から選択される。別の最も好ましい態様では、酸はリン酸、ポリリン酸、および有機リン酸、並びにこれらの混合物から選択される。
【0011】
硫黄系有機ポリ酸の例は、ポリ(4−スチレンスルホン酸)および4−スチレンスルホン酸単位を含むコポリマー、たとえばポリ(4−スチレンスルホン酸−コマレイン酸)である。有機リン酸の例は、リン酸二水素2−アミノエチル、フィチン酸、2−ホスホ−L−アスコルビン酸、グリセロジヒドロジェンホスフェート、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)およびヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)である。
【0012】
アミンは、式NR123[式中、R1、R2およびR3は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキル、アラルケニルまたはアリールであるか、あるいはR1が水素、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキル、アラルケニルまたはアリールであり、かつR2およびR3が、式NR123のアミンの窒素と共に、5〜7−員環を形成する(ここで、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキルおよびアラルケニルは非置換であってもNR456、イミノ、シアノ、シアナミノ、ヒドロキシおよび/またはC1-6−アルコキシで置換されていてもよく、そしてアリールは非置換であってもNR456、シアノ、シアナミノ、ヒドロキシル、C1-6−アルキル、および/またはC1-4−アルコキシで置換されていてもよく、ここでR4、R5およびR6は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-6−アルキル、C4-8−シクロアルキルまたはアリールである)]とすることができる。
【0013】
1-30−アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリルおよびアラキニルである。C2-30−アルケニルの例は、ビニル、アリル、リノレニル、ドコサヘキサエノイル、エイコサペンタエノイル、リノレイル、アラキドニルおよびオレイルである。C4-8−シクロアルキルの例は、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。C5-8−シクロアルケニルの例は、シクロヘキセニルである。アラルキルの例は、ベンジルおよび2−フェニルエチルである。アリールの例は、フェニル、1,3,5−トリアジニルまたはナフチルである。C1-6−アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、およびヘキシルである。C1-4−アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびブトキシである。
【0014】
好ましいC1-30−アルキルは、C1-10−アルキルであり、より好ましいC1-30−アルキルはC1-6−アルキルである。好ましいC2-30−アルケニルは、C2-10−アルケニル、より好ましくは、C2-6−アルケニルである。C1-6−アルキルの例は、上述した。C1-10−アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルである。C2-10−アルケニルおよびC2-6−アルケニルの例は、ビニルおよびアリルである。
【0015】
式NR123のアミンの例は、アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、グアニジン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、メラミン、メチロールメラミン、ピロール、モルホリン、ピロリジンおよびピペリジンである。
【0016】
好ましくは、アミンは、式NR123(式中、R1は水素であり、そしてR2およびR3は前記定義の通りである)である。
【0017】
より好ましくは、アミンは、式NR123(式中、R1およびR2は水素であり、そしてR3は前記定義の通りである)である。
【0018】
最も好ましくは、アミンはアンモニアである。
【0019】
酸誘導体は、酸性のOH−基が全てOR7、NR89、OC(O)R10またはSR11で置換された前記定義の通りの酸のエステル、アミド、無水物およびチオエステル{ここで、R7、R8、R9、R10およびR11は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキル、アラルケニルまたはアリールとすることができ[ここで、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキルおよびアラルケニルは、非置換であってもNR121314、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシおよび/またはC1-6−アルコキシで置換されていてもよく、そしてアリールは非置換であってもNR121314、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、C1-6−アルキル、および/またはC1-6−アルコキシで置換されていてもよい(ここで、R12、R13およびR14は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-6−アルキル、C4-8−シクロアルキルまたはアリールである)]、ただしR7は、水素ではない}とすることができる。
【0020】
ハロゲンの例は、塩素および臭素である。
【0021】
酸誘導体の例は、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルエステル、ホスホン酸水素ジメチル、ジメチルメチルホスホネートおよびトリメチルホスフェートである。
【0022】
好ましい酸誘導体は、酸性のOH−基が全てOR7で置換された前記定義の酸のエステルである。
【0023】
好ましくは、潜在性活性剤は、酸とアミンの塩である。
【0024】
好ましくは、組成物は溶剤も含む。溶剤は、水、有機溶剤、液体モノマーまたはこれらの混合物とすることができる。好ましくは、溶剤は、水、有機溶剤またはこれらの混合物である。
【0025】
有機溶剤の例は、C1-4−アルカノール、C2-4−ポリオール、C3-6−ケトン、C4-6−エーテル、C2-3−ニトリル、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびスルホラン(ここで、C1-4−アルカノールおよびC2-4−ポリオールは、C1-4−アルコキシで置換されていてもよい)である。C1-4−アルカノールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはブタノール、イソブタノール、s−ブタノールおよびt−ブタノールである。これらのC1-4−アルコキ誘導体の例は、2−エトキシエタノールおよび1−メトキシ−2−プロパノールである。C2-4−ポリオールの例は、グリコールおよびグリセロールである。C3-6−ケトンの例は、アセトンおよびメチルエチルケトンである。C4-6−エーテルの例は、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエチルおよびテトラヒドロフランである。C2-3−ニトリルの例は、アセトニトリルである。
【0026】
より好ましくは、溶剤は、水または水と有機溶剤の混合物である。
【0027】
好ましくは、有機溶剤は、C1-4−アルカノール、C2-4−ポリオール、C3-6−ケトン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドよりなる群(ここで、C1-4−アルカノールおよびC2-4−ポリオールは、C1-4−アルコキシで置換されていてもよい)から選択される。
【0028】
好ましくは、水と有機溶剤の混合物の水/有機溶剤の比は、少なくとも0.5/1、より好ましくは少なくとも1/1である。
【0029】
最も好ましくは、溶剤は水である。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物はポリマーバインダーも含む。
【0031】
ポリマーバインダーの例は、アクリルポリマー、スチレンポリマーおよびその水素化生成物、ビニルポリマーおよびその誘導体、ポリオレフィンおよびその水素化またはエポキシ化生成物、アルデヒドポリマー、エポキシドポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、スルホン系ポリマーおよび天然ポリマーおよびこれらの誘導体である。ポリマーバインダーは、ポリマーバインダーの混合物であってもよい。コーティング後UV照射下で、上に示したポリマーバインダーの一つを形成する液体モノマーおよび適切な光開始剤の混合物であってもよい。この場合、モノマーは溶剤として働く。
【0032】
アクリルポリマーは、アクリルモノマー少なくとも1種から、またはアクリルモノマー少なくとも1種と、他のエチレン性不飽和ポリマー、たとえばスチレンモノマー、ビニルモノマー、オレフィンモノマーまたはマレイン酸モノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。
【0033】
アクリルモノマーの例は、(メタ)アクリル酸またはその塩、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、C1-6−アルキル(メタ)アクリレート、たとえばエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートまたはヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、置換C1-6−アルキル(メタ)アクリレート、たとえばグリシジルメタクリレートおよびアセトアセトキシエチルメタクリレート、ジ(C1-4−アルキルアミノ)C1-6−アルキル(メタ)アクリレート、たとえばジメチルアミノエチルアクリレートまたはジエチルアミノエチルアクリレート、C1-6−アルキルアミン、置換C1-6−アルキルアミン、たとえば2−アミノ−2−メチル−1−プロパンスルホン酸アンモニウム塩、またはジ(C1-4−アルキルアミノ)C1-6−アルキルアミンと(メタ)アクリル酸とから形成されるアミドおよびそのハロゲン化C1-4−アルキル付加物である。
【0034】
スチレンモノマーの例は、スチレン、4−メチルスチレンおよび4−ビニルビフェニルである。ビニルモノマーの例は、ビニルアルコール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルイソブチルエーテルおよび酢酸ビニルである。オレフィンモノマーの例は、エチレン、プロピレン、ブタジエンおよびイソプレン、並びにこれらの塩素化またはフッ素化誘導体、たとえばテトラフルオロエチレンである。マレイン酸モノマーの例は、マレイン酸、無水マレイン酸およびマレイミドである。
【0035】
アクリルポリマーの例は、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(ブチルメタクリレート)、並びにカルボキシル化アクリルコポリマー[たとえばCibaにより、商品名Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15、LS20およびLS24で販売されている]、スチレンアクリルコポリマー[たとえばCibaにより、商品名Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26およびCiba(登録商標)Glascol(登録商標)C44で販売されている]、並びにポリアクリル酸ポリマー[たとえばCibaにより、商品名Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)E11で販売されている]である。
【0036】
スチレンポリマーは、スチレンモノマー少なくとも1種と、ビニルモノマー、オレフィンモノマーおよび/またはマレイン酸モノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。スチレンポリマーの例は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー、スチレン−エチレン−ブタジエンブロックポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックポリマーおよびスチレン−無水マレイン酸コポリマーである。
【0037】
ビニルポリマーは、ビニルモノマー少なくとも1種から、またはビニルモノマー少なくとも1種と、オレフィンモノマーもしくはマレイン酸モノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。ビニルポリマーの例は、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニルおよびメチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマーである。これらの誘導体の例は、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコールおよびケイ素変性ポリビニルアルコールである。
【0038】
ポリオレフィンは、少なくとも1種のオレフィンモノマーから、または少なくとも1種のオレフィンモノマーまたはマレイン酸モノマーから形成されるポリマーである。ポリオレフィンの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンおよびイソプロピレン−無水マレイン酸コポリマーである。
【0039】
アルデヒドポリマーは、アルデヒドモノマーもしくはポリマー少なくとも1種と、アルコールモノマーもしくはポリマー、アミンモノマーもしくはポリマーおよび/または尿素モノマーもしくはポリマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。アルデヒドモノマーの例は、ホルムアルデヒド、フルフラールおよびブチラールである。アルコールモノマーの例は、フェノール、クレゾール、レゾルシノールおよびキシレノールである。ポリアルコールの例は、ポリビニルアルコールである。アミンモノマーの例は、アニリンおよびメラミンである。尿素モノマーの例は、尿素、チオウレアおよびジシアンジアミドである。アルデヒドポリマーの例は、ブチラールおよびポリビニルアルコールから形成されるポリビニルブチラールである。
【0040】
エポキシドポリマーは、エポキシドモノマー少なくとも1種と、アルコールモノマーおよび/またはアミンモノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。エポキシドモノマーの例は、エピクロロヒドリンおよびグリシドールである。アルコールモノマーの例は、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、キシレノール、ビスフェノールAおよびグリコールである。エポキシドポリマーの例は、エピクロロヒドリンおよびビスフェノールAから形成されるフェノキシ樹脂である。
【0041】
ポリアミドは、アミド基またはアミノ並びにカルボキシ基を有するモノマー少なくとも1種から、あるいは2個のアミノ基を有するモノマー少なくとも1種と、2個のカルボキシ基を有するモノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。アミド基を有するモノマーの例は、カプロラクタムである。ジアミンの例は、1,6−ジアミノヘキサンである。ジカルボン酸の例は、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および1,4−ナフタレン−ジカルボン酸である。ポリアミドの例は、ポリヘキサメチレンアジポアミドおよびポリカプロラクタムである。
【0042】
ポリエステルは、ヒドロキシ並びにカルボキシ基を有するモノマー少なくとも1種から、または2個のヒドロキシ基を有するモノマー少なくとも1種と、2個のカルボキシ基もしくはラクトン基を有するモノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。ヒドロキシ並びにカルボキシ基を有するモノマーの例は、アジピン酸である。ジオールの例は、エチレングリコールである。ラクトン基を有するモノマーの例は、カプロラクトンである。ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸および1,4−ナフタレンジカルボン酸である。ポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレートである。いわゆるアルキド樹脂も、ポリエステルポリマーに属するとみなされる。
【0043】
ポリウレタンは、ジイソシアネートモノマー少なくとも1種と、ポリオールモノマーおよび/またはポリアミンモノマー少なくとも1種とから形成されるポリマーである。ジイソシアネートモノマーの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0044】
スルホン系ポリマーの例は、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンおよびポリスルホンである。ポリスルホンは、4,4−ジクロロジフェニルスルホンおよびビスフェノールAから形成されるポリマーである。
【0045】
天然ポリマーの例は、スターチ、セルロース、ゼラチン、カゼインおよび天然ゴムである。誘導体の例は、酸化されたスターチ、スターチ−酢酸ビニルグラフトコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびアセチルセルロースである。
【0046】
ポリマーバインダーは、当技術分野において公知であり、公知の方法により、たとえば適切なモノマーから出発して重合することにより製造することができる。
【0047】
好ましくは、ポリマーバインダーは、アクリルポリマー、スチレンポリマー、ビニルポリマーおよびその誘導体、ポリオレフィン、ポリウレタンおよび天然ポリマー並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される。
【0048】
より好ましくは、ポリマーバインダーは、アクリルポリマー、スチレンブタジエンコポリマー、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコールおよびケイ素変性ポリビニルアルコール、イソプロピレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリウレタン、セルロース、ゼラチン、カゼイン、酸化されたスターチ、スターチ−酢酸ビニルグラフトコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびアセチルセルロースよりなる群から選択される。
【0049】
最も好ましくは、ポリマーバインダーは、たとえばCibaにより、商品名Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)、たとえばCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15、LS26、E11またはC44で販売されているポリビニルアルコールまたはアクリルポリマーである。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26は、コアポリマーとして機能する、スチレン/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー55/45(w/w)70重量部、およびシェルポリマーとして機能するスチレン/アクリル酸コポリマー30重量部からなるコアシェルポリマーである。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物は、炭形成化合物(char forming compound)も含む。炭形成化合物は、エネルギー処理すると炭を形成する化合物である。通常、炭形成化合物は、炭素および酸素含量が高い。
【0051】
炭形成化合物の例は、カルボニル基がヒドロキシル基に、いわゆる糖アルコールに還元された炭水化物、たとえば単糖類、二糖および多糖類、並びにこれらの誘導体である。
【0052】
単糖類の例は、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、リボース、エリトロースおよびキシロースである。二糖の例は、マルトース、セロビオース、ラクトースおよびサッカロースである。多糖類の例は、セルロース、スターチ、アラビアゴム、デキストリンおよびシクロデキストリンである。糖アルコールの例は、メソエリスリトール、ソルビトール、マンニトールおよびペンタエリスリトールである。
【0053】
好ましい炭形成化合物は単糖類および二糖である。より好ましい炭形成化合物は、サッカロースおよびガラクトースである。最も好ましい炭形成化合物は、サッカロースである。
【0054】
好ましくは、本発明の組成物は、さらなる成分も含むことができる。
【0055】
コーティング組成物中に含むことができるさらなる成分は、組成物の性能を向上させるのに適切な任意の成分とすることができる。さらなる成分は、入射エネルギーを吸収し、このエネルギーを熱的にまたは他の方法で系に移すことができる成分、たとえば紫外線吸収剤またはIR吸収剤とすることができる。他のタイプのさらなる成分の例は、顔料、塩基、安定剤、酸化防止剤、レオロジー改質剤、湿潤剤、殺生剤、煙抑制剤および追跡標識添加物(taggant)である。追跡標識添加物は、生成物に、その製造の源を示すために添加する種々の物質である。
【0056】
好ましくは、コーティング組成物は染料または発色剤を含有しない。
【0057】
UV吸収剤の例は、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンである。
【0058】
IR吸収剤は有機でも無機でもよい。有機IR吸収剤の例は、たとえば商品名Ciba(登録商標)Irgalube(登録商標)211で販売されているアルキル化トリフェニルホスホロチオネート、または、たとえば商品名Ciba(登録商標)Microsol(登録商標)Black 2BまたはCiba(登録商標)Microsol(登録商標)Black C−E2で販売されているカーボンブラックである。
【0059】
無機IR吸収剤の例は、金属、たとえば銅、ビスマス、鉄、ニッケル、スズ、亜鉛、マンガン、ジルコニウムおよびアンチモンの、酸化物、水酸化物、硫化物、スルフェートおよびホスフェートであり、酸化アンチモン(V)ドープマイカおよび酸化スズ(IV)ドープマイカを含む。
【0060】
顔料を、非イメージングおよびイメージング領域の間のコントラストを高めるための無機IR吸収剤として、またはセキュリティ対策として加えることができる。
【0061】
無機IR吸収剤として働く顔料の例は、カオリン、仮焼カオリン、マイカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、アモルファスシリカおよびコロイド状二酸化ケイ素である。
【0062】
非イメージングおよびイメージング領域の間のコントラストを高めるために加えることができる顔料の例は、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、中空プラスチック顔料である。
【0063】
セキュリティ対策として加えることができる顔料の例は、蛍光顔料または磁性顔料である。
【0064】
組成物のpHを調節するために塩基を加えることができる。適切な塩基は、アルカリおよびアルカリ土類金属の水酸化物、または式NR123(式中、R1、R2およびR3は、前記定義の通り)のアミンである。水酸化アルカリの例は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。
【0065】
レオロジー改質剤の例は、商品名Ciba(登録商標)Rheovis(登録商標)112、Ciba(登録商標)Rheovis(登録商標)132およびCiba(登録商標)Rheovis(登録商標)152で販売されているような、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはアクリルポリマーである。
【0066】
湿潤剤の例は、Ciba(登録商標)Irgaclear(登録商標)D、ソルビトール系清澄剤である。
【0067】
殺生剤の例は、クロロメチルイソチアゾリノンとメチルイソチアゾリノンとの混合物を含むActicide(登録商標)MBS、2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンと1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンとの組み合わせを含むBiocheck(登録商標)410、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンと2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールとの混合物を含むBiochek(登録商標)721M、および2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールを含むMetasol(登録商標)TK100である。
【0068】
煙抑制剤の例は、アンモニウムオクタモリブダートである。
【0069】
本発明のコーティング組成物により形成されたコーティングは、ラミネート層またはオーバープリントワニスでコーティングすることができる。ラミネート層またはオーバープリントワニスの材料を、それがイメージングレーザの波長で吸収しないように選択するなら、レーザ感応性コーティングは、ラミネートを損傷またはマーキングせずに、ラミネート層を通してイメージングすることができる。また、理想的には、エネルギー処理前にそれがコーティングの着色をもたらさないラミネートまたはオーバープリントワニスを選択する。
【0070】
本発明の組成物は、潜在性活性剤を、全組成物の重量に基づいて1〜50%、好ましくは1〜40%、より好ましくは1〜30%、最も好ましくは5〜25重量%含むことができる。
【0071】
本発明の組成物は、溶剤を、全組成物の重量に基づいて10〜95%、好ましくは10〜90%、より好ましくは10〜80重量%含むことができる。
【0072】
本発明の組成物は、ポリマーバインダーを、全組成物の重量に基づいて1〜80%、好ましくは1〜70%、より好ましくは1〜60%、最も好ましくは1〜50乾燥重量%含むことができる。
【0073】
本発明の組成物は、炭形成化合物を、全組成物の重量に基づいて0〜50%、好ましくは0〜40%、より好ましくは1〜30%、最も好ましくは1〜20重量%含むことができる。
【0074】
本発明の組成物は、さらなる成分を、全組成物の重量に基づいて0〜30%、好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10重量%含むことができる。
【0075】
本発明の組成物は、潜在性活性剤1〜50重量%、溶剤10〜95重量%、ポリマーバインダー1〜80重量%、炭形成化合物0〜50重量%、およびさらなる成分0〜30重量%(全て全組成物の重量に基づく)からなることができる。
【0076】
好ましくは、本発明の組成物は、潜在性活性剤1〜40重量%、溶剤10〜90重量%、ポリマーバインダー1〜70重量%、炭形成化合物0〜40重量%、およびさらなる成分0〜20重量%(全て全組成物の重量に基づく)からなることができる。
【0077】
より好ましくは、本発明の組成物は、潜在性活性剤1〜30重量%、溶剤10〜80重量%、ポリマーバインダー1〜60重量%、炭形成化合物1〜30重量%、およびさらなる成分0〜10重量%(全て全組成物の重量に基づく)からなることができる。
【0078】
最も好ましくは、本発明の組成物は、潜在性活性剤5〜25重量%、溶剤10〜80重量%、ポリマーバインダー1〜50重量%、炭形成化合物1〜20重量%、およびさらなる成分0〜10重量%(全て全組成物の重量に基づく)からなることができる。
【0079】
さらに本発明の一部は、潜在性活性剤および溶剤を混合することを含む本発明の組成物の製造方法である。
【0080】
潜在性活性剤が酸とアミンの塩ならば、潜在性活性剤を、酸とアミンを混合することによりその場で形成することもできる。
【0081】
好ましくは、本方法は、潜在性活性剤、溶剤およびポリマーバインダーを混合することを含む。
【0082】
より好ましくは、本方法は、潜在性活性剤、溶剤、ポリマーバインダーおよび炭形成化合物を混合することを含む。
【0083】
さらに本発明の一部は、本発明のコーティング組成物でコーティングされた基材である。
【0084】
基材は、シートまたは任意の他の3次元物体とすることができ、それは透明でも不透明でもよく、そしてそれは表面が均質でも均質でなくでもよい。表面が均質でない基材の例は、詰め物をした紙袋、たとえばセメントの紙袋である。基材は、紙、厚紙、金属、木材、生地、ガラス、セラミックおよび/またはポリマーから製造できる。基材は医薬錠剤または食品材料であってもよい。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリ塩化ビニルポリエステルおよびポリスチレンである。好ましくは、基材は、紙、厚紙またはポリマーから製造される。
【0085】
基材がIR照射を吸収しない、たとえば基材がポリエステルフィルムである場合、IR吸収剤またはIR吸収剤として働く顔料をコーティング組成物に含むことが賢明なことがある。
【0086】
通常選択されるコーティングの厚さは、0.1〜1000μmの範囲にある。好ましくは、それは1〜500μmの範囲にある。より好ましくは、それは1〜200μmの範囲にある。最も好ましくは、それは1〜20μmの範囲にある。
【0087】
本発明の別の局面は、基材を本発明の組成物でコーティングする工程を含む、コーティングされた基材の製造方法である。
【0088】
基材は、標準的なコーティング塗布、たとえばバーコータ塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアー塗布、ナイフ塗布、ブレード塗布またはロール塗布を用いることにより、本発明の組成物でコーティングすることができる。組成物は、基材に、種々の印刷方法、たとえばシルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷およびフレキソ印刷により塗布することもできる。基材が紙である場合、組成物をサイズプレスにおいてまたは紙機械のウェットエンドで塗布することもできる。
【0089】
コーティング組成物は、たとえば周囲温度または高温で乾燥することができる。高温は、理想的には、エネルギー照射前にイメージが形成するのを回避するように選択する。
【0090】
さらに本発明の一部は、i)基材を本発明の組成物でコーティングし、ii)マーキングを生じさせるために、コーティングされた基材のマーキングを企てる部分を、エネルギー照射する工程を含む、マーキングされた基材の製造方法である。
【0091】
エネルギーは、熱、あるいは本発明の組成物でコーティングされた基材に適用した時にマーキングを生じる任意の他のエネルギーとすることができる。このようなエネルギーの例は、UV、IR、可視またはマイクロ波照射である。
【0092】
エネルギーは、任意の適切な方法で、コーティングされた基材に適用することができ、たとえば熱をサーマルプリンターを用いることにより加えることができ、そしてUV、可視およびIR照射は、UV、可視またはIRレーザを用いることにより適用することができる。IRレーザの例は、CO2レーザ、Nd:YAGレーザおよびIR半導体レーザである。
【0093】
好ましくは、エネルギーはIR照射である。より好ましくは、エネルギーは、780〜1,000,000nmの範囲の波長を有するIR照射である。さらに好ましくは、エネルギーはCO2レーザまたはNd:YAGレーザにより生じたIR照射である。最も好ましくは、エネルギーはCO2レーザにより生じた波長10,600nmのIR照射である。
【0094】
通常の正確なIRレーザの出力およびライン速度は、用途により決定し、イメージを生じさせるのに十分なように選択し、たとえば、IRレーザの波長が10,600nmでありかつレーザビームの直径が0.35mmである場合、出力は通常0.5〜4Wであり、ライン速度は、通常300〜1,000mm/sである。
【0095】
さらに、本発明の別の局面は、上述の方法により得られるマーキングされた基材である。
【0096】
本発明のコーティング組成物には、紙のコーティングに適切であり、エネルギーを照射すると水系の組成物でさえも高コントラストの黒っぽいマーキングが得られるという利点がある。さらに、マーキングは、高い耐久性が高く、耐光堅牢度が良好であり、そして水系の組成物が非有害化合物を含むだけなら、食品および薬用途に適切である。もし半透明なコーティングを形成する場合には、これらは基材としての有色紙の色合いまたは外観に影響を及ぼさない。
【0097】
実施例
実施例1A
Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26の製造
酢酸ブチル(250g)を反応器に入れ、加熱還流した(125℃)。t−ブチルペルベンゾエート(7.8g)を反応器に加えた。スチレン(162.5g)および氷状アクリル酸(87.5g)からなるモノマー供給材料を調製した。t−ブチル−ペルベンゾエート(23.4g)からなる開始剤を調製した。モノマー供給材料を反応器に5時間内に加え、開始剤供給材料を反応器に5.5時間内に加えた。供給が完了したら、反応混合物を125℃でさらに1時間保持した。酢酸ブチルを留去しながら、20重量%のアンモニア水(100g)および水(700g)の混合物を反応器に加えた。留出物を分けて、水は反応器に戻し、酢酸ブチルは受け器に戻した。反応混合物の温度は、蒸留中は93℃に低下し、酢酸ブチルが全て除去された時100℃に上昇した。蒸留が完結した時に、反応混合物を40℃未満に冷却し、スチレン/アクリル酸アンモニウム塩65/35(w/w)の得られた溶液を、固形分25重量%およびpH9.0に調節した。
【0098】
スチレン/アクリル酸アンモニウム塩コポリマーの25重量%水溶液(576g)および水(71g)を反応器に入れ、85℃に加熱し、窒素で30分脱ガスした。過硫酸アンモニウム(0.5g)を加えた。スチレン(184.8g)および2−エチルヘキシルアクリレート(151.2g)からなるモノマー供給材料を調製した。過硫酸アンモニウム(1.5g)および水(15.0g)からなる開始剤供給材料を調製した。モノマー供給材料を反応器に3時間内に加え、開始剤供給材料を反応器に4時間内に加えた。重合中、反応混合物の温度を85℃で保持した。供給が完了したら、内容物を85℃でさらに1時間保持し、その後40℃未満に冷却し、Acticide(登録商標)LG(塩素化および非塩素化メチルイソチアゾロンを含有する殺生剤)(0.9g)を加えた。得られたコアシェルポリマー、Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26は、コアポリマーとして機能するスチレン/2−エチルヘキシルアクリレートコポリマー55/45(w/w)70重量部、およびシェルポリマーとして機能するスチレン/アクリル酸アンモニウム塩コポリマー65/35(w/w)30重量部からなる。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26を、固形分約46%(w/w)、pH8.5、および粘度が25℃で(Brookfield 20rpm)700mPa・sのエマルションとして得た。
【0099】
実施例1B
アクリルバインダーの製造
攪拌機、冷却器、窒素入り口、温度プローブおよび供給口を備えた1Lの樹脂ポットに、水98.9gおよびJoncryl(登録商標)8078(低分子量スチレンアクリルコポリマーのアンモニウム塩の溶液)483.9gを入れた。内容物を85℃に加熱し、窒素で30分脱ガスした。モノマー相を、スチレン192.5gと2−エチルヘキシルアクリレート157.5gとを混合することにより調製した。開始剤供給材料は、過硫酸アンモニウム1.97gを水63.7gに溶解することにより調製した。反応器を温度で脱ガスしたら、過硫酸アンモニウム0.66gを反応器に加えた。2分後、それぞれ3および4時間の供給に合わせたモノマーおよび開始剤の供給を開始した。反応器内容物を、供給の間85℃に維持した。供給が完了した後、反応器内容物を85℃でさらに1時間保持し、その後40℃未満に冷却し、この時点でActicide LG(塩素化および非塩素化メチルイソチアゾロンを含有する殺生剤)0.9gを加えた。これにより固形分49.2%、pH8.3およびBrookfield RVT粘度1100cPsのエマルションポリマーをもたらした。
【0100】
実施例2
硫酸アンモニウム(3.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(8.5g)に溶解した。実施例1で述べたように製造したCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を加え、得られた白色エマルションを2時間攪拌した。このコーティング組成物を次に、12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、黒色マーキングを得た。
【0101】
実施例3
塩化アンモニウム(3.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(8.5g)に溶解した。実施例1で述べたように製造したCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を次に加え、得られた白色エマルションを3時間攪拌した。このコーティング配合物を次に、12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して不透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、高コントラストで黒っぽいマーキングを得た。
【0102】
実施例4
リン酸二水素アンモニウム(3.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(8.5g)に溶解した。実施例1で述べたように製造したCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を次に加え、得られた白色懸濁液を2時間攪拌した。このコーティング配合物を次に、12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して不透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、高コントラストで黒っぽいマーキングを得た。
【0103】
実施例5
ポリ(スルホン酸−4−アンモニウムスチレン)の30重量%水溶液(10.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(1.5g)に溶解して、橙色溶液を形成した。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15(4.75g)[カルボキシル化アクリルコポリマーの水性エマルション、固形分60重量%、pH3〜4、および20℃での粘度200mPa・s(Brookfield 20rpm)]を、水(4.75g)の添加により希釈し、次にこの橙色溶液にゆっくり添加し、得られた淡橙色エマルションを1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に12μmのコーティングバーにより普通紙、コート紙およびポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布して透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、高コントラストで黒っぽいマーキングを得た。
【0104】
実施例6
ポリ(スルホン酸−4−アンモニウムスチレン)の30重量%水溶液(10.0g)、硫酸アンモニウム(2.25g)およびD−(+)−サッカロース(2.25g)を、水(4.75g)に溶解して、橙色溶液を形成した。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15(4.75g)[カルボキシル化アクリルコポリマーの水性エマルション、固形分60重量%、pH3〜4、および20℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa・s]を、次にこの橙色溶液にゆっくり添加し、得られた淡橙色エマルションを1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に、12μmのコーティングバーにより普通紙、コート紙およびポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布して透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、黒色マーキングを得た。
【0105】
実施例7
ポリ(スルホン酸−4−アンモニウムスチレン)の30重量%水溶液(10.0g)、硫酸アンモニウム(2.25g)およびグルコース(2.25g)を、水(4.75g)に溶解して、橙色溶液を形成した。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)LE15(4.75g)[カルボキシル化アクリルコポリマーの水性エマルション、固形分60重量%、pH3〜4、および20℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa・s]を、次この橙色溶液にゆっくり添加し、得られた淡橙色エマルションを1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に、12μmのコーティングバーにより普通紙、コート紙およびポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布して透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、黒色マーキングを得た。
【0106】
実施例8
硫酸アンモニウム(2.25g)、ポリ(スルホン酸−4−アンモニウムスチレン)の30重量%水溶液(10.0g)、およびD−(+)−ガラクトース(2.25g)を、水(4.75g)に溶解して、橙色溶液を形成した。実施例1で述べたように製造したCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(4.75g)を、次に、この橙色溶液にゆっくり加え、得られた粘稠な淡橙色エマルションを1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に、12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、黒色マーキングを得た。
【0107】
実施例9
硫酸アンモニウム(3.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(8.5g)に溶解した。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)C44(9.5g)[スチレンアクリルコポリマーベースの自己架橋性水性エマルション、固形分42重量%、25℃での粘度(Brookfield 20rpm)200mPa・s]、を次にこの溶液にゆっくり加え、得られた白色エマルションを1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、黒色マーキングを得た。
【0108】
実施例10
硫酸アンモニウム(3.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(8.5g)に溶解した。Ciba(登録商標)Glascol(登録商標)E11(9.5g)[ポリアクリル酸系溶液、pH2〜2.5、および25℃での粘度(Brookfield 20rpm)2,000〜4,000mPa・s]を、次に、この溶液にゆっくり加え、得られた透明な溶液を1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、高コントラストで黒っぽいマーキングを得た。
【0109】
実施例11
ポリ(スルホン酸−4−アンモニウムスチレン)の30重量%水溶液(10.0g)およびD−(+)−サッカロース(3.0g)を、水(1.5g)に溶解した。得られた橙色溶液を、次にPoval 203[Kurarayにより販売されているポリビニルアルコール]の15重量%水溶液(9.5g)に加え、得られた粘稠なエマルションを1時間攪拌した。このコーティング配合物を次に12μmのコーティングバーにより普通紙またはコート紙上に塗布して半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、高コントラストで黒っぽいマーキングを得た。
【0110】
実施例12
硫酸アンモニウム(10.0g)およびD−(+)−サッカロース(16.0g)を、水(24.0g)に溶解した。実施例1で述べたように製造したCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(46.0g)を、次に加え、得られた白色エマルションを2時間攪拌した。このコーティング配合物を次に12μmのコーティングバーにより普通紙、コート紙および有色紙上に塗布して、有色紙の色合いに影響しない半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、黒色マーキングを得た。
【0111】
実施例13
硫酸アンモニウム(3.0g)を水(11.5g)に溶解した。実施例1で述べたように製造したCiba(登録商標)Glascol(登録商標)LS26(9.5g)を、次にゆっくり加え、得られた白色エマルションを30分攪拌した。このコーティング配合物を、次に12μmのコーティングバーにより普通紙およびコート紙上に塗布して半透明なコーティングを得て、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングして、高コントラストで黒っぽいマーキングを得た。
【0112】
実施例14〜47
実施例14〜47の組成物を次の表1に示す。組成物を水で合計重量100gにした。Glascol(登録商標)LS26および実施例1Bのバインダーの量は、固形分がそれぞれ、46%、49重量%のエマルションの量を指す。さらなる成分の量は、さらなる成分の乾燥重量を指す。
【0113】
【表1】








表1:
1サッカロースはD−(+)−サッカロースを指す。
2商品名Ludox(登録商標)AS30で販売されている。
3商品名Lazerflair(登録商標)825で販売されている。
4商品名Ciba(登録商標)Xymara(登録商標)Silver Pearl S20で販売されている。
【0114】
実施例14、15、16、17および18の組成物は、紙をコーティングし、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングした場合、高コントラストで黒っぽいマーキングを与えた。
【0115】
実施例19、20、21、23、24、25、22、26、27、29、33、34、36、37、38、39、40および41の組成物は、紙またはポリエステルフィルムのいずれかをコーティングし、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングした場合、高コントラストで黒っぽいマーキングを与えた。
【0116】
実施例28、30、31、32、35、42、43、44、45、46および47の組成物は、ポリエステルフィルムをコーティングし、CO2IRレーザ(波長:10,600nm、出力:0.5〜4W、レーザビームの直径:0.35mm、ライン速度300〜1000mm/s)を用いてイメージングした場合、高コントラストで黒っぽいマーキングを与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜在性活性剤を含むコーティング組成物。
【請求項2】
潜在性活性剤が、酸とアミンの塩、または酸誘導体のいずれかである、請求項1のコーティング組成物。
【請求項3】
酸が、無機酸、硫黄系有機酸、リン系有機酸、カルボン酸、およびこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1または2のコーティング組成物。
【請求項4】
アミンが、式NR123[式中、R1、R2およびR3は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキル、アラルケニルまたはアリールであるか、あるいはR1が水素、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキル、アラルケニルまたはアリールであり、かつR2およびR3が、式NR123のアミンの窒素と共に、5〜7−員環を形成する(ここで、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキルおよびアラルケニルは非置換であってもNR456、イミノ、シアノ、シアナミノ、ヒドロキシおよび/またはC1-6−アルコキシで置換されていてもよく、そしてアリールは非置換であってもNR456、シアノ、シアナミノ、ヒドロキシル、C1-6−アルキル、および/またはC1-4−アルコキシで置換されていてもよく、ここでR4、R5およびR6は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-6−アルキル、C4-8−シクロアルキルまたはアリールである)]である、請求項1〜3のいずれか1項のコーティング組成物。
【請求項5】
酸誘導体が、酸性のOH−基全てがOR7、NR89、OC(O)R10またはSR11で置換された、請求項3定義の酸のエステル、アミド、無水物またはチオエステル{ここで、R7、R8、R9、R10およびR11は、同じか異なる、水素、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキル、アラルケニルまたはアリールとすることができ[ここで、C1-30−アルキル、C2-30−アルケニル、C4-8−シクロアルキル、C5-8−シクロアルケニル、アラルキルおよびアラルケニルは、非置換であってもNR121314、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシおよび/またはC1-6−アルコキシで置換されていてもよく、そしてアリールは非置換であってもNR121314、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、C1-6−アルキル、および/またはC1-6−アルコキシで置換されていてもよい(ここで、R12、R13およびR14は、同じでも異なっていてもよい、水素、C1-6−アルキル、C4-8−シクロアルキルまたはアリールである)]、ただしR7は、水素ではない}である、請求項1または2のコーティング組成物。
【請求項6】
組成物が溶剤も含む、請求項1〜5のいずれか1項のコーティング組成物。
【請求項7】
組成物がポリマーのバインダーも含む、請求項1〜6のいずれか1項のコーティング組成物。
【請求項8】
組成物が炭形成化合物も含む、請求項1〜7のいずれか1項のコーティング組成物。
【請求項9】
炭形成化合物が、カルボニル基がヒドロキシル基に還元された炭水化物およびその誘導体よりなる群から選択される、請求項8のコーティング組成物。
【請求項10】
組成物がさらなる成分も含む、請求項1〜9のいずれか1項のコーティング組成物。
【請求項11】
潜在性活性剤および溶剤を混合する工程を含む、請求項6〜10のいずれか1項のコーティング組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項のコーティング組成物でコーティングされた基材。
【請求項13】
基材を請求項1〜10のいずれか1項の組成物でコーティングする工程を含む、コーティングされた基材の製造方法。
【請求項14】
i)基材を請求項1〜10のいずれか1項の組成物でコーティングし、ii)マーキングを生じさせるために、コーティングされた基材のマーキングを企てる部分を、エネルギー照射する工程を含む、マーキングされた基材の製造方法。
【請求項15】
エネルギーがUV、IR、可視、およびマイクロ波照射よりなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
エネルギーがIR照射である、請求項15の方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項の方法により得られるマーキングされた基材。

【公表番号】特表2009−507977(P2009−507977A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530485(P2008−530485)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066064
【国際公開番号】WO2007/031454
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】