説明

潜在的競技パフォーマンスを予測するための方法

競技パフォーマンスに関連した1以上の遺伝子の一塩基多型の存在に関して、対象に由来する生物学的標本をアッセイするステップを含む、サラブレッド競走馬のような対象の潜在的競技パフォーマンスを予測するための方法およびアッセイ。競技パフォーマンス遺伝子はMSTN、COX4I2、PDK4、CKMまたはCOX4I1の中の1以上から選択され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象の競技パフォーマンスの潜在能力を予測するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サラブレッド馬産業は、サラブレッド馬の繁殖、訓練および競走に関係する数十億ユーロの国際的な産業である。数百万ユーロの決断が、しばしば競争能力を有すると認められた個々の動物の購入に対して行われる。サラブレッドの競走および繁殖産業へのゲノミクス情報の統合は早期の“素質確認”に対する高い潜在性を有する。サラブレッドは伝統的に、血統情報および非常に多くの表現型の特徴に基づいて競走および繁殖に対して選択される。伝統的または新規な手段による遺伝的潜在性の早期の確認が成功に優先する。産業内では、常に新規な方法および技術を検討することに関わる人々は“有効性”を見出すための探索に追われている。従って、ゲノミクス情報は、以前には入手し難かった情報を提供することによって、しばしば数百万ドルの決断を微調整するためにブリーダーやトレーナーを直接援助する潜在性を有する。
【0003】
酸素は筋肉機能の重要なレギュレーターであり、エネルギー産生、筋肉収縮、および副生成物の除去に影響を及ぼす。運動中のエネルギーに対する要求は、酸素の利用能によって非常に限定される。哺乳類の細胞は低い細胞内酸素環境に反応するための精巧な適応機序を進化させてきた(Taylor & Colgan 1999)。ヒト運動の研究において、訓練された骨格筋におけるそのような低酸素環境への適応が炭水化物の酸化増大に対して基質選択をシフトさせ、細胞を刺激して酸素輸送および利用の状態を改善する(Hoppeler & Vogt 2001)。サラブレッド馬では、高強度での短時間の運動中に、心臓血管および呼吸系における酸素の運搬能力および送達を改善する数多くの構造的および機能的適応にもかかわらず、酸素輸送系は運動‐誘発動脈低酸素血および炭酸過剰の日常的発生においてもたらされる末梢の要求にかなり遅れを取る(Dempsey & Wagner,1999;Seaman,1995)。サラブレッドの反応は、訓練されたヒトアスリートを含む他の動物種に比較して、エネルギーに対する筋肉系の非常に大きい要求を反映して月並みではない。驚くべきことに、限定された酸素供給に直面してさえ、サラブレッドは厳しい運動に適切に適応する優れたアスリートであり続ける。
【0004】
サラブレッド馬は短距離(<1マイル)および長距離(>1マイル)レースの両方において秀でている。これらの鍛錬(discipline)に対する生理的要求は異なり、代謝経路の分配によって調節される。超最大強度(105〜125% VOmax)における運動の初めの75秒間は、酸素供給が運動中の筋肉の要求に応えることができないため、ウマは酸素欠乏を経験する(Dempsey & Wagner,1999;Seaman,1995)。これにもかかわらず、短距離レース(<1000m)中、全エネルギーのおよそ70%が好気的に供給されることになる。より長い距離およびより長い期間(>75秒)を競うウマは定常状態VOに到達し、従って酸素欠乏ではない。
【0005】
さまざまな研究が、サラブレッド競走馬における競技パフォーマンス表現型との測定可能な関連を検討するために行われてきており、それらは心臓の大きさ(Youngら 2005)、筋肉繊維の型(Riveroら 2007)、筋骨格構造(Loveら 2006)、最大心拍数におけるスピード(Gramkow & Evans 2006)、血液学的(Revington 1983)および他の生理学的変数(Harkinsら 1993)の評価を含む。
【0006】
WO2006003436は、パフォーマンスとミトコンドリアゲノムによってコード化された遺伝子変異体間の関連について記載する。しかし、ミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプロタイプは、母親から厳密に受け継ぎ、従って表現型に対して雌性貢献にだけ関係する。サラブレッド集団におけるmtDNAハプロタイプの数は限定され(n=17)、10頭の雌だけが現在の母性血統の74%に貢献するため(Cunninghamら 2002)、パフォーマンスに対して目標を設定された選択が存在する集団において、これらのハプロタイプ変異体が、速やかに好ましいハプロタイプが“固定される”といったような意味のある効果を有する可能性はありそうもなく;さらに(mtDNA変異体の)効果的な集団サイズは核内コード化変異体の1/3である(Ballard and Dean 2001,Blierら 2001,Das 2006,Meiklejohnら 2007)。その上、mtDNAハプロタイプは血統情報から直接推測されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006003436
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Taylor & Colgan 1999
【非特許文献2】Hoppeler & Vogt 2001
【非特許文献3】Dempsey & Wagner,1999
【非特許文献4】Seaman,1995
【非特許文献5】Youngら 2005
【非特許文献6】Riveroら 2007
【非特許文献7】Loveら 2006
【非特許文献8】Gramkow & Evans 2006
【非特許文献9】Revington 1983
【非特許文献10】Harkinsら 1993
【非特許文献11】Cunninghamら 2002
【非特許文献12】Ballard and Dean 2001
【非特許文献13】Blierら 2001
【非特許文献14】Das 2006
【非特許文献15】Meiklejohnら 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、対象の潜在的競技パフォーマンスを予測するための、これらの問題のいくつかを克服する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の陳術
本発明は核内コード化遺伝子における変異を検出するための、DNAを基にした検定を提供する。核内コード化遺伝子の変異はすべての可能性のある祖先に由来する好ましい遺伝子変異体の遺伝を反映するが、mtDNA検定は雌の祖先に制限されるため、この方法はミトコンドリアDNA(mtDNA)検定よりも優れている。
【0011】
本明細書に記載の方法およびアッセイはex vivoで実施され、ex vivoまたはin vitroの方法およびアッセイであると見なされうる。
【0012】
たとえば血液、唾液、体毛、皮膚、骨髄、軟部組織、内部臓器、生検標本、精液、骨格筋組織などの遺伝物質を含むいずれか適切な生物学的標本が、本明細書に記載の方法の生物学的標本として使用されてもよい。血液および体毛標本はとりわけ生物学的標本として適している。
【0013】
本明細書で使用する“競技パフォーマンス”には、競争レースならびに、競走、障害飛越、総合馬術、調馬、耐久競技、乗馬、狩猟などの馬術スポーツのような競走が挙げられる。馬術スポーツは競技スポーツであってもよい。
【0014】
競争レース種には、ウマ科動物(ウマ)、ラクダ、イヌ、ゾウ、ウサギ、カンガルー、ダチョウ、ハト、ヒトおよびタカまたはハヤブサのような猛禽が挙げられる。競争レース種はサラブレッド馬または障害飛越馬であってもよい。
【0015】
“プライマー”は、関心のある核酸配列に由来する約15から約40、たとえば約18から約25の連続したヌクレオチドを含む核酸配列を意味する。プライマーはフォワード(5′または3′)もしくはリバース(3′から5′)プライマー、または関心のある核酸配列に対する相補的核酸配列に基づいて設計されたプライマーであってもよい。本発明では、関心のある配列は競技パフォーマンスに関連した遺伝子、たとえば付録の中に挙げられた遺伝子、またはCOX4I1、COX4I2、PDK4、CKMまたはMSTN遺伝子の中の1以上のゲノム配列である。一態様では、プライマーはSEQ ID No.1、SEQ ID No.2、SEQ ID No.3、SEQ ID No.31もしくはSEQ ID No.32に由来する約15から約40、たとえば約18から約25の連続したヌクレオチド、またはSEQ ID No.1、SEQ ID No.2、SEQ ID No.3、SEQ ID No.31もしくはSEQ ID No.32に対する相補的配列に由来する約15から約40、たとえば約18から約25の連続したヌクレオチドを含んでいてもよい。“相補的配列”は、慣例のワトソン−クリック塩基対形成:すなわち、アデニンはチミンに結合し、そしてシトシンはグアニンに結合する;を使用して関心のある配列に結合する配列を意味する。
【0016】
本発明は、優れた競技パフォーマンスに関連した一塩基多型(SNP)を提供する。本発明は対象の競技パフォーマンスを予測する方法を提供し、該方法は付録に列挙された1以上の遺伝子における一塩基多型(SNP)の存在に関して、対象に由来する生物学的標本をアッセイするステップを含み、ここではSNPが競技パフォーマンスと有意な関連を有する。
【0017】
本発明に従って、対象の潜在的競技パフォーマンスを予測する方法が提供され、該方法はMSTN遺伝子、COX4I2遺伝子、PDK4遺伝子、CKM遺伝子、またはCOX4I1遺伝子の中の1以上における一塩基多型(SNP)の存在に関して、対象に由来する生物学的標本をアッセイするステップを含む。
【0018】
SNPはMSTN_66493737(T/C)であってもよい。Cアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示す。ホモ接合CC遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。優れた競技パフォーマンスは優れた全力疾走パフォーマンスであってもよい。
【0019】
SNPはCOX4I2_22684390(C/T)であってもよい。Tアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0020】
SNPはPDK4_38973231(A/G)であってもよい。Aアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合AA遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0021】
SNPはCKM_15884567(G/A)であってもよい。Aアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合AA遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0022】
SNPはCOX4I1_32772871(T/C)であってもよい。Tアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0023】
対象の生物学的標本は:血液、唾液、骨格筋、皮膚、精液、生検標本、骨髄、軟部組織、内部臓器および体毛を含む群から選択されてもよい。
【0024】
対象は競争レース種に由来してもよい。対象はサラブレッド競走馬のようなウマ科動物であってもよい。
【0025】
本発明はさらに以下のステップを含む、対象の潜在的競技パフォーマンスを測定するためのアッセイ:
−標本を得ること;
−標本からDNAを抽出するか、または遊離させること;および
−前記の抽出されるか、または遊離されたDNAにおける競技パフォーマンスに関連した遺伝子の標的配列の中の一塩基多型(SNP)を確認すること;
を提供し、ここで対象の潜在的競技パフォーマンスはSNPに関連する。
【0026】
競技パフォーマンスに関連した遺伝子はMSTN、COX4I2、PDK4、CKMまたはCOX4I1の中の1以上から選択されてもよい。
【0027】
該アッセイは、以下のステップを、一塩基多型を確認するステップの前に含んでいてもよい:
−前記の抽出されるか、または遊離されたDNAにおける競技パフォーマンスに関連した遺伝子の標的配列を増幅すること。
【0028】
DNAはゲノムDNAであってもよい。
【0029】
本発明はさらに、MSTN遺伝子、COX4I2遺伝子、PDK4遺伝子、CKM遺伝子、またはCOX4I1遺伝子の中の1以上における一塩基多型(SNP)の存在を検出するための手段を含む、対象の潜在的競技パフォーマンスの測定に使用されるアッセイを提供する。
【0030】
SNPはMSTN_66493737(T/C)であってもよい。Cアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示す。ホモ接合CC遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。優れた競技パフォーマンスは優れた全力疾走パフォーマンスであってもよい。
【0031】
SNPはCOX4I2_22684390(C/T)であってもよい。Tアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0032】
SNPはPDK4_38973231(A/G)であってもよい。Aアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合AA遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0033】
SNPはCKM_15884567(G/A)であってもよい。Aアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合AA遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0034】
SNPはCOX4I1_32772871(T/C)であってもよい。Tアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。
【0035】
本発明はさらに以下のステップ:
−標本を得ること;
−標本からDNAを抽出するか、または遊離させること;および
−前記の抽出されるか、または遊離されたDNAにおけるMSTN_66493737(T/C)SNPの遺伝子型を確認すること
を含む、対象の潜在的競技パフォーマンスを測定するためのアッセイを提供し、ここでMSTN_66493737(T/C)SNPにおけるCアレルの存在は優れた競技パフォーマンスを示す。
【0036】
該アッセイは、MSTN_66493737(T/C)SNP遺伝子型を確認するステップの前に、以下のステップを含んでいてもよい:
−前記の抽出されるか、または遊離されたDNAにおけるMSTN_66493737(T/C)SNPをコードする標的配列を増幅すること。
【0037】
ホモ接合CC遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示す。
【0038】
優れた競技パフォーマンスは優れた全力疾走パフォーマンスであり得る。
【0039】
DNAはゲノムDNAであってもよい。
【0040】
対象に由来する標本は:血液、唾液、骨格筋、皮膚、骨髄、生検標本、軟部組織、精液、内部臓器および体毛を含む群から選択されてもよい。
【0041】
対象は競争レース種に由来してもよい。対象はサラブレッド競走馬のようなウマ科動物であってもよい。
【0042】
本発明者らは、COX4I2遺伝子(EquCab2.0 22676361−C/T)一塩基多型(SNP)のTアレルのホモ接合キャリア:すなわち、COX4I2遺伝子の両アレルにおいて多型を有するものは、SNPに対してヘテロ接合である対象:すなわちCOX4I2遺伝子のアレルの一つにおいて多型を有する対象、またはCOX4I2遺伝子のいずれのアレルもSNPを持たない対象に比較して、優れた全力疾走競走馬である可能性が統計的にいっそう高い。
【0043】
本発明者らは、COX4I2遺伝子における一塩基多型(SNP)の存在または非存在に関して対象に由来する生物学的標本をアッセイするステップを含む、対象の競技パフォーマンスを予測する方法を記載する。SNPはEquCab 2.0 COX4I2−22676361-C/Tであってもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた酸素消費パフォーマンスを示してもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた全力疾走パフォーマンスを示してもよい。対象の生物学的標本は:血液、唾液、骨格筋、精液、生検標本、内部臓器、皮膚、骨髄(またはいずれか他の生物組織)および体毛を含む群から選択されてもよい。対象は競争レース種に由来してもよい。対象はウマ科動物であってもよい。対象はサラブレッド競走馬であってもよい。
【0044】
本発明者らはまた、COX4I2遺伝子における一塩基多型(SNP)の存在または非存在を検出するための手段を含む、対象の競技パフォーマンスを測定するための使用に関するアッセイを記載する。SNPはEquCab 2.0 COX4I2−22676361-C/Tであってもよい。ホモ接合TT遺伝子型の存在は優れた競技パフォーマンスを示してもよい。対象の生物学的標本は:血液、唾液、骨格筋、精液、生検標本、内部臓器、皮膚、骨髄(またはいずれか他の生物組織)および体毛を含む群から選択されてもよい。対象は競争レース種に由来してもよい。対象はウマ科動物であってもよい。対象はサラブレッド競走馬であってもよい。
【0045】
本発明は、添付の図面を参照することによって、実施例だけによって示された以下のその態様の説明からいっそう明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1はウマにおける運動中のエネルギー分配の概要である。
【図2】図2は、サラブレッド亜集団(TBE_EN:>8fの距離で優れたパフォーマンスをするサラブレッド;TBE_SP:<8fの距離で優れたパフォーマンスをするサラブレッド;TBO:レースに参加してきたが、一度も勝利せず、<70のハンディキャップレーティングを有するその他のサラブレッド)および非サラブレッド馬(AH:Akhal−Teke;CON:Connemara Pony;TU:Tuva)におけるCOX4I2 22676361(C/T)SNP遺伝子型の分布を示す棒グラフである。<8fの距離で首尾よく競ってきたエリートサラブレッドは、他のサラブレッド亜集団および非サラブレッドより有意に高いTT遺伝子型頻度を有する。
【図3】図3は運動中にエネルギー産生に貢献する3つの主要な代謝経路間の関係を示す図であり、優れた競走パフォーマンスに関連した3種の遺伝子、CKM、COX4I2およびPDK4の機能が示される。
【図4−1】図4は、CKM 22684390(C/T)SNP(A)、COX4I2 22684390(C/T)SNP(B)およびPDK4 38973231(A/G)SNP(C)に対するエリートサラブレッド(斜線バー)と非エリートサラブレッド間、およびMSTN 66493737(T/C)SNP(D)に対するエリートスプリンター(斜線バー)とエリートエンデュアランスサラブレッド間のアレル頻度分布を示すグラフである。
【図4−2】図4は、CKM 22684390(C/T)SNP(A)、COX4I2 22684390(C/T)SNP(B)およびPDK4 38973231(A/G)SNP(C)に対するエリートサラブレッド(斜線バー)と非エリートサラブレッド間、およびMSTN 66493737(T/C)SNP(D)に対するエリートスプリンター(斜線バー)とエリートエンデュアランスサラブレッド間のアレル頻度分布を示すグラフである。
【図5−1】図5は、CKM 22684390(C/T)SNP(A)、COX4I2 22684390(C/T)SNP(B)およびPDK4 38973231(A/G)SNP(C)に対するエリートサラブレッド(斜線バー)と非エリートサラブレッド間、およびMSTN 66493737(T/C)SNP(D)に対するエリートスプリンター(斜線バー)とエリートエンデュアランスサラブレッド間の遺伝子型頻度分布を示すグラフである。
【図5−2】図5は、CKM 22684390(C/T)SNP(A)、COX4I2 22684390(C/T)SNP(B)およびPDK4 38973231(A/G)SNP(C)に対するエリートサラブレッド(斜線バー)と非エリートサラブレッド間、およびMSTN 66493737(T/C)SNP(D)に対するエリートスプリンター(斜線バー)とエリートエンデュアランスサラブレッド間の遺伝子型頻度分布を示すグラフである。
【図6−1】図6の(A)〜(C)は、最適レース距離に関するMSTN 66493737(T/C)SNPの遺伝子型頻度を示すグラフであり、(A)はC/C遺伝子型頻度を示し;(B)はC/T遺伝子型頻度を示し;
【図6−2】そして(C)はT/T遺伝子型頻度を示す。
【図7】図7は、MSTN 66493737(T/C)SNPの最適レース距離の遺伝子型頻度を示すグラフであり、ここでは2歳馬としてのグループレースで勝利したウマの最適レース距離はそれらの3歳馬レースの平均距離に置き換えられた。
【図8】図8は、持続性運動パフォーマンスに関して公知のエジプト系アラビア馬の非サラブレッド集団とサラブレッド集団における、MSTN 66493737(T/C)SNPの遺伝子型頻度を示すグラフである。
【図9】図9は、6〜8f、8〜10f、10〜12fのスタミナインデックスを持つ種馬(stallion)のMSTN 66493737(T/C)SNPの遺伝子型頻度を示すグラフである。
【図10】図10はMSTN 66493737(T/C)SNPのC/C、C/TおよびT/T遺伝子型に関するMSTN遺伝子の相対発現を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
サラブレッド馬(Equus caballus)における優れた競走パフォーマンスに関する厳しい選択の結果、運動にとって適切な多数の適応性生理的表現型が生まれたが、これらの特徴を引き起こす基礎的な分子機序は十分に理解されていない。
【0048】
Eiversら(2009)は、8頭の無調教サラブレッド馬における標準化漸増−ステップトレッドミル運動試験後のウマ骨格筋における運動−反応候補遺伝子群のmRNA発現の適応性変化を検討した。該研究では、生検標本は運動前(T)、運動後すぐ(T)および運動後4時間(T)の中臀筋から得られた。TではTに比較して8遺伝子(CKM、COX4I1、COX4I2、PDK4、PPARGC1A、PRKAA1、SLC2A1、およびSLC2A4)において有意な倍率の差(P<0.05)が検出された。最大心拍数(VHRmax)におけるmRNAおよび速度と運動後のピーク血漿中乳酸塩濃度([La]T)の関係を研究することによって、彼らはTでのCOX4I1とPPARCG1A、およびTでの[La]TとCOX4I1間の有意な(P<0.05)関連を証明した。後続の研究では、彼らは10か月調教後の第2コホートのウマにおける遺伝子発現変化を検討した。彼らは、静止標本では、COX4I1遺伝子が調教後に有意な量の増加を示し、そして調教されたコホートでは運動後にTにおいて有意な倍率の差がCOX4I2、PDK4およびPPARGC1Aで確認されることを示した。彼らはまたPPARGC1AおよびCOX4I1に関してVHRmaxと[La]Tの有意な関係を検出した。
【0049】
本発明は、サラブレッド競走馬において多数の運動反応遺伝子候補(付録に列挙される)における配列変異体(たとえば、SNP)と、後向き競技パフォーマンス(競馬場成功、すなわち、グループ勝ち馬または非勝ち馬、グループ勝ち馬のハンディキャップレーティング(RPR)および最適レース距離として示される)間の今まで未知の関係に関する。ある側面では、本発明はCOX4I1、COX4I2、PDK4、CKMおよびMSTN遺伝子におけるSNPに関する。
【0050】
COX4I1およびCOX4I2
シトクロムCオキシダーゼ(COX)は、ミトコンドリア呼吸において還元されたシトクロムCから酸素への電子伝達を触媒するマルチ−サブユニット酵素(複合体IV)である。COXはダイマーであり、それぞれのモノマーは13サブユニットから構成され、そのうちの3つ(COX1、2および3)はミトコンドリアゲノムによってコード化される。核内コード化COX4はミトコンドリア内膜上のミトコンドリアコード化サブユニットの調節および会合に関与する(Fukudaら 2007)。ヒト骨格筋では、COX4 mRNAレベルはミトコンドリア容積、伸長およびVO2maxと関連することが示されている。COX4は、COX4I1およびCOX4I2遺伝子によってコードされる2つのイソ型(COX4−1およびCOX4−2)を含み、それらは正常酸素環境および低酸素環境において異なって調節される(Fukudaら 2007)。正常酸素環境では、COX4I1は優先的に転写される。限定された酸素環境では、HIF−1がCOX4I2およびミトコンドリアLON遺伝子の転写を活性化する。LONはCOX4I1の発現を阻害するため、これらの制御機序はCOX4I2の転写および蛋白質合成を増し、COX4−1の利用能を減少させる。この機序は限定された酸素環境において細胞呼吸の効率を最大にするための方策であると見なされている(Fukudaら 2007)。
【0051】
レース中の生理的要求はエネルギー需要に依存して異なり、最も効率的な様式でエネルギーを提供するための代謝経路の分配によって調節される。酸素供給は運動している筋肉の需要に応えることができないため、過最大強度(105〜125%VO2max)における運動の初めの75秒間にウマは酸素欠乏を経験する(Dempsey and Wagner 1999;Seamanら 1995)。より長い距離およびより長い期間(>75秒)の間に、ウマは定常状態VOに到達し、主として好気的代謝に頼る。レースの終了時には、ウマが“乳酸塩閾値”を通過するため、酸素消費需要は増大する。短距離レース(<1,000m)中に、筋肉収縮に必要なATPの形態における総エネルギーのおよそ70%は好気的代謝経路によって生み出される(Eatonら 1995)。短距離を過最大強度で運動するサラブレッド馬では、この低酸素環境が、都合よく保存された代謝スィッチをCOX4−1からCOX4−2利用に切り換えてもよい(Fukudaら 2007)。この環境によるCOX4−2の調節が細胞の呼吸効率を増大させてもよい。COX4−2は従って、酸素が限定される場合、レースの初期段階において、およびレースの終了にむけてのエネルギー供給の重要なレギュレーターである。図1からわかるように、運動の初期段階において、およびレースの終了に向けて末梢の生理的システム(すなわち、骨格筋)が限定された酸素環境で稼働している間、大量のエネルギーが要求される。COX4−2を介したエネルギーの生成がこれらの両方の段階の期間中重要であってもよい。
【0052】
ミトコンドリア生合成の調節がグルココルチコイドホルモンによって媒介されてもよいことは示唆されている(Weberら 2002)。COX4I2遺伝子はグルココルチコイド受容体エレメント(TGTT)を含み、それがCOX4−2発現を増大させ、従ってミトコンドリア容積を増すために標的とされてもよい。さらに、COX4I2遺伝子はp53腫瘍サプレッサー結合部位(CATG)を含む。最近の研究はp53がミトコンドリア生合成およびCOXを介した好気的代謝の調節において役割を果たしてもよいことを示唆している(Matobaら 2006;Saleemら 2009)。
【0053】
CKM
クレアチンキナーゼ(CK)はクレアチンホスホキナーゼ(CPK)またはホスホクレアチンキナーゼとしても知られ、種々の組織型によって発現される酵素(EC2.7.3.2
)である。該酵素はクレアチンの変換を触媒し、アデノシン三リン酸(ATP)を消費してホスホクレアチンとアデノシン二リン酸(ADP)を作り出す。ATPを速やかに消費する組織、とりわけ骨格筋、さらに脳および平滑筋では、ホスホクレアチンは迅速なATP再生のための貯蔵所として役立つ。従ってクレアチンキナーゼはそのような組織における重要な酵素である。
【0054】
多くの細胞では、CK酵素は2つのサブユニットからなり、それはB(脳型)またはM(筋肉型)のいずれであってもよい。従って、3種の異なるアイソザイム:CK−MM、CK−BBおよびCK−MBが存在する。これらのサブユニットの遺伝子は異なるクロモソーム上に位置する。その上、ミトコンドリアクレアチンキナーゼにはユビキタス型とサルコメア型の2つの形態が存在する。異なる型のCKアイソザイムを表1に列挙する。
【0055】
表1−クレアチンキナーゼのアイソザイム
【0056】
【表1】

【0057】
アイソザイムパターンは組織型に依存して異なる。たとえば、CK−BBは主に脳に存在し、そのレベルは骨格筋ではめったに意味を持たない。骨格筋はCK−MM(98%)および低レベルのCK−MB(1%)を発現するが、対照的に心筋層(心臓の筋肉)はCK−MMを約70%そしてCK−MBを25〜30%発現する。
【0058】
クレアチンリン酸をクレアチンに変換することによってADPからATPを生産するミトコンドリアクレアチンキナーゼ(CK)はミトコンドリア内膜腔に存在する。ミトコンドリア形態とは別にサイトソルには3種の形態が存在する−CK(緊急に必要な場合、クレアチンリン酸を犠牲にしてサイトソルでATPを生産する)、CK(リン酸化および脱リン酸化をそれぞれATPおよびADPとカップリングすることによりサイトソルにおけるクレアチンおよびクレアチンリン酸の必要な濃度を維持する)およびCK(クレアチンの直接リン酸化を解糖経路に連結する)。
【0059】
クレアチンキナーゼ、筋肉遺伝子(CKM)はもっぱら横紋筋に見出されるクレアチンキナーゼの筋肉型アイソザイムをコードする。コードされた蛋白質は細胞のエネルギー論に関与する。運動中に、CKM遺伝子ノックアウトマウスはバースト活動の欠如を示すが、正常な絶対筋力を維持する(van Deursenら 1993)。本発明者らはCKM遺伝子転写物がサラブレッド馬骨格筋トランスクリプトームにおいて最も豊富な転写物であることを見出していて、ウマの運動適応においてCKM遺伝子が極めて重要な役割を果たすことを支持する。
【0060】
PDK4
グルコース利用の調節はグルコーストランスポーターによるグルコースの取り込み、解糖フラックスの速度およびピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)の触媒機能を介したミトコンドリアにおけるピルビン酸塩からアセチルCoAへの変換によって厳密に制御されている。グルコースの酸化における重要な律速段階はピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)によって制御されるPDC会合の調節である。PDKはPDCの形成を遮断し、脂肪酸をベータ−酸化して、酸化的リン酸化の基質としてのアセチル−CoAを生じる。PDKイソ型をコードする4種の遺伝子の中の3種の遺伝子(PDK2、PDK3およびPDK4)は、サラブレッドにおいて正の選択をされた遺伝子領域に位置する(Guら 2009)。PDK4遺伝子プロモーターは、肝臓および脂肪組織におけるインスリンシグナリングの重要なレギュレーターであるFOXO1A転写因子の結合部位を含む。FOXO1Aにおける一塩基多型は、T2DM(2型糖尿病)発症およびヒトの関連した表現型に対して保護効果を有することが見出されている。FOXO1Aはまた、サラブレッドにおいて正選択された遺伝子領域の中に見出され、そのPDK4プロモーター結合部位配列はウマにおいて保存される。転写因子FOXO1およびSMADはまた、ミオスタチン(MSTN)遺伝子調節に関与し、それ故筋肉成長の制御において重要な役割を果たしていることが示されている。
【0061】
正選択に関するゲノムスキャンでは、Guら(2009)は2つの独立した統計的検定(FSTおよびEwens−Watterson検定)において中立期待から極めて有意に逸脱した領域を検出した。この領域はPDK4遺伝子を含んでいた。PDK4遺伝子発現はERPα(エストロゲン−関連受容体α)結合を介して転写共役因子PGC−1αによって調整される。PPARGC1A(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ、共役因子1アルファ)遺伝子によってコードされるPGC−1αは、SLC2A4(溶質運搬体ファミリー2(促進拡散型グルコース輸送体)、メンバー4;;以前はGLUT4)を介してグルコース輸送をコントロールすることによってインスリン感受性を調節するエネルギー代謝の重要なレギュレーターであり、そして酸化的筋肉線維形成を行わせ、核内コード化ミトコンドリア蛋白質遺伝子とその相互作用を介してミトコンドリア生合成を調整する。
【0062】
MSTN
ミオスタチンは、成長/分化因子8前駆体(GDF−8)としても公知である。いくつかの哺乳動物種(ウシ、ヒツジおよびイヌを含む)では、筋肉肥大形質はミオスタチン(MSTN)遺伝子における突然変異によって引き起こされる。イヌでは、競走ウィペット(whippet)におけるMSTN遺伝子突然変異は“闘争的(bully)”表現型に関連付けられていて、ヘテロ接合の個体は、野生遺伝子型を持つ個体より有意に速い(Mosherら 2007)。MSTN遺伝子における突然変異が競技パワーと関連してもよい。
【0063】
本発明者らは競技パフォーマンスに関連した遺伝子における多数の一塩基多型(SNP)を分析していて、SNPに基づいて対象の潜在的競技パフォーマンスを予測する簡単なDNAを基礎にした方法を開発している。
【0064】
本発明は以下の実施例からいっそう明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0065】
対象
サラブレッドとは、三大基礎種馬(stallion)の1種およびThe General Studbook,1791(Weatherby and Sons 1791)に記載されたおよそ30の基礎雌馬にその血統をたどることができる登録された競走馬である。サラブレッドレースには2つの型があり:ナショナルハントレース(National Hunt race)はハードルを跳び越えるか、またはフェンスを飛び越して4.5マイル(7,200m)までの距離を走るが、フラットレース(Flat race)は障害物がなく、5ファーロング(5/8マイルまたは1,006m)から20ファーロング(4,024m)までの範囲の距離を走る。最も重要な標準となり、そして最も価値のあるえり抜きのフラットレースは、グループ(Group)レース(ヨーロッパおよびオーストラレーシア)またはステークス(Stakes)レース(北米)として知られる。これらのレースの中で最も一流なものには、ブリーダーズカップレース(The Breeders' Cup races(米国))、ケンタッキーダービー(The Kentucky Derby)(米国)、エプソムダービー(The Epsom Derby)(英国)などが挙げられる。
【0066】
ヨーロッパ(イギリス(Britain)、アイルランド(北アイルランドを含む)、フランス、ドイツ、イタリア)では、84のグループ1、93のグループ2、および173のグループ3レースを含む年間350のグループレースが行われる。イギリス(United Kingdom)およびアイルランドでは、年間196のグループレース(43のグループ1、50のグループ2および103のグループ3)が競われる。イギリス(Britain)はヨーロッパの中で1年に行われるグループレースの数(139)が最も多く、57%が≦1マイル(1609メートル)、そして43%が>1マイルの距離を走る。オーストラリアは全部でほぼ21,000のレースから、季節毎におよそ540〜550のグループレースを行い、ニュージーランドは季節毎に78のグループレースを主催する。グループレースの後は、準重賞レースが次の最も高いグレードのレースである。
【0067】
≦1マイルの距離を競う馬は“スプリンター”として知られ、>1マイルの距離を競うウマは“ステイヤー”として知られる。1マイルレースを競うウマ(‘マイラー’および‘中距離馬’)はスプリンターまたはステイヤーのいずれと見なされてもよく、騎手によってレースが行われる様式は、しばしばトレーナーが認めたウマの能力(‘スプリンター’または‘ステイヤー’)を反映する。国際競馬統括機関連盟(The International Federation of Horseracing Authorities)は5つのレース距離カテゴリー:短距離(5〜6.5f、≦1,300m)、マイル(6.51〜9.49f、1,301〜1,900m)、中距離(9.5〜10.5f、1,901〜2,112m)、長距離(10.51〜13.5f、2,114〜2,716m)および超長距離(>13.51f、>2,717m);S−M−I−L−Eを認めている[注:1ファーロング=1/8マイル=201.2メートル]。
【0068】
障害物レースの混乱した効果を最小限にするために、フラットレースでパフォーマンスレコードを持つウマだけが研究のコホートに含まれると見なされた。すべてのケースにおいて、2世代内の血族関係を共有する標本を排除することにより遺伝的背景を制御するために血統情報を使用した。さらに、血統内の評判のよい種親(sire)の過剰提示は可能な場合回避された。
【0069】
1997〜2006年の間に、アイルランド、イギリス(Britain)およびニュージーランドにおいて、サラブレッド馬に由来する標本は、競走、育種および販売体制からオーナーのインフォームドコンセントを得て集められた。すべてのウマは“エリートサラブレッド”(TBE)または“その他のサラブレッド”(TBO)としての後ろ向き競馬場パフォーマンスレコードに基づいて分類された。エリートサラブレッドは少なくとも1つのグループ(グループ1、グループ2またはグループ3)レースに勝利しているフラットレース馬であった。その他のサラブレッドは競馬場で競走したが、フラットレースに勝利しなかったか、または89未満のハンディキャップレーティング(レーシングポストレーティング(RPR))を有するウマであった。
【0070】
実施例1−COX4I2
短距離運動中は限定された酸素環境にもかかわらず、筋肉収縮に必要なATPの形態におけるエネルギーは好気的代謝経路(70%好気的、30%嫌気的)によって主に生成される。本発明者らはこの相対的低酸素環境が、都合よく保存された代謝スィッチをCOX4−1からCOX4−2に切り換え、それによって細胞呼吸の効率を増大させることを示唆する。COX4−2は従って全力疾走中のエネルギー供給の重要なレギュレーターであるが、酸素需要が満たされる長距離競技では必ずしも必要ではない。このスィッチは、低酸素−依存的遺伝子発現の主要なレギュレーターとして十分に性状が解析されている細胞内転写因子HIF−1αによって媒介される(Semenza 1998)。HIF−1αはPDK1、LDHA、COX4−2およびLONをコードする遺伝子の転写を活性化し、COX4−1からCOX4−2へのスィッチを制御する。極めて激しい運動中に酸素が欠乏するサラブレッドの筋肉では、減少した酸素に対して亢進される反応および最も効率的なやり方でATPを生成する能力がその個体にとって有意義な利点を提供するであろう。
【0071】
さらに、増大したミトコンドリア容積はより高い好気的生産能力に関連することが示されている(Fluck 2006)。増大した量のグルココルチコイドホルモンが、ミトコンドリアゲノムを特に目標とするか、または未知の機序によるかのいずれかでミトコンドリア生合成を刺激することが示されている(Weberら 2002)。グルココルチコイド受容体エレメント(グルココルチコイド反応性および関連性エレメント)は認識配列(TGTT)を含む。COX4I2遺伝子はイントロン2にこれらのエレメントの1つを含む。従って、グルココルチコイド結合が遺伝子発現増大を刺激し、ミトコンドリア容積増大およびその結果の好気的エネルギー生産能力を導いてもよい。
【0072】
ある側面では、本発明は優れた全力疾走パフォーマンスに有意(P<0.01)に関連するCOX4I2における一塩基多型(SNP)に関する。優れた短距離レース勝ち馬におけるCOX4I2ホモ接合TT遺伝子型(EquCab2.0 22676361−C/T)の有意な関連が、サラブレッド馬における優れた競技パフォーマンスの、DNAを基礎にした遺伝的潜在性検定において利用されてもよい。
【0073】
COX4I2遺伝子(EquCab2.0 22676361−C/T)多型の正確な位置
COX4I2多型の正確な位置は、www.broad.mit.edu/mammals/horse//で調べることができるウマゲノム配列(Equus caballus.2.0版)のウマ(Equus caballus)クロモソーム22上の22676361位である。COX4I2多型はEquCab2.0 COX4I2_22676361(C/T)SNPとして同定され得る。
【0074】
ウマゲノムEquCab2アセンブリーは6.79xにおける全ゲノムショットガン(Whole Genome Shotgun)(WGS)アセンブリーであり、2007年9月に公開された。''Twilight''という名の雌サラブレッドがゲノム配列決定のための代表馬として選択された。プロジェクトの調整ならびにゲノム配列決定およびアセンブリーはBroad Instituteによって提供される。N50サイズは、アセンブルしたゲノムの50%がN50サイズまたはそれより長いブロックで存在するような長さである。コンティグのN50サイズは112.38kbであり、すべてのコンティグの全長は2.43Gbである。スカホールド(scaffold)におけるコンティグ間のギャップが含まれる場合、アセンブリーの全長は2.68Gbである。ウマEquCab2は標準Ensembl哺乳動物パイプラインを使用してアノテーションされた。脊椎哺乳動物およびウマ蛋白質からの予測は、非脊椎哺乳動物に由来する予測に対して優先されている。予測のセットはヒトおよびマウスにおける1:1相同遺伝子に比較され、ウマアノテーションにおいて欠損したホモログはexonerateを使用して発見されている。ウマおよびヒトcDNAは蛋白質に基づいた予測にUTRを添加するために使用されている。最終遺伝子−セットは20,737の蛋白質−コーディング遺伝子を含み、2,863は偽遺伝子として確認され、1,580はレトロトランスポゾン遺伝子として分類された。
【0075】
EquCab2.0 COX4I2−22676361−C/T多型の遺伝子型判定
SNPの遺伝子型判定はエリート(n=79)および非エリート(n=70)パフォーマーを共に含むサラブレッド(n=149)の標本において実行された。エリートパフォーマー群は、優先的に短距離(≦1マイル;n=34)レースおよび長距離(>1マイル;n=36)レースにおいて競走した動物のサブセット(n=70)を含んだ。
【0076】
ゲノムDNAは新鮮な全血または体毛標本のいずれかから抽出された。血液標本は7mlのバキュテナー(Vacutainer)KEDTA血液回収チューブ(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)に集められた。明白な毛根を持つ体毛標本は、ラベル付きの気密ジップロック(zip−lock)袋に集められた。標本は、改変した標準フェノール/クロロホルム法(Sambrook and Russell 2001)を使用してDNAを抽出するまで4℃で保管された。すべての標本のDNA濃度はNanoDrop ND−1000 UV−可視分光光度計(NanoDrop Technologies,Wilmington,DE)を使用して推測された。
【0077】
フランキング配列およびSNP(角括弧で囲んだ太字)は以下の通りである;
(小文字で示された塩基は、配列読み取りがフランキング配列のこの領域に対して最適ではなかったことを示す)
caagagtggagtgtgctccaagaactggaggctagcatgtagcagaggaggcagtagcagaggaggagaggttgatgggggagctgcatttggagagtctggcaggcaggaccttgaatgccaggctaaggagtttATTGGGAGGCAAGTGGGTGCTGATAAAGGCTCAAGGATTCCATCAGGCTGTTCCCACAAAGACC[C/T]GGGCCACCTCAGGGCACCATATCCCCATATCCAGGAGCCAGTTGTGTCCCAGAGAAAACAAGGGACTGGACCTTGAGACTTGGCCAGTGTCCTTCACATCCTACCCTGTGCACGCCCCTGTTTGGCCTGTGGTGCAGAAGGCCCCTGGGAGACCTGAAGCAGAAGCTGCAGACCATTCCAGGTTAGTGTGGAGCCCCAGA
(SEQ.ID No.1)
COX4I2遺伝子の遺伝子型判定は、競合的アレル特異的PCR(KASPar)またはTaqman(Applied Biosystems)のいずれかを使用してKBiosciences(www.kbioscience.co.uk)によって実施された。KASParは企業内所有の均質な蛍光遺伝子型判定系である。
【0078】
全DNAの中の25μLは“v−底の”96ウェルマイクロタイタープレート中、15ng/μLの濃度でKBiosciencesに供給された。再現性をチェックするため、および標本取り扱いにおける誤差を制御するために、設定およびアッセイ検証(n=24)ならびにブランク(96ウェルプレート毎にn=1)用のいくつかの標本も含まれた。
【0079】
遺伝解析研究
遺伝子型判定後、先に記載の対象(n=149)に対して遺伝解析が実行された。
【0080】
それぞれのSNPに対して個々の二分化ロジスティック回帰モデルを適合させた。遺伝子型傾向効果は、一般的ホモ接合、ヘテロ接合、およびまれなホモ接合遺伝子型に関した効果の大きさにおける線形傾向に関連したリスクを推測することによってモデル化された。P−値は、優度比検定統計値から決定され、自由度1を持つ漸近χ分布に従って近似された。有意に関連のあるSNPのための最適な遺伝モデルは、相加、劣性および超優性モデルのコーディング変数を持つ解析を反復することによって決定された。
【0081】
表2は対象間のEquCab2.0 COX4I2_22676361(C/T)SNP遺伝子型頻度を示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表中:Sp=スプリンター
En=エンデュアランス(または‘ステイヤー’)
OR=オッズ比
LOWER=下限信頼区間
UPPER=上限信頼区間
表2では、EquCab2.0 COX4I2_22676361(C/T)SNPホモ接合TT遺伝子型は<8ファーロング(1マイル未満)の距離での優れた競走(全力疾走)パフォーマンスに有意に関連し(P<0.02)(図2)、この関連は<7fの距離ではいっそう顕著である(P<0.01)。
【0084】
COX4I2_22676361(C/T)SNPのホモ接合Tアレルを持つサラブレッド馬は、ヘテロ接合Tアレル(TC)を持つサラブレッド馬、またはTアレル(CC)を持たないサラブレッド馬に比較して優れた全力疾走パフォーマンスを有する。従って、サラブレッド馬の全力疾走パフォーマンスはCOX4I2_22676361(C/T)SNPのホモ接合Tアレルの存在または不在に関して生物学的標本を試験することによって予測することができる。
【0085】
実施例2−サラブレッド競走パフォーマンスに関連する遺伝子
本発明者らは以下の遺伝子:ACN9、ACSS1、ACTA1、ACTN2、ADHFE1、GGPS1、GSN、MC3R、MTFR1、NDUFA8、PDK4、PON1、PTGS1、PTPN1、TNC、TOMM20、UGCG CKM、COX4I2、COX4I1、HIF1A、MYEF2、およびPRKAA1における80のSNP間の関連を検討した(SNPの詳細はサラブレッド競走パフォーマンスに関する付録に示す)。
【0086】
本発明はACN9、ACSS1、ACTN2、ADHFE1、CKM、COX4I2、GSN、MSTN、PON1、PTGS1およびPTPN1を含むこれらの遺伝子セットにおけるSNPと競技パフォーマンス表現型間の有意な関連を確認する(付録を参照されたい)。ウマ骨格筋における運動に対する公知の遺伝子発現反応(Eiversら 2009)およびイヌにおけるパフォーマンスとの関連の証拠(Mosherら 2008)および訓練に対する反応から、サラブレッド競走パフォーマンスと有意な関連を有する4種の遺伝子(CKM、COX4I2、PDK4およびMSTN)が詳細に検討された。これらの遺伝子の中の3種(CKM、COX4I2およびPDK4)におけるSNPは優れた競技パフォーマンス(グループレース勝利)に関連し、MSTN遺伝子におけるSNPは優れた短距離レースパフォーマンスに関連する。
【0087】
この実施例では、以下の標本セットが使用された:
表3−それぞれの亜集団にふくまれる標本の詳細。
【0088】
【表3】

【0089】
表中、TBはサラブレッドであり、TBEはエリートグループレース勝利サラブレッドであり;そしてTBOは非エリート(すなわち、その他の非勝利)サラブレッドである。TBEコホートはさらにTBE_スプリンター(n=39)およびTBE_エンデュアランスまたは‘ステイヤー’(n=32)に細分化された。
【0090】
遺伝解析研究
SNPと競技パフォーマンスとの関連に関する検定は、PLINKプログラム(http://pngu.mgh.harvard.edu/purcell/plink/ Purcellら,2007)を使用して実施された。
【0091】
標準ケース/コントロール関連解析
標準ケース/コントロール関連解析を実施するために、オプション:plink−−file mydata -assocが使用され、それが以下のフィールドを含むファイルplink.assocを生成する:
CHR クロモソーム
SNP SNP ID
BP 染色体上の位置(塩基対)
A1 マイナーアレル名(全標本に基づく)
F_A ケースにおけるこのアレルの頻度
F_U コントロールにおけるこのアレルの頻度
A2 メジャーアレル名
CHISQ 基本アレル検定χ−2乗(1df)
P この検定に関する漸近p−値
OR 推定オッズ比(A1に関する)
関連解析
モデルオプション(model option)を使用することによって、基本アレル検定(ケース対コントロールにおけるアレルの頻度を比較する)以外の疾患と変異体間の関連の検定を実施することが可能である。本明細書で提案された検定は(基本アレル検定の他に)以下の通りである:
・コクラン−アーミテージ傾向検定(Cochran−Armitage trend test)
・遺伝子型(2df)検定
・優性遺伝子アクション(1df)検定
・劣性遺伝子アクション(1df)検定
コクラン−アーミテージ検定の利点の一つは、アレルではなく個体が解析の単位であるため、ハーディ・ワインベルグ(Hardy−Weinberg)平衡を仮定しないことである(しかし、基本アレル検定に由来する順列に基づいた経験的p−値もこの特性を有する)。ハーディ・ワインベルグ平衡からの大きな逸脱を示すSNPはしばしば劣ったSNPである可能性があるか、または標本における層化を反映するが、それゆえ多くのケースにおいておそらく最適に排除される。
【0092】
遺伝子型検定は疾患x遺伝子型の2x3表における一般的な関連検定を提供する。優性および劣性モデルはマイナーアレルに対する検定である(どれがマイナーアレルであるかは−−assocまたは−−freqコマンドのいずれかの出力の中に見出すことができる。すなわち、Dがマイナーアレルであり(そしてdがメジャーアレルである)場合、以下の通りである:
アレル(Allelic): D対d
優性(Donminant): (DD,Dd)対dd
劣性(Recessive): DD対(Dd、dd)
遺伝子型(Genotypic): DD対Dd対dd
先に述べたように、これらの検定は、以下のフィールドを含むファイルplink.モデルを生成するオプションplink--file mydata--modelによって生成される:
CHR クロモソーム番号
SNP SNP識別子
TEST 検定の型
AFF ケースにおける遺伝子型/アレル
UNAFF コントロールにおける遺伝子型/アレル
CHISQ カイ−二乗統計量
DF 検定に関する自由度
P 漸近P−値
それぞれのSNPは適用される5種の検定に対応する出力の5つの列上で見られる。行のTESTは、先に述べた異なる型の検定を表すALLELIC、TREND、GENO、DOMまたはRECのいずれかを表す。遺伝子型またはアレルカウントはケースおよびコントロールに対して別個に示される。劣性および優性検定の場合、カウントは遺伝子型を表し、2つのクラスはプールされる。
【0093】
これらの検定は二倍体遺伝子型だけを考慮する:すなわち、Xクロモソームの場合、雄はALLELIC検定からさえ除外されることになる。このように、本明細書に提示された5種の検定に対して同じデータが使用される。対照的に、基本関連コマンド(−−assoc および−−linearなど)は単一の雄Xクロモソームを含み、それゆえ結果が異なってもよいことに注意されたい。
【0094】
遺伝子型および優性/劣性検定は2x3の表において細胞毎の最少観察数である場合だけ実施され:デフォルトによって、少なくとも細胞の1つが5未満の頻度を有する場合、代わりの検定は省かれることになる(NAは結果ファイルの中に記載される)。コクラン−アーミテージおよびアレル検定はすべてのケースにおいて実施される。この閾値は−−cell option:plink−−file mydata−−model−−cell 20によって変更されうる。
【0095】
関連検定の結果は付録にすべて提供される。4つの遺伝子PDK4、COX4I2、CKMおよびMSTNにおけるSNPの数が検討された。それぞれの遺伝子に対して、本発明者らはその後の検討のための形質に関して最も有意な関連(P値)(表4)を持つSNPを選択した。競技パフォーマンスに最も高い関連がある4つのSNPはPDK4_38973231-A/G、COX4I2_22684390-C/T、CKM_15884567-G/A、およびMSTN_66493737-T/Cであった。PDK4、CKMおよびCOX4I2におけるSNPはサラブレッド競走馬の優れた全力疾走パフォーマンスと関連した。最良適合遺伝子型モデルは以下の表5の結果に基づいて割り当てられた。
【0096】
表4−サラブレッド競走馬の優れた(グループ勝利)パフォーマンス(PDK4、CKMおよびCOX4I2)および優れた全力疾走パフォーマンス(MSTN)に関するSNP関連検定の結果。それぞれの遺伝子において最も有意な関連を持つSNPがここに示される。
【0097】
【表4】

【0098】
表中A1:アレル1;A2:アレル2;F_A(A1):エリートTB(PDK4、CKMおよびCOX4I2)およびエリートスプリンター(MSTN)におけるアレル1の頻度;F_A(A2):エリートTB(PDK4、CKMおよびCOX4I2)およびエリートスプリンター(MSTN)におけるアレル2の頻度;F_U(A1):非エリートTB(PDK4、CKMおよびCOX4I2)およびエリートエンデュアランス(MSTN)におけるアレル1の頻度;F_U(A2):非エリートTB(PDK4、CKMおよびCOX4I2)およびエリートエンデュアランス(MSTN)におけるアレル2の頻度。
【0099】
付加的な検討のために選択されたSNPは以下のとおりであった:
PDK4_38973231(A/G)
COX4I2_22684390(C/T)
CKM_15884567(G/A)
MSTN_66493737(T/C)
表5−最良適合モデルのための関連検定の結果
【0100】
【表5A】

【0101】
【表5B】

【0102】
最良適合遺伝子型モデルは表5の結果に基づいて割り当てられた。SNPと競技パフォーマンスの関連に関する最良モデルは以下の通りに結論された:
PDK4−Allelic→Aアレル、すなわちAAまたはAGが好ましい。
CKM−Allelic→Aアレル、すなわちAAまたはAGが好ましい。
COX4I2−Recessive→Tアレル、すなわちTTが好ましい。
MSTN−Genotypic→遺伝子型は距離カテゴリーを予測する(この実施例で使用されるコホートでは、CCである‘ステイヤー’は無いが、50%のスプリンターはCCであった)
CKM、COX4I2およびPDK4に関するエリートおよび非エリートサラブレッドの中でのアレル頻度分布、ならびにMSTNに関するエリートスプリンターおよびエリートエンデュアランスの中でのアレル頻度分布は図4に示される。以下の表6はサラブレッド(TBEおよびTBO)における4種のSNPのアレル頻度を示す。
【0103】
表6−サラブレッドにおける4種のSNPのアレル頻度(TBEおよびTBO)
【0104】
【表6】

【0105】
表中、MAFはマイナーアレル頻度であり、NCHROBSは解析されたクロモソーム数である。
【0106】
CKM、COX4I2およびPDK4におけるSNPに関するエリートおよび非エリートサラブレッドの遺伝子型頻度分布、ならびにMSTNにおけるSNPに関するエリートスプリンターおよびエリートエンデュアランスの遺伝子型頻度分布。
【0107】
この研究の結果は図5および以下の表7に示される。
【0108】
表7−PDK4(PDK4_38973231);COX4I2(COX4I2_22684390);CKM(CKM_15884567)のSNPに関するエリートおよび非エリートサラブレッド亜集団における遺伝子型頻度およびMSTN(MSTN_66493737)のSNPに関するエリートスプリンターおよびエリートエンデュアランスサラブレッドにおける遺伝子型頻度
【0109】
【表7】

【0110】
予想される中立遺伝的浮動からの逸脱を測定するために、標本コホートにおける4種のSNPに関するハーディ‐ワインベルク平衡(HWE)からの逸脱が検討された。HWEからの逸脱は選択の指標であってもよく、アレル頻度を示された集団における遺伝子型の予想される分布を変化させてもよい。この情報は、遺伝子型頻度を正しく割り当て、パフォーマンスの検定を可能にするために必要である。
【0111】
表8−ALL(TBすべて);AFF(非エリートおよびエリートスプリンター);UNAFF(非エリートおよびエリートエンデュアランス)におけるハーディ‐ワインベルク平衡からの逸脱に関する検定
【0112】
【表8】

【0113】
エリートサラブレッド亜集団のCOX4I2_22684390−C/Tにおいて、HWEからの逸脱が確認された。従って、エリートレース馬のTT遺伝子型の過剰提示を説明するための検定において遺伝子型頻度が調整されてもよい。また、HWEからの逸脱は、エリートエンデュアランスサラブレッドコホートのMSTN_ 66493737−T/Cにおいても確認された。従って、エリートエンデュアランスレース馬のCC遺伝子型の過小提示を説明するための検定において遺伝子型頻度が調整されてもよい。
【0114】
実施例3−サラブレッド馬におけるエリート(グループレース勝利)パフォーマンスに関する多遺伝子予測検定
本発明は1以上の運動反応遺伝子におけるSNPの存在または不在に基づいてサラブレッド競走馬の競技パフォーマンスを予測するための簡単なDNAを基礎にした方法(遺伝子型検定)を提供する。運動反応遺伝子は付録に列挙された遺伝子の中の1以上であってもよい。たとえば、遺伝子型検定はPDK4、CKM、COX4I2、COX4I1、MSTN、ACSS1、ACTN2またはPTGS1遺伝子の中の1以上におけるSNPに基づいていてもよい。サラブレッド馬の競技パフォーマンスを予測するために使用されてもよいいくつかのSNPの詳細は付録に示される。遺伝子型検定がいずれか1以上のこれらのSNPの組み合わせに基づいていてもよいことは理解されるであろう。
【0115】
図3では、運動中のエネルギー生産に貢献する3つの主要代謝経路、ならびに優れた競走パフォーマンスに関連した3つの遺伝子(CKM、COX4I2およびPDK4)の経路における位置および機能が示される。この限定的でない実施例において、既知の機能の知識、運動に反応して骨格筋で遺伝子が発現されるという知識および先の実施例2の結果を使用して、本発明者らはPDK4、COX4I2およびCKM遺伝子におけるサラブレッド馬における優れたパフォーマンスをSNPに基づいて予測するための、簡単な、DNAを基礎にした遺伝子型検定を開発した。
【0116】
COX4I2 SNP(COX4I2_22684390(C/T)SNP)
このSNPは、www.broad.mit.edu/mammals/horse//で調べることができるウマゲノム配列(Equus caballus 2.0版)のウマ(Equus caballus)のクロモソーム22上22,684,390bp位フォワード鎖に位置する。
【0117】
ウマゲノムEquCab2アセンブリーは6.79xにおける全ゲノムショットガン(WGS)アセンブリーであり、2007年9月に公開された。''Twilight''という名の雌サラブレッドがゲノム配列決定のための代表的なウマとして選択された。プロジェクト調整およびゲノム配列決定およびアセンブリーはBroad Instituteによって提供される。N50サイズは、アセンブルしたゲノムの50%がN50サイズまたはそれより長いブロックで存在するような長さである。コンティグのN50サイズは112.38kbであり、すべてのコンティグの全長は2.43Gbである。スカホールドのコンティグ間のギャップが含まれる場合、アセンブリーの全長は2.68Gbである。ウマEquCab2は、標準Ensembl哺乳動物パイプラインを使用してアノテーションされた。脊椎哺乳動物およびウマ蛋白質に由来する予測は無脊椎哺乳動物に由来する予測に対して優先させている。予測のセットはヒトおよびマウスの1:1相同遺伝子に比較されて、ウマアノテーションにおいて欠損した相同遺伝子はexonerateを使用して発見されている。ウマおよびヒトcDNAは蛋白質に基づいた予測にUTRを添加するために使用されている。最終遺伝子セットは20,737蛋白質−コーディング遺伝子を含み、2,863は偽遺伝子として確認され、1,580はレトロ−トランスポゾン遺伝子として分類された。
【0118】
SNPの付加的な詳細は以下の通りである:
○SNP:COX4I2_22684390(C/T)P=0.03098 OR=0.5778
○EquCab2.0 SNP_ID:BIEC2−617568
○SNPのゲノム位置:イントロン2
○置換型:転移
○SNPはグルココルチコイド反応要素(GRE)結合部位(C/TGTT)を崩壊させる。好ましいアレル(T)は部位(TGTT)を保持し、従ってGRE結合を可能にし、遺伝子の発現を増大させる。好ましくないアレル(C)は部位(CGTT)を崩壊させ、それゆえGRE結合を不可能にし、遺伝子の発現を増大させない。あるいは、SNPはp53腫瘍サプレッサー結合部位(CAC/TG)を崩壊させる。好ましいアレル(T)は部位(CATG)を保持し、それゆえp53結合を可能にし、ミトコンドリア生合成に貢献する。好ましくないアレル(C)は部位(CACG)を崩壊させ、それゆえp53結合を不可能にし、ミトコンドリア生合成に貢献しない。
【0119】
隣接配列およびSNP(太字および角括弧)は以下の通りである:
GCTGGGCGATCCTGGGGACATAAAAGTGAATCACCTGGATGGTTCTTGCCCTCAGGGTGCTCCCAGTCCAGTGGGGGAACCAACACAAGCCCAGATAACTGTAATATAGGATATGTGGCGAGGGTGAAGTGTGTTCAAGGGGCTGTGAGGACCCAAAGGAGAGAGAGATGAAATCCTGGTGGGCCTTCCAGAGGAGGGCA[T/C]GTTCTAGTTGACCTTGAATGGTGAGGCTGAGGGTGCTGCCAGGTGGTGGGAACAGCATGGGTAAGGGTATGGGAGCGGAAGAGCATGGAGGGTCCTAGGCATCAGTAAGTGCTGTAGGGGAAGGAACAGAGAGAGGCGGTGAGGTGGCCAGGAAAGAAGGGGGCCTGACCCTGGGGAGCAGGAGGGATGTGTGACTCCAA
(SEQ ID No.2)
CKM SNP(CKM_15884567(G/A)SNP)
このSNPは、www.broad.mit.edu/mammals/horse//で調べることができるウマゲノム配列(Equus caballus 2.0版)のウマ(Equus caballus)のクロモソーム10上15,884,567bp位に位置する。
【0120】
ウマゲノムEquCab2アセンブリーは6.79xにおける全ゲノムショットガン(WGS)アセンブリーであり、2007年9月に公開された。''Twilight''という名の雌サラブレッドがゲノム配列決定のための代表的なウマとして選択された。プロジェクト調整およびゲノム配列決定およびアセンブリーはBroad Instituteによって提供される。N50サイズは、アセンブルしたゲノムの50%がN50サイズまたはそれより長いブロックで存在するような長さである。コンティグのN50サイズは112.38kbであり、すべてのコンティグの全長は2.43Gbである。スカホールドのコンティグ間のギャップが含まれる場合、アセンブリーの全長は2.68Gbである。ウマEquCab2は、標準Ensembl哺乳動物パイプラインを使用してアノテーションされた。脊椎哺乳動物およびウマ蛋白質に由来する予測は非脊椎哺乳動物に由来する予測に対して優先されている。予測のセットはヒトおよびマウスの1:1相同遺伝子に比較されて、ウマアノテーションにおいて欠損した相同遺伝子はexonerateを使用して発見されている。ウマおよびヒトcDNAは蛋白質に基づいた予測にUTRを添加するために使用されている。最終遺伝子セットは20,737蛋白質−コーディング遺伝子を含み、2,863は偽遺伝子として確認され、1,580はレトロ−トランスポゾン遺伝子として分類された。
【0121】
SNPの付加的な詳細は以下の通りである:
○SNP:CKM_15884567(G/A)P=0.02066 OR=0.4089
○EquCab2.0 SNP_ID:BIEC2−109575
○SNPのゲノム位置:イントロン4
○置換型:転移
○SNPはインターフェロン調節因子結合部位(GCA/GA)を崩壊させる。Aアレルは部位(GCAA)を保持する。Gアレルは部位(GCGA)を崩壊させる。
【0122】
隣接配列およびSNP(太字および角括弧)は以下の通りである:
CTGTCCCTAACAGACCTGGACCTTGGCCCCGTGGAGGTCCTAAAGGCRACTATACGCGATGTAAACCCAAATTCATGACATCCCCTGAAGCATGCTCTTCCCCTGTCTGCCCGGGTCCCCGGAACAGCCACCCCAAGTGCTCTCTCCCAAGTGGACTCTCCCTTCACACCCTGCCCCTCGCATCCAGTGCACCGGCAAGC[A/G]ACACTATCCCGGTGCCCACTCCAGAAAGTCAATGTCTCAGGAATCTGGGGAGCCATCAGTCAAAATTACTATCATACAGTATATATAGGATTCGCATATATTCCTATGCATAATAATTATACGTTTTGTGGATAATAAATATATGTATATATGCATAATATTTACATAATATATACATATTTATATACATTTTATACATT
(SEQ ID No.3)
PDK4(PDK4_38973231(A/G)SNP)
このSNPは、www.broad.mit.edu/mammals/horse//で調べることができるウマゲノム配列(Equus caballus 2.0版)のウマ(Equus caballus)のクロモソーム4上38,973,231bp位に位置する。
【0123】
ウマゲノムEquCab2アセンブリーは6.79xにおける全ゲノムショットガン(WGS)アセンブリーであり、2007年9月に公開された。''Twilight''という名の雌サラブレッドがゲノム配列決定のための代表的なウマとして選択された。プロジェクト調整およびゲノム配列決定およびアセンブリーはBroad Instituteによって提供される。N50サイズは、アセンブルしたゲノムの50%がN50サイズまたはそれより長いブロックで存在するような長さである。コンティグのN50サイズは112.38kbであり、すべてのコンティグの全長は2.43Gbである。スカホールドのコンティグ間のギャップが含まれる場合、アセンブリーの全長は2.68Gbである。ウマEquCab2は、標準Ensembl哺乳動物パイプラインを使用してアノテーションされた。脊椎哺乳動物およびウマ蛋白質に由来する予測は非脊椎哺乳動物に由来する予測に対して優先されている。予測のセットはヒトおよびマウスの1:1相同遺伝子に比較されて、ウマアノテーションにおいて欠損した相同遺伝子はexonerateを使用して発見されている。ウマおよびヒトcDNAは蛋白質に基づいた予測にUTRを添加するために使用されている。最終遺伝子セットは20,737蛋白質−コーディング遺伝子を含み、2,863は偽遺伝子として確認され、1,580はレトロ−トランスポゾン遺伝子として分類された。
【0124】
SNPの付加的な詳細は以下の通りである:
○SNP:PDK4_38973231(A/G)P=0.001676 OR=2.2
○EquCab2.0 SNP_ID:BIEC2−903605
○SNPのゲノム位置:イントロン2
○置換型:転移
○SNPは、転写因子(2ハンド亜鉛フィンガーホメオドメイン転写因子)結合部位(ta/gtgtGTTTcaga)から4bp上流である。
【0125】
隣接配列およびSNP(太字および角括弧)は以下の通りである:
ACTTTAACCCTCAACTTTCTAACTTAAAATTTATGTTTAACTATTCCAGAGCAATATTCAGTTTTATTTGGCAAATGTTTTCATTTTTTATAGCAAAAGTATTTAGAAATTTTTAAGAAAGATTTCATATTTCTTTCTACTTCATTCATTCATGTGTGGGTAGAAGTCTCGAAAGCAGCAGTAAAGACTATGGATTGAAT[A/G]TGTGTTTCAGATTGTCATTGTTTAATGGGTATGGAATGCATATATTTCTTGAATCAATGAACAAAACGCTGTATAGTCAGCAGATTAGGGTGAGGCTCTGGTGCATATCTGCTGCAGTGCATATCCTGGCTCTATTCTCTGAAAATCTGCTCTTGTGGGTCATCTACCCTCTCTAAGCTTMAGCACCCTTATTTGTTAAA
(SEQ ID No.4)
リスク予測
複雑な形質に関する‘リスク’の予測は、相加遺伝分散が小さい場合、単一遺伝子SNPに頼るよりむしろ、形質に貢献する複数の遺伝子を検定することによって非常に高められる(Yangら 2003)。しかし、効果が大きい場合(すなわち高オッズ比)、単一SNPが使用されてもよい。(HWEにおけるSNPに対する)集団アレル頻度または(HWEから逸脱したSNPに対する)観察された遺伝子型頻度およびベイズの定理(Bayes Theorem)を使用した亜集団予測に基づいて、本発明者らはPDK4、CKMおよびCOX4I2遺伝子における配列変異体に対して、ある種の遺伝子型の組み合わせを与えられた1種または他の亜集団(エリートおよび非エリート)のメンバーである確率を検討した。結果は、2つの亜集団のそれぞれのメンバーである確率の百分率として、以下の表9に提供される。
【0126】
表9−遺伝子PDK4、CKMおよびCOX4I2におけるSNPを使用した優れた競走能力に関する予測検定(遺伝子型組み合わせは、レース能力に関して「最も好ましい」から「最も好ましくない」までランク付けされる)
【0127】
【表9A】

【0128】
【表9B】

【0129】
表中、PDK4の場合、AAは遺伝子型AAを表し、ABは遺伝子型AGを表し、そしてBBは遺伝子型GGを表す;COX4I2の場合:AAは遺伝子型CCを表し、ABは遺伝子型CTを表し、そしてBBは遺伝子型TTを表す;そしてCKMの場合:AAは遺伝子型GGを表し、ABは遺伝子型GAを表し、そしてBBは遺伝子型AAを表す。
【0130】
表9から、これらの3種の遺伝子における遺伝子型の最も好ましい組み合わせは、PDK4、COX4I2およびCKMそれぞれに対して、AA、TT、AAであることを理解することができ(エリートレース馬である82%の確率、非エリートである18%の確率)、そしてこれらの3種の遺伝子における遺伝子型の最も好ましくない組み合わせは、PDK、COX4I2およびCKM4それぞれに対して、GG、CC、GGである(エリート競走馬である3%の確率、非エリートである97%の確率)。
【0131】
リスク予測検定は付録に列挙された1以上のSNPを使用して実施されてもよい。
【0132】
実施例4−SNPとハンディキャップレーティング(RPR)との定量的関連
レーシングポストレーティング(Racing Post Ratings)(RPR)は、レースレベル、フィールドの特性、負担重量およびレースのタイムに関して、指定されたレースにおけるウマの全体的パフォーマンスによって決定されるハンディキャップレーティングである。RPRはスピードレーティングに直接匹敵せず、むしろレーティングは、ウマがハンディキャップで負担することを要求されることになる重量を表すことを意図する。たとえば、同じ年齢および性のウマに制限されるレースでは、レーシングポストレーティング120のウマは、ハンディキャップでは、117のレーティングのウマより3ポンド多く負担することになる。オープンレースでは、セックスアローワンスおよび馬齢重量アローワンスが計算に入れられる。従って、ハンディキャップでは120ポンドを負担するウマが一馬身差で128ポンドを負担するウマに勝つ場合、128ポンドを負担するウマは一般に、120ポンドを負担するウマより6または7ポンド高いレーシングポストレーティングを与えられることになる。異なる部門のレース勝ち馬に対して満足できるレーティングを決定することに役立つ指針値は以下の表10に示される。
【0133】
表10− 勝ち馬に対するRPR指針
【0134】
【表10】

【0135】
本発明者らは、定量的関連検定解析において競技パフォーマンスと有意な関連を示しているSNPのいくつかとRPRとの間に有意な関係があるかどうかを調べた。
【0136】
表11−RPRと有意な関連を有するSNP
【0137】
【表11】

【0138】
以下の表12は、上記の表11に列挙された3つの有意に関連したSNPのそれぞれの遺伝子型に対する平均RPRを示す。
【0139】
表12−表11に由来するSNPのそれぞれの遺伝子型に対する平均RPR
【0140】
【表12】

【0141】
上記の表12では、PDK4_38973231−(A/G)において、AA遺伝子型は99.95の平均RPRを有し、AG遺伝子型は97.7の平均RPRを有し、そしてGG遺伝子型は80.3の平均RPRを有する。従って本発明者らは、AAおよびAG遺伝子型はより高いRPRと相関する好ましい遺伝子型であると結論する。COX4I1_32772871−(C/T)において、TT遺伝子型は100.6の平均RPRを有し、CC遺伝子型は99.71の平均RPRを有し、そしてCC遺伝子型は83.3の平均RPRを有する。従って本発明者らは、TTおよびTC遺伝子型はより高いRPRと相関する好ましい遺伝子型であると結論する。
【0142】
COX4I1 SNP(COX4I1_32772871(C/T)SNP)
このSNPは、www.broad.mit.edu/mammals/horse//で調べることができるウマゲノム配列(Equus caballus 2.0版)のウマ(Equus caballus)のクロモソーム3上32,772,871bp位に位置する。
【0143】
ウマゲノムEquCab2アセンブリーは6.79xにおける全ゲノムショットガン(WGS)アセンブリーであり、2007年9月に公開された。''Twilight''という名の雌サラブレッドがゲノム配列決定のための代表的なウマとして選択された。プロジェクト調整およびゲノム配列決定およびアセンブリーはBroad Instituteによって提供される。N50サイズは、アセンブルしたゲノムの50%がN50サイズまたはそれより長いブロックで存在するような長さである。コンティグのN50サイズは112.38kbであり、すべてのコンティグの全長は2.43Gbである。スカホールドのコンティグ間のギャップが含まれる場合、アセンブリーの全長は2.68Gbである。ウマEquCab2は、標準Ensembl哺乳動物パイプラインを使用してアノテーションされた。脊椎哺乳動物およびウマ蛋白質に由来する予測は非脊椎哺乳動物に由来する予測に対して優先されている。予測のセットはヒトおよびマウスの1:1相同遺伝子に比較されて、ウマアノテーションにおいて欠損した相同遺伝子はexonerateを使用して発見されている。ウマおよびヒトcDNAは蛋白質を基礎にした予測にUTRを添加するために使用されている。最終遺伝子セットは20,737蛋白質−コーディング遺伝子を含み、2,863は偽遺伝子として確認され、1,580はレトロ−トランスポゾン遺伝子として分類された。
【0144】
SNPの付加的な詳細は以下の通りである:
○SNP:COX4I1_32772871(C/T)EMP1=0.009681
○EquCab2.0 SNP_ID:BIEC2−816028
○SNPのゲノム位置:イントロン
○置換型:転移
隣接配列およびSNP(太字および角括弧)は以下の通りであり、ここでMはAまたはCである:
TCAGGTCTCAGTCGCACCAGAGCTGGATGGAGCCAGCGCAGCTCCATCTCTCAGTGGCTGGGAGTGGGCTGCAGGGTGGTCCTCACACAAGATGGGCACCTCCCTCCTGGGCTCCATCCCAGGACTGTTTCCCAGGTTTGGGAAACTGGCTCGCATTAGCCGAGTGGCGTGAGCCGGAATMTGATTTACTCACAGTGCGC[T/C]GTGCTTGGTGGGGAACGACTTCCCTGCTTTGTACAGCACCCTGCGTTTCCAGTGGTGGTTTGTCTGGTCACTAGTCTTTTATCAAGAGATAGTATAGTGAAGGTTAGGTCAAGGAAAAGGGAACTCTGACTTGTCAGAGGGCTGTTTGAACTGTATGGGGACTGCATCTCGATAACCAGGATTCTGGGTCTCCAGACCCA
(SEQ ID No.32)
定量的関連検定解析において、このSNPはRPRと有意に関連する。
【0145】
実施例5−サラブレッド馬における優れた短距離レースパフォーマンスの遺伝子予測検定
サラブレッド馬は短距離(<1,500m)および長距離(>1,800m)レースの両方において秀でている。中距離レースで競走するウマ(‘マイラー’および‘中距離馬’)は、‘スプリンター’または‘ステイヤー’のいずれかであると見なされてもよく、騎手により遂行されるレースのやり方はしばしば調教師が認めたウマの全力疾走能力および持久力を反映する。産業内では、ウマはそれらの馬格(conformation)に基づいてスプリンターとして記載されてもよく、通常、肥りやすく、より筋肉質の体格を有し、より早く成熟する。それらは通常2歳馬として、そしてより短い距離を3歳馬としてレースを行う。長距離動物であると認められた個体は、成熟にいっそうの時間を必要とし、3歳馬として長距離を走る‘バックヤード(backyard)’と呼ばれてもよい。ある地域(たとえばオーストラリア)では、ブリーダーはより速い‘短距離’型のウマだけを繁殖させることを企てる。
【0146】
ある側面では、本発明は1以上の運動反応遺伝子におけるSNPの存在または不在に基づいて、サラブレッド競走馬の優れた短距離レースパフォーマンスを予測するための、簡単なDNAを基礎にした方法(遺伝子型検定)を提供する。運動反応遺伝子は付録に列挙された1以上の遺伝子であってもよい。たとえば、遺伝子型検定はMSTN、ACN9、PTPN1、PON1、ADHFE1、またはGSN遺伝子の中の1以上におけるSNPに基づいていてもよい。サラブレッド競走馬の優れたレースパフォーマンスを予測するために使用されてもよいいくつかのSNPの詳細は付録に示される。遺伝子型検定がこれらのSNPのいずれか1以上の組み合わせに基づいていてもよいことは理解されるであろう。
【0147】
この限定的でない実施例では、本発明者らはMSTN遺伝子を研究した。
【0148】
方法
関連標本
国際競馬統括機関連盟(International Federation of Horseracing Authorities)は5つの距離カテゴリーを認めている:短距離(5〜6.5f、≦1,300m)、マイル(6.51〜9.49f、1,301〜1,900m)、中距離(9.5〜10.5f、901〜2,112m)、長距離(10.51〜13.5f、2,114〜2,716m)および超長距離(>13.51f、>2,717m)レース(International Federation of Horseracing Authorities Classifications,www.horseracingintfed.com)[注:1ファーロング=1/8マイル=201.2メートル]。ケース−コントロール調査の場合、本発明者らは2つのコホートを比較した:標本は短距離(≦8fおよび≦7f)および長距離(>8f)レースコホートに細分化された。動物の過度な血縁関係(2世代以内)および血統内の評判のよい種馬(sire)の過剰提示を回避するために、1998〜2008年の間に、アイルランドおよびニュージーランドにおいてサラブレッド訓練、繁殖および販売機関から、オーナーのインフォームドコンセントを得て収集された大規模なDNA標本リポジトリ(n>1,000)から、サラブレッドDNA標本セット(n=148)が選択された。
【0149】
レプリケーション標本
パフォーマンスに対する非遺伝的影響を最少化するために、2004〜2008年の間に、アイルランドにおいて同じトレーナーによって訓練されたウマに由来するDNA標本(n=142)のリポジトリから選択されたエリート(グループレースおよび準重賞レースに勝利)競走馬標本(n=39)の遺伝子型を判定することにより、結果が実証された。このリポジトリのサブセット(n=142)は、2歳の競走馬における競馬場成功のパラメータにより、遺伝子型傾向を評価された。レースレコードは3つの供給源:ヨーロッパレースレコード、レーシングポストオンラインデータベース(Racing Post on−line database)(www.racingpost.co.uk);オーストラレーシアおよび東南アジアレースレコード、Arion Pedigrees(www.arion.co.nz);ならびに北米レースレコード、Pedigree Online Thoroughbredデータベース(www.pedigreequery.com)に由来した。レプリケーション標本には、解析で明らかにされた血縁関係の一部共有があった。
【0150】
DNA抽出、リシークエンシングおよび遺伝子型判定
ゲノムDNAは、標準フェノール/クロロホルム法の改変版(Sambrook & Russell 2001)を使用して、新鮮な全血または体毛標本のいずれかから抽出された。webを基礎にしたプライマー設計ツールPrimer3に対するPCR suiteエクステンション(Rozen & Skaletsky 2000;van Baren & Heutink 2004)を使用して、13対の重複するPCRプライマーを設計し、全MSTNゲノム配列をカバーした(表13)。サラブレッド−特異的配列変異体を確認するために、リシークエンシングパネルには24の関連のないサラブレッドDNA標本が含まれた。そのようなものとして本研究はサラブレッド集団においてMAF>0.05のSNPの95%を検出するように強化された(Kruglyak & Nickerson 2001)。PCR産物の2方向DNA配列決定はMacrogen Inc.(Seoul,Korea)に海外委託し、AB 3730xlシークエンサーを使用して実行された(Applied Biosystems,Foster City,CA)。配列変異体はConsed 19.0版(090206)[Gordon ら 1998]を使用したアラインメント後に配列の目視検査によって検出された。遺伝子型判定は、San Diego,USA(関連標本)およびHamburg,ドイツ(レプリケーション標本)において、Sequenom社のSequenom(San Diego,USA)iPlex技術を使用して実行された。
【0151】
統計解析
関連の検定を含むすべての統計解析は、PLINK 1.05版(Purcell ら 2007)を使用して実施された。品質管理分析は標本アレル頻度、欠損遺伝子型の割合(百分率)およびHardy−Weinberg平衡からの逸脱の計算を包含した。一連のケース−コントロール関連検定は2つの遺伝子座(g.66493737C>Tおよびg.66494218A>C)に対して実施された。統計的有意性は、傾向に関するコクラン−アーミテージ検定および無条件(unconditioned)遺伝子型モデルを使用して評価された。オッズ比および95% CIは2つの最も有意な関連に関して計算された。線形回帰モデルを使用して、表現型:最適レース距離およびkg/cm比を使用した遺伝子座g.66493737C>Tにおける定量的形質関連を評価した。
【0152】
結果
ウマ、とりわけサラブレッドは、他の哺乳動物種(30〜40%)に比較して、体重に対する非常に高い筋肉量比(55%)を有する(Gunn 1987)。ミオスタチン遺伝子(MSTN)変異体は以前に筋肉肥大に貢献することが示されている;従って、クロモソーム18上に3つのエキソンと全長6,172bpを含むウマMSTN遺伝子(リバース鎖nt 66489608-66495780、EquCab2.0)の配列変異が検討された。現在まで、サラブレッド馬のゲノムMSTN配列において配列変異体は報告がなく、EquCab2.0 SNPデータベースにおいてMSTN SNPは実証されていない。3つのエキソンすべておよび5′上流領域の288bpにわたる14の重複プライマー対(表13)を使用して14頭の非関連サラブレッド馬におけるウマMSTN遺伝子をリシークエンシングすることにより、新規な配列変異体が確認された。エキソン配列変異体は検出されなかったが、MSTNのイントロン1[nt 66492979-66494807]において6つのSNPが検出された(表14)。
【0153】
集団遺伝多様性解析は、MSTN遺伝子を含む領域の選択がサラブレッド集団において効果的であることを示唆する。関連のないサラブレッド(n=106)の3つの集団、Akhal−Teke(n=18)、Connemara(n=17)およびTuva(n=17)馬において、ウマクロモソーム18にまたがる13のマイクロサテライト遺伝子座の遺伝子型判定が行われた。サラブレッドでは、連鎖不平衡の評価はMSTN遺伝子に最も近い2つの遺伝子座、TKY101(nt.63528459)およびTKY016(nt.66838920)を包含する保存されたハプロタイプを示した。集団の中で、FSTによってランクを付けられた場合、ゲノムワイド遺伝子座のトップ10%の中にあるTKY101(FST=0.23)において分化(FST)が高かった。興味深いことに、ミオスタチンの重要なシグナリング分子であるアクチビンA受容体、IIA型をコードするACVR2Aに最も近いTKY303(nt.31.1Mb;FST=0.31)のFSTスコアが、クロモソーム18上で最も高いFSTスコアであった。MSTNから350bpに位置するTKY016の高いFSTは、サラブレッドおよび非サラブレッド集団間の多岐にわたるアレル頻度分布に起因し、そして距離コホート(TBE8f;n=25およびTBE>8f;n=22)へのサラブレッド標本の再分布は、アレル144頻度(TBE8f=70%;TBE>8f=45%)における有意な差(ピアソンのカイ二乗検定;χ=5.809;df=1;P=0.0159)を確認した。
【0154】
MSTN配列変異体と競走表現型間の関連を検討するために、本発明者らはn=148のサラブレッド馬の遺伝子型を判定した。サラブレッドでは、6つのMSTN配列多型の中の4つがMAF<0.05を提示し(表15)、関連解析から排除された。後ろ向き競馬場パフォーマンスに基づいて、関係のない動物を含む別個のコホートにサラブレッドを分類することによって、集団を基礎にした一連のケース−コントロール調査が実施された(表16)。解析に使用される2つのSNP(g.66493737C>Tおよびg.66494218A>C)における個々の遺伝子型は、一度もレースに勝ったことがないサラブレッド(Thoroughbred−other、TBO)より、エリートグループレース勝利サラブレッド(Thoroughbred−elite、TBE)ではいっそう共通でない(表17)。さらに、後ろ向き競走能力を反映するハンディキャップレーティングが定量的表現型として評価される場合、関連は検出されなかった。しかし、短距離および長距離競走に対する筋力パワーの相対的貢献を検討する場合、エリートグループレース勝利動物は≦8f(n=51)の距離のそれらの最適レースに勝利したものと、>8f(n=35)の距離のそれらの最適レースに勝利しているものに細分化され、極めて有意な差が見出された。[注:1ファーロング=1/8マイル=201.2メートル]。イギリス(Britain)では、1年につき139のグループレースの中で、57%が≦1マイルの距離を走り、そして43%が>1マイルの距離を走る。エリートパフォーマーコホートには、短距離(≦8f、n=39)レースおよび長距離(>8f、n=32)レースを優先的に競う動物のサブセット(n=71)が含まれた。
【0155】
すべての解析に対して、関連の有意性はg.66494218A>Cより、g.66493737C>Tに対して高く、これらのSNP間の連鎖不平衡は相対的に高い(r=0.50)。ロジスティック回帰モデルを使用するそれぞれのSNPに対するコンディショニングは、g.66494218A>Cに対するg.66493737C>Tの独立した効果(P=0.0108)を確認したが、g.66493737C>Tに対するg.66494218A>Cの効果は確認できず(P=0.7388)、従ってg.66493737C>Tの結果だけがさらに検討された。2つの距離コホートの中で、本発明者らはg.66493737C>Tとの極めて有意な(P=3.70×10−5)関連を見出し、短距離コホートが≦7fのそれらの最適レースに勝利している動物(n=43)にさらに細分化される場合、この関連はわずかに、より強くなった(P=1.88×10−5)(表17a)。
【0156】
Cアレルは4.54のオッズ比(95%C.I.2.23〜9.23)に対応して、長距離(>8f)コホートより短距離(≦7f)コホートにおいて、2倍頻度が高かった(それぞれ0.72および0.36)。すべてのサラブレッドが一緒に検討される場合、遺伝子座は予測されたHardy−Weinberg比率に従った(表18)。しかし、長距離コホートでは、おそらくこの遺伝子座での選択に起因してHWEからの有意な(P=0.0018)逸脱があった。逆に、C/C遺伝子型はスプリンター(≦7f、>51%)の中では最も一般的な遺伝子型であった。遺伝子型傾向効果は、傾向モデルに関するコクラン−アーミテージ検定を使用して、一般的なホモ接合、ヘテロ接合、およびまれなホモ接合遺伝子型に関する効果の大きさにおける線形傾向に関連したリスクを推測することによってモデル化された。最も簡潔なモデルは、遺伝子型が競走距離の予測に役立つことを示す遺伝子型モデル(P=1.18×10−6)であった(表17b)。
【0157】
表13:ウマミオスタチン(MSTN)遺伝子におけるSNP発見に関するPCRプライマーの詳細
【0158】
【表13A】

【0159】
【表13B】

【0160】
表14:24の関係の無いサラブレッド馬のパネルにおけるリシークエンシング後にウマミオスタチン遺伝子において発見されたSNPの詳細。これらのSNPはEquCab2.0 SNPマップ中のSNPの中には見られず、一般に利用可能などのような文献においても今まで報告されていない。
【0161】
【表14】

【0162】
表15:MSTN SNPに関する遺伝子型判定の結果
【0163】
【表15】

【0164】
表16:それぞれのコホートに対する後ろ向き競馬場成功の詳細を含む、集団の概要
【0165】
【表16】

【0166】
表17:a.g.66493737C>Tに関する一連のコホート比較のケース−コントロール関連検定の結果。TBE:エリートグループレース勝利サラブレッド;TBO:その他の非勝利サラブレッド;TBE>8f、TBE≦8fおよびTBE≦7f:>8f、≦8fおよび≦7fの距離で最適(最も価値があるか、または最高の等級の)レースに勝利した、優れたグループレース勝利サラブレッド。それぞれのケースにおいてg.66493737−Tアレルの頻度が示される。オッズ比は2つの最も有意な結果に対して計算された。b.≦7fの距離の優れたグループレース勝利パフォーマンスとg.66493737C>Tとの関連の最良適合モデルの結果。
【0167】
【表17】

【0168】
表18.遺伝子座g.66493737C>Tに対するHardy−Weinberg平衡検定の結果。
【0169】
【表18】

【0170】
MSTN SNP(MSTN_66493737(T/C)SNP)
このSNPは、www.broad.mit.edu/mammals/horse//で調べることができるウマゲノム配列(Equus caballus 2.0版)のウマ(Equus caballus)のクロモソーム18上66,490,208−66,495,180位リバース鎖に位置する。
【0171】
ウマゲノムEquCab2アセンブリーは6.79xにおける全ゲノムショットガン(WGS)アセンブリーであり、2007年9月に公開された。''Twilight''という名の雌サラブレッドがゲノム配列決定のための代表的なウマとして選択された。プロジェクト調整およびゲノム配列決定およびアセンブリーはBroad Instituteによって提供される。N50サイズは、アセンブルしたゲノムの50%がN50サイズまたはそれより長いブロックで存在するような長さである。コンティグのN50サイズは112.38kbであり、すべてのコンティグの全長は2.43Gbである。スカホールドのコンティグ間のギャップが含まれる場合、アセンブリーの全長は2.68Gbである。ウマEquCab2は、標準Ensembl哺乳動物パイプラインを使用してアノテーションされた。脊椎哺乳動物およびウマ蛋白質に由来する予測は非脊椎哺乳動物に由来する予測に対して優先されている。予測のセットはヒトおよびマウスの1:1相同遺伝子に比較され、ウマアノテーションにおいて欠損した相同遺伝子はexonerateを使用して発見されている。ウマおよびヒトcDNAは蛋白質を基礎にした予測にUTRを添加するために使用されている。最終遺伝子セットは20,737蛋白質−コーディング遺伝子を含み、2,863は偽遺伝子として確認され、1,580はレトロ−トランスポゾン遺伝子として分類された。
【0172】
SNPの付加的な詳細は以下の通りである:
○SNP:MSTN_66493737(T/C)P=1.88E−05 OR=4.54
○EquCab2.0 SNP_ID:EquCab2.0データベースでは検出されなかった。オン−ラインバイオインフォマティックスリソースにおけるSNPの報告はない。
【0173】
○インハウスSNP_ID:MSTN−10_439
○SNPのゲノム位置:イントロン1
○置換型:転移
隣接配列およびSNP(太字および角括弧)は以下の通りである:
AGCTAAGCAAGTAATTAGCACAAAAATTTGAATGTTATATTCAGGCTATCTCAAAAGTTAGAAAATACTGTCTTTAGAGCCAGGCTGTCATTGTGAGCAAAATCACTAGCAATTTCTTTTATTTTGGTTCCCCAAGATTGTTTATAAATAAGGTAAATCTACTCCAGGACTATTTGATAGCAGAGTCATAAAGGAAAATTA[T/C]TTGGTGCATTATAACCTGATTACTTAATAAGGAGAACAATATTTTGAAACTGTTGTGTCCTGTTTAAAGTAGATAAAGCACTGGGTAAAGCAGGATCGCAGACACATGGCACAGAATCTTCCGTGTCATGCCTTCTCTGTGAAGGTGTCTGTCTCCCTTTCCTTGAGTGTAGTTATGAACTGACTGCAAAAAGAATATATG
(SEQ ID No. 31)
定量的形質としての最適レース距離(BRD)を検討することにより、本発明者らは表現型として最も高い等級または最も価値のあるグループレース勝利の距離(ファーロング)を使用して、エリートコホートのデータ(n=79)を分析した。BRDはg.66493737C>T SNPと極めて有意(P=4.85x0−8)に関連した(表19)。この結果は、同じトレーナーによって生み出された37頭のエリート競走馬(n=27 グループレース勝ち馬およびn=10 準重賞レース勝ち馬)において独立して実証された(P=0.0047)。それぞれの遺伝子型に対して、本発明者らは平均BRDを測定した(表20):C/C平均値=6.2±0.8f;C/T平均値=9.1±2.4f;およびT/T平均値=10.5±2.7f。2ファーロング増加の遺伝子型分布は図6Aから6に示される。アイルランドおよびイギリス(United Kingdom)では2歳馬のグループレースは≦8fに限定されるため、これらの距離に対してバイアスが導入されてもよい(ヨーロッパでは>8fの2歳馬のグループレースは3つしかない)。従って、本発明者らは2歳馬としてただ1つのグループレースに勝利しているウマのBRDを、それらの3歳馬レースの平均距離と置き換え(n=73)、そのことが3つの遺伝子型の平均値におけるわずかな増大(C/C平均値=6.4±1.0f;C/T平均値=9.7±2.0f;およびT/T平均値=10.9±2.4f)および関連の有意性における増大(P=5.45×10−9)に帰着した(図7)。
【0174】
8つのナショナルハント(障害レース、距離16〜36f)競走馬はまた、g.66493737C>T SNPに対して遺伝子型判定が行われ、結果はTアレルとスタミナとの関連を支持する(T/T、n=7;およびC/T、n=1)。さらに、持続運動能力で知られる非サラブレッド集団(n=31、エジプト系アラビア馬)間の遺伝子型頻度はサラブレッド集団とかなり異なった(図8)。これらの発見は一致して、C/C遺伝子型が短距離競走にとりわけ適することを示す。
【0175】
サラブレッド繁殖では、子孫の予測される最適レース距離における種馬(sire)の貢献が非常に重要であると考えられている。繁殖用種馬(stallion)にとって、‘スタミナインデックス’(S.I.)はすべての競走子孫の平均勝利距離として見積もられる。従って、本発明者らは、本発明者らの標本においてS.I.を持つn=19の関係のない繁殖用種馬(stallion)の遺伝子型の分布を検討した(図9)。S.I.=6〜8fのすべて(100%)の種馬(stallion)はC/C遺伝子型を有し;それぞれS.I.=9〜10fおよび10〜12fを持つ83.3%および75%の種馬(stallion)はC/Tであり;そしてS.I.=10〜12fを持つ25%の種馬(stallion)はT/Tであった。標本サイズは小さいが、g.66493737C>T遺伝子型が繁殖用種馬(stallion)におけるS.I.の予測に役立つという明確な徴候が見られる(図9)。
【0176】
これらのデータは、この遺伝子座における遺伝子型情報がサラブレッド馬の競走および繁殖産業において実用的な用途を有してもよいことを示す。このことをさらに評価するために、2007年と2008年(n=63、2007;n=79、2008)において、同じトレーナーによる内部訓練中のn=142のウマの2歳の競走フォームが検討された。首尾一貫して、競走成功のそれぞれのパラメータに対して、C/CおよびC/T遺伝子型はT/T動物よりいっそう成功している2歳競走馬であった(表20a)。収益の点から、C/CまたはC/Tである動物に対しては訓練への投資に対する報酬が最も高く;平均でこれらのウマはT/Tのウマより5.5倍稼いだ。>スターリング(Sterling)£100,000(US$165,000)を稼いだ個体が除外された場合でさえ、平均でC/Cの個体はT/Tの個体より1.6倍多く稼いだ。飼育および訓練費用の大半は賞金で戻らない(少なくとも1レースで走ったウマの場合、アイルランドで72%、イギリス(United Kingdom)で78%)[International Federation of Horseracing Authorities,www.horseracingintfed.com];従って、2歳馬としてC/CおよびC/Tの個体だけを訓練し、競走させる方策を利用することが有益であってもよい。
【0177】
共有された種馬(sire)の潜在的に混乱する効果を取り除くために、同じトレーナーによって2歳馬として訓練された41頭の異母兄弟(単一種馬(sire)の子孫)[C/T、n=22;T/T=19](表20c)の競走勝利が検討された。遺伝子型と競走パフォーマンスとの有意な関連(ピアソン(Pearson)のχ2乗検定:χ=7.235;df=1;P=0.0071)が確認され;子孫の中の5頭が2歳馬グループレース勝ち馬であり、すべてがC/T遺伝子型を提示した。
【0178】
多くの場合、ブリーダーのゴールはダービー(Derby)勝ち馬を繁殖させることである。ダービー距離(12f)は、個体がg.66493737C>Tにおいて少なくとも1コピーのTアレルを持たなければならないことを予測する。本発明者らの標本では、n=7:C/T n=6;およびT/T n=1がダービー勝ち馬であった。さらに、エプソンダービー(Epson Derby)およびアイルランドダービー(Ilish Derby)の両方で勝利した、成功している繁殖業者の種馬(stallion)に由来するn=51の子孫は、遺伝子型が判定され、S.I.=11.3fであった。子孫の中では、たった2つの遺伝子型(n=29、C/T;およびn=22、T/T)が確認され、この個体(ここでは遺伝子型判定がされていないが)がT/Tであることを示唆した。(種馬(sire)と雌親(dam)の両方は遺伝子型判定され:種馬(sire):T/T;雌親(dam):C/Tであった)。本発明者らは、グループレースで勝利している種馬(stallion)のn=9の子孫の遺伝子型の平均BRDを推測し、g.66493737C>T遺伝子型傾向(C/T:n=6;平均BRD=8f;T/T:n=3、平均BRD=10.7f)をいっそう説得力のあるものにした。
【0179】
それらのヒト対応物と同様に、短距離競走サラブレッドは一般に長距離レースに適したウマより引き締まり、筋骨たくましい。従って、MSTN遺伝子型が体質量、き甲(withers)の重さ(mass)(kg)および高さ(cm)に影響を与えるかどうかを検討するために、2回の2歳馬競走シーズン中に同じトレーナーによる内部訓練中のn=97のウマ(n=37 雄、n=60 雌)に対して行われた測定が使用された。重さ対高さ比は、g.66493737C>T遺伝子型との有意(P=0.0147)な関係(2.94kg/cm、C/C;2.88kg/cm、C/T;および2.83kg/cm、T/T)を提示した。雄(P=0.0025)が雌(P=0.2272)から独立していると見なされる場合、この関連はより強くなった(表21)。平均で、C/Cの雄はT/Tの雄よりcmあたりの重さが6.7%(すなわち、3.033kg/cm対2.843kg/cm)大きかった。
【0180】
表19:定量的形質関連検定および最適レース距離(BRD)平均値:a.関連検定標本;b.(≦8fの最適レースに勝利した2歳馬の場合)表現型として3歳馬の平均距離を使用した関連検定標本;およびc.レプリケーション標本。
【0181】
【表19】

【0182】
表20:2007年および2008年に同じトレーナーによる内部訓練中のn=142のウマに関する2歳馬競走(アイルランドおよびイギリス(United Kingdom))成功のパラメータ。a.2007年&2008年の内部訓練中の2歳馬;b.C/CおよびC/T対T/T遺伝子型を比較した2007年&2008年に内部訓練中の2歳馬;c:単一の種馬(sire)を共有する、内部訓練中の異母兄弟の2歳馬。
【0183】
【表20】

【0184】
表21.表現型としてのkg/cm比に関するg.66493737C>Tの定量的関連検定の結果
【0185】
【表21】

【0186】
リスク予測
集団で観察された遺伝子型頻度およびベイズの定理を使用した亜集団予測に基づいて、MSTN遺伝子において、ある種の遺伝子型を与えられた1つの亜集団、または他の亜集団(エリートスプリンターまたはエリートエンデュアランスもしくは‘ステイヤー’)のメンバーである確率が検討された。結果は表22に示され、2つの亜集団のそれぞれのメンバーである可能性の百分率として提供される。
【0187】
表22−優れた短距離競走能力の予測検定
【0188】
【表22】

【0189】
表中、AAは遺伝子型TTを表し、ABは遺伝子型CTを表し、そしてBBは遺伝子型CCを表す。
【0190】
表22から、MSTN_66493737(T/C)SNPにおいて遺伝子型CCを持つ対象は、それらがエリートサラブレッドであるならば、スプリンターである最も高い可能性を有すると見なすことができる。
【0191】
MSTN遺伝子発現
2つの独立したリアルタイムqRT−PCRアッセイにおけるMSTN mRNA発現(表23)は、n=60の訓練されていない明け2歳馬(yearling)(C/C、n=15;C/T、n=28;T/T、n=17)に関して集められた生検標本に由来する静止骨格筋(gluteus medius)において検討されている。
【0192】
表23:MSTN遺伝子発現およびTTN参照遺伝子発現に関するqRT−PCRアッセイのプライマー配列
【0193】
【表23】

【0194】
本発明者らはMSTN 66493737(T/C)SNPに関して遺伝子型との有意(P=0.003559)な関連を見出した。C/C遺伝子型コホートはC/Tコホート(405.7±234.1;368.6±213.6)およびT/Tコホート(350.1±185.5;348.1±167.2)のいずれよりも高いMSTN mRNAレベル(654.3±354.3;613.7±327.0)を有した(図10)。
【0195】
また、MSTN遺伝子発現は訓練期間後に有意にダウンレギュレーションされることが見出された(−4.2倍、P=0.0043)。サラブレッド馬骨格筋トランスクリプト−ムにおいて、MSTN遺伝子発現は訓練期間後の遺伝子発現が最も大きく減少する。
【0196】
最適レース距離との定量的関連
グループレースで勝利している個体(すなわちTBE n=86)のサブセットを使用して、定量的関連検定解析において、調べられた遺伝子のSNPと最適レース距離間に有意な関係(すなわち、最も優れた特性の距離/最も価値のあるグループレース勝利)があるかどうかが調べられた。以下の表24は、SNPが最適レース距離と有意に関連したことを示す。
【0197】
表24―最適レース距離と関連するSNP
【0198】
【表24】

【0199】
以下の表25は、上記の表24に由来する4つのSNPに関するそれぞれの遺伝子型の平均最適レース距離を示す。
【0200】
表25−それぞれの遺伝子型の平均最適レース距離
【0201】
【表25】

【0202】
表中、MSTN_66493737−(T/C)では、TT遺伝子型は10.54ファーロング(f)の平均最適レース距離を有し、TC遺伝子型は9.087fの最適レース距離を有し、そしてCC遺伝子型は6.167fの最適レース距離を有する。全体の最適レース距離は8.55fであった。
【0203】
MSTN遺伝子型に基づいた遺伝子型検定に関する多くの実用的な適用が存在する。これらには、以下のものが挙げられる:
1.若馬(young stock)(当歳(0歳)および明け2歳(1歳))
情報に基づいた選択および販売が以下のために行われうる:
・スプリンターを確認する
・中距離馬/スピードのある潜在的ダービー勝ち馬を確認する
・スタミナの強い個体を確認する;
2.内部訓練中の馬(Horses−in−training)
運営コストを低減することが可能であり、競走方策を以下により微調整することができる;
・最も発達の早い2歳馬を確認すること
・ウマは最適レース距離に対して訓練し、競走させることが可能である
3.繁殖牝馬(Broodmare)
繁殖の結果は以下により最適化することができる:
・最適繁殖用雄馬に注意を集中すること
・適合した種馬(stallion)を選択すること
4.種馬(stallion)
種馬の潜在能力は以下により促進されうる:
・若い種馬のスタミナインデックスを予測すること(5歳アドバンテジージ(advantage))
・種馬(stallion)のプロファイルを高めるために、適合する雌馬を誘致する
たとえば、当歳馬、若馬および内部訓練中の馬のMSTN−66493737 TIC SNPの場合、個体の選択は2歳馬として最も好ましいパフォーマンスをする可能性が高い個体(C/CおよびC/T)に対して行われ、そして3歳になるまでレースを待つことが有益であってもよい“バックワード(backward)”個体(身体的に発達の遅い若いサラブレッドに対する産業専門用語)(T/T)を除いて行われてもよい。繁殖の目標は、短距離競走に対してC/C個体、中距離競走に対してC/T個体、そしてより強いスタミナが必要な競走に対してT/T個体を選択することによっていっそう自信を持って達成されてもよい。種馬(stallion)オーナーの場合、種馬(Stud)キャリアの初めにおける種馬(stallion)の遺伝的スタミナインデックスの予測(後ろ向き3歳子孫競走パフォーマンスからS.I.を推測するためには5年が必要である)は、ただちに若い種馬(stallion)のプロファイルを高め、それらの遺伝的潜在性を雌馬オーナーに対して売り込むことになる。このことが今度は、雌馬オーナーが、目的をもった繁殖方策により、特定の繁殖目標を達成するために種馬(stallion)をいっそう都合よく選択することを可能にするであろう。交配の成り行き(種馬(sire)と母馬(dam)が共にホモ接合体である場合を除いて)から不確実性を排除するために、当歳馬の遺伝子型判定をすることが、目的を持った繁殖の成果にふさわしい個体の選択を可能にするために必要であろう。
【0204】
実施例6−SNPの検出
SNPは、たとえば以下の限定的でない方法を含む、任意のSNP遺伝子型判定法により決定されてもよい。
【0205】
Sequenom Inc
マルチプレックスPCRとそれに続く単一塩基プライマー伸長反応に基づいたiPLEX(登録商標)Goldアッセイ。PCRの後、残存するヌクレオチドはSAP処理により脱活性化される。単一塩基プライマー伸長ステップが実施され、プライマー伸長産物はMALDI TOF MSを使用して分析される。
【0206】
KBiosciences
KBiosciencesは、遺伝子型判定に本発明者らの競合的アレル特異的PCRシステムの新規形態(KASPar)およびTaqman(商標)化学の両方を使用する。KASParアッセイは以前使用されたAmplifluorシステムに取って代わるために開発された自社独自の社内システムである。
【0207】
Taqmanアッセイ
TaqMan(登録商標)遺伝子型判定アッセイは、TaqMan(登録商標)試薬を基にした精密な化学でSNP遺伝子型判定を実施することを容易にする。TaqMan(登録商標)アッセイはSNP検出能力を提供する。その上、TaqMan(登録商標)Sample−to−SNP(登録商標)キットは単一のキットにより、任意の標本からTaqMan化学に基づいた遺伝子型判定解析を実施するための簡潔なプロトコルを提供する。該キットは:DNA抽出物全溶解試薬(DNA Extract All Lysis Reagents)とTaqMan(登録商標)GTXpress(登録商標)Master Mixの2つの部分からなる。DNA抽出物全溶解試薬はリアルタイムPCR−用のDNA遊離のための時間のかかる手順を5分間プロトコルに短縮させる。それらは血液から頬スワブまでの範囲の多様な標本を調製できる。TaqMan GTXpress Master Mixは50分未満でロバストなPCR増幅を可能にする。
【0208】
産業上の利用可能性
本明細書に記載の予測検定は、競走成功に関する高い、または低い遺伝的潜在性を有する個体を選択するために適用されてもよい。これらの検定はライフサイクルのいずれの段階、たとえば生後1日目(出生時)、販売前(すなわち、明け2歳、2歳など)、競走キャリア中(すなわち、2歳から)、繁殖中(すなわち、およそ25歳まで)においても個体に実施されうる。その上、母馬と種馬(stallion)の遺伝的素質に基づいて交配のための適切な種馬(stallion)−母馬の縁組みを選択するために、該検定が適用されてもよい。
【0209】
本発明は、添付の図面と関連した先に記載の態様に限定されず、構成および詳細が変更されてもよい。
【0210】
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付録I:TBE(エリート)対TBO(勝ち馬でない)関連検定。SNPはP値によって並べられた。
【0211】
【表26−1】

【0212】
【表26−2】

【0213】
【表26−3】

【0214】
【表26−4】

【0215】
【表26−5】

【0216】
付録II:TBE_SP(エリートスプリンター)対TBE_EN(エリートステイヤー)関連検定。SNPはP値によって並べられた。
【0217】
【表27−1】

【0218】
【表27−2】

【0219】
【表27−3】

【0220】
【表27−4】

【0221】
【表27−5】

【0222】
付録III:SNPと表現型の有意な関連
TBE−エリート(グループレース勝利)サラブレッド
TBO−その他(非勝利)のサラブレッド
TBE_SP8−<8fの距離の最適レースに勝利したエリート(グループレース勝利)サラブレッド
TBE_SP7−<7fの距離の最適レースに勝利したエリート(グループレース勝利)サラブレッド
TBE_EN−>8fの距離の最適レースに勝利したエリート(グループレース勝利)サラブレッド
SNPは遺伝子記号_クロモソーム位置(bp)によって示される。
【0223】
【表28】

【0224】
付録IV:ケース−コントロール関連検定および有意に関連するSNPの最良適合モデル
TBE対TBO(ケース−コントロール関連検定)P<0.05
【0225】
【表29】

【0226】
TBE対TBO 有意に関連するSNPに関する最良適合モデル
【0227】
【表30−1】

【0228】
【表30−2】

【0229】
【表30−3】

【0230】
TBE_SP7対TBE_EN(ケース−コントロール関連検定)P<0.05
【0231】
【表31】

【0232】
TBE_SP7対TB_EN 有意に関連するSNPに関する最良適合モデル
【0233】
【表32−1】

【0234】
【表32−2】

【0235】
TBE最適レース距離定量的形質関連
【0236】
【表33】

【0237】
TBE 有意に関連するSNPに関する最適レース距離平均値(距離はファーロングである)
【0238】
【表34−1】

【0239】
【表34−2】

【0240】
【表34−3】

【0241】
レーシングポストハンディキャップレーティング(最適RPR)定量的形質関連
【0242】
【表35】

【0243】
有意に関連するSNPに関するレーシングポストハンディキャップレーティング(最適RPR)平均値
【0244】
【表36】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MSTN遺伝子、COX4I2遺伝子、PDK4遺伝子、CKM遺伝子、またはCOX4I1遺伝子の中の1以上における一塩基多型(SNP)の存在に関して、対象に由来する生物学的標本をアッセイするステップを含む、対象の潜在的競技パフォーマンスを予測するための方法。
【請求項2】
SNPがMSTN_66493737(T/C)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Cアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ホモ接合CC遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
優れた競技パフォーマンスが優れた全力疾走パフォーマンスである、請求項2から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
SNPがCOX4I2_22684390(C/T)である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
Tアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ホモ接合TT遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
SNPがPDK4_38973231(A/G)である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
Aアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ホモ接合AA遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
SNPがCKM_15884567(G/A)である、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
Aアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ホモ接合AA遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
SNPがCOX4I1_32772871(T/C)である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
Tアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ホモ接合TT遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
対象の生物学的標本が、血液、唾液、骨格筋、体毛、精液、骨髄、軟部組織、内部臓器生検標本および皮膚を含む群から選択される、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
対象が競争レース種に由来する、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
対象がウマ科動物である、請求項1から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
対象がサラブレッド競走馬である、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
標本を得るステップ;
標本からDNAを抽出するか、または遊離させるステップ;および
抽出または遊離されたDNAにおける競技パフォーマンスに関連した遺伝子に由来する一塩基多型(SNP)標的配列を同定するステップ
を含み、対象の潜在的競技パフォーマンスが当該SNPと関連する、対象の潜在的競技パフォーマンスを測定するためのアッセイ。
【請求項23】
競技パフォーマンスに関連した遺伝子がMSTN、COX4I2、PDK4、CKMまたはCOX4I1の中の1以上から選択される、請求項22に記載のアッセイ。
【請求項24】
抽出または遊離されたDNAにおける競技パフォーマンスに関連した遺伝子に由来する標的配列を増幅するステップを、一塩基多型を同定するステップの前に含む、請求項22または23に記載のアッセイ。
【請求項25】
DNAがゲノムDNAである、請求項22から24のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項26】
MSTN遺伝子、COX4I2遺伝子、PDK4遺伝子、CKM遺伝子、またはCOX4I1遺伝子の内の1以上における一塩基多型(SNP)の存在を検出するための手段を含む、対象の潜在的競技パフォーマンスを測定することにおける使用のためのアッセイ。
【請求項27】
SNPがMSTN_66493737 (T/C)である、請求項22から26のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項28】
Cアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項27に記載のアッセイ。
【請求項29】
ホモ接合CC遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項27または28に記載のアッセイ。
【請求項30】
優れた競技パフォーマンスが優れた全力疾走パフォーマンスである、請求項27から29のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項31】
SNPがCOX4I2_22684390(C/T)である、請求項22から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
Tアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項31に記載のアッセイ。
【請求項33】
ホモ接合TT遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項31または32に記載のアッセイ。
【請求項34】
SNPがPDK4_38973231(A/G)である、請求項22から33のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項35】
Aアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項34に記載のアッセイ。
【請求項36】
ホモ接合AA遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項34または35に記載のアッセイ。
【請求項37】
SNPがCKM_15884567(G/A)である、請求項22から36のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項38】
Aアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項37に記載のアッセイ。
【請求項39】
ホモ接合AA遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項37または38に記載のアッセイ。
【請求項40】
SNPがCOX4I1_32772871(T/C)である、請求項22から39のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項41】
Tアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項40に記載のアッセイ。
【請求項42】
ホモ接合TT遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項41または42に記載のアッセイ。
【請求項43】
標本を得るステップ;
標本からDNAを抽出するか、または遊離させるステップ;および
抽出または遊離されたDNAにおけるMSTN_66493737(T/C)SNPの遺伝子型を確認するステップ
を含む、対象の競技潜在性を測定するためのアッセイであって、MSTN_66493737(T/C)SNPにおけるCアレルの存在が優れた競技パフォーマンスを示す、前記アッセイ。
【請求項44】
MSTN_66493737(T/C)SNPの遺伝子型を確認するステップの前に、抽出または遊離されたDNAにおいてMSTN_66493737(T/C)SNPをコードする標的配列を増幅するステップを含む、請求項43に記載のアッセイ。
【請求項45】
ホモ接合CC遺伝子型の存在が優れた競技パフォーマンスを示す、請求項43または44に記載のアッセイ。
【請求項46】
優れた競技パフォーマンスが優れた全力疾走パフォーマンスである、請求項43から45のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項47】
DNAがゲノムDNAである、請求項43から46のいずれかに記載のアッセイ。
【請求項48】
対象が競争レース種に由来する、請求項22から47のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項49】
対象がウマ科動物である、請求項22から48のいずれか1項に記載のアッセイ。
【請求項50】
対象がサラブレッド競走馬である、請求項22から49のいずれか1項に記載のアッセイ。

【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−501671(P2012−501671A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526627(P2011−526627)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/IE2009/000062
【国際公開番号】WO2010/029527
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(501339171)ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン,ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,ダブリン (7)
【Fターム(参考)】