説明

潜熱回収凝縮槽

【解決課題】 熱回収効率に優れた潜熱回収凝縮槽を提供する。
【解決手段】 凝縮タンク12の底部にガスが吹き出す孔を有する分散板13を備えた潜熱回収凝縮槽101であって、分散板13の下部に設けられた風箱14と、風箱を仕切って複数の区画16を形成する隔壁15と、区画16内にガスを注入するために区画ごとに設けられたガス注入手段17と、ガス注入管17から分散板13へ直接的にガスが流れるのを遮る壁18とを備え、複数の区画同士が、等圧化手段19により連通している潜熱回収凝縮槽である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜熱回収凝縮槽に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ、下水汚泥、産業用廃棄物、バイオマス等の有機系廃棄物からエネルギーを回収するために、廃棄物を加熱し熱分解ガスを生成し、生成されたガスをもとにエネルギーを生成する廃棄物ガス化システムが、環境保全および省資源の観点から注目されている。
【0003】
廃棄物ガス化システムのなかでも特に、高含水率有機物のガス化システムにおいてはまず、高含水率有機物の乾燥を行う必要がある。この乾燥熱源として、熱分解ガスに50〜60%含まれる水蒸気を凝縮させる際発生する潜熱を利用することが考えられ、潜熱回収手段を設けたガス化システムが開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
潜熱回収手段は、熱分解ガスに含まれる水蒸気を凝縮させ、凝縮水として循環水に取込み該循環水を蒸気発生器に送り込む潜熱回収ボイラ凝縮槽を含んでいる。
潜熱回収ボイラ凝縮槽においては、水蒸気を含む熱分解ガスが、凝縮タンクの底部に設けられた分散板の孔から気泡として継続的に吹き出している。この際凝縮水中に分散板各孔より、均等に気泡を発生させることが効率的な熱回収を行うために課題となっていた。
【特許文献1】特開2005−139443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱回収効率に優れた潜熱回収凝縮槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明に係る潜熱回収凝縮槽は、前記目的を達成するために、凝縮タンクの底部にガスが吹き出す孔を有する分散手段を備えた潜熱回収凝縮槽であって、前記分散手段の下部に設けられた風箱と、前記風箱を仕切って複数の区画を形成する区画化手段と、前記各区画内にガスを注入するために区画ごとに設けられたガス注入手段と、前記ガス注入手段から前記分散手段へ直接的にガスが流れるのを遮る障害物とを備え、前記複数の区画同士が、等圧化手段により連通している潜熱回収凝縮槽である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、凝縮タンク全体に均一なガスの気泡を形成することができ、よって効率的な凝縮が可能で熱回収効率に優れた潜熱回収凝縮槽を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。同じ部材には同じ符号を付して表した。なお、本発明は以下に説明する形態に制限されるものではない。
本発明の潜熱回収凝縮槽が適用されるガス化システムについてまず、図1に基づき説明する。
図1に示すように、ガス化システムは、処理対象を下水汚泥とし、汚泥乾燥機1、ガス化炉2、改質炉3、顕熱回収ボイラ4、潜熱回収ボイラ5、発電機6を備える。
処理対象である下水汚泥は、図示しない脱水手段により脱水され、間接加熱式の乾燥手段である汚泥乾燥機1に投入し、乾燥処理する。
乾燥処理した下水汚泥は、ガス化炉2において、600℃〜900℃で水蒸気と空気もしくはO2富化媒体もしくはO2を用いてガス化され、CO、H2、CO2、H2O、メタン、エタン、タール、すす等の熱分解ガスに変換する。
熱分解ガスは、改質炉3においてさらに低分子化され、水蒸気、H2、CO、CO2等を含む改質ガスとなり、顕熱回収ボイラ4に送られる。
顕熱回収ボイラ4は、改質炉3からの約1000℃の改質ガスの顕熱で高圧蒸気を発生させる顕熱回収手段である。ここで顕熱を回収された改質ガスは、150℃程度となり、潜熱回収ボイラ5に送られる。
【0009】
潜熱回収ボイラ5は、改質ガス中の水蒸気から潜熱を回収するための潜熱回収手段である。
潜熱回収ボイラ5は、改質ガスに含まれる水蒸気を凝縮させる循環水を湛えた凝縮タンクを擁する潜熱回収凝縮槽と、蒸気発生器とを備える。
潜熱回収凝縮槽において水蒸気と接触し潜熱を受け取った循環水は、蒸気発生器に送られ、熱交換によって低圧蒸気を発生する。低圧蒸気は、0.1〜1ataであり、典型的には約0.3ata、約69℃である。この低圧蒸気は、蒸気タービン7によって回転された蒸気圧縮機8に送られ、1〜10ataの中圧蒸気となって汚泥乾燥機1において乾燥に使用される。潜熱を回収された改質ガスは、洗浄され、さらに精製された後、発電機6に送られる。発電機6では、改質ガスを用いて発電が行われ、排出ガスは、煙突9から排出される。
【0010】
本発明は、上述したようなガス化システムにおける潜熱回収ボイラ5に関する発明であり、特に潜熱回収凝縮槽に関するものである。
図2に、本発明に係る潜熱回収凝縮槽の一実施の形態を概念的に示す。
潜熱回収凝縮槽101は、凝縮タンク12の底部に分散板13を備えたものである。
分散板13には、凝縮タンク12の底面全体に均一に改質ガスの気泡が吹き出すように、均一に孔が設けられている。
凝縮タンク12は水蒸気凝縮による潜熱を受け取るための約80℃の水で満たされているが、この水は、上記分散板13の孔から凝縮タンク12内にガスがある程度の流速で吹き込むことにより、後述する風箱14内に漏れ出さないようになっている。ガス流速は、通常、10m/s〜30m/s、より好ましい上限は、15m/sである。
分散板における孔の直径は、典型的には、1mm〜5mmである。また、分散板における孔の数はガス流速により決まり、典型的には、
10m/sのガス流速において、200個/m2〜6000個/m2である。分散板13としては、凝縮タンク12の底面をできるだけ広範囲に覆うような形状を有していることが好ましい。
【0011】
潜熱回収凝縮槽101は、該分散板13の下部に風箱14を備えたものである。
風箱14は、垂直に延びる隔壁15により分割され複数の区画16を形成している。区画16の数は、分散板のたわみ等が発生しない大きさもしくは分散板の強度によって決まり、好ましくは、4つ〜8つである。
前記複数の区画同士は、前記隔壁15の下端と風箱底面との間の空隙19により連通した構造になっている。これにより区画の内圧は均等となる。
空隙19は、風箱の高さの2分の1から4分の1、好ましくは3分の1程度設けることが好ましい。
また、空隙19に代えて、例えば、隔壁15に孔を設けてもよい。
【0012】
上記複数の区画16の各々には、区画16内にガスを注入するガス注入管17が設けられている。
ガス注入管17は、そのガス出口部に、邪魔板を備えている。
この邪魔板により、前記ガス注入手段から前記分散板への直接的なガス流れを遮ることができる。
なお、図3に示すように、邪魔板に代えて、ガス注入管の先端にガス流れ21が衝突する壁18を設け、さらにガス注入手段17が角柱形状を有する場合は、側面四方向にガスが吹き出す孔22を設けた構造にすることも可能である。
各区画にガス注入手段17および邪魔板18を設けることにより、凝縮タンク12の底部全体に水蒸気を含む改質ガスが吹き出すようにすることができる。
【0013】
以上の構成を備えた潜熱回収凝縮槽101は、分散板13の各孔より均一に改質ガスを噴出し、気泡を発生させることができ、改質ガス中に含まれる水蒸気を凝縮タンク12で効率的に凝縮させることができる。
【0014】
このような潜熱回収凝縮槽は、凝縮タンクへの改質ガスの吹き込みにより、Na2S、タール等を含むと考えられるスカムと呼ばれる浮遊固形物が生じる可能性がある。そこでこのような浮遊固形物の除去について対策を講じた実施の形態を図4に示す。
【0015】
図4に示す実施の形態では、潜熱回収凝縮槽は、凝縮タンク12内の水がオーバーフローして供給される一時貯水部31を備えている。
一時貯水部31に流入した水は、凝縮タンク12で水蒸気潜熱を受け取った水であることから温度が上昇しており、循環水輸送管34を通して蒸気発生器に輸送される。循環水輸送管34は、図4では、一時貯水部31下部に接続しているが、後述するオーバーフロー排出管33より低い位置に接続していればよい。
【0016】
潜熱回収凝縮槽は、さらに、前記一時貯水部31の水面部分の水を吸引するオーバーフロー排出管33を一時貯水部31と接続するように備えている。
オーバーフロー排出管33と一時貯水部31との接続位置38が、凝縮タンク12と一時貯水部31とを隔てる隔壁32より低い場合、隔壁32の高さが凝縮水のオーバーフローライン35を規定する。
一方、上記接続位置が、隔壁32の高さと同じか、隔壁32より高い場合、上記接続位置が凝縮水のオーバーフローライン35を規定することになる。即ち、オーバーフローライン35を隔壁32より高くすることができる。
後者の構成は、凝縮タンクで生じた固形浮遊物の一時貯水部への移動が隔壁32によって妨げられることがなくなるので好ましい。
ここで、上記接続位置38は、隔壁32より、1cm〜50cm高くすることが望ましい。
オーバーフロー排出管33は、オーバーフローした水とともにスカムが流れるように一時貯水部31との接続位置38から下方に傾斜して伸びており、その傾斜角度は、通常、凝縮する水量もしくは排水量及びオーバーフローライン35の管径により規定される。
【0017】
以上の構成によれば、凝縮タンクで生成したスカムは、ガスが吹き出さない一時貯水部側に引き寄せられ、オーバーフローライン35を超える水とともにオーバーフロー排出管33から排出タンク37へと排出される。
よってスカムが凝縮タンク12内に残留し、水蒸気の凝縮を妨げたり、循環水輸送管34から蒸気発生器へ送られ、熱交換を妨げたりするのを防止することができる。
【0018】
また、水面上の浮遊固形物が循環水に混入してポンプ・計器等が故障する心配がなくなり、浮遊固形物が計測機器や凝縮糟の側面等に付着し、腐食することも防止できるので、メンテナンスコストの低減につながることに加え、凝縮槽制御装置等が不要となり、製作コストが削減される。
さらに、潜熱回収凝縮槽から蒸気発生器を経て、再度潜熱回収凝縮槽に循環する水の量を一定に保つことができる。
【0019】
前記オーバーフロー排出管33は、管の途中に二重バルブ36を備えていることが好ましい。
二重バルブ36を備えることにより、有毒ガスを含む改質ガスが系外に漏出するのを防ぐことができ、潜熱回収ボイラが運転中であっても排水タンク37に溜まった固形浮遊物の継続的な除去が可能となる。
【0020】
本発明の潜熱回収凝縮槽は、全体の部材としてSUS304等のステンレス材を用いるが、凝縮タンクや一時貯水部の内面等、蒸発器の凝縮水の触れる部分においては、酸腐食もしくは応力腐食割れを防ぐため、ステンレス材の表面にコーティング層を有するものであることが好ましい。
前記コーティング層は、フッ素樹脂等の耐酸性材料を含むものであることが好ましい。
前記コーティング層は、1つの実施の形態として、凝縮水との接触面全体に形成する。凝縮水との接触面とは、凝縮タンクや一時貯水部の内面全体のほか、図4に示す隔壁32外表面を含む。
前記コーティング層は、他の実施の形態として、凝縮タンクや一時貯水部の腐食のおそれが特に大きいオーバーフローライン近傍のみに形成する。この形態によれば製造コストとの兼ね合いでコーティング層の形成部位を他の部位に広げていくことになる。
このように凝縮水との接触面をコーティングすることでステンレス材の酸腐食もしくは応力腐食割れを防ぐことができ、さらには該酸腐食もしくは応力腐食割れの防止に従来使用している苛性ソーダ等の薬品の使用量を削滅することができ、運転コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る潜熱回収凝縮槽を採用しうるガス化システムの一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明に係る潜熱回収凝縮槽の分散板下部に設けられた風箱構造の一例を示す概念的断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る潜熱回収凝縮槽のガス注入手段の一例を示す概念的断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る潜熱回収凝縮槽の一実施の形態を示す概念的断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 汚泥乾燥機
2 ガス化炉
3 改質炉
4 顕熱回収ボイラ
5 潜熱回収ボイラ
6 発電機
7 蒸気タービン
8 蒸気圧縮機
9 煙突
12 凝縮タンク
13 分散板
14 風箱
15 隔壁
16 区画
17 ガス注入管
18 壁
19 空隙
22 孔
31 一時貯水部
32 隔壁
33 オーバーフロー排出管
34 循環水輸送管
35 オーバーフローライン
36 二重バルブ
37 排水タンク
38 接続位置
101 潜熱回収凝縮槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮タンクの底部に水蒸気を含むガスが吹き出す孔を有する分散手段を備えた潜熱回収凝縮槽であって、
前記分散手段の下部に設けられた風箱と、
前記風箱を仕切って複数の区画を形成する区画化手段と、
前記区画内にガスを注入するために区画ごとに設けられたガス注入手段と、
前記ガス注入手段から前記分散手段へ直接的にガスが流れるのを遮る障害物とを備え、前記複数の区画同士が、等圧化手段により連通している潜熱回収凝縮槽。
【請求項2】
前記等圧化手段が、前記区画化手段に設けられた孔であることを特徴とする請求項1に記載の潜熱回収凝縮槽。
【請求項3】
前記等圧化手段が、前記区画化手段下部を開けることによって生じる空隙であることを特徴とする請求項1に記載の潜熱回収凝縮槽。
【請求項4】
前記障害物が、邪魔板であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の潜熱回収凝縮槽。
【請求項5】
前記凝縮タンク内の水がオーバーフローして供給される一時貯水部と、前記一時貯水部の水面部分の水を吸引するオーバーフロー排出管とをさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の潜熱回収凝縮槽。
【請求項6】
更に、前記オーバーフロー排出管が、二重バルブを備えたことを特徴とする請求項5に記載の潜熱回収凝縮槽。
【請求項7】
凝縮水との接触面が、コーティング層を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の潜熱回収凝縮槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−232279(P2007−232279A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54853(P2006−54853)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度〜平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)