説明

潤滑グリースの油分離性を求める試験方法及びこれを実施する試験装置

【課題】潤滑グリースの油分離性を以前よりも正確に検出することができる試験方法及び当該試験方法を実施する試験装置を提供する。
【解決手段】所定の試験期間(32)にわたって潤滑グリース(27)を充填した試験容積部(2)に所定の試験圧力を加え、試験容積部(2)の潤滑グリース(27)を油吸収又は油分離要素(11)と接触させ、試験期間(32)の終わりに油吸収又は油分離要素(11)によって潤滑グリース(27)から分離された油(29)の吸収又は分離に基づいて試験容積部(2)の変化を検出する。潤滑グリースの油分離性をより正確に推定することができるように、油分離を表す試験容積部(2)の変化の時刻歴が試験期間(32)にわたって検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法であって、所定の試験期間中に潤滑グリースを充填した試験容積部に所定の試験圧力を加え、試験容積部の潤滑グリースを油吸収又は油分離要素と接触させ、試験期間の終わりに油吸収又は油分離要素によって潤滑グリースから分離された油の吸収又は分離に基づいて試験容積部の変化を検出する、試験方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置であって、潤滑グリース試料を収容する試験容積部と、試験容積部に所定の試験圧力を加えることができるように設計される、試験容積部を制限する圧力ピストンと、油を吸収又は分離するために試験容積部に結合される油吸収又は油分離要素と、試験容積部の変化を表す量を測定することができる測定手段とを備える、試験装置に関する。
【背景技術】
【0003】
集中注油システムでは、潤滑グリースが、中央容器から案内システムを介して複数の注油点に導かれる。集中注油システムは、所定量の潤滑グリースを種々の注油点に分配する潤滑グリース送出装置、例えば絞り弁を備える。潤滑グリースは、本質的に、固相の増ちょう剤及び液相の油から成る。両方の相が、潤滑グリースの製造プロセス中に互いに適度且つ持続的に混合又は結合される。
【0004】
集中注油システムでは、個々の注油間隔間にシステム内の残留圧力によって潤滑グリースのいわゆるブリードが生じると、故障が生じる可能性がある。ブリード中に、油及び増ちょう剤は或る程度分離される。油はそのちょう度に起因して、例えばシール隙間を通って逃げる可能性があるため、増ちょう剤が残され、最悪の場合、例えば潤滑グリース送出装置を塞ぐことによって集中注油システムの故障を引き起こす。これにより、潤滑対象の機械又はシステムの停止期間が生じ、それに対応して生産の損失、予定外の保守作業等といった結果が伴う。場合によっては、潤滑グリース送出装置を交換しなければならないが、これはアクセスし難い箇所にある可能性がある。
【0005】
潤滑グリースの油分離に起因した集中注油システムの故障を回避するために、潤滑グリースは、集中注油システムで用いられる前にその油分離性を試験される。
【0006】
ドイツ国実用新案第9416284号には、潤滑グリースの油分離性を試験することができる試験装置が記載されている。ドイツ国実用新案第9416284号に記載されている試験装置では、潤滑グリースが集中注油システムでの使用に適しているか否かを検出することができる。
【0007】
実際には、ドイツ国実用新案第9416284号の装置を用いた試験方法は、潤滑グリースが集中注油システムでの使用のために予め決定された油分離性の限界値を超えるか否か、したがって集中注油システムで用いるのに概ね適しているか否かを示すステートメントを提供する。しかしながら、全ての集中注油システムが同等であるわけではなく、ドイツ国実用新案第9416284号による方法では、潤滑グリースが例えば特に短い注油間隔を有する集中注油システムでもなお適しているか否かを示す具体的なステートメントは提供されない。分離性がさまざまでもできる限り多くの種類の潤滑グリースを供給することができるように、油分離性の高い潤滑グリースを集中注油システムでいつ用いることができるかを知ることが望まれる。
【発明の開示】
【0008】
したがって、本発明の目的は、潤滑グリースの油分離性を以前よりも正確に検出することができる試験方法及び当該試験方法を実施する試験装置を提供することである。
【0009】
この目的は、本発明による試験方法において、油分離を表す試験容積部の変化の時刻歴を試験期間にわたって検出することで果たされる。
【0010】
本発明による試験装置において、この目的は、試験容積部の変化の時刻歴の検出に用いることができる信号を伝送するために測定手段に接続される監視手段によって果たされる。
【0011】
本発明による解決手段の利点は、油分離を表す試験容積部の変化の時刻歴を用いて、集中注油手段における潤滑グリースの最大許容滞留時間を求めることができることである。この最大許容滞留時間から、集中注油システムの供給時間及び休止時間等の時間を制御するためのプリセット値を得ることができる。したがって、注油システムの最大許容滞留時間を超えなければ、油分離性の高い潤滑剤であっても用いることができる。
【0012】
本発明による試験方法及び本発明による試験装置は、それぞれ単独で有利である種々の独立した実施形態によってさらに発展させることができる。以下では、これらの実施形態及び実施形態に関連するそれぞれの利点を簡単に説明する。
【0013】
本発明による試験方法では、試験容積部の容積変化を、試験容積を表す量を測定することによって検出することができる。その利点は、本発明による試験方法を、ほぼ不可能である直接容積測定と同じ精度でより容易に実施することができることである。試験装置の圧力ピストンが試験容積部の容積変化に従うため、代表的な量として、例えば圧力ピストンの相対運動を監視することができる。
【0014】
集中注油システムを制御するのに使用可能なパラメータを得るために、油分離が所定の限界値を超える限界時点を時刻歴から求めることができる。さらに、試験容積部の変化の時刻歴及び限界時点は、後でアクセスできるように記憶させることができる。
【0015】
圧力及び/又は温度に依存した油脂の油分離性を検出するために、試験容積部内の潤滑グリースの試験圧力及び/又は温度を試験期間内でほぼ一定に維持することができる。
【0016】
異なる温度及び/又は試験圧力に関して潤滑グリースの油分離性を求める試験方法では、温度及び/又は試験圧力を変えて、上述の方法を種々の実施形態で繰り返すことができる。経時的な潤滑グリースの油分離性に関する曲線群及び種々の限界時点を検出することができ、この場合、各曲線及び各限界時点が特定の温度及び特定の試験圧力を示す。これらの具体的な限界時点を用いて、集中注油システムを制御することができる。
【0017】
本発明による試験装置の有利な実施形態では、監視手段は、油分離が所定の限界値を超える限界時点を検出するように設計され得る。その利点は、限界時点を集中注油システムの制御パラメータとして利用できることである。
【0018】
さらに、試験装置は、試験容積部の所定の温度を調整する温度制御手段を備え得る。その利点は、潤滑グリース試料の試験を種々の予め決定可能な温度で実施することができ、したがって油分離性の温度依存性に関するステートメントを生成することができることである。温度制御手段は、潤滑グリース試料の入った試験容積部の温度のみを制御してもよく、又はたとえば試験装置が配置されている空間全体の温度を制御してもよい。
【0019】
さらに、監視手段は、試験容積部の変化の時刻歴及び限界時点を記憶及び/又は表示することができる記憶手段及び/又は表示手段を備え得る。
【0020】
試験中に必要な試験圧力を発生させるために、試験装置は、ほぼ一定の力を圧力ピストンに加えることができる力要素を備え得る。このような力要素は、例えば、空気圧シリンダ、錘、又はばねであり得る。
【0021】
有利なさらなる実施形態では、監視手段は、測定手段の測定値、すなわち圧力ピストンの位置から、測定曲線を生成することができる。その利点は、測定手段が例えば5分ごとに測定値を出す場合でも、特定の油分離量を測定曲線からいつでも読み出すことができることである。測定曲線は、例えば補間によって生成することができ、例えば平滑化することができる。したがって、限界時点をより正確に求めることができる。さらに、監視手段は、1つの潤滑グリースに関してそれぞれ異なる試験温度及び/又は試験圧力で検出された複数の測定曲線から、1つの曲線群を生成することができる。このような潤滑グリースの曲線群から、例えば、残留圧力レベル、潤滑グリースの滞留時間、及び潤滑グリース温度に依存した注油間隔の頻度等、集中注油システムの制御パラメータを決定することができる。
【0022】
上述の試験方法及び試験装置の他に、本発明は、集中注油システムを制御する方法にも関し、この方法では、注油間隔ごとに特定量の潤滑剤を潤滑剤ラインを通して複数の注油点に供給する。油分離に起因した集中注油システムの故障を伴わない油分離性を有する潤滑グリースを用いることができるように、本発明は、限界時点、すなわち、時間閾値に依存した注油間隔間の時間距離の制御を提供する。
【0023】
集中注油システムにおける潤滑グリースの油分離をさらにより確実になくすことができるように、注油間隔の時間距離は、集中注油システムにおける潤滑グリースの温度及び/又は圧力に依存して制御され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、添付図面を参照して本発明を一例として説明する。個々の有利な実施形態に関してすでに上述したように、種々の特徴を独立して組み合わせることができる。
【0025】
まず、図1及びそこに示されている例示的な実施形態を参照して、本発明による試験装置1の全体的構成を説明する。
【0026】
試験装置1は、試験容積部2、試験容積部2を画定する圧力ピストン3、測定手段4、及び信号を伝送するために測定手段4に接続される監視ユニット5を備える。
【0027】
円筒形の試験容積部2は、シリンダボア7を有する試験シリンダ6内に形成される。試験室に相当する試験容積部2の上端は、シリンダボア7内に配置された圧力ピストン3によって制限、すなわち、画定ないし境界される。図1の実施形態では、試験シリンダ6は、縦軸Lを中心に回転対称に形成され、縦軸Lをほぼ横切って延びる平面状の表面8、9を有する。縦軸Lを横切る方向に試験シリンダ6内に除去用ボア10が形成され、シリンダボア7内で終端する。図1の実施形態では、除去用ボア10は、試験シリンダ6の外周からシリンダボア7に向かって段階的に先細になる。
【0028】
試験容積部2は、圧力ピストン3とは反対側の端が油吸収又は油分離要素11によって画定される。油吸収又は油分離要素11は、圧力ディスク13のポケット12に収容される。ディスク形の油吸収又は油分離要素11は、試験シリンダ6の下側の表面9の外径D2よりも大きな外径D1を有するため、試験シリンダ6から外側に突出する。油吸収又は油分離要素11は、縦軸Lの方向で試験シリンダ6と圧力ディスク13との間に配置される。図1の実施形態では、圧力ディスク13は、縦軸Lの方向に作用する力F1によって試験シリンダ6に押し付けられるため、油吸収又は油分離要素11は、圧力ディスク13と試験シリンダ6との間に挟まれる。圧力ディスク13は、ねじ等の締結手段(図示せず)を用いて試験シリンダ6に接続することができる。
【0029】
図1の実施形態では、油吸収又は油分離要素11は、例えば濾紙等の吸収材料から丸いフィルタ要素として作製される。代替的に、油吸収又は油分離要素11は、分離油を吸収するか又は試験容積部2から分離油を導き出すことができる任意の吸収材料製にすることができる。別の代替例として、油分離要素11は、油を逃がすことができ且つ/又は潤滑グリースを保持する隙間として形成することもできる。
【0030】
試験容積部2の上部を制限する圧力ピストン3は、ほぼ円筒形であり、試験容積部2に隣接するピストン領域30、ノズルボア15、交差孔16、及び弁ユニット14を備える。縦軸L上に延びるノズルボア15は、縦方向Lを横切って延びる交差孔16で終端する。弁ユニット14は、交差孔16とノズルボア15との間のこの終端領域に形成され、図1の位置では、ノズルボア15と交差孔16との間の接続部を閉じている。弁ユニット14は、弁リフタ17及び弁座18を備える。弁リフタ17は、縦方向L上に延びる圧力ピストンの弁ボア19内に配置され、ねじ山20を用いて圧力ピストン3に接続される。回転21によって、弁リフタ17は、縦軸Lに沿って圧力ピストン3と相対的に、ねじ山20を用いて往復移動すなわち弁座18に出入りさせることができる。したがって、弁ユニット14によって、ノズルボア15と交差孔16との間の接続部を開閉することができる。圧力ピストン3は、図1に示す第1のストローク位置で交差孔16が除去用ボア10と一致するように、試験シリンダ6に対して向けられる。第1のストローク位置では、ほぼ平面状のピストン領域30から油吸収又は油分離要素11までの距離はH1である。
【0031】
圧力ピストン3は、直線移動可能であるようにシリンダボア7内に縦方向Lに沿って配置される。圧力ピストン3の外径は、シリンダボア7の内径とほぼ等しいように形成されるため、試験容積部2から潤滑グリースがほぼ全く逃げることができず、試験圧力を一定に保つことができる。シリンダボア7は、圧力ピストン3の案内面としての役割を果たす。
【0032】
試験装置1の測定手段4は、図1の実施形態では試験シリンダ6の上側の表面8上に配置される。測定手段4は、固定部分22及び固定部分22に対して縦方向Lに沿って移動可能である可動部分23を備える。それぞれが運動を伝達するために、固定部分22は試験シリンダ6に接続され、可動部分23は圧力ピストン3に接続される。測定手段4は、長さ測定手段、例えば市販のインクリメンタル又はアナログストローク測定システムとして形成され、圧力ピストン3と試験シリンダ6との相対運動を検出する。
【0033】
測定手段4は、信号を伝送するために接続線24を介して監視ユニット5に接続される。監視ユニット5は、制御ユニット40、表示手段25、及び記憶手段26を備える。制御ユニット40は、測定手段4の信号を処理し、表示手段25及び記憶手段26に接続される。表示手段25は、測定手段4の測定信号をグラフ表示するものであり、例えばモニタである。記憶手段26は、後でアクセス又は処理するために測定手段4の測定信号又はグラフ表示を記憶する。記憶手段26は、例えばハードディスク記憶装置である。監視ユニット5は、例えば、測定手段4がインタフェースコンバータを介して接続されるPCである。測定信号は、PCに、例えば表計算ソフトウェアに書き込んで、このソフトウェアを用いてグラフ表示させることができる。
【0034】
試験装置1は、試験容積部2内の温度を所定の可変温度に保つ温度制御手段39をさらに備える。図1では、温度制御手段39は、試験装置1全体の温度を制御する。代替的に、試験容積部2の温度のみが制御されてもよい。
【0035】
試験装置1の動作中、本発明による試験方法を実施するために、試験容積部2には、図1に示すように試験対象の潤滑グリース27が充填される。ここで、圧力ピストン3を図1に示す開始位置に移動させる。試験容積部2は、弁ユニット14が閉じられて図1に示すピストン位置にある状態で(H1)、充填のために試験シリンダ6の底部を開いて前方に枢動させることによって充填することができる。充填後、シリンダ6を図1に示す位置に再び枢動させて、圧力ディスク13内の油分離要素11でシールする。
【0036】
次に、例えば空気圧シリンダ、錘、又はばねによって圧力ピストン3にほぼ一定の力F2を加えることによって、試験作業を開始させる。したがって、ほぼ一定の試験圧力が、潤滑グリース27の入った試験容積部2に加えられる。所定の試験期間、例えば24時間にわたり、試験容積部2の試験圧力がほぼ一定に保たれる。温度制御手段39によって、試験容積部2内の潤滑グリース試料27の温度も一定に保たれる。
【0037】
潤滑グリースは、本質的に、固相の増ちょう剤及び液相の油から成る。両方の相が、潤滑グリースの製造プロセス中に互いに適度且つ持続的に混合又は結合される。圧力の影響下で、2つの相は或る程度分離され得る。この分離が油分離と呼ばれる。潤滑グリース試料27の油分離及び油分離が所定の限界値HGを超える時点Tが、試験装置1を用いる本発明による試験方法によって試験期間にわたって検出される。限界値HGを上回る油分離は、集中注油システムの動作にとって危険であり得る。
【0038】
図2は、試験期間の終わりにおける本発明による試験装置1を示す。図1に対して、図2の試験容積部2では、軟質のままの潤滑グリース27及びすでに硬化した潤滑グリース28の層が形成されている。さらに、ポケット12内には、分離された油29が油吸収又は油分離要素11の周囲に回収されている。圧力ピストン3は、ピストン領域30から油吸収又は油分離要素11までの距離がH2である図2のストローク位置にある。試験期間の終わりにおける距離H2は、ピストン領域30が図1の試験期間の始めにあった距離H1よりも小さい。
【0039】
試験期間内では、測定手段4は継続的に、圧力ピストン3の位置を検出してそれを測定信号として監視ユニット5に伝送している。監視ユニット5は、測定手段4の測定信号を処理して測定曲線を形成している。
【0040】
図3は、同じく試験期間の終了後の、但し図2では入ったままである軟質の又は流動自在な潤滑グリース27が試験容積部2から除去された位置にある、本発明による試験装置1を示す。このために、図2の位置では、シートバルブ14が開いており、交差孔16の上の圧力ピストン3の外径が細くなっているため、ノズルボア15は除去用ボア10と接続される。力F2が圧力ピストン3に作用したままであり、したがって圧力が試験容積部2内の潤滑グリース27に加わったままであるため、潤滑グリース27は除去用ボア10から逃げ、圧力ピストン3は、硬化して流動自在ではなくなった潤滑グリースのみが試験容積部2内にある図3に示す位置に移動する。図3では、ピストン領域30から油吸収又は油分離要素11までの距離はH3である。距離H3は、距離H2及びH1よりも小さい。図3に示す試験装置1の位置では、硬化して流動自在ではなくなった潤滑グリースのみが試験容積部2内にあり、ピストン領域30は硬化した潤滑グリース28から成る栓の上に載る。したがって、高さH3は、試験容積部2内の硬化した潤滑グリース28から成る栓の高さに相当する。続いて、硬化高さH3及び油分離を示す高さH2が、総容積を示す高さH1と関連付けられる。こうして、潤滑グリースの増ちょう剤の推定割合が計算される。
【0041】
図4は、2つの試験作業中に監視ユニット5によって記録された2つの測定曲線31、31’を示す。測定曲線31、31’は、ピストン行程又は油分離が縦座標であり時間が横座標である座標系で、図4のグラフに示される。測定曲線31は、試験期間32内のピストンの行程を示す。図4に示す測定曲線31、31’はそれぞれ、2つの異なる潤滑剤のピストン行程の時刻歴の関数として、経時的に増加する油分離を示す。さらに、例えば、異なる温度及び/又は試験圧力での他の試験を同じ潤滑剤に関して実施してもよい。
【0042】
図4には、実験によって求められた辛うじて許容可能な油分離を示す限界値HGが示されている。潤滑剤Aの測定曲線31’は、表示期間中は常に限界値HGよりも下にある。したがって、この潤滑剤は、油分離に関して危険ではないと分類することができ、油分離性を求める既知の試験方法によっても許容可能であると分類されていたであろう。別の潤滑剤Bの測定曲線31は、時点Tで限界値HGを超える。本発明による試験方法で油分離の時刻歴及び時点Tを求めることで、時点Tに達するまで限界値HGを超えずに集中注油システムに潤滑剤Bを供給できることが示される。既知の試験方法によれば、潤滑剤Bは、試験期間32の終わりにおいて限界値HGを超えるため、集中注油システムで使用不可能であると分類されていたであろう。
【0043】
図5は、潤滑剤ポンプ38’を用いて容器36から潤滑剤ライン41を介して複数の注油点37に潤滑グリース27を導く絞り弁35を有する、本発明による集中注油システム34の概略図を示す。集中注油システム34は、例えば絞り弁35に潤滑グリースを供給するポンプ38’内に組み込むことができる制御ユニット38をさらに備える。図5の潤滑グリース27は、図4の測定曲線31を有する上述の潤滑剤Bである。潤滑グリース27の集中注油システム34内での過剰なブリード、すなわち油分離を防止するために、個々の注油間隔間の時間距離が、図4のグラフから読み出すことができるパラメータを用いて制御される。注油間隔間の時間は、例えば、潤滑グリースの油分離が限界値HGを超える時点Tよりも短くなるように選択される。時点Tは、図4のグラフから求められて、制御パラメータとして制御ユニット38に入力してある。制御ユニット38は、集中注油システム34内の温度及び圧力を検出するため、それぞれの測定曲線を求めることができる異なる温度及び圧力に関して、関連する危険な時点Tのそれぞれを入力して用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の位置での本発明による試験装置の概略図である。
【図2】図1の本発明による試験装置を第2の位置で示す図である。
【図3】図1及び図2の試験装置を第3の位置で示す図である。
【図4】図1〜図3の試験装置で検出される潤滑グリースの油分離のグラフである。
【図5】本発明による集中注油システムの概略図である。
【符号の説明】
【0045】
2 試験容積部
3 圧力ピストン
4 測定手段
5 監視ユニット
11 油分離要素
26 記憶手段
27 潤滑グリース
29 分離された油
32 所定の試験期間
34 集中注油システム
39 温度制御手段
41 潤滑剤ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の試験期間(32)中に潤滑グリース(27)を充填した試験容積部(2)に所定の試験圧力を加え、前記試験容積部(2)の前記潤滑グリース(27)を油吸収又は油分離要素(11)と接触させ、前記試験期間(32)の終わりに前記油吸収又は油分離要素(11)によって前記潤滑グリース(27)から分離された油(29)の吸収又は分離に基づいて前記試験容積部(2)の変化を検出する、圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法において、
油分離を表す前記試験容積部(2)の変化の時刻歴を前記試験期間(32)にわたって検出することを特徴とする、圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法。
【請求項2】
油分離が所定の限界値(HG)を超える限界時点(T)が、前記時刻歴から求められることを特徴とする、請求項1に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法。
【請求項3】
前記試験容積部(2)の変化の前記時刻歴及び/又は前記限界時点(T)は、記憶されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法。
【請求項4】
前記試験容積部(2)の容積変化が、前記試験容積部(2)を表す量(H)を測定することによって検出されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法。
【請求項5】
前記潤滑グリース(27)の試験圧力及び/又は温度が、前記試験期間(32)内でほぼ一定に保たれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験方法。
【請求項6】
それぞれ温度又は試験圧力を変えて、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法が繰り返されることを特徴とする、潤滑グリースの温度及び/又は圧力に依存した油分離性を求める試験方法。
【請求項7】
潤滑グリース試料(27)を収容する試験容積部(2)と、該試験容積部(2)を制限して、該試験容積部(2)に所定の試験圧力を加えることができるように該試験容積部(2)を構成する圧力ピストン(3)と、油を吸収又は分離するために前記試験容積部(2)に結合される油吸収又は油分離要素(11)と、前記試験容積部(2)の変化を表す量(H)を測定することができる測定手段(4)とを備える、圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置(1)において、
前記試験容積部(2)の変化の時刻歴の検出に用いることができる信号を伝送するために前記測定手段(4)に接続される監視ユニット(5)を備えたことを特徴とする、圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置。
【請求項8】
前記監視ユニット(5)は、油分離が所定の限界値(HG)を超える限界時点(T)を検出するように設計されることを特徴とする、請求項7に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置。
【請求項9】
前記監視手段(5)は、前記試験容積部(2)の変化の前記時刻歴及び/又は前記限界時点(T)を記憶することができる記憶手段(26)を備えることを特徴とする、請求項7又は8に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置。
【請求項10】
前記監視手段(5)は、前記試験容積部(2)の変化の前記時刻歴及び前記限界時点(T)を表示することができる表示手段(25)を備えることを特徴とする、請求項7から9のいずれか1項に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置。
【請求項11】
前記試験容積部(2)の所定の一定温度を調整する温度制御手段(39)を備えることを特徴とする、請求項7から10のいずれか1項に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置。
【請求項12】
温度を可変調整することができることを特徴とする、請求項11に記載の圧力荷重下での潤滑グリースの油分離性を求める試験装置。
【請求項13】
注油間隔ごとに所定量の潤滑グリースを潤滑剤ライン(41)を通して複数の注油点(37)に供給する、集中注油システム(34)を制御する方法において、
前記注油間隔間の時間距離が、前記潤滑グリースの油分離の時刻歴が所定の限界値(HG)を超える限界時点(T)に応じて制御されることを特徴とする、集中注油システムを制御する方法。
【請求項14】
前記注油間隔間の前記時間距離は、前記集中注油システム(34)における温度及び/又は圧力に応じて制御されることを特徴とする、請求項13に記載の集中注油システムを制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−89596(P2008−89596A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−257444(P2007−257444)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(504238150)ヴィリー フォーゲル アクティエンゲゼルシャフト (5)