説明

潤滑剤塗布装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】ブラシローラ長手方向での潤滑剤粉の偏在を低減し潤滑剤塗布ムラを低減できる潤滑剤塗布装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】固形潤滑剤と、複数の起毛が帯状のシート上に植毛された植毛ブラシシートを棒状の芯部材の周面に螺旋状に巻き付けた回転可能なブラシローラとを備え、ブラシローラが回転して固形潤滑剤を掻き取った後、塗布対象物の表面に固形潤滑剤の削れ粉を塗布する潤滑剤塗布装置において、ブラシローラ長手方向で一端側から他端側に向かって徐々にブラシローラの外径が大きくなるように、起毛の毛足長さが前記一端側から前記他端側に向かう螺旋方向で長くなっており、ブラシローラの外径が最小径となる位置の起毛の毛足長さをL1とし、ブラシローラの外径が最大径となる位置の起毛の毛足長さをL2としたとき、0<{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に用いられる潤滑剤塗布装置、並びに、その潤滑剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の画像形成装置に設けられた潤滑剤塗布装置は、像担持体である感光体の表面に接触し回転可能に設けられた潤滑剤塗布部材であるブラシローラや、ブラシローラに接触させて設けられた固形潤滑剤などを備えている。また、ブラシローラとしては、棒状の芯金に帯形状の植毛ブラシシートを重なり合わないように螺旋状に巻き付けたものが用いられている。
【0003】
図7は複数の起毛341が帯状のシート340上に植毛された植毛ブラシシート304の正面図であり、図8は植毛ブラシシート304を棒状の金属製芯部材である芯金301の周面に螺旋状に巻き付けたブラシローラ300の一例を示した模式図である。ブラシローラ300は、芯金301の表面に両面粘着テープ307の裏面を貼り付け、その両面粘着テープ307のおもて面に植毛ブラシシート304を図中の螺旋始まり側から螺旋終わり側に向かって左巻きで重なり合わないように螺旋状に巻き付けている。そして、矢印C方向に回転する潤滑剤塗布ブラシローラ300により、植毛ブラシシート304の起毛341によって固形潤滑剤303から潤滑剤が徐々に削り取られて、削り取られた固形潤滑剤の削れ粉である潤滑剤粉が塗布対象物である感光体302の表面に塗布される。潤滑剤粉が塗布された感光体302の表面は、トナーとの物理的な付着力を弱めることで、転写体へのトナー像の転写性を向上させたり、トナーの除去性を向上させたり、自らに対するトナー固着を抑えたりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8に示したようなブラシローラ300では、芯金301に植毛ブラシシート304を重なり合わないように螺旋状に巻付けているので、植毛ブラシシート304のシート間に隙間溝305が生じてしまう。また、潤滑剤粉はその殆どが感光体302の表面に塗布されるが、一部の潤滑剤粉が感光体302の表面に塗布しきれずにブラシローラ300の起毛間やブラシローラ周辺部に滞留する。そして、このように滞留した潤滑剤粉は、ブラシローラ300の回転に伴って隙間溝305を通ってブラシローラ長手方向一端側である螺旋始まり側から他端側である螺旋終わり側に移動する。そのため、潤滑剤粉がブラシローラ長手方向で螺旋終わり側に偏在してしまい、感光体302の表面全域にわたって潤滑剤を均一に塗布できなくなり、潤滑剤塗布ムラが発生するといった問題が生じる。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、ブラシローラ長手方向での潤滑剤粉の偏在を低減し潤滑剤塗布ムラを低減できる潤滑剤塗布装置、並びに、その潤滑剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、固形潤滑剤と、複数の起毛が帯状のシート上に植毛された植毛ブラシシートを棒状の芯部材の周面に螺旋状に巻き付けた回転可能なブラシローラとを備え、前記ブラシローラが回転して前記固形潤滑剤を掻き取った後、塗布対象物の表面に該固形潤滑剤の削れ粉を塗布する潤滑剤塗布装置において、ブラシローラ長手方向で一端側から他端側に向かって徐々に前記ブラシローラの外径が大きくなるように、前記起毛の毛足長さが前記一端側から前記他端側に向かう螺旋方向で長くなっており、前記ブラシローラの外径が最小径となる位置の起毛の毛足長さをL1とし、該ブラシローラの外径が最大径となる位置の起毛の毛足長さをL2としたとき、0<{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たすことを特徴とするものである。
【0007】
本発明においては、ブラシローラ長手方向で一端側から他端側に向かって徐々にブラシローラの外径が大きくなるように、起毛の毛足長さを前記一端側から前記他端側に向かう螺旋方向で長くなるように変化させる。これにより、起毛の毛足長さが長くなるほど起毛のコシの強さが弱くなるので起毛のコシの強さの違いから、起毛の毛足長さが長い前記他端側の固形潤滑剤の削れ量が、起毛の毛足長さが短い前記一端側よりも少なくなる。
一方、ブラシローラの回転に伴って、ブラシローラの芯部材に巻きつけられた植毛ブラシシートのシート間の螺旋溝を通って、ブラシローラ長手方向で前記削れ量の多い前記一端側から前記削れ量の少ない前記他端側に固形潤滑剤の削れ粉である潤滑剤粉が移動する。
そして、後述する実験で明らかにしたように、ブラシローラの外径が最小径となる位置の植毛の毛足長さをL1とし、ブラシローラの外径が最大径となる位置の植毛の毛足長さをL2としたとき、0<{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たすことで、ブラシローラ長手方向での潤滑剤粉の偏在を低減させることができる。よって、その分、潤滑剤粉がブラシローラ長手方向で偏在することにより塗布対象物の表面全域にわたって潤滑剤が均一に供給されなくなるのを抑えられ、潤滑剤塗布ムラを低減させることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によれば、ブラシローラ長手方向での潤滑剤粉の偏在を低減し潤滑剤塗布ムラを低減できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の潤滑剤塗布装置で用いる潤滑剤塗布ブラシローラの模式図。
【図2】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。
【図3】実施形態に係る潤滑剤塗布装置を備えたプロセスカートリッジを示す断面図。
【図4】プロセスカートリッジの斜視図。
【図5】プロセスカートリッジの要部拡大図。
【図6】感光体の摩擦係数の測定方法を説明するための図。
【図7】ブラシローラの芯金に巻き付ける植毛レースの正面図。
【図8】従来のブラシローラの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置である複写機に適用した一実施形態について説明する。図2は、本実施形態に係る複写機200の概略構成図である。図2において、この複写機200は、フルカラー画像を形成する画像形成装置であって、原稿から画像情報を読み取る読み取り部110や、画像を形成する画像形成部120や、記録媒体である転写紙を収容するとともに転写紙を画像形成部120に給紙する給紙部130などから構成されている。
【0011】
図2に示した複写機は、イエロー、シアン、マゼンダ、ブラック(以下、M,C,M,Kと略す)の4色のトナーを用いて画像を形成するカラー画像形成装置である。この画像形成装置は、各色のトナー像を作像する4つの作像ユニット100Y,C,M,Kを備えており、これらが図中矢印A方向に回転する中間転写ベルト122に沿って配置されている。
【0012】
4つの作像ユニット100Y,C,M,Kは、収容するトナーの色が異なる以外は、同一の構成であるため、以下、符号を適宜省略して説明する。図3は作像ユニット100の概略構成図である。図3に示すように、作像ユニット100は、像担持体としての感光体ドラム10をそれぞれ有している。そして、感光体ドラム10の周りに、感光体ドラム表面を帯電せしめる帯電装置40、感光体ドラム表面に形成された潜像を各色トナーで現像してトナー像とする現像装置50、感体光ドラム表面をクリーニングをするクリーニング装置30、及び、感光体ドラム表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置20が配置されている。
【0013】
帯電装置40は、帯電部材としての帯電ローラ41と、帯電ローラ表面をクリーニングする帯電クリーニングローラ42とを備えている。帯電ローラ41は、導電性の回転軸上に表層を導電性の樹脂またはゴムを設けたものである。帯電ローラ41は回転軸に接続された図示しない電源から電圧が印加されることで感光体ドラム10の表面を一様に帯電する。
【0014】
現像装置50は、感光体ドラム表面に近接対向するように配置された現像剤担持体としての現像ローラ51と、現像ローラ51上の現像剤量を規制する現像剤規制部材52と、現像剤を収容する現像剤収容部として現像ローラ51に近い側の現像剤収容部53と、現像ローラ51から離れた側の現像剤収容部54とを備えている。現像剤収容部54内には現像剤を攪拌搬送する撹拌搬送スクリュ56が設けられ、現像剤収容部53内には現像ローラ51に現像剤を供給する供給スクリュ55が設けられ、収容する現像剤を現像剤収容部53,54内で循環させながら撹拌搬送している。現像ローラ51は、現像剤収容部53から供給スクリュ55により供給された現像剤を担持して現像剤規制部材52で現像剤量が規制された後、感光体ドラム10と対向する位置まで現像剤を搬送し、感光体ドラム表面に形成された潜像にトナーを供給することによりこれを現像するように構成されている。
【0015】
クリーニング装置30は、感光体ドラム10に当接してその表面から転写残トナーなどを掻き取るクリーニングブレード31を備えている。
【0016】
潤滑剤塗布装置20は、固形潤滑剤21と、この固形潤滑剤21を支持する潤滑剤保持部材24と、固形潤滑剤21と感光体ドラム10との両方に接触して回転する潤滑剤塗布ブラシローラ22と、潤滑剤均しブレード23とから主として構成されている。潤滑剤塗布ブラシローラ22は不図示の駆動手段から伝達された駆動力により回転し、固形潤滑剤21から削り取った粉末状の潤滑剤を感光体ドラム表面に塗布する。潤滑剤均しブレード23は、感光体表面に塗布された潤滑剤を均してその厚さを均一にする。
【0017】
なお、作像ユニット100は感光体ドラム10、潤滑剤塗布装置20、クリーニング装置30、帯電装置40、及び、現像装置50が一体的に構成されており、複写機本体に対して着脱可能なプロセスカートリッジの形態をなしている。
【0018】
図4は作像ユニット100の斜視図である。
図4において、この作像ユニット100は、枠体11と、この枠体11の両端部にそれぞれ配置された側板12とを有し、この側板12相互間に感光体ドラム10、固形潤滑剤21及び潤滑剤塗布ブラシローラ22が架設されている。
【0019】
固形潤滑剤21は保持部材に一体的に支持されており、図示省略した押圧手段のバネ部材によって潤滑剤塗布ブラシローラ22に向かって付勢され、その表面は潤滑剤塗布ブラシローラ22に接触している。
【0020】
図5は、作像ユニット100の潤滑剤塗布装置20の拡大断面図である。
図5において、この潤滑剤塗布装置20は、固形潤滑剤21や、この固形潤滑剤21を支持する潤滑剤保持部材24を有し、固形潤滑剤21を潤滑剤保持部材24ごと収容する潤滑剤ホルダ25が設けられている。
【0021】
潤滑剤保持部材24と潤滑剤ホルダ25の底部との間には、所定間隔を置いて一対のカム状の羽根部材(以下、カム部材ともいう)26が設けられており、このカム部材26の相互間に、例えばつるまきバネからなるバネ部材28が架設されている。
【0022】
このバネ部材28による、カム部材26の相互間の間隔を狭くするように作用する復元力によってカム部材26を次第に起立させ、これによって潤滑剤ホルダ25の底部を押圧し、その反力を利用して潤滑剤保持部材24に支持された固形潤滑剤21が常時、潤滑剤塗布ブラシローラ22に所定の当接圧で当接するように構成されている。
【0023】
中間転写ベルト122のループ内側には、感光体ドラム10Y,C,M,Kから中間転写ベルト122上にトナー像を転写する一次転写ローラ125Y,C,M,Kが設けられている。一次転写ローラ125Y,C,M,Kよりも下流側には、中間転写ベルト表面に対向するように二次転写ローラ123を設けている。また、二次転写ローラ123よりも中間転写ベルト回転方向下流側には、トナー像を転写紙に転写した後の中間転写ベルト表面をクリーニングする不図示の中間転写ベルトクリーニング装置を設けている。なお、中間転写ベルト122、一次転写ローラ125Y,C,M,K、二次転写ローラ123、及び、中間転写ベルトクリーニング装置などは一体的に構成され、複写機置本体に対して着脱可能な転写ユニットの形態をなしている。
【0024】
4つの作像ユニット100Y,C,M,Kの下方には露光装置60を設けている。また、露光装置60の下方には、記録媒体としての転写紙を収容する給紙カセットや、給紙カセットに収容された転写紙を給紙する給紙手段である給紙ローラ131などを有する給紙部130が設けられている。また二次転写ローラ123の上方には、転写紙上の画像を熱と圧力との作用によって転写紙に定着させる定着装置126と、画像が定着された転写紙を機外の排紙トレイ128に排紙する排紙ローラ対129とを設けている。
【0025】
次に、画像形成装置の動作について説明する。画像開始の信号を受けると、中間転写ベルト122が回転を開始する。同時に、作像ユニット100Yでは、感光体ドラム10Yを帯電装置40Yにより一様に帯電し、読み取り部110で読み取った原稿の画像情報などに基づいて露光装置60によりレーザ光を照射して潜像を形成する。この潜像は、現像装置50Yによりイエローのトナーで現像され、これにより感光体ドラム10Yにイエローのトナー像が形成される。同様にして、作像ユニット100C,M,Kにおいても、各感光体ドラム10C,M,Kに、それぞれシアン、マゼンタ、黒のトナー像が形成される。中間転写ベルト122の回転に伴い、各色トナー像は一次転写ローラ125Y,C,M,Kで順次転写され、中間転写ベルト122上に各色のトナー像が重ね合わさったカラー画像を形成する。なお、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト122の同じ位置に重ねて転写されるように、中間転写ベルト回転方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして実行される。
【0026】
一方、給紙部130から給紙ローラ131により転写紙が給紙され、中間転写ベルト122と二次転写ローラ123とのニップ部に搬送される。そして、中間転写ベルト122上のカラー画像を前記ニップ部で転写紙上に転写する。カラー画像が転写された後の転写紙は定着装置126へと送り込まれ、転写紙上にカラー画像が定着された後、排紙ローラ対129により機外の排紙トレイ128へ排紙される。
【0027】
また、トナー像が転写された後の各感光体ドラム10Y,C,M,Kの表面に残留した転写残トナーは、それぞれのクリーニング装置30Y,C,M,Kによって感光体ドラム表面から除去される。各感光体ドラム10Y,C,M,Kの表面から回収された廃トナーは、各クリーニング装置30Y,C,M,Kのケース内に設けられた廃トナー搬送スクリュ32により、複写機に設けられた不図示の廃トナーボトルに排出される。
【0028】
クリーニング装置30Y,C,M,Kによりクリーニングされた感光体ドラム10Y,C,M,Kの表面に、潤滑剤塗布装置20によって潤滑剤を塗布する。すなわち、図5に示したように、潤滑剤ホルダ25内に摺動可能に収容された固形潤滑剤21と感光体ドラム10との両方に接触して回転する潤滑剤塗布ブラシローラ22によって、固形潤滑剤21を削り取って粉末状の潤滑剤として感光体ドラム表面に塗布し、潤滑剤均しブレード23で感光体表面に塗布された潤滑剤を均してその厚さを均一にする。
【0029】
また、トナー像が転写された後の中間転写ベルト122上に残留する転写残トナーは、不図示の中間転写ベルトクリーニング装置によって中間転写ベルト122上から除去される。中間転写ベルト122上から回収された廃トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置内のベルト廃トナー搬送スクリュにより、複写機に設けられた廃トナーボトルに排出される。
【0030】
また、画像形成によりトナーを消費した各現像装置50Y,C,M,Kには、中間転写ベルト122の上方に設けられた、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各トナーが充填されたトナーボトル124Y,C,M,Kから不図示の搬送路を通って、所定の補給量だけ各色の現像装置50Y,C,M,Kにトナーが補給される。
【0031】
図1は、本実施形態の潤滑剤塗布装置20で用いる潤滑剤塗布ブラシローラ22の模式図である。なお、図1において潤滑剤塗布ブラシローラ22は矢印B方向に回転する。潤滑剤塗布ブラシローラ22は、基布240の幅方向及び長さ方向に起毛であるブラシ毛241を複数配列させて植毛された植毛レース224を、棒状の芯金221に図中の螺旋始まり側から螺旋終わり側に向かって左巻きで重なり合わないように螺旋状に巻き付けて形成されている。また、芯金221の表面に両面粘着テープ227の裏面を貼り付け、その両面粘着テープ227のおもて面に植毛レース224が貼り付けられている。
【0032】
本実施形態においては、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で一端側から他端側すなわち螺旋始まり側から螺旋終わり側に向かって徐々に潤滑剤塗布ブラシローラ22の外径が大きくなるように、ブラシ毛241の毛足長さが螺旋始まり側から螺旋終わり側に向かう螺旋方向で長くなっている。そして、潤滑剤塗布ブラシローラ22の外径が最小径D1となる位置である螺旋始まり位置のブラシ毛241の毛足長さをL1とし、潤滑剤塗布ブラシローラ22の外径が最大径D2となる位置である螺旋終わり位置のブラシ毛241の毛足長さをL2としたとき、{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たす。
【0033】
また、潤滑剤塗布ブラシローラ22の植設されたブラシ毛241は、ナイロン、アクリル等の樹脂にカーボンブラック等の抵抗制御材料を添加して体積抵抗率1×10〜1×10[Ω・cm]に調整した材料を用いて形成されている。
【0034】
潤滑剤塗布ブラシローラ22のブラシ毛241の太さは、3〜8デニールが好ましく、ブラシ毛241の密度は2[万本/inch]〜10[万本/inch]が好ましい。ブラシ毛241の太さが細すぎると、潤滑剤塗布ブラシローラ22が感光体表面に当接したときに毛倒れを起こしやすくなり、逆にブラシ毛241が太すぎるとブラシ毛241の密度を高くすることができなくなる。また、ブラシ毛241の密度が低いと感光体表面に当接するブラシ毛241の本数が少ないため、固形潤滑剤21を均一に塗布することができず、逆にブラシ毛241の密度が高すぎると隣接するブラシ毛間の隙間が小さくなり、掻き取った固形潤滑剤21の粉体の付着量が減るため、塗布量が不足してしまう。
【0035】
そこで、本実施形態では、毛倒れを起こしにくくするためのブラシ毛241の太さと、固形潤滑剤21の均一な塗布を効率的に行うことができるブラシ毛241の密度とを有する、上記設定範囲の潤滑剤塗布ブラシローラ22を用いている。
【0036】
なお、固形潤滑剤21としては、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレイン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類を用いることができるが、この中でも、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0037】
潤滑剤塗布ブラシローラ22は、回転駆動することによって固形潤滑剤21を削り取り、微粒子化した潤滑剤を感光体表面に供給する。その後、感光体表面と潤滑剤均しブレード23との接触により、潤滑剤粉は引き延ばされて薄膜状になり、感光体表面の摩擦係数を低下させる。
【0038】
[実験]
潤滑剤塗布ブラシローラ22により削り取られた潤滑剤粉は、その一部が感光体に塗布されず、潤滑剤塗布ブラシローラ22の植毛内部や潤滑剤塗布ブラシローラ周辺に滞留することになる。
【0039】
表1に示した条件1から条件4の潤滑剤塗布ブラシローラ22を用いて潤滑剤の削れ量や滞留潤滑剤量の評価実験を行った。なお、感光体径はφ40[mm]であり、感光体線速は250[mm/s]であり、走行距離は5[km]である。また、表中のブラシローラ材質Aはポリエステルであり、ブラシローラ材質Bはポリカーボネイトである。
【0040】
【表1】

【0041】
潤滑剤塗布ブラシローラ22に滞留する潤滑剤粉の量は、ブラシ毛241の材質や植毛密度、削れ量など各種条件により異なるが、表1に示した実験結果から実使用条件でおよそ10[%]〜40[%]の潤滑剤粉が塗布対象物である感光体に塗布されずにいることが判った。
【0042】
更に潤滑剤塗布ブラシローラ22に滞留した潤滑剤粉は、潤滑剤塗布ブラシローラ22の植毛レース間の螺旋状の隙間溝225を伝わってレースの巻き方向へと移動する。
【0043】
表2は、表1の条件1で潤滑剤塗布ブラシローラ22に滞留した潤滑剤粉量を潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で測定した結果である。
【0044】
【表2】

【0045】
表2からわかるように、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で螺旋始まり位置から螺旋終わり位置に向かって滞留潤滑剤量が増えており、螺旋終わり位置の滞留潤滑剤量が螺旋始まり位置の滞留潤滑剤量の約5倍となっている。
【0046】
次に、ブラシ毛241の毛足長さと潤滑剤削れ量との関係を表3に示す。なお、評価条件として加圧バネ力は一定、ブラシ毛241の材質・加圧力は表1の条件1を選択した。また、感光体径はφ40[mm]であり、感光体線速は250[mm/s]であり、走行距離は5[km]である。
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示すように、ブラシ毛241の毛足長さが短くなるほど潤滑剤削れ量が増加するのがわかる。これは、ブラシ毛241の毛足長さが短いほどブラシ毛241のコシが強くなるため、毛足長さ以外が同じ条件でブラシ毛241が潤滑剤に当接していても削り力は毛足長さが短い程強くなるためである。
【0049】
このことを考慮して、潤滑剤塗布ブラシローラ22の潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で螺旋始まり側端部の毛足長さをL1、螺旋終わり側端部の毛足長さをL2とし、表4の条件2、条件3、条件4のように構成された潤滑剤塗布ブラシローラ22を作成して、潤滑剤削れ量や滞留潤滑剤量を測定した。ここで、ブラシ毛241の毛足長さをL1からL2に変化させるために、芯金221に植毛レース224を巻きつけた後に行うシャーリング工程にて、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向でブラシ毛241の毛足長さが徐々に変化するようブラシ毛先端を切りそろえる。
【0050】
また、表4の条件1には、L1=L2である表1に示した条件2の潤滑剤塗布ブラシローラ22の潤滑剤削れ量や滞留潤滑剤量の測定結果を示している。なお、感光体径はφ40[mm]であり、感光体線速は250[mm/s]であり、走行距離は5[km]である。
【0051】
【表4】

【0052】
表4の条件2、条件3とも滞留潤滑剤量が減少ており、潤滑剤の塗布効率が向上している。また、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向での滞留潤滑剤量のバランスも表4の条件1よりも改善されている。
【0053】
一方、表4の条件4では滞留潤滑剤量が再び増加し、螺旋始まり側端部の滞留潤滑剤量も増加している。これは、螺旋始まり側端部の潤滑剤削れ量が過剰となり、潤滑剤塗布ブラシローラ22の螺旋溝での移動量を超える潤滑剤粉が螺旋始まり側端部に滞留したためだと考えられる。
【0054】
次に、表4に示した各条件で評価実験を行った後の感光体表面の摩擦係数の測定結果を表5に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
ここで、感光体ドラム10の摩擦係数は以下のように、オイラーベルト方式にて測定した。
図6は、感光体の摩擦係数の測定方法を説明するための図である。この場合、ベルトとして中厚の上質紙Pを紙すきが長手方向になるようにして感光体ドラム10のドラム円周1/4に張架し、上質紙Pの一方に例えば0.98[N](100[gr])の分銅410によって荷重を掛け、他方にフォースゲージ400を設置してフォースゲージ400を引っ張り、上質紙Pが移動した時点での荷重をフォースゲージ400から読み取って、摩擦係数μs=2/π×1n(F/0.98)(但し、μ:静止摩擦係数、F:測定値)に代入して算出する。
【0057】
表5の条件2、条件3とも、感光体表面の潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向全域に渡って表面摩擦係数が充分に低下しており、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向でのムラも発生していない。このことは、感光体表面に潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向にわたって潤滑剤が略均一に塗布されたことを示している。一方、表5の条件4では、感光体表面の潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で潤滑剤塗布ブラシローラ22の螺旋終わり側端部の表面摩擦係数が上昇しており、潤滑剤塗布量不足が発生していると考えられる。
【0058】
表4、表5の結果から潤滑剤塗布ブラシローラ22の隙間溝225を通って螺旋始まり側端部から螺旋終わり側端部に向かって移動する固形潤滑剤の削り粉の量には上限があり、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向での潤滑剤塗布ブラシローラ22のブラシ毛241の毛足長さの差により発生する削れ量の差が一定以上になると、滞留潤滑剤量の均衡を保つことができなくなってしまうことがわかる。
【0059】
以上の評価結果より、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で螺旋始まり側端部の毛足長さL1と、螺旋終わり側端部の毛足長さL2との差は、毛足長さL2の33[%]以内に抑えることが必要であるといえる。言い換えると、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で一端側から他端側に向かって徐々に潤滑剤塗布ブラシローラ22の外径が大きくなるように、ブラシ毛241の毛足長さが前記一端側から前記他端側に向かう螺旋方向で長くなっている。そして、潤滑剤塗布ブラシローラ22の外径が最小径D1となる位置のブラシ毛241の毛足長さをL1とし、潤滑剤塗布ブラシローラ22の外径が最大径D2となる位置のブラシ毛241の毛足長さをL2としたとき、{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たすことが必要であり、より好ましくは、20[%]≦{(L2−L1)/L2}×100≦30[%]の関係を満たすのが良い。このような関係を満たすことで、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向で偏在する潤滑剤粉の量を低減させることができ、その分、潤滑剤粉が偏在することにより塗布対象物である感光体の表面全域に亘って潤滑剤が均一に供給されなくなるのを抑えられ、潤滑剤塗布ムラを低減させることができる。
【0060】
なお、上記特許文献1に記載の潤滑剤塗布装置では、ブラシローラの植毛レース間に形成される隙間溝とは別に螺旋溝の螺旋方向とは逆方向に螺旋状の追加溝を形成している。そして、ブラシローラの回転に伴ってブラシローラ長手方向一端側から他端側や、前記他端側から前記一端側に向かって潤滑剤粉を隙間溝や追加溝を通して移動させることで、ブラシローラ長手方向の潤滑剤粉の偏在を低減させている。ところが、ブラシローラに追加溝を設けるために行う加工が複雑なため、部品コストが大幅に増大することが懸念される。
【0061】
一方、本実施形態の潤滑剤塗布装置に用いられる潤滑剤塗布ブラシローラ22は、芯金221に植毛レース224を巻きつけた後に行うシャーリング工程にて、潤滑剤塗布ブラシローラ長手方向でブラシ毛241の毛足長さが徐々に変化するようブラシ毛先端を切りそろえるだけなので、簡単に加工を施すことができ部品コストが大幅に増大するのを抑制することができる。
【0062】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
固形潤滑剤と、複数の起毛が帯状のシート上に植毛された植毛レース224などの植毛ブラシシートを棒状の芯部材の周面に螺旋状に巻き付けた回転可能な潤滑剤ブラシローラ22などのブラシローラとを備え、ブラシローラが回転して固形潤滑剤を掻き取った後、感光体ドラム10などの塗布対象物の表面に固形潤滑剤21などの固形潤滑剤の削れ粉を塗布する潤滑剤塗布装置20などの潤滑剤塗布装置において、ブラシローラ長手方向で一端側から他端側に向かって徐々にブラシローラの外径が大きくなるように、起毛の毛足長さが前記一端側から前記他端側に向かう螺旋方向で長くなっており、ブラシローラの外径が最小径となる位置の起毛の毛足長さをL1とし、ブラシローラの外径が最大径となる位置の起毛の毛足長さをL2としたとき、0<{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たす。これよれば、上記実施形態について説明したように、潤滑剤塗布ムラを低減できる。
(態様B)
(態様A)において、20[%]≦{(L2−L1)/L2}×100≦30[%]の関係を満たす。これによれば、上記実施形態について説明したように、より潤滑剤塗布ムラを低減できる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、上記固形潤滑剤は脂肪酸金属塩であることが望ましい。
(態様D)
潜像を形成する像担持体と、像担持体上に残留するトナーをクリーニングブレードでクリーニングするクリーニング装置と、前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段とを備えた画像形成装置において、前記潤滑剤塗布手段として(態様A)、(態様B)または(態様C)の潤滑剤塗布装置を用いた。これによれば、上記実施形態について説明したように、潤滑剤塗布ムラを低減でき、異常画像の発生を抑制することができる。
(態様E)
像を担持する像担持体と、像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、帯電手段、現像手段、及び、クリーニング手段の少なくとも一つとが一体に支持されて、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、前記潤滑剤塗布手段として、(態様A)、(態様B)または(態様C)の潤滑剤塗布装置を用いた。これによれば、上記実施形態について説明したように、潤滑剤塗布ムラを低減でき、異常画像の発生を抑制することができる。
(態様F)
像を担持する像担持体と、像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、帯電手段、現像手段、及び、クリーニング手段の少なくとも一つとが一体に支持されて、装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを備えた画像形成装置において、前記プロセスカートリッジとして(態様E)のプロセスカートリッジを用いた。これによれば、上記実施形態について説明したように、潤滑剤塗布ムラを低減でき、異常画像の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 感光体ドラム
11 枠体
12 側板
20 潤滑剤塗布装置
21 固形潤滑剤
22 潤滑剤塗布ブラシローラ
23 潤滑剤均しブレード
24 潤滑剤保持部材
25 潤滑剤ホルダ
26 カム部材
28 バネ部材
30 クリーニング装置
31 クリーニングブレード
32 廃トナー搬送スクリュ
40 帯電装置
41 帯電ローラ
42 帯電クリーニングローラ
50 現像装置
51 現像ローラ
52 現像剤規制部材
53 現像剤収容部
54 現像剤収容部
55 供給スクリュ
56 撹拌搬送スクリュ
60 露光装置
100 作像ユニット
110 読み取り部
120 画像形成部
122 中間転写ベルト
123 二次転写ローラ
124 トナーボトル
125 一次転写ローラ
126 定着装置
128 排紙トレイ
129 排紙ローラ対
130 給紙部
131 給紙ローラ
200 複写機
221 芯金
224 植毛レース
225 隙間溝
227 両面粘着テープ
240 基布
241 ブラシ毛
300 ブラシローラ
300 潤滑剤塗布ブラシローラ
301 芯金
302 感光体
303 固形潤滑剤
304 植毛ブラシシート
305 隙間溝
307 両面粘着テープ
340 シート
341 起毛
400 フォースゲージ
410 分銅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2009−128643号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形潤滑剤と、
複数の起毛が帯状のシート上に植毛された植毛ブラシシートを棒状の芯部材の周面に螺旋状に巻き付けた回転可能なブラシローラとを備え、
前記ブラシローラが回転して前記固形潤滑剤を掻き取った後、塗布対象物の表面に該固形潤滑剤の削れ粉を塗布する潤滑剤塗布装置において、
ブラシローラ長手方向で一端側から他端側に向かって徐々に前記ブラシローラの外径が大きくなるように、前記起毛の毛足長さが前記一端側から前記他端側に向かう螺旋方向で長くなっており、
前記ブラシローラの外径が最小径となる位置の起毛の毛足長さをL1とし、該ブラシローラの外径が最大径となる位置の起毛の毛足長さをL2としたとき、0<{(L2−L1)/L2}×100≦33[%]の関係を満たすことを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
請求項1の潤滑剤塗布装置において、
20[%]≦{(L2−L1)/L2}×100≦30[%]の関係を満たすことを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2の潤滑剤塗布装置において、
上記固形潤滑剤は脂肪酸金属塩であることを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項4】
像担持体と、
像担持体上に残留するトナーをクリーニングブレードでクリーニングするクリーニング装置と、
前記像担持体に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段とを備えた画像形成装置において、
前記潤滑剤塗布手段として請求項1、2または3の潤滑剤塗布装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
像担持体と、像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、帯電手段、現像手段、及び、クリーニング手段の少なくとも一つとが一体に支持されて、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジにおいて、
前記潤滑剤塗布手段として、請求項1、2または3の潤滑剤塗布装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
像担持体と、像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段と、帯電手段、現像手段、及び、クリーニング手段の少なくとも一つとが一体に支持されて、装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジを備えた画像形成装置において、
前記プロセスカートリッジとして、請求項5のプロセスカートリッジを用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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