説明

潤滑剤塗布装置および画像形成装置

【課題】温度または潤滑剤塗布量の検出手段を用いることなく、温度が変化しても潤滑剤塗布量を適正範囲内に管理できる潤滑剤塗布装置を有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持面を有する像担持体と、円筒外径を有し、円筒外形を像担持面に接触させた状態で回転可能に保持された塗布手段と、像担持面に塗布される潤滑剤を含む潤滑剤ブロックと、潤滑剤ブロックを塗布手段の円筒外形に向けて押し付ける押圧手段と、塗布手段の回転に基づいて、潤滑剤ブロックから塗布手段の円筒外形に供給された潤滑剤を、塗布手段の円筒外形から像担持面に供給する潤滑剤供給機構とを備えた画像形成装置において、押圧手段が、オーステナイト相を有する形状記憶合金を含む弾性部材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ又はそれらの機能を複合的に備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置およびそれに用いる潤滑剤塗布装置に関し、特に像担持体に潤滑剤を塗布する際に温度変化に起因する潤滑剤塗布量の変化を少なくした画像形成装置および潤滑剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体(静電潜像像担持体)に形成された潜像を現像装置より供給されるトナーにより顕在化させて得られたトナー像を転写ベルト等に転写する。転写後に感光体表面(像担持面)に残存したトナーは、例えば、感光体に接触するクリーニングブレード(感光体クリーニング部材)により掻き取られ回収される。
【0003】
この際、クリーニングブレードと感光体間の摩擦力が高いとクリーニングブレードの摩耗が急速に進むと共に、感光体表面においても光電材料から形成されている薄膜の摩耗と剥離が発生し、クリーニングブレードと感光体それぞれの寿命が短くなるという問題を生じていた。このため潤滑剤塗布装置を設置し、感光体表面に潤滑剤を塗布し摩擦係数を低減している。
【0004】
潤滑剤塗布装置は、感光体ローラ塗布に略平行に設置された樹脂製回転ブラシ、樹脂ローラまたは樹脂スリーブ等からなりローラ状の形状を有する潤滑剤塗布手段に、ばね等の弾性体を含む押圧手段により潤滑剤を圧接させている。この塗布手段が回転して潤滑剤を削り出し、削り出された潤滑剤が塗布手段により運ばれ感光体表面に塗布される。
【0005】
塗布手段に樹脂を使用するのは、潤滑剤の削り出しを良好に行うためである。これら樹脂の剛性は、低温で高く、高温で低くなり、潤滑剤の削り出し量が高温では少なく、低温では多くなる。その結果、感光体表面に塗布される潤滑剤量が高温では過少になり、低温では過多になるという問題を生じることがあった。
【0006】
感光体表面の潤滑剤塗布量が過多になると、感光体表面の摩擦係数は低くなるものの、潤滑剤が感光体表面を完全に覆い尽くし、感光体表面の微小な凹凸を埋めてしまう。このため、クリーニングブレードと感光体表面の密着性が上がり、後処理剤微粒子と呼ばれるトナー表面に外添されている金属酸化物微粒子がクリーニングブレードのエッジ部を通過できずクリーニングブレードエッジ部と感光体の間に滞留する。その結果、ブレードがめくれたり、ブレード泣きと呼ばれる異音が発生するという問題があった。
【0007】
そこで、例えば、反射型フォトセンサ等からなる検知手段により感光体表面の潤滑剤量を測定し、その測定値により潤滑剤塗布装置を制御して感光体表面の潤滑剤量を一定の範囲内に管理することが特許文献1に示されている。
【0008】
また、温度センサー等の温度検知手段を用い、使用環境の温度を測定し、その情報を用い、潤滑剤に印加する押圧力を制御することで感光体表面の潤滑剤量を管理することが特許文献2〜5に示されている。
【特許文献1】特開平7−311531号公報
【特許文献2】特開平9−62163号公報
【特許文献3】特開平9−138622号公報
【特許文献4】特開2002−341694号公報
【特許文献5】特開2005−3808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これら特許文献1〜5に記載の技術では、潤滑剤量または温度を検知する手段および、これら検知手段から得られた情報を基に演算し制御信号を発する回路が必須であり、コスト増を招くと共に、これらの設置に新たなスペースが必要なことから、画像形成装置の小型化を阻害するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、温度または潤滑剤塗布量の検出手段を用いることなく、温度が変化しても潤滑剤塗布量を適正範囲内に管理できる潤滑剤塗布装置を有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、像担持面を有する像担持体と、円筒外径を有し、円筒外形を像担持面に接触させた状態で回転可能に保持された塗布手段と、像担持面に塗布される潤滑剤を含む潤滑剤ブロックと、潤滑剤ブロックを塗布手段の円筒外形に向けて押し付ける押圧手段と、塗布手段の回転に基づいて、潤滑剤ブロックから塗布手段の円筒外形に供給された潤滑剤を、塗布手段の円筒外形から像担持面に供給する潤滑剤供給機構とを備えた画像形成装置において、押圧手段が、オーステナイト相を有する形状記憶合金を含む弾性部材を備えていることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる画像形成装置では、温度または潤滑塗布量を検知する手段を用いない簡素な構成の潤滑剤塗布装置により、感光体表面の潤滑剤塗布量を、温度変化によらず一定範囲内に維持することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
・実施形態1
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一の部分又は部材を示す。
【0014】
図1は、本発明にかかる全体が6で表される潤滑剤塗布装置の上面図であり、図2は、図1をII−II方向に見た場合の断面図である。潤滑剤塗布装置6は、画像形成装置内部の感光体4(図1、2には一部分のみ記載)の近傍に設置されている固定板61を含む。固定板61には、弾性部材、具体的には形状記憶合金より成るばね62の一端が固定されている。ばね62の他端は、潤滑剤ホルダー63に取り付けられており、ばね62は押圧手段として機能する。潤滑剤ホルダー63は、潤滑剤を主成分とする潤滑剤ブロック64を保持している。図1より判るように潤滑剤ホルダー63の両端部には開口部67があり、この中をガイド66(図2では記載省略)が貫通し潤滑剤ブロック(潤滑剤)64が左右に移動可能になっている。ばね62は、所謂圧縮ばねであり、潤滑剤ホルダー63を通じ潤滑剤ブロック64を塗布手段65に押圧している。
【0015】
塗布手段65は、潤滑剤64を安定して削り出すため、円筒状の外形(円筒外形)を有する樹脂製ローラ、樹脂製スリーブを用いても良いが、より好ましくは、円筒外形を有する樹脂製回転ブラシ65を用いている。回転ブラシ65は、中心軸651が図示しないモータを含む駆動系に繋がっており、回転するブラシの毛653により削り出した潤滑剤64を感光体4の表面(像担持面)に塗布する。
【0016】
回転ブラシ65の好適な例では、長軸方向の長さ(図1、Y方向の長さ)は340mmで、感光体4の後述の画像領域全体に潤滑剤を塗布できるようになっている。横断面は、直径が18mm、中心軸651の直径が6mmである。植毛部(ブラシ部)653は、材質はナイロン、毛長さは5mm、繊維径は26.6μmで厚さ1mmの基布652に繊維密度600KF/inch(600,000F/inch)で植毛されている。本発明は、これ以外の回転ブラシも使用可能であり、例えば、材質は、ポリプロピレン等他の樹脂でも良く、直系や毛の長さ、繊維径等も使用する形状合金ばね62のばね定数や潤滑剤の種類等に応じ適宜選択可能である。
【0017】
摩擦係数の最適範囲の検討を行った。具体的には、新東科学(株)製ポータブル接触角計HEIDONトライポキュアーズTYPE94iIIを用い、プローブにコットン・フランネルを使用して、潤滑剤塗布量を変えて感光体表面の摩擦係数を測定した。その結果、摩擦係数が過大なことに起因するクリーニングブレードの異常摩耗や感光体表面の薄膜の摩耗および剥離がなく、かつ、摩擦係数が過小時に発生するブレードめくりやブレード泣き等の不具合が発生しないためには、静摩擦係数が0.3〜0.5の範囲であることが望ましく、より望ましくは0.35〜0.45であることが見出された。
【0018】
なお、用いた潤滑剤はステアリン酸亜鉛より成る固形潤滑剤であるが、本発明においては、これ以外にも感光体との濡れ性が良く、化学的に不活性で、かつ、熱的に安定な潤滑剤であれば使用可能である。より好ましくは、表面エネルギーが低く、そのため転写時にトナーの剥離性に優れた潤滑剤がよい。このような潤滑剤として、例えば、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸といった脂肪酸、およびこれら脂肪酸とカルシウム、亜鉛、マグネシウム等の金属との化合物である脂肪酸金属塩より選ばれた1以上の成分を主な成分とする固形潤滑剤を用いることができる。
【0019】
感光体4は、画像領域の幅L1(図1)が330mm、直径が60mmである。感光体4の表面の静摩擦係数を0.4に保つためには、感光体表面の距離10kmにおいて2gの潤滑剤塗布量が必要であることを見出した。
【0020】
次に、潤滑剤の塗布量と押圧力の関係を示す。図3は、塗布装置6の押圧ばね62の数を変えて押圧力を0.4N/m〜4.0N/mまで変化させると共に温度(画像形成装置内温度)を0℃〜50℃まで変化させて、感光体表面の潤滑剤塗布量(感光体表面の距離10kmあたり)を測定した結果である。図4は、感光体表面の潤滑剤塗布量(感光体表面の距離10kmあたり)と温度の関係を示す。
【0021】
いずれの押圧力においても低温になるほど潤滑剤塗布量が多くなっている。これは上述のように低温ほど回転ブラシ65の毛の剛性が高く、その結果、潤滑剤64表面から削り出される潤滑剤量が増えるためである。
【0022】
また、何れの温度においても、押圧力が2.4N/mまでは押圧力が上昇するとともに潤滑剤塗布量は増加しているが、押圧力が2.4N/mを超えると押圧力の増加と共に潤滑剤塗布量は減少している。
【0023】
これは、押圧力が強すぎると回転ブラシ65の毛が過剰に湾曲し、毛の側面が潤滑剤と接触し、潤滑剤を削り取る能力の高い毛先端部が潤滑剤と接触しなくなる、所謂「腹当たり」が起こるためである。
【0024】
図3より感光体表面の距離10kmについて、腹当たりの発生がなく、かつ、2gの潤滑剤量を塗布するには、0℃で0.45N/m、10℃で0.7N/m、23℃で1.2N/m、30℃で1.6N/m、40℃で1.75N/m、50℃でN/mと、温度変化に合わせて押圧力を変えることが必要であることを示している。
【0025】
押圧力を温度に応じて変化させる手段として、本実施形態では押圧ばね62に形状記憶合金ばねを用いる。以下にそのメカニズムを示す。
【0026】
形状記憶合金には、2つの効果が知られている。1つは、低温時に出現するマルテンサイト相を用いた形状記憶効果で、低温でマルテンサイト相に応力が付与されると容易に変形し、応力を除荷しても変形されたままの形状を保持し、温度が上昇し、高温でマルテンサイト相がオーステナイト相に変態する際に元の形状に戻る。
【0027】
もう一つは、オーステナイト相を用いる超弾性効果であり、応力が付与されるとオーステナイト相が弾性変形を開始し、さらに応力値が増加するとオーステナイト相がマルテンサイト相に応力誘起変態する。そして応力を除荷すると元のオーステナイト相に戻り、さらにオーステナイト相の弾性変形も解消し、これにより形状も元に戻る現象である。
【0028】
本発明は、詳細を以下に示すように形状記憶効果を示すマルテンサイト相と超弾性効果を示すオーステナイト相の比率が温度と共に変化する性質を利用し、押圧力を変えるものである。
【0029】
形状記憶合金の組成や、熱処理条件、特に焼入れ速度を変えることによりマルテンサイト相からオーステナイト相に変態を開始する温度(以下、「オーステナイト変態開始温度」)および変態を終了する温度(以下、「オーステナイト変態終了温度」)を変化させて、所望の温度でどちらの効果を得るか調整できる。
【0030】
ばね62に使用する形状記憶合金では、オーステナイト変態開始温度が使用温度(画像形成装置内温度)より低く、オーステナイト変態終了温度が使用温度より高くなっている。つまり、使用温度において、ばね62に用いる形状記憶合金は、マルテンサイト相とオーステナイト相の2相が共存している。そして、ばね62に変位が与えられると、マルテンサイト相の部分は形状記憶効果を示すため、ばねとしては、元に戻ろうとする力(復元力)を示さず、変位量に応じ変形し、すなわち押圧力生成に寄与しない。一方、オーステナイト相は、復元力を示し、即ち押圧力を生じる。
【0031】
使用温度が上がるについて、マルテンサイト相の割合が減り、オーステナイト相の割合が増えることから、同じ変位量であっても押圧力が増加する。図5は、Ti−Ni合金(Ni 50.1原子%)よりなるばね62の温度と押圧との関係を示す。ばねの変位は、4mmで一定にしてある。押圧力が温度の上昇と共に増加しており、各温度における押圧力の値も上述の所望の押圧力と概ね等しい。なお、温度が50℃を超えると押圧力は、略一定となっているが、これは、ばね62に用いた形状記憶合金のオーステナイト変態終了温度が約50℃であるため、それ以上の温度での押圧力の上昇が生じないからである。上述のように押圧力が2.4N/mを超えると腹当たりの発生により潤滑剤塗布量が減少するため、オーステナイト変態完了温度は、好適には50℃〜60℃であり、これによって60℃以上では、押圧力が高くならず腹当たりが発生しない。一方、オーステナイト変態開始温度については、装置の使用環境を考慮すれば0℃以下であることが好ましい。
【0032】
このように、オーステナイト変態開始温度が0℃以下で、かつ、オーステナイト変態終了温度を50〜60℃にすることで、変位一定で押圧力を温度とともに上昇させることができる形状記憶合金としては、Cu−Zn−Al合金等の合金系が知られている。しかし、画像形成装置の中で繰り返し使用できる耐久性を有する形状記憶合金としては、上述のTi−Ni合金(Ni40〜55原子%、残部はTiおよび不可避不純物)またはTi−Ni合金にCu、Fe、Al等の1種以上の添加元素を合計で10原子%未満添加した合金が適している。
【0033】
図6には、温度と潤滑剤塗布量との関係を示す。温度0〜60℃の範囲において、潤滑剤塗布量は感光体表面の距離10kmあたり2gと略一定になっており、これにより摩擦係数を概ね一定値(0.4)にできる。
【0034】
なお、図1および図2に示す実施形態では押圧手段62に用いられる弾性部材は、全て形状記憶合金より成るばねであるが、ばね定数等押圧力に係る変数を適切に選択することにより、押圧手段62を構成する複数のばねのうち、一部のみを形状記憶合金より成るばねを使用し、残りを例えば形状記憶合金以外の金属からなるばね、またはばね以外の弾性圧縮変形手段例えばゴムなどの弾性材料を使用しても良い。
【0035】
図7は、全体が2で表される本発明の実施形態にかかる画像形成装置の概略構成を示す。ただし、本発明の特徴部分を明確にすることで発明の理解を容易にするために、画像形成装置の筐体は図面から除かれている。
【0036】
画像形成装置2は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはそれらの機能を複合的に備えた複合機等の電子写真式画像形成装置である。図示する画像形成装置は所謂タンデム方式のカラー画像形成装置である。ただし、本発明は、この種の画像形成装置にのみに適用されるものでなく、他の形態の画像形成装置、例えば、回転軸の周囲に4つの現像装置を配置し、これらを順次静電潜像担持体に対向させてフルカラー画像を作成する所謂4サイクル方式の画像形成装置、または、一つの現像装置しか備えていないモノクロ画像形成装置にも同様に適用できる。
【0037】
図上右側のローラ32から図上左側のローラ34に移動するベルト部分の上には、図上右側から左側に向かって順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の現像剤をそれぞれ用いて対応する色のトナー像を作成する4つの作像部3(3Y,3M,3C,3K)が、中間転写ベルト30に沿って配置されている。
【0038】
各作像部3は、静電潜像担持体として円筒状の感光体4を有する。感光体4の周囲には、その回転方向(図中時計回り方向)に沿って順に、帯電器8、露光装置10、現像装置18、一次転写ローラ14、潤滑剤塗布装置6、クリーニングブレード16が配置されており、一次転写ローラ14は無端状中間転写ベルト30の内側に配置されている。
【0039】
カラーモードにおける画像形成動作の一例について簡単に説明する。先ず、各作像部3では、所定の周速度で回転駆動されている感光体4の外周面(像担持面)が、潤滑剤塗布装置6により潤滑剤を塗布され、クリーニングブレード16で残存するトナーを除去された後に帯電器8により帯電される。実施の形態では、感光体クリーニングブレード16として板状のブレードが使用されており、その一端側が感光体4の外周面に接触している。次に、帯電された感光体4の外周面には、画像情報に応じた光が露光装置10から投射され、静電潜像が形成される。続いて、静電潜像は、現像装置18から供給される現像剤のトナーにより顕在化される。このようにして感光体4上に形成された各色のトナー像は、感光体4の回転により一次転写領域に達すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体4から中間転写ベルト30上へ転写(一次転写)されて重ねられる。
【0040】
中間転写ベルト30に転写されることなく感光体4上に残留しているトナーは、感光体4とクリーニングブレード16との接触部に達すると、クリーニングブレード16で掻き取られ、感光体4の外周面から除去される。
【0041】
重ね合わされた4色のトナー像は、中間転写ベルト30によって二次転写領域41に搬送される。一方、そのタイミングに合わせて、給紙カセット44に収容された用紙が、二次転写領域41に搬送される。そして、4色のトナー像が、二次転写領域41において中間転写ベルト30から用紙に二次転写される。4色のトナー像が転写された用紙は、搬送路50のさらに下流側へ搬送され、定着ローラ54によってトナー像が用紙に定着された後、排紙ローラ56によって排紙部58に送り出される。二次転写領域41を通過した中間転写ベルト30は、クリーニング部材42で清掃される。その後、各感光体4及び中間転写ベルト30の回転駆動が停止される。
【0042】
本発明にかかる潤滑剤塗布装置6は、上述した画像形成装置内の感光体4(静電潜像担持体)だけでなく、必要に応じて他の像担持体、例えば転写ベルト30や、図7に示した実施形態では、用いていないがトナー像を転写される転写ドラムあるいはこれらに相当する転写手段に適用できる。また、本発明にかかる潤滑剤装置6を適用したこれら転写ベルト、転写ドラムおよび相当品を含む画像形成装置は当然として本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
・実施形態2
図8は全体が600で表される本発明にかかる他の実施形態である潤滑剤塗布装置を示す図2と同方向からみた断面図である。潤滑剤164は、押圧を加える方向に垂直な断面(図中のX方向に垂直な断面)の面積が、回転ブラシ65に接触する部分から、形状記憶合金ばね62に向けて徐々に大きくなっている。潤滑剤164が回転ブラシ65により削り取られ厚み(図8のX方向の長さ)が減少すると、ばね62の変位も減少し、押圧力が減少する。潤滑剤164は、これに伴う潤滑剤塗布量の減少防止を目的として、回転ブラシ65と潤滑剤164との接触面積を変位の減少と共に増加させることができる形状となっている。
【0044】
図8では、潤滑剤164の紙面に平行な断面の形状は台形であるが、これに限定されるものでない。塗布手段65に接触する部分から、押圧手段62に向けて、図8中のX軸に垂直な面の断面積が徐々に大きくなる各種の断面形状が可能であり、このような断面形状として例えば上下の少なくとも何れか一方が凸状または凹状の曲面となっている形状等がある。
【0045】
なお、図8中の潤滑剤164以外の部分、即ち、固定板61、形状記憶合金ばね62、潤滑剤ホルダー63、回転ブラシ65およびガイド66(図示せず)は、図2と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明にかかる潤滑剤塗布装置の上面図である。
【図2】本発明にかかる潤滑剤塗布装置の断面図である。
【図3】潤滑剤塗布量と押圧力の関係を示すグラフである。
【図4】潤滑剤塗布量と温度の関係を示すグラフである。
【図5】押圧力と温度の関係を示すグラフである。
【図6】潤滑剤塗布量と温度の関係を示すグラフである。
【図7】本発明に係る画像形成装置の側面図である。
【図8】本発明にかかる潤滑剤塗布装置の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
4 感光体(静電潜像担持体)、6 潤滑剤塗布装置、61 固定板、62 押圧ばね(押圧手段)、63 潤滑剤ホルダー、64 潤滑剤ブロック(潤滑剤)、65 回転ブラシ(塗布手段)、66ガイド、67 潤滑剤ホルダー開口部、651 回転ブラシ中心軸、653 回転ブラシ植毛部(ブラシ部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持面を有する像担持体と、
円筒外径を有し、該円筒外形を該像担持面に接触させた状態で回転可能に保持された塗布手段と、
該像担持面に塗布される潤滑剤を含む潤滑剤ブロックと、
該潤滑剤ブロックを該塗布手段の該円筒外形に向けて押し付ける押圧手段と、
該塗布手段の回転に基づいて、該潤滑剤ブロックから該塗布手段の該円筒外形に供給された該潤滑剤を、該塗布手段の該円筒外形から該像担持面に供給する潤滑剤供給機構と、を備えた画像形成装置において、
該押圧手段が、オーステナイト相を有する形状記憶合金を含む弾性部材を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記形状記憶合金が、Niを40原子%〜55原子%含み、残部がTiおよび不可避不純物から成るNi−Ti合金、またはNiを40原子%〜55原子%含み、残部が10原子%未満の他の元素および不可避不純物から成るNi−Ti合金であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記形状記憶合金のオーステナイト変態開始温度が0℃以下であり、かつ、オーステナイト変態終了温度が50℃〜60℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
上記潤滑剤の押圧方向に垂直な断面の面積が、上記塗布手段に接触する部分から上記押圧手段に向けて徐々に大きくなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記潤滑剤が脂肪酸または脂肪酸金属塩、若しくはそれらの両方を含む固形潤滑剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置内に設置された潤滑剤塗布装置であって、
円筒外形を有し、該画像形成装置内でかつ該潤滑剤塗布装置外に配置された像担持体の像担持面に該円筒外形を接触させた状態で回転可能に保持された塗布手段と、
該像担持面に塗布される潤滑剤を含む潤滑剤ブロックと、
該潤滑剤ブロックを該塗布手段の該円筒外形に向けて押し付ける押圧手段と、
該塗布手段の回転に基づいて、該潤滑剤ブロックから該塗布手段の円筒外形に供給された該潤滑剤を、該塗布手段の該円筒外形から該像担持面に供給する潤滑剤供給機構と、を備えた潤滑剤塗布装置において、
該押圧手段が、オーステナイト相を有する形状記憶合金を含む弾性部材を備えていることを特徴とする潤滑剤塗布装置。
【請求項7】
上記形状記憶合金が、Niを40原子%〜55原子%含み、残部がTiおよび不可避不純物から成るNi−Ti合金、またはNiを40原子%〜55原子%含み、残部が10原子%未満の他の元素および不可避不純物から成るNi−Ti合金であることを特徴とする請求項6に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項8】
上記形状記憶合金のオーステナイト変態開始温度が0℃以下であり、かつ、オーステナイト変態終了温度が50℃〜60℃であることを特徴とする請求項6または7に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項9】
上記潤滑剤の押圧方向に垂直な断面の面積が、上記塗布手段に接触する部分から、上記押圧手段に向けて徐々に大きくなることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項10】
上記潤滑剤が脂肪酸または脂肪酸金属塩、若しくはそれらの両方を含む固形潤滑剤であることを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の潤滑剤塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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