説明

潤滑剤評価装置

【課題】再現性を確保しつつ、グリース等の潤滑剤の潤滑特性に関する情報の評価を行うことのできる潤滑剤評価装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る潤滑剤評価装置は、潤滑剤の潤滑特性に関する情報の評価に用いられる潤滑剤評価装置であって、互いに当接しつつ回転自在に設けられる第1円形部材1及び第2円形部材2と、第1円形部材1及び第2円形部材2の少なくともいずれか一方を回転駆動させる駆動部と、少なくとも第1円形部材1の外周部11に全周に亘って形成されるとともに、第1円形部材1と第2円形部材2との当接部分を潤滑する潤滑剤が保持される溝部12と、を備え、第2円形部材2の外周面21は、溝部12の底面13に当接して設けられる、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば回転軸を回転自在に支持する軸受(転がり軸受やすべり軸受)には、回転軸の円滑な回転を維持するために、一般的には潤滑油が供給されている。一方、潤滑油を貯留するためのタンクを省略でき、メンテナンスのコストを削減できるという理由等から、軸受にグリースを塗布するグリース潤滑を適用する場合がある。グリースは、基油となる潤滑油に増ちょう剤を分散させて半固体状又は固体状にした潤滑剤である。増ちょう剤は繊維状で網の目のように絡み合っており、その隙間に基油を保持している。毛細管現象により増ちょう剤に保持された基油が滲み出し、軸受の摺動・転動部に供給され、潤滑を維持すると考えられている。
【0003】
軸受を長時間使用すると、通常、その摺動・転動部の表面が剥離して使用不可となる剥離寿命に達する。しかし、グリース潤滑においては、軸受の剥離寿命よりも、増ちょう剤に保持される基油が減少又は枯渇して焼き付きが生じる等、グリースが変質することで使用不可となるグリース寿命に早く到達する場合が多い。よって、グリース潤滑を用いる装置を設計する場合には、グリース寿命を明確にする必要がある。
【0004】
グリース寿命を評価するための装置として、例えば四球試験装置やこの四球試験装置を改良した摩擦試験装置が用いられる場合がある(例えば特許文献1参照)。四球試験装置では、4つの金属球のうち3つの球をグリースが貯溜されるカップ底部に互いに当接させつつ正三角形状に並べ、残りの1つの球を上記3つの球の中央部分に当接させ下方に向けて負荷を加えた状態で上記1つの球を回転させるものである。上記1つの球を回転させることで、4つの球は互いに摺動しつつ回転する。例えば、基油が減少又は枯渇して焼き付きが生じるまでの時間をグリース寿命としている。なお、特許文献1に示す摩擦試験装置では、上記1つの球の代わりに円錐状の先端を有する部材が用いられている。四球試験装置は、元々、球の表面における剥離を評価するための試験装置であるが、グリース寿命を評価するためにも好適に用いられている。グリースは上述したカップ内に貯留されるため、カップを計量器のように用いることで貯留されるグリースの量を一定にでき、定量的な評価を行うことができる。
また、摺動・転動部の剥離を評価するための装置として、いわゆる2円筒試験装置が用いられている(例えば非特許文献1参照)。2円筒試験装置は、一対の円形部材の外周面を互いに当接させ、相反する方向で回転させることで外周面を摺動・転動させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−73816号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】田中・藤井・前田、「新しい高温長寿命軸受鋼(STJ2)の開発」、NTN THCHNICAL REVIEW No.68 (2000) p.51〜57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、グリース寿命に至るまでの時間を評価するだけでなく、例えばグリースの使用に伴う潤滑特性の経時的な変化(潤滑性能の低下等)に対する評価実施の要望がある。このような評価を行うためには、例えば摺動・転動部に塗布されているグリースを一定時間毎に一部採取し、グリースの組成や物性の変化を計測して、グリースの潤滑特性に関する情報を取得する必要がある。
しかしながら、上述した四球試験装置をこのような評価に用いる場合には、グリースをカップから一部採取するために4つの球に加えられている負荷を解除する必要がある。負荷の解除とともに4つの球の向きや位置が変わることから、再現性が失われ、試験を続行することが困難になっていた。
【0008】
一方、上述した2円筒試験装置をグリースの評価に使用すると、一対の円形部材の外周面は外部に露出して設けられているため、グリースを一定時間毎に一部採取することは容易である。また、一対の円形部材の回転を一時的に停止させたとしても、円形部材の向きや位置が変わらないため、試験を続行することも可能である。
しかしながら、2円筒試験装置では、一対の円形部材の外周面に一定量のグリースを塗布することが難しく、量的に再現性のある評価が難しいという課題があった。また、一対の円形部材の当接箇所において押しよけられたグリースからは、基油(潤滑油)を上記当接箇所に供給しにくくなり、潤滑油の枯渇が早期に生じてしまうという課題があった。
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、再現性を確保しつつ、グリース等の潤滑剤の潤滑特性に関する情報の評価を行うことのできる潤滑剤評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係る潤滑剤評価装置は、潤滑剤の潤滑特性に関する情報の評価に用いられる潤滑剤評価装置であって、互いに当接しつつ回転自在に設けられる第1円形部材及び第2円形部材と、第1円形部材及び第2円形部材の少なくともいずれか一方を回転駆動させる駆動部と、少なくとも第1円形部材の外周部に全周に亘って形成されるとともに、第1円形部材と第2円形部材との当接部分を潤滑する潤滑剤が保持される溝部と、を備え、第2円形部材の外周面は、溝部の底面に当接して設けられる、という構成を採用する。
本発明によれば、第1円形部材に形成される溝部を計量器のように用いることで、溝部に設けられる潤滑剤の量を一定にすることが可能となる。
また、本発明によれば、第1円形部材の溝部が外部に露出して設けられているため、第1円形部材及び第2円形部材の向きや位置を変えることなく、溝部に設けられる潤滑剤を一部採取することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る潤滑剤評価装置は、溝部の底面が第1円形部材の回転軸線に沿って形成され、第2円形部材の外周面が第2円形部材の第2回転軸線に沿って形成される、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明に係る潤滑剤評価装置は、回転軸線及び第2回転軸線が互いに平行して設けられる、という構成を採用する。
【0013】
また、本発明に係る潤滑剤評価装置は、回転軸線及び第2回転軸線が互いにねじれの位置関係で設けられる、という構成を採用する。
【0014】
また、本発明に係る潤滑剤評価装置は、第1円形部材の回転軸線を含む面での溝部の断面形状が円弧を含んで形成される、という構成を採用する。
【0015】
また、本発明に係る潤滑剤評価装置は、潤滑剤としてグリースが用いられる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、溝部に設けられる潤滑剤の量を一定にできるため、潤滑剤の潤滑特性に関して定量的な評価を行うことができる。また、第1円形部材及び第2円形部材の向きや位置を変えることなく溝部に設けられる潤滑剤を一部採取できるため、再現性を確保しつつ、評価試験を続行することができる。
したがって、本発明によれば、再現性を確保しつつ潤滑剤の潤滑特性に関する情報の評価を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態における潤滑剤評価装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1(b)の第1ローラ及び第2ローラを拡大した側面図である。
【図3】第1の実施形態における第1ローラへのグリースの塗布を示す概略図である。
【図4】第1の実施形態における第1ローラ及び第2ローラの試験時における当接箇所を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態における第1ローラ及び第2ローラの配置の変形例を示す概略図である。
【図6】第2の実施形態における第1ローラ及び第2ローラの側面図である。
【図7】第1の実施形態における第1ローラの一変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図7を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態における潤滑剤評価装置Eの構成を示す概略図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。なお、図1では、紙面上下方向を鉛直方向として記載している。
図1に示す潤滑剤評価装置Eは、潤滑剤における潤滑特性に関する情報の評価に用いられる評価装置である。なお、本実施形態の潤滑剤評価装置Eは、評価の対象である潤滑剤としてグリースを用いており、以下の説明ではグリースに関して説明する。グリースは、基油となる潤滑油に増ちょう剤を分散させて半固体状又は固体状にした潤滑剤である。
潤滑剤評価装置Eは、第1ローラ1(第1円形部材)と、第2ローラ2(第2円形部材)と、モータ3(駆動部)とを備えている。
【0020】
第1ローラ1及び第2ローラ2は、いずれも円形に成形された部材であって、互いの外周面が当接しつつそれぞれ回転自在に設けられている。第1ローラ1及び第2ローラ2は、鉛直方向に並んで設けられている。第2ローラ2の外径よりも、第1ローラ1の外径が大きく成形されている。第1ローラ1及び第2ローラ2は、転がり軸受の材料として使用される金属等を用いて成形されており、炭素鋼や、鋼材に焼き入れ処理及び焼き戻し処理を施した調質材、表面処理を施した鋼材等が用いられる。
なお、第1ローラ1及び第2ローラ2は互いの外周面が当接する部分以外は、転がり軸受の材料以外の金属等を用いて成形してもよい。
【0021】
第1ローラ1の中心部分には回転軸4が貫通して固定されている。回転軸4は支持部5に回転自在に支持されている。そのため、第1ローラ1は回転軸4の軸線L1(回転軸線)周りで回転自在に設けられており、第1ローラ1の回転軸線と軸線L1とは同一位置に設けられている。
第2ローラ2の中心部分には支持軸6が貫通して固定されている。支持軸6は第2支持部7に回転自在に支持されている。そのため、第2ローラ2は支持軸6の第2軸線L2(第2回転軸線)周りで回転自在に設けられており、第2ローラ2の回転軸線と第2軸線L2とは同一位置に設けられている。なお、第2ローラ2が支持軸6に回転自在に支持されている構成であってもよい。第2支持部7には、第2支持部7を鉛直方向で移動させるための不図示の移動構造が設けられている。この移動構造は自動・手動のいずれであってもよい。
軸線L1及び第2軸線L2は、互いに平行して設けられている。
【0022】
モータ3は第1ローラ1を軸線L1周りで回転駆動させるための駆動部である。モータ3の不図示の出力軸は、回転軸4と連結固定されている。
なお、モータ3が第2ローラ2を第2軸線L2周りで回転駆動させるものであってもよいし、第1ローラ1及び第2ローラ2にそれぞれ異なるモータが連結される構成であってもよい。また、モータに限定されず、第1ローラ1や第2ローラ2を回転駆動させる駆動装置であればよい。
【0023】
続いて、本実施形態の特徴部分を含む第1ローラ1及び第2ローラ2について、より詳細に説明する。図2は、図1(b)の第1ローラ1及び第2ローラ2を拡大した側面図である。
第1ローラ1の外周部11には、全周に亘って溝部12が形成されている。溝部12は、グリースを保持できる凹形状に形成されており、径方向外側に臨んで設けられている。溝部12の底面13(外周面)は、軸線L1に沿って形成されている。換言すれば、底面13は、軸線L1と平行な直線を軸線L1周りに回転させた形状となっている。底面13の軸線L1方向での両側には、縁部14がそれぞれ設けられている。一対の縁部14の径方向での高さは同一となっており、一対の縁部14の径方向外側における端面は軸線L1に沿って形成されている。すなわち、一対の縁部14の径方向外側における端面も、軸線L1と平行な直線を軸線L1周りに回転させた形状となっている。
【0024】
溝部12の底面13には、第2ローラ2の外周面21が当接して設けられている。外周面21は、第2軸線L2に沿って形成されている。換言すれば、外周面21は、第2軸線L2と平行な直線を第2軸線L2周りに回転させた形状となっている。第2ローラ2は回転自在に支持され、その外周面21が第1ローラ1の底面13に当接しているため、第2ローラ2は第1ローラ1の回転に伴って従動して回転する。
【0025】
続いて、潤滑剤評価装置Eを用いて、グリースの潤滑特性に関する情報を取得する方法について説明する。図3は、本実施形態における第1ローラ1へのグリースGの塗布を示す概略図である。また、図4は、本実施形態における第1ローラ1及び第2ローラ2の試験時における当接箇所を示す断面図である。
【0026】
まず、第1ローラ1へのグリースGの塗布方法を説明する。
第2支持部7に設けられた移動構造を用いて、第2支持部7及び第2ローラ2を鉛直方向上方に移動させ、第2ローラ2を第1ローラ1から離間させる。次に、第1ローラ1の溝部12に、全周に亘ってグリースGを塗布する。
次に、図3に示すように、へら状のスクレーパ8を用いて、溝部12に塗布されたグリースGを定量化する。スクレーパ8を、一対の縁部14の径方向外側の端面に当接させて、全周に亘り周方向に移動させる。スクレーパ8を周方向に移動させることで、一対の縁部14の端面を結ぶ直線よりも径方向外側に位置するグリースGは除去され、溝部12には一定量のグリースGが残存する。すなわち、溝部12を計量器のように用いることで、溝部12に塗布されるグリースGの量を一定にすることができる。なお、スクレーパ8は、常にその直線部分において一対の縁部14に当接させる必要がある。
【0027】
次に、グリースGに対する評価試験の方法を説明する。
第2支持部7に設けられた移動構造を用いて、第2支持部7及び第2ローラ2を鉛直方向下方に移動させ、第2ローラ2の外周面21を第1ローラ1の底面13に当接させる。この状態で、モータ3を作動させ、第1ローラ1を回転させる。第2ローラ2は外周面21において第1ローラ1の底面13と当接しているため、第2ローラ2は第1ローラ1と相反する方向で従動して回転する。
【0028】
外周面21が底面13に当接したまま第1ローラ1及び第2ローラ2が回転すると、図4に示すように、グリースGは第2ローラ2に押しよけられて、径方向外側に突出した状態となる。もっとも、本実施形態における第1ローラ1には一対の縁部14が設けられているため、縁部14がグリースGを保持することができ、第1ローラ1が回転することでグリースGが飛び散ることを防止・抑制することができる。
また、第1ローラ1に縁部14が設けられているために、第2ローラ2に押しよけられたグリースGは、第2ローラ2の近傍に保持される。そのため、押しよけられたグリースGからも、底面13及び外周面21の当接箇所に対して潤滑油(基油)を適切に供給することができ、グリースGの量に応じた正しい評価結果を得ることができる。
【0029】
第1ローラ1及び第2ローラ2を相反する方向で回転させることで、底面13と外周面21との間には転がり摩擦及びすべり摩擦(主に転がり摩擦)が生じる。転がり摩擦等が生じることで、底面13及び外周面21の当接箇所には熱が生じる。この熱がグリースGに伝わることで、グリースGの組成・物性の変化、グリースGに含まれる潤滑油の蒸発・変質、増ちょう材の変質・破壊等が生じる可能性がある。このような変化が生じることで、グリースGの潤滑特性が変化(すなわち潤滑性能の低下)する可能性がある。
【0030】
本実施形態の第1ローラ1の溝部12は、径方向外側に臨んで設けられているために、モータ3を停止させ第1ローラ1及び第2ローラ2の回転を停止させると、溝部12からグリースGを容易に一部採取することができる。一部採取したグリースGを用いて、その組成・物性の変化を調査することができる。また、第1ローラ1及び第2ローラ2の回転を停止させても、第1ローラ1及び第2ローラ2の相対的な向きや位置は変化しないため、グリースGの評価に対して影響を与えることなく評価試験を続行することができる。したがって、一定時間毎に第1ローラ1及び第2ローラ2の回転を停止させ、グリースGを一部採取して調査を行うことで、グリースGの使用に伴う潤滑特性に関する情報の経時的な変化を評価することができる。
なお、本実施形態では、転がり軸受のうち、ころ軸受を想定した評価試験を行うことができる。
【0031】
なお、上述した評価試験を図5に示す第1ローラ1及び第2ローラ2の配置関係で行ってもよい。図5は、本実施形態における第1ローラ1及び第2ローラ2の配置の変形例を示す概略図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のA矢視図である。なお、図5(b)は平面図となっている。
【0032】
図5に示すように、第2ローラ2は第1ローラ1に対して傾いた状態で当接している。なお、第2ローラ2は外周面21において第1ローラ1の底面13に当接しており、第1ローラ1と第2ローラ2との間で他に当接している箇所は存在しない。図5(b)に示すように、第1ローラ1及び第2ローラ2を上方から見ると、それぞれの軸線L1と第2軸線L2との間には角度θが形成されている。すなわち、軸線L1と第2軸線L2はいわゆるねじれの位置関係で設けられている。なお、ねじれの位置関係とは、2つの軸が平行の位置関係になく、且つ交差もしない位置関係をいう。
【0033】
図5に示す配置関係でモータ3を作動させ第1ローラ1及び第2ローラ2を回転させると、図2に示す配置関係に比べて、底面13と外周面21との間におけるすべり摩擦をより多く生じさせることができる。実際の軸受では、その形状によってすべり摩擦が多く生じるものがあり、そのような軸受を想定した評価試験を行うことができる。
【0034】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、溝部12に設けられるグリースの量を一定にできるため、グリースの潤滑特性に関して定量的な評価を行うことができる。また、第1ローラ1及び第2ローラ2の向きや位置を変えることなく溝部12に設けられるグリースを一部採取できるため、再現性を確保しつつ、評価試験を続行することができる。
したがって、本実施形態によれば、再現性を確保しつつグリースの潤滑特性に関する情報の評価を行うことができるという効果がある。
【0035】
〔第2実施形態〕
図6は、本実施形態における第1ローラ1A(第1円形部材)及び第2ローラ2A(第2円形部材)の側面図である。なお、図6における第1ローラ1Aは一部断面図として表している。また、図6において、図2に示す第1の実施形態の構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態における第1ローラ1A及び第2ローラ2Aは、第1の実施形態に示す潤滑剤評価装置Eに対して、第1ローラ1及び第2ローラ2の代わりに設けられている。
【0036】
第1ローラ1Aの外周部11には、全周に亘って第2溝部15(溝部)が形成されている。第2溝部15は、グリースを保持できる凹形状に形成されており、径方向外側に臨んで設けられている。軸線L1を含む面での第2溝部15の断面形状は、円弧状に形成されている。なお、第2溝部15において、少なくとも第2ローラ2Aが当接する部分が円弧状に形成されていればよい。
【0037】
第2溝部15には、第2ローラ2Aの第2外周面22(外周面)が当接して設けられている。なお、第2外周面22は、第2溝部15の底面(第2溝部15の内面のうち軸線L1側の面)に当接している。第2外周面22は、第2溝部15に応じた形状で形成されている。すなわち、第2軸線L2を含む面での第2外周面22の断面形状は円弧状に形成されており、第2外周面22の円弧の曲率と第2溝部15の円弧の曲率は同一となっている。
本実施形態における第1ローラ1A及び第2ローラ2Aを用いることで、転がり軸受のうち、玉軸受を想定した評価試験を行うことができる。
【0038】
したがって、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、第1の実施形態において得られる効果に加え、玉軸受を想定した評価試験を行うことができるという効果がある。
【0039】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0040】
例えば、第1の実施形態では、第1ローラ1はモータ3によって回転駆動され、第2ローラ2は従動して回転するが、これに限定されるものではなく、第2ローラ2を回転駆動させるモータ等の駆動部を設けてもよい。この場合には、互いに当接する底面13と外周面21とが同じ速度で転動するようにそれぞれのモータの回転数を設定してもよいし(主に転がり摩擦が生じる)、底面13と外周面21とが所定の速度比で転動することで当接箇所での摺動すなわちすべり摩擦が生じるようにしてもよい。なお、第2実施形態における第2ローラ2Aをモータ3と異なる駆動部で回転駆動させ、上述したように回転させてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、第2ローラ2,2Aの外径よりも第1ローラ1,1A,1Bの外径が大きく形成されているが、これに限定されるものではなく、第1ローラ1,1A,1Bの外径よりも第2ローラ2,2Aの外径が大きく形成されていてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では潤滑剤としてグリースが用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば高い粘度(又は高い粘着性)を有する潤滑油を評価するために潤滑剤評価装置Eを用いてもよい。
【0043】
また、第1の実施形態における第1ローラ1の代わりに、図7に示す第1ローラ1Bを用いてもよい。図7は、第1の実施形態における第1ローラ1の一変形例を示す側面図である。
第1ローラ1Bの外周部11には、全周に亘って一対の第3溝部16が形成されている。第3溝部16は、グリース等の潤滑剤を保持できる凹形状に形成されており、径方向外側に臨んで設けられている。一対の第3溝部16の間に第3外周面17が形成されており、第3外周面17は第2ローラ2の外周面21と当接している。なお、第3溝部16にグリースが設けられた場合には、毛細管現象によって第3外周面17及び外周面21の当接箇所に潤滑油が供給される。
【符号の説明】
【0044】
1,1A…第1ローラ(第1円形部材)、11…外周部、12…溝部、13…底面、15…第2溝部(溝部)、2,2A…第2ローラ(第2円形部材)、21…外周面、22…第2外周面(外周面)、3…モータ(駆動部)、E…潤滑剤評価装置、L1…軸線(回転軸線)、L2…第2軸線(第2回転軸線)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤の潤滑特性に関する情報の評価に用いられる潤滑剤評価装置であって、
互いに当接しつつ回転自在に設けられる第1円形部材及び第2円形部材と、
前記第1円形部材及び前記第2円形部材の少なくともいずれか一方を回転駆動させる駆動部と、
少なくとも前記第1円形部材の外周部に全周に亘って形成されるとともに、前記第1円形部材と前記第2円形部材との当接部分を潤滑する潤滑剤が保持される溝部と、を備え、
前記第2円形部材の外周面は、前記溝部の底面に当接して設けられることを特徴とする潤滑剤評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑剤評価装置において、
前記溝部の底面は、前記第1円形部材の回転軸線に沿って形成され、
前記第2円形部材の外周面は、前記第2円形部材の第2回転軸線に沿って形成されることを特徴とする潤滑剤評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の潤滑剤評価装置において、
前記回転軸線及び前記第2回転軸線は、互いに平行して設けられることを特徴とする潤滑剤評価装置。
【請求項4】
請求項2に記載の潤滑剤評価装置において、
前記回転軸線及び前記第2回転軸線は、互いにねじれの位置関係で設けられることを特徴とする潤滑剤評価装置。
【請求項5】
請求項1に記載の潤滑剤評価装置において、
前記第1円形部材の回転軸線を含む面での前記溝部の断面形状は、円弧を含んで形成されることを特徴とする潤滑剤評価装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の潤滑剤評価装置において、
前記潤滑剤として、グリースが用いられることを特徴とする潤滑剤評価装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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