説明

潤滑油供給装置

【課題】大型化や重量の増大を抑えつつ軸受を潤滑および冷却すること。
【解決手段】ガスタービンのタービン軸を回転可能に支持する軸受52に対して潤滑油を供給する潤滑油供給装置1において、一端2aが外気に開放され他端2bが軸受52に向けて配置された給気管2と、ガスタービンの圧縮機に一端が接続され給気管2の内部に貫入された他端3bが軸受52側に向けて配置され、かつ途中に絞り部3cが設けられた抽気管3と、潤滑油が貯留される潤滑油タンク5に一端4aが接続され給気管2の内部に貫入された他端4bが抽気管3よりも給気管2の一端2a側に配置された潤滑油管4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのタービン軸を支持する軸受に対して潤滑油を供給する潤滑油供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の潤滑油供給装置(ベアリング機構)は、メンテナンス性を向上させることができ、かつ機構を簡素化することを目的としている。この潤滑油供給装置は、母機に搭載され、前記母機から発射されるまでの待機時に、同母機の飛行に伴うラム圧によりエンジンのロータを回転させた状態でエンジンスタートを行うべく待機する飛昇体(飛翔体)のエンジンにおけるベアリング機構であって、前記待機時にグリースにより潤滑されるロータを回転自在に支持する軸受と、前記飛翔体のエンジンが始動されて母機から発射され飛翔する飛翔時には、コンプレッサからの圧縮空気を利用して前記軸受を潤滑するためのオイルミストを発生するオイルミスト発生手段とを備える。
【0003】
また、従来、例えば、特許文献2に記載の潤滑油供給装置(潤滑装置)は、装置の従来要素の1つが故障して油の圧力損失が生じた場合でも、エンジンの継続した動作を可能とするように受動的に動作することを目的としている。この潤滑油供給装置は、通常の運転モードおよび異常な運転モードにおいて潤滑を要する要素のための潤滑装置であって、通常の運転モードにおいて潤滑剤を受け入れるとともに、予備の量の潤滑剤を閉じ込めるリザーバと、予備の量の潤滑剤と連通するとともに、両方の運転モードにおいてタービンエンジンの流体流路から抽出された加圧流体によって直接かつ連続的に駆動される吸引器とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−165390号公報
【特許文献2】特許第4139797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の潤滑油供給装置は、タービンエンジンの圧縮機から抽気した高圧流体を用い、この高圧流体によってタンクに貯留された潤滑油を吸い込んでオイルミストとして軸受に供給することで、部品増による大型化や重量の増大を抑え、製造コストを低減することが可能である。しかし、従来の潤滑油供給装置では、高圧流体が高温であることから、軸受が過熱して軸受の回転機能が低下するおそれがあるため、冷却手段が必要となる。特許文献2に記載の潤滑油供給装置は、高圧流体と潤滑油とが混合する以前に、高圧流体を通す配管を潤滑油のタンク内に貫入することで、高圧流体を冷却しているが、高圧流体の熱交換の媒体が潤滑油であるため、当該潤滑油が加熱され、結果として軸受の冷却効果が小さい。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、大型化や重量の増大を抑えつつ軸受を潤滑および冷却することのできる潤滑油供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の潤滑油供給装置は、ガスタービンのタービン軸を回転可能に支持する軸受に対して潤滑油を供給する潤滑油供給装置において、一端が外気に開放され他端が前記軸受に向けて配置された給気管と、前記ガスタービンの圧縮機に一端が接続され前記給気管の内部に貫入された他端が前記軸受側に向けて配置され、かつ途中に絞り部が設けられた抽気管と、潤滑油が貯留される潤滑油タンクに一端が接続され前記給気管の内部に貫入された他端が前記抽気管よりも前記給気管の一端側に配置された潤滑油管と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この潤滑油供給装置によれば、ガスタービンが運転されると、圧縮機で圧縮された高圧の作動流体が、絞り部による減圧よって抽気管を通って給気管の内部で軸受側に向けて導かれる。このため、給気管では、一端側が低圧となって外気が吸引され軸受に向けて供給される。同時に、給気管の内部では、潤滑油管の他端から潤滑油が給気管の内部に吸引され、外気の吸引と混合してオイルミストとなり軸受に供給される。この潤滑油供給装置によれば、圧縮機で圧縮された作動流体は高温であるが、外気によって作動流体および潤滑油が冷却される。しかも、圧縮機で圧縮された高圧の作動流体が給気管に導かれることによって、給気管を通して外気と潤滑油とを吸引するため、潤滑油を送るポンプを必要としない。また、外気によって作動流体および潤滑油を冷却するため、潤滑油を冷却するための熱交換器を必要としない。この結果、ガスタービンの大型化や重量の増大を抑えつつ軸受を潤滑および冷却することができる。
【0009】
また、本発明の潤滑油供給装置は、前記抽気管の他端と前記潤滑油管の他端とを配置した間の前記給気管の部位にベンチュリー部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この潤滑油供給装置によれば、ベンチュリー部によって給気管の内部であって潤滑油管の他端から軸受側の圧が下がるので、高圧の作動流体との差圧がより大きくなるため、外気と潤滑油とを効率よく給気管の内部に吸引することができ、効率よくオイルミストを軸受に供給することができる。
【0011】
また、本発明の潤滑油供給装置は、飛昇体のガスタービンエンジンにおいて適用されることを特徴とする。
【0012】
飛昇体のガスタービンエンジンでは、軸受を潤滑する場合にグリース潤滑が多く適用されているが、より長時間の飛昇によってグリースが失われた場合、軸受を潤滑することができなくなる。
そこで、オイルミストを供給して軸受を潤滑すればよいが、潤滑油を送るポンプや、潤滑油を冷却するための熱交換器などを装備することは、飛昇体の大型化や重量の増大を招くことから好ましくない。この点、本発明の潤滑油供給装置によれば、ガスタービンの大型化や重量の増大を抑えつつ軸受にオイルミストを供給することが可能であり、かつ軸受を冷却することが可能であることから、飛昇体の長時間の飛昇に対してより顕著な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型化や重量の増大を抑えつつ軸受を潤滑および冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る潤滑油供給装置の概略図である。
【図2】図2は、図1に示す潤滑油供給装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る潤滑油供給装置の概略図であり、図2は、図1に示す潤滑油供給装置の拡大図である。本実施の形態の潤滑油供給装置は、ガスタービン50におけるタービン軸51を回転可能に支持する軸受52に対して潤滑油を供給するものである。
【0017】
ガスタービン50は、図1に例示するように、圧縮機53と、燃焼器54と、タービン55とを含み構成されている。
【0018】
タービン軸51は、ガスタービン50のケーシング50aに対し、軸受52によって回転可能に支持されている。軸受52は、タービン軸51の中心軸Sに沿う長手方向で複数(図1では2つを示す)設けられている。
【0019】
圧縮機53は、インペラ531と、ディフューザ532とを備え、これらインペラ531およびディフューザ532がケーシング50aに収容されている。インペラ531は、ディスク531aと、このディスク531aの周囲に放射状に配置された複数枚のブレード531bとを含み構成されている。ディスク531aは、タービン軸51に取り付けられており、これによりインペラ531は、タービン軸51とともに中心軸Sの回りに同一方向に回転する。ケーシング50aは、作動流体(例えば、空気)を通過させる流路533を形成する。流路533は、中心軸Sを中心として環状に形成され、インペラ531のディスク531aの小径側であるブレード531bの前縁側から、各ブレード531b間を通過しつつ半径方向外側に向かってディスク531aの大径側であるブレード531bの後縁側に至る。ディフューザ532は、ケーシング50aが形成する流路533において、インペラ531の下流側に設けられており、流路533の対向する壁面間に複数枚のベーンを有し、インペラ531の回転によってブレード531bを通過した作動流体の有する運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する。
【0020】
燃焼器54は、ケーシング50aによって形成され、主圧力室541と、燃焼器室542とを備えている。主圧力室541は、中心軸Sを中心として環状に形成され、圧縮機53の流路533の下流側に接続されて、作動流体を燃焼器室542に導くものである。燃焼器室542は、中心軸Sを中心として環状に形成され、主圧力室541に通じて設けられ、燃料ノズル543が設けられており、タービン55に通じて形成されている。
【0021】
タービン55は、ディスク55aと、このディスク55aの外周に配置された複数枚のタービンブレード55bとを含み構成されている。ディスク55aは、タービン軸51に取り付けられており、これによりタービン55は、タービン軸51とともに中心軸Sの回りに同一方向に回転する。また、タービン55は、ケーシング50aによって形成されたタービンノズル551によって周囲を覆われている。
【0022】
このようなガスタービン50は、圧縮機53において、中心軸Sの回りにインペラ531が回転することによって、作動流体は、圧縮されつつ、主圧力室541に導かれ、燃焼器54内に入り、燃焼器54内に燃料ノズル543によって供給された燃料と混合されて燃焼させられた後、高温の燃焼ガスとなってタービン55へ導かれ、タービン55とともにタービン軸51を中心軸Sの回りに回転し、その後、燃焼ガスは、タービンノズル551から排出される。このガスタービン50は、例えば、飛昇体のエンジンとして適用される。
【0023】
上述したガスタービン50の軸受52に対し、潤滑油を供給する本実施の形態の潤滑油供給装置1は、図1および図2に示すように、給気管2と、抽気管3と、潤滑油管4とを含み構成されている。この潤滑油供給装置1は、図1に示すように、複数の軸受52に対応してそれぞれ設けられている。また、複数の軸受52がケーシング50aで形成された1つの軸受収容部(図示せず)に収容されている場合は、この軸受収容部に対応して1つの潤滑油供給装置1が設けられていてもよい。
【0024】
給気管2は、ケーシング50aに取り付けられており、一端2aが外気に開放され、他端2bが軸受52(または軸受収容部)に向けて配置されている。すなわち、給気管2は、ケーシング50a(飛昇体)の外部と、軸受52を配置した部分とを通じさせる通路を形成するものである。
【0025】
抽気管3は、ケーシング50aに取り付けられており、ガスタービン50の圧縮機53における高圧側(ディフューザ532の後段)に一端3aが接続され、他端3bが給気管2の内部に貫入されている。給気管2の内部に貫入された他端3bは、軸受52側に向けて配置されている。すなわち、抽気管3は、圧縮機53の高圧側と、給気管2の内部とを通じさせる通路を形成するものである。また、抽気管3は、その途中に絞り部3cが設けられている。絞り部3cは、オリフィスまたは開閉弁などによって形成される。絞り部3cが開閉弁の場合、抽気管3の途中を絞るように開閉弁を調整しておく。さらに。抽気管3は、給気管2の内部に貫入された他端3bが絞られたチョーク3dが形成されている。
【0026】
潤滑油管4は、潤滑油が貯留される潤滑油タンク5に一端4aが接続され、他端4bが給気管2の内部に貫入されている。給気管2の内部に貫入された他端4bは、抽気管3よりも給気管2の一端2a側に配置されている。すなわち、潤滑油管4は、潤滑油タンク5と、給気管2の内部とを通じさせる通路を形成するものである。
【0027】
このように、本実施の形態の潤滑油供給装置1は、一端2aが外気に開放され他端2bが軸受52に向けて配置された給気管2と、ガスタービン50の圧縮機53に一端3aが接続され給気管2の内部に貫入された他端3bが軸受52側に向けて配置され、かつ途中に絞り部3cが設けられた抽気管3と、潤滑油が貯留される潤滑油タンク5に一端4aが接続され給気管2の内部に貫入された他端4bが抽気管3よりも給気管2の一端2a側に配置された潤滑油管4とを備える。
【0028】
この潤滑油供給装置1は、ガスタービン50が運転されると、圧縮機53で圧縮された高圧の作動流体が、絞り部3cによる減圧よって抽気管3を通って給気管2の内部で軸受52側に向けて導かれる。このため、給気管2では、一端2a側が低圧となって外気が吸引され軸受52に向けて供給される。同時に、給気管2の内部では、潤滑油管4の他端4bから潤滑油が給気管2の内部に吸引され、外気の吸引と混合してオイルミストとなり軸受52に供給される。
【0029】
このように、本実施の形態の潤滑油供給装置1では、圧縮機53で圧縮された作動流体は高温であるが、外気によって作動流体および潤滑油が冷却される。しかも、本実施の形態の潤滑油供給装置1は、圧縮機53で圧縮された高圧の作動流体が給気管2に導かれることによって、給気管2を通して外気と潤滑油とを吸引するため、潤滑油を送るポンプを必要としない。また、本実施の形態の潤滑油供給装置1は、外気によって作動流体および潤滑油を冷却するため、潤滑油を冷却するための熱交換器を必要としない。この結果、ガスタービン50の大型化や重量の増大を抑えつつ軸受52を潤滑および冷却することが可能になる。
【0030】
なお、抽気管3の他端3bにチョーク3dを形成することによって、給気管2の内部で軸受52側への作動流体の流速がより早くなることから、外気と潤滑油とを効率よく給気管2の内部に吸引することが可能になる。
【0031】
なお、潤滑油タンク5は、潤滑油が吸引された場合、当該潤滑油の吸引に伴って収縮する材料(例えば、可撓性を有する合成樹脂材)で形成され、または、収縮部(例えば、蛇腹構造)を有して形成されている。その他、潤滑油タンク5は、潤滑油の吸引に伴ってタンク外の空気を吸い込むように吸引口(または吸引管)を設けてもよい。吸引口(または吸引管)は、潤滑油が漏れないように逆止弁を設ける。
【0032】
また、本実施の形態の潤滑油供給装置1は、抽気管3の他端3bと潤滑油管4の他端4bとを配置した間の給気管2の部位にベンチュリー部2cが形成されていることが好ましい。
【0033】
この潤滑油供給装置1によれば、ベンチュリー部2cによって給気管2の内部であって潤滑油管4の他端4bから軸受52側の圧が下がるので、高圧の作動流体との差圧がより大きくなるため、外気と潤滑油とを効率よく給気管2の内部に吸引することができ、効率よくオイルミストを軸受52に供給することが可能になる。
【0034】
また、本実施の形態の潤滑油供給装置1は、飛昇体のガスタービンエンジンにおいて適用されることが好ましい。
【0035】
飛昇体のガスタービンエンジンでは、軸受52を潤滑する場合にグリース潤滑が多く適用されているが、より長時間の飛昇によってグリースが失われた場合、軸受52を潤滑することができなくなる。そこで、オイルミストを供給して軸受52を潤滑すればよいが、潤滑油を送るポンプや、潤滑油を冷却するための熱交換器などを装備することは、飛昇体の大型化や重量の増大を招くことから好ましくない。この点、本実施の形態の潤滑油供給装置1によれば、ガスタービン50の大型化や重量の増大を抑えつつ軸受52にオイルミストを供給することが可能であり、かつ軸受52を冷却することが可能であることから、飛昇体の長時間の飛昇に対してより顕著な効果を得ることが可能になる。なお、飛昇体において、軸受52に潤滑油を供給する場合、本実施の形態のオイルミストの供給に併せてグリース潤滑を行ってもよい。
【0036】
なお、本実施の形態の潤滑油供給装置1は、軸受52の回り方向に沿って複数設けられていることが、潤滑油を軸受52に対して潤滑油を効率よく供給するうえで好ましい。この場合、給気管2が複数設けられ、各給気管2に対して分岐された抽気管3および潤滑油管4が貫入される形態となる。
【符号の説明】
【0037】
1 潤滑油供給装置
2 給気管
2a 一端
2b 他端
2c ベンチュリー部
3 抽気管
3a 一端
3b 他端
3c 絞り部
3d チョーク
4 潤滑油管
4a 一端
4b 他端
5 潤滑油タンク
50 ガスタービン
51 タービン軸
52 軸受
53 圧縮機
54 燃焼器
55 タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのタービン軸を回転可能に支持する軸受に対して潤滑油を供給する潤滑油供給装置において、
一端が外気に開放され他端が前記軸受に向けて配置された給気管と、
前記ガスタービンの圧縮機に一端が接続され前記給気管の内部に貫入された他端が前記軸受側に向けて配置され、かつ途中に絞り部が設けられた抽気管と、
潤滑油が貯留される潤滑油タンクに一端が接続され前記給気管の内部に貫入された他端が前記抽気管よりも前記給気管の一端側に配置された潤滑油管と、
を備えることを特徴とする潤滑油供給装置。
【請求項2】
前記抽気管の他端と前記潤滑油管の他端とを配置した間の前記給気管の部位にベンチュリー部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の潤滑油供給装置。
【請求項3】
飛昇体のガスタービンエンジンにおいて適用されることを特徴とする請求項1または2に記載の潤滑油供給装置。

【図1】
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【図2】
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