説明

濾過支持体の幾何学的形状及び膜

本発明は、流体媒体を濾過するための濾過要素であって、縦中央軸線(A)を有する円筒形の硬質な多孔質基材を具備し、濾液が基材の周囲に得られるために、濾過されるべき流体媒体が流通することができる複数の通路を含み、通路が、基材内にその中央軸線(A)に対して平行に設けられると共に、連続多孔質領域によって互いから分離された少なくとも3つの同心濾過領域を画定する。本発明は、中央軸線(A)に最も近い多孔質領域(Z)の平均厚さが、基材(1)の周囲に最も近い多孔質領域(Zn−1)の平均厚さよりも小さく、多孔質領域の平均厚さが、基材の中央軸線(A)から離れてその周囲に向かって移動する場合において隣の多孔質領域と同じ又はこれよりも小さいという点において特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理されるべき流体媒体に含まれる分子又は粒子の分離を保証するようにされた濾過要素を用いた、接線分離(la separation tangentielle)の技術分野に関する。本発明の主題は、さらに具体的には、硬質な多孔質支持体を具備する新規な濾過要素であって、濾過されるべき流体を循環させる通路が配置され、前記支持体が独特の幾何学的形状を有する、濾過要素に関する。
【0002】
本発明の主題は、ナノ濾過、限外濾過、精密濾過、濾過又は逆浸透の分野において、特に有利な応用を確認することにある。
【背景技術】
【0003】
現状の技術では、筒状の又は平面状の支持体から作られた多数の濾過要素が既知である。特に、一連の通路が配置された、例えばセラミックである無機材料の多孔質支持体を具備する筒状のタイプの濾過要素が提案されてきた。この支持体には、例えば無機材料の1又は複数の分離層が付設されてもよく、この分離層は、一体的に繋げられた循環通路のそれぞれの表面に配置され、支持体に対して焼結することによって配置される。これらの層により、濾過要素の濾過特性を調節することができる。
【0004】
筒状の濾過要素の分野では、硬質の多孔質支持体は、細長い形状のものであり、多くは多角形又は円形である直線的断面を有する。互いに対してかつ多孔質支持体の縦軸に対して平行な複数の通路を具備する多数の支持体が、特に本願出願人によって既に提案されている。例えば、CERASIV社による特許文献1、CORNING社による特許文献2、ORELIS社による特許文献3並びに本願出願人の特許文献4及び特許文献5では、円形でない一連の通路を具備する濾過要素が記載されている。例えば、特許文献1の図3は、通路が支持体の中央軸線に対して平行に配置されている支持体の断面図である。これらの通路は3つの濾過ゾーンを画定し、これらの濾過ゾーンは、同心に分布して、添付した図1においてZ’及びZ’で表された連続多孔質ゾーンによって互いから分離されている。機能するときに、通路は、一方では処理される流体媒体の入口室と、他方では出口室と連通する。通路の表面は、多くは、所与の方向に一方のいわゆる通路の入口端部から他方のいわゆる出口端部まで、通路内部を循環する流体媒体内に含まれる分子または粒子の分離を保証する少なくとも1つの分離層で覆われる。ふるい効果によって、当該濾過要素は、粒子又は分子であって、これらが接触する濾過要素のゾーンの孔よりも大きな直径を有するすべての粒子又は分子を保持する限りにおいて、処理されるべき製品の分子又は粒子の種を分離することを達成する。分離の際における、流体の移送は、支持体を通して、選択任意には存在するならば分離層を通して行われる。分離層及び多孔質支持体を通過する処理されるべき流体の部分は、「透過液」又は「濾液」と呼ばれ、濾過要素を包囲する収集室に回収される。
【0005】
本願出願人は、このような支持体が、濾過作用の際に印加される圧力を考慮すると、高い圧力を受けて、これらの構造の一部の箇所に脆弱な箇所を有するおそれがあることを確認した。具体的には、本願出願人は、以前に言及したタイプの支持体内部に存在する応力場を評価し、最大応力が支持体の中央から離れて外側に向かって移動する方向に増加することを証明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第93/07959号
【特許文献2】欧州特許第0780148号明細書
【特許文献3】国際公開第00/29098号
【特許文献4】欧州特許第0778073号明細書
【特許文献5】欧州特許第0778074号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、濾過要素の性能を改善することを切望する本願出願人は、本発明において、先行技術で提案された濾過要素の機械的性能を最適化するために、新規な支持体の幾何学的形状を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような状況において、本発明は、
流体媒体を濾過するための濾過要素であって、
濾過要素が、縦中央軸線を有する円筒形の硬質な多孔質支持体と、支持体の周囲に濾液を収集するために、濾過されるべき流体媒体を循環させる複数の通路とを具備し、
通路が、支持体内にその中央軸線に対して平行に配置されると共に、同心に分布されかつ連続多孔質ゾーンによって互いから分離された少なくとも3つの濾過ゾーンを画定する、
濾過要素において、
中央軸線に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さが、支持体の周囲に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さよりも小さく、
多孔質ゾーンの平均厚さが、支持体の中央軸線から離れてその周囲に向かって移動する場合において隣の多孔質ゾーンと同じ又はこれよりも小さい、
濾過要素に関する。
【0009】
各多孔質ゾーンは2つの濾過ゾーン同士の間に位置し、各濾過ゾーンは1又は複数の通路を具備する。具体的には、各連続多孔質ゾーンを、或る濾過ゾーンの外方包被(enveloppe)と、支持体の中央から離れて周囲に向かって移動する方向に隣接する濾過ゾーンの内方包被との間に含まれるゾーンとして画定することができる。内方包被を画定するために、濾過ゾーンの通路の最低箇所(内方箇所又は向心箇所とも呼ばれる)が、多孔質支持体の中央に最も近い通路の箇所であることが考慮される。そして、内方包被が1つの同じ濾過ゾーンの各通路の最低箇所を一体的に繋げる曲線であって、この曲線が各通路の壁に対するその各通路の最低箇所における接線であることが考慮される。1つの実施形態によれば、濾過ゾーンのそれぞれでは、1つの同じ濾過ゾーンの各通路の最低箇所が、支持体の中心を中心とする円上に位置し、この円は内方包被に相当する。
【0010】
外方包被を画定するために、濾過ゾーンの通路の最高箇所(外方箇所又は遠心箇所とも呼ばれる)が、多孔質支持体の中央から最も遠く離れた通路の箇所であることが考慮される。そして、外方包被が、同じ濾過ゾーンの各通路の最高箇所同士を繋げる曲線であり、この曲線が各通路の壁に対するその各通路の最高箇所における接線であることが考慮される。1つの実施形態によれば、濾過ゾーンのそれぞれでは、1つの同じ濾過ゾーンの各通路の最高箇所が、支持体の中心を中心とする円上に位置し、この円は外方包被に相当する。
【0011】
多孔質ゾーンの「平均厚さ」は算術平均を意味する。本発明の実施形態の1つの変形例によれば、多孔質ゾーンは一定の厚さを有していてもよい。特に、図示されており以下に詳述されている1つの特殊な実施形態によれば、各多孔質ゾーンの境界を定める外方包被及び内方包被は2つの同心円であるように画定され、したがって各多孔質ゾーンは一定の厚さのものである。特許文献1の図3に示されている支持体に関しては、各多孔質ゾーンZ’及びZ’は同様に2つの同心円によって画定されるが、本発明に反して、多孔質ゾーンZ’が、図1で理解できるように、多孔質ゾーンZ’2よりも大きな厚さを有する。
【0012】
濾過ゾーンが円形である単一の中央通路から形成されるならば、内方包被及び外方包被は統合されて通路の輪郭に相当する。
【0013】
多孔質ゾーンは、隣接する(又は一連の)濾過ゾーン同士の間に互いに異なる境界が存在するので、すなわち隣接する濾過ゾーン同士の間での合体又は重複がないので、連続的であるといえる。言い換えれば、1つの濾過ゾーンの通路は、隣接する濾過ゾーンの2つの通路同士の間に、たとえ部分的にも、位置することができない。
【0014】
以下の記載において詳述される特殊な実施形態によれば、本発明による濾過要素は、以下の特徴のいずれか、又はこれらの特徴の任意の組み合わせを有することができる。
− 互いに異なる平均厚さを有する隣接する2つの連続多孔質ゾーン間の平均厚さが、1.01〜3.00倍、好ましくは1.10〜1.70倍変わる。
− 支持体の周囲に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さ割る、中央軸線に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さの比は、1.1〜6の範囲内、好ましくは1.2〜2.5の範囲内である。したがって、多孔質ゾーンの数に対応して、2つの一連の多孔質ゾーン同士の間の厚さの違いは、こうした比になるように選択されることになる。
− 支持体の外表面を支持体の外表面に最も近い濾過ゾーンから分離する周囲ゾーンの平均厚さは、支持体の外表面に最も近い濾過ゾーンを隣接する濾過ゾーンから分離する多孔質ゾーンの平均厚さよりも大きい。
− 複数の通路を有する1つの同じ濾過ゾーンの通路がすべて同一である。
− 支持体は、濾過ゾーンを単独で画定する、例えば円形の中央通路を具備する。
− 各濾過ゾーンに存在する通路の数は、支持体の中央から離れて周囲に向かって移動する方向に増加する。
− 支持体は円形断面又は多角形断面のものである。
− 通路の表面が少なくとも1つの無機濾過層で覆われている。
− 少なくとも2つの濾過ゾーンが複数の通路を具備する濾過クラウン(une couronne de filtration)に相当し、通路が、透過液が通過できる多孔質隔壁によって分離されている。
− 多孔質ゾーンが支持体の中心と同心である。
− 複数の濾過ゾーンは、濾過ゾーンを単独で画定する1つのみの円形中央通路と、複数の通路を具備する濾過クラウンにそれぞれ相当する一連の濾過ゾーンであって、通路が、透過液を通過させることができる多孔質隔壁によって分離されており、濾過クラウンが中央通路と同心に分布している、一連の濾過ゾーンとのみからなる。
− 濾過クラウンが存在するならば、これらが以下の特徴のいずれか、又はこれらの特徴の任意の組み合わせを有してもよい。
○ 流通隔壁の幅は、1つの同じクラウン内部で等しく、1つのクラウンと別のクラウンとの間で等しい。
○ 各流通隔壁の幅がその全長にわたって一定である。
○ 濾過クラウンが同心円上に分布されている。
○ 各濾過クラウンにおいて、通路は、円形断面又は非円形断面のものであり、例えば、台形の断面を有する。
○ 濾過クラウンの互いに異なる通路は、支持体の中央に対する半径方向の対称軸線を有する。
○ 各濾過クラウンにおいて、通路が全て同一である。
○ 支持体が少なくとも4つの濾過クラウンを具備する。
【0015】
様々な他の特徴は、本発明による支持体の実施形態を制限しない例として示す添付の図面を参照する以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】特許文献1による濾過要素の断面図。
【図2A】本発明による濾過要素の実施形態の例の断面図。
【図2B】図2Aに類似するが全ての多孔質ゾーンの厚さが一定である、比較するために与えられた濾過要素の断面図。
【図3】本発明に適合する濾過要素の実施形態の別の例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
全体の記載では、支持体内部の厚さ、幅、断面及び方向の概念は、支持体の直線的な断面によって解釈されるべきものである。支持体の直線的な断面において、用語「支持体の軸線」及び「支持体の中央」は区別なく使用される。
【0018】
図2Aで理解できるように、無機濾過要素Iは、固相を含んでもあるいは含まなくてもよい様々なタイプの流体媒体、好ましくは液体に含まれる分子又は粒子を分離すること又は濾過することを保証する形状になっている。濾過要素Iは、或る材料であって、その移送抵抗が分離が行われるのに適している材料から形成される硬質の多孔質支持体1を具備する。具体的には、支持体1は、金属酸化物(特に二酸化チタン、酸化アルミニウム)、炭素、炭化ケイ素、若しくは窒化物、又は金属などの1又は複数の無機材料から形成される。支持体Iは、細長い形状のものであり、かつ縦中央軸線Aに沿って延びる導管の形状をしているものである。多孔質支持体1は全体的に2〜12μmの等価平均孔径を有する。支持体1は直線的な断面を有し、この断面は、六角形でもよく、又は図に示されている実施形態のように円形でもよい。したがって、支持体1は円筒形外表面1を与える。
【0019】
支持体1は、複数の通路C11,C21,C22…,C27,C31,C32…,C313…(一般的にCijと称される)を具備するように配置される。これらの通路Cijはそれぞれ表面2を有し、表面は、通路内部で循環する処理されるべき流体媒体に接触するようにされている、図示されていない少なくとも1つの分離層で覆われていてもよい。分離する1又は複数の層のタイプは、得られるべき分離特性又は濾過特性との関連で選択され、支持体と共に密接な接続を形成し、その結果、液体媒体からの圧力が多孔質支持体1に伝達される。具体的には、ミネラル濾過要素を製造するのに従来使用されている、例えば、二酸化チタン、酸化アルミニウム又はジルコニウムのタイプの少なくとも1つの金属酸化物を、任意選択には混合した状態で含む懸濁液から、こうした1又は複数の層を堆積させることができる。こうした1又は複数の層は、乾燥させた後に、その固結のために焼結作用を受けて、層を互いにかつ多孔質支持体1に結合させる。
【0020】
本発明によれば、同心状に分布した少なくとも3つの濾過ゾーンF,F,F3…(一般的にFと称される)を含む。2つの隣接した(すなわち一連の)濾過ゾーンは、連続多孔質ゾーンZ〜Zn−1によって分離される。したがって、各多孔質ゾーンZは、2つの隣接する濾過ゾーンF同士の間に挿入される。記載の残り部分では、濾過ゾーンが、支持体の周囲の方向に増加する様々な列を占有すると考えられる。したがって、考慮される2つの多孔質ゾーンに関して、周囲に最も近い多孔質ゾーンは、下方の列の多孔質ゾーンであると考慮される中央により近い多孔質ゾーンと比較して、上方の列と考慮される。
【0021】
本発明の本質的な特徴によれば、多孔質ゾーンZn−1の平均厚さは多孔質ゾーンZの平均厚さよりも厚い。したがって、多孔質ゾーンの少なくとも一部では、支持体1の周囲に向かう、すなわち支持体1の外表面1に向かう方向に、次から次へと多孔質ゾーンの平均厚さが増加する。言い換えれば、上方の列の多孔質ゾーンの平均厚さは、隣接する下方の列の多孔質ゾーンの平均厚さと同一又はそれよりも厚く、下方の列の少なくとも1つの多孔質ゾーンの平均厚さは、上方の列の少なくとも1つの多孔質ゾーンの平均厚さよりも薄い。
【0022】
図2Aの例示では、支持体は6つの濾過ゾーンF〜Fを具備する。第一の濾過ゾーンFは1つのみの中央通路C11から形成され、具体的には、中央通路により、支持体の中央における材料の堆積を避けることができる。示されている例では、中央通路C11は円形状のものであるが、八角形タイプの形状又は他の形状を提供することもできる。単一の中央通路の使用は、ORELIS社による特許文献3に記載されているように支持体1の中央軸線から始まる花弁状配置での一群の通路と比較して、機械的に良好な強度を得ることに貢献する。単一の中央通路の存在により効果的に、支持体の中央に多孔質材料が存在することを避けて、それにより支持体の機械的強度を補強することができる。
【0023】
他の濾過ゾーンF〜Fはそれぞれ一連の通路から構成される。これらの濾過ゾーンのそれぞれは濾過クラウンに相当し、濾過クラウンでは、通路が濾液ための流通隔壁Pによって分離されている。これらの流通隔壁Pにより、濾液は、多孔質でもある周囲ゾーンZpが支持体1の外表面1においてその経路を終端させるまでは、支持体内部において1つの多孔質ゾーンから別の多孔質ゾーンへ進むことができる。
【0024】
これらの濾過クラウンF〜Fは、支持体の中央軸線Aから離れて周囲に向かって移動する方向に、以下のように分布する。
− 第二の濾過ゾーンFは、台形の同一である7つの通路C21〜C27から構成されるクラウンから形成される。
− 第三の濾過ゾーンFは、台形の同一である13個の通路C31〜C313から構成されるクラウンから形成される。
− 第四の濾過ゾーンFは、台形の同一である21個の通路C41〜C421から構成されるクラウンから形成される。
− 第五の濾過ゾーンFは、台形の同一である24個の通路C51〜C524から構成されるクラウンから形成される。
− 第六の濾過ゾーンFは、台形の同一である27個の通路C61〜C627から構成されるクラウンから形成される。
【0025】
したがって、各濾過ゾーンに存在する通路の数は、支持体の中央から離れて周囲に向かって移動すると増加する。これらの濾過クラウンF〜Fは中央通路と同心に分布される。第二の濾過ゾーンFの通路C21,C22,…,C27の重心は中央軸線Aと同軸の円上に配置され、この同軸円は、第三の濾過ゾーンFの通路C31,C32,…,C313やその他の通路の重心が位置する同軸円よりも小さい直径を有する。
【0026】
最後の濾過ゾーンFは、周囲ゾーンZpによって支持体1の外表面1から分離される。この周囲ゾーンZpを、支持体1の外表面1と最後の濾過ゾーンFの各通路の外方箇所(遠心箇所又は最高箇所とも呼ばれる)を接続する曲線との間に存在するゾーンとして画定することができる。この曲線を以前のように画定してもよく、すなわちこの曲線が各溝の壁に対するその壁の最高箇所での接線であってもよく、又はこの曲線が支持体1の外輪郭1に対する割線であるならば、支持体の周囲に最も近い濾過ゾーンの通路の最高箇所を通過する曲線のように、支持体の外表面1と相似するものであってもよい。
【0027】
図示した例では、各濾過ゾーンでは、1つの同じ濾過ゾーンの各通路の向心箇所は、支持体の中心を中心とする円上に位置し、この円は考慮している濾過ゾーンの内方包被に対応する。同様に、各濾過ゾーンでは、1つの同じ濾過ゾーンの各通路の遠心箇所は、支持体の中心を中心とする円上に位置し、この円は考慮している濾過ゾーンの外方包被に対応する。したがって、各多孔質ゾーンの境界を定める外方包被及び内方包被は2つの同心円であり、それにより各多孔質ゾーンは一定の厚さとなっている。中央通路C11を隣接する濾過ゾーンから、すなわち第二の濾過ゾーンFから分離させる(多孔質ゾーンZの厚さez1に対応する)距離は、最後の濾過ゾーンFを支持体の中心方向に隣接する濾過ゾーンから、すなわち第五の濾過ゾーンFから分離させる(多孔質ゾーンZの厚さez5に対応する)距離よりも短い。支持体の中央軸線から離れて移動する方向に、少なくとも一部の多孔質ゾーンの厚さがこのように増加されて、残余分(le retentat)によって、又は水撃作用などの導入の作用により発生した液圧事象(les accidents hydrauliques)によって及ぼされる圧力の影響を最小化する。このために、図示された例では、第三の多孔質ゾーンZから開始して、2つの一連の多孔質ゾーンを考慮するならば、最も外方に位置する多孔質ゾーンの平均厚さ割る、支持体の中央方向に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さの比は常に1よりも高い。例示された図2Aでは、多孔質ゾーンZ,Z,Zは同じ厚さである。多孔質ゾーンZから、濾過ゾーンの平均厚さは、支持体の周囲1の方向に増加している。厚さの比、ez4/ez3及びez5/ez4は1.14〜1.17である。
【0028】
濾過要素の機械的強度をさらに増大させるように、例示した図2Aでは、支持体1の外表面1から最後の濾過クラウンFを分離させる周囲ゾーンZpがまた、多孔質ゾーンZの平均厚さよりも厚い。それにもかかわらず、好ましくない変形例によれば、この周囲ゾーンZpが多孔質ゾーンZの厚さと同一の厚さを有するようにしてもよい。例示されている図2Aでは、周囲ゾーンZpの平均厚さは、多孔質ゾーンZの平均厚さの約1.13倍に相当する。
【0029】
本発明による貢献を明確にするために、10MPa(100bar)の圧力に相当する負荷が各通路に印加されたときの、支持体内部に存在する応力場を評価する試験が行われた。図2Aに適合する支持体は、比較するために準備された図2Bに適合する支持体と比較された。図2Bに適合する支持体では、多孔質ゾーンZ〜Zの平均厚さは一定であり、0.7mmである。
【0030】
アバカス(Abaqus)・ソフトウェアによって得られた結果が、表1及び表2において以下にまとめられている。
【0031】
表1は、図2Aに記載の、本発明に適合する支持体に関する。
【0032】
【表1】

【0033】
表2は、図2Bに記載の比較支持体に関する。
【0034】
【表2】

【0035】
これらの結果、本発明に適合する厚さの新規な分布が、平均圧力を顕著に減少させることを可能にすると共にこれらの応力のさらなる均一な分布を提供することが明らかに証明された。
【0036】
加えて、図2Aの計算された最大応力の値は、図2Bの67.4MPaと比較して58.8MPaである。したがって、本発明に適合する厚さの新規な分布は、脆弱である局部的なゾーンを顕著に減少させる。
【0037】
図3は、本発明の実施形態の別の例であって、支持体1が5つの濾過ゾーンFを具備する例を示すものである。これらの濾過ゾーンは、支持体1の中央軸線Aから離れて周囲1に向かって移動する方向に、以下のように分布される。
− 第一の濾過ゾーンFは、円筒形状の単一の中央通路C11から形成される。
− 第二の濾過ゾーンFは、台形の同一である6つの通路C21〜C26から構成されるクラウンから形成される。
− 第三の濾過ゾーンFは、台形の同一である10個の通路C31〜C310から構成されるクラウンから形成される。
− 第四の濾過ゾーンFは、台形の同一である15個の通路C41〜C415から構成されるクラウンから形成される。
− 第五の濾過ゾーンFは、台形の同一である20個の通路C51〜C520から構成されるクラウンから形成される。
【0038】
本発明の本質的な特徴によれば、中央通路C11を隣接する濾過ゾーンから、すなわち第二の濾過ゾーンFから分離させる(多孔質ゾーンZの厚さez1に対応する)距離は、最後の濾過ゾーンFを支持体の中央軸線Aの方向に隣接する濾過ゾーンから、すなわち第四の濾過ゾーンFから分離させる(多孔質ゾーンZの厚さez4に対応する)距離よりも短く、その他も第二の濾過ゾーンZまで同様である。多孔質ゾーンZ及びZが同一の厚さである(ez1=ez2)一方で、多孔質ゾーンの厚さは、ゾーンZからゾーンZまで、支持体の中央から周囲に向かって増加する(ez2<ez3<ez4)。
【0039】
例示された図3では、例示された図2Aと同様に、最後の濾過クラウンFを支持体1の外表面1から分離させる周囲ゾーンZpはまた、最後の多孔質ゾーンZの平均厚さよりも厚い。
【0040】
本発明による支持体が、図2A及び図3に図示されているように、少なくとも4つの濾過ゾーンFを具備するならば、支持体の中央軸線から離れてその周囲に向かって移動する方向に1つの多孔質ゾーンから次の多孔質ゾーンまでの厚さの変動に関して、同じ係数を適用することを選択してもよく、あるいは異なる係数を適用することを選択してもよい。
【0041】
本発明では、図2A及び図3に示すように、濾過ゾーンは、単一の中央通路C11のみに相当し、かつ本発明で画定されたような、支持体の中央軸線に対して同心に分布した通路のクラウンに相当する場合がある。
【0042】
同様に、本発明では、図2A及び図3に示すように、濾過クラウンの様々な通路は、濾過表面を最適化するために、支持体の中央に対して対称である半径方向軸線を有してもよいが、しかしながら他の構成を提供することもできる。
【0043】
さらに、図2A及び図3に示されるように本発明では、支持体が3つよりも多い多孔質ゾーンを具備するときに、多孔質ゾーンの一部のみが異なる厚さのものであることができる。支持体の中央に最も近い複数の多孔質ゾーンZが同一の厚さであってもよい一方で、多孔質ゾーンの数に応じて、1つ、2つ又は3つの最後の多孔質ゾーンのみが、支持体1の中央Aから離れて周囲に向かって移動する方向に厚さを増加させるものであってもよい。それにもかかわらず、全ての多孔質ゾーンが支持体1の中央Aから周囲に向かって増加する互いに異なる平均厚さを有することを想定することができる。
【0044】
本発明では、図2A、図2B及び図3に示すように、有利には、様々なクラウンの通路が、これらのそれぞれのクラウン内において一定かつ同一の間隔で配置されているものの、他の構成を提供することもできる。
【0045】
本発明の実施形態の様々な例において示された別の特徴によれば、全ての流通隔壁P(流通経路及び接続経路とも呼ばれる)は、支持体の中央を通過する対称軸線を有する。
【0046】
さらに、好ましくは、1つの同じクラウン内部の流通隔壁Pはほぼ同一の厚さlを有する。1つの実施形態、特に図2A及び図3で示された実施形態によれば、或るクラウンの2つの隣接する通路同士の間に配置された流通隔壁Pの幅lが、これら全ての長さLにわたって一定であるようにされる。明らかに、流通隔壁Pの幅lは、その流通隔壁Pの境界を定める2つの通路の2つの側壁300を分離する距離として取られるものである。この幅lはまた、1つの濾過クラウンから別の濾過クラウンまで同一でもある。本願出願人は、CERASIV社による特許文献1及びCORNING社による特許文献2に記載されているような透過経路の幅の変動が、濾過要素が受ける機械的な応力を考慮すると、体系的に脆弱な箇所になる幅の狭い箇所を当然に生じさせることを確認した。周囲方向に向かって一定の幅lである透過経路を使用することは、濾過要素の機械的な特徴の最適化を提供する。一定の幅lを有する経路と、これらの経路を画定する通路の断面積及び数を一定に維持しつつ支持体の中央から周囲に向かって増加する幅を有する経路との間で比較するならば、変動する幅を有する経路の最小幅は、一定幅を有する経路の幅よりも狭い。したがって、この狭い幅の箇所は機械的に脆弱な箇所になる。さらに、一定幅lを有する経路を選択することは、押出し圧力がさらに一定になるので、より良好な製造収率を提供する。
【0047】
経路の幅lを以下のように画定することができる。各クラウン内部では、通路は円形でない直線区分を有する。示された例では、クラウンの通路は台形のものである。通路は、支持体の周囲1に面する壁100(外壁と呼ばれる)と、支持体の中央Aに面する壁200(内壁と呼ばれる)と、内壁200を外壁100と接続させる2つの側壁300とを有する。多くは、側壁300は、接続する隅肉部又は接続部400によって内壁200及び外壁100に接続される。一部の場合では、内壁は、2つの側壁300を接続する隅肉部400に交換されてもよい。半径方向壁300は、その境界を画定する、通路の内壁200及び外壁100に隅肉部400によって接続された直線Lの区分によって形成される。経路の幅lは、接続隅肉部400同士の間に位置するこれらの直線区分Lに対応する部分にわたる経路の幅lとみなされる。
【0048】
加えて、全ての通路が、図2A及び図3に示されているように、1つの同じクラウン内部で同一であるときに、これらの通路は、対称であるという理由で、全てがクラウンにおいて全く同じに位置決めされると好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体媒体を濾過するための濾過要素で(I)あって、
縦中央軸線(A)を有する円筒形の硬質な多孔質支持体(1)と、支持体(1)の周囲に濾液を収集するために、濾過されるべき流体媒体を循環させる複数の通路(C11,C21,C22…31,C32…n1,Cn2…)とを具備し、
通路(C11,C21,C22…31,C32…n1,Cn2…)が、支持体(1)内にその中央軸線(A)に対して平行に配置されると共に、同心に分布されかつ連続多孔質ゾーン(Z1,Z2…n−1)によって互いから分離された少なくとも3つの濾過ゾーン(Z1,Z2…n−1)を画定する、
濾過要素において、
中央軸線(A)に最も近い多孔質ゾーン(Z)の平均厚さが、支持体(1)の周囲に最も近い多孔質ゾーン(Zn−1)の平均厚さよりも小さく、
多孔質ゾーンの平均厚さが、支持体の中央軸線(A)から離れてその周囲に向かって移動する方向に隣の多孔質ゾーンと同じ又はこれよりも小さい、
濾過要素。
【請求項2】
連続多孔質ゾーン(Z,Z2…n−1)が、濾過ゾーンの外方包被と、支持体(1)の周囲の方向に隣接する濾過ゾーンの内方包被との間に位置するゾーンに相当する、
請求項1に記載の濾過要素(I)。
【請求項3】
− 濾過ゾーンのそれぞれでは、1つの同じ濾過ゾーンの各通路の内方箇所が、支持体の中心を中心とする円上に位置し、この円はこの濾過ゾーンの内方包被を画定し、
− 濾過ゾーンのそれぞれでは、1つの同じ濾過ゾーンの各通路の外方箇所が、支持体の中心を中心とする円上に位置し、この円はこの濾過ゾーンの外方包被を画定し、
− 各多孔質ゾーンが、2つの同心円によって境界を定められて、一定の厚さのものになっている、
請求項2に記載の濾過要素(I)。
【請求項4】
互いに異なる平均厚さを有する隣接する2つの連続多孔質ゾーン(Z,Z2…n−2,Zn−1)間の平均厚さが、支持体(1)の縦中央軸線(A)から離れて周囲に向かって移動する方向に、1.01〜3.00倍、好ましくは1.10〜1.70倍変わる、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項5】
支持体の周囲に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さ割る、中央軸線に最も近い多孔質ゾーンの平均厚さの比は、1.1〜6の範囲内、好ましくは1.2〜2.5の範囲内である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項6】
支持体(1)の外表面(1)と支持体(1)の外表面に最も近い濾過ゾーン(F)とを分離する周囲ゾーン(Zp)の平均厚さは、支持体(1)の外表面に最も近い濾過ゾーン(Fn)と隣接する濾過ゾーン(Fn-1)とを分離する多孔質ゾーン(Zn−1)の平均厚さよりも大きい、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項7】
複数の通路を有する1つの同じ濾過ゾーンの通路(Cn1,Cn2…)がすべて同一である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項8】
濾過ゾーン(F)を単独で画定する、例えば円形の中央通路(C11)を具備する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項9】
少なくとも2つの濾過ゾーン(F,F…F)が複数の通路を具備する濾過クラウンに相当し、通路が透過液のための流通隔壁(P)によって分離されている、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項10】
これらの濾過ゾーンは、濾過ゾーン(F)を単独で画定する1つのみの円形中央通路(C11)と、複数の通路を具備する濾過クラウンにそれぞれ相当する一連の濾過ゾーン(F,…F)であって、通路が、透過液のための流通隔壁(P)によって分離されており、濾過クラウンが中央通路(C11)と同心に分布している、一連の濾過ゾーンとのみからなる、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項11】
流通隔壁(P)の幅(l)は、1つの同じクラウン内部で等しく、1つのクラウンと別のクラウンとの間で等しい、
請求項9又は10に記載の濾過要素(I)。
【請求項12】
各流通隔壁(P)の幅(l)がその全長にわたって一定である、
請求項9、10又は11に記載の濾過要素(I)。
【請求項13】
濾過クラウン(F2,F3…F)が同心円上に分布されている、
請求項9〜12のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項14】
各濾過クラウン(F2,F3…F)において、通路は円形の断面のものである、
請求項9〜13のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項15】
各濾過クラウン(F,F…F)において、通路は、非円形断面のものであり、例えば台形断面のものである、
請求項9〜14のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項16】
濾過クラウンの互いに異なる通路は、支持体の中央に対する対称軸線を有する、
請求項9〜15のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項17】
少なくとも4つの濾過クラウン(F,F,F…F)を具備する、
請求項9〜16のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項18】
各濾過ゾーンに存在する通路の数は、支持体(1)の中央(A)から離れて周囲(1)に向かって移動する方向に増加する、
請求項1〜17のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項19】
支持体(1)は円形断面又は多角形断面のものである、
請求項1〜18のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。
【請求項20】
通路(C11,C21,C22…31,C32…n1,Cn2…)の表面(2)が少なくとも1つの無機濾過層で覆われている、
請求項1〜19のいずれか1項に記載の濾過要素(I)。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521124(P2013−521124A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556568(P2012−556568)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050458
【国際公開番号】WO2011/110780
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(512226871)テクノロジ アバンセ エ メンブラン アンデュストリエレ (1)
【Fターム(参考)】