説明

濾過濃縮装置

【課題】システム構成を複雑化することなく、濾過型の脱水装置による脱水処理効率及び処理速度を飛躍的に向上させることができる濾過濃縮装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ケーシング6と、処理対象物の流入口2及び流出口3と、処理対象物を濾過するスクリーン7と、スクリーン7の表面をリフレッシュするスクレーパ9と、処理対象物から分離された濾液を排出する濾液排出管18と、当該濾液排出管18からの濾液排出量を調節する絞り弁15と、によって構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥や、加工食品の原料又はその半加工品等、固体物質と液体物質の混合物(処理対象物)を濾過・圧縮して脱水処理を行う濾過型の脱水装置に付随して使用される濾過濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥を脱水処理しようとする場合、濾過型の脱水装置が使用されることが多く、濾過型の脱水装置としては、「回転加圧脱水機」或いは「ロータリープレスフィルタ」と呼ばれる装置(特開2001−113109号公報、特開2004−291036号公報等)や、「スクリュープレス」と呼ばれる装置(特開2004−358549号公報)などが知られている。
【特許文献1】特開2001−113109号公報
【特許文献2】特開2004−291036号公報
【特許文献3】特開2004−358549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
濾過型の脱水装置を用いて汚泥の脱水処理を行う場合、通常は、前処理としてまず汚泥をフロキュレータ(凝集槽)に導入し、そこへポリマー(凝集剤)を添加して攪拌することによって調質し、汚泥原液中に含まれている固形分をある程度フロック化する処理(凝集処理)が行われる。そして、凝集処理が済んだ汚泥(凝集汚泥)を、フロキュレータから脱水装置へ移送して脱水処理が行われる。
【0004】
この前処理を行うことにより、濾過型の脱水装置による脱水処理の効率を格段に向上させることができるが、必ずしも十分とは言い難く、更なる処理効率、処理速度の向上が望まれている。本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、システム構成を複雑化することなく、濾過型の脱水装置による脱水処理効率及び処理速度を飛躍的に向上させることができる濾過濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の濾過濃縮装置は、処理対象物の流入口及び流出口と、処理対象物を濾過する濾材と、濾材表面をリフレッシュするスクレーパと、処理対象物から分離された濾液を排出する濾液排出管と、当該濾液排出管からの濾液排出量を調節する絞り弁と、によって構成されていることを特徴としている。
【0006】
尚、濾材は、円筒状のウェッジワイヤースクリーンであることが好ましく、また、処理対象物の流入口及び流出口はケーシングの下半部に配置され、濾材はケーシングの上半部に配置されることが好ましい。更に、ケーシングの上半部に、濾過濃縮した処理対象物をケーシングの下半部側へ押し下げるコンベヤが配置されていることが好ましい。また、圧力センサー及び/又は流量計が装置外に配置され、絞り弁の開度が、圧力センサー又は流量計の計測値に基づいて自動制御されるように構成されていることが好ましい。
【0007】
本発明の濾過脱水システムは、上記のような濾過濃縮装置が、濾過型の脱水装置の上流側に配置されていることを特徴としている。尚、この濾過脱水システムにおいては、処理対象物の供給圧力を計測する圧力センサーが、濾過濃縮装置の上流側及び下流側にそれぞれ配置されていることが好ましく、また、各計測値の差が一定の値となるように、絞り弁の開度が自動制御されるように構成されていることが好ましい。また、上記のような圧力センサーのほかに、濾液排出圧力を計測する圧力センサーが絞り弁の下流側に配置され、それらの圧力センサーによる計測値に基づいて前記絞り弁の開度が自動制御されるように構成してもよく、更に、処理対象物の供給流量を計測する流量計が、濾過濃縮装置の上流側に配置されるとともに、濾液の排出量を計測する流量計が濾液排出管に配置され、それらの流量計による計測値に基づいて絞り弁の開度が自動制御されるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の濾過濃縮装置は、濾過型の脱水装置の上流側に配置することにより、当該脱水装置の処理効率、処理速度を飛躍的に向上させることができる。また、システムを複雑化することなく構築することができるので、低コストで実現でき、既存のシステムに対しても無理なく適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る濾過濃縮装置1の断面斜視図である。本実施形態の濾過濃縮装置1は、特に汚泥を処理対象物とする装置であり、図1において2は汚泥流入口、3は汚泥流出口、4は底板、5は天板、6は円筒状のケーシングである。図示されているように、ケーシング6の内部空間のうち上半部分には、円筒状のスクリーン7(濾材)と回転軸8が、ケーシング6と同心円状に配置されている。
【0010】
スクリーン7はウェッジワイヤースクリーンであり、その円筒の半径は、ケーシング6の内径よりも若干小さく設定されている。このため、ケーシング6の内壁とスクリーン7の外周面との間には、環状のスペース11が形成されている。この環状スペース11の上方の天板5には、濾液流出口12が形成されており、スクリーン7を通過して汚泥から分離された濾液が、環状スペース11から濾液流出口12を通って天板5の上方の一時貯留室13へ流下し、更に、濾液排出口14から装置外へ排出されるようになっている。
【0011】
回転軸8は、図示しないモーターの駆動力を受けて所定方向へ(図1の例では反時計回りに)回転するように構成されており、その下端部には、先端のエッジがスクリーン7の内周面上を摺動するスクレーパ9と、スクリュー状のコンベヤ10が取り付けられている。
【0012】
この濾過濃縮装置1は、図2に示すように、濾過型の脱水装置31の上流側(図2の例では、濾過型の脱水装置31とフロキュレータ21との間)に配置して使用される。ここで具体的に、図2の汚泥処理システム(濾過脱水システム)における汚泥処理の流れについて説明すると、まず汚泥をフロキュレータ21内に導入し、凝集剤を添加する。凝集剤を添加するタイミングは、フロキュレータ21内への汚泥の導入後でもよいし、また、導入前でもよい。
【0013】
次に、図示しないモーター及びプロペラを稼働させ、フロキュレータ21内の汚泥を攪拌することによって凝集処理を行う。凝集汚泥は、図示しない汚泥供給ポンプにより、汚泥管16を介して順次濾過濃縮装置1へ供給される。
【0014】
汚泥管16から濾過濃縮装置1へ供給された汚泥は、図1に示した汚泥流入口2から、汚泥供給ポンプの圧入力によってケーシング6の内部へ流入する。この濾過濃縮装置1においては、汚泥流出口3が、汚泥流入口2における汚泥の流入方向の延長線上に配置されており、また、汚泥流入口2と汚泥流出口3が位置するケーシング6の下半部には、汚泥の流下を阻害するような部材は配置されていないため、汚泥流入口2からケーシング6の内部へ流入した汚泥の一部は、汚泥流出口3からそのまま装置外へ流出する。
【0015】
但し、ケーシング6内へ流入した汚泥のすべてが、そのまま装置外へ流出する訳ではなく、一部の汚泥は流入圧力によって上昇し、スクリーン7が配置されているケーシング6の上半部の領域へ進入することになる。そして、ケーシング6内の圧力によって、汚泥中の水分はスクリーン7を抜けて環状スペース11へ押し出され、汚泥中の固形分はスクリーン7の内周面上に捕捉される。つまり、ケーシング6の上半部の領域へ進入した汚泥は、スクリーン7によって濾過されることになる。
【0016】
このとき、ケーシング6の上半部においては、回転軸8及びその下端部に固定されたスクレーパ9が一定の速度で回転しているため、スクリーン7の内周面上に捕捉された汚泥中の固形分はスクレーパ9によって掻き落とされる。従って、スクリーン7の内周面は、周期的にリフレッシュされることになる。
【0017】
また、図1に示したスクリュー状のコンベヤ10が、回転軸8とともに反時計回りに回転すると、回転軸8付近の汚泥は、コンベヤ10によって下方(ケーシング6の下半部側)へ押し下げられることになる。従って、スクリーン7により濾過されて固形分濃度が上昇した汚泥(濃縮汚泥)は、ケーシング6内を下降することになり、新たに流入した未濃縮汚泥と混ざり合いながら、汚泥流出口3から装置外へ流出する。
【0018】
このように、図1の濾過濃縮装置1内に流入した汚泥は、一部が濾過されつつ流下することになるので、全体として固形分濃度が上昇し、濃縮された状態で装置外へ流出することになる。そして、濾過濃縮装置1から排出された濃縮汚泥は、図2に示すように汚泥管17を介して濾過型の脱水装置31へ流下し、脱水装置31によって脱水処理が行われ、濾液とケーキとに分離され、それぞれ個別に排出される。
【0019】
尚、スクリーン7を抜けて環状スペース11へ流入した濾液は、濾液流出口12を通って天板5の上方の一時貯留室13へ流下し、更に、濾液排出口14から装置外へ排出される。但し、濾液は、無制限に排出される訳ではなく、濾液排出口14に接続されている濾液排出管18には絞り弁15が配置されており(図2参照)、この絞り弁15の開度に応じて排出されるようになっている。
【0020】
そして、絞り弁15の開度は、汚泥管16(濾過濃縮装置1の上流側)に取り付けられている圧力センサーP1、汚泥管17(濾過濃縮装置1の下流側)に取り付けられている圧力センサーP2による各汚泥供給圧力の計測値p1,p2、及び/又は、濾液排出管18の絞り弁15の下流側に取り付けられている圧力センサーP3による濾液排出圧力の計測値p3に基づいて自動的に制御され、濾過濃縮装置1からの濾液排出量(即ち、濾過濃縮装置1による汚泥の濾過濃縮処理量)が調整されるようになっている。
【0021】
より具体的に説明すると、汚泥供給ポンプによってフロキュレータ21から濾過濃縮装置1へ送られる汚泥の供給圧力(圧力センサーP1によって計測される)が一定である場合において、絞り弁15を開いて一定量の濾液を排出した場合、濾過濃縮装置1から濾過型の脱水装置31への汚泥供給圧力(圧力センサーP2によって計測される)は、その分だけ低下することになる。
【0022】
本実施形態においては、圧力センサーP1による供給圧力の計測値p1と、圧力センサーP2による供給圧力の計測値p2との差をとり、その差(p1−p2)が約「5kPa」(制御目標値q)となるように、絞り弁15の開度が自動的に調整されるようになっている。尚、制御目標値qは、「5kPa」に限定されるものではなく、用途、目的、コンディション等に応じ、「1〜10kPa」の範囲内で設定を適宜変更できるようになっている。
【0023】
また、圧力センサーP2による汚泥供給圧力の計測値p2と、圧力センサーP3による濾液排出圧力の計測値p3との差をとり、その差(p2−p3)が一定(制御目標値q)となるように絞り弁15の開度を自動的に調整するように設定することもできるし、更に、汚泥供給圧力の計測値p1,p2、及び、濾液排出圧力の計測値p3のすべてを考慮して、最適な開度となるように(例えば、「p2−p3」の制御目標値qについて、「p1」の大きさに応じた最適値を予め定めておき、「p1≦α」である場合には、「p2−p3」の制御目標値qを「4kPa」とし、「α<p1<β」である場合には制御目標値qを「5kPa」、「β≦p1」である場合には制御目標値qを「6kPa」とする、というような具合に)絞り弁15を制御することもできる。
【0024】
そして更に、絞り弁15の開度を、圧力計P1〜P3による計測値p1〜p3ではなく、濾過濃縮装置1の上流側に取り付けられている流量計F1による汚泥供給流量の計測値f1、及び、濾液排出管18に配置されている流量計F2による濾液排出量の計測値f2に基づいて自動的に制御し、濾過濃縮装置1からの濾液排出量を調整する(例えば、汚泥供給流量の計測値f1と濾液排出量の計測値f2の比をとり、これが一定となるように、絞り弁15の開度を自動的に調整する)こともできる。
【0025】
本実施形態の濾過濃縮装置1を、図2に示すような濾過型の脱水装置31を使用する汚泥処理システム(濾過脱水システム)に適用した場合、処理効率及び処理速度を飛躍的に向上させることができる。例えば、汚泥処理量が1台当たり平均2.0m/h(1.5〜2.5m/h)程度の濾過型の脱水装置31がある場合において、その上流側に本実施形態の濾過濃縮装置1を設置して、1台当たり0.5〜1.0m/h(8.3〜16.7L/min)程度の濾液を濾過濃縮装置1から排出させることができれば、濾過型の脱水装置31における処理速度を25〜50%向上させることができる。
【0026】
尚、本実施形態においては、特に汚泥を処理対象とする濾過濃縮装置1及び濾過脱水システムの構成例について説明したが、本発明の処理対象物は汚泥に限定されるものではなく、その他の対象物を処理する装置乃至は濾過脱水システムに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る濾過濃縮装置1の断面斜視図。
【図2】図1の濾過濃縮装置1を組み込んだ汚泥の濾過脱水システムの構成図。
【符号の説明】
【0028】
1:濾過濃縮装置、
2:汚泥流入口、
3:汚泥流出口、
4:底板、
5:天板、
6:ケーシング
7:スクリーン、
8:回転軸、
9:スクレーパ、
10:コンベヤ、
11:環状スペース、
12:濾液流出口、
13:一時貯留室、
14:濾液排出口、
15:絞り弁、
16,17:汚泥管、
18:濾液排出管、
21:フロキュレータ、
31:濾過型の脱水装置、
P1,P2,P3:圧力センサー、
F1,F2:流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物の流入口及び流出口と、処理対象物を濾過する濾材と、濾材表面をリフレッシュするスクレーパと、処理対象物から分離された濾液を排出する濾液排出管と、当該濾液排出管からの濾液排出量を調節する絞り弁と、によって構成されていることを特徴とする濾過濃縮装置。
【請求項2】
前記濾材が、円筒状のウェッジワイヤースクリーンであることを特徴とする、請求項1に記載の濾過濃縮装置。
【請求項3】
前記流入口及び流出口がいずれも、ケーシングの下半部に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の濾過濃縮装置。
【請求項4】
前記濾材が、ケーシングの上半部に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の濾過濃縮装置。
【請求項5】
ケーシングの上半部に、濾過濃縮した処理対象物をケーシングの下半部側へ押し下げるコンベヤが配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の濾過濃縮装置。
【請求項6】
前記絞り弁の開度が、装置外に配置された圧力センサー又は流量計の計測値に基づいて自動制御されるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の濾過濃縮装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の濾過濃縮装置が、濾過型の脱水装置の上流側に配置されていることを特徴とする濾過脱水システム。
【請求項8】
請求項6に記載の濾過濃縮装置が、濾過型の脱水装置の上流側に配置された濾過脱水システムであって、
処理対象物の供給圧力を計測する圧力センサーが、前記濾過濃縮装置の上流側及び下流側にそれぞれ配置され、各計測値の差が一定の値となるように、前記絞り弁の開度が自動制御されるように構成されていることを特徴とする濾過脱水システム。
【請求項9】
請求項6に記載の濾過濃縮装置が、濾過型の脱水装置の上流側に配置された濾過脱水システムであって、
処理対象物の供給圧力を計測する圧力センサーが、前記濾過濃縮装置の上流側及び下流側にそれぞれ配置されるとともに、濾液排出圧力を計測する圧力センサーが前記絞り弁の下流側に配置され、それらの圧力センサーによる計測値に基づいて前記絞り弁の開度が自動制御されるように構成されていることを特徴とする濾過脱水システム。
【請求項10】
請求項6に記載の濾過濃縮装置が、濾過型の脱水装置の上流側に配置された濾過脱水システムであって、
処理対象物の供給流量を計測する流量計が、前記濾過濃縮装置の上流側に配置されるとともに、濾液の排出量を計測する流量計が前記濾液排出管に配置され、それらの流量計による計測値に基づいて前記絞り弁の開度が自動制御されるように構成されていることを特徴とする濾過脱水システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−160161(P2007−160161A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357138(P2005−357138)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】