濾過濃縮装置
【課題】濾過板上部に濃縮汚泥が残存することを防止できる濾過濃縮装置を提供する。
【解決手段】汚泥を貯留する汚泥槽と、前記汚泥を濾過する濾過膜と、前記濾過膜により濃縮された濃縮汚泥を前記濾過膜から剥離させるための空気を前記濾過膜の2次側に供給する管とを備えた濾過濃縮装置において、前記濾過膜が2次側を下にして傾斜している領域へ気体を噴出する孔を前記管に備える。
【解決手段】汚泥を貯留する汚泥槽と、前記汚泥を濾過する濾過膜と、前記濾過膜により濃縮された濃縮汚泥を前記濾過膜から剥離させるための空気を前記濾過膜の2次側に供給する管とを備えた濾過濃縮装置において、前記濾過膜が2次側を下にして傾斜している領域へ気体を噴出する孔を前記管に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場等における汚泥の濾過濃縮装置の濾過板に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場や下水処理場から排出される汚泥は90%以上の水分が含まれているので、従来は、一旦、重力沈降槽で濃縮した後、機械脱水を行って含水率80%以下の濃縮汚泥とし、この濃縮汚泥を焼却、埋立て処分している。
従来の重力沈降槽による汚泥濃縮では、滞留時間が長く、汚泥の性状により含水率が大幅に変わるので、機械脱水を安定的に運転することが難しい問題点があった。そこで、重力沈降槽の代替手段として濾過濃縮装置が開発された。
【0003】
従来の濾過濃縮装置について図10を用いて説明する。従来の濾過濃縮装置は、底部がテーパー状に細くなっている汚泥槽1と、汚泥槽1に原汚泥を供給する配管と弁8とポンプ2と、汚泥槽1に原汚泥を供給する際にポンプ2を作動させて所定の水位まで汚泥を入れるために汚泥水位を検出する水位計18と、汚泥槽1の下部に濃縮された後の濃縮汚泥を排出する配管および弁9と、汚泥槽1内に複数配置した濾過板3と、濾過板3で濾過された濾液を排出する濾液排出管4と、そして、濾液排出管4の途中に接続した給水タンク5と、給水タンク5に水を供給する水道水供給管6および弁12と、給水タンク5に溜まった空気を排出する配管および弁14と、加圧空気を供給するために給水タンク5に接続されたコンプレッサー7と弁13とを備えている。濾液排出管4の出口高さは、濾過板3下端より下になるように設置している。また、濾過板3は、濾液と汚泥を隔離する濾過膜3aと、濾過膜3aを支持する濾枠3bから成っている。
【0004】
図11は濾過板3の構成を示した図である。濾過板3の内側上部には、濾液の吸引や濃縮汚泥を剥離するための空気分配管15が設けられている。この空気分配管15は、金属や塩化ビニールなどの丸型や角型パイプを水平方向に設置し、パイプの下部に鉛直下方向に孔16を複数設けている。孔16は、濾過板3内部の濾液を吸引するためや、濃縮汚泥を濾過膜3aから剥離させる加圧空気を供給するために設けられている。空気分配管15の加圧空気吹き込み口の反対側の端は、封止されている。
【0005】
次に、従来の濾過濃縮装置の運転方法を説明する。弁9〜14はすべて閉じ、弁8は開けておく。そして、ポンプ2を作動させて、汚泥槽1に設置した濾過板3が水没する所定水位まで原汚泥を供給する。
次に、弁12,14を開いて給水タンク5が所定水位になるまで水を供給後、弁12,14を閉じる。そして、弁10,11を開いて濾過を開始する。濾過処理中は原汚泥の水位がこの所定水位を維持するようにポンプ2を作動させる。濾過膜3aに堆積する汚泥の厚さが、好ましくは10〜13mmになるまで汚泥の供給および濾過を継続する。濾過を継続する時間は、予め汚泥堆積厚さと濾過時間の関係を調べておき、その後は、汚泥堆積厚さが前記10〜13mmになる濾過時間を指標にして実施してもよい。例えば、このサイフォン濾過の場合は、90分間濾過を行う。
【0006】
次に、弁10を閉じ、弁8を開け、ポンプ2を作動させて、濾過膜3a表面に付着されなかった未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出後、弁8を閉じる。
次に、弁10,13を開け、濾過膜3aの2次側に空気をコンプレッサー7で入れて加圧する。これにより、給水タンク5および濾液排出配管内の水とコンプレッサー7の空気を混合させた状態で、濾過膜3aの1次側表面に付着した濃縮汚泥を濾過膜3aから剥離および落下させ、剥離した濃縮汚泥を汚泥槽1の底に堆積させる。そして、弁9を開けて濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。
【0007】
以上の濾過板を用いた濃縮汚泥剥離原理をまとめると以下の通りである。
・ 空気分配管15に供給された加圧空気は、分配管に設けられた孔16から濃縮汚泥が付着した濾過膜3aの2次側に向けて噴出する(一部は濾過膜流路に供給される)。これにより、空気分配管周辺の濾過膜3a表面に付着した濃縮汚泥は剥離する。
・ 剥離した濃縮汚泥は、汚泥槽1下部に向かって、他の濃縮汚泥を巻き込みながら、落下する。
【特許文献1】特公昭63−13721号公報
【特許文献2】特開2001−145899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の空気分配管を備えた濾過濃縮装置は、濾過板上部に濃縮汚泥が残留するという問題があった。すると、時間当たりの汚泥処理量が低下する事や、濾過板の寿命期間が短くなる問題を生じていた。つまり、濾過サイクルを繰り返すと、前記汚泥残留箇所ではさらに濾過吸引するため濾過膜と濃縮汚泥の付着力が強くなり目詰まりを起こした。
そこで、本発明は、濾過板上部に濃縮汚泥が残留することを防止できる濾過濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明は、以下の構成とした。
請求項1に記載の濾過濃縮装置は、汚泥を貯留する汚泥槽と、前記汚泥を濾過する濾過膜と、前記濾過膜により濃縮された濃縮汚泥を前記濾過膜から剥離させるための気体を前記濾過膜の2次側に供給する管とを備えた濾過濃縮装置において、前記管は、前記濾過膜上部の傾斜領域へ気体を噴出させる孔を備えている。ここで、前記傾斜領域とは、前記濾過膜が2次側を下にして傾斜している前記濾過膜の領域のことである。なお、前記濾過膜の頭頂部が水平の場合は、前記傾斜領域に前記頭頂部の水平部分も含む。上記構成にすれば、管内に加えられた加圧空気は、濾過膜を下から上方向に圧力をかけることができ、前記傾斜領域に濃縮汚泥が残留することを防止できる。
【0010】
請求項2に記載の濾過濃縮装置は、請求項1に記載の濾過濃縮装置において、前記孔と前記濾過膜の間に空隙を設けている。上記構成にすれば、加圧空気が濾過膜に与える振動を広範囲に伝達することができる。
請求項3に記載の濾過濃縮装置は、請求項1または2に記載の濾過濃縮装置において、前記濾過膜は、柔軟性があるものを用いている。
【0011】
請求項4に記載の濾過濃縮装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置において、前記管と前記濾過膜の間に多孔質部材を設けている。上記構成にすれば、濾液および加圧空気の通流を容易にすることができる。
請求項5に記載の濾過濃縮装置は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置において、前記傾斜と鉛直のなす角は、45度以下とする。上記構成にすれば、上部の剥離した濃縮汚泥が、まだ濾過膜に付着している濃縮汚泥を巻き込んで剥離するので、濾過膜から濃縮汚泥を剥離させることが容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濾過膜全面に付着した濃縮汚泥を剥離できるので、時間当たりの汚泥処理量の低下を防止できる。そして、濾過板上部に残留する濃縮汚泥がなくなることから、濾過膜の目詰まりが低減されるので、濾過膜の交換サイクルを長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき説明する。本実施例の濾過濃縮装置は、濾過板3を除いて、従来技術である図10と同じ構成の濾過濃縮装置である。
図1は、本発明が適用される濾過板3の構成図である。濾過板3は、濾過膜3aと、空気分配管15とを備える。必要に応じて図示しない濾枠3bを備えていても良い。濾過膜3aは、周囲を必要に応じてミシン糸で縫合して袋状になっている。さらに、濾過膜中央部は、ミシン糸で縫合して濾過膜流路を形成されている。濾過膜3aを縫合した袋内部には、濾過膜表面に付着した濃縮汚泥の水分を吸引するため、また、濃縮汚泥を剥離するための加圧空気が流れる空気分配管15が設けられている。本実施例の空気分配管15のA−A断面図を図2に示す。空気分配管15には、濾過膜3a上部の傾斜領域へ空気を噴出させる孔を備えている。空気分配管15の加圧空気吹き込み口の反対側の端は、封止されている。
【0014】
本実施例の濾過濃縮装置の運転方法は、前述の従来技術の濾過濃縮装置における運転方法と同じである。弁9〜14はすべて閉じ、弁8は開けておく。そして、ポンプ2を作動させて、汚泥槽1に設置した濾過板3が水没する所定水位まで原汚泥を供給する。
次に、弁12,14を開いて給水タンク5が所定水位になるまで水を供給後、弁12,14を閉じる。そして、弁10,11を開いて濾過を開始する。濾過処理中は原汚泥の水位がこの所定水位を維持するようにポンプ2を作動させる。濾過膜3aに堆積する汚泥の厚さが、好ましくは10〜13mmになるまで汚泥の供給および濾過を継続する。濾過を継続する時間は、予め汚泥堆積厚さと濾過時間の関係を調べておき、その後は、汚泥堆積厚さが前記10〜13mmになる濾過時間を指標にして実施してもよい。例えば、このサイフォン濾過の場合は、90分間濾過を行う。
【0015】
次に、弁10を閉じ、弁8を開け、ポンプ2を作動させて、濾過膜3a表面に付着されなかった未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出後、弁8を閉じる。
次に、弁11,14を開けた状態にして吸水タンク5および濾液排出配管4の水を除いた後、弁11,14を閉じる。
【0016】
次に、弁10,13を開け、濾過膜3aの2次側に空気をコンプレッサー7で入れて加圧する。これにより、濾過膜3aの1次側表面に付着した濃縮汚泥を濾過膜3aから剥離および落下させ、剥離した濃縮汚泥を汚泥槽1の底に堆積させる。そして、弁9を開けて濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。
従来技術と本発明の実施例の結果を表1に示す。使用した汚泥は、水源がダム放流水、浄水処理量は2万m3/日の浄水汚泥である。また、濾過は、濾過圧力−33kPa、濾過時間90分間で行った。濃縮汚泥剥離は、加圧空気圧力5kg/cm2、5秒間加圧継続した。濾過膜は、ナイロン製のモノフィラメントで、かつ、1枚当たり濾過面積1.3m2のものを用いた。
表1の結果から、同じ濃縮汚泥厚さで、かつ、濃縮汚泥濃度の条件下において、空気分配管15は、濾過膜3a上部の傾斜領域へ空気を噴出させる孔16を備えたことによって、濃縮汚泥剥離率は、従来技術では60〜90%であったが、本発明の実施例では95〜98%に増加した。
【0017】
【表1】
また、図3から図9に示すような空気分配管15を用いても、濾過板3上部に残留する濃縮汚泥をなくすことができる。
図3は、濾過膜の傾斜面と鉛直のなす角を、45度以下とする実施例である。濾過板3上部の剥離した濃縮汚泥が、まだ濾過膜に付着している濃縮汚泥を巻き込んで剥離するので、濾過膜から濃縮汚泥を剥離させることが容易になる。そして、空気分配管15の鉛直方向断面形状を三角形とする場合においては、三角形の底辺部が広いと濾過板3の厚みが増し、濾過板3内に残留する濾液が増加するため、剥離後の濃縮汚泥濃度は低下する。よって、三角形の底辺が狭い形状とすることが望ましい。
【0018】
図4は、図2において、空気分配管15と濾過膜3aの間に多孔質部材19を設けた実施例である。多孔質材19としては、メッシュ状のものが好ましい。
図5から図9は、孔16と濾過膜3aの間に空隙を設けた実施例である。より具体的には、突出部17を空気分配管15の頭頂部に設けて、濾過膜3aと孔16の間に空隙を設けている。図5は、図3において、空気分配管15頭頂部に突出部17を設けた実施例である。図6は、図2の空気分配管15頭頂部を絞り、空気分配管15頭頂部に突出部17を設けた実施例である。図7,8の空気分配管15は、ステンレス板に孔16をあけ、図9のようにプレス加工で湾曲させて、2枚の前記ステンレス板を抱き合わせ、加圧空気吹き込み口を除く周囲を電気抵抗溶接して空気分配管15を形成したものである。図9は、空気分配管15から部分的に離隔させるように濾過膜3aを形成し、濾過後に濾過膜が2次側を下にして傾斜している濾過膜傾斜領域の下に孔16が位置するようにした実施例である。すなわち、図9の実施例では、濾過膜3aは柔軟性を備えており、濾過前後で変形する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の濾過濃縮装置における濾過板の概略構成図
【図2】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図3】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図4】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図5】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図6】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図7】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図8】図7の空気分配管の斜視図
【図9】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図10】従来の濾過濃縮装置の構成図
【図11】従来の濾過濃縮装置における濾過板の概略構成図
【符号の説明】
【0020】
1 汚泥槽
2 ポンプ
3 濾過板
3a 濾過膜
3b 濾枠
4 濾液排出管
5 給水タンク
6 水道水供給管
7 コンプレッサー
8〜14 弁
15 空気分配管
16 孔
17 突出部
18 水位計
19 多孔質部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場等における汚泥の濾過濃縮装置の濾過板に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場や下水処理場から排出される汚泥は90%以上の水分が含まれているので、従来は、一旦、重力沈降槽で濃縮した後、機械脱水を行って含水率80%以下の濃縮汚泥とし、この濃縮汚泥を焼却、埋立て処分している。
従来の重力沈降槽による汚泥濃縮では、滞留時間が長く、汚泥の性状により含水率が大幅に変わるので、機械脱水を安定的に運転することが難しい問題点があった。そこで、重力沈降槽の代替手段として濾過濃縮装置が開発された。
【0003】
従来の濾過濃縮装置について図10を用いて説明する。従来の濾過濃縮装置は、底部がテーパー状に細くなっている汚泥槽1と、汚泥槽1に原汚泥を供給する配管と弁8とポンプ2と、汚泥槽1に原汚泥を供給する際にポンプ2を作動させて所定の水位まで汚泥を入れるために汚泥水位を検出する水位計18と、汚泥槽1の下部に濃縮された後の濃縮汚泥を排出する配管および弁9と、汚泥槽1内に複数配置した濾過板3と、濾過板3で濾過された濾液を排出する濾液排出管4と、そして、濾液排出管4の途中に接続した給水タンク5と、給水タンク5に水を供給する水道水供給管6および弁12と、給水タンク5に溜まった空気を排出する配管および弁14と、加圧空気を供給するために給水タンク5に接続されたコンプレッサー7と弁13とを備えている。濾液排出管4の出口高さは、濾過板3下端より下になるように設置している。また、濾過板3は、濾液と汚泥を隔離する濾過膜3aと、濾過膜3aを支持する濾枠3bから成っている。
【0004】
図11は濾過板3の構成を示した図である。濾過板3の内側上部には、濾液の吸引や濃縮汚泥を剥離するための空気分配管15が設けられている。この空気分配管15は、金属や塩化ビニールなどの丸型や角型パイプを水平方向に設置し、パイプの下部に鉛直下方向に孔16を複数設けている。孔16は、濾過板3内部の濾液を吸引するためや、濃縮汚泥を濾過膜3aから剥離させる加圧空気を供給するために設けられている。空気分配管15の加圧空気吹き込み口の反対側の端は、封止されている。
【0005】
次に、従来の濾過濃縮装置の運転方法を説明する。弁9〜14はすべて閉じ、弁8は開けておく。そして、ポンプ2を作動させて、汚泥槽1に設置した濾過板3が水没する所定水位まで原汚泥を供給する。
次に、弁12,14を開いて給水タンク5が所定水位になるまで水を供給後、弁12,14を閉じる。そして、弁10,11を開いて濾過を開始する。濾過処理中は原汚泥の水位がこの所定水位を維持するようにポンプ2を作動させる。濾過膜3aに堆積する汚泥の厚さが、好ましくは10〜13mmになるまで汚泥の供給および濾過を継続する。濾過を継続する時間は、予め汚泥堆積厚さと濾過時間の関係を調べておき、その後は、汚泥堆積厚さが前記10〜13mmになる濾過時間を指標にして実施してもよい。例えば、このサイフォン濾過の場合は、90分間濾過を行う。
【0006】
次に、弁10を閉じ、弁8を開け、ポンプ2を作動させて、濾過膜3a表面に付着されなかった未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出後、弁8を閉じる。
次に、弁10,13を開け、濾過膜3aの2次側に空気をコンプレッサー7で入れて加圧する。これにより、給水タンク5および濾液排出配管内の水とコンプレッサー7の空気を混合させた状態で、濾過膜3aの1次側表面に付着した濃縮汚泥を濾過膜3aから剥離および落下させ、剥離した濃縮汚泥を汚泥槽1の底に堆積させる。そして、弁9を開けて濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。
【0007】
以上の濾過板を用いた濃縮汚泥剥離原理をまとめると以下の通りである。
・ 空気分配管15に供給された加圧空気は、分配管に設けられた孔16から濃縮汚泥が付着した濾過膜3aの2次側に向けて噴出する(一部は濾過膜流路に供給される)。これにより、空気分配管周辺の濾過膜3a表面に付着した濃縮汚泥は剥離する。
・ 剥離した濃縮汚泥は、汚泥槽1下部に向かって、他の濃縮汚泥を巻き込みながら、落下する。
【特許文献1】特公昭63−13721号公報
【特許文献2】特開2001−145899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の空気分配管を備えた濾過濃縮装置は、濾過板上部に濃縮汚泥が残留するという問題があった。すると、時間当たりの汚泥処理量が低下する事や、濾過板の寿命期間が短くなる問題を生じていた。つまり、濾過サイクルを繰り返すと、前記汚泥残留箇所ではさらに濾過吸引するため濾過膜と濃縮汚泥の付着力が強くなり目詰まりを起こした。
そこで、本発明は、濾過板上部に濃縮汚泥が残留することを防止できる濾過濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明は、以下の構成とした。
請求項1に記載の濾過濃縮装置は、汚泥を貯留する汚泥槽と、前記汚泥を濾過する濾過膜と、前記濾過膜により濃縮された濃縮汚泥を前記濾過膜から剥離させるための気体を前記濾過膜の2次側に供給する管とを備えた濾過濃縮装置において、前記管は、前記濾過膜上部の傾斜領域へ気体を噴出させる孔を備えている。ここで、前記傾斜領域とは、前記濾過膜が2次側を下にして傾斜している前記濾過膜の領域のことである。なお、前記濾過膜の頭頂部が水平の場合は、前記傾斜領域に前記頭頂部の水平部分も含む。上記構成にすれば、管内に加えられた加圧空気は、濾過膜を下から上方向に圧力をかけることができ、前記傾斜領域に濃縮汚泥が残留することを防止できる。
【0010】
請求項2に記載の濾過濃縮装置は、請求項1に記載の濾過濃縮装置において、前記孔と前記濾過膜の間に空隙を設けている。上記構成にすれば、加圧空気が濾過膜に与える振動を広範囲に伝達することができる。
請求項3に記載の濾過濃縮装置は、請求項1または2に記載の濾過濃縮装置において、前記濾過膜は、柔軟性があるものを用いている。
【0011】
請求項4に記載の濾過濃縮装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置において、前記管と前記濾過膜の間に多孔質部材を設けている。上記構成にすれば、濾液および加圧空気の通流を容易にすることができる。
請求項5に記載の濾過濃縮装置は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置において、前記傾斜と鉛直のなす角は、45度以下とする。上記構成にすれば、上部の剥離した濃縮汚泥が、まだ濾過膜に付着している濃縮汚泥を巻き込んで剥離するので、濾過膜から濃縮汚泥を剥離させることが容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、濾過膜全面に付着した濃縮汚泥を剥離できるので、時間当たりの汚泥処理量の低下を防止できる。そして、濾過板上部に残留する濃縮汚泥がなくなることから、濾過膜の目詰まりが低減されるので、濾過膜の交換サイクルを長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を実施例に基づき説明する。本実施例の濾過濃縮装置は、濾過板3を除いて、従来技術である図10と同じ構成の濾過濃縮装置である。
図1は、本発明が適用される濾過板3の構成図である。濾過板3は、濾過膜3aと、空気分配管15とを備える。必要に応じて図示しない濾枠3bを備えていても良い。濾過膜3aは、周囲を必要に応じてミシン糸で縫合して袋状になっている。さらに、濾過膜中央部は、ミシン糸で縫合して濾過膜流路を形成されている。濾過膜3aを縫合した袋内部には、濾過膜表面に付着した濃縮汚泥の水分を吸引するため、また、濃縮汚泥を剥離するための加圧空気が流れる空気分配管15が設けられている。本実施例の空気分配管15のA−A断面図を図2に示す。空気分配管15には、濾過膜3a上部の傾斜領域へ空気を噴出させる孔を備えている。空気分配管15の加圧空気吹き込み口の反対側の端は、封止されている。
【0014】
本実施例の濾過濃縮装置の運転方法は、前述の従来技術の濾過濃縮装置における運転方法と同じである。弁9〜14はすべて閉じ、弁8は開けておく。そして、ポンプ2を作動させて、汚泥槽1に設置した濾過板3が水没する所定水位まで原汚泥を供給する。
次に、弁12,14を開いて給水タンク5が所定水位になるまで水を供給後、弁12,14を閉じる。そして、弁10,11を開いて濾過を開始する。濾過処理中は原汚泥の水位がこの所定水位を維持するようにポンプ2を作動させる。濾過膜3aに堆積する汚泥の厚さが、好ましくは10〜13mmになるまで汚泥の供給および濾過を継続する。濾過を継続する時間は、予め汚泥堆積厚さと濾過時間の関係を調べておき、その後は、汚泥堆積厚さが前記10〜13mmになる濾過時間を指標にして実施してもよい。例えば、このサイフォン濾過の場合は、90分間濾過を行う。
【0015】
次に、弁10を閉じ、弁8を開け、ポンプ2を作動させて、濾過膜3a表面に付着されなかった未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。未濃縮汚泥を汚泥槽1から排出後、弁8を閉じる。
次に、弁11,14を開けた状態にして吸水タンク5および濾液排出配管4の水を除いた後、弁11,14を閉じる。
【0016】
次に、弁10,13を開け、濾過膜3aの2次側に空気をコンプレッサー7で入れて加圧する。これにより、濾過膜3aの1次側表面に付着した濃縮汚泥を濾過膜3aから剥離および落下させ、剥離した濃縮汚泥を汚泥槽1の底に堆積させる。そして、弁9を開けて濃縮汚泥を汚泥槽1から排出する。
従来技術と本発明の実施例の結果を表1に示す。使用した汚泥は、水源がダム放流水、浄水処理量は2万m3/日の浄水汚泥である。また、濾過は、濾過圧力−33kPa、濾過時間90分間で行った。濃縮汚泥剥離は、加圧空気圧力5kg/cm2、5秒間加圧継続した。濾過膜は、ナイロン製のモノフィラメントで、かつ、1枚当たり濾過面積1.3m2のものを用いた。
表1の結果から、同じ濃縮汚泥厚さで、かつ、濃縮汚泥濃度の条件下において、空気分配管15は、濾過膜3a上部の傾斜領域へ空気を噴出させる孔16を備えたことによって、濃縮汚泥剥離率は、従来技術では60〜90%であったが、本発明の実施例では95〜98%に増加した。
【0017】
【表1】
また、図3から図9に示すような空気分配管15を用いても、濾過板3上部に残留する濃縮汚泥をなくすことができる。
図3は、濾過膜の傾斜面と鉛直のなす角を、45度以下とする実施例である。濾過板3上部の剥離した濃縮汚泥が、まだ濾過膜に付着している濃縮汚泥を巻き込んで剥離するので、濾過膜から濃縮汚泥を剥離させることが容易になる。そして、空気分配管15の鉛直方向断面形状を三角形とする場合においては、三角形の底辺部が広いと濾過板3の厚みが増し、濾過板3内に残留する濾液が増加するため、剥離後の濃縮汚泥濃度は低下する。よって、三角形の底辺が狭い形状とすることが望ましい。
【0018】
図4は、図2において、空気分配管15と濾過膜3aの間に多孔質部材19を設けた実施例である。多孔質材19としては、メッシュ状のものが好ましい。
図5から図9は、孔16と濾過膜3aの間に空隙を設けた実施例である。より具体的には、突出部17を空気分配管15の頭頂部に設けて、濾過膜3aと孔16の間に空隙を設けている。図5は、図3において、空気分配管15頭頂部に突出部17を設けた実施例である。図6は、図2の空気分配管15頭頂部を絞り、空気分配管15頭頂部に突出部17を設けた実施例である。図7,8の空気分配管15は、ステンレス板に孔16をあけ、図9のようにプレス加工で湾曲させて、2枚の前記ステンレス板を抱き合わせ、加圧空気吹き込み口を除く周囲を電気抵抗溶接して空気分配管15を形成したものである。図9は、空気分配管15から部分的に離隔させるように濾過膜3aを形成し、濾過後に濾過膜が2次側を下にして傾斜している濾過膜傾斜領域の下に孔16が位置するようにした実施例である。すなわち、図9の実施例では、濾過膜3aは柔軟性を備えており、濾過前後で変形する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の濾過濃縮装置における濾過板の概略構成図
【図2】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図3】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図4】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図5】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図6】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図7】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図8】図7の空気分配管の斜視図
【図9】本発明の濾過濃縮装置における空気分配管付近の断面図の一例
【図10】従来の濾過濃縮装置の構成図
【図11】従来の濾過濃縮装置における濾過板の概略構成図
【符号の説明】
【0020】
1 汚泥槽
2 ポンプ
3 濾過板
3a 濾過膜
3b 濾枠
4 濾液排出管
5 給水タンク
6 水道水供給管
7 コンプレッサー
8〜14 弁
15 空気分配管
16 孔
17 突出部
18 水位計
19 多孔質部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を貯留する汚泥槽と、前記汚泥を濾過する濾過膜と、前記濾過膜により濃縮された濃縮汚泥を前記濾過膜から剥離させるための空気を前記濾過膜の2次側に供給する管とを備えた濾過濃縮装置において、
前記管は、前記濾過膜上部の傾斜領域へ気体を噴出させる孔を備えたことを特徴とする濾過濃縮装置。
【請求項2】
前記孔と前記濾過膜の間に空隙を設けたことを特徴とする請求項1に記載の濾過濃縮装置。
【請求項3】
前記濾過膜は、柔軟性があることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過濃縮装置。
【請求項4】
前記管と前記濾過膜の間に多孔質部材を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置。
【請求項5】
前記傾斜と鉛直のなす角は、45度以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置。
【請求項1】
汚泥を貯留する汚泥槽と、前記汚泥を濾過する濾過膜と、前記濾過膜により濃縮された濃縮汚泥を前記濾過膜から剥離させるための空気を前記濾過膜の2次側に供給する管とを備えた濾過濃縮装置において、
前記管は、前記濾過膜上部の傾斜領域へ気体を噴出させる孔を備えたことを特徴とする濾過濃縮装置。
【請求項2】
前記孔と前記濾過膜の間に空隙を設けたことを特徴とする請求項1に記載の濾過濃縮装置。
【請求項3】
前記濾過膜は、柔軟性があることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過濃縮装置。
【請求項4】
前記管と前記濾過膜の間に多孔質部材を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置。
【請求項5】
前記傾斜と鉛直のなす角は、45度以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濾過濃縮装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−296455(P2007−296455A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125783(P2006−125783)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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