説明

濾過用フィルタの製造方法

【課題】上水や淡水を手軽に得ることができる濾過用フィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンからなる基板1を、該基板1の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いてエッチングして基板1に径が約100nmの多数の円孔2を形成し、形成された円孔2の内表面に酸化硅素膜3を堆積させて酸化硅素膜3によって縮小される円孔2の開口部近傍の最小径部4における径D1を1nm〜100nmに調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過用フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や家庭からの排水(下水)から汚染物質や不純物を除去して上水を精製し、若しくは、海水から塩分等を除去して淡水を精製する際、濾過用フィルタが多用されている。濾過用フィルタとしては、高分子材料から成るもの、例えば、酢酸メチルの高分子膜を用いる逆浸透膜が知られている。逆浸透膜は径が数nmの無数の貫通孔を有し、下水や海水に圧力をかけて逆浸透膜を通過させる際、1個の差し渡しが約0.38nmの水分子は貫通孔を通過するものの、大きさが数十nmの汚染物質の分子や水和によって周囲に水分子が配位するナトリウムイオンは貫通孔を通過しない。これにより、逆浸透膜は水分子と汚染物質や塩分とを分離して下水や海水から上水や淡水を精製する。
【0003】
ところが、途上国や自然災害の被災地において汚水から上水を逆浸透膜を用いて精製する際、汚水中のバクテリアが高分子膜を腐食するため、逆浸透膜の寿命が極端に短くなるという問題がある。
【0004】
また、海岸沿いに配置される風車型の風力発電機では、潤滑油に塩分や微細な砂が混じりやすいため、潤滑油から塩分や微細な砂を除去することが強く求められているが、塩分や微細な砂の除去に逆浸透膜を用いた場合、潤滑油の成分が高分子膜を溶解させるため、やはり、逆浸透膜の寿命が極端に短くなるという問題がある。
【0005】
さらに、逆浸透膜は高分子膜を主要構成要素とするため、強度が低く、精製効率向上のために下水や海水へ印加する圧力(一次側圧力)を上昇させて負荷をかけると破れてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、近年、バクテリアによって腐食されることがなく、潤滑油にも溶解せず、且つ剛性の高い多孔質セラミック体からなる逆浸透膜が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−526819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高分子膜を用いる逆浸透膜及び多孔質セラミック体からなる逆浸透膜のいずれも製造過程において貫通孔の径を直接的に制御することができない。また、逆浸透膜の貫通孔を径が数nm以下の径の貫通孔で構成する必要がある場合でも、逆浸透膜には径が数nmよりも大きい貫通孔、例えば、径が数十nmとなる貫通孔が少なからず存在し、場合によっては径が数百nmの貫通孔が数個存在する可能性がある。そのため、汚染物質や塩分の除去に関して依然として懸念がある。
【0009】
また、下水中には大きさが数十nmのウィルス、例えば、約50nmのインフルエンザウィルスや約20nmのピコウィルスやパルポウィルスが存在するが、これらのウィルスは径が数十nmである貫通孔を通過する虞がある。
【0010】
一方、ウィルスなどが存在していない場合であって、例えば、大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌、その他、サイズが数百nm以上であるような異物を含む水を濾過する場合には、貫通孔の径を数十〜百nm程度としてもよく、この場合、一次側圧力をさほど上昇させる必要がないため、逆浸透膜への負荷を低減することができる。
【0011】
しかしながら、貫通孔の径を数十〜百nm程度とする場合であっても、貫通孔の径を精度よく制御していなければ所望の径以上の貫通孔が形成され、コレラ菌等が通過する懸念がある。
【0012】
さらに、逆浸透膜を液体中に含まれる大きさが異なる複数の医薬成分の仕分けに利用する場合、所望の大きさではない医薬成分が貫通孔を通過する虞があり、医薬成分の仕分けができないという問題がある。
【0013】
その結果、上水や淡水の精製に蒸留法等を併用する必要があり、また、医薬成分の仕分けに遠心分離法等を併用する必要がある。すなわち、上水や淡水を手軽に得ることができないという問題がある。
【0014】
また、逆浸透膜による濾過の対象物、逆浸透膜の設置の状況、又は逆浸透膜のメンテナンス性に応じて貫通孔の形状が左右される場合、例えば、貫通孔の断面形状を真円にするか長円にするか、或いは貫通孔を溝によって構成するかが決定される場合があり、この場合、貫通孔の形状を精度よく制御する必要がある。
【0015】
したがって、逆浸透膜の貫通孔を形成する際、該貫通孔のサイズ及び形状を精度よく制御することは重要な課題であるといえる。
【0016】
本発明の目的は、上水や淡水を手軽に得ることができる濾過用フィルタの製造方法 を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法は、硬質の基板の表面上に形成された該表面の一部を露出させる均一な大きさの複数の開口部を有するマスク膜を用いて前記基板の開口部に対応する部分をエッチングし、複数の孔又は溝を前記基板に形成することを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記エッチングは、プラズマによるドライエッチングであることを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1又は2記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記形成された孔又は溝の内表面に所定の物質を堆積させて前記孔の径又は前記溝の幅を1nm〜100nmに調整することを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項3記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記調整された前記孔の径又は前記溝の幅は1nm〜5nmであることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記所定の物質はCVDによって堆積されることを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記所定の物質はALDによって堆積されることを特徴とする。
【0023】
請求項7記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記孔又は溝の内表面に厚さが1nm〜100nmの有機膜を形成し、前記孔又は溝の内部において該有機膜を他の材料で覆った後、前記有機膜を除去することを特徴とする。
【0024】
請求項8記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項7記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記有機膜の厚さは1nm〜5nmであることを特徴とする。
【0025】
請求項9記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記孔の径又は前記溝の幅は10nm〜100nmであり、前記基板を厚み方向に圧縮して前記孔又は溝の内壁が突出するように前記孔又は溝を変形させて前記孔の径又は前記溝の幅を1nm〜5nmに調整することを特徴とする。
【0026】
請求項10記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記孔の径又は前記溝の幅は10nm〜1000nmであり、前記基板を厚み方向に圧縮して前記孔又は溝の内壁が突出するように前記孔又は溝を変形させて前記孔の径又は前記溝の幅を1nm〜100nmに調整することを特徴とする。
【0027】
請求項11記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記複数の孔又は溝が前記基板に形成された後、前記基板の裏面を削って前記孔又は溝を前記基板に対して貫通させることを特徴とする。
【0028】
請求項12記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記形成された孔又は溝を有する基板を複数枚重ねることを特徴とする。
【0029】
請求項13記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項12記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記基板は少なくとも表面及び裏面のいずれか一方に酸化膜が形成され、前記基板を複数枚重ねる際に各前記基板の前記酸化膜同士を加熱接合させることを特徴とする。
【0030】
請求項14記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記形成された前記複数の孔又は溝は前記基板を貫通し、複数の前記基板を重ねる際、各前記基板の前記孔又は溝を平面視において重ね合わせて複数の前記基板を貫通する貫通部を形成し、平面視において前記貫通部の幅を1nm〜100nmに調整することを特徴とする。
【0031】
請求項15記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項14記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記貫通部の幅は1nm〜5nmであることを特徴とする。
【0032】
請求項16記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記硬質の基板は、シリコン、金属又は金属酸化物からなることを特徴とする。
【0033】
請求項17記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記複数の孔又は溝が形成された基板をセラミックからなる他の基板に接合することを特徴とする。
【0034】
請求項18記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記複数の孔又は溝が形成された基板に高分子膜を用いる逆浸透膜を接合することを特徴とする。
【0035】
請求項19記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項1乃至18のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記複数の孔又は溝が形成された基板にセンサ機能を有する電気回路を組み込むことを特徴とする。
【0036】
上記目的を達成するために、請求項20記載の濾過用フィルタの製造方法は、複数の硬質の基板を、互いの間隔が所定値となるように間に有機材を介して重ねた後、前記有機材を除去することを特徴とする。
【0037】
請求項21記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項20記載の濾過用フィルタの製造方法において、各前記基板において当該基板を貫通する孔又は溝を形成し、平面視において各前記基板の前記孔又は溝が重ね合わさらないように前記複数の基板を重ねることを特徴とする。
【0038】
請求項22記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項20又は21記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記有機材は大きさが1nm〜100nmの間隔保持材を含むことを特徴とする。
【0039】
請求項23記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項22記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記間隔保持材の大きさが1nm〜5nmであることを特徴とする。
【0040】
請求項24記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項20乃至23のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記複数の基板を重ねた後、複数の前記基板をまとめて貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔に硬質部材を導入して柱を形成することを特徴とする。
【0041】
請求項25記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項20乃至24のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記重ねられた複数の基板をセラミックからなる他の基板に接合することを特徴とする。
【0042】
請求項26記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項20乃至24のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、前記重ねられた複数の基板に高分子膜を用いる逆浸透膜を接合することを特徴とする。
【0043】
請求項27記載の濾過用フィルタの製造方法は、請求項20乃至26のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法において、少なくとも1つの前記基板にセンサ機能を有する電気回路を組み込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、高度な加工精度を実現することのできるエッチング技術、特に、プラズマによるドライエッチング技術を用いることで、マスク膜の開口部の大きさ及び形状を調整することにより、基板に形成される複数の孔の径又は溝の幅及び形状を直接的に制御することができ、もって、所望のサイズの径や幅の孔や溝を形成する際、該形成される孔の径又は溝の幅のばらつきを防止できる。その結果、濾過の対象物である大きさが数十nmのウィルスや数百nmのコレラ菌、若しくは汚染物質が基板を通過するのを防止することができ、当該基板を用いた濾過用フィルタによる上水や淡水の精製の際、蒸留法等を併用する必要を無くすことができるので、上水や淡水を手軽に得ることができる。
【0045】
また、本発明によれば、複数の硬質の基板が、互いの間隔が所定値となるように間に有機材を介して重ねられた後、有機材が除去されるので、隣接する各基板の間に形成されるスリットの幅を直接的に制御することができ、もって、幅が数nm或いは数十nm〜百nmのスリットを形成する際、該形成されるスリットの幅のばらつきを防止できる。その結果、形成されたスリットの幅に応じて、大きさが数十nmのウィルスや数百nmのコレラ菌、若しくは汚染物質がスリットを通過するのを防止することができ、当該スリットを利用する濾過用フィルタによる上水や淡水の精製の際、蒸留法等を併用する必要を無くすことができるので、上水や淡水を手軽に得ることができる。
【0046】
さらに、本発明によれば、濾過用フィルタに硬質の基板を用いるので、下水や海水へ印加する一次側圧力を高めることができ、もって、上水や淡水の精製効率を向上することができる。
【0047】
また、孔若しくはスリットの形状を精度よく制御できるので、メンテナンスの効率を向上し、孔若しくはスリットの形状を設置の状況に適した形状に揃えて上水や淡水の精製効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態の変形例に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によって製造された濾過用フィルタの変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図11】本発明の第8の実施の形態の第1の変形例に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態の第2の変形例に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図13】本発明の第9の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図14】発明の第10の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【図15】本発明に係る濾過用フィルタの製造方法において用いられる基板の第1の変形例である。
【図16】本発明に係る濾過用フィルタの製造方法において用いられる基板の他の変形例であり、図16(A)は第2の変形例であり、図16(B)は第3の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法について説明する。
【0051】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0052】
図1において、まず、シリコンからなる基板1を、該基板1の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いて、例えば、プラズマによりエッチングする。本実施の形態では、マスク膜の各開口部は径が約100nm〜1μmの円形を呈するので、基板1には径が約100nm〜1μmの多数の円孔2が形成される(図1(A))。
【0053】
次いで、熱酸化を利用するCVDによって基板1の表面及び円孔2の内表面に酸化硅素膜3を堆積させる。このとき、酸化硅素膜3は円孔2の内部よりも開口端近傍に多く堆積し、円孔2の実質的な径は開口端近傍において最も縮小する(図1(B))。本実施の形態では、酸化硅素膜3によって縮小される円孔2の開口部近傍の最小径部4における径D1が1nm〜100nmとなるようにCVDの処理時間が調整される。
【0054】
次いで、酸化硅素膜3によって円孔2の径が縮小された2つの基板1の各酸化硅素膜3同士を接触させ、雰囲気の温度を400℃〜1000℃に上昇させて各酸化硅素膜3同士を加熱結合させる。このとき、図中上方の基板1における各円孔2の位置と、図中下方の基板1における各円孔2の位置とが一致するように、2つの基板1を重ねる(図1(C))。
【0055】
次いで、図中下方の基板1の裏面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等によって研削して該基板1におけるシリコンから成る部分を除去し、図中下方の基板1の酸化硅素膜3のみからなる径調整部5を残存させる。このとき、径調整部5に最小径部4が残存するようにシリコンからなる部分を除去する(図1(D))。
【0056】
次いで、図1(C)の基板1の重ね合わせ、及び図1(D)の基板の研削を繰り返し、径調整部5を少なくとも10層以上、好ましくは100層以上重ね(図1(E))、その後、図中上方の基板1の裏面をCMP等によって研削して該基板1におけるシリコンから成る部分を除去し、図中上方の基板1の酸化硅素膜3のみからなる径調整部5aを残存させて逆浸透膜としての濾過用フィルタ6を形成し(図1(F))、本処理を終了する。
【0057】
濾過用フィルタ6では各径調整部5の最小径部4が連なって形成された流路7が形成され、該流路7における最小径は1nm〜100nmとなるので、濾過用フィルタ6では流路7に下水や海水を流すことによって大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌を除去できる。さらに、流路7の最小径を1nm〜5nmに制御すれば、汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、図1(D)において下方の基板1の裏面を研削して下方に径調整部5を積層していったが、上方の基板1の裏面を研削して上方に径調整部5を積層していってもよい。
【0059】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、マスク膜の開口部の径を調整することにより、基板1に形成される多数の円孔2の径を直接的に制御することができ、もって、径が数nm〜100nmの円孔2を形成する際、該円孔2の径のばらつきを防止できる。その結果、孔径のサイズを使い分けることにより、大きさが数百nmのコレラ菌や、大きさが数十nmのウィルスや汚染物質が基板1を通過するのを防止することができ、当該基板1を重ね合わせて形成した濾過用フィルタ6による上水や淡水の精製の際、蒸留法等を併用する必要を無くすことができるので、上水や淡水を手軽に得ることができる。また、濾過用フィルタ6は硬質の酸化硅素膜3からなるので、下水や海水へ印加する一次側圧力を高めることができ、もって、上水や淡水の精製効率を向上することができる。
【0060】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、酸化硅素はCVDによって堆積される。CVDは処理時間を調整することによって堆積量を調整することができるので、円孔2の径を容易に所望値へ調整することができる。
【0061】
また、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、多数の円孔2が基板1に形成された後、基板1の裏面を削るので、切削量を調整することによって各円孔2を基板1に対して確実に貫通させることができる。
【0062】
さらに、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、径調整部5を10層以上重ねるので、濾過用フィルタ6の強度を向上することができる。
【0063】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、基板1は表面に酸化硅素膜3が形成され、2つの基板1を重ねる際に各基板1の酸化硅素膜3同士が加熱接合されるので、各基板1の接合を強固に行うことができ、もって、濾過用フィルタ6の強度をより向上することができる。
【0064】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、プラズマによって基板をエッチングしたが、マスクの開口を基板へ正確に転写できれば、他のエッチング方法であってもよい。
【0065】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、CVDによって基板1の表面及び円孔2の内表面に酸化硅素膜3を堆積させたが、窒化硅素膜又はポリシリコン膜等CVDによって堆積可能な硬質の膜であれば、いずれを堆積させてもよい。また、基板1をシリコンで構成したが、エッチング可能な硬質材であれば、金属又は金属酸化物等によって基板1を構成してもよい。また、酸化硅素膜3の堆積の際に熱酸化によるCVDを利用したが、プラズマCVDを利用してもよい。
【0066】
また、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、流路7において全ての径調整部5が最小径部4を備えるが、全ての径調整部5が最小径部4を備える必要はなく、流路7において1つの径調整部5だけが最小径部4を備えていてもよい。
【0067】
さらに、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、各基板1からシリコンからなる部分を全て除去したが、シリコンからなる部分を全て除去する必要はなく、少なくとも円孔2が基板1に対して貫通する程度だけシリコンからなる部分を除去すればよい。
【0068】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、各基板1に円孔2を形成したが、マスク膜の各開口部をスリット状に形成し、該開口部を用いたエッチングによって基板1に溝を形成してもよく、この場合、該溝の内表面に酸化硅素を堆積させて溝の最小幅を1nm〜100nm、好ましくは1nm〜5nmに調整するのが好ましい。
【0069】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法について説明する。
【0070】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0071】
図2において、まず、シリコンからなる基板8に、該基板8の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いて基板8をエッチングして多数のDT(Deep Trench)9を形成する。本実施の形態におけるエッチングは、アスペクト比の高いDTを形成するために異方性の高い加工が可能なプラズマによるエッチングであることが望ましい。
【0072】
本実施の形態では、マスク膜の各開口部は幅が約20nm〜40nmのスリット状を呈するので、基板8には幅が約20nm〜40nmの多数のDT9が形成される(図2(A))。通常、アスペクト比が10以上のDTでは先端部が狭くなり、本実施の形態におけるDT9では先端部の幅が約10nmである。
【0073】
次いで、ALDによって基板8の表面及びDT9の内表面に酸化硅素膜10を堆積させ、さらに、基板8の表面に堆積した酸化珪素膜10のみを除去する(図2(B))。本実施の形態では、DT9の先端部における最小幅D1が1nm〜5nm、好ましくは、1nm〜3nmとなるようにALDの処理時間が調整される。
【0074】
次いで、基板8の裏面をCMP等によって研削し、DT9の先端部が基板8の裏面に露出した時点で研削を中止する。これにより、各DT9を基板8に対して貫通させて濾過用フィルタ11を形成し(図2(C))、本処理を終了する。
【0075】
濾過用フィルタ11では、基板8に対して貫通するDT9の最小幅D1は1nm〜5nmとなるので、濾過用フィルタ11ではDT9に下水や海水を流すことによって汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0076】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、酸化硅素膜はALDによって堆積される。ALDは原子を1個単位で堆積することができるので、DT9の先端部の最小幅D1を精密に所望値へ調整することができる。
【0077】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、基板8にDT9を形成したが、マスク膜の各開口部を円形状に形成し、該開口部を用いたエッチングによって基板8に円孔を形成してもよく、この場合、該円孔の内表面に酸化硅素を堆積させて円孔の最小径を1nm〜5nmに調整するのが好ましい。
【0078】
なお、大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌等を除去する場合には、DT9の最小幅D1や貫通孔の最小径は1nm〜100nmでよく、これらを形成する際に用いるDTの開口サイズが100nm〜1μm程度であること以外は、最小幅D1が1nm〜5nmのDT9を形成する場合と形成方法は変わらない。
【0079】
また、本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0080】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法について説明する。
【0081】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0082】
図3において、まず、シリコンから成る基板12を準備し(図3(A))、該基板12の表面に厚さが1nm〜100nmのアモルファスカーボン膜13を堆積させる(図3(B))。
【0083】
次いで、複数の基板12を、一の基板12のアモルファスカーボン膜13が他の基板12の裏面と接触するように重ね、周りをフレーム(図示しない)等で固定し(図3(C))、アッシングによって各アモルファスカーボン膜13を除去して逆浸透膜としての濾過用フィルタ14を形成し(図3(D))、本処理を終了する。
【0084】
濾過用フィルタ14では各アモルファスカーボン膜13が除去されて隣接する2つの基板12の間にスリット状の流路15が形成され、該流路15の幅は1nm〜100nmとなるので、濾過用フィルタ14では流路15へ、図中矢印の方向に沿って下水や海水を流すことによって大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌等を除去することができる。さらに、流路15の幅を1nm〜5nmに制御することにより、汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0085】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、複数のシリコンから成る基板12が、互いの間隔が1nm〜100nmとなるように間にアモルファスカーボン膜13を介して重ねられた後、各アモルファスカーボン膜13が除去されるので、隣接する各基板12の間に形成されるスリット状の流路15の幅を直接的に制御することができ、もって、形成されるスリット状の流路15の幅のばらつきを防止できる。
【0086】
また、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、幅が1nm〜100nmのスリット状の流路15によって濾過が行われるため、最小径が1nm〜100nmの円孔によって濾過を行う場合よりも多量の下水や海水を流路15に流すことができる。その結果、上水や淡水の精製効率を向上することができる。
【0087】
さらに、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、複数の基板12の周りをフレーム等で固定することによって隣接する基板12の間の間隔を維持したが、隣接する基板12の間に高さが1nm〜100nmのピラー状の間隔保持材を介在させて隣接する基板12の間の間隔を維持してもよい。
【0088】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、アッシングによって各アモルファスカーボン膜13を除去したが、超臨界状態の薬液等によるウェットエッチングによって各アモルファスカーボン膜13を除去してもよい。超臨界状態の薬液は微小隙間へも円滑に進入するので、各アモルファスカーボン膜13を確実に除去することができる。
【0089】
また、本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0090】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法について説明する。
【0091】
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0092】
図4において、まず、表面に窒化硅素膜16が形成されたシリコンから成る基板17を、該基板17の表面上に形成された該表面の一部を露出させる開口部を有するマスク膜を用いてエッチングし、基板17に幅が約10nm〜300nmのトレンチ18を形成する(図4(A)、図4(B))。ここで、図4(A)は平面図である。
【0093】
次いで、基板17の表面及びトレンチ18の内表面に厚さが1nm〜100nmのアモルファスカーボン膜19を堆積させる(図4(C))。
【0094】
次いで、CVDによって酸化硅素膜20をトレンチ18の内表面及び基板17の表面に堆積させて該基板17の表面を平坦化し、さらに、開口部21を有するフォトレジスト膜22を平坦化された基板17の表面上に形成する(図4(D))。このとき、トレンチ18においてアモルファスカーボン膜19は酸化硅素膜20で実質的に覆われる。
【0095】
次いで、フォトレジスト膜22をマスク膜として酸化硅素膜20及びアモルファスカーボン膜19の一部をエッチングによって除去して窒化硅素膜16を露出させ(図4(E))、CVDによって基板17の表面全体を窒化硅素膜23で覆い(図4(F))、さらに、基板17の表面の一部を覆うフォトレジスト膜24を形成する(図4(G))。
【0096】
次いで、フォトレジスト膜24をマスク膜として窒化硅素膜23の一部をエッチングによって除去して酸化硅素膜20を露出させ(図4(H))、CVDによって基板17の表面全体を窒化硅素膜25で覆い(図4(I))、さらに、基板17の表面の一部を覆うフォトレジスト膜26を形成する(図4(J))。
【0097】
次いで、フォトレジスト膜26をマスク膜として窒化硅素膜25及び酸化硅素膜20の一部をエッチングによって除去してアモルファスカーボン膜19の一部を露出させ(図4(K))、アッシングによってアモルファスカーボン膜19を全て除去し、基板17に幅が1nm〜100nmである断面U字状の空洞27を形成する(図4(L))。
【0098】
次いで、基板17の裏面をCMP等によって研削し、空洞27が基板17の裏面に露出した時点で研削を中止する。これにより、基板17を厚み方向に貫通する幅が1nm〜100nmの流路28を形成し(図4(M))、本処理を終了する。
【0099】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、トレンチ18の内表面に厚さが1nm〜100nmのアモルファスカーボン膜19を堆積し、該アモルファスカーボン膜19を酸化硅素膜20で覆った後、アモルファスカーボン膜19を除去するので、幅が1nm〜100nmの流路28を形成することができ、該流路28に下水や海水を流すことによってコレラ菌やチフス菌等を除去することができる。また、流路28の幅を1nm〜5nmに制御することにより、汚染物質や塩分、さらにはウィルスを除去することができる。したがって、蒸留法等を併用することなく上水や淡水を得ることができる。
【0100】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、基板17にトレンチ18を形成したが、基板17に円孔を形成してもよく、この場合、該円孔の内表面にアモルファスカーボン膜19を堆積させ、後工程において該アモルファスカーボン膜19を除去することによって円孔状の流路を形成してもよい。
【0101】
また、本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0102】
次に、本発明の第5の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法について説明する。
【0103】
図5は、本発明の第5の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。なお、以下の図5(B)、図5(D)、図5(F)、図5(H)、図5(J)、図5(L)及び図5(N)は平面図である。
【0104】
図5において、まず、表面に窒化硅素膜29及び酸化硅素膜30が形成されたシリコンから成る基板31を、径が約10nm〜300nmの円形の複数の開口部32を有するフォトレジスト膜33で覆い(図5(A)、図5(B))、該フォトレジスト膜33をマスク膜として窒化硅素膜29、酸化硅素膜30及び基板31をエッチングして該基板31に径が約10nm〜300nmの複数の円孔34を形成する(図5(C)、図5(D))。
【0105】
次いで、エッチング等によって窒化硅素膜29及び酸化硅素膜30を除去した後、円孔34の内表面に厚さが1nm〜100nmのアモルファスカーボン膜35を堆積させ(図5(E)、図5(F))、さらに、平面視において円孔34及びアモルファスカーボン膜35の一部を覆い、且つスリット状の開口部36を有するフォトレジスト膜37を基板31の表面上に形成し(図5(G)、図5(H))、該フォトレジスト膜37をマスク膜として露出するアモルファスカーボン膜35をアッシングによって除去し、さらに、残存したフォトレジスト膜37をアッシング等によって除去する。これにより、円孔34の内表面には平面視C字状のアモルファスカーボン膜35が残存する(図5(I)、図5(J))。
【0106】
次いで、CVDによって円孔34内を酸化硅素38で充填する(図5(K)、図5(L))。このとき、円孔34においてアモルファスカーボン膜35は酸化硅素38で実質的に覆われる。その後、残存するアモルファスカーボン膜35をアッシングによって除去する。これにより、基板31及び酸化硅素38に挟まれた平面視C字状の流路39を形成し(図5(M)、図5(N))、本処理を終了する。
【0107】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、円孔34の内表面に厚さが1nm〜100nmのアモルファスカーボン膜35を堆積し、該アモルファスカーボン膜35を酸化硅素38で覆った後、アモルファスカーボン膜35を除去するので、幅が1nm〜100nmの流路39を形成することができ、該流路39に、図中矢印に沿って下水や海水を流すことによってコレラ菌やチフス菌、汚染物質や塩分、さらにはウィルスを除去することができる。したがって、蒸留法等を併用することなく上水や淡水を得ることができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0109】
次に、本発明の第6の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法について説明する。
【0110】
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0111】
図6において、まず、シリコンからなる基板40において、該基板40の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が数十nm〜300nmの貫通円孔41を複数形成し、さらに、基板40の表面にアモルファスカーボン膜42を形成する。アモルファスカーボン膜42は多数の大きさが1nm〜100nmの間隔保持材、例えば、高さが1nm〜100nmのマイクロピラー43を含む(図6(A))。
【0112】
次いで、基板40と同様にマスク膜を用いたエッチングによって形成された径が数十nm〜300nmの複数の貫通円孔44を有する基板45を、アモルファスカーボン膜42を介して基板40に押圧して重ね、さらに接合する。このとき、アモルファスカーボン膜42は潰されて厚み方向に圧縮されるが、マイクロピラー43は圧縮されないため、基板40及び基板45の間の間隔は1nm〜100nmに維持される(図6(B))。ここで、平面視において貫通円孔44が貫通円孔41に重ね合わさらないように基板45は基板40に重ねられる。
【0113】
次いで、PVD(Physical Vapor Deposition)によって多孔質のセラミック材46を各貫通円孔44へ充填して該貫通円孔44を埋め(図6(C))、さらにアッシングによってアモルファスカーボン膜42を除去して基板40及び基板45の間にギャップ47を形成する(図6(D))。ここで、前述の通り、基板40及び基板45の間にはマイクロピラー43が介在するため、ギャップ47の厚さはマイクロピラー43の高さと同じとなる。
【0114】
次いで、基板45の表面にアモルファスカーボン膜42を形成した後、上述した図6(B)乃至図6(D)の工程、並びに、最上の基板の表面へのアモルファスカーボン膜の形成を繰り返して基板45へ、該基板45と同様の構成を有する基板48、基板49を順番に重ねていく。このとき、隣接する各基板の貫通円孔が平面視において互いに重ね合わさらないように基板48、基板49が基板45へ重ねされる。また、各基板の間のアモルファスカーボン膜42は基板が重ねられる毎にアッシングによって除去される。これにより、逆浸透膜としての濾過用フィルタ50を形成し(図6(E))、本処理を終了する。
【0115】
濾過用フィルタ50では各アモルファスカーボン膜が除去されて形成される厚さが1nm〜100nmのギャップ47が流路として機能し、下水や海水は、図中矢印に示すように、セラミック材46及びギャップ47を通過するように流されるので、ギャップ47によって大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌等を除去することができる。さらに、ギャップ47を1nm〜5nmに制御することにより、汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0116】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、アモルファスカーボン膜42は高さが1nm〜100nmのマイクロピラー43を含むので、アモルファスカーボン膜42が除去された後もマイクロピラー43がギャップ47の厚さを確実に1nm〜100nmに維持することができる。
【0117】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、各基板の貫通円孔が平面視において互いに重ね合わさらないように各基板を重ねるので、各基板のセラミック材46が重ね合わさってセラミック材46のみで構成される貫通部が形成されるのを防止することができ、もって、大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌、若しくは大きさが数十nmのウィルスや汚染物質が濾過用フィルタ50を厚み方向に通過するのを防止できる。
【0118】
図7は、本発明の第6の実施の形態の変形例に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0119】
図7において、まず、シリコンからなる基板51において、該基板51の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が数十nm〜300nmの貫通円孔52を複数形成し、さらに、基板51の表面に厚さが1nm〜100nmのアモルファスカーボン膜53を形成する(図7(A))。
【0120】
次いで、基板51上にアモルファスカーボン膜53を介してシリコンからなる基板54を重ねて接合し(図7(B))、該基板54の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が数十nm〜300nmの貫通円孔55を複数形成する。このとき、各貫通円孔55は平面視において基板51の各貫通円孔52に重ね合わさらないように形成される。また、各貫通円孔55の底部においてアモルファスカーボン膜53も除去される(図7(C))。
【0121】
次いで、PVDによって多孔質のセラミック材56で基板54の表面を覆い、各貫通円孔55をセラミック材56で充填する(図7(D))。貫通円孔55のセラミック材56は基板51及び基板54と自然に接合される。その後、PVDの際に基板54の表面に堆積したセラミック材56を切削加工等によって除去する(図7(E))。
【0122】
次いで、アッシングによってアモルファスカーボン膜53を除去する。ここで、各貫通円孔55のセラミック材56が基板51及び基板54に接合されているため、基板51及び基板54は互いに離間することなく、また、セラミック材56が基板51及び基板54の接触を防ぎ、基板51及び基板54の間に厚さが1nm〜100nmのギャップ57を形成する(図7(F))。
【0123】
次いで、基板54の表面にアモルファスカーボン膜53を形成した後、上述した図7(B)乃至図7(F)の工程、並びに、最上の基板の表面へのアモルファスカーボン膜の形成を繰り返して基板54へ、該基板54と同様の構成を有する基板58、基板59を順番に重ねていく。このとき、各基板の貫通円孔が平面視において互いに重ね合わさらないように各基板の貫通円孔が形成される。また、各基板の間のアモルファスカーボン膜53は基板が重ねられる毎にアッシングによって除去される。これにより、逆浸透膜としての濾過用フィルタ60を形成し(図7(G))、本処理を終了する。
【0124】
濾過用フィルタ60では各アモルファスカーボン膜が除去されて形成される厚さが1nm〜100nmのギャップ57及び多孔質のセラミック材56が流路として機能し、下水や海水は、図中矢印に示すように、セラミック材56及びギャップ57を通過するように流されるので、ギャップ57によって汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0125】
本変形例に係る濾過用フィルタの製造方法でも、各基板の貫通円孔が平面視において互いに重ね合わさらないように形成されるので、各基板のセラミック材56が重ね合わさってセラミック材56のみで構成される貫通部が形成されるのを防止することができ、もって、大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌、若しくは、大きさが数十nmのウィルスや汚染物質が濾過用フィルタ60を厚み方向に通過するのを防止できる。
【0126】
上述した濾過用フィルタ50や濾過用フィルタ60において各基板(45、48、49又は54、58、59)をまとめて貫通する複数の貫通孔61を形成し、各貫通孔61に金属等の硬質部材、例えば、タングステン材を導入して濾過用フィルタ50や濾過用フィルタ60の内部を厚み方向に貫通する柱62を形成してもよい(図8)。これにより、濾過用フィルタ50や濾過用フィルタ60の強度を向上することができる。
【0127】
なお、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0128】
図9は、本発明の第7の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0129】
図9において、まず、シリコンからなる複数の基板63において、各基板63の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が数十nm〜300nmの貫通円孔64を複数形成し、その後、複数の基板63を重ねて接合する際、各基板63の各貫通円孔64を平面視において重ね合わせて全ての基板63を厚み方向に貫通する貫通流路65を形成する。このとき、貫通流路65の最大幅W1が1nm〜100nmとなるように各貫通円孔64の重ね合わせ量を調整する。これにより、逆浸透膜としての濾過用フィルタ66を形成し、本処理を終了する。
【0130】
濾過用フィルタ66では貫通流路65の最大幅W1が1nm〜100nmとなるので、濾過用フィルタ66では貫通流路65へ、図中矢印の方向に沿って下水や海水を流すことによって大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌を除去することができる。さらに、貫通流路65の最小幅W1を1nm〜5nmに制御することにより、汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。したがって、蒸留法等を併用することなく上水や淡水を得ることができる。
【0131】
なお、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0132】
図10は、本発明の第8の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0133】
図10において、まず、CF系のポリマーやDLC(Diamond-Like Carbon)からなる基板67において、各基板67の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が約20〜200nmの貫通円孔68を複数形成し、該基板67をチタンやダイヤモンドからなるベース板69に載置し、さらに、載置された基板67をチタンやダイヤモンドからなる蓋体70で覆う(図10(A))。蓋体70の深さD2は基板67の厚さよりも小さく設定される。
【0134】
次いで、蓋体70をベース板69へ向けて押圧する。このとき、基板67は厚み方向に圧縮されて水平方向に膨張しようとするが、周りを蓋体70で覆われているため、各貫通円孔68の内壁が突出し、その結果、貫通円孔68の径が縮小される(図10(B))。本実施の形態では、縮小される貫通円孔68の径が1nm〜100nmとなるように基板67の圧縮量が調整される。
【0135】
次いで、基板67からベース板69及び蓋体70を取り外し、これにより、逆浸透膜としての濾過用フィルタ71を形成し(図10(C))、本処理を終了する。
【0136】
濾過用フィルタ71では貫通円孔68の径が1nm〜100nmとなるので、濾過用フィルタ71では貫通円孔68へ下水や海水を流すことによって汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0137】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、基板67を厚み方向に圧縮して貫通円孔68の内壁が突出するように貫通円孔68を変形させて貫通円孔68の径を調整するので、濾過用フィルタ71を容易に製造することができる。
【0138】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、各貫通円孔68の径が最大でも1nm〜100nmとなれば、幾つかの貫通円孔68は閉塞されてもよいので、基板67の圧縮量は比較的大きめに設定されるのが好ましい。
【0139】
図11は、本発明の第8の実施の形態の第1の変形例に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0140】
図11において、まず、CF系のポリマーやDLCからなる細長基材72において、多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が約20nm〜200nmの貫通円孔73を細長基材72の長さ方向に沿って複数形成する(図11(A))。
【0141】
次いで、細長基材72を側部から長さ方向に対して垂直な方向(図中矢印の方向)に圧縮する。このとき、各貫通円孔73の内壁が貫通円孔73の内部において突出し、その結果、貫通円孔73の径が縮小される(図11(B))。本実施の形態では、縮小される貫通円孔73の径が1nm〜100nmとなるように細長基材72の圧縮量が調整される。これにより、逆浸透膜としての濾過用フィルタ74を形成し、本処理を終了する。
【0142】
濾過用フィルタ74では貫通円孔73の径が1nm〜100nmとなるので、濾過用フィルタ74では貫通円孔73へ下水や海水を流すことによって大きさが数百nmのコレラ菌やチフス菌を除去でき、更には貫通円孔の径を1nm〜5nmに制御することができ、もって、汚染物質や塩分だけでなく大きさが約20nmのピコウィルスやパルポウィルスを除去することができる。
【0143】
図12は、本発明の第8の実施の形態の第2の変形例に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0144】
図12では、ベース板69において、該ベース板69の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が約20nm〜200nmの貫通円孔75を複数形成し、蓋体70において、該蓋体70の表面上に形成された該表面の一部を露出させる多数の開口部を有するマスク膜を用いたエッチングによって径が約20nm〜200nmの貫通円孔76を複数形成し、図10の製造方法と同様に、予めマスク膜を用いたエッチングによって径が約20nm〜200nmの貫通円孔68が複数形成された基板67をベース板69に載置し、さらに、載置された基板67を蓋体70で覆う(図12(A))。このとき、ベース板69の各貫通円孔75、基板67の各貫通円孔68及び蓋体70の各貫通円孔76が平面視において重ね合わさせるように、ベース板69、基板67及び蓋体70の位置が調整される。
【0145】
次いで、蓋体70をベース板69へ向けて押圧する。このとき、各貫通円孔68の内壁が突出し、その結果、貫通円孔68の径が縮小される(図12(B))。本実施の形態でも、縮小される貫通円孔68の径が1nm〜100nmとなるように基板67の圧縮量が調整される。これにより、基板67からベース板69及び蓋体70を取り外すことなく逆浸透膜としての濾過用フィルタ77を形成し、本処理を終了する。この濾過用フィルタ77では、ベース板69及び蓋体70が基板67の補強材として機能する。
【0146】
なお、上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は、上述した第1の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法と同様の効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0147】
図13は、本発明の第9の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0148】
図13において、まず、図1の濾過用フィルタの製造方法によっての濾過用フィルタ6を形成し、該濾過用フィルタ6を2つの多孔質のセラミック部材78,79によって挟み込み、濾過用フィルタ6及び2つのセラミック部材78,79を接合して逆浸透膜としての複合濾過用フィルタ80を形成し、本処理を終了する。
【0149】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、最小径が1nm〜100nmの流路7が形成された濾過用フィルタ6が2つのセラミック部材78,79に接合されるので、形成される複合濾過用フィルタ80の強度をより向上することができる。また、複合濾過用フィルタ80では、濾過用フィルタ6に加えて多孔質のセラミック部材78、79として微細な透過孔から成るセラミックフィルタを使用することにより、濾過を少なくとも二回行うことができ、もって、汚染物質や塩分、さらにはコレラ菌、チフス菌等やウィルスを確実に除去することができる。
【0150】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、濾過用フィルタ6を2つのセラミック部材78,79で挟み込んだが、図2乃至図12のいずれか1つに係る濾過用フィルタを2つのセラミック部材78,79で挟み込んでもよい。
【0151】
なお、本実施の形態では濾過用フィルタ6を2つのセラミック部材78,79で挟み込んだが、濾過用フィルタ6を1つのセラミック部材に接合して複合濾過用フィルタ80を形成してもよい。
【0152】
図14は、本発明の第10の実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法の工程図である。
【0153】
図14において、まず、図1の濾過用フィルタの製造方法によっての濾過用フィルタ6を形成し、該濾過用フィルタ6の表面に酢酸メチルの高分子膜を用いる逆浸透膜81を形成して複合濾過用フィルタ82を形成し、本処理を終了する。
【0154】
本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法によれば、最小径が1nm〜100nmの流路7が形成された濾過用フィルタ6が高分子膜を用いる逆浸透膜81に接合されるので、下水や海水を濾過用フィルタ6及び逆浸透膜81を通過させることによって濾過を二回行うことができ、もって、汚染物質や塩分、さらにはウィルスを確実に除去することができる。また、通常、高分子膜を用いる逆浸透膜は水中のイオンを反発する又は吸着するイオン阻止性質を有することが知られているので、濾過用フィルタ6は逆浸透膜81が有するイオン阻止性質を利用することができ、もって、海水中のナトリウムイオンや塩素イオンを確実に除去することができる。
【0155】
上述した本実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法では、濾過用フィルタ6を逆浸透膜81に接合したが、図2乃至図12のいずれか1つに係る濾過用フィルタを逆浸透膜81に接合してもよい。
【0156】
また、上述した各実施の形態に係る製造方法では、各濾過用フィルタにスリットや円孔を形成したが、エッチングによって基板を平面視において櫛歯状に加工して濾過用フィルタに流路を形成してもよい。この場合、まず、図15に示すように、基板へ平面視において一端が基板の縁において開放される、幅が1nm〜5nmの複数の溝を形成し、その後、各溝の一端を板状部材や基板を囲う枠体の一部で塞ぐことによって流路を形成する。これにより、流路の断面積を大きく確保して下水や海水の流量を増やすことができるので、濾過用フィルタによる上水や淡水の精製効率を向上することができる。
【0157】
上述した各実施の形態における濾過用フィルタは、一定時間以上、上水や淡水の精製に供されるとトラップされた汚染物質や塩分によって目詰まりを起こして上水や淡水の精製効率が低下する。したがって、トラップされた汚染物質や塩分を再度のエッチングやアッシングによって除去して濾過用フィルタを再生する必要があるが、各実施の形態における濾過用フィルタはシリコンなどの比較的硬質な部材によって構成されるため、再度のエッチングやアッシングによって破損、消耗することが殆どない。すなわち、上述した各実施の形態における濾過用フィルタは再生可能である。また、濾過用フィルタの再生時において流路7等の径が再度のエッチングやアッシングによって拡大しても、例えば、流路7の当初の開口径が1nm〜5nmの場合には、拡大した流路7等の径はせいぜい数十nmなので、再生された濾過用フィルタは、除去対象物の大きさが数百nm以上の汚水の濾過や人工透析に用いることができる。したがって、上述した各実施の形態に係る濾過用フィルタの製造方法は汚染物質等を含む廃棄物が発生するのを防止することができる。また、濾過の際に下水や海水を流す方向とは逆の方向から水圧をかけて、トラップされた汚染物質等を除去してもよい。この場合も、濾過用フィルタが硬質な材質で構成されているため、濾過用フィルタは比較的高い圧力にも耐え、効率的な汚染物質などの除去を行うことができる。
【0158】
また、各実施の形態における濾過用フィルタの貫通孔を形成する際に、図16(A)に示すように、貫通孔の一端をフィルタ機能を発揮するために必要な所定のサイズの開口とし、貫通孔の他端を、貫通孔の径が上記一端から他端に向って広くなる開口にすることにより、或いは、図16(B)に示すように、貫通孔の中間部分の径を上記所定のサイズと同じサイズとし、貫通孔の両端を、貫通孔の径が上記中間部分から両端に向って広くなる開口にすることにより、貫通孔において真に洗浄が必要な部分を減らし、濾過用フィルタの貫通孔の洗浄を容易にすることができる。
【0159】
また、上述したように、各実施の形態における濾過用フィルタはシリコンなどの比較的硬質な基板を構成に含むので、PVDやCVDを利用して銀などの殺菌、抗菌作用のある金属でコーティングすることができ、より清浄な上水や淡水の精製に寄与することができる。ここで、濾過用フィルタを酸化チタンでコーティングし、上水や淡水の精製時に紫外線を照射させることによって光触媒作用による強力な滅菌効果を得ることができ、もって、上水や淡水の滅菌を確実に行うことができる。
【0160】
さらに、各実施の形態における濾過用フィルタに含まれる基板を導電材又は半導電材で構成してもよい。これにより、濾過用フィルタに電力を供給することができ、該電力に基づく電磁波によって上水や淡水の滅菌を行うことができる。
【0161】
各実施の形態における濾過用フィルタに含まれる基板へ予めセンサ機能を有する電子回路を組み込んでもよい。例えば、水質センサ機能を有する電子回路を組み込んだ場合、濾過用フィルタにおいてリアルタイムで精製される上水や淡水の清浄度をモニタすることができ、清浄度の低下した上水や淡水が精製されるのを防止できる。
【0162】
また、流量センサ機能を有する電子回路を組み込んだ場合、濾過用フィルタにおいて精製される上水や淡水の量をモニタすることでき、濾過用フィルタの交換/再生時期を適切に判断することができる。さらに、振動センサ機能を有する電子回路を組み込んだ場合、濾過用フィルタにおいて基板に生じる衝撃を直接的にモニタすることでき、濾過用フィルタの交換時期を適切に判断することができる。なお、予めセンサ機能を有する電子回路を組み込む場合、基板をシリコンによって構成すれば、基板上に直接電子回路を形成することができ、濾過用フィルタの貫通孔の形成と電子回路の形成とを同一のプロセス中に混在させることにより、電子回路の製造工程を簡素化できるので、基板はシリコンによって構成するのが好ましい。
【0163】
以上、本発明について、上記各実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0164】
1,8,12,17,31,40,45,48,49,51,54,58,59,63,67 基板
2 円孔
3,10 酸化硅素膜
6,11,14,50,71,74,77,80,82 濾過用フィルタ
7,15,28,39 流路
9 DT
13,19,35,42,53,66,71 アモルファスカーボン膜
38 酸化硅素
41,64,68,73 貫通円孔
43 マイクロピラー
47,57 ギャップ
62 柱
65 貫通流路
72 細長基材
78,79 セラミック部材
81 逆浸透膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の基板の表面上に形成された該表面の一部を露出させる均一な大きさの複数の開口部を有するマスク膜を用いて前記基板の開口部に対応する部分をエッチングし、複数の孔又は溝を前記基板に形成することを特徴とする濾過用フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記エッチングは、プラズマによるドライエッチングであることを特徴とする請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項3】
前記形成された孔又は溝の内表面に所定の物質を堆積させて前記孔の径又は前記溝の幅を1nm〜100nmに調整することを特徴とする請求項1又は2記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項4】
前記調整された前記孔の径又は前記溝の幅は1nm〜5nmであることを特徴とする請求項3記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記所定の物質はCVDによって堆積されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項6】
前記所定の物質はALDによって堆積されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項7】
前記孔又は溝の内表面に厚さが1nm〜100nmの有機膜を形成し、前記孔又は溝の内部において該有機膜を他の材料で覆った後、前記有機膜を除去することを特徴とする請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記有機膜の厚さは1nm〜5nmであることを特徴とする請求項7記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項9】
前記孔の径又は前記溝の幅は10nm〜100nmであり、前記基板を厚み方向に圧縮して前記孔又は溝の内壁が突出するように前記孔又は溝を変形させて前記孔の径又は前記溝の幅を1nm〜5nmに調整することを特徴とする請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項10】
前記孔の径又は前記溝の幅は10nm〜1000nmであり、前記基板を厚み方向に圧縮して前記孔又は溝の内壁が突出するように前記孔又は溝を変形させて前記孔の径又は前記溝の幅を1nm〜100nmに調整することを特徴とする請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項11】
前記複数の孔又は溝が前記基板に形成された後、前記基板の裏面を削って前記孔又は溝を前記基板に対して貫通させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項12】
前記形成された孔又は溝を有する基板を複数枚重ねることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項13】
前記基板は少なくとも表面及び裏面のいずれか一方に酸化膜が形成され、前記基板を複数枚重ねる際に各前記基板の前記酸化膜同士を加熱接合させることを特徴とする請求項12記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項14】
前記形成された前記複数の孔又は溝は前記基板を貫通し、複数の前記基板を重ねる際、各前記基板の前記孔又は溝を平面視において重ね合わせて複数の前記基板を貫通する貫通部を形成し、平面視において前記貫通部の幅を1nm〜100nmに調整することを特徴とする請求項1記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項15】
前記貫通部の幅は1nm〜5nmであることを特徴とする請求項14記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項16】
前記硬質の基板は、シリコン、金属又は金属酸化物からなることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項17】
前記複数の孔又は溝が形成された基板をセラミックからなる他の基板に接合することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項18】
前記複数の孔又は溝が形成された基板に高分子膜を用いる逆浸透膜を接合することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項19】
前記複数の孔又は溝が形成された基板にセンサ機能を有する電気回路を組み込むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項20】
複数の硬質の基板を、互いの間隔が所定値となるように間に有機材を介して重ねた後、前記有機材を除去することを特徴とする濾過用フィルタの製造方法。
【請求項21】
各前記基板において当該基板を貫通する孔又は溝を形成し、平面視において各前記基板の前記孔又は溝が重ね合わさらないように前記複数の基板を重ねることを特徴とする請求項20記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項22】
前記有機材は大きさが1nm〜100nmの間隔保持材を含むことを特徴とする請求項20又は21記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項23】
前記間隔保持材の大きさが1nm〜5nmであることを特徴とする請求項22記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項24】
前記複数の基板を重ねた後、複数の前記基板をまとめて貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔に硬質部材を導入して柱を形成することを特徴とする請求項20乃至23のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項25】
前記重ねられた複数の基板をセラミックからなる他の基板に接合することを特徴とする請求項20乃至24のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項26】
前記重ねられた複数の基板に高分子膜を用いる逆浸透膜を接合することを特徴とする請求項20乃至24のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。
【請求項27】
少なくとも1つの前記基板にセンサ機能を有する電気回路を組み込むことを特徴とする請求項20乃至26のいずれか1項に記載の濾過用フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−101196(P2012−101196A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253080(P2010−253080)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】