説明

濾過膜の洗浄方法及び洗浄装置

【課題】扁平状濾過膜に固着若しくは付着する固着物質やゲル状物質を簡便且効率良く剥落除去しえる、濾過膜の洗浄方法及び洗浄装置の提供。
【解決手段】
扁平状濾過膜が配設された逆洗浄区画の外側に、その振動数が50乃至150Hzで且振動音圧が80乃至240dBの振動圧を付加しえる振動板が設けられ、且逆洗浄区画の内側には、放射周波数が15KHz以上で放射強度が少なくとも0.5W/cm以上の超音波振動子が配置された超音波振動子支持体が配置されてなり、洗浄水を加圧送水させ且振動圧と超音波放射をなして、極微細孔隙を透水させ排水させる濾過膜の洗浄方法及び洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は砂濾過で除去し得ぬ微細な濁質を濾過する精密濾過膜や限外濾過膜或いは逆浸透膜の洗浄を、極めて簡便且高い洗浄効率で洗浄できる濾過膜の洗浄方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業拡大期以前の地球環境は、土壌はもとより水や空気においても自然浄化作用に基づき環境浄化がなされていたものの、20世紀における急激な産業拡大とりわけ化学工業の発達に伴う化学薬品や農薬等の大幅な普及に加え、エネルギー消費の増大による石油や石炭等の膨大な燃焼と煤煙や排気ガスの排出、更には車社化による多量の排気ガスの加重とも相俟って、空気や水はもとより土壌に至るまで極度に汚染されている状況にある。
これがため上水における浄水場においても、より高度の前処理技術が要求されるに至っている。そして生産活動に用いる工業用水も従来の如き河川や井戸水では多量の濁質が混在し、特に井戸水使利用でも鉄分やマンガン分を含んでいると、汲水後の空気酸化によりFe(OH)やMn(OH)等の水酸化物が析出し濁質となって使用が出来ない。
【0003】
これがためには上水に準じて混在する濁質を除去する前処理が必要であって、既に各所において前処理用濾過膜が使用されてなるもので、かかる前処理用の濾過膜は濾過除去すべき濁質等の大きさにより大きく区分されてなるもので懸濁物質や細菌、超微粒子等略その粒径が0.1乃至10μmの除去には精密濾過膜が、及びたん白質や酸素、細菌やウイルスなど略1乃至100nmの物質の除去には限外濾過膜が、更に無機塩や糖類、アミノ酸或いはBODやCOD成分の如き低分子やイオン等の分離濃縮には逆浸透膜が用いられている状況にある。
【0004】
而してかかる精密濾過膜や限外濾過膜或いは逆浸透膜等で濾過をなすと使用経過とともに濾過膜上に分離除去すべき固着物質が溜ってゆき濾過水が膜を通りにくくなり濾過効率が著しく低下する。更に濾過水中には微生物や菌体等も混在しており、膜の内側にゲル状物質も溜ってゆき、濾過抵抗が増大化し同様に濾過効率が低下する。
そして工業的生産における工業用水も長時間に亘って多量に使用するものであるから、その濾過効率が低下した場合の頻繁な交換は、作業やコスト面に多大な負担が強いられるばかりか、且仮りに途中で交換する場合においても一時的に生産を停止することとなり、生産効率を著しく低下させる結果ともなる。
【0005】
これがための対策として、濾過膜の外部から内部に向って濾過水の一部を洗浄水として逆流せしめて付着した固着物質やゲル状物質を剥離除去させる所謂逆洗浄することがなされているが、現状においては逆洗浄を行っても膜の孔隙に溜った物質は剥落除去なされ難く、とりわけ逆洗の初期には剥落除去もなされるものの、逆洗回数と共に剥落除去性が短期に低下し濾過膜の交換を余儀なくされ、依然として生産効率の低下或いは莫大な維持コストも強いられている実情にある。
【0006】
かかる問題に対して超音波放射をなしキャビテーション作用による洗浄が提案され且各地で研究もなされているものの、限定された膜素材と固着若しくは付着する固着物質やゲル状物質においては、その特定された放射周波数や放射強度の超音波に係るキャビテーション作用により固着物質やゲル状物質の剥落除去も可能なものの、水の濾過膜の如くその素材が酢酸ビニルやポリエステル或いはポリエチレン等粘弾性を有する素材で形成され、且全面に亘って微細孔隙が形成された構成の濾過膜全体に亘って固着する固着物質や付着するゲル状物質の剥離除去は極めて至難であるとされている。
【0007】
発明者等はかかる経緯に鑑み鋭意研究と実験を重ねた結果、洗浄水中における水の濾過膜に対してはその振動数が50乃至150Hzで且振動音圧が80乃至240dBの強力な振動圧を付加せしめることにより、濾過膜全体に固着し若しくは付着する固着物質やゲル状物質の剥落除去が著しく促進されること、及びその放射周波数が15KHz以上で且その放射強度が0.5W/cm以上の超音波放射によるキャビテーション作用並びに直進流作用や加速度作用及び化学作用の相互作用により極微細孔隙内を極めて効率的に剥落除去がなされることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は極微細孔隙が多数形成されてなる水の濾過膜の逆洗浄に際して、濾過膜全体及び極微細孔隙内に固着形成される固着物質や付着するゲル状物質を、極めて簡便且効率的に剥落除去浄化しえる、新規な濾過膜の浄化方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、洗浄水で逆洗浄する逆洗浄区画内に所要間隔を以って配設された扁平状濾過膜に対して相互の扁平状濾過膜間に加圧送水させて極微細孔隙に透水せしめるとともに、その逆洗浄区画の外側一側面若しくは両側面より周波数が50乃至150Hzで且その振動音圧が80乃至240dBの振動圧を付加せしめて、濾過膜全体に固着された固着物質及び付着されたゲル状物質をその強力振動により剥落除去を促進させ、更にはその放射周波数が15KHz以上で且その放射強度が少なくとも0.5W/cm以上の超音波を逆洗浄区画内側の濾過膜に対して放射せしめて、キャビテーション作用を初め、直進流作用や加速度作用及び化学作用等の相互作用で極微細孔隙内の固着物質やゲル状物質を含めて、簡便で効率的に剥落除去し浄化する、新規な濾過膜の浄化方法に存する。
【0010】
更に本発明は、洗浄水で逆洗浄する逆洗浄区画の外側の一側面若しくは両側面より、その周波数が50及至150Hzで且その放射音圧が80乃至240dBの強度の振動圧を放射しえる振動板が設けられ、而もこの振動板の内側の逆洗浄区画内の濾過膜を挟んで対向する一側面若しくは両側面には、適宜の間隔毎でその放射周波数が15KHz以上で且その放射強度が0.5W/cm以上の超音波振動子が配設された構成からなる濾過膜の浄化装置に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如き構成からなるものであって、洗浄水により逆洗浄される逆洗浄区画内の濾過膜に対して、逆洗浄区画外側の一側面若しくは両側面より周波数が50乃至150Hzで且その放射音圧が80乃至240dBの強度の振動圧が付加されるため洗浄水や濾過膜に吸収減衰されずに強度に振動するとともに、洗浄水と濾過膜を形成する素材の振動圧の付加に際してその固有振動数が異なることから、固形物質やゲル状物質の固着や付着する濾過膜全体と洗浄水との間に不整合な振動差異が創出されて、この不整合な振動差異により濾過膜全面や極微細孔隙内に固着や付着する固着物質やゲル状物質が積極的に振動剥落される。
【0012】
そして更には逆洗浄区画の外側の一側面若しくは両側面に設けられ、且その振動数が50乃至150Hzで放射音圧が80乃至240dBの振動圧を付加する振動板と、逆洗浄区画内に所要間隔を以って配設された濾過膜に対して一側面若しくは両側面にその放射周波数が15KHz以上で放射強度が少なくとも0.5W/cm以上の超音波振動子が設けられてなるから、現状の逆洗浄区画を何等変更することなく振動板からの50乃至150Hzで且その放射音圧が80乃至240dBの強力な振動圧が付加されるため、洗浄水はもとより濾過膜も強度に振動し、その物理的振動衝撃により濾過膜全体に固着する固着物質や付着するゲル状物質の剥離や除去が著しく促進されたうえ、その放射周波数が15KHz以上で且放射強度が0.5W/cm以上の超音波が放射されるため、キャビテーション作用や直進流作用、加速度作用及び化学作用等との相互作用とにより、極微細孔隙内の洗浄性も著しく良好になされ、而も装置も簡便安価に形成されるとともに維持コストも僅かな電力で対処できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
洗浄水で逆洗浄する逆洗浄区画内に所要間隔を以って配設された濾過膜に対し、該逆洗浄区画の外側一側面若しくは両側面より振動数が50乃至150Hzで且その放射音圧が80乃至240dBの振動圧を付加させて、濾過膜全体に固着された固着物質や付着されたゲル状物質の剥落除去を促進させ、更にはその放射周波数が15KHz以上で、且その放射強度が0.5W/cm以上の超音波を逆洗浄区画内側の濾過膜に放射せしめて、キャビテーション作用を初め直進流作用や加速度作用及び化学作用等の相互作用で、微細孔隙内の固着物質やゲル状物質の剥落除去をなさしめる。
【実施例1】
【0014】
以下に本発明実施例を図とともに説明すれば、図1は扁平状濾過膜1における逆洗浄の説明図であり、図2は逆洗浄の部分拡大説明図であって、扁平状の濾過膜1としては精密濾過膜を初め限外濾過膜或いは逆浸透膜等が挙げられるものであって、素材としてはポリエチレンやポリプロピレン、酢酸ビニル、ポリエステル等の広範囲な高分子素材が用いられている。
そしてかかる扁平状の濾過膜1の全面並びに該扁平状濾過膜1の全体に亘って多数に形成された極微細孔隙1A内に、無機質成分を主体とした固着物質や有機質成分を主体としたゲル状物質等の固着や付着による濾過効率の低下を阻止するうえから、通常では浄化水2の一部を用いて適宜の間隔をもって逆洗浄区画3に濾過膜1を配設させたうえ、浄化水2を加圧送水2Aさせることにより、該加圧逆水2Aが配設された濾過膜1内の内部圧力の上昇に伴い、濾過膜1の全体に形成されてなる極微細孔隙1Aより透水させたうえ排水2B所謂逆洗浄させている。
【0015】
しかしながら図2に示すように、かかる加圧送水2Aによる逆洗浄をなしても形成されてなる極微細孔隙1Aの孔径は、精密濾過膜では略0.1乃至10μm、限外濾過膜では略0.001乃至0.1μm、及び逆浸透膜では略0.001μm以下と極微細極微少であるから、加圧送水2Aによる逆洗浄をなしても該極微細孔隙1Aを透水する透水量は僅かで且水勢も微弱であるから、かかる極微細孔隙1Aに固着し若しくは付着する固着物質4Aやゲル状物質4Bの剥落や除去効果は僅かしか期待できない。これがため実情としては該逆洗浄のための加圧送水2A中に、化学的洗浄剤として水酸化ナトリウムを初め塩酸や硝酸或いはフッ酸等を略1乃至5%濃度に混合し、而も十分に浸漬のうえ逆洗浄をなしているものの依然として十分な剥離除去が実現されておらず、且これら洗浄剤の使用ではこの洗浄剤の後処理も考慮せねばならない。
【0016】
そこで本発明においては、かかる現状の技術思想を転換し、所要の逆洗浄区画3に所要の間隔を以って配設された濾過膜1に洗浄水2を加圧送水2Aし、濾過膜1全体に形成された極微細孔隙1Aに透水させたうえ排水2Bをなす逆洗浄に際して、逆洗浄区画3の外側より配設される濾過膜1に対してその振動数が50乃至150Hzで且その振動音圧が80乃至240dBの強力な振動圧を付加させることにより、図3に示す如く加圧送水2Aと濾過膜1及び排水2B全体が付加される振動圧に対応して激しく振動屈曲し濾過膜1外表面に固着若しくは付着する固着物質やゲル状物質の剥落や除去が著しく促進される。加えて濾過膜1全体に形成されてなる極微細孔隙1A内に固着や付着して図2の4Aや4Bに示す如く閉塞化状態の場合でも激しい振動圧に対応して振動するために剥落作用も働く。
【0017】
この振動数が50乃至150Hzで且その振動音圧が80乃至240dBの強力な振動圧を付加させる手段としては、図1若しくは図3に示す如く扁平状の濾過膜1が所要の間隔を以って配設されてなる逆洗浄区画3の外側に、該配設される扁平状の濾過膜1に対向する一側面若しくは両側面に強靭で耐水性素材例えば金属板材や合成樹脂板材等からなる振動板5の適宜間隔毎に所要の振動数を以って振動板5を同期に振動させるためにアクチュエーター5Aが配設されている。当然の事ながら該アクチュエーター5Aには別に設けられ、且その振動数が50乃至150Hzに相当する振動発振数で且振動音圧が80乃至240dB相当の出力を有する振動発振装置(図示せず)と連結されている。
【0018】
そして重要なことは逆洗浄の目的は濾過膜1全体に亘って形成されてなる極微細孔隙1A内を、未処理水を流通、透水せしめて汚濁物や溶存物、菌類等を濾除させることにある。してみると前記低振動数で強力な振動圧の付加のみでは、極微細孔隙1Aに固着や付着している固着物質やゲル状物質の剥落や除去の促進がなされても、依然として未処理水の流通透水は十分になされない。そこでこの問題の解決には、極微細孔隙1A内に加圧送水2Aされる洗浄水2に膨張、縮少、破裂に伴うキャビテーション作用の創出を初め直進流作用による極微細孔隙1A内の撹乱化や乱流化、或いは加速度作用による極微細孔隙1A内への積極的浸透や透水性の促進と、及び化学作用による固着物質やゲル状物質の軟弱化や脆弱化を図り、より高い剥落や除去を果すために超音波放射が不可欠となる。
【0019】
即ちこの超音波放射手段は、その放射周波数が少なくとも15KHz以上で且最高でも1MHz程度が使用範囲となる。そしてこの超音波放射によるキャビテーション作用は低周波領域、即ちその放射周波数が略15乃至90KHz程度では強力なキャビテーション作用が創出され、且生成される気泡も略10乃至100μm程度のものになると推定される。反面放射周波数が200乃至800KHz程度では平穏なキャビテーション作用で且生成される気泡も略0.01乃至0.1μm程度が推定される。
してみると濾過膜1全体に亘って形成されてなる極微細孔隙1Aは、精密濾過膜で略0.1乃至10μm、限外濾過膜では略0.001乃至0.1μm更に逆浸透膜では略0.001μm以下に形成されてなるから、極微細孔隙1A内に固着や付着する固着物質やゲル状物質の積極的剥落除去には、その放射周波数が少なくとも200KHz以上の超音波によるキャビテーション作用を初め、直進流作用や加速度作用或いは化学作用が望まれる。
【0020】
そして留意すべきは、放射される超音波は、その放射周波数が15KHz以上であって、前記振動数の付加とは異なり、逆洗浄のための洗浄水2はもとより合成樹脂素材の如き粘弾性素材からなる濾過膜1等には放射超音波が著しく吸収され減衰されることから、かかる超音波の放射は可能な限り濾過膜1に近い位置より放射させることが望まれる。
これがためには図1若しくは図3に示す如く逆洗浄区画3の内側で配設される濾過膜1と対向する一側面若しくは両側面に、適宜の超音波振動子支持体6が展開されたうえこの超音波振動子支持体6の適宜間隔毎には超音波振動子6Aが配置されてなるものであって、当然にかかる超音波振動子支持体6に配置されてなる超音波振動子6Aには、別に設けられてなる超音波発信器と連結されている。
【0021】
加えて本発明においては放射される超音波の、その放射に際して創出される極微細気泡の膨張、縮少、破裂に伴うキャビテーション作用や直進流作用、加速度作用或いは化学作用を活用するものであり、且該極微細気泡の創出にはその放射周波数により所望の放射強度が要請されること、並びに洗浄水2や特には粘弾性素材からなる濾過膜1には超音波が吸収減衰され易いこと等により、その放射強度としてはその放射周波数が15乃至90KHzでは少なくとも0.5W/cmで、更にその放射周波数が200乃至800KHzでは、少なくともその放射強度として6.0W/cm以上が望まれる。
【0022】
図4は多数枚逆洗浄の説明図であって、水処理においてはその処理目的により膨大量の浄化処理が要請されることから、かかる如き膨大量の濾過に際しては、その処理能力に見合う濾過面積に相当する枚数の濾過膜材10を、逆洗浄多層区画体30内に配設させたうえ、通常においては未処理水を流通透水させつつ濾過膜材10により汚濁物や溶解物或いは菌類等を除去せしめて浄化水2となすものであるが、当然に使用経過とともに、該濾過膜材10外表面への固着や付着及び該濾過膜材10全体に亘って形成されてなる極微細孔隙10A内にも固着や付着に伴った閉塞化が発生する。
従ってかかる固着する固着物質や付着するゲル状物質の剥落除去による手段として逆洗浄処理が同様になされるものであって、これがためには濾過膜材10により濾過されてなる浄化水2を加圧浄化水20となしたうえ、濾過膜材10に接触流水及び濾過膜材10の外表面に固着し若しくは付着する固着物質やゲル状物質の剥落や除去、或いは濾過膜材10全体の極微細孔隙10A内に固着し若しくは付着する固着物質やゲル状物質による閉塞の開放をなすことにある。
【0023】
而して多数枚逆洗浄による場合には、多数枚に亘る濾過膜材10が配設される逆洗浄多層区画体30は可能な限り密接した状態で且加圧浄化水20が接触流水され且極微細孔隙10A内を透水させる必要がある。これがためには図4に示す如く逆洗浄多層区画体30の内部には、濾過膜材10と濾過膜材10を挟んで合成繊維素材を用いて粗目に織成若しくは編成させて通水性に優れる流水保持材11が介在されて多数枚で配設されてなり、逆洗浄多層区画体30の下部位より加圧浄化水20を加圧送水せしめることにより、該加圧浄化水20は、流水保持材11に沿って上昇し、内部流水圧力により濾過膜材10の外表面に固着する固着物質や付着するゲル状物質の剥落や除去をなさしめ、更には内部流水圧力の一部が濾過膜材10の全体に亘って形成されてなる極微細孔隙10A内にも透水して、その閉塞化の開放をなさしめたうえ、その上方より吸引排水21させる構成が提案されている。かかる場合に濾過膜材10の表現は、前記扁平状濾過膜1と実質的に同等のものであるが、逆洗浄多層区画体30での使用説明のうえで、かかる表現を用いている。
【0024】
ところで濾過膜材10を用いた水の浄化処理においては、その全体に形成されてなる極微細孔隙10Aの透水性の保持に尽きるものであって、該極微細孔隙10Aは精密濾過でも0.1乃至10μm、限外濾過で0.001乃至0.1μm程度及び逆浸透膜では0.001μm以下と極めて微細であるから、極めて高圧の加圧浄化水20を用いぬ限りは十分な透水と閉塞の開放は実現できず、従って頻繁な逆洗浄の繰返しに終始している。
【0025】
そこで図4に示す如く、かかる逆洗浄多層区画体30の外側には、その振動数が50乃至150Hzで且その振動音圧が80乃至240dBの振動圧を付加させることが可能な強靭で耐水性素材からなる振動板5の適宜間隔毎に、所望の振動数を以って同期に振動させるためのアクチュエーター5Aが配設されている。
無論このアクチュエーター5Aは別に設けられ且その振動数を50乃至150Hzに振動発振しえ、而もその振動音圧が80乃至240dB相当の出力を有する振動発振装置と連結されている。
そしてかかる振動板5による振動発振と強力な振動音圧の付加により、逆洗浄多層区画体30内の多層に亘って配設されてなる濾過膜材10や透水保護材11及び透水保護材11間を流動する加圧浄化水20全体が左右に激しく振動屈曲変形されるため、濾過膜材10の外表面に固着若しくは付着する固形物質やゲル状物質の剥落や除去が積極的になされるとともに、加圧洗浄水20の流動と吸引排水21により外部排出がなされ、而も濾過膜材10の全体に形成されてなる極微細孔隙10A内の固着若しくは付着した固着物質やゲル状物質も激しい振動屈曲変形により、剥落除去が促進される。
【0026】
そして前記する濾過膜1において説明の如く該濾過膜材10においても、その全体に形成される極微細孔隙10Aは精密濾過膜でも0.1乃至10μm程度、逆浸透膜に至っては0.001μm以下であるから、加圧浄化水20の逆洗浄のみでは固着し若しくは付着した固着物質や、ゲル状物の剥落や除去効果は不十分である。
従って濾過膜1が配設される逆洗浄区画3の外側に、その振動数が50乃至150Hzで且その振動音圧が80乃至240dBの強力な振動波を付加させて、濾過膜1及び加圧送水2A共々振動屈曲変形させることで極微細孔隙1A内の剥落や除去を促進せしむることが有効であり、更には該極微細孔隙1A内に加圧送水2Aを浸入させたうえキャビテーション作用、直進流作用、加速度作用或いは化学作用を総合的に活用して剥落や除去を増長させることが極めて有効である。
【0027】
従って多数枚の濾過膜材10が逆洗浄される逆洗浄多層区画体30においても、図4に示すように逆洗浄多層区画体30の内側には、多層に配設される濾過膜材10や流水保持材11に対向するように強靭性と耐水性を有する超音波振動子支持体6を配位させ、且この超音波振動子支持体6の適宜間隔毎に超音波振動子6Aが配置されてなり、この超音波振動子6Aより少なくともその放射周波数が15KHz以上で且放射強度が少なくとも6.0W/cm以上で放射させてやれば良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
逆洗浄区画の外側には合成樹脂板材で且その適宜位置に、振動数が60Hzで且振動音圧が80dBの振動圧を創出させるアクチュエーターが設けられた振動板が設けられ、且逆洗浄区画の内側には強靭で耐水性の合成樹脂板材の適宜位置に、その放射周波数が15KHz以上で且放射強度が0.5W/cm以上の超音波振動子が配置された超音波振動子支持体が配位された構成。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 扁平状濾過膜の逆洗浄説明図である。
【図2】 扁平状濾過膜の逆洗浄部分拡大説明図である。
【図3】 振動波付加による濾過膜の変形説明図である。
【図4】 多数枚の濾過膜材の逆洗浄説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 扁平状濾過膜
1A 極微細孔隙
2 浄化水
2A 加圧送水
2B 排水
3 逆洗浄区画
4A 固着物質
4B ゲル状物質
5 振動板
5A アクチュエーター
6 超音波振動子支持体
6A 超音波振動子
10 濾過膜材
10A 濾過膜材の極微細孔隙
11 通水保持材
20 加圧浄化水
21 吸引排水
30 逆洗浄多層区画体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水で逆洗浄する逆洗浄区画内に、所要間隔を以って配設された扁平状濾過膜に対して、相互の扁平状濾過膜間に加圧送水させて極微細孔隙に透水せしめるとともに、逆洗浄区画の外側一側面若しくは両側面より振動数が50乃至150Hzで且振動音圧が80乃至240dBの振動圧を付加せしめて、濾過膜全体に固着され若しくは付着された固着物質やゲル状物質を、その強力振動により剥落除去を促進させ、更には逆洗浄区画内側よりその放射周波数が15KHz以上で且放射強度が少なくとも0.5w/cm以上の超音波を放射せしめて、キャビテーション作用や直進流作用、加速度作用及び化学作用の相互作用を以って扁平状濾過膜全体に形成された極微細孔隙内の固着物質やゲル状物質の剥落除去を一段と促進させたうえ、逆洗浄区画外に排水させる濾過膜の浄化方法。
【請求項2】
洗浄水で逆洗浄する逆洗浄多層区画内に、所要の間隔を以って扁平状濾過膜材並びに通水保持材を交互に配設のうえ、通水保持材に沿って加圧送水せしめて極微細孔隙に透水せしめるとともに、逆洗浄多層区画外側の一側面若しくは両側面より振動数が50乃至150Hzで振動音圧が80乃至240dBの振動圧を付加せしめて、濾過膜全体に固着若しくは付着された固着物質やゲル状物質をその強力振動により剥落除去を促進させ、更には逆洗浄多層区画内側よりその放射周波数が15KHz以上で且放射強度が少なくとも6.0W/cm以上の超音波を放射せしめキャビテーション作用や直進流作用、加速度作用及び化学作用の相互作用を以って扁平状濾過膜材全体に形成された極微細孔隙内の固着物質やゲル状物質の剥落除去を一段と促進させたうえ、逆洗浄多層区画外に吸引排水させる濾過膜材の浄化方法。
【請求項3】
洗浄水で逆洗浄する逆洗浄区画の外側の一側面若しくは両側面には、その振動数が50乃至150Hzで振動音圧が80乃至240dBの強度の振動圧を付加しえるよう、適宜間隔毎にアクチュエーターが配位された振動板が設けられてなり、更に逆洗浄区画の内側の濾過膜と対向する一側若しくは二側には、その放射周波数が15KHz以上で且その放射強度が少なくとも0.5W/cm以上の超音波を放射しえる超音波発振子が適宜間隔に配位されてなる超音波振動子支持体が配設されてなる濾過膜の洗浄装置。
【請求項4】
洗浄水で逆洗浄する逆洗浄多層区画の外側の一側面若しくは二側面には、振動数が50乃至150Hzで振動音圧が80乃至240dBの振動圧を付加しえるよう適宜間隔毎にアクチュエーターが配位されてなる振動板が配設されてなり、且該逆洗浄多層区画内の内側で濾過膜材と対向する一側面若しくは二側面には、その放射周波数が15KHz以上で且放射強度が少なくとも6.0W/cm以上の超音波を放射しえる超音波振動子が適宜間隔に配位されてなる超音波振動子支持体が配設されてなる濾過膜材の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−55878(P2012−55878A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219888(P2010−219888)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(592101736)株式会社日本水処理技研 (9)
【Fターム(参考)】