説明

濾過膜モジュール洗浄方法および洗浄装置

【課題】従来のオンエア洗浄方法および洗浄装置は、濾過膜モジュールを反応槽から引き抜いて、濾過膜モジュールをエア中に曝した状態で、薬液を注入しなければならず、そのために煩雑な作業や多大な設備費用、設置スペースを必要とした。
【解決手段】濾過膜モジュール11をモジュールケーシング27に収容し、該モジュールケーシング27内にエアを導入して、モジュールケーシング27内をエアで満たし、上記濾過膜モジュール11を気中に曝した状態で濾過膜モジュール11の2次側に次亜塩素酸ナトリウム溶液等の洗浄用の薬液を注入し、該薬液を濾過膜モジュール11の1次側に浸透させることにより濾過膜モジュール11を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下排水や産業排水中の汚濁物質等を生物処理又は凝集沈殿処理する反応槽に浸漬して濾過操作を行う濾過膜モジュールの洗浄方法および洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下排水や産業排水中の汚濁物質等を生物処理又は凝集沈殿処理し、濾過膜モジュールで濾過する膜分離処理システムにおいては、反応槽中に濾過膜モジュールを浸漬し、濾過操作により被濾過水を膜分離する。
【0003】
濾過操作によって、濾過膜モジュールの膜面および膜面内部細孔部には、除去された汚濁物質等が付着、堆積する。通常、膜面への汚濁物質等の付着や堆積を抑制することにより濾過操作時間を長く継続させ濾過運転の効率を上げる目的で、濾過膜モジュールの底部から曝気を行い、膜面に激しい気泡流を衝突させて付着・堆積の抑制を図るためにスクラビングエアを供給する。また、あわせて、一定周期で濾過水を濾過膜モジュールに加圧通水して汚れを逆洗除去する。しかし、スクラビングエアと逆洗によっても長期にわたる抑制効果には、限界がある。そのため、スクラビングエアや逆洗によっても膜面に徐々に付着、堆積する汚濁物質等を定期的に除去するため、付着、堆積する汚濁物質等を反応除去する薬液洗浄を行なうことが必須となる。
【0004】
薬液としては、付着、堆積する汚濁物質等が有機物による場合には、次亜塩素酸ナトリウムが広く用いられ、無機物による場合には、シュウ酸が用いられる。
【0005】
そして、この薬液を用いた濾過膜モジュール洗浄方法として、インライン洗浄とオンエア洗浄が知られている。
【0006】
インライン洗浄は、反応槽に浸漬した濾過膜モジュールを浸漬したままの状態で、濾過膜モジュールの2次側(濾過水取り出し側)から次亜塩素酸ナトリウム溶液等の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの1次側(被濾過水供給側)へ浸透、透過させて濾過膜モジュールを薬液洗浄する方法である(以下、第1の洗浄方法)。
【0007】
オンエア洗浄方法は、濾過膜モジュールを気中に曝した状態で、濾過膜モジュールの2次側から次亜塩素酸ナトリウム溶液等の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの2次側から1次側へ浸透、透過させて濾過膜モジュールを薬液洗浄する方法である。
【0008】
具体的には、オンエア洗浄方法には、主として以下の3つの方法が知られている。
【0009】
その1は、浸漬している反応槽から濾過膜モジュールを引き抜いて、気中に曝し、濾過膜モジュールの2次側から次亜塩素酸ナトリウム溶液等の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの2次側から1次側へ浸透、透過させて濾過膜モジュールを薬液洗浄する方法である(以下、第2の洗浄方法)。
【0010】
その2は、濾過膜モジュールを浸漬している反応槽から、槽内液を排出し、反応槽内にて濾過膜モジュールを気中に曝した状態で、濾過膜モジュールの2次側から次亜塩素酸ナトリウム溶液等の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの1次側へ浸透、透過させて濾過膜モジュールを薬液洗浄する方法である(以下、第3の洗浄方法)。
【0011】
その3は、反応槽とは別に、濾過膜モジュール専用に浸漬させる槽を設けた外付け浸漬槽方式により、汚濁物質等の処理を行なう場合に、この方式での薬液洗浄は、外付け浸漬槽の槽内液だけを排出することでよいため、上記第3の洗浄方法に較べて排出液の量を低減でき、さらに、排出液を反応槽に一時的に貯留する方法をとった上で、濾過膜モジュールを上記第3の洗浄方法と同じ薬液洗浄する方法が取れる(以下、第4の洗浄方法)。
上記洗浄方法を開示したものとして、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−66548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記第1の洗浄方法(インライン洗浄方法)は、濾過膜モジュールを反応槽の槽内液中に浸漬させた状態で薬液を注入するため、反応槽内での液圧により薬液が濾過膜モジュール内に浸透し難く、さらに、濾過膜モジュールの表面で浸透・透過後の薬液は、槽内液により薬液濃度は希釈されるため、濾過膜モジュールの膜面部分に付着・堆積した汚濁物質等の洗浄効果は減じられる。また、濾過膜モジュールに目詰まりが生じている場合に、該目詰まり部分には薬液が行き渡らずに洗浄斑が発生する。洗浄斑を無くすためには、薬液をより高圧で多量に濾過膜モジュールに注入しなければならず、高圧ポンプと多量の薬液を必要とする。
【0014】
上記第2の洗浄方法(オンエア洗浄方法)は、濾過膜モジュールを反応槽から引き抜いて、気中に移動させるために、チェーンブロックなどの昇降機器を使用する必要があり、また、濾過水配管やスクラビング用エア配管等の取り外し作業等や洗浄終了後の取り付け等の煩雑な作業が必要となる。
【0015】
上記第3の洗浄方法(オンエア洗浄方法)は、反応槽から引き抜いた槽内液を一時的に溜めておく貯留槽が別途必要となる。通常、濾過膜モジュールは、水深4〜5mの反応槽の底部まで浸漬されているので、濾過膜モジュール全体を気中に曝すためには、反応槽の槽内液をほぼ全量抜き出すこととなり、抜き出した槽内液を一時的に貯留する大容量の槽や移送用ポンプ等の設備や設置による建設費や運転費の増大につながる。
【0016】
上記第4の洗浄方法(オンエア洗浄方法)、即ち、反応槽とは別に、濾過膜モジュール専用に浸漬させる槽を設けた外付け浸漬槽方式では、外付け浸漬槽の槽内液だけを排出することですむため、上記第3の洗浄方法に較べて排出液の量を低減でき、さらに、排出液を反応槽へ移送し一時的に貯留槽として兼用できる。しかし、外付け浸漬槽の設置や反応槽から外付け浸漬槽への液移送ポンプを必要とするなど、上記第3の洗浄方法による装置には及ばないものの建設費や運転費が増大する。
【0017】
本発明の目的は、上記第1の洗浄方法では、洗浄能力の低下、この対策のための薬液を注入するポンプの高圧化や使用する薬液が多量となる問題点、第2の洗浄方法では、気中に移動させるチェーンブロックなどの昇降機器を必要とし、また、濾過水配管やスクラビングエア用配管等の取り外し等や洗浄終了後の取り付け等の煩雑な作業を必要とするという問題点、第3の洗浄方法では、抜き出した槽内液を一時的に貯留する大容量の槽や移送用ポンプ等の設備を必要とする問題点および第4の洗浄方法では、外付け浸漬槽の設置や移送用ポンプを必要とする問題点を解決し、濾過膜モジュールを反応槽に浸漬したままの状態で濾過膜モジュールを薬液洗浄するインライン洗浄の簡便さで上記従来のオンエア洗浄と同様の高い洗浄効果を得ることのできる濾過膜モジュール洗浄方法および洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の濾過膜モジュール洗浄方法は、反応槽に浸漬して配置した濾過膜モジュールの2次側から洗浄用の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの1次側に浸透、透過させて濾過膜モジュールを洗浄する濾過膜モジュール洗浄方法において、上記濾過膜モジュールをモジュールケーシング(洗浄ケーシング)に収容し、モジュールケーシング内にエアとして、空気、酸素ガス、炭酸ガス、窒素ガス等の取り扱い容易な気体(以下、エアと総称する)を供給して、モジュールケーシング内から槽内液を追い出してモジュールケーシング内の濾過膜モジュールを気中に曝した状態で濾過膜モジュールを薬液洗浄する構成にした。
【0019】
本発明の濾過膜モジュールの洗浄装置は、反応槽に浸漬して配置した濾過膜モジュールの2次側に洗浄用の薬液を注入する薬液注入装置を備え、該薬液注入装置により濾過膜モジュールの2次側に注入した薬液を濾過膜モジュールの1次側に浸透、透過させて濾過膜モジュールを洗浄する濾過膜モジュール洗浄装置において、上記濾過膜モジュールを収容し、且つ該濾過膜モジュールを気中に曝すエアを貯留可能なモジュールケーシングと、該モジュールケーシング内にエアを供給して上記濾過膜モジュールを気中に曝すためのエア供給装置と、を設けた。
【0020】
上記モジュールケーシングを底部が開口し、上部が蓋板で閉塞された有蓋円筒状に形成するとともに、上記蓋板にモジュールケーシングの内外を連通させる液およびエア流出バルブを設けた。上記液およびエア流出バルブに、圧力エア駆動バルブを使用した。
【0021】
上記モジュールケーシング内に供給するエア供給装置に散気ブロワまたはスクラビングブロワを使用(兼用)した。
【発明の効果】
【0022】
本発明の濾過膜モジュール洗浄方法は、濾過膜モジュールを収容したモジュールケーシング内にエアを供給し、モジュールケーシング内をエアで満たすことにより、上記濾過膜モジュールを気中に曝した状態で濾過膜モジュールの2次側に薬液を注入するので、従来の濾過膜モジュールを反応槽に浸漬させたままの状態で薬液を注入する上記従来のインライン洗浄方法に較べて、濾過膜モジュールが液圧を受けないぶん薬液が浸透・透過し易いものになる。濾過膜モジュールの膜表面の細孔から滲出した薬液が槽内液と反応して薬液の効果が低下することもない。また、薬液が槽内液で希釈されることが無いので薬液の希釈による洗浄効果の低下もない。また、本発明の濾過膜モジュール洗浄方法は、従来のインライン洗浄方法に、濾過膜モジュールをモジュールケーシング内に収容して該モジュールケーシング内にエアを供給するという簡単な工程を付加することにより実施することができる。
【0023】
本発明の濾過膜モジュール洗浄装置は、従来のインライン洗浄装置の濾過膜モジュールをモジュールケーシング内に収容して該モジュールケーシング内にエア供給装置でエアを供給にするという従来のインライン洗浄装置に簡単な改良を加えることにより実施することができる。そして、モジュールケーシング内にエア供給装置によりエアを供給することにより、モジュールケーシング内はエアで満たされ濾過膜モジュールは気中に曝された状態になるので、この状態で薬液注入装置により薬液を濾過膜モジュールの2次側に注入して濾過膜モジュールをオンエア洗浄することが可能になる。
【0024】
特に、モジュールケーシングを、底部が開口し、上部に蓋板で閉塞された有蓋円筒状に形成したので、上記開口からエア供給装置により、モジュールケーシング内にエアを供給することができる。上記モジュールケーシングの蓋板に液およびエア流出バルブを設けたので、該液およびエア流出バルブを開閉して、モジュールケーシング内にエアを貯留、或いは排出することができる。従って、従来のインライン洗浄装置の操作系に上記液およびエア流出バルブを開閉する操作を追加するという簡単な改良で、本発明の濾過膜モジュール洗浄装置の操作系を形成することができる。
【0025】
また、上記モジュールケーシング内に供給するエア供給装置に、散気ブロワやスクラビングブロワを使用(兼用)することによりエア供給装置として専用のエアコンプレッサー等を設ける必要が無くなり、その分、洗浄装置のコストを下げることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の濾過膜モジュール洗浄装置を備えた膜分離活性汚泥法(MBR)による下水処理システム例のフロー図。
【図2】本発明の濾過膜モジュール洗浄装置部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の濾過膜モジュール洗浄装置を備えた膜分離活性汚泥法(MBR)による下水処理システムのフロー図である。この下水処理システムにおいて、下排水や産業排水等の原水1は、スクリーン槽2に導入されて細目スクリーン3によりゴミ等を除去した状態で流量調整槽4に送られ、流量調整槽4からはポンプ5で流量調整されて脱窒槽6に送られ、脱窒槽6からは水位差による自然流下よって反応槽7に送られる。また、返送ポンプ8により反応槽7から脱窒槽6へ返送され、活性汚泥は脱窒槽6と反応槽7の間を循環するとともに、一部が反応槽7から汚泥引抜弁9により余剰汚泥として引き抜かれる。
【0028】
脱窒槽6においては無酸素で攪拌機10により攪拌を行なう。また、反応槽7においては、流入水(以下、被濾過水)を活性汚泥により生物処理し、反応槽7内に配置した濾過膜モジュール11で濾過し、濾過した水(以下、濾過水)を濾過配管12で濾過水タンク13に送水し、濾過水タンク13に一時貯留した後にポンプ14により濾過水タンク13から排出する。
【0029】
濾過膜モジュール11には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の円筒形中空糸膜モジュールが用いられている。濾過膜モジュール11は反応槽内液を透過させることにより濾過する。濾過膜モジュール11は、反応槽7内に1個または複数個配置されている。
【0030】
反応槽7においては、散気ブロワ(曝気ブロワ)15により溶存酸素の存在下で好気処理が行われているとともに、スクラビングブロワ16およびスクラビング用散気器17によって濾過膜モジュール11を常時振動させて活性汚泥による濾過膜モジュール11の閉塞を防止している。15aは曝気用散気器である。
【0031】
濾過配管12の途中には濾過/逆洗ポンプ18が設けられている。該濾過/逆洗ポンプ18は、被濾過水を濾過する際、また、設定時間ごとに濾過水タンク13の濾過水を濾過膜モジュール11に供給して濾過膜モジュール11を逆洗洗浄する際、および後に説明する薬液注入装置26により濾過膜モジュール11を薬液で洗浄した後に薬液を洗い流す際に使用される。
【0032】
濾過配管12には濾過/逆洗ポンプ18を挟んでその上流側(反応槽7側)と下流側(濾過水タンク13側)に各々第1,第2のバルブ19,20が設けられている。また、濾過配管12には第1のバルブ19の上流側と、濾過/逆洗ポンプ18と第2のバルブ20の間を繋ぐ第1の濾過水逆流路21が設けられている。第1の濾過水逆流路21には第3のバルブ22が設けられている。また、濾過配管12には濾過/逆洗ポンプ18と第1のバルブ19の間と、濾過水タンク13を繋ぐ第2の濾過水逆流路23が設けられ、該第2の濾過水逆流路23には第4のバルブ24が設けられている。
【0033】
濾過膜モジュール11は、次に説明する濾過膜モジュール洗浄装置25によって洗浄される。
【0034】
図1および図2に示すように、濾過膜モジュール洗浄装置25は、モジュール洗浄時に次亜塩素酸ナトリウム溶液等の洗浄用の薬液を濾過膜モジュール11の2次側に注入する薬液注入装置26と、濾過膜モジュール11を収容して該濾過膜モジュール11を気中に曝すためのエアを貯留可能なモジュールケーシング(洗浄ケーシング)27と、該モジュールケーシング27内にエアを供給するエア供給装置28と、からなっている。
【0035】
エア供給装置28には、スクラビングブロワ16が兼用されていて、スクラビング用散気器17をモジュールケーシング27の底部に位置させることによりモジュールケーシング27の底部の開口からエアをモジュールケーシング27内に供給するようになっている。
【0036】
薬液注入装置26は、次亜塩素酸ナトリウム溶液等の洗浄用の薬液を収容した薬液タンク29と、薬液供給ポンプ30と、薬液タンク29の薬液を濾過膜モジュール11に供給する薬液供給路31と、該薬液供給路31に設けられた第5のバルブ32と、を備えている。薬液供給路31は、第1の濾過水逆流路21よりも上流側(濾過膜モジュール11側)に接続されている。
【0037】
モジュールケーシング27は、上記薬液に侵蝕され難く、気密性を有する金属等の素材により形成されている。
【0038】
モジュールケーシング27は、濾過膜モジュール11の直径よりも大径で、且つ濾過膜モジュール11の長さよりも長い円筒状に形成されていて、濾過膜モジュール11を1個または複数個収納している。
【0039】
また、モジュールケーシング27の上部には液およびエア流出バルブ33が設けられている。
【0040】
モジュールケーシング27の底部は開口しているとともに、上部は蓋板で閉塞されている。そして、薬液洗浄の際に液およびエア流出バルブ33を閉じ、上記開口からエア供給装置28でエアを供給すると、該エアは、モジュールケーシング27内の活性汚泥(被濾過水)を排除しながらモジュールケーシング27内に溜まっていって、モジュールケーシング27内に収容されている濾過膜モジュール11の周囲をエアで覆う。
【0041】
一方、液およびエア流出バルブ33は、これを開くことにより、モジュールケーシング27内からエアを排出してモジュールケーシング27内に活性汚泥を侵入可能にするとともに、モジュールケーシング27内に活性汚泥が満たされた後は、モジュールケーシング27の内部と外部の間の活性汚泥の循環性を確保する。液およびエア流出バルブ33には圧力エア駆動バルブを使用するのが望ましい。液およびエア流出バルブ33は1個に限らず複数個設けることによりモジュールケーシング27内のエアの排出の迅速性と、モジュールケーシング27の内部と外部の活性汚泥の循環性を向上させることができる。
【0042】
液およびエア流出バルブ33を設ける位置は必ずしもモジュールケーシング27の上部の蓋板でなくてもよいが、モジュールケーシング27内に溜まったエアに濾過膜モジュール11が露出しない状態まで排出することのできる位置がよい。
【0043】
次に、上記濾過膜モジュール洗浄装置の作用を説明する。濾過時においては、薬液注入装置26の第5のバルブ32を閉じ、液およびエア流出バルブ33を開くとともに、濾過配管12に設けた第1,第2のバルブ19,20を開いて、濾過/逆洗ポンプ18を駆動させると、反応槽7の被濾過水は、濾過膜モジュール11で濾過され濾過水となって濾過水タンク13に送水され、一時的に貯留される。
【0044】
濾過膜モジュール11をオンエア洗浄する場合には、散気ブロワ15を停止し、さらに濾過/逆洗ポンプ18を停止し、第1,第2のバルブ19,20を閉じるとともに、液およびエア流出バルブ33を閉じる。そして、スクラビングブロワ16を駆動すると、該スクラビングブロワ16から送り出されたエアは、スクラビング用散気器17を介してモジュールケーシング27の底部に設けた開口からモジュールケーシング27内に侵入して、モジュールケーシング27内の活性汚泥を排除しながら、モジュールケーシング27内に溜まっていく。
【0045】
モジュールケーシング27内がエアで満たされ、該モジュールケーシング27内に収容されている濾過膜モジュール11の周囲がエアで覆われた状態になったら、スクラビングブロワ16を停止してエアの供給を停止する。
【0046】
スクラビングブロワ16の停止時間が遅れると供給されたエアは、所謂オーバーフロー状態になってモジュールケーシング27の底部からモジュールケーシング27の外部に漏れ出すが、多少漏れ出したとしても、処理性能や他の運転に対する影響はないので、スクラビングブロワ16によるエア供給の停止のタイミングは、厳密に制御しなくても簡易なタイマの設定で十分である。
【0047】
そして、モジュールケーシング27内をエアで満たし、濾過膜モジュール11をエアに曝した状態にしたら、第5のバルブ32を開き、薬液供給ポンプ30を駆動し、薬液タンク29の薬液を、所定量、所定時間を掛けて、濾過膜モジュール11に注入して、薬液による濾過膜モジュール11の洗浄を行う。
【0048】
薬液による洗浄を終了したら、薬液供給ポンプ30を停止し、第5のバルブ32を閉じるとともに、第1,第2のバルブ19,20を閉じたまま、第3,第4のバルブ22,24を開き、濾過/逆洗ポンプ18を再び駆動して、濾過水タンク13の濾過水を第2の濾過水逆流路23及び第1の濾過水逆流路21を介して濾過膜モジュール11に供給し、濾過膜モジュール11を濾過水で洗浄することにより、濾過膜モジュール11の膜面等に残った薬液を洗い流して濾過膜モジュール11の洗浄を終了する。薬液の洗い流し工程は、モジュールケーシング27内の活性汚泥を満たした後に行なってもよい。
【0049】
濾過膜モジュール11の洗浄を終了したら、液およびエア流出バルブ33を開ける。液およびエア流出バルブ33を開けると、モジュールケーシング27内のエアは、液およびエア流出バルブ33を通って、モジュールケーシング27外に排出されるとともに、モジュールケーシング27内には活性汚泥が侵入し、モジュールケーシング27内は活性汚泥で満たされた状態になる。そこで、再度、第1,第2のバルブ19,20を開いて、散気ブロワ15、濾過/逆洗ポンプ18、スクラビングブロワ17等を駆動して濾過を再開する。濾過運転に戻るタイミングもタイマ設定で十分である。
【0050】
実施例の濾過膜モジュール洗浄装置は、上述のような構成であって次に述べるような効果がある。
(1)濾過膜モジュールをモジュールケーシング内に収容してエアを供給するという簡単な方法で、濾過膜モジュールを反応槽に浸漬したままの状態でオンエア洗浄を行なうことが可能になり、従来の反応槽から活性汚泥を排出し、或いは反応槽から濾過膜モジュールを抜き出してオンエア洗浄を行なう方法に較べて、濾過膜モジュールのオンエア洗浄を容易に行なうことができる。
(2)濾過膜モジュールを気中に抜き出すことなく、濾過膜モジュールを個別にオンエア洗浄することができる。従来の反応槽から活性汚泥を排出してオンエア洗浄を行なう場合で、且つ反応槽に複数の濾過膜モジュールが設置されている場合には、設置されている全ての濾過膜モジュールの使用が出来なくなり、全体の処理能力が大きく低下するが、本発明の場合は、個別に(モジュールケーシング毎に)濾過膜モジュールのオンエア洗浄することができるので、洗浄している濾過膜モジュールを除いた他の濾過膜モジュールの使用が可能であり、安定した濾過処理量を確保することができる。
(3)濾過膜モジュールを反応槽に浸漬したままの状態で薬液洗浄できるので、濾過膜モジュール洗浄装置を容易に下水処理システムの自動運転に組み込むことができる。従って、薬液洗浄頻度を多く設定でき、濾過膜モジュールの目詰まりを抑制し、安定した処理能力を確保することができる。
(4)本発明の濾過膜モジュール洗浄装置において、特別に付加する部品は、濾過膜モジュールを収容するモジュールケーシング、該モジュールケーシングに取り付けられる液およびエア流出バルブ、バルブ用エア源程度であり、比較的安価に製造することができる。特に、モジュールケーシングにエアを供給するエア供給装置にスクラビングブロワを使用すれば、その分、部品点数を少なくしてコストを低減することができる。従って、従来のオンエア洗浄装置に較べて、はるかに安価に製作することができ、また、使用するエネルギーも少なくてすむ。
【0051】
なお、上記実施例においては、エア供給装置28に、スクラビングブロワ16とスクラビング用散気器17を使用し、該スクラビング用散気器17をモジュールケーシング27の底部の開口に臨んで配置することによりエアをモジュールケーシング27内に供給する場合を示したが、エアは必ずしもモジュールケーシング27の底部の開口から供給する必要は無く、例えば、スクラビングブロワ16とスクラビング用散気器17を繋ぐエア供給路34に切換弁(図示省略)を介して分岐路(図示省略)を接続し、該分岐路の先端をモジュールケーシング27に接続して、モジュールケーシング27内にエアを供給する構成にしてもよい。分岐路からエアを供給する場合には切換弁でスクラビング用散気器17へのエアの供給を停止する。分岐路の先端には逆止弁(図示省略)を設ける。上記分岐路の先端をモジュールケーシング27に接続する位置は問わない。また、スクラビングブロワ16の代わりに散気ブロワ15を使用してモジュールケーシング27内にエアを供給する構成にしてもよい。
【0052】
さらに、上記スクラビングブロワ16や散気ブロワ15を使用せずに専用のエア供給ブロワを使用しても良い。また、実施例では、モジュールケーシング27を有蓋円筒状に形成した場合を示したが、モジュールケーシング27の形状は、有蓋円筒状に限定されるものではなく、濾過膜モジュール11の形状に対応させるなどして適宜の形状に形成される。また、実施例では、1個の濾過/逆洗ポンプ18で濾過を逆洗の両方を行なう構成にしたが、濾過と逆洗をそれぞれ別個のポンプで行なってもよい。また、実施例では、濾過膜モジュール11に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の円筒形中空糸膜モジュールを使用した場合を示したが、濾過膜モジュール11の材質は有機膜、無機膜を問わない。また、濾過膜モジュール11の構造も平膜、中空糸膜、単管膜等を問わない。また、上記実施例においては、専ら濾過膜モジュール洗浄装置について説明したが、この説明の中には、反応槽に浸漬して配置した濾過膜モジュールの2次側から次亜塩素酸ナトリウム溶液等の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの1次側に浸透させて濾過膜モジュールを洗浄する濾過膜モジュール洗浄方法において、上記濾過膜モジュールをモジュールケーシングに収容し、該モジュールケーシング内にエアを導入し、上記濾過膜モジュールを気中に曝した状態で上記濾過膜モジュールの2次側に上記薬液を注入して、該薬液を上記濾過膜モジュールの1次側に浸透させるという本発明の濾過膜モジュール洗浄方法が開示されています。また、上記実施例では、本発明の濾過膜モジュール洗浄方法および濾過膜モジュール洗浄装置を下排水や産業排水中の汚濁物質等を生物処理で処理し、濾過膜モジュールで濾過する膜分離処理システムに使用した場合を説明したが、凝集剤を添加して、汚濁物質等を凝集沈殿処理し、濾過膜モジュールで濾過する膜分離処理システムに使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、浸漬膜に限らずケーシング収納型の膜モジュールにも応用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…原水
2…スクリーン槽
3…荒目スクリーン
4…流量調整層
6…脱窒槽
7…反応槽
8…返送ポンプ
9…汚泥引抜弁
10…攪拌機
11…濾過膜モジュール
12…濾過配管
13…濾過水タンク
15…散気ブロワ(曝気ブロワ)
15a…曝気用散気器
16…スクラビングブロワ
17…スクラビング用散気器
18…濾過/逆洗ポンプ
19…第1のバルブ
20…第2のバルブ
21…第1の濾過水逆洗路
22…第3のバルブ
23…第1の濾過水逆洗路
24…第4のバルブ
25…濾過膜モジュール洗浄装置
26…薬液注入装置
27…モジュールケーシング(洗浄ケーシング)
28…エア供給装置
29…薬液タンク
30…薬液供給ポンプ
31…薬液供給路
32…第5のバルブ
33…液およびエア流出バルブ
34…エア供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に浸漬して配置した濾過膜モジュールの2次側から洗浄用の薬液を注入して、該薬液を濾過膜モジュールの1次側に浸透させて濾過膜モジュールを洗浄する濾過膜モジュール洗浄方法において、
上記濾過膜モジュールをモジュールケーシングに収容し、該モジュールケーシング内にエアを導入し、上記濾過膜モジュールを気中に曝した状態で上記濾過膜モジュールの2次側から上記薬液を注入して、該薬液を上記濾過膜モジュールの1次側に浸透させることを特徴とする濾過膜モジュール洗浄方法。
【請求項2】
反応槽に浸漬して配置した濾過膜モジュールの2次側に洗浄用の薬液を注入する薬液注入装置を備え、該薬液注入装置により濾過膜モジュールの2次側に注入して濾過膜モジュールを洗浄する濾過膜モジュール洗浄装置において、
上記濾過膜モジュールを収容し、かつ該濾過膜モジュールを気中に曝すためのエアを貯留可能なモジュールケーシングと、該モジュールケーシング内にエアを供給して上記濾過膜モジュールを気中に曝すエア供給装置と、を備えたことを特徴とする濾過膜モジュール洗浄装置。
【請求項3】
上記モジュールケーシングは、底部が開口し、上部が蓋板で閉塞され、該蓋板に液およびエア流出バルブを備えていることを特徴とする請求項2に記載の濾過膜モジュール洗浄装置。
【請求項4】
上記液およびエア流出バルブは、圧力エア駆動バルブであることを特徴とする請求項3に記載の濾過膜モジュール洗浄装置。
【請求項5】
上記エア供給装置に、スクラビングブロワまたは散気ブロワを兼用させたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の濾過膜モジュール洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−11173(P2011−11173A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159188(P2009−159188)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】