説明

濾過装置の逆洗方法

【課題】濾布の目詰まり回復を確実に行い逆洗効果を向上させることができる濾過装置の逆洗方法を提供すること。
【解決手段】濾過槽内1を仕切板により濾液室102と濾過室101に区画し、濾過室101内に、上部開口402を有する多孔製の筒状支持体400と該支持体400の外周を被覆する袋状の濾布401とからなる濾過筒4を吊り下げて配設し、前記濾過室101に入った原水が該濾過室101内を上向流しながら、濾布401により濾過され濾液となって濾過筒4内を上昇して濾液室102内に集水される構造であり、且つ前記濾過室101に逆洗水を供給する配管及び空気を供給する配管が接続されていることを特徴とする濾過装置の該濾布401の濾過面と反対側の面から微細気泡を混入した逆洗水を送って濾布401の逆洗を行う濾過装置の逆洗方法において、前記微細気泡の直径が、前記濾布401の平均孔径の1.10〜1.25倍であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置の逆洗方法に関し、詳しくは、濾布の目詰まり回復を確実に行い逆洗効果を向上させることができる濾過装置の逆洗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、複数の袋状濾布モジュールを吊り下げた方式の濾過装置が開示されている。しかし、濾布の洗浄に関しては記載されていない。
【0003】
また特許文献2には、精密濾過膜や限外濾過膜の洗浄の際に、原液側にオゾン微細気泡(気泡径5mm未満)導入してオゾン濃度を高め、また同時に粗大気泡(気泡径5mm以上)も別に導入して膜を揺動させ、更に過酸化水素水を膜の濾過液側から原液側に向かって逆流させて洗浄する技術が開示されている。
【特許文献1】特公平7−53206
【特許文献2】特開2005−34694
【特許文献3】特開2002−263647 被処理水より高い温度のオゾン含有水を用いて濾過膜を洗浄する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、濾布洗浄について何ら記載がなく、また特許文献2のように原液側に気泡を導入する方式では、濾布の内部に侵入した目詰まりをほとんど除去できず、洗浄効果が不十分であった。
【0005】
そこで、本発明は、濾布の目詰まり回復を確実に行い逆洗効果を向上させることができる濾過装置の逆洗方法を提供することにある。
【0006】
また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0008】
(請求項1)
濾布による濾過を行う濾過装置の該濾布の濾過面と反対側の面から微細気泡を混入した逆洗水を送って濾布の逆洗を行う濾過装置の逆洗方法において、
前記微細気泡の直径が、前記濾布の平均孔径の1.10〜1.25倍であることを特徴とする濾過装置の逆洗方法。
【0009】
(請求項2)
前記濾過装置が、濾過槽内を仕切板により濾液室と濾過室に区画し、濾過室内に、上部開口を有する多孔製の筒状支持体と該支持体の外周を被覆する袋状の濾布とからなる多数の濾過筒を吊り下げて配設し、前記濾過室に入った原水が該濾過室内を上向流しながら、濾布により濾過され濾液となって濾過筒内を上昇して濾液室内に集水される構造であり、且つ前記濾過室に逆洗水を供給する配管及び空気を供給する配管が直接又は間接に接続されていることを特徴とする請求項1記載の濾過装置の逆洗方法。
【0010】
(請求項3)
前記濾布の孔径が、5〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の濾過装置の逆洗方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、濾布の目詰まり回復を確実に行い逆洗効果を向上させることができる濾過装置の逆洗方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の方法を実施可能な濾過装置の一例を示す概略断面図である。
【0014】
図において、1は濾過槽であり、円筒竪型に形成されることが好ましく、該濾過槽1は仕切板2により濾過室101と濾液室102に区画されている。
【0015】
濾過室101には原液導入口103が設けられ、濾液室102には濾液排出口104が設けられている。
【0016】
原液導入口103には原水導入管105が接続されている。105Aは原水導入管105に設けられた開閉弁である。
【0017】
原水は、例えば、バラスト水(海水や淡水)などが挙げられる。バラスト水として海水を原水とする場合に、濾過対象となる物質としては、動物性プランクトン、植物性プランクトン、微生物、Si、Al,Feなどの元素又はその酸化物や塩化物など無機物、その他、懸濁物質(SS)などがある。濾過室101には逆洗浄時に空気を導入可能にするための空気導入管106を接続していてもよい。106Aは空気導入管106に設けられた開閉弁である。
【0018】
濾液排出口104には濾液排出管107が接続され、該濾液排出管107には開閉弁107Aが設けられている。また濾液排出口104には濾布の逆洗浄を行うための逆洗水を供給するための洗浄配管108が接続され、該洗浄配管108には開閉弁108Aが設けられている。
【0019】
図1において、3は空気供給源であり、例えばコンプレッサーなどが用いられる。300は空気供給管である。空気供給管300の先端部には、1又は2以上の微細気泡生成部301が取り付けられている。
【0020】
微細気泡生成部301には、多孔部材を用いることができる。多孔部材の孔径は、微細気泡の直径を規定するので、後述の濾布の平均孔径の1.10〜1.25倍であることが必要である。
【0021】
4は仕切板2に吊り下げられた濾過筒であり、該濾過筒4は多孔製の円筒形の支持体400と該支持体400の外周に被覆され袋状に形成された濾布401によって構成され、濾過筒4の上部は濾液室102に濾液を送液可能なように上部開口402を有している。
【0022】
支持体400は上部開口402を有する樹脂製円筒形であり、好ましくはポリエチレン製のものが好ましい。支持体の表面は網目状に形成されてもよいし、あるいは多孔状に形成されてもよい。支持体表面の開口率は40%〜70%の範囲が好ましく、より好ましくは45%〜65%の範囲が好ましく、更に好ましくは50%〜65%の範囲が好ましい。
【0023】
濾布401は例えばポリエステル極細繊維で織られ、表面を一定方向に立毛させた緻密層を有し、下層部は粗い地組織を有する2層構造のものを好ましく用いることができる。濾過時には緻密層で原水中の粒子を捕捉しやすく、且つ洗浄時には捕捉された粒子を容易に離脱させることができるからである。またポリエステルは疎水性で繊維が膨潤しにくいので好ましい。濾布401を袋状にするには、通常の縫製法でよい。
【0024】
本発明において、濾布401の孔径に関する好ましい態様としては、孔径の範囲は、15〜25μmの範囲であり、平均孔径は約18μmである。ここで、平均孔径というのは、濾布を構成する繊維の隣り合う繊維同士の間隔の平均値ということを意味している。
【0025】
本態様では、濾過室101内に、複数本の濾過筒4、4、・・が吊り下げて配設されているが、その本数は必ずしも限定されない。
【0026】
本発明において、微細気泡生成部301は図1に示すように、濾液室102の内部に存在していてもよいが、好ましくは図2に示すように濾過筒4の内部に挿入される形態を採用でき、かかる形態によると、図1に比べ、微細気泡の径を制御し易いからである。図1では濾液室102内から各濾過筒4の内部に微細気泡が到達するまでに気泡同士の結合を生じるおそれがあるが、図2の態様ではかかる懸念がない点で優れている。この態様では多孔部材301は棒状体に形成されることが好ましい。
【0027】
また本発明では、図3の態様を採用することもできる。空気供給管300の先に空気導入管302を接続し、該空気導入管302に可撓性配管303を複数設け、該可撓性配管303の先端に微細気泡生成部301を設けるようにしてもよい。可撓性配管303が気泡の流れによって揺動して気泡の拡散を図れる点で優れている。
【0028】
本発明において、原水は、原水導入管105から原液導入口103を経由して濾過室101に導入されると、濾過室101内を上向流する。
【0029】
濾過室101内の原水は、濾布401を通過し、濾過筒4内に入り、上方に向かって進み、濾液室102に集水される。
【0030】
本発明では、濾布濾過を継続すると、濾布401の目詰まりが生じるので、逆洗浄が必要になる。
【0031】
洗浄を行うには、開閉弁108Aを開けて洗浄水を濾液室102に供給する。その際に開閉弁107A、105Aは閉じている。また同時にコンプレッサー3を作動させて空気を空気供給管300から供給する。微細気泡生成部301から濾液室102内の洗浄水に微細気泡が放出拡散される。
【0032】
微細気泡は濾過筒4の内部に至り、濾布401の内面から外面に向かって洗浄水とともに排出され、その排出過程で濾布に付着した目詰まり物質を除去する。かかる目詰まり物質を含む洗浄廃水は、廃水管109から外部に排出される。なお、109Aは開閉弁である。
【0033】
次に本発明の逆洗浄のメカニズムを図4に基づいて説明する。
【0034】
図4(A)は、微細気泡5が濾布401の孔部403に入る前の状態を示している。本発明では、微細気泡の直径が、濾布の平均孔径の1.10〜1.25倍であることを特徴とする。
【0035】
1.10倍未満では、微細気泡が孔を抵抗なく通過してしまい、目詰まり物質が脱着しないという問題があり、1.25倍を越えると、微細気泡は孔部で分裂して、孔を容易に通過して目詰まり物質が脱着しないという問題がある。
【0036】
濾布の平均孔径Mは、実験装置の一例では18μmであるので、その場合について説明すると、微細気泡の直径Lは、濾布の平均孔径18μmの1.10〜1.25倍=20〜24μmの範囲である。従って、20〜24μmの範囲の微細気泡の一つに注目すると、図4(A)に示すように、孔部403をスムーズに通過できる状態にはない。なお、図4(A)において、404は目詰まり物質である。
【0037】
図4(B)は気泡が孔部403の中に入り込んだ状態を示している。気泡自体は圧縮性があるので、圧力があればより狭い孔であっても入り込める。図4(C)は気泡が孔部403を通過して、目詰まり物質404を一緒に排出した状態を示している。
【0038】
このように図4(B)のように圧縮状態で孔部403を通過しようとする気泡は孔部403を膨張させる役割も果たし、その膨張によって目詰まり物質404を容易に濾布401から脱着し易くなり、その結果、図4(C)に示すように気泡とともに目詰まり物質404を排出している。
【0039】
なお、本発明では、濾過室101には下方より空気導入管106を介して空気を導入すると、濾布の表面を気泡で衝撃を与えることもでき、上記の逆洗浄と協働作用によって洗浄効果が上昇する。
【0040】
上記説明では、逆洗浄において水とともに空気を供給する態様について説明したが、空気に代えて廃オゾンを用いることも好ましい。
【0041】
また上記の例では、微細気泡生成部301に多孔部材を用いた態様を説明したが、ラインミキサー、静的混合器などの微細気泡を生成可能な各種デバイスを用いることもできる。例えば図5に示すように静的混合器301を配置して逆洗水と空気を同時に供給し、空気と逆洗水の圧力と流量を調整することにより所定の微細気泡を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の方法を実施可能な濾過装置の一例を示す概略断面図
【図2】多孔部材の取り付け手段の他の態様を示す図
【図3】多孔部材の取り付け手段の他の態様を示す図
【図4】本発明の逆洗浄のメカニズムを示す図
【図5】本発明の他の態様を示す図
【符号の説明】
【0043】
1:濾過槽
101:濾過室
102:濾液室
103:原液導入口
104:濾液排出口
105:原水導入管
105A:開閉弁
106:空気導入管
106A:開閉弁
107:濾液排出管
107A:開閉弁
108:洗浄配管
108A:開閉弁
109:廃水管
109A:開閉弁
2:仕切板
3:空気供給源
300:空気供給管
301:微細気泡生成部
302:空気導入管
303:可撓性配管
4:濾過筒
400:支持体
401:濾布
402:開口
403:孔部
404:目詰まり物質
5:微細気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾布による濾過を行う濾過装置の該濾布の濾過面と反対側の面から微細気泡を混入した逆洗水を送って濾布の逆洗を行う濾過装置の逆洗方法において、
前記微細気泡の直径が、前記濾布の平均孔径の1.10〜1.25倍であることを特徴とする濾過装置の逆洗方法。
【請求項2】
前記濾過装置が、濾過槽内を仕切板により濾液室と濾過室に区画し、濾過室内に、上部開口を有する多孔製の筒状支持体と該支持体の外周を被覆する袋状の濾布とからなる多数の濾過筒を吊り下げて配設し、前記濾過室に入った原水が該濾過室内を上向流しながら、濾布により濾過され濾液となって濾過筒内を上昇して濾液室内に集水される構造であり、且つ前記濾過室に逆洗水を供給する配管及び空気を供給する配管が直接又は間接に接続されていることを特徴とする請求項1記載の濾過装置の逆洗方法。
【請求項3】
前記濾布の孔径が、5〜300μmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の濾過装置の逆洗方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−136886(P2008−136886A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322510(P2006−322510)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000193508)水道機工株式会社 (50)