説明

濾過装置

【課題】フィルタ本体部の径寸法及び軸方向寸法の異なる多彩なフィルタに対応した濾過装置を提供する。
【解決手段】濾過装置は、フィルタ本体部10の軸方向一端面10aから突出する雌型接続部11および軸方向他端面10bから突出する雄型接続部12を備えたフィルタ1を保持するためのホルダ部40を有し、ホルダ部40で保持したフィルタ1を所定のセット位置stに移送するための移送機構4を備えている。ホルダ部40は、一対の爪状部位41c・42cを有し両爪状部位41c・42cにフィルタの雌型接続部11の周側面11cに嵌り合う凹部41u・42uが形成された狭持部4Xと、狭持部4Xに設定された姿勢規定面4Yに対しフィルタ本体部10の軸方向一端面10aを押し当てる方向にフィルタ本体部10を部材の弾性反発力を利用して付勢する付勢部4Zとを有する。付勢部4Zは、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bのうち雄型接続部12の周囲の所定範囲Arを避けた部位を付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタを用いて試験液等の液体を濾過する濾過装置に係り、特に多彩な寸法のフィルタを利用可能とした濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経口固形製剤などの薬剤の製造においては、その品質を一定水準に確保することを目的として、溶出試験の実施が義務付けられている。溶出試験では、固形製剤を各種溶液に浸漬させたときの主薬の溶出率を調べる試験であり、試験液を貯留した容器の中に薬剤を投入し、攪拌されることにより一定の液流を形成する試験液の中で薬剤が溶出する過程を経時的に測定するものである。その測定方法としては、例えば、採取した各サンプル液を分光光度計を用いて分析することが挙げられる。他の液体分析としては、液体クロマトグラフ分析などが挙げられる。
【0003】
このような分析を行うにあたり、分析機器に送られるサンプル液中に固形物が含まれていると測定値に悪影響を与えるため、分析前にサンプル液をフィルタを用いて濾過する必要がある。分析用途に用いられる一般的なフィルタ1は、シリンジフィルタとも呼ばれ、図9(a)に示すように、内部にフィルタ材を収容し略円盤状をなすフィルタ本体部10と、フィルタ本体部10の軸方向一端面10aから軸方向Xに沿って突出する雌型接続部11と、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bから軸方向Xに沿って突出する先細状の雄型接続部12とを備えた構成が通例であり、各々の接続部11・12の接続口を介して濾過対象となる液体の出し入れを行う。
【0004】
このフィルタに関連するものとして、例えば特許文献1には、フィルタを収容するストッカと、シュータとを備え、ストッカから落下したフィルタをシュータに沿って所望の位置に移送するフィルタ供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−131725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなフィルタ供給装置を用いてフィルタの装着及び濾過を自動で行う濾過装置として、例えば、図9(b)に示すように、円盤状をなすフィルタ本体部10の周側面10cに当接してフィルタ1を所定のセット位置stに位置決めする位置決め部材1001と、フィルタ1の雌型接続部11及び雄型接続部12にそれぞれ嵌合可能な形状をなしフィルタ1に対し液体を出し入れするための雄型ノズル部1020及び雌型ノズル部1021とを設けるとともに、フィルタ1が所定のセット位置stにある場合に両ノズル部1020・1021を対応する接続部11・12に対して進退移動可能に構成しておき、位置決め部材1001によってフィルタ1を所定のセット位置stに位置決めした後で、各々のノズル部1020・1021をスライド移動させて接続相手となる接続部11・12に嵌合(装着)し、試験液等の液体をフィルタ1を通過させて濾過するように構成することが考えられる。
【0007】
しかしながら、このようなフィルタ本体部の外径を用いてフィルタの位置決めを行う構成では、円盤状をなすフィルタ本体部の径寸法に合わせて両ノズル部を配置し、フィルタ本体部の軸方向寸法に合わせてノズル部の進退距離を設定しているので、フィルタ本体部の径寸法や軸寸法が設定値と異なるフィルタを使用することができず、サイズの異なる多彩なフィルタに対応することができない。
【0008】
フィルタ本体部の径寸法や軸方向寸法の異なる多彩なフィルタに対応するための一つの手段として、フィルタ本体部の周側面との干渉を避けた位置において双方の接続部を把持する構成が考えられる。ところが、フィルタの雄型接続部は、雌型ノズル部の内周側に嵌り込むので、雄型接続部を把持する部材と雌型ノズル部とが装着の際に干渉してしまい、双方の接続部を把持する構成を採用することはできない。一方、他の一つの手段として、雌型接続部のみを把持する構成が考えられるものの、この場合には、フィルタ本体部が揺動しやすくなり、フィルタの姿勢が不安定となり、雄型接続部が所定位置からズレて雌型ノズル部と適切に接続できないおそれがある。
【0009】
また、フィルタの移送の高速化や装置の小形化を追求する観点から、姿勢を安定させた状態でフィルタを確実に把持可能な構成が望まれる。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、姿勢を安定させた状態でフィルタを保持するとともに、フィルタ本体部の径寸法及び軸方向寸法の異なる多彩なフィルタに対応した濾過装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0012】
すなわち、本発明の濾過装置は、略柱状をなすフィルタ本体部の軸方向一端面から軸方向に沿って突出する雌型接続部と、前記フィルタ本体部の軸方向他端面から軸方向に沿って突出する雄型接続部とを備えたフィルタに対し、これら接続部を介して液体を通過させて濾過する濾過装置であって、前記フィルタの雌型接続部及び雄型接続部にそれぞれ嵌合可能な形状をなし、前記フィルタに対し液体を出し入れするための雄型ノズル部及び雌型ノズル部と、所定のセット位置にある前記フィルタの各接続部に対して接続相手となるノズル部を進退移動させるノズル移動機構と、前記フィルタを保持するためのホルダ部を有し、前記ホルダ部で保持したフィルタを前記セット位置又は前記セット位置から退避した退避位置に移送する移送機構とを具備してなり、前記ホルダ部は、一対の爪状部位を有し少なくともいずれかの爪状部位に前記雌型接続部の周側面に嵌り合う凹部が形成された狭持部と、前記狭持部に設定された姿勢規定面に対し前記フィルタ本体部の軸方向一端面を押し当てる方向に前記フィルタ本体部を部材の弾性反発力を利用して付勢する付勢部とを有しており、前記付勢部は、前記フィルタ本体部の軸方向他端面のうち前記雄型接続部の周囲の所定範囲を避けた部位を付勢することを特徴とする。
【0013】
略柱状は、円盤形状に限定されず、円柱、四角柱、扁平形状を含む意味である。
【0014】
このように、対をなす爪状部位を有する狭持部がフィルタの雌型接続部の周側面を狭持するとともに、付勢部が狭持部に設定された姿勢規定面に対しフィルタ本体部の軸方向一端面を押し当てる方向にフィルタ本体部を付勢するので、フィルタの姿勢が姿勢規定面で規定される所定姿勢に維持され、雄型接続部を把持しなくしても姿勢を安定させた状態でフィルタを確実に保持することができる。
【0015】
また、フィルタ本体部の周側面を保持しなくとも、フィルタの姿勢を一定に安定させて保持できるので、フィルタ本体部の外周側を開放して、フィルタ本体部の径寸法が異なる多彩なフィルタに対応することが可能となる。同様に、付勢部が部材の弾性反発力によってフィルタ本体部を付勢するので、フィルタ本体部の軸方向寸法が異なる多彩なフィルタにも対応することが可能となる。
【0016】
したがって、姿勢を安定させた状態でフィルタ1を保持するとともに、フィルタ本体部の径寸法及び軸方向寸法の異なる多彩なフィルタに対応した濾過装置を提供することが可能となる。
【0017】
勿論、付勢部は、フィルタ本体部の軸方向他端面のうち雄型接続部の周囲の所定範囲を避けた部位を付勢するので、付勢部を雄型接続部の周囲の所定範囲を避けて配置でき、雄型接続部に対して雌型ノズル部を接続する際に、ホルダ部とノズル部とが干渉することがなく、スムーズな接続を可能にしている。
【0018】
間違った姿勢でフィルタをホルダ部に装着することを低減又は無くするためには、前記狭持部を構成する爪状部位は、その先端側から基端側に向かう装着方向に沿って前記フィルタを移動させることで前記雌型接続部と嵌合するように、開き方向が設定されており、前記付勢部は、前記狭持部の先端よりも前記装着方向の反対側に延在しており、その延在部位には、前記雄型接続部の通過を許容する寸法に設定される一方で前記雄型接続部よりも外径の大きな前記雌型接続部の通過を許容しない寸法に設定された切欠部が形成されていることが好ましい。
【0019】
装置寸法を低減させ又は移送速度を向上させるためには、前記移送機構は、前記フィルタを保持する前記ホルダ部を回転により姿勢変更させることで、前記セット位置又は前記退避位置に前記フィルタを移送するように構成されていることが望ましい。
【0020】
簡易な構成で複数のフィルタの同時移送を実現するためには、前記雄型ノズル部及び前記雌型ノズル部で構成される組を複数組配列するとともに、複数組のノズル部の配置に対応して前記ホルダ部を複数配列したホルダプレートを設け、このホルダプレートを回転により姿勢変更させることで、前記セット位置又は前記退避位置に前記フィルタを移送するように構成されていることが効果的である。
【0021】
フィルタ本体部の軸寸法が異なる多彩なフィルタに対応するためには、前記雌型接続部と仮嵌め状態となる所定位置へ前記雄型ノズル部を移動させる第一のノズル動作を行い、前記第一のノズル動作の後で前記雌型ノズル部を前記雄型接続部に向けてスプリングを介して所定圧力で押し付ける第二のノズル動作とを行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上説明したように、狭持部がフィルタの雌型接続部の周側面を狭持するとともに、付勢部が狭持部に設定された姿勢規定面に対しフィルタ本体部を付勢するので、フィルタの姿勢が姿勢規定面で規定される所定姿勢に維持され、雄型接続部を把持しなくしても姿勢を安定させた状態でフィルタを確実に保持することができる。このため、フィルタ本体部の外周側を開放でき、フィルタ本体部の径寸法が異なる多彩なフィルタに対応することが可能となる。
【0023】
また、付勢部が部材の弾性反発力によってフィルタ本体部を付勢するので、フィルタ本体部の軸方向寸法が異なる多彩なフィルタにも対応することが可能となる。
【0024】
したがって、姿勢を安定させた状態でフィルタ1を保持するとともに、フィルタ本体部の径寸法及び軸方向寸法の異なる多彩なフィルタに対応した濾過装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置を模式的に示す構成図。
【図2】同濾過装置においてノズル部が縮退している状態を模式的に示す図。
【図3】ホルダ部が取り付けられたホルダプレートを模式的に示す斜視図。
【図4】ホルダ部を示す正面図、側面図、平面図及び背面図。
【図5】ホルダ部がフィルタを保持している状態を示す正面図、側面図及び背面図。
【図6】ホルダ部へのフィルタの装着動作を示す正面図、側面図及び背面図。
【図7】フィルタへのノズル部への接続動作を示す図。
【図8】ホルダ部に保持されるフィルタの移送位置に関する説明図。
【図9】フィルタの構成及び従来の濾過装置に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係る濾過装置を、図面を参照して説明する。
【0027】
濾過装置は、シリンジフィルタとも呼ばれる使い捨てタイプのフィルタを用いてサンプル液を濾過するにあたり、フィルタを交換可能に構成されている。取り扱うフィルタ1は、図9(a)に示すように、0.45μmの孔が形成されたフィルタ材を内部に収容し且つ略柱状とも言える略円盤状をなすフィルタ本体部10と、フィルタ本体部10の軸方向一端面10aから軸方向Xに沿って突出するほぼ円筒状の雌型接続部11と、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bから軸方向Xに沿って突出する先細状の雄型接続部12とを有する。雌型接続部11及び雄型接続部12は、各々の先端にフィルタ本体部10の内部へ連通する接続口が形成されており、これら接続口を介して濾過対象となる液体を出し入れ可能にされている。また、雌型接続部11の外径r1は、先細状の雄型接続部12の最大外径r2よりも大きく設定されている。
【0028】
濾過装置は、図1に示すように、フィルタ1の雌型接続部11及び雄型接続部12にそれぞれ嵌合可能な形状をなし、フィルタ1に対して液体を出し入れするための雄型ノズル部20及び雌型ノズル部21と、所定のセット位置stにあるフィルタ1の各接続部11・12に対して接続相手となるノズル部20・21を進退移動させるためのノズル移動機構3と、フィルタ1を移送する移送機構4と、これら各機構3,4の駆動を制御する制御部5とを有している。
【0029】
雄型ノズル部20は、図1及び図2に示すように、雌型接続部11との嵌り合い状態において雌型接続部11の内周側に配置される先細り円筒形状をなし、第一の流路Li1とフィルタ1とを接続する役割を担う。雌型ノズル部21は、雄型接続部12との嵌り合い状態において雄型接続部12の外周側に配置される円筒形状をなし第二の流路Li2とフィルタ1とを接続する役割を担う。両接続部11・12の形状は、ルア構造とも呼ばれる。本実施形態では、第一の流路Li1に対し外部(溶出試験器など)から試験液が図示しないホンプによって供給され、第二の流路Li2から外部(分析機器など)へ濾過済みの液体が排出される。勿論、第一の流路Li1及び第二の流路Li2と外部との関係が逆であってもよい。
【0030】
ノズル移動機構3は、図2に示すように、両ノズル部20・21を向き合わせ且つ各々のノズル部20・21の軸心C1・C2を一致させた状態において両ノズル部20・21の軸心C1・C2に平行な方向をスライド方向SDとした場合に、スライド方向SDに沿って配置されるレール30と、このレール30を足場として各々のノズル部20・21をスライド移動可能に支持するスライド支持部31・32とを有する。レール30の内部には、図示しない気体の導通路が設けられており、この導通路に圧縮空気が送られるか否かに応じてスライド支持部31・32がスライド移動するいわゆるエアシリンダを構成している。エアシリンダに送られる圧縮空気の圧力は一定値に設定されており、これにより、各々のノズル部20・21はフィルタ1に対して所定圧力で押圧される。雌型ノズル部21とこれを支持するスライド支持部32との間には、スライド支持部32による押圧力を緩和するコイルスプリング33が介在してある。エアシリンダは、雄型ノズル部20側及び雌型ノズル部21側にそれぞれ設けられており、両ノズル部20・21を独立してスライド動作可能にしている。すなわち、ノズル移動機構3は、両ノズル部20・21を伸長又は縮退させることにより、所定のセット位置stにあるフィルタ1の各接続部11・12に対し接続相手となるノズル部20・21を接続し又はその接続を解除する。ここで言う所定のセット位置stは、図2に示すように、縮退状態にある両ノズル部20・21に挟まれる位置であって、雄型ノズル部20の軸心C1と雌型接続部11の軸心とが一致し、且つ、雌型ノズル部21の軸心C2と雄型接続部12の軸心とがほぼ一致する位置をいう。
【0031】
移送機構4は、図1に示すように、フィルタ1を保持するためのホルダ部40と、ホルダ部40で保持したフィルタ1をセット位置st又はセット位置stから退避した退避位置esに移送するホルダ移送機構45とを有する。
【0032】
ホルダ部40は、図3〜図5に示すように、板状のベース部44と、ベース部44から起立する第一部材41、第二部材42及び第三部材43とを有し、ある程度の可撓性及び耐酸性を備えたポリプロピレンで形成されている。勿論、ホルダ部は、弾性反発力を蓄積可能であって且つ耐酸性を備えていれば、ポリプロピレン以外の材料で構成されていてもよい。
【0033】
第一部材41及び第二部材42は、図3及び図4(a)に示すように、各々の先端が爪状に形成され、その爪状部位41c・42cそれぞれに雌型接続部11の周側面11cに嵌り合う凹部41u・42uが形成されており、第一部材41の凹部41uと第二部材42の凹部42uとを対向配置して、両凹部41u・42uで雌型接続部11の周側面11cを狭持する狭持部4Xを構成している。狭持部4Xによって雌型接続部11の軸心C1を所望の位置に位置決めすることを可能にしている。狭持部4Xを構成する両爪状部位41c・42cは、弾性変形することにより雌型接続部11と嵌合するように構成されている。また、両爪状部位41c・42cは、その先端側から基端側に向かう装着方向FDに沿ってフィルタ1を図6(a)→図5のように移動させることで雌型接続部11と嵌合するように、開き方向が設定されている。図5及び図6(a)に示すように、両爪状部位41c・42cのうち凹部41u・42uよりも先端側の部位には、雌型接続部11を凹部41u・42u同士の間に呼び込むテーパー面たる呼び込み部41d・42dが形成されており、雌型接続部11と両爪状部位41c・42cの位置関係が多少ズレていたとしても、呼び込み部41d・42dで雌型接続部11を凹部41u・42u同士の間に案内して円滑な嵌り合いを可能としている。
【0034】
第三部材43は、図4(b)及び図4(c)に示すように、第一部材41及び第二部材42から離間した位置に配置されており、これにより、第一部材41及び第二部材42と第三部材43との間にフィルタ本体部10を配置するための収容空間SPが設定されている。第一部材41及び第二部材42の収容空間側の面41a・42aは、同一平面に沿った形状にされ、図5に示すように、フィルタ本体部10の軸方向一端面10aに当接したときにフィルタ1の姿勢を規定する姿勢規定面4Yを構成している。第三部材43には、図4(b)に示すように、基端側から先端側に向かうにつれて第一部材41及び第二部材42との距離が狭くなる部位が設けられている。第一部材41及び第二部材42と第三部材43との間の最も狭い部分の距離w1は、フィルタ本体部10の軸方向寸法w2よりも小さく設定されている。これにより、図5に示すように、付勢部4Zが構成される。付勢部4Zは、フィルタ本体部10が収容空間SPに挿入されたときに第三部材43に弾性反発力Fが蓄積され、その弾性反発力Fによって、姿勢規定面4Y(41a・42a)に対しフィルタ本体部10の軸方向一端面10aを押し当てる方向にフィルタ本体部10を付勢する。この付勢部4Zは、図5に示すように、フィルタ1の雄型接続部12の周囲の所定範囲Ar(図中で斜線を付した領域)を避けて配置されており、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bのうち雄型接続部12の周囲の所定範囲Arを避けた部位を付勢するようにしてある。所定範囲Arは、雌型ノズル部21の外径に対応して設定されている。言い換えると、付勢部4Zを構成する肉のうち雄型接続部12の周囲の所定範囲Arにある肉を抜いてある、もしくは、付勢部4Zのうち雄型接続部12の周囲の所定範囲Ar内の部位が切り欠いた状態にされていると言える。なお、収容空間SPは、フィルタ本体部10の軸方向寸法が3mm以上5mm以下のフィルタであれば収納可能となるように、第一部材41及び第二部材42と第三部材43との最大距離、最短距離w1が設定されている。
【0035】
また、第三部材43は、図4(a)及び図4(b)に示すように、その先端側が狭持部4Xの先端よりも装着方向FDの反対側に延在している。この第三部材43の延在部位43aには、図4(a)、図4(d)及び図6に示すように、雄型接続部12の通過を許容する寸法に設定される一方で、雄型接続部12よりも外径の大きな雌型接続部11の通過を許容しない寸法に設定された切欠部43pが形成されている。具体的に、図6に示すように、切欠部43pによって形成される通路の寸法w3は、先細状の雄型接続部12の最大外径r2よりも大きく、且つ、雌型接続部11の外径r1よりも小さくなるように設定されている。
【0036】
図1に戻り、ホルダ移送機構45は、ホルダ部40を移送させるチェーンコンベアである。具体的には、ホルダ移送機構45は、図1及び図3に示すように、対をなすチェーン46・46と、各々のチェーン46・46を支持する複数のスプロケット47・47と、両チェーン46・46のうち一方のチェーン46に一端側を支持され且つ他方のチェーン46に他端側を支持されるホルダプレート48と、スプロケット47を回転駆動するモータ等の駆動部49aと、ホルダプレート48の位置を検出するための遮光センサ等の位置センサ49bとを備えている。
【0037】
図1及び図3に示すように、溶出試験では同時に複数個の薬剤の試験を行うために、上記一つの雄型ノズル部20及び一つの雌型ノズル部21で構成される組を所定の配列方向PDに沿って所定ピッチで複数組配列してある(本実施形態では、6つ)。ホルダプレート48には、複数組のノズル部20・21の配置に対応してホルダ部40を上記配列方向PDに沿って複数(6つ)配列して取り付けてある。ホルダプレート48は、図1に示すように、チェーン46の周回方向に沿って複数(12連)取り付けられている。ホルダプレート48には、図3に示すように遮蔽板48aが設けられており、ホルダプレート48が回転するときに、位置センサ49bを構成する投光部49b1から受光部49b2への投光を遮蔽板48aが遮ることにより、その位置を検出可能にしてある。複数のホルダプレート48のうち一つのホルダプレート48には、単一の遮蔽板48aが設けられ、他の11のホルダプレート48には2つの遮蔽板48aが設けられている。これによって、ホルダプレート48が一周したか否かを検出可能にしている。
【0038】
図1に示す制御部5は、CPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺のハードリソースと協働して、移送制御部50及びノズル移動制御部51を実現する。移送制御部50は、操作ボタンや操作パネルなどの操作部52を通じて指示された位置にホルダ部40及びホルダプレート48が移動するように、位置センサ49bの検出結果に基づきモータ等を用いた駆動部49aを制御する。ノズル移動制御部51は、図示しないエアポンプによりエアシリンダへ圧縮空気を送るか否かを制御することにより、ノズル部20・21の移動を制御する。
【0039】
すなわち、図2に示すように、モータ等の駆動部49aによりスプロケット47が回転し、これに伴いチェーン46が周回して、チェーン46に支持されるホルダプレート48及びホルダ部40がチェーン46に沿って周回する。所定のセット位置stは、ホルダ部40の移動軌跡のうち回転軌跡上に設定されている。これにより、移送機構4は、ホルダ部40及びホルダプレート48を回転により姿勢変更させることでフィルタ1をセット位置stに移送する。
【0040】
図2に示す所定のセット位置stにフィルタ1が移送されると、図7に示すように、雌型接続部11と仮嵌め状態となる所定位置へ雄型ノズル部20を移動させる第一のノズル動作を行う。次に、第一のノズル動作の後で雌型ノズル部21を雄型接続部12に向けてスプリング33を介して所定圧力で押し付ける第二のノズル動作を行う。この第二のノズル動作により両ノズル部20・21が両接続部11・12に押圧されて嵌合状態となる(図1参照)。図1に示すように、両ノズル部20・21が両接続部11・12に接続された後で、試験液等の液体が第一の流路Li1、フィルタ1及び第二の流路Li2を順に通過して濾過される。
【0041】
濾過処理が完了すると、図2に示すようにフィルタ1から両ノズル部20・21が抜脱され、モータ等の駆動部49aによりチェーン46が回転して、チェーン46に支持されるホルダプレート48及びホルダ部40が移動し、フィルタ1が所定のセット位置stから退避位置esに移送され、次のフィルタ1が所定のセット位置stに移送される。ここで言う退避位置esは、セット位置st以外の位置を意味するが、例えば図8に示す伸長して互いに接続された状態の両ノズル部20・21にフィルタ1が干渉しない位置や、ホルダ部に対してフィルタの着脱を行う位置などが挙げられる。
【0042】
以上のように、本実施形態の濾過装置は、略柱状をなすフィルタ本体部10の軸方向一端面10aから軸方向Xに沿って突出する雌型接続部11と、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bから軸方向Xに沿って突出する雄型接続部12とを備えたフィルタ1に対し、これら接続部11・12を介して液体を通過させて濾過する濾過装置であって、フィルタ1の雌型接続部11及び雄型接続部12にそれぞれ嵌合可能な形状をなし、フィルタ1に対し液体を出し入れするための雄型ノズル部20及び雌型ノズル部21と、所定のセット位置stにあるフィルタ1の各接続部11・12に対して接続相手となるノズル部20・21を進退移動させるノズル移動機構3と、フィルタ1を保持するためのホルダ部40を有し、ホルダ部40で保持したフィルタ1をセット位置st又はセット位置stから退避した退避位置esに移送する移送機構4とを具備してなり、ホルダ部40は、一対の爪状部位41c・42cを有し両爪状部位41c・42cに雌型接続部11の周側面11cに嵌り合う凹部41u・42uが形成された狭持部4Xと、狭持部4Xに設定された姿勢規定面4Y(41a・42a)に対しフィルタ本体部10の軸方向一端面10aを押し当てる方向にフィルタ本体部10を部材の弾性反発力を利用して付勢する付勢部4Zとを有しており、付勢部4Zは、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bのうち雄型接続部12の周囲の所定範囲Arを避けた部位を付勢するように構成されている。
【0043】
このように、対をなす爪状部位41c・42cを有する狭持部4Xがフィルタ1の雌型接続部11の周側面11cを狭持するとともに、付勢部4Zが狭持部4Xに設定された姿勢規定面4Yに対しフィルタ本体部10の軸方向一端面10aを押し当てる方向にフィルタ本体部10を付勢するので、フィルタ1の姿勢が姿勢規定面4Yで規定される所定姿勢に維持され、雄型接続部12を把持しなくても姿勢を安定させた状態でフィルタ1を確実に保持することが可能となる。
【0044】
また、フィルタ本体部10の周側面10cに保持しなくとも、フィルタ1の姿勢を一定に安定させて保持できるので、フィルタ本体部10の外周側を開放して、フィルタ本体部10の径寸法が異なる多彩なフィルタに対応することが可能となる。同様に、付勢部4Zが部材の弾性反発力によってフィルタ本体部10を付勢するので、フィルタ本体部10の軸方向寸法が異なる多彩なフィルタにも対応することが可能となる。
【0045】
したがって、姿勢を安定させた状態でフィルタ1を保持するとともに、フィルタ本体部10の径寸法及び軸方向寸法の異なる多彩なフィルタに対応した濾過装置を提供することが可能となる。
【0046】
勿論、付勢部4Zは、フィルタ本体部10の軸方向他端面10bのうち雄型接続部12の周囲の所定範囲Arを避けた部位を付勢するので、付勢部4Zを雄型接続部12の周囲の所定範囲Arを避けて配置でき、雄型接続部12に対して雌型ノズル部21を接続する際に、ホルダ部40とノズル部21とが干渉することがなく、スムーズな接続を可能にしている。
【0047】
さらに、本実施形態では、狭持部4Xを構成する爪状部位41c・42cは、その先端側から基端側に向かう装着方向FDに沿ってフィルタ1を移動させることで雌型接続部11と嵌合するように、開き方向が設定されており、付勢部4Zは、狭持部4Xの先端よりも装着方向FDの反対側に延在しており、その延在部位43aには、雄型接続部12の通過を許容する寸法に設定される一方で雄型接続部12よりも外径の大きな雌型接続部11の通過を許容しない寸法に設定された切欠部43pが形成されている。
【0048】
このように構成すると、フィルタ1を装着方向FDに移動させた場合に、狭持部4Xよりも先に延在部位43aがいずれかの接続部11・12と干渉し得る状態となる。フィルタ1の向き(姿勢)が正しいときには、延在部位43aに形成された切欠部43pを雄型接続部12が通過する。一方、フィルタ1の向き(姿勢)が間違っているときには、切欠部43pを雌型接続部11が通過できない又は部材を弾性変形させる多大な操作力が必要となる。したがって、間違った姿勢でフィルタ1をホルダ部40に装着することを低減又は無くすることが可能となる。
【0049】
さらにまた、本実施形態では、移送機構4は、フィルタ1を保持するホルダ部40を回転により姿勢変更させることで、セット位置st又は退避位置esにフィルタ1を移送するように構成されているので、ホルダ部40をスライド移動のみで移送するように構成した場合に比して、装置寸法を低減させ又は移送速度を向上させることが可能となる。
【0050】
さらにまた、本実施形態では、雄型ノズル部20及び雌型ノズル部21で構成される組を複数組配列するとともに、複数組のノズル部20・21の配置に対応してホルダ部40を複数配列したホルダプレート48を設け、このホルダプレート48を回転により姿勢変更させることで、セット位置st又は退避位置esにフィルタ1を移送するように構成されているので、ホルダプレート48を回転により姿勢変更するだけで、複数のホルダ部40が所定のセット位置stに移送され、簡易な構成で複数のフィルタ1の同時移送を実現することが可能となる。
【0051】
その他、本実施形態では、姿勢規定面4Y(41a・42a)にフィルタ本体部10が押圧されるので雌型接続部11の軸方向の位置が定まる。これを利用して、本実施形態では、雌型接続部11と仮嵌め状態となる所定位置へ雄型ノズル部20を移動させる第一のノズル動作を行い、前記第一のノズル動作の後で前記雌型ノズル部を前記雄型接続部に向けてスプリングを介して所定圧力で押し付ける第二のノズル動作とを行うので、フィルタ本体部10の軸方向寸法が変わってもノズル部20・21と接続部11・12とを適切に嵌合させることが可能となる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
例えば、本実施形態では、凹部41u・42uは、両爪状部位41c・42cに形成されているが、両爪状部位41c・42cのうち少なくとも一方の爪状部位に形成されていればよい。また、本実施形態では、溶出試験のために、一つのホルダプレート48に対して六つのホルダ部40を取り付けているが、他の用途に用いる場合には、取り付けるホルダ部40の数を変更してもよい。
【0054】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…フィルタ
10…フィルタ本体部
10a…軸方向一端面
10b…軸方向他端面
11…雌型接続部
12…雄型接続部
20…雄型ノズル部
21…雌型ノズル部
3…ノズル移動機構
33…スプリング
4…移送機構
40…ホルダ部
41c・42c…爪状部位
41u・42u…凹部
43a…延在部位
43p…切欠部
48…ホルダプレート
4X…狭持部
4Y(41a・42a)…姿勢規定面
4Z…付勢部
X…軸方向
st…セット位置
es…退避位置
Ar…所定範囲
FD…装着方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略柱状をなすフィルタ本体部の軸方向一端面から軸方向に沿って突出する雌型接続部と、前記フィルタ本体部の軸方向他端面から軸方向に沿って突出する雄型接続部とを備えたフィルタに対し、これら接続部を介して液体を通過させて濾過する濾過装置であって、
前記フィルタの雌型接続部及び雄型接続部にそれぞれ嵌合可能な形状をなし、前記フィルタに対し液体を出し入れするための雄型ノズル部及び雌型ノズル部と、
所定のセット位置にある前記フィルタの各接続部に対して接続相手となるノズル部を進退移動させるノズル移動機構と、
前記フィルタを保持するためのホルダ部を有し、前記ホルダ部で保持したフィルタを前記セット位置又は前記セット位置から退避した退避位置に移送する移送機構とを具備してなり、
前記ホルダ部は、一対の爪状部位を有し少なくともいずれかの爪状部位に前記雌型接続部の周側面に嵌り合う凹部が形成された狭持部と、前記狭持部に設定された姿勢規定面に対し前記フィルタ本体部の軸方向一端面を押し当てる方向に前記フィルタ本体部を部材の弾性反発力を利用して付勢する付勢部とを有しており、
前記付勢部は、前記フィルタ本体部の軸方向他端面のうち前記雄型接続部の周囲の所定範囲を避けた部位を付勢することを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記狭持部を構成する爪状部位は、その先端側から基端側に向かう装着方向に沿って前記フィルタを移動させることで前記雌型接続部と嵌合するように、開き方向が設定されており、
前記付勢部は、前記狭持部の先端よりも前記装着方向の反対側に延在しており、その延在部位には、前記雄型接続部の通過を許容する寸法に設定される一方で前記雄型接続部よりも外径の大きな前記雌型接続部の通過を許容しない寸法に設定された切欠部が形成されている請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記移送機構は、前記フィルタを保持する前記ホルダ部を回転により姿勢変更させることで、前記セット位置又は前記退避位置に前記フィルタを移送するように構成されている請求項1又は2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記雄型ノズル部及び前記雌型ノズル部で構成される組を複数組配列するとともに、複数組のノズル部の配置に対応して前記ホルダ部を複数配列したホルダプレートを設け、このホルダプレートを回転により姿勢変更させることで、前記セット位置又は前記退避位置に前記フィルタを移送するように構成されている請求項1〜3のいずれかに記載の濾過装置。
【請求項5】
前記雌型接続部と仮嵌め状態となる所定位置へ前記雄型ノズル部を移動させる第一のノズル動作を行い、前記第一のノズル動作の後で前記雌型ノズル部を前記雄型接続部に向けてスプリングを介して所定圧力で押し付ける第二のノズル動作とを行う請求項1〜4のいずれかに記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39548(P2013−39548A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179709(P2011−179709)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(592253390)富山産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】