灌流可能な微小血管システムを作製するための方法
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワーク(222)を作製するための方法。マトリックス(1054)からマンドレル(916)を引き出して、マトリックスからチャネルを形成する(1010)。細胞(1)をチャネルに注入する(1014)。マトリックス(1054)をインキュベートして、細胞(1)をチャネル内部に付着させる(1016)。チャネルを灌流して(1020)未付着の細胞を取り除き、親血管を作り出し(1022)、ここで親血管(1102)はマトリックス(1054)において細胞(1)で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む。周囲にあるマトリックスゲル(1054)中に芽(1106)を作り出すように親血管(1102)を誘導して、その結果、微小血管ネットワーク(222)を形成する。微小血管ネットワーク(222)は、親血管(1102)を通る管腔灌流にさらされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援研究に関する陳述
本発明は、NIH国立心臓、肺および血液研究所により与えられた認可番号1R21 HL081152−01の下で政府支援を得て行われた。政府は本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、「灌流可能な微小血管システムを作製するための方法」という表題の、2006年3月24日に出願されたNeumannの同時係属米国出願第11388920号の優先権を主張し、その一部継続出願である。Neumannの米国出願第11388920号は参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本発明は、生理学的および病理学的血管増殖ならびに血管新生因子または血管新生抑制因子に応答した血管増殖の研究のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血管増殖の正常なプロセス(たとえば、月経周期、胎盤形成、肥満症における変化、創傷修復、炎症)の間で、新たな血管の形成は調節されており最終的に停止する。重大なことに、血管増殖の調節解除は病態の決定的要素である。たとえば、腫瘍増殖、糖尿病性網膜症、関節炎、および乾癬は、病的状態の直接の一因となる血管の過剰増殖を伴う。これとは対照的に、高齢者に特徴的な血管増殖の機能障害は、創傷治療および外傷または疾患により虚血性になった組織の血行再建を損なう。したがって、新たな血管の構築を指示する機序および血管増殖を開始および停止するプロセスを理解することは、疾患における血管新生を制御する戦略の開発に重要である。
【0005】
新たな血管の増殖(血管新生)中、毛細管および後毛細管細静脈、すなわち血管系の最小枝の管腔の内側を覆う内皮細胞から芽が生じる。血管新生は複雑な多段階プロセスである。血管新生についての発表された研究は数が何千にも達するが、血管新生増殖および形態形成を媒介し調節する細胞機構についての理解は不十分である。
【0006】
血管新生出芽の詳細は、大半の組織が不透明であるために、インビボにおける「リアルタイム」での観察は困難である。組織切片は3Dでの再構築が困難であり、血管増殖の動的性質を伝えない。さらに、血管新生芽の先端付近の領域、すなわち、血管湿潤および形態形成の制御のきわめて重要な領域は組織切片で見つかることはめったにない。従来の組織学的検査の限界を克服するために、インビトロおよびインビボにおける種々の血管新生の「モデル」が開発されてきた。
【0007】
インビボでの血管新生モデル
生体組織の不透明性を回避するために、研究者らは両生類幼虫の天然に透明な尾部を含む生きた動物の「窓」(ClarkとClark、1939)、あるいはウサギの耳(ClarkとClark、1939)、マウスの皮膚(Algire、Chalkleyら、1945)およびハムスターの頬袋(GreenblattとShubi、1968)に植え込まれた、またはウサギの角膜ポケット(Gimbrone、Cotranら、1974)もしくはニワトリ絨毛尿膜(Ausprunk、Knightonら、1974)から開発された特殊な観察室を通じて血管新生を観察してきた。これらの初期の大部分が記述的な研究から、腫瘍誘導血管走化性の中核的パラダイムの確証および血管増殖を促進する拡散性腫瘍由来分子の対応する発見が生まれた。インビボでの血管新生の新しいアッセイでは、げっ歯類の皮下に植え込まれたゲル状基底膜タンパク質の重合体スポンジまたはプラグへの血管内殖が測定される(Passaniti、Taylorら、1992; Andrade、Machadoら、1997; Akhtar、Dickersonら、2002; Koike、Vernonら、2003)。そのすべての優雅さの割に、インビボでのアプローチは、(1)動物による血管新生応答の種内変動;(2)ある種から別の種への結果の移行の欠如;(3)動物の購入および維持の高コスト;(4)研究目的のための動物使用に対する国民の不支持;および(5)動物手術ならびに結果の視覚化および評価において直面する複雑さによって困難になる。
【0008】
インビトロでの血管新生の二次元(2D)モデル
血管新生の分子力学を理解することを目指して、大血管から単離した内皮細胞が、血管の内膜をシミュレートするコンフルエントな舗道様単層を形成するまで平皿で培養された(Jaffe、Nachmanら、1973; Gimbrone 1976)。大血管中の内皮障害に対する増殖応答のモデルとしては有用であるが(Gimbrone、Cotranら、1974; Fishman、Ryanら、1975; MadriとStenn 1982; MadriとPratt 1986; Jozaki,Maruchaら、1990; Rosen、Meromskyら、1990)、硬い基層上の内皮細胞の単層培養物は、血管新生のシミュレーションで毛細血管様の管に典型的に組織化されることはない。しかし、1980年、毛細血管内皮細胞の長期培養の成功に続いて(Folkman、Haudenschildら、1979)、ウシまたはヒト毛細血管内皮細胞の20〜40日培養物がコンフルエント細胞単層上に2D細胞ネットワークを発生させたことが報告され、これは「インビトロ血管新生」と呼ばれるプロセスである(FolkmanとHaudenschild 1980)。ネットワークの内皮細胞は、「管腔」が、その上に細胞が組織化される「マンドレル」の内因的に合成されるネットワークであると解釈される原線維/アモルファス物質で充填された「管」のように見えた。その後の研究により、大血管由来の内皮細胞による(Maciag、Kadishら、1982; Madri 1982; Fader、Marasaら、1983)および基底膜タンパク質の展性水和ゲル(たとえば、Matrigel(登録商標)ゲル)上に播種された内皮細胞による(Kubota、Kleinmanら、1988)類似の2Dネットワーク形成が報告された。
【0009】
血管発生の2Dモデルは今日依然として使用されている(Matrigel(登録商標)をベースとするアッセイ(Kubota、Kleinmanら、1988)が市販されている)が、そのようなモデルには真の血管新生をよく表している以下の5つの特徴を欠いている。すなわち、
1.浸潤:2Dモデルの内皮細胞は細胞外マトリックス上にネットワークを形成し、細胞外マトリックスに潜り込む傾向をほとんど示さない(Vernon、Angelloら、1992; Vernon、Laraら、1995)。
2.方向性:2Dモデルでは、内皮細胞のネットワークは、予め位置決めした細胞のフィールド全体でほぼ同時にインビトロで形成されるが、インビボでの血管新生は、複数レベルの枝分かれにより分岐するフィラメント状の芽による細胞外マトリックスのベクトル浸潤を伴う。
3.正しい極性:2Dモデルは、毛細管に著しく類似する単細胞管を作る(Maciag、Kadishら、1982; Feder、Marasaら、1983; SageとVernon 1994)が、その極性は「裏返し」になっている、すなわち、2Dモデルは基底層物質をその管腔表面に沈着させ、その血栓形成表面を周囲の培地に外側に向けており(Maciag、Kadishら、1982; Feder、Marasaら、1983)、これはインビボでの状況とは正反対である。
4.管腔形成:2Dモデルが開存性管腔をもつ内皮細胞(EC)管を生み出している証拠は弱い。典型的に、内皮細胞管は(外因性であれ細胞により合成されようと)細胞外マトリックスで充填されている「管腔」空間を有する(Maciag、Kadishら、1982; Madri 1982; Feder、Marasaら、1983; SageとVernon 1994; Vernon、Laraら、1995)。開存性管腔は、それが存在するところでは、通常、内皮細胞細胞質の厚い壁に隣接する細隙状のまたは狭い円筒空間のように見え、インビボでの毛細管を典型的に表す膨張薄壁内皮細胞管とは全く異なっている。
5.細胞特異性:2Dモデルでの細胞ネットワークは、非EC細胞型により実現されることがある機械的プロセスにより生み出される(Vernon、Angelloら、1992; Vernon、Laraら、1995)。実際、数学モデリングによれば、張力を展性のある2D細胞外マトリックス(内因的に合成されるものでも、供給される(たとえば、Matrigel(登録商標)ゲル)ものでも)に適用することができるどんな接着細胞型も最適条件下でネットワークを生み出すことができることが明らかにされている(Manoussaki、Lubkinら、1996)、
である。
【0010】
インビトロでの血管新生の三次元(3D)モデル
インビボでの血管新生は3D細胞外マトリックス内で起こると認識されているために、出芽がインビトロでの細胞外マトリックスの3Dゲル内で誘導される種々のモデルが生まれてきた。初期の3Dモデルでは、コラーゲンゲル内に分散された内皮細胞(Montesano、Orciら、1983)は索および管のネットワークを形成した(ElsdaleとBard 1972)。その内皮細胞管は正しい極性を示したが、浸潤および方向性という特徴が欠けていた(内皮細胞は細胞外マトリックス中に予め埋め込まれ、均一に分散されていた)。にもかかわらず、このアプローチは、管腔形成について(DavisとCamarillo 1996)および増殖因子に対する内皮細胞の応答について(Madri、Prattら、1988; Merwin、Andersonら、1990; KuzuyaとKinsella 1994; Marx、Perlmutterら、1994; DavisとCamarillo 1996)の研究では有用であることが判明していた。
【0011】
別のアプローチでは、3D凝固血漿中に埋め込まれた1mm切片(環)のラット大動脈は枝分かれした吻合する管を生み出した(Nicosia、Tchaoら、1982)。大動脈環からの芽は、極性に加えて、血管新生様の浸潤および方向性を示した。ラット由来の大動脈環またはマウス由来の微小血管セグメントを利用する外殖片モデルを使用して、血管新生に対する腫瘍、増殖因子、種々の細胞外マトリックス支持体、および老化条件の影響が研究されてきた(Nicosia、Tchaoら、1983; Mori、Sadahiraら、1988; NicosiaとOttinetti 1990; Nicosia、Bonannoら1992; VillaschiとNicosia 1993; Nicosia、Bonannoら、1994; Nicosia、Nicosiaら、1994; NicosiaとTuszynski 1994; Hoying、Boswellら、1996; Arthur、Vernonら、1998)。
【0012】
精製された内皮細胞(単層または凝集体として)を誘導して、基礎をなすまたは周囲にある3D細胞外マトリックスゲル中に観血的に出芽させる種々のモデルが存在する(MontesanoとOrci 1985; Pepper、Montesanoら、1991; Montesano、Pepperら、1993; NehlsとDrenckhahn 1995; NehlsとHerrmann 1996; Vernon とSage 1999; VernonとGooden 2002)。これらのモデルそれぞれに、出芽形成の視覚化の難しさ、制限された出芽、薄片化のための必要条件、またはある種の内皮細胞に関する有効性の欠如を含む特定の限界がある。
【0013】
WolverineとGulecは、腫瘍組織の断片をマトリックスに埋め込む3D血管新生システムを開示している(米国特許出願公開2002/0150879A1号)。微小血管の成長を特徴づけして、組織の血管新生能をアッセイすることができる。しかし、このアプローチでは、微小血管の管腔灌流が得られない。
【0014】
Neumann(本特許の発明者)らは、2003年、人口組織に包含することができる灌流微小血管をインビトロで作製する可能性を開示している。Neumannらは、2003年、微小血管を作製するため、収縮管により保持されたマンドレルとして127マイクロメートルナイロン釣り糸を使用することを教唆している。この血管は、寒天に埋め込まれたラット大動脈平滑筋細胞から作製された。これらの微小血管は、予備的な性質のもので、ヒト血管移植片を作製するのには適していなかった。
【0015】
インビトロでの血管増殖の二次元モデルは、前で収載した血管新生をよく表す特徴を確立していないが、既存の3Dモデルはその特徴の一部または大半を再現している。重要なことに、現在利用できる3Dモデルのどれも、加圧流動循環液を含有する親血管を再構築しない。したがって、既存のインビトロ3Dモデルではどれを使用しても、血管増殖および形態形成に対する管腔圧力および流動の寄与についての研究は可能にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国出願第11388920号
【特許文献2】米国特許出願公開2002/0150879A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワークを作製するための方法が開示される。マトリックスからマンドレルを引き出し、マトリックスからチャネルを形成する。内壁を有するチャネル中に細胞を注入する。マトリックスをインキュベートして、細胞を内壁に付着させる。チャネルを灌流して未付着の細胞を取り除き、親血管を作り出し、ここで親血管はマトリックスにおいて細胞で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む。周囲にあるマトリックスゲル中に芽を作り出すように親血管を誘導して、その結果、微小血管ネットワークを形成する。微小血管ネットワークを、親血管を通る管腔灌流にさらす。
【0018】
本開示は、3Dの細胞外マトリックス(ECM)中で浸潤性管状微小血管芽を作製するための証明された方法と管腔流動の供給源となる組織工学による親血管の製作のための新規の方法論を組み合わせることにより、既存の血管新生モデルの限界を克服する方法およびシステムを提供する。灌流液を介して血管新生調節性化合物を、特定の標的受容体が存在することが分かっている内皮細胞の管腔表面に投与することができる。栄養液の管腔流動の存在により、インビトロでの毛細管の生存時間がかなり増加される。開示された血管新生システムを使用して、低酸素/高酸素、特定の可溶性生理活性化合物の試験、遺伝子改変細胞の使用、およびウイルストランスフェクションを介した遺伝子送達を含む種々の実験パラメータを評価することができる。そのシステムであれば、創傷修復、老化、癌、および粥状動脈硬化に関連して血管新生の研究が可能になる。重要なことに、本発明の教示に従ったモデルを適用すれば、生物工学により作製された人工組織に組み込むことができる完全に機能する血管系を提供できる可能性がある。
【0019】
本開示は、微小血管を作製する、内皮細胞から微小血管を作製するおよびさらに大きな血管(たとえば、冠状動脈の大きさを有する)を作製するための多岐管設計を含むこれまでにない新規のアプローチも提供する。たとえば、微小血管ネットワークの作製のための方法を含むこれらのおよび他の重要な新技術は、後述する明細書および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】A、B、Cは親血管作製の例を図式的に示す図である。
【図2】A、B、C、Dは既知の熱収縮工程の例を図式的に示す図である。
【図3A】取付け培養/灌流装置の既知の設計を図式的に示す図である。
【図3B】取付け培養/灌流装置の製造方法において使用する設計を図式的に示す図である。
【図4】A、Bは培養/灌流装置のための多岐管の作製を図式的に示す図である。
【図5】A、B、Cは、培養/灌流装置を微細加工するための別の設計を図式的に示す図である。
【図6】細胞播種法を図式的に示す図である。
【図7】2つのバイオ人工親血管間の毛細血管網の概略図である。
【図8a】平滑筋細胞の播種後の複数のマンドレルの例のインビトロ画像である。
【図8b】灌流筋板の例を示す図である。
【図9】CPDの別の実施形態を図式的に示す図である。
【図10】周囲にあるマトリックスへ芽を増殖させている単一親血管を示す図である。
【図11】芽のネットワークを通して第2の親血管に繋がれた1つの親血管を示す図である。
【図12】細胞をコラーゲンマトリックス中のチャネルに播種することにより親細胞を作製するための別の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に提示する例は本発明の理解を助長するためのものである。例は説明的なものであり、本発明を例となる実施形態に限定するものではない。本発明の方法は、生理学的および病理学的血管増殖ならびに血管新生または血管新生抑制因子に応答した血管増殖の研究に有用である。他の有用な適用は、癌組織の血管新生能および抗血管新生薬への応答を評価する方法に対するものである。さらに、種々の創傷治癒装置を構築するために、および組織工学による構築物の血管新生のために本発明の方法を使用してもよい。
【0022】
一例では、灌流可能な三次元微小血管ネットワークの作製のための方法および装置が開示される。本明細書で使用するように、「EC」とは内皮細胞のことであり、「SMC」とは平滑筋細胞のことであり、「CAS」とは冠状動脈代替物のことである。
【0023】
一般に、微小血管ネットワークの培養と灌流のための装置は、中心に1つまたは複数のマンドレルを保持するチャンバーからなる(図1にもっともよく示される)。チャンバーは、どんな生体適合性材料からでも、いくつかの技術によって、たとえば、レーザー加工フレームをサンドイッチすることにより作製することができる。マンドレルは、それが退縮可能なようにチャンバー内で構築される。これは、たとえば、熱収縮によるように、マンドレルの末端を管に合わせることにより実現することができる(図2に明示する)。マンドレルの径は目的の血管内径に依存する。配置は、2Dまたは3Dにおける単一血管、2つの血管、または全列の血管までを収容するように変更することができる。マンドレルは、高分子繊維、ガラス繊維、ワイヤーなどの種々の材料のものでよい。
【0024】
細胞をマンドレルの上に播種し、細胞を刺激してマンドレルの周囲に増殖させ、細胞が血管壁を形成し終わるとマンドレルを引き抜くことにより微小血管は作製される。次に、血管をマトリックス内に埋め込む。培養条件、マトリックスの組成物および血管新生刺激(たとえば、増殖因子)の存在に応じて、親血管は周囲にあるマトリックスに出芽する。芽は互いに吻合し、このようにして毛細血管網を形成する。マンドレルを取り外したのち、装置を灌流システムに繋ぎ、血管を管腔液体流動にさらす。
【0025】
ここで図1A、図1Bおよび図1Cに言及すると、親血管作製の例となる概略図が示されている。図1Aは、装置本体3中の収縮管4により保持されたマンドレル2上に播種された、増殖培養液100中の内皮細胞1を示している。図1Bは、細胞1が増殖し細胞スリーブ102の形に環状層を形成し終わったことを示している。図1Cは、増殖培養液100で灌流されている細胞外マトリックス(ECM)ゲル110中のマンドレル2の抜き出し後の細胞スリーブを示している。
【0026】
本明細書に開示される方法は、組織工学的適用および研究モデルのための灌流可能なバイオ人工血管構造の工学的設計を含む。開示された方法の一般原則は、薄肉管または他の付属品にぴったり合わせた取り外し可能なマンドレル周囲の層での細胞の培養を含む。細胞層が目的の壁厚に到達した後は、マンドレルを取り外し、これにより作製されたバイオ人工血管(BAV)は、灌流システムを用いて培養液、血液、血液代替物、または他の液体で灌流してもよい。開示された方法により、大量生産されたまたはオーダーメイドされた血管、インビトロで灌流される血管新生モデル、創傷治癒装置、組織成分、全組織および器官のほかにも研究モデルの作製が可能になる。
【0027】
培養/灌流装置の製造
ここで図2A、図2B、図2Cおよび図2Dに言及すると、既知の熱収縮工程の例となる概略図が示されている。図2Aに具体的に示されるように、それぞれの培養/灌流装置(CPD)は、支持フレーム12により保持された1つまたは複数のマンドレル2を含んでいてもよい。目的の血管内径の径のマンドレル2が、その両末端を医療グレード収縮管セグメント4にぴったり入れて収まっている。マンドレル2は、模倣される血管の大きさにより、数マイクロメートルから数ミリメートルまでの径を有する生体適合性繊維(たとえば、高分子、ガラス、ワイヤーまたは同等物)を含んでいてもよい。一例では、光ファイバーを含む微小毛細血管をマンドレルとして用いた。
【0028】
図2Bのさらに詳細な図に示されるように、それぞれの収縮管セグメント4の中央部分14は、マンドレル2の1つの周囲で熱収縮される。続いて、図2Cに具体的に示されるように、マンドレル2が退縮され、管が切断される。図2Dは、マンドレルの両末端が、新たに切断され離された収縮管セグメント4により封入されるように、マンドレルの位置を変えた後の状態を示している。フレーム12は種々の材料および技術を使用して作製してもよい。配置は、単一バイオ人工血管またはバイオ人工血管の列のいずれでも収容するよう変更してもよい。同様に、数面のマンドレル列を層状に重ねることにより、肉厚の灌流可能な組織を血管ネットワークで作製してもよい。
【0029】
灌流チャンバーの機械加工
ここで図3Aに言及すると、いくつかのマンドレル/収縮管集合体11の灌流のための既知の装置が示されている。フレーム20は、ポリカーボネートまたは同等の材料を都合よく圧延してもよい。分配チャンバー30が設計図に含まれてもよく、これにより多くのバイオ人工血管の同時灌流が可能になる。マンドレル2を含む一組の糸の末端はシリコン管23に集められる。
【0030】
マイラーフレームのレーザー切断
ここで図3Bに言及すると、取付け培養/灌流装置の製造法で使用される新規の設計図が図式的に示されている。単一血管設計、CPD70は、2枚のレーザー切断Mylar(登録商標)フレーム22間に熱収縮管に保持されたマンドレル2を挟むことにより都合よく作製してもよい。下に詳述される通りに構築された円筒状エポキシ樹脂多岐管21は、マンドレル/収縮管集合体11を保持するために都合よく使用してもよい。
【0031】
マンドレル/収縮管集合体は、各マンドレルが各末端の2本の収縮管セグメント4’によりフレームウィンドウ76中に吊るされるように粘着側が互いに押し付けられている、Mylar(登録商標)などのポリエステルフィルムまたは同類のものの2つのフレーム間に挟まれてもよい。少なくとも1本の細い安定化ワイヤー26をフレーム22に含むことにより、ならびに収縮管および少なくとも1本の細い安定化ワイヤー26の周囲に、シリコーン管のモールドを使用して流し込まれる円筒状エポキシ樹脂多岐管内に封入することにより、2本の収縮管セグメント4’は安定化され補強される。2本の収縮管セグメント4’は、最終的にはCPD70の流入ポートおよび流出ポートになる。
【0032】
ここで図4Aおよび図4Bに言及すると、培養灌流装置の多岐管の作製のための方法が図式的に示されている。図4Aは、特に、たとえば、シリコーン管50のスリーブを通して引っ張られる複数の収縮管/マンドレル集合体11を示している。エポキシ接着剤40が注入されてシリコーン管50を詰め、硬化される。
【0033】
図4Bは、特に、エポキシ接着剤40が硬化しシリコーン管50が切り開かれて取り外された後の状態を示している。硬化したエポキシロッド44が残っている。エポキシロッド44は、マンドレルが退縮された後に切断され、切断場所の後には収縮管により作製されたチャネル42が残る。多くの収縮管の末端46がまとめられて多岐管21を形成してもよい。個々のCPDまたはCPDフレーム集合体のスタッキングを使用して3D血管列を作製することができる。
【0034】
別の方法
ここで図5A、図5Bおよび図5Cに言及すると、微細加工された培養/灌流装置の別の設計図が図式的に示されている。図5Aは、特に、穿孔が収縮管の代わりになるスリーブ56を有しているフレーム中の小穿孔54を通じて取り込まれる一組のマンドレル2を示している。図5Bは、特に、フレーム壁52中にはめ込まれた一組のマンドレル2を含む細胞播種前のCPDを示している。
【0035】
図5Cは、特に、微細加工された多岐管64をフレーム52の外側でスリーブ56に取り付けてもよい、血管62がある培養/灌流装置の別の例を示している。血管62は本明細書で示す通りにマンドレル上で増殖され、マンドレルが取り外された後に残る。微小成形などの微細加工法は、そのようなCPDフレーム集合体の大量生産のために使用してもよい。
【0036】
血管作製および灌流
ここで図6に言及すると、細胞播種法が図式的に示されている。細胞播種のためのCPD70を準備するために、CPD70は先ず洗浄され、次に紫外線殺菌される。無菌条件下で、CPDは表面、たとえば、ペトリ皿72の底に固定される。次に、CPDフレーム集合体70の内部ウィンドウ76(図3Bに示されている)をラミニン1などの接着タンパク質を含有する溶液で満たす。1つまたは複数のスペーサー77を必要に応じて使用してもよい。インキュベーション時間の後、接着タンパク質含有溶液を取り除き、次に、培養液中の目的の細胞型(たとえば、平滑筋細胞または内皮細胞)の懸濁液をCPD70のウィンドウ76に移す。
【0037】
細胞播種は、一定量の細胞懸濁液をウィンドウに満たし、CPDフレーム集合体70を逆さまにひっくり返し、このようにして懸滴80を作り出すことにより実施してもよい。約45分のインキュベーション時間中、多数の細胞がCPDフレーム集合体内のマンドレル/収縮管集合体に付着することになる。過剰な細胞は懸滴の先端に沈むことになり、おそらく集めて破棄してもよい。次に、1つまたは複数のCPDフレーム集合体を含有するペトリ皿を立位に戻し、CPDフレーム集合体が溢れるまで培養液で満たし、インキュベートする。一例でのインキュベーション条件は、37℃で5%CO2の環境であった。マンドレル/収縮管集合体に付着した細胞は広がり増殖し、同心円状の単層(たとえば、内皮細胞)または厚さが150μmおよびそれよりも多い多層(たとえば、平滑筋細胞)を形成する。
【0038】
目的の壁形状または厚みで、マンドレルは引き抜かれ、それにより中空の細胞管を作り出す。もっと薄い壁は、マンドレルの引き抜きに先立って細胞スリーブの周囲に、たとえば、アガロース、コラーゲン、基底膜タンパク質のゲルなどのゲルを成形することにより、断裂から保護してもよい。次に、CPDフレーム集合体の多岐管は灌流システムに繋がれ、増殖培養液などの最適な液体で灌流される。
【0039】
別の実施形態では、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)由来の内皮「親」血管の作製のための方法は、以下の工程を含む:
培養装置を先ず洗浄し、次に30分間、両側から紫外線暴露により無菌化する。無菌条件下で、装置を無菌条片でペトリ皿の底に固定する。
次に、装置の内部ウィンドウをラミニン1の接着タンパク質溶液で満たす(フィブロネクチン、フィブリン、またはゼラチンなどの他の接着タンパク質を代わりに使用することができる)。
一晩インキュベーション後、接着タンパク質含有溶液を取り除き、次に培養液中のヒト血管内皮細胞の懸濁液を装置のウィンドウに移す。
次に、ペトリ皿を逆さまにひっくり返し、このようにして装置のウィンドウに細胞培養懸濁液の懸滴を作り出す。細胞培養インキュベーター中(5%CO2、37℃)での45分間のインキュベーション時間後、多数の細胞が装置内のマンドレル/収縮管集合体に付着することになる。
次に、ペトリ皿を立位に戻し、装置が沈むまでヒト血管内皮細胞用の増殖培養液で満たす。
マンドレルに結合していない細胞は浮き上がり、吸引して破棄することができる。
次に、ペトリ皿をインキュベーター中(5%CO2、37℃)に入れる。マンドレルに付着した細胞は広がり増殖し、ヒト血管内皮細胞の同心円状の単層を形成する。
次に、培養液をペトリ皿から取り除く。コラーゲン溶液を培養装置のウィンドウに満たし、固化させ、このようにしてマンドレルを細胞層で埋め込む。
ヒト血管内皮細胞がコラーゲンゲル中に芽を形成することになる。次に、マンドレルをゆっくり引き抜き、後にヒト血管内皮細胞の灌流可能な「親」微小血管が残る。
次に、装置の多岐管は灌流システムに繋がれ、ヒト血管内皮細胞増殖培養液で灌流される。
【0040】
灌流システム
CPDは、灌流システムに線形様式でまたは循環様式のいずれで繋いでもよい。線形配置は、重力フローシステム、または市販のもしくは注文製の注射器ポンプを付けて作製してよい。注射器は灌流培養液で満たし、注射器ポンプに取り付け、ガス気密管を介してCPDの上流末端に繋がれる。CPDは無菌条件下でインキュベーターに保存してもよいし、無菌細胞培養環境をCPD内に確立してもよい。CPDの下流多岐管は、灌流液を回収する末端貯蔵容器に繋がれる。循環システムを、蠕動ポンプを使用することにより作製してもよい。線形システムにも循環システムにもガス交換用の装置を取り付けてよい。ガス濃度、灌流圧、流量、温度、ならびに栄養分および代謝副産物の濃度は、センサーで測定する。集めたデータはフィードバックループに送ることもでき、目的のパラメータの厳格な制御を可能にする。
【0041】
特定の適用
血管新生関連研究のためのモデル
ここで図7に言及すると、図7は、2つのバイオ人工親血管200、202間の毛細血管網の概略図を示している。液体灌流液204は、「静脈」親血管202への流量(f)を減少し、「動脈」親血管200での抵抗(R)を増加することにより毛細管206を通して経路を変更される。したがって、灌流液204は圧力の高い血管から圧力の低い血管へ推進され、動脈末端から毛細血管床の静脈末端への自然な血流をシミュレートする。
【0042】
血管新生研究のモデル開発、必要に応じて、創傷修復、老化、および癌、糖尿病、関節炎および乾癬の疾患における医薬品検査および研究のためにもマンドレル法を使用してよい。内皮細胞のみを、または内皮細胞、平滑筋細胞、および周皮細胞の組合せを使用して、親バイオ人工微小血管(BMV)をミクロン径マンドレルの周囲で培養し、細胞外マトリックスの支持性ゲルに埋め込むことができる。次に、マンドレルを抜き出し、細胞外マトリックスゲル210内に親内皮細胞管を後に残すことになる。引き抜きは手動で、または自動装置を使用して、および極端に遅くから極端に速くまで変化する速度で実施してもよい。他のバリエーションには、凍結状態でのバイオ人工微小血管からのマンドレルの引き抜き、温度応答性ポリマーでのマンドレルのコーティング、またはマンドレルのどちらかの末端を引っ張って、それにより断裂までマンドレルを細くすることが含まれてもよい。
【0043】
周囲にあるゲル210への親血管の出芽は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびホルボール12−ミリステート−13−アセテート(PMA)などの化合物により誘導され、これらの化合物はゲルおよび/または灌流液(たとえば、増殖培養液)に添加される。
【0044】
複合毛細血管網222は、2つの隣接する親バイオ人工微小血管間に圧力差を確立し、それにより動脈および静脈血流を模倣することにより作製してもよい。次に、液体流は、「動脈」バイオ人工微小血管から相互接続された芽を通って「静脈」バイオ人工微小血管へと再誘導される。
【0045】
灌流液は、血清および血管新生または血管新生抑制物質がない酸素添加細胞増殖培養液を有利に含んでいてもよい。別の例では、灌流液は、血清および/または血管新生影響化合物を補充した酸素添加細胞増殖培養液であってもよい。さらに別の例となる実施形態では、灌流液は酸素添加生理食塩水であってもよい。別の例では、灌流液は、酸素添加血液、血液成分、または代用血液を含んでいてもよい。さらに別の例となる実施形態では、灌流液は酸素添加でなくてもよく、システムの酸素添加は、マトリックスを介する拡散により実現される。さらに別の例となる実施形態では、血管新生または血管新生抑制化合物を灌流液に添加してもよい。
【0046】
一例となる実施形態では、血管新生および血管新生抑制化合物などが、マトリックスに添加される。さらに別の例となる実施形態では、細胞は、灌流液へまたはマトリックスへ産物を放出する遺伝子改変細胞を含む。さらに別の例となる実施形態では、マトリックスは、フィブリン、コラーゲン、基底膜マトリックスおよびゼラチンを有利に含んでいてもよい。有用なマトリックスの一種は、Matrigel(登録商標)ゲルである。別の例となる実施形態では、マトリックスは、寒天、アガロース、アルギン酸、またはシリカゲルを含んでいてもよい。
【0047】
一例となる実施形態では、細胞は、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択してもよい。同様に、マトリックスには、マトリックス全体に分散されても、または局所的に集中していても、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択される細胞が存在していてよい。いくつかの場合、健常組織または癌組織などの疾患組織の断片がマトリックスに埋め込まれている。
【0048】
親血管からの出芽は、切片材料においてまたは全載調製物において、インビトロで顕微鏡的に調べてもよい。バイオ人工微小血管に蛍光溶液(たとえば、蛍光デキストラン)を灌流すれば、芽径、芽管腔の開存性、および吻合の程度の分析に役立つ。芽形態の3D再構築は、共焦点顕微鏡により撮られる落射蛍光像のZ軸スタッキングにより実施してもよい。芽220による細胞周囲基底膜マトリックスの合成は、抗ラミニンおよびIV型コラーゲン一次抗体ならびに蛍光またはペルオキシダーゼタグ付き二次抗体で免疫標識することにより、全載においておよび組織(パラフィン)切片においてモニターしてもよい。
【0049】
複合EC/SMC芽では、2つの細胞型間の空間関係は、ヒトCD31(クローンP2B1、Chemicon)に対するFITCモノクロナール抗体(MAb)またはFITC−UEA1アグルチニン、すなわちヒト内皮細胞に特異的マーカーで内皮細胞を標識することにより調べてもよい。平滑筋細胞に、ヒトアルファSMアクチンに対するMAbを、続いてRITC抗マウス二次抗体を標識してもよい。内皮細胞と平滑筋細胞間の管腔構造および相互作用の詳細は、上述の試薬で標識したパラフィン切片から入手してもよい。
【0050】
記載する作製法は、高再現性での血管新生装置の商業的大量生産の基礎である。適切に保存すれば(たとえば、クリオ保存)、増殖前親血管または全毛細血管網は、すぐに使える形で研究者が入手できるようになると考えられる。
【0051】
冠状動脈代用物
冠状動脈代用物の作製のために、内径がほぼ4mmから5.5mmの血管管腔を有する冠状動脈代用物を生じるように外径が選択されたマンドレル。代わりに、マンドレルは、灌流され、冠状動脈代用物の増殖期間中に栄養素とガスの交換を可能にするくらいの透過性のある中空管でもよい。冠状動脈代用物は、平滑筋細胞からのみ増殖されて、このようにして血管中の中間層に類似する構造物を提供するか、または、2つもしくは3つの細胞型から複合構造物として作製されてもよい。
【0052】
平滑筋細胞はマンドレル上に播種されて、300〜500μmの環状層にまで増殖される。冠状動脈代用物の作製を迅速化するため、細胞を初期増殖期中に高度に増殖性の表現型にして、次に血管壁が目的の厚さに達した後は分化状態に転換するようにSMC表現型を操作してもよい。表現型転換のために、平滑筋細胞は劇的にその増殖速度を落とし、血管の機械的性質に影響を与える、コラーゲンおよびエラスチンなどの細胞外マトリックスタンパク質の作製を誘導することになる。表現型転換は、ある種の遺伝子の発現を制御することにより実現してもよい。たとえば、テトラサイクリン応答性プロモーターの助けを借りて、遺伝子発現(たとえば、エラスチンの)は、血管壁が目的の厚さに達してしまうまで抑制されてもよい。次に、増殖培養液からテトラサイクリンを除けば、挿入遺伝子が活性化されることになる。たとえば、エラスチンが過剰発現されたら、それ以上の細胞増殖は阻害され、血管壁内で構造的およびシグナル伝達機能が発揮されることになる。機械的条件付け、たとえば、脈動流を使用して、冠状動脈代用物を強化し、細胞の生理的整列化を誘導してもよい。他の外部のまたは内部の「表現型転換」も同様に潜在的に使用してよい。
【0053】
内皮細胞は、マンドレルを取り除いた直後に、または平滑筋細胞の条件付けおよび再構築後に、SMCスリーブ内に播種してもよい。内皮細胞播種は、内皮細胞懸濁液をSMCスリーブに注入することにより実施してもよい。次に、内皮細胞を適切に付着させる期間流動を停止させる。必要であれば、内皮細胞の均等な分配を促進するために血管を回転させる、または繰り返し上下をひっくり返してもよい。
【0054】
代わりに、内皮細胞を最初にマンドレル上に播種してもよい。その場合、平滑筋細胞は、コンフルエント内皮細胞層上に播種される。この方法では、酸素と栄養素がより豊富にある冠状動脈代用物の周辺に向かって内皮細胞が遊走するのを防ぐことが必要になる。
【0055】
必要に応じて、線維芽細胞をSMCスリーブの外側に播種すれば、外膜層を作製することができる。
【0056】
冠状動脈代用物を作製するための細胞は、自己、非相同、または異種材料由来でもよい。細胞は、幹細胞、前駆細胞、または分化細胞でもよい。細胞は、特定の表現型を実現するために、または宿主生物の免疫応答を弱めるために遺伝子改変されてもよい。
【0057】
本明細書に開示するCPD法は、大量生産のすぐに使える血管代用物、またはレシピエントのために注文設計される血管代用物に対する選択肢を提供する。本明細書に開示するCPD法は、冠状動脈代用物の組織工学のためのモデル開発に、アテローム発生、動脈形成の研究に、異なる血管細胞型の互いの相互関係および細胞外マトリックス成分との相互関係の研究に、一酸化窒素の効果に関する研究に、ならびに種々の医薬品の研究にも適している。
【0058】
異なる大きさまたは種類の血管およびリンパ管
本明細書に開示するCPD法を使用して、冠状動脈以外の径と種類の血管を作製してもよい。マンドレルの径を変えれば、血管の径も変わることになる。血管の種類(動脈、静脈、リンパ管)は、細胞の表現型、および/または細胞の増殖が阻害される時点によって変えてもよい。たとえば、静脈はわずかな平滑筋細胞層のみを含有する。
【0059】
他の管状様組織
本明細書に開示するCPD法は、胆管、涙管、耳管、卵管、輸精管、尿管、尿道、肺気道、等などの他の管状組織の工学のために使用してもよい。本明細書に開示するCPD法は、神経増殖および修復の誘導のための、グリア細胞を含む異なる細胞型からの神経導管の作製にも有用であることが判明する可能性がある。
【0060】
工学的に操作された組織のためのBAVシステム
本明細書に開示するCPD法は、取り外し可能なマンドレルの列をスカフォールドとして使用することにより、組織および器官の工学のために使用してもよい。目的の組織/器官(筋肉、肝臓、腎臓、肺、皮膚、等)の細胞は、接着タンパク質被膜マンドレル上に播種される。これらのマンドレルは、固形線維もしくはワイヤーから、または、代わりにセルロースなどの灌流可能な透過性管から作製してもよい。マンドレルは、単一の細胞スリーブを合併させる正確な間隙をおいて互いに分離される。この方法を使用して、シート状またはブロック状の組織を形成してもよい。次に、マンドレルを引き抜いて(または、別々に取り除いて)、バイオ人工組織は、灌流システムを用いて内部で灌流される。
【0061】
創傷治癒装置
製造前バイオ人工血管システムを使用して、糖尿病患者の慢性潰瘍のためなどの創傷治癒に役立ててもよい。バイオ人工毛細血管網を(たとえば、細胞外マトリックスゲルから、血管新生増殖因子で強化された)パッチ状の支持材料に埋め込み、創傷上に置くことができる。酸素添加栄養溶液を自律的に灌流すれば、バイオ人工血管はドーナーの脈管構造および皮膚の出芽を促進すると考えられる。代わりに、そのようなバイオ人工血管パッチを創傷と植皮間に挟み込めば、移植片の内殖を促進することができると考えられる。
【0062】
遺伝子治療装置
バイオ人工血管は、植込み式薬剤送達装置に使用することができると考えられる。細胞は、患者から採取して、インビトロで遺伝子改変すれば、ある種のタンパク質(ホルモン、酵素、等)を産生することができると考えられる。次に、これらの細胞を、上述の方法を使用して、バイオ人工血管または血管網に増殖させてもよい。宿主に再移植すれば、細胞は標的物質を産生し、局所的にまたは全身的にその物質を放出し続ける。
【0063】
人工組織および器官
組織工学による血管網は、上記のように、組織の作製または全臓器の作製のためにも使用してよい。1つのアプローチは、1つまたは複数のインビトロ灌流親血管を作製することである。目的の組織または器官由来の間質細胞を、たとえば、ゲル中の親血管の周囲に播種する。間質細胞は、親血管を介して栄養分と酸素を供給される。間質細胞が増殖すると、栄養分と酸素への要求が増加する。細胞は血管新生因子を放出し、血管を出芽するように刺激する。自然増殖にきわめて類似して、組織が成長するに従って血管系は、同一速度で出芽する。したがって、このシステムは発生生物学の研究のための優れたモデルにもなると考えられる。
【0064】
別のアプローチは、間質細胞の足場として平行配列のマンドレルを利用する。間質細胞が増殖するに従って、細胞層がマンドレル周囲に形成される。最終的に、すべてのマンドレル間の空間は間質細胞で満たされ、シート状の組織ができる。マンドレルを取り除くと、マンドレルにより後に残されるチャネル内を通ってその組織は灌流されてもよい。それらのチャネルは、管腔播種を通じて内皮細胞で被覆することができる。このアプローチは2Dに限定されるものではない。いくつかのシートをスタッキングしてもよいし、3D足場を使用してもよい。本明細書の発明者は、筋肉組織の工学のために2Dアレイも3Dアレイも使用した。
【0065】
さらに別のアプローチでは、組織の層および血管網の層を独立して作製し、その後間欠的にスタッキングすることができると考えられる。これらのアプローチはすべて、1つまたは2つの細胞型で単純なモデルでも、またはいくつかの細胞型で構成されたかなり複雑な構築物でも作製することができる。
【0066】
移植すると、これらの方法で工学的に操作された組織または器官を、直接血流に繋ぐことも、または宿主脈管構造が移植片に成長してしまうまで灌流システムにより灌流させておくこともできると考えられる。
【0067】
灌流組織工学的に操作された筋肉構築物の例
ここで図8aに言及すると、平滑筋細胞を播種した後の複数のマンドレルの例のインビトロ画像が示されている。複数のマンドレルと収縮管ユニットMは、Mylar(登録商標)フレームに挟み込んだ。マンドレルM間の距離はほぼ100μmに調整した。収縮管セグメントの末端は、1つの上流多岐管と1つの下流多岐管に結合させた(示されていない)。Mylarフレームは無菌化し、管腔被膜し、5×106ラット大動脈平滑筋細胞SM(RASMC)/mlの懸濁液を播種した。細胞SMは、個々のマンドレルMそれぞれに付着し、増殖し、このようにして環状層を形成した。10日後、個々の層が合併し終わり、1つの厚いシート状のまたはプレート状の平滑筋細胞を生じた。増殖培養液中にさらに7日間置いた後、培養液にはもう7日間、50U/mlヘパリンを補充した。その後、マンドレルはすべて引き抜き、組織は、10ml/日の速度でヘパリン培養液で灌流した。灌流チャンバーは、ヘパリン培養液で満たした100mmペトリ皿の底に固定したままにした。SMCプレートは11日間灌流した。その時間を過ぎても、チャネルCHは機能的なままであり、依然としてインビトロではっきりと目に見えた(図8bにもっともよく示されている)。
【0068】
ここで図8bに言及すると、灌流筋肉プレートMPの例が示されている。管末端(T)を通って、引き抜かれたマンドレルにより後に残されたチャネル(CH)中へと灌流される液体が示されている。
【0069】
ここで図9に言及すると、CPDの別の実施形態が図式的に示されている。一例では、CPD900は、第1スライドガラス904と第2スライドガラス920間に並置された層902を含む。層902は、チャネル922に繋がれた複数の液体ポートを埋め込むのに適した厚みがある。複数の液体ポートは、細胞懸濁液ポート914、複数の入口ポート912、および複数の出口ポート918を含む。チャネル922により繋がれて液体の通過および分配を可能にするポートは、同じように機能する。ポート912などの複数のポートは、複数のアクセスポイントを提供するように配置されている。他の適用では、液体チャンバーおよびポートがマイクロ流体材料で作製されるマイクロ流体設計を有利に用いてもよい。同様に、この層は、顕微鏡またはマイクロ流体適用において使用するのに適したシリコーンまたは他の材料を含んでいてもよい。コラーゲンチャンバー906は、対になった中空柔軟毛細管916によるアクセスのために有利に位置している。用いる毛細管の数は、CPDの大きさおよび作製されている血管の数が収容する可能性のある1つから2つよりかなり多い数の範囲でよい。複数のポートおよびチャンバーのそれぞれには、注射器ポンプが針を有する注射器に取り付けられている管入口940A、940Bを通って1本または複数の注射器ポンプにより層を通ってアクセスしてもよい。図面を簡略化するために2つの注射器ポンプ管入口940A、940Bのみが示されているが、場合によっては、別々の注射器ポンプ、注射器または同等物をそれぞれのチャンバーおよび/もしくはポート中に材料を注入するまたは抽出するために使用してよいことが理解されるであろう。一実施形態では、注射器ポンプはガス気密注射器に連結される。
【0070】
別の実施形態CPD900の特徴を記載したので、CPDを構築するための1つの方法をここで記載すれば、本発明の理解に役立つであろう。層902にシリコーン層を用いる一例では、穴およびチャネルのパターンを、粘着上層943および粘着下層945で覆われたシリコーン層に打ち込む。次に、中空針をシリコーン中に刺し込み、その後この針を使用して、ポリミド被膜融合シリカ毛細管916をコラーゲンチャンバー906に、および入口ポート912の1つにもガイドする。2本の毛細管は、小口径管910により保持されて、主チャンバーから出口ポート908に通じる。次に、シリコーン層902は、粘着層の助けを借りて2枚のスライドガラス間内に挟み込まれる。その後、CPD900は、使用するまで加圧減菌されて、保存される。血管作製のためにチャンバー906の準備をするためには、コラーゲン溶液を調製し、注射針を通してコラーゲンチャンバー906に直接注入し、インキュベーター内で一晩ゲル化させる。次に、注射針を2つの入口ポートに差し込むことにより、CPD900を注射器ポンプに繋ぐ。
【0071】
注射針は、今度はガス気密管に繋がれ、この気密管はpHを十分に調整した増殖培養液で満たされ、注射器ポンプに取り付けられた2つのガス気密注射器に通じている。2つの出口ポート908A、908Bは、類似の様式の廃棄物貯蔵場所に繋がれる。注射器ポンプは、ここでは灌流ポンプとして機能するが、次に作動させると、それにより入口ポートを満たし、順次、入口ポート、毛細管および出口ポートをプライミングする。空気をすべてシステムから押し出すと、各毛細管はピンセットにつかまれ、コラーゲンチャンバーにまで伸びる末端は、毛細管の末端のみがマトリックスチャンバーまで伸びるまで、コラーゲンゲル中を引き戻される。この手順を使用して、2つの灌流可能なチャネルがコラーゲンゲル内に作製される。コラーゲンチャネル内に細胞を播種するためには、高濃度の内皮細胞懸濁液を、細胞懸濁液用のポートに注入する。次に、注射器ポンプを止め、その後毛細管のもう1つの末端を、細胞を含有する小さな貯蔵場所914Rに引き戻すと、多数の細胞がコラーゲンチャネルに直接流入する。細胞の流速は、廃棄物貯蔵場所の高さにより厳密に制御することができる。次に、細胞をコラーゲンチャネルの壁に付着させるためにCPDを45分間インキュベーターに入れる。CPDは、細胞を最適に分配するように数回ひっくり返すか、または他の方法で操作することができる。最後に、毛細管を細胞貯蔵場所から、入口ポートの一部である貯蔵場所にまで引き出し、注射器ポンプを作動させて目的の灌流速度に設定する。過剰な細胞は洗い流す。この播種法により、増殖のための時間を与えた後、細胞の相同単層をもつ2つの親血管が生じるが、そこで必要な時間は管に注入される細胞数が高濃度であるほど短くなる。マンドレルは、使用されるマンドレルの種類によって、抜き出しおよび/または分解によりマトリックスから取り除いてもよいことに注意されたい。
【0072】
ここで図10に言及すると、周囲にあるマトリックス1054中に芽1052を増殖している単一親血管1050が示されている。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)がコラーゲンチャネル内に播種されると、そのようにして作製された親血管はコラーゲン中に出芽し始める。これらの芽は伸長して分岐し始める。これらの分岐は最終的には、反対の親血管からの分岐と吻合し、このようにして血管網を形成する。
【0073】
ここで図11に言及すると、ネットワークの芽1106を通じて第2の親血管1104に繋がれた第1の親血管1102が示されている。芽1106は管腔を有し、灌流されている。
【0074】
親血管を作製するためのプロトコル
ここで図12に言及すると、コラーゲンマトリックス内のチャネルに播種することにより親細胞を作製するための別の方法が示されている。シリコーン層を使用した別のCPDは記載済みなので、当業者による本開示の理解を促進するために、微小血管システムを作製するための適用の具体例をここで記載することにする。
【0075】
CPDは加圧減菌器で無菌化され、使用するまで無菌環境に保存される。コラーゲン溶液を調製し、氷上で保存する。コラーゲンは小型の注射器に充填される。注射器に30G注射針を取り付け、チャンバーがコラーゲン1002で完全に満たされるまで、コラーゲン溶液をコラーゲンチャンバーに注射針を通して注入する。第2の注射針を、空気吹き出し口としてチャンバーの反対側から注入する。
【0076】
次に、注射針を2つの入口ポート1004に注入することにより、CPDを注射器ポンプに繋ぐ。注射針は、今度はガス気密管に繋がれ、この気密管はpHが十分に調整された増殖培養液で満たされ、注射器ポンプに取り付けられた2つのガス気密注射器に通じている。2つの出口ポートは、類似の様式の廃棄物貯蔵場所(すなわち、出口ポートに注射針が注入され、管が廃棄物貯蔵場所に通じている)1006に繋がれる。
【0077】
注射器ポンプを灌流ポンプとして作動させ、それによって入口ポートを満たし、順次、入口ポート、毛細管、および出口ポート1008をプライミングすることにより、CPDを灌流させる。空気がすべてシステムから押し出されると(たとえば、取り外し可能な空気吹き出し口として働く小径注射針を通して)、次に各毛細管はピンセットにつかまれ、コラーゲンチャンバーにまで伸びる末端は、毛細管の末端のみがチャンバーまで伸びるまで、コラーゲンゲル中を引き戻される。この手順を使用して、2つの灌流可能なチャネルがコラーゲンゲル1010内に作製される。
【0078】
コラーゲンチャネル内に細胞を播種するために、高濃度の内皮細胞懸濁液は細胞懸濁液用のポート1012に注入される。次に、注射器ポンプを止め、その後毛細管のもう一方の末端は、入口ポートから細胞を含有する小さな貯蔵場所に引き戻され、多数の細胞が毛細管を通ってコラーゲンチャネル1014に直接流入する。細胞の流速は、背圧(廃棄物貯蔵場所の高さ)により厳密に制御することができる。次に、毛細管は入口ポートに繋がれている貯蔵場所にさらに引き戻される。
【0079】
次に、細胞をコラーゲンチャネル1016の壁に付着させるためにCPDを45分間インキュベーターに入れる。CPDは、細胞を最適に分配するように数回ひっくり返すか、または他の方法で操作することができる。
【0080】
最後に、注射器ポンプを作動させて目的の灌流速度1020に設定する。過剰な細胞は洗い流す。この播種法により、細胞の相同単層をもつ2つの親血管1022が生じる。上記のように親血管を灌流することにより、1つまたは複数の微小血管ネットワークを作製してもよい。
【0081】
代わりに、親血管を作製するための手順は、図1A〜1Cおよびその他を参照して、コラーゲンマトリックス内にマンドレルを埋め込み、マンドレルを抜き出し、マンドレルにより後の残されるチャネルに細胞を注入し、ほかにも上記のマンドレル上に細胞を播種することも含んでもよい。この2つの方法を組み合わせれば、異なる細胞型の層状化が可能になる。
【0082】
本発明は、特許法に従って、当業者に本発明の新規の原理を適用して、必要とされるような例となり特殊な成分を構築し使用するのに必要な情報を提供するために、本明細書においてかなり詳細に記載されている。しかし、本発明は、明確に異なった設備、および装置および再構成アルゴリズムにより実施してもよいこと、ならびに設備の細部と操作手順の両方に関して、本発明の真の精神と範囲から逸脱することなく種々の改変を実現してもよいことは理解されるべきである。
【0083】
本明細書に引用されたすべての参考文献の完全な開示物は、参照により本明細書に組み込まれているものとする。しかし、他の方法では妥協できない争いが生じた場合は、本明細書が効力をもつものとする。
【技術分野】
【0001】
連邦支援研究に関する陳述
本発明は、NIH国立心臓、肺および血液研究所により与えられた認可番号1R21 HL081152−01の下で政府支援を得て行われた。政府は本発明においてある種の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、「灌流可能な微小血管システムを作製するための方法」という表題の、2006年3月24日に出願されたNeumannの同時係属米国出願第11388920号の優先権を主張し、その一部継続出願である。Neumannの米国出願第11388920号は参照により本明細書に組み込まれている。
【0003】
本発明は、生理学的および病理学的血管増殖ならびに血管新生因子または血管新生抑制因子に応答した血管増殖の研究のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血管増殖の正常なプロセス(たとえば、月経周期、胎盤形成、肥満症における変化、創傷修復、炎症)の間で、新たな血管の形成は調節されており最終的に停止する。重大なことに、血管増殖の調節解除は病態の決定的要素である。たとえば、腫瘍増殖、糖尿病性網膜症、関節炎、および乾癬は、病的状態の直接の一因となる血管の過剰増殖を伴う。これとは対照的に、高齢者に特徴的な血管増殖の機能障害は、創傷治療および外傷または疾患により虚血性になった組織の血行再建を損なう。したがって、新たな血管の構築を指示する機序および血管増殖を開始および停止するプロセスを理解することは、疾患における血管新生を制御する戦略の開発に重要である。
【0005】
新たな血管の増殖(血管新生)中、毛細管および後毛細管細静脈、すなわち血管系の最小枝の管腔の内側を覆う内皮細胞から芽が生じる。血管新生は複雑な多段階プロセスである。血管新生についての発表された研究は数が何千にも達するが、血管新生増殖および形態形成を媒介し調節する細胞機構についての理解は不十分である。
【0006】
血管新生出芽の詳細は、大半の組織が不透明であるために、インビボにおける「リアルタイム」での観察は困難である。組織切片は3Dでの再構築が困難であり、血管増殖の動的性質を伝えない。さらに、血管新生芽の先端付近の領域、すなわち、血管湿潤および形態形成の制御のきわめて重要な領域は組織切片で見つかることはめったにない。従来の組織学的検査の限界を克服するために、インビトロおよびインビボにおける種々の血管新生の「モデル」が開発されてきた。
【0007】
インビボでの血管新生モデル
生体組織の不透明性を回避するために、研究者らは両生類幼虫の天然に透明な尾部を含む生きた動物の「窓」(ClarkとClark、1939)、あるいはウサギの耳(ClarkとClark、1939)、マウスの皮膚(Algire、Chalkleyら、1945)およびハムスターの頬袋(GreenblattとShubi、1968)に植え込まれた、またはウサギの角膜ポケット(Gimbrone、Cotranら、1974)もしくはニワトリ絨毛尿膜(Ausprunk、Knightonら、1974)から開発された特殊な観察室を通じて血管新生を観察してきた。これらの初期の大部分が記述的な研究から、腫瘍誘導血管走化性の中核的パラダイムの確証および血管増殖を促進する拡散性腫瘍由来分子の対応する発見が生まれた。インビボでの血管新生の新しいアッセイでは、げっ歯類の皮下に植え込まれたゲル状基底膜タンパク質の重合体スポンジまたはプラグへの血管内殖が測定される(Passaniti、Taylorら、1992; Andrade、Machadoら、1997; Akhtar、Dickersonら、2002; Koike、Vernonら、2003)。そのすべての優雅さの割に、インビボでのアプローチは、(1)動物による血管新生応答の種内変動;(2)ある種から別の種への結果の移行の欠如;(3)動物の購入および維持の高コスト;(4)研究目的のための動物使用に対する国民の不支持;および(5)動物手術ならびに結果の視覚化および評価において直面する複雑さによって困難になる。
【0008】
インビトロでの血管新生の二次元(2D)モデル
血管新生の分子力学を理解することを目指して、大血管から単離した内皮細胞が、血管の内膜をシミュレートするコンフルエントな舗道様単層を形成するまで平皿で培養された(Jaffe、Nachmanら、1973; Gimbrone 1976)。大血管中の内皮障害に対する増殖応答のモデルとしては有用であるが(Gimbrone、Cotranら、1974; Fishman、Ryanら、1975; MadriとStenn 1982; MadriとPratt 1986; Jozaki,Maruchaら、1990; Rosen、Meromskyら、1990)、硬い基層上の内皮細胞の単層培養物は、血管新生のシミュレーションで毛細血管様の管に典型的に組織化されることはない。しかし、1980年、毛細血管内皮細胞の長期培養の成功に続いて(Folkman、Haudenschildら、1979)、ウシまたはヒト毛細血管内皮細胞の20〜40日培養物がコンフルエント細胞単層上に2D細胞ネットワークを発生させたことが報告され、これは「インビトロ血管新生」と呼ばれるプロセスである(FolkmanとHaudenschild 1980)。ネットワークの内皮細胞は、「管腔」が、その上に細胞が組織化される「マンドレル」の内因的に合成されるネットワークであると解釈される原線維/アモルファス物質で充填された「管」のように見えた。その後の研究により、大血管由来の内皮細胞による(Maciag、Kadishら、1982; Madri 1982; Fader、Marasaら、1983)および基底膜タンパク質の展性水和ゲル(たとえば、Matrigel(登録商標)ゲル)上に播種された内皮細胞による(Kubota、Kleinmanら、1988)類似の2Dネットワーク形成が報告された。
【0009】
血管発生の2Dモデルは今日依然として使用されている(Matrigel(登録商標)をベースとするアッセイ(Kubota、Kleinmanら、1988)が市販されている)が、そのようなモデルには真の血管新生をよく表している以下の5つの特徴を欠いている。すなわち、
1.浸潤:2Dモデルの内皮細胞は細胞外マトリックス上にネットワークを形成し、細胞外マトリックスに潜り込む傾向をほとんど示さない(Vernon、Angelloら、1992; Vernon、Laraら、1995)。
2.方向性:2Dモデルでは、内皮細胞のネットワークは、予め位置決めした細胞のフィールド全体でほぼ同時にインビトロで形成されるが、インビボでの血管新生は、複数レベルの枝分かれにより分岐するフィラメント状の芽による細胞外マトリックスのベクトル浸潤を伴う。
3.正しい極性:2Dモデルは、毛細管に著しく類似する単細胞管を作る(Maciag、Kadishら、1982; Feder、Marasaら、1983; SageとVernon 1994)が、その極性は「裏返し」になっている、すなわち、2Dモデルは基底層物質をその管腔表面に沈着させ、その血栓形成表面を周囲の培地に外側に向けており(Maciag、Kadishら、1982; Feder、Marasaら、1983)、これはインビボでの状況とは正反対である。
4.管腔形成:2Dモデルが開存性管腔をもつ内皮細胞(EC)管を生み出している証拠は弱い。典型的に、内皮細胞管は(外因性であれ細胞により合成されようと)細胞外マトリックスで充填されている「管腔」空間を有する(Maciag、Kadishら、1982; Madri 1982; Feder、Marasaら、1983; SageとVernon 1994; Vernon、Laraら、1995)。開存性管腔は、それが存在するところでは、通常、内皮細胞細胞質の厚い壁に隣接する細隙状のまたは狭い円筒空間のように見え、インビボでの毛細管を典型的に表す膨張薄壁内皮細胞管とは全く異なっている。
5.細胞特異性:2Dモデルでの細胞ネットワークは、非EC細胞型により実現されることがある機械的プロセスにより生み出される(Vernon、Angelloら、1992; Vernon、Laraら、1995)。実際、数学モデリングによれば、張力を展性のある2D細胞外マトリックス(内因的に合成されるものでも、供給される(たとえば、Matrigel(登録商標)ゲル)ものでも)に適用することができるどんな接着細胞型も最適条件下でネットワークを生み出すことができることが明らかにされている(Manoussaki、Lubkinら、1996)、
である。
【0010】
インビトロでの血管新生の三次元(3D)モデル
インビボでの血管新生は3D細胞外マトリックス内で起こると認識されているために、出芽がインビトロでの細胞外マトリックスの3Dゲル内で誘導される種々のモデルが生まれてきた。初期の3Dモデルでは、コラーゲンゲル内に分散された内皮細胞(Montesano、Orciら、1983)は索および管のネットワークを形成した(ElsdaleとBard 1972)。その内皮細胞管は正しい極性を示したが、浸潤および方向性という特徴が欠けていた(内皮細胞は細胞外マトリックス中に予め埋め込まれ、均一に分散されていた)。にもかかわらず、このアプローチは、管腔形成について(DavisとCamarillo 1996)および増殖因子に対する内皮細胞の応答について(Madri、Prattら、1988; Merwin、Andersonら、1990; KuzuyaとKinsella 1994; Marx、Perlmutterら、1994; DavisとCamarillo 1996)の研究では有用であることが判明していた。
【0011】
別のアプローチでは、3D凝固血漿中に埋め込まれた1mm切片(環)のラット大動脈は枝分かれした吻合する管を生み出した(Nicosia、Tchaoら、1982)。大動脈環からの芽は、極性に加えて、血管新生様の浸潤および方向性を示した。ラット由来の大動脈環またはマウス由来の微小血管セグメントを利用する外殖片モデルを使用して、血管新生に対する腫瘍、増殖因子、種々の細胞外マトリックス支持体、および老化条件の影響が研究されてきた(Nicosia、Tchaoら、1983; Mori、Sadahiraら、1988; NicosiaとOttinetti 1990; Nicosia、Bonannoら1992; VillaschiとNicosia 1993; Nicosia、Bonannoら、1994; Nicosia、Nicosiaら、1994; NicosiaとTuszynski 1994; Hoying、Boswellら、1996; Arthur、Vernonら、1998)。
【0012】
精製された内皮細胞(単層または凝集体として)を誘導して、基礎をなすまたは周囲にある3D細胞外マトリックスゲル中に観血的に出芽させる種々のモデルが存在する(MontesanoとOrci 1985; Pepper、Montesanoら、1991; Montesano、Pepperら、1993; NehlsとDrenckhahn 1995; NehlsとHerrmann 1996; Vernon とSage 1999; VernonとGooden 2002)。これらのモデルそれぞれに、出芽形成の視覚化の難しさ、制限された出芽、薄片化のための必要条件、またはある種の内皮細胞に関する有効性の欠如を含む特定の限界がある。
【0013】
WolverineとGulecは、腫瘍組織の断片をマトリックスに埋め込む3D血管新生システムを開示している(米国特許出願公開2002/0150879A1号)。微小血管の成長を特徴づけして、組織の血管新生能をアッセイすることができる。しかし、このアプローチでは、微小血管の管腔灌流が得られない。
【0014】
Neumann(本特許の発明者)らは、2003年、人口組織に包含することができる灌流微小血管をインビトロで作製する可能性を開示している。Neumannらは、2003年、微小血管を作製するため、収縮管により保持されたマンドレルとして127マイクロメートルナイロン釣り糸を使用することを教唆している。この血管は、寒天に埋め込まれたラット大動脈平滑筋細胞から作製された。これらの微小血管は、予備的な性質のもので、ヒト血管移植片を作製するのには適していなかった。
【0015】
インビトロでの血管増殖の二次元モデルは、前で収載した血管新生をよく表す特徴を確立していないが、既存の3Dモデルはその特徴の一部または大半を再現している。重要なことに、現在利用できる3Dモデルのどれも、加圧流動循環液を含有する親血管を再構築しない。したがって、既存のインビトロ3Dモデルではどれを使用しても、血管増殖および形態形成に対する管腔圧力および流動の寄与についての研究は可能にならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国出願第11388920号
【特許文献2】米国特許出願公開2002/0150879A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワークを作製するための方法が開示される。マトリックスからマンドレルを引き出し、マトリックスからチャネルを形成する。内壁を有するチャネル中に細胞を注入する。マトリックスをインキュベートして、細胞を内壁に付着させる。チャネルを灌流して未付着の細胞を取り除き、親血管を作り出し、ここで親血管はマトリックスにおいて細胞で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む。周囲にあるマトリックスゲル中に芽を作り出すように親血管を誘導して、その結果、微小血管ネットワークを形成する。微小血管ネットワークを、親血管を通る管腔灌流にさらす。
【0018】
本開示は、3Dの細胞外マトリックス(ECM)中で浸潤性管状微小血管芽を作製するための証明された方法と管腔流動の供給源となる組織工学による親血管の製作のための新規の方法論を組み合わせることにより、既存の血管新生モデルの限界を克服する方法およびシステムを提供する。灌流液を介して血管新生調節性化合物を、特定の標的受容体が存在することが分かっている内皮細胞の管腔表面に投与することができる。栄養液の管腔流動の存在により、インビトロでの毛細管の生存時間がかなり増加される。開示された血管新生システムを使用して、低酸素/高酸素、特定の可溶性生理活性化合物の試験、遺伝子改変細胞の使用、およびウイルストランスフェクションを介した遺伝子送達を含む種々の実験パラメータを評価することができる。そのシステムであれば、創傷修復、老化、癌、および粥状動脈硬化に関連して血管新生の研究が可能になる。重要なことに、本発明の教示に従ったモデルを適用すれば、生物工学により作製された人工組織に組み込むことができる完全に機能する血管系を提供できる可能性がある。
【0019】
本開示は、微小血管を作製する、内皮細胞から微小血管を作製するおよびさらに大きな血管(たとえば、冠状動脈の大きさを有する)を作製するための多岐管設計を含むこれまでにない新規のアプローチも提供する。たとえば、微小血管ネットワークの作製のための方法を含むこれらのおよび他の重要な新技術は、後述する明細書および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】A、B、Cは親血管作製の例を図式的に示す図である。
【図2】A、B、C、Dは既知の熱収縮工程の例を図式的に示す図である。
【図3A】取付け培養/灌流装置の既知の設計を図式的に示す図である。
【図3B】取付け培養/灌流装置の製造方法において使用する設計を図式的に示す図である。
【図4】A、Bは培養/灌流装置のための多岐管の作製を図式的に示す図である。
【図5】A、B、Cは、培養/灌流装置を微細加工するための別の設計を図式的に示す図である。
【図6】細胞播種法を図式的に示す図である。
【図7】2つのバイオ人工親血管間の毛細血管網の概略図である。
【図8a】平滑筋細胞の播種後の複数のマンドレルの例のインビトロ画像である。
【図8b】灌流筋板の例を示す図である。
【図9】CPDの別の実施形態を図式的に示す図である。
【図10】周囲にあるマトリックスへ芽を増殖させている単一親血管を示す図である。
【図11】芽のネットワークを通して第2の親血管に繋がれた1つの親血管を示す図である。
【図12】細胞をコラーゲンマトリックス中のチャネルに播種することにより親細胞を作製するための別の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に提示する例は本発明の理解を助長するためのものである。例は説明的なものであり、本発明を例となる実施形態に限定するものではない。本発明の方法は、生理学的および病理学的血管増殖ならびに血管新生または血管新生抑制因子に応答した血管増殖の研究に有用である。他の有用な適用は、癌組織の血管新生能および抗血管新生薬への応答を評価する方法に対するものである。さらに、種々の創傷治癒装置を構築するために、および組織工学による構築物の血管新生のために本発明の方法を使用してもよい。
【0022】
一例では、灌流可能な三次元微小血管ネットワークの作製のための方法および装置が開示される。本明細書で使用するように、「EC」とは内皮細胞のことであり、「SMC」とは平滑筋細胞のことであり、「CAS」とは冠状動脈代替物のことである。
【0023】
一般に、微小血管ネットワークの培養と灌流のための装置は、中心に1つまたは複数のマンドレルを保持するチャンバーからなる(図1にもっともよく示される)。チャンバーは、どんな生体適合性材料からでも、いくつかの技術によって、たとえば、レーザー加工フレームをサンドイッチすることにより作製することができる。マンドレルは、それが退縮可能なようにチャンバー内で構築される。これは、たとえば、熱収縮によるように、マンドレルの末端を管に合わせることにより実現することができる(図2に明示する)。マンドレルの径は目的の血管内径に依存する。配置は、2Dまたは3Dにおける単一血管、2つの血管、または全列の血管までを収容するように変更することができる。マンドレルは、高分子繊維、ガラス繊維、ワイヤーなどの種々の材料のものでよい。
【0024】
細胞をマンドレルの上に播種し、細胞を刺激してマンドレルの周囲に増殖させ、細胞が血管壁を形成し終わるとマンドレルを引き抜くことにより微小血管は作製される。次に、血管をマトリックス内に埋め込む。培養条件、マトリックスの組成物および血管新生刺激(たとえば、増殖因子)の存在に応じて、親血管は周囲にあるマトリックスに出芽する。芽は互いに吻合し、このようにして毛細血管網を形成する。マンドレルを取り外したのち、装置を灌流システムに繋ぎ、血管を管腔液体流動にさらす。
【0025】
ここで図1A、図1Bおよび図1Cに言及すると、親血管作製の例となる概略図が示されている。図1Aは、装置本体3中の収縮管4により保持されたマンドレル2上に播種された、増殖培養液100中の内皮細胞1を示している。図1Bは、細胞1が増殖し細胞スリーブ102の形に環状層を形成し終わったことを示している。図1Cは、増殖培養液100で灌流されている細胞外マトリックス(ECM)ゲル110中のマンドレル2の抜き出し後の細胞スリーブを示している。
【0026】
本明細書に開示される方法は、組織工学的適用および研究モデルのための灌流可能なバイオ人工血管構造の工学的設計を含む。開示された方法の一般原則は、薄肉管または他の付属品にぴったり合わせた取り外し可能なマンドレル周囲の層での細胞の培養を含む。細胞層が目的の壁厚に到達した後は、マンドレルを取り外し、これにより作製されたバイオ人工血管(BAV)は、灌流システムを用いて培養液、血液、血液代替物、または他の液体で灌流してもよい。開示された方法により、大量生産されたまたはオーダーメイドされた血管、インビトロで灌流される血管新生モデル、創傷治癒装置、組織成分、全組織および器官のほかにも研究モデルの作製が可能になる。
【0027】
培養/灌流装置の製造
ここで図2A、図2B、図2Cおよび図2Dに言及すると、既知の熱収縮工程の例となる概略図が示されている。図2Aに具体的に示されるように、それぞれの培養/灌流装置(CPD)は、支持フレーム12により保持された1つまたは複数のマンドレル2を含んでいてもよい。目的の血管内径の径のマンドレル2が、その両末端を医療グレード収縮管セグメント4にぴったり入れて収まっている。マンドレル2は、模倣される血管の大きさにより、数マイクロメートルから数ミリメートルまでの径を有する生体適合性繊維(たとえば、高分子、ガラス、ワイヤーまたは同等物)を含んでいてもよい。一例では、光ファイバーを含む微小毛細血管をマンドレルとして用いた。
【0028】
図2Bのさらに詳細な図に示されるように、それぞれの収縮管セグメント4の中央部分14は、マンドレル2の1つの周囲で熱収縮される。続いて、図2Cに具体的に示されるように、マンドレル2が退縮され、管が切断される。図2Dは、マンドレルの両末端が、新たに切断され離された収縮管セグメント4により封入されるように、マンドレルの位置を変えた後の状態を示している。フレーム12は種々の材料および技術を使用して作製してもよい。配置は、単一バイオ人工血管またはバイオ人工血管の列のいずれでも収容するよう変更してもよい。同様に、数面のマンドレル列を層状に重ねることにより、肉厚の灌流可能な組織を血管ネットワークで作製してもよい。
【0029】
灌流チャンバーの機械加工
ここで図3Aに言及すると、いくつかのマンドレル/収縮管集合体11の灌流のための既知の装置が示されている。フレーム20は、ポリカーボネートまたは同等の材料を都合よく圧延してもよい。分配チャンバー30が設計図に含まれてもよく、これにより多くのバイオ人工血管の同時灌流が可能になる。マンドレル2を含む一組の糸の末端はシリコン管23に集められる。
【0030】
マイラーフレームのレーザー切断
ここで図3Bに言及すると、取付け培養/灌流装置の製造法で使用される新規の設計図が図式的に示されている。単一血管設計、CPD70は、2枚のレーザー切断Mylar(登録商標)フレーム22間に熱収縮管に保持されたマンドレル2を挟むことにより都合よく作製してもよい。下に詳述される通りに構築された円筒状エポキシ樹脂多岐管21は、マンドレル/収縮管集合体11を保持するために都合よく使用してもよい。
【0031】
マンドレル/収縮管集合体は、各マンドレルが各末端の2本の収縮管セグメント4’によりフレームウィンドウ76中に吊るされるように粘着側が互いに押し付けられている、Mylar(登録商標)などのポリエステルフィルムまたは同類のものの2つのフレーム間に挟まれてもよい。少なくとも1本の細い安定化ワイヤー26をフレーム22に含むことにより、ならびに収縮管および少なくとも1本の細い安定化ワイヤー26の周囲に、シリコーン管のモールドを使用して流し込まれる円筒状エポキシ樹脂多岐管内に封入することにより、2本の収縮管セグメント4’は安定化され補強される。2本の収縮管セグメント4’は、最終的にはCPD70の流入ポートおよび流出ポートになる。
【0032】
ここで図4Aおよび図4Bに言及すると、培養灌流装置の多岐管の作製のための方法が図式的に示されている。図4Aは、特に、たとえば、シリコーン管50のスリーブを通して引っ張られる複数の収縮管/マンドレル集合体11を示している。エポキシ接着剤40が注入されてシリコーン管50を詰め、硬化される。
【0033】
図4Bは、特に、エポキシ接着剤40が硬化しシリコーン管50が切り開かれて取り外された後の状態を示している。硬化したエポキシロッド44が残っている。エポキシロッド44は、マンドレルが退縮された後に切断され、切断場所の後には収縮管により作製されたチャネル42が残る。多くの収縮管の末端46がまとめられて多岐管21を形成してもよい。個々のCPDまたはCPDフレーム集合体のスタッキングを使用して3D血管列を作製することができる。
【0034】
別の方法
ここで図5A、図5Bおよび図5Cに言及すると、微細加工された培養/灌流装置の別の設計図が図式的に示されている。図5Aは、特に、穿孔が収縮管の代わりになるスリーブ56を有しているフレーム中の小穿孔54を通じて取り込まれる一組のマンドレル2を示している。図5Bは、特に、フレーム壁52中にはめ込まれた一組のマンドレル2を含む細胞播種前のCPDを示している。
【0035】
図5Cは、特に、微細加工された多岐管64をフレーム52の外側でスリーブ56に取り付けてもよい、血管62がある培養/灌流装置の別の例を示している。血管62は本明細書で示す通りにマンドレル上で増殖され、マンドレルが取り外された後に残る。微小成形などの微細加工法は、そのようなCPDフレーム集合体の大量生産のために使用してもよい。
【0036】
血管作製および灌流
ここで図6に言及すると、細胞播種法が図式的に示されている。細胞播種のためのCPD70を準備するために、CPD70は先ず洗浄され、次に紫外線殺菌される。無菌条件下で、CPDは表面、たとえば、ペトリ皿72の底に固定される。次に、CPDフレーム集合体70の内部ウィンドウ76(図3Bに示されている)をラミニン1などの接着タンパク質を含有する溶液で満たす。1つまたは複数のスペーサー77を必要に応じて使用してもよい。インキュベーション時間の後、接着タンパク質含有溶液を取り除き、次に、培養液中の目的の細胞型(たとえば、平滑筋細胞または内皮細胞)の懸濁液をCPD70のウィンドウ76に移す。
【0037】
細胞播種は、一定量の細胞懸濁液をウィンドウに満たし、CPDフレーム集合体70を逆さまにひっくり返し、このようにして懸滴80を作り出すことにより実施してもよい。約45分のインキュベーション時間中、多数の細胞がCPDフレーム集合体内のマンドレル/収縮管集合体に付着することになる。過剰な細胞は懸滴の先端に沈むことになり、おそらく集めて破棄してもよい。次に、1つまたは複数のCPDフレーム集合体を含有するペトリ皿を立位に戻し、CPDフレーム集合体が溢れるまで培養液で満たし、インキュベートする。一例でのインキュベーション条件は、37℃で5%CO2の環境であった。マンドレル/収縮管集合体に付着した細胞は広がり増殖し、同心円状の単層(たとえば、内皮細胞)または厚さが150μmおよびそれよりも多い多層(たとえば、平滑筋細胞)を形成する。
【0038】
目的の壁形状または厚みで、マンドレルは引き抜かれ、それにより中空の細胞管を作り出す。もっと薄い壁は、マンドレルの引き抜きに先立って細胞スリーブの周囲に、たとえば、アガロース、コラーゲン、基底膜タンパク質のゲルなどのゲルを成形することにより、断裂から保護してもよい。次に、CPDフレーム集合体の多岐管は灌流システムに繋がれ、増殖培養液などの最適な液体で灌流される。
【0039】
別の実施形態では、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)由来の内皮「親」血管の作製のための方法は、以下の工程を含む:
培養装置を先ず洗浄し、次に30分間、両側から紫外線暴露により無菌化する。無菌条件下で、装置を無菌条片でペトリ皿の底に固定する。
次に、装置の内部ウィンドウをラミニン1の接着タンパク質溶液で満たす(フィブロネクチン、フィブリン、またはゼラチンなどの他の接着タンパク質を代わりに使用することができる)。
一晩インキュベーション後、接着タンパク質含有溶液を取り除き、次に培養液中のヒト血管内皮細胞の懸濁液を装置のウィンドウに移す。
次に、ペトリ皿を逆さまにひっくり返し、このようにして装置のウィンドウに細胞培養懸濁液の懸滴を作り出す。細胞培養インキュベーター中(5%CO2、37℃)での45分間のインキュベーション時間後、多数の細胞が装置内のマンドレル/収縮管集合体に付着することになる。
次に、ペトリ皿を立位に戻し、装置が沈むまでヒト血管内皮細胞用の増殖培養液で満たす。
マンドレルに結合していない細胞は浮き上がり、吸引して破棄することができる。
次に、ペトリ皿をインキュベーター中(5%CO2、37℃)に入れる。マンドレルに付着した細胞は広がり増殖し、ヒト血管内皮細胞の同心円状の単層を形成する。
次に、培養液をペトリ皿から取り除く。コラーゲン溶液を培養装置のウィンドウに満たし、固化させ、このようにしてマンドレルを細胞層で埋め込む。
ヒト血管内皮細胞がコラーゲンゲル中に芽を形成することになる。次に、マンドレルをゆっくり引き抜き、後にヒト血管内皮細胞の灌流可能な「親」微小血管が残る。
次に、装置の多岐管は灌流システムに繋がれ、ヒト血管内皮細胞増殖培養液で灌流される。
【0040】
灌流システム
CPDは、灌流システムに線形様式でまたは循環様式のいずれで繋いでもよい。線形配置は、重力フローシステム、または市販のもしくは注文製の注射器ポンプを付けて作製してよい。注射器は灌流培養液で満たし、注射器ポンプに取り付け、ガス気密管を介してCPDの上流末端に繋がれる。CPDは無菌条件下でインキュベーターに保存してもよいし、無菌細胞培養環境をCPD内に確立してもよい。CPDの下流多岐管は、灌流液を回収する末端貯蔵容器に繋がれる。循環システムを、蠕動ポンプを使用することにより作製してもよい。線形システムにも循環システムにもガス交換用の装置を取り付けてよい。ガス濃度、灌流圧、流量、温度、ならびに栄養分および代謝副産物の濃度は、センサーで測定する。集めたデータはフィードバックループに送ることもでき、目的のパラメータの厳格な制御を可能にする。
【0041】
特定の適用
血管新生関連研究のためのモデル
ここで図7に言及すると、図7は、2つのバイオ人工親血管200、202間の毛細血管網の概略図を示している。液体灌流液204は、「静脈」親血管202への流量(f)を減少し、「動脈」親血管200での抵抗(R)を増加することにより毛細管206を通して経路を変更される。したがって、灌流液204は圧力の高い血管から圧力の低い血管へ推進され、動脈末端から毛細血管床の静脈末端への自然な血流をシミュレートする。
【0042】
血管新生研究のモデル開発、必要に応じて、創傷修復、老化、および癌、糖尿病、関節炎および乾癬の疾患における医薬品検査および研究のためにもマンドレル法を使用してよい。内皮細胞のみを、または内皮細胞、平滑筋細胞、および周皮細胞の組合せを使用して、親バイオ人工微小血管(BMV)をミクロン径マンドレルの周囲で培養し、細胞外マトリックスの支持性ゲルに埋め込むことができる。次に、マンドレルを抜き出し、細胞外マトリックスゲル210内に親内皮細胞管を後に残すことになる。引き抜きは手動で、または自動装置を使用して、および極端に遅くから極端に速くまで変化する速度で実施してもよい。他のバリエーションには、凍結状態でのバイオ人工微小血管からのマンドレルの引き抜き、温度応答性ポリマーでのマンドレルのコーティング、またはマンドレルのどちらかの末端を引っ張って、それにより断裂までマンドレルを細くすることが含まれてもよい。
【0043】
周囲にあるゲル210への親血管の出芽は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびホルボール12−ミリステート−13−アセテート(PMA)などの化合物により誘導され、これらの化合物はゲルおよび/または灌流液(たとえば、増殖培養液)に添加される。
【0044】
複合毛細血管網222は、2つの隣接する親バイオ人工微小血管間に圧力差を確立し、それにより動脈および静脈血流を模倣することにより作製してもよい。次に、液体流は、「動脈」バイオ人工微小血管から相互接続された芽を通って「静脈」バイオ人工微小血管へと再誘導される。
【0045】
灌流液は、血清および血管新生または血管新生抑制物質がない酸素添加細胞増殖培養液を有利に含んでいてもよい。別の例では、灌流液は、血清および/または血管新生影響化合物を補充した酸素添加細胞増殖培養液であってもよい。さらに別の例となる実施形態では、灌流液は酸素添加生理食塩水であってもよい。別の例では、灌流液は、酸素添加血液、血液成分、または代用血液を含んでいてもよい。さらに別の例となる実施形態では、灌流液は酸素添加でなくてもよく、システムの酸素添加は、マトリックスを介する拡散により実現される。さらに別の例となる実施形態では、血管新生または血管新生抑制化合物を灌流液に添加してもよい。
【0046】
一例となる実施形態では、血管新生および血管新生抑制化合物などが、マトリックスに添加される。さらに別の例となる実施形態では、細胞は、灌流液へまたはマトリックスへ産物を放出する遺伝子改変細胞を含む。さらに別の例となる実施形態では、マトリックスは、フィブリン、コラーゲン、基底膜マトリックスおよびゼラチンを有利に含んでいてもよい。有用なマトリックスの一種は、Matrigel(登録商標)ゲルである。別の例となる実施形態では、マトリックスは、寒天、アガロース、アルギン酸、またはシリカゲルを含んでいてもよい。
【0047】
一例となる実施形態では、細胞は、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択してもよい。同様に、マトリックスには、マトリックス全体に分散されても、または局所的に集中していても、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択される細胞が存在していてよい。いくつかの場合、健常組織または癌組織などの疾患組織の断片がマトリックスに埋め込まれている。
【0048】
親血管からの出芽は、切片材料においてまたは全載調製物において、インビトロで顕微鏡的に調べてもよい。バイオ人工微小血管に蛍光溶液(たとえば、蛍光デキストラン)を灌流すれば、芽径、芽管腔の開存性、および吻合の程度の分析に役立つ。芽形態の3D再構築は、共焦点顕微鏡により撮られる落射蛍光像のZ軸スタッキングにより実施してもよい。芽220による細胞周囲基底膜マトリックスの合成は、抗ラミニンおよびIV型コラーゲン一次抗体ならびに蛍光またはペルオキシダーゼタグ付き二次抗体で免疫標識することにより、全載においておよび組織(パラフィン)切片においてモニターしてもよい。
【0049】
複合EC/SMC芽では、2つの細胞型間の空間関係は、ヒトCD31(クローンP2B1、Chemicon)に対するFITCモノクロナール抗体(MAb)またはFITC−UEA1アグルチニン、すなわちヒト内皮細胞に特異的マーカーで内皮細胞を標識することにより調べてもよい。平滑筋細胞に、ヒトアルファSMアクチンに対するMAbを、続いてRITC抗マウス二次抗体を標識してもよい。内皮細胞と平滑筋細胞間の管腔構造および相互作用の詳細は、上述の試薬で標識したパラフィン切片から入手してもよい。
【0050】
記載する作製法は、高再現性での血管新生装置の商業的大量生産の基礎である。適切に保存すれば(たとえば、クリオ保存)、増殖前親血管または全毛細血管網は、すぐに使える形で研究者が入手できるようになると考えられる。
【0051】
冠状動脈代用物
冠状動脈代用物の作製のために、内径がほぼ4mmから5.5mmの血管管腔を有する冠状動脈代用物を生じるように外径が選択されたマンドレル。代わりに、マンドレルは、灌流され、冠状動脈代用物の増殖期間中に栄養素とガスの交換を可能にするくらいの透過性のある中空管でもよい。冠状動脈代用物は、平滑筋細胞からのみ増殖されて、このようにして血管中の中間層に類似する構造物を提供するか、または、2つもしくは3つの細胞型から複合構造物として作製されてもよい。
【0052】
平滑筋細胞はマンドレル上に播種されて、300〜500μmの環状層にまで増殖される。冠状動脈代用物の作製を迅速化するため、細胞を初期増殖期中に高度に増殖性の表現型にして、次に血管壁が目的の厚さに達した後は分化状態に転換するようにSMC表現型を操作してもよい。表現型転換のために、平滑筋細胞は劇的にその増殖速度を落とし、血管の機械的性質に影響を与える、コラーゲンおよびエラスチンなどの細胞外マトリックスタンパク質の作製を誘導することになる。表現型転換は、ある種の遺伝子の発現を制御することにより実現してもよい。たとえば、テトラサイクリン応答性プロモーターの助けを借りて、遺伝子発現(たとえば、エラスチンの)は、血管壁が目的の厚さに達してしまうまで抑制されてもよい。次に、増殖培養液からテトラサイクリンを除けば、挿入遺伝子が活性化されることになる。たとえば、エラスチンが過剰発現されたら、それ以上の細胞増殖は阻害され、血管壁内で構造的およびシグナル伝達機能が発揮されることになる。機械的条件付け、たとえば、脈動流を使用して、冠状動脈代用物を強化し、細胞の生理的整列化を誘導してもよい。他の外部のまたは内部の「表現型転換」も同様に潜在的に使用してよい。
【0053】
内皮細胞は、マンドレルを取り除いた直後に、または平滑筋細胞の条件付けおよび再構築後に、SMCスリーブ内に播種してもよい。内皮細胞播種は、内皮細胞懸濁液をSMCスリーブに注入することにより実施してもよい。次に、内皮細胞を適切に付着させる期間流動を停止させる。必要であれば、内皮細胞の均等な分配を促進するために血管を回転させる、または繰り返し上下をひっくり返してもよい。
【0054】
代わりに、内皮細胞を最初にマンドレル上に播種してもよい。その場合、平滑筋細胞は、コンフルエント内皮細胞層上に播種される。この方法では、酸素と栄養素がより豊富にある冠状動脈代用物の周辺に向かって内皮細胞が遊走するのを防ぐことが必要になる。
【0055】
必要に応じて、線維芽細胞をSMCスリーブの外側に播種すれば、外膜層を作製することができる。
【0056】
冠状動脈代用物を作製するための細胞は、自己、非相同、または異種材料由来でもよい。細胞は、幹細胞、前駆細胞、または分化細胞でもよい。細胞は、特定の表現型を実現するために、または宿主生物の免疫応答を弱めるために遺伝子改変されてもよい。
【0057】
本明細書に開示するCPD法は、大量生産のすぐに使える血管代用物、またはレシピエントのために注文設計される血管代用物に対する選択肢を提供する。本明細書に開示するCPD法は、冠状動脈代用物の組織工学のためのモデル開発に、アテローム発生、動脈形成の研究に、異なる血管細胞型の互いの相互関係および細胞外マトリックス成分との相互関係の研究に、一酸化窒素の効果に関する研究に、ならびに種々の医薬品の研究にも適している。
【0058】
異なる大きさまたは種類の血管およびリンパ管
本明細書に開示するCPD法を使用して、冠状動脈以外の径と種類の血管を作製してもよい。マンドレルの径を変えれば、血管の径も変わることになる。血管の種類(動脈、静脈、リンパ管)は、細胞の表現型、および/または細胞の増殖が阻害される時点によって変えてもよい。たとえば、静脈はわずかな平滑筋細胞層のみを含有する。
【0059】
他の管状様組織
本明細書に開示するCPD法は、胆管、涙管、耳管、卵管、輸精管、尿管、尿道、肺気道、等などの他の管状組織の工学のために使用してもよい。本明細書に開示するCPD法は、神経増殖および修復の誘導のための、グリア細胞を含む異なる細胞型からの神経導管の作製にも有用であることが判明する可能性がある。
【0060】
工学的に操作された組織のためのBAVシステム
本明細書に開示するCPD法は、取り外し可能なマンドレルの列をスカフォールドとして使用することにより、組織および器官の工学のために使用してもよい。目的の組織/器官(筋肉、肝臓、腎臓、肺、皮膚、等)の細胞は、接着タンパク質被膜マンドレル上に播種される。これらのマンドレルは、固形線維もしくはワイヤーから、または、代わりにセルロースなどの灌流可能な透過性管から作製してもよい。マンドレルは、単一の細胞スリーブを合併させる正確な間隙をおいて互いに分離される。この方法を使用して、シート状またはブロック状の組織を形成してもよい。次に、マンドレルを引き抜いて(または、別々に取り除いて)、バイオ人工組織は、灌流システムを用いて内部で灌流される。
【0061】
創傷治癒装置
製造前バイオ人工血管システムを使用して、糖尿病患者の慢性潰瘍のためなどの創傷治癒に役立ててもよい。バイオ人工毛細血管網を(たとえば、細胞外マトリックスゲルから、血管新生増殖因子で強化された)パッチ状の支持材料に埋め込み、創傷上に置くことができる。酸素添加栄養溶液を自律的に灌流すれば、バイオ人工血管はドーナーの脈管構造および皮膚の出芽を促進すると考えられる。代わりに、そのようなバイオ人工血管パッチを創傷と植皮間に挟み込めば、移植片の内殖を促進することができると考えられる。
【0062】
遺伝子治療装置
バイオ人工血管は、植込み式薬剤送達装置に使用することができると考えられる。細胞は、患者から採取して、インビトロで遺伝子改変すれば、ある種のタンパク質(ホルモン、酵素、等)を産生することができると考えられる。次に、これらの細胞を、上述の方法を使用して、バイオ人工血管または血管網に増殖させてもよい。宿主に再移植すれば、細胞は標的物質を産生し、局所的にまたは全身的にその物質を放出し続ける。
【0063】
人工組織および器官
組織工学による血管網は、上記のように、組織の作製または全臓器の作製のためにも使用してよい。1つのアプローチは、1つまたは複数のインビトロ灌流親血管を作製することである。目的の組織または器官由来の間質細胞を、たとえば、ゲル中の親血管の周囲に播種する。間質細胞は、親血管を介して栄養分と酸素を供給される。間質細胞が増殖すると、栄養分と酸素への要求が増加する。細胞は血管新生因子を放出し、血管を出芽するように刺激する。自然増殖にきわめて類似して、組織が成長するに従って血管系は、同一速度で出芽する。したがって、このシステムは発生生物学の研究のための優れたモデルにもなると考えられる。
【0064】
別のアプローチは、間質細胞の足場として平行配列のマンドレルを利用する。間質細胞が増殖するに従って、細胞層がマンドレル周囲に形成される。最終的に、すべてのマンドレル間の空間は間質細胞で満たされ、シート状の組織ができる。マンドレルを取り除くと、マンドレルにより後に残されるチャネル内を通ってその組織は灌流されてもよい。それらのチャネルは、管腔播種を通じて内皮細胞で被覆することができる。このアプローチは2Dに限定されるものではない。いくつかのシートをスタッキングしてもよいし、3D足場を使用してもよい。本明細書の発明者は、筋肉組織の工学のために2Dアレイも3Dアレイも使用した。
【0065】
さらに別のアプローチでは、組織の層および血管網の層を独立して作製し、その後間欠的にスタッキングすることができると考えられる。これらのアプローチはすべて、1つまたは2つの細胞型で単純なモデルでも、またはいくつかの細胞型で構成されたかなり複雑な構築物でも作製することができる。
【0066】
移植すると、これらの方法で工学的に操作された組織または器官を、直接血流に繋ぐことも、または宿主脈管構造が移植片に成長してしまうまで灌流システムにより灌流させておくこともできると考えられる。
【0067】
灌流組織工学的に操作された筋肉構築物の例
ここで図8aに言及すると、平滑筋細胞を播種した後の複数のマンドレルの例のインビトロ画像が示されている。複数のマンドレルと収縮管ユニットMは、Mylar(登録商標)フレームに挟み込んだ。マンドレルM間の距離はほぼ100μmに調整した。収縮管セグメントの末端は、1つの上流多岐管と1つの下流多岐管に結合させた(示されていない)。Mylarフレームは無菌化し、管腔被膜し、5×106ラット大動脈平滑筋細胞SM(RASMC)/mlの懸濁液を播種した。細胞SMは、個々のマンドレルMそれぞれに付着し、増殖し、このようにして環状層を形成した。10日後、個々の層が合併し終わり、1つの厚いシート状のまたはプレート状の平滑筋細胞を生じた。増殖培養液中にさらに7日間置いた後、培養液にはもう7日間、50U/mlヘパリンを補充した。その後、マンドレルはすべて引き抜き、組織は、10ml/日の速度でヘパリン培養液で灌流した。灌流チャンバーは、ヘパリン培養液で満たした100mmペトリ皿の底に固定したままにした。SMCプレートは11日間灌流した。その時間を過ぎても、チャネルCHは機能的なままであり、依然としてインビトロではっきりと目に見えた(図8bにもっともよく示されている)。
【0068】
ここで図8bに言及すると、灌流筋肉プレートMPの例が示されている。管末端(T)を通って、引き抜かれたマンドレルにより後に残されたチャネル(CH)中へと灌流される液体が示されている。
【0069】
ここで図9に言及すると、CPDの別の実施形態が図式的に示されている。一例では、CPD900は、第1スライドガラス904と第2スライドガラス920間に並置された層902を含む。層902は、チャネル922に繋がれた複数の液体ポートを埋め込むのに適した厚みがある。複数の液体ポートは、細胞懸濁液ポート914、複数の入口ポート912、および複数の出口ポート918を含む。チャネル922により繋がれて液体の通過および分配を可能にするポートは、同じように機能する。ポート912などの複数のポートは、複数のアクセスポイントを提供するように配置されている。他の適用では、液体チャンバーおよびポートがマイクロ流体材料で作製されるマイクロ流体設計を有利に用いてもよい。同様に、この層は、顕微鏡またはマイクロ流体適用において使用するのに適したシリコーンまたは他の材料を含んでいてもよい。コラーゲンチャンバー906は、対になった中空柔軟毛細管916によるアクセスのために有利に位置している。用いる毛細管の数は、CPDの大きさおよび作製されている血管の数が収容する可能性のある1つから2つよりかなり多い数の範囲でよい。複数のポートおよびチャンバーのそれぞれには、注射器ポンプが針を有する注射器に取り付けられている管入口940A、940Bを通って1本または複数の注射器ポンプにより層を通ってアクセスしてもよい。図面を簡略化するために2つの注射器ポンプ管入口940A、940Bのみが示されているが、場合によっては、別々の注射器ポンプ、注射器または同等物をそれぞれのチャンバーおよび/もしくはポート中に材料を注入するまたは抽出するために使用してよいことが理解されるであろう。一実施形態では、注射器ポンプはガス気密注射器に連結される。
【0070】
別の実施形態CPD900の特徴を記載したので、CPDを構築するための1つの方法をここで記載すれば、本発明の理解に役立つであろう。層902にシリコーン層を用いる一例では、穴およびチャネルのパターンを、粘着上層943および粘着下層945で覆われたシリコーン層に打ち込む。次に、中空針をシリコーン中に刺し込み、その後この針を使用して、ポリミド被膜融合シリカ毛細管916をコラーゲンチャンバー906に、および入口ポート912の1つにもガイドする。2本の毛細管は、小口径管910により保持されて、主チャンバーから出口ポート908に通じる。次に、シリコーン層902は、粘着層の助けを借りて2枚のスライドガラス間内に挟み込まれる。その後、CPD900は、使用するまで加圧減菌されて、保存される。血管作製のためにチャンバー906の準備をするためには、コラーゲン溶液を調製し、注射針を通してコラーゲンチャンバー906に直接注入し、インキュベーター内で一晩ゲル化させる。次に、注射針を2つの入口ポートに差し込むことにより、CPD900を注射器ポンプに繋ぐ。
【0071】
注射針は、今度はガス気密管に繋がれ、この気密管はpHを十分に調整した増殖培養液で満たされ、注射器ポンプに取り付けられた2つのガス気密注射器に通じている。2つの出口ポート908A、908Bは、類似の様式の廃棄物貯蔵場所に繋がれる。注射器ポンプは、ここでは灌流ポンプとして機能するが、次に作動させると、それにより入口ポートを満たし、順次、入口ポート、毛細管および出口ポートをプライミングする。空気をすべてシステムから押し出すと、各毛細管はピンセットにつかまれ、コラーゲンチャンバーにまで伸びる末端は、毛細管の末端のみがマトリックスチャンバーまで伸びるまで、コラーゲンゲル中を引き戻される。この手順を使用して、2つの灌流可能なチャネルがコラーゲンゲル内に作製される。コラーゲンチャネル内に細胞を播種するためには、高濃度の内皮細胞懸濁液を、細胞懸濁液用のポートに注入する。次に、注射器ポンプを止め、その後毛細管のもう1つの末端を、細胞を含有する小さな貯蔵場所914Rに引き戻すと、多数の細胞がコラーゲンチャネルに直接流入する。細胞の流速は、廃棄物貯蔵場所の高さにより厳密に制御することができる。次に、細胞をコラーゲンチャネルの壁に付着させるためにCPDを45分間インキュベーターに入れる。CPDは、細胞を最適に分配するように数回ひっくり返すか、または他の方法で操作することができる。最後に、毛細管を細胞貯蔵場所から、入口ポートの一部である貯蔵場所にまで引き出し、注射器ポンプを作動させて目的の灌流速度に設定する。過剰な細胞は洗い流す。この播種法により、増殖のための時間を与えた後、細胞の相同単層をもつ2つの親血管が生じるが、そこで必要な時間は管に注入される細胞数が高濃度であるほど短くなる。マンドレルは、使用されるマンドレルの種類によって、抜き出しおよび/または分解によりマトリックスから取り除いてもよいことに注意されたい。
【0072】
ここで図10に言及すると、周囲にあるマトリックス1054中に芽1052を増殖している単一親血管1050が示されている。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)がコラーゲンチャネル内に播種されると、そのようにして作製された親血管はコラーゲン中に出芽し始める。これらの芽は伸長して分岐し始める。これらの分岐は最終的には、反対の親血管からの分岐と吻合し、このようにして血管網を形成する。
【0073】
ここで図11に言及すると、ネットワークの芽1106を通じて第2の親血管1104に繋がれた第1の親血管1102が示されている。芽1106は管腔を有し、灌流されている。
【0074】
親血管を作製するためのプロトコル
ここで図12に言及すると、コラーゲンマトリックス内のチャネルに播種することにより親細胞を作製するための別の方法が示されている。シリコーン層を使用した別のCPDは記載済みなので、当業者による本開示の理解を促進するために、微小血管システムを作製するための適用の具体例をここで記載することにする。
【0075】
CPDは加圧減菌器で無菌化され、使用するまで無菌環境に保存される。コラーゲン溶液を調製し、氷上で保存する。コラーゲンは小型の注射器に充填される。注射器に30G注射針を取り付け、チャンバーがコラーゲン1002で完全に満たされるまで、コラーゲン溶液をコラーゲンチャンバーに注射針を通して注入する。第2の注射針を、空気吹き出し口としてチャンバーの反対側から注入する。
【0076】
次に、注射針を2つの入口ポート1004に注入することにより、CPDを注射器ポンプに繋ぐ。注射針は、今度はガス気密管に繋がれ、この気密管はpHが十分に調整された増殖培養液で満たされ、注射器ポンプに取り付けられた2つのガス気密注射器に通じている。2つの出口ポートは、類似の様式の廃棄物貯蔵場所(すなわち、出口ポートに注射針が注入され、管が廃棄物貯蔵場所に通じている)1006に繋がれる。
【0077】
注射器ポンプを灌流ポンプとして作動させ、それによって入口ポートを満たし、順次、入口ポート、毛細管、および出口ポート1008をプライミングすることにより、CPDを灌流させる。空気がすべてシステムから押し出されると(たとえば、取り外し可能な空気吹き出し口として働く小径注射針を通して)、次に各毛細管はピンセットにつかまれ、コラーゲンチャンバーにまで伸びる末端は、毛細管の末端のみがチャンバーまで伸びるまで、コラーゲンゲル中を引き戻される。この手順を使用して、2つの灌流可能なチャネルがコラーゲンゲル1010内に作製される。
【0078】
コラーゲンチャネル内に細胞を播種するために、高濃度の内皮細胞懸濁液は細胞懸濁液用のポート1012に注入される。次に、注射器ポンプを止め、その後毛細管のもう一方の末端は、入口ポートから細胞を含有する小さな貯蔵場所に引き戻され、多数の細胞が毛細管を通ってコラーゲンチャネル1014に直接流入する。細胞の流速は、背圧(廃棄物貯蔵場所の高さ)により厳密に制御することができる。次に、毛細管は入口ポートに繋がれている貯蔵場所にさらに引き戻される。
【0079】
次に、細胞をコラーゲンチャネル1016の壁に付着させるためにCPDを45分間インキュベーターに入れる。CPDは、細胞を最適に分配するように数回ひっくり返すか、または他の方法で操作することができる。
【0080】
最後に、注射器ポンプを作動させて目的の灌流速度1020に設定する。過剰な細胞は洗い流す。この播種法により、細胞の相同単層をもつ2つの親血管1022が生じる。上記のように親血管を灌流することにより、1つまたは複数の微小血管ネットワークを作製してもよい。
【0081】
代わりに、親血管を作製するための手順は、図1A〜1Cおよびその他を参照して、コラーゲンマトリックス内にマンドレルを埋め込み、マンドレルを抜き出し、マンドレルにより後の残されるチャネルに細胞を注入し、ほかにも上記のマンドレル上に細胞を播種することも含んでもよい。この2つの方法を組み合わせれば、異なる細胞型の層状化が可能になる。
【0082】
本発明は、特許法に従って、当業者に本発明の新規の原理を適用して、必要とされるような例となり特殊な成分を構築し使用するのに必要な情報を提供するために、本明細書においてかなり詳細に記載されている。しかし、本発明は、明確に異なった設備、および装置および再構成アルゴリズムにより実施してもよいこと、ならびに設備の細部と操作手順の両方に関して、本発明の真の精神と範囲から逸脱することなく種々の改変を実現してもよいことは理解されるべきである。
【0083】
本明細書に引用されたすべての参考文献の完全な開示物は、参照により本明細書に組み込まれているものとする。しかし、他の方法では妥協できない争いが生じた場合は、本明細書が効力をもつものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワークを作製するための方法であって、
マトリックス(1054)からマンドレル(2)を引き出して、マトリックスからチャネルを形成すること(1010)と、
細胞(1)をチャネルに注入すること(1014)と、
マトリックスをインキュベートして、細胞(1)をチャネル内部に付着させること(1016)と、
チャネルを灌流して(1020)未付着の細胞(1)を取り除き、チャネル内に、マトリックス(1054)において細胞(1)で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む親血管(1102)を作り出すこと(1022)と、
周囲にあるマトリックス(1054)中に芽(1106)を作り出すように親血管(1102)を誘導し、その結果、微小血管ネットワーク(222)を形成することと、
微小血管ネットワーク(222)を、親血管(1102)を通る管腔灌流にさらすことと
を含む方法。
【請求項2】
2つ以上のチャネルが複数のマンドレル(2)により形成され、マンドレル(2)が毛細管(916)を含み、少なくとも2つの親血管(1102)が、吻合して微小血管ネットワーク(222)を形成する芽(1106)を作り出すように誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの親血管(1102)が灌流可能な血管の多次元の列(222)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
チャネルの灌流(1020)が、血清および血管新生または血管新生抑制物質がない酸素添加細胞増殖培養液、血清を補充した酸素添加細胞増殖培養液、少なくとも1つの血管新生影響化合物、酸素添加生理食塩水、酸素添加血液、血液成分、代用血液、システムの酸素添加がマトリックスを介する拡散により実現される非酸素添加灌流液、灌流液に添加される少なくとも1つの血管新生および血管新生抑制化合物、ならびにマトリックス(1054)中の少なくとも1つの血管新生および血管新生抑制化合物を含む少なくとも1つの灌流液(204)を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞(1)が、灌流液(204)またはマトリックス(1054)中に産物を放出する遺伝子改変細胞(1)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
マトリックス(1054)が、フィブリン、コラーゲン、ゼラチン、ゲル状基底膜、寒天、アガロース、アルギン酸、基底膜タンパク質、シリカゲル、細胞およびその組合せからなるグループから選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
細胞(1)が、マンドレル(2)の取り出し(1010)後のマトリックスチャネル中への注入(1012)、およびマンドレル(2)への事前付着とやはりマトリックス中への注入との組合せによる、マンドレル(2)への事前付着の少なくとも選択される1つの方法により、マトリックスチャネルに沈着される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マンドレル(2)が、引き出し(1010)および分解のうちの少なくとも選択される1つの方法により、マトリックス(1054)から取り除かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
細胞(1)が、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
マトリックス(1054)に、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択される細胞(1)を定植させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
健常または患部組織の断片がマトリックス(1054)に埋め込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
癌組織の断片がマトリックス(1054)に埋め込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
流体灌流液(204)が、灌流液(204)が圧力が高いほうの血管から圧力が低いほうの血管へ推進されるように、1つの親血管(202)への流動を減少させ、1つまたは複数の芽(220)により第1の血管に繋がれている第2の親血管(200)での抵抗を増加することにより、毛細管(206)を通して経路が変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
微小血管(222)が、バイオ人工微小血管(200)、開存性内皮細胞管(1102)、および平滑筋細胞管のうちの選択される1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
微小血管ネットワーク(222)が、灌流液(204)中に因子を放出する正常なまたは遺伝子改変細胞からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
チャネルの灌流(1020)が、灌流液(204)中に因子を放出する正常または遺伝子改変細胞を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
コラーゲンチャンバー(906)、複数の入口ポート(912)、少なくとも1つの毛細管(916)、および少なくとも1つの出口ポート(918)を含む培養灌流装置(CPD)においてインビトロでヒト血管内皮細胞(1)から内皮親血管(1102)を作製するための方法であって、
チャンバー(906)がコラーゲンで満たされるまで、注射針を介してコラーゲン溶液をコラーゲンチャンバー(906)に注入すること(1002)と、
入口ポートを満たし、複数の入口ポートおよび出口ポートを順次プライミングすることにより、CPDを灌流すること(1008)と、
コラーゲンチャンバー中に少なくとも1つの灌流可能なチャネルを作製すること(1010)と、
内皮細胞(1)の濃縮された懸濁液を入口ポート中に注入すること(1012)と、
内皮細胞(1)を少なくとも1つの灌流可能なチャネルに注入すること(1014)と、
CPDをインキュベートして、内皮細胞(1)を少なくとも1つの灌流可能なチャネルの壁に付着させること(1016)と、
細胞(1)をCPD内に分配することと、
少なくとも1つの灌流可能なチャネルを灌流(1020)して、細胞の均一な単層を有する少なくとも1つの親血管(1102)を形成させることと
を含む方法。
【請求項18】
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワークを作製するための培養灌流装置であって、
マトリックス(1054)からマンドレル(916)を引き出して、マトリックスからチャネルを形成するための手段(1010)と、
内壁を有するチャネル中に細胞(1)を注入するための手段(1014)と、
マトリックス(1054)をインキュベートして、細胞(1)を内壁に付着させるための手段(1016)と、
チャネルを灌流して(1020)未付着の細胞を取り除き、親血管を作り出すための手段であって、親血管(1102)がマトリックス(1054)において細胞(1)で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む手段(1022)と、
周囲にあるマトリックス(1054)中に芽(1106)を作り出すように親血管(1102)を誘導し、その結果、微小血管ネットワーク(222)を形成するための手段と、
微小血管ネットワーク(222)を、親血管(1102)を通る管腔灌流(1020)にさらすための手段と
を含む装置。
【請求項1】
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワークを作製するための方法であって、
マトリックス(1054)からマンドレル(2)を引き出して、マトリックスからチャネルを形成すること(1010)と、
細胞(1)をチャネルに注入すること(1014)と、
マトリックスをインキュベートして、細胞(1)をチャネル内部に付着させること(1016)と、
チャネルを灌流して(1020)未付着の細胞(1)を取り除き、チャネル内に、マトリックス(1054)において細胞(1)で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む親血管(1102)を作り出すこと(1022)と、
周囲にあるマトリックス(1054)中に芽(1106)を作り出すように親血管(1102)を誘導し、その結果、微小血管ネットワーク(222)を形成することと、
微小血管ネットワーク(222)を、親血管(1102)を通る管腔灌流にさらすことと
を含む方法。
【請求項2】
2つ以上のチャネルが複数のマンドレル(2)により形成され、マンドレル(2)が毛細管(916)を含み、少なくとも2つの親血管(1102)が、吻合して微小血管ネットワーク(222)を形成する芽(1106)を作り出すように誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの親血管(1102)が灌流可能な血管の多次元の列(222)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
チャネルの灌流(1020)が、血清および血管新生または血管新生抑制物質がない酸素添加細胞増殖培養液、血清を補充した酸素添加細胞増殖培養液、少なくとも1つの血管新生影響化合物、酸素添加生理食塩水、酸素添加血液、血液成分、代用血液、システムの酸素添加がマトリックスを介する拡散により実現される非酸素添加灌流液、灌流液に添加される少なくとも1つの血管新生および血管新生抑制化合物、ならびにマトリックス(1054)中の少なくとも1つの血管新生および血管新生抑制化合物を含む少なくとも1つの灌流液(204)を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
細胞(1)が、灌流液(204)またはマトリックス(1054)中に産物を放出する遺伝子改変細胞(1)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
マトリックス(1054)が、フィブリン、コラーゲン、ゼラチン、ゲル状基底膜、寒天、アガロース、アルギン酸、基底膜タンパク質、シリカゲル、細胞およびその組合せからなるグループから選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
細胞(1)が、マンドレル(2)の取り出し(1010)後のマトリックスチャネル中への注入(1012)、およびマンドレル(2)への事前付着とやはりマトリックス中への注入との組合せによる、マンドレル(2)への事前付着の少なくとも選択される1つの方法により、マトリックスチャネルに沈着される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マンドレル(2)が、引き出し(1010)および分解のうちの少なくとも選択される1つの方法により、マトリックス(1054)から取り除かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
細胞(1)が、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
マトリックス(1054)に、内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、幹細胞、筋肉細胞、肝細胞、腎細胞、肺細胞、皮膚細胞、上皮細胞および遺伝子改変細胞からなるグループから選択される細胞(1)を定植させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
健常または患部組織の断片がマトリックス(1054)に埋め込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
癌組織の断片がマトリックス(1054)に埋め込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
流体灌流液(204)が、灌流液(204)が圧力が高いほうの血管から圧力が低いほうの血管へ推進されるように、1つの親血管(202)への流動を減少させ、1つまたは複数の芽(220)により第1の血管に繋がれている第2の親血管(200)での抵抗を増加することにより、毛細管(206)を通して経路が変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
微小血管(222)が、バイオ人工微小血管(200)、開存性内皮細胞管(1102)、および平滑筋細胞管のうちの選択される1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
微小血管ネットワーク(222)が、灌流液(204)中に因子を放出する正常なまたは遺伝子改変細胞からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
チャネルの灌流(1020)が、灌流液(204)中に因子を放出する正常または遺伝子改変細胞を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
コラーゲンチャンバー(906)、複数の入口ポート(912)、少なくとも1つの毛細管(916)、および少なくとも1つの出口ポート(918)を含む培養灌流装置(CPD)においてインビトロでヒト血管内皮細胞(1)から内皮親血管(1102)を作製するための方法であって、
チャンバー(906)がコラーゲンで満たされるまで、注射針を介してコラーゲン溶液をコラーゲンチャンバー(906)に注入すること(1002)と、
入口ポートを満たし、複数の入口ポートおよび出口ポートを順次プライミングすることにより、CPDを灌流すること(1008)と、
コラーゲンチャンバー中に少なくとも1つの灌流可能なチャネルを作製すること(1010)と、
内皮細胞(1)の濃縮された懸濁液を入口ポート中に注入すること(1012)と、
内皮細胞(1)を少なくとも1つの灌流可能なチャネルに注入すること(1014)と、
CPDをインキュベートして、内皮細胞(1)を少なくとも1つの灌流可能なチャネルの壁に付着させること(1016)と、
細胞(1)をCPD内に分配することと、
少なくとも1つの灌流可能なチャネルを灌流(1020)して、細胞の均一な単層を有する少なくとも1つの親血管(1102)を形成させることと
を含む方法。
【請求項18】
インビトロで灌流可能な微小血管のネットワークを作製するための培養灌流装置であって、
マトリックス(1054)からマンドレル(916)を引き出して、マトリックスからチャネルを形成するための手段(1010)と、
内壁を有するチャネル中に細胞(1)を注入するための手段(1014)と、
マトリックス(1054)をインキュベートして、細胞(1)を内壁に付着させるための手段(1016)と、
チャネルを灌流して(1020)未付着の細胞を取り除き、親血管を作り出すための手段であって、親血管(1102)がマトリックス(1054)において細胞(1)で裏打ちされた灌流可能な中空チャネルを含む手段(1022)と、
周囲にあるマトリックス(1054)中に芽(1106)を作り出すように親血管(1102)を誘導し、その結果、微小血管ネットワーク(222)を形成するための手段と、
微小血管ネットワーク(222)を、親血管(1102)を通る管腔灌流(1020)にさらすための手段と
を含む装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−539935(P2010−539935A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527014(P2010−527014)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/076042
【国際公開番号】WO2009/042418
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(509121879)ノーティス,インク. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/076042
【国際公開番号】WO2009/042418
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(509121879)ノーティス,インク. (3)
【Fターム(参考)】
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