説明

火災報知設備

【課題】火災感知器の点検作業において、火災信号の状態を作業員が目視で確認することができる火災報知設備を提供することである。
【解決手段】火災感知器のIDと、上記火災感知器のIDを火災感知器の試験器が取得した時刻情報とを、火災感知器の試験器から読み込み、また、火災信号とこの火災信号が発生した時刻情報と復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とを、火災受信機から読み込む情報読込手段と、上記火災感知器の試験器が火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報が発生した時刻情報とをソートするソート手段と、火災感知器のIDと火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号と火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とに基づいて、上記ソート手段が時刻情報でソートした順に、点検票としてのデータを作成する点検票のデータ作成手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知設備に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の防火対象物となる建物等には、消防用設備として火災報知設備の設置が義務付けられている。また、火災報知設備を定期的に点検することも義務付けられ、火災感知器が正常に動作して火災警報を発するかどうかを点検し、この点検結果を消防署等に提出する必要がある。このようにして、消防用設備の維持管理が図られている。
【0003】
火災感知器には、煙感知器や熱感知器等が用いられ、熱感知器を動作させるためには、動作試験器として、長いロッドの先に筒状のチャンバを付け、チャンバ内に設けられているヒータ等によって熱を加える加熱試験器を、熱感知器に当接し、熱感知器を動作させる。煙感知器を動作させるためには、上記チャンバ内で擬似的な煙を発生させる加煙試験器を、天井面等に設置されている煙感知器に当接し、煙感知器を動作させる。
【0004】
このような火災感知器の点検作業を行い、しかも、火災感知器の点検漏れをなくすために、各火災感知器の型式番号、製造年、製造番号等の情報を読み出すシステムが知られ、電磁誘導波によって非接触かつ省電力で情報を読み書きできるICタグを利用することが提案されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−177695号公報
【特許文献2】特開2005−208885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建物に設置された火災感知器を個々に動作させる点検作業の際、各火災感知器にRFIDのタグを貼付して、そこに個別の番号等を記憶して、感知器用試験器のリーダで読み出し、動作させた火災感知器の情報を収集する点検作業が提案されている。
【0007】
この感知器用試験器が火災感知器の情報を収集しただけでは、どの火災感知器が火災信号を出力したのかを判断することができない。
【0008】
上記提案例は、火災感知器の点検作業において、火災信号の状態を作業員が目視で確認することができないという問題がある。
【0009】
また、上記提案例は、火災感知器の点検作業において、火災感知器の試験器の情報と火災受信機の情報とを正確に対比することができないという問題がある。
【0010】
さらに、上記提案例は、火災感知器の点検作業における情報が改竄される可能性を考慮すると、保存された情報を正確に取り出すことができない場合があるという問題がある。
【0011】
本発明の第1の目的は、火災感知器の点検作業において、火災信号の状態を作業員が目視で確認することができる火災報知設備を提供することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、火災感知器の点検作業において、火災感知器の試験器の情報と火災受信機の情報とを正確に対比することができる火災報知設備を提供することである。
【0013】
本発明の第3の目的は、火災感知器の点検作業における情報が保存前に改竄されることなく、保存された情報を正確に取り出すことができる火災報知設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、火災感知器のIDと、上記火災感知器のIDを火災感知器の試験器が取得した時刻情報とを、火災感知器の試験器から読み込み、また、火災信号とこの火災信号が発生した時刻情報と復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とを、火災受信機から読み込む情報読込手段と、上記火災感知器の試験器が火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報が発生した時刻情報とをソートするソート手段と、火災感知器のIDと火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号と火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とに基づいて、上記ソート手段がソートした順に、データを作成するデータ作成手段とを有することを特徴とする火災報知設備である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、火災感知器の点検作業において、火災信号の発生および復旧の状態を作業員が確認することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1である火災報知設備100を示すブロック図である。
【図2】上記実施例において、点検前に行う時刻合わせの動作を示すフローチャートである。
【図3】上記実施例において感知器のIDと感知器の名称との対応を示す図である。
【図4】上記実施例において、火災受信機20の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例2において、加煙試験器20が煙感知器の識別番号を読み出す動作を示すフローチャートである。
【図6】上記実施例において、試験器40が各感知器のIDを取得した日時の例を示す図である。
【図7】上記実施例において、信号処理装置50の動作と、保存データの暗号化とを示すフローチャートである。
【図8】上記実施例において、信号処理装置50に設けられている表示手段56に表示されている回線情報の例を示す図である。
【図9】上記実施例において、図6と図8を合わせた結果(点検後の集計結果)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1である火災報知設備100を示すブロック図である。
【0019】
火災報知設備100は、熱感知器SE1、SE2、SE3と、ICタグT1、T2、T3と、火災受信機20と、複数でもよい感知器回線30と、火災感知器の試験器としての加熱試験器40と、信号処理装置50と、プリンタ60とを有する。
【0020】
熱感知器SE1は、たとえば火災によって発生する熱による温度上昇を捕らえる差動式スポット型熱感知器であり、ICタグT1が貼り付けられている。また、熱感知器SE1は、動作すると動作表示灯(図示せず)を点灯し、感知器回線30に火災信号を出力する。火災を感知すると、いわゆるスイッチング回路によって、感知器回線30の共通線、信号線の2本の電線間が低インピーダンス状態になり、これによって、火災受信機20に火災信号が送出される。なお、火災信号の出力方式は、この方式に限る必要はない。熱感知器SE1は、監視区画の大きさ等に応じて、必要数が感知器回線30に接続されている。
【0021】
ICタグT1は、熱感知器SE1の本体外周面に貼付され、図示しないが、シート状の基板に、ICチップ部とアンテナ部とが平面状に設けられているものである。ICタグT1のICチップ部には、熱感知器SE1を個別に識別する固有の識別番号が格納されている。この固有の識別番号は、同一設備の中で、さらには同一回線の中で、個々の火災感知器を区別する番号である。また、ICタグT1は、自身では電源を持たず、加熱試験器40に設けられているリーダ41からの電磁誘導波によって与えられた電力によって作動し、識別情報としての識別番号を送信する。ここで、ICタグT1は、シールで貼付する形で設けられるので、熱感知器SE1の製造時だけでなく、建物等に設置されている感知器にも簡便に貼付して設けることができる。
【0022】
また、ICタグT1は、感知器の固有の識別番号のみを保持するだけで十分であるが、熱感知器SE1の型式番号や製造年等の情報をも同時に格納するようにしてもよい。このようにすることによって、いわゆる型式失効となっている場合や、不具合品を回収したい場合に、上記格納された情報を利用することができ、点検作業とは異なる場面で利用することができる。これらの情報を、リーダ41が同時に読み出すことができるようにしてもよい。
【0023】
なお、上記固有の識別番号として、同じ番号の火災感知器が他に存在しないような大きな数、たとえば、2の45乗までの数字を準備するようにしてもよい。このように大きな数を上記固有の識別番号とし使用することによって、熱感知器SE1にICタグT1を無作為に貼付しても、識別番号が重複することがない。また、ICタグT1を含む大量のICタグを一度に製造しても、識別番号の重複がなく、コスト面で有利であり、小規模な設備において、大きな負担なしに導入できるというメリットがある。
【0024】
なお、熱感知器SE2には、熱感知器SE2の固有の識別情報を格納し、ICタグT1と同様のICタグT2が貼り付けられ、熱感知器SE3には、熱感知器SE3の固有の識別情報を格納し、ICタグT1と同様のICタグT3が貼り付けられている。
【0025】
以下の説明では、熱感知器SE1〜SE3を代表して、熱感知器SE1に着目して説明し、必要な場合には熱感知器SE2、SE3にも記述する。
【0026】
火災受信機20は、熱感知器SE1が出力する火災信号を、感知器回線30を介して受信し、火災警報等の必要な火災動作を行い、詳細な説明は省略するが、火災受信機20の盤面において、火災発生の表示を行うとともに、いわゆる主音響が鳴動され、また、必要な地区音響の鳴動(一斉鳴動または地区鳴動の方式で)を制御する。
【0027】
火災受信機20は、いわゆるP型である。感知器回線30を低インピーダンス状態にすることによって火災信号が出力されるので、この状態を監視して、火災信号を検出する受信回路(図示せず)が、火災受信機20に設けられている。
【0028】
また、火災受信機20には、端子部21を介して、記憶装置M1が設けられ、記憶装置M1は、火災受信機20内に固定されてもよいが、火災受信機20の端子部21に着脱可能である。
【0029】
感知器回線30は、火災受信機20の筐体内に引き込まれ、所定の端子に接続されることによって、火災受信機20の受信回路に接続されている。
【0030】
加熱試験器40は、熱感知器SE1を点検するために用いられる動作試験器であり、ロッドの先端に設けたフード内に設けられているヒータ等の発熱体または蓄熱体から熱感知器SE1に熱を伝え、熱感知器SE1を動作させる。ここで、熱感知器SE1に対して加熱試験器40を用いるが、火災感知器が煙感知器である場合には、加煙試験器が用いられ、火災感知器の種別に応じて対応する試験器が用いられる。
【0031】
この加熱試験器40には、リーダ41と、記憶手段42とが設けられている。リーダ41は、電磁誘導波を利用して非接触で、ICタグT1に格納されている識別情報(識別番号)を読み出す。記憶手段42は、リーダ41が読み出した識別番号等の識別情報を、発報情報として格納し、また、その読み出した時刻をも格納する。
【0032】
リーダ41は、ICタグT1への電磁誘導波の発信後に、ICタグT1から、熱感知器SE1の固有の識別情報を無線受信する。
【0033】
信号処理装置50は、読込手段51と、ソート手段52と、点検票のデータ作成手段53と、暗号化手段54と、保存手段55と、表示手段56と、印刷開始ボタン57と、時刻更新手段58とを有する。
【0034】
読込手段51は、火災感知器のIDと、上記火災感知器のIDを加熱試験器40が取得した時刻情報とを発報情報として、加熱試験器40から読み込み、また、火災信号とこの火災信号が発生した時刻情報と復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とを回線情報として、火災受信機20から読み込む手段である。上記復旧情報は、発生した火災信号が消去され、監視状態に戻ることを示す情報または手動復旧したことを示す情報である。
【0035】
ソート手段52は、火災感知器のIDを火災感知器が取得した時刻情報と、火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報が発生した時刻情報とをソートする手段である。
【0036】
点検票のデータ作成手段53は、火災感知器のIDと火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号と火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とを、ソート手段52がソートした順に、点検票61としてのデータを作成する手段である。
【0037】
暗号化手段54は、読込手段51が読み込んだ情報を暗号化する手段である。保存手段55は、暗号化手段54が暗号化した情報を保存する手段である。
【0038】
表示手段56は、図9に示す図3、6、8を統合したデータを表示する装置である。
【0039】
印刷開始ボタン57は、点検票61等の印刷を、プリンタ60に開始させるボタンである。
【0040】
時刻更新手段58は、加熱試験器40に設けられている時計の時刻、記憶装置M1に設けられている時計の時刻を、現在の正しい時刻に更新する手段である。
【0041】
なお、火災感知器として熱感知器の代わりに煙感知器等を設けるようにしてもよい。また、熱感知器と煙感知器とを混在させてもよい。
【0042】
プリンタ60は、点検票61をプリントする手段である。
【0043】
次に、上記実施例の動作について説明する。まず、火災受信機20側の動作について説明する。
【0044】
図2は、上記実施例において、点検前に行う時刻合わせの動作を示すフローチャートである。
【0045】
S1で、加熱試験器40を信号処理装置50に接続し、加熱試験器40に設けられている時計の時刻を、時刻更新手段58が、S2で、現在の正しい時刻に更新する。S3で、この更新した時刻を、記憶手段42に記憶する。記憶手段42に記憶された上記更新時刻が、加熱試験器40に設けられている時計の時刻更新の有効期限の起点になる。そして、S4で、加熱試験器40を信号処理装置50から取り外す。
【0046】
S5で、記憶装置M1を信号処理装置50に接続し、記憶装置M1に設けられている時計の時刻を、時刻更新手段58が、S6で、現在の正しい時刻に更新する。S7で、この更新した時刻を、記憶装置M1に記憶する。記憶装置M1に記憶された上記更新時刻が、記憶装置M1に設けられている時計の時刻更新の有効期限の起点になる。そして、S8で、記憶装置M1を信号処理装置50から取り外す。
【0047】
つまり、火災感知器を点検する前に、火災感知器の試験器が記憶している時刻と、火災受信機20の記憶装置に記憶されている時刻とを、実質的に互いに合わせる。すなわち、現在の正確な時刻を双方に記憶させる代わりに、一方の時刻を他方の時刻に合わせるようにしてもよく、また、両時刻の差を検出し、この差を、後処理で参照するようにしてもよい。
【0048】
図3は、上記実施例において、感知器のIDと感知器の名称との対応を示す図である。
【0049】
図4は、上記実施例において、火災受信機20の動作を示すフローチャートである。
【0050】
図4に示す動作の準備段階において、火災受信機20は、いわゆる保守モードに設定される。この保守モードは、火災信号を受けた後に直ちに自動復旧するモードである。すなわち、火災受信機20の機能は、通常、熱感知器が発した火災信号を自動復旧することはできない。つまり、同じ感知器回線30を介して、1つ目の火災信号を受けると、復旧の操作をしない限り、2つ目の火災信号を受信できない。しかし、点検作業時においては、保守モードに設定し、火災信号を受けた後に直ちに自動復旧するように設定する。これによって、点検作業時に火災受信機20の近傍に復旧入力させるための作業員を配置する必要がない。なお、自動復旧させない場合には、火災受信機20の盤面に、別の作業員を張り付かせ、熱感知器を動作させる作業員と連絡を取りながら、火災信号を手動で復旧させる操作を、別の作業員に行わせればよい。
【0051】
まず、加熱試験器40に設けられているスイッチ(図示せず)を操作することによって、リーダ41が起動される。そして加熱試験器40を、熱感知器SE1に近づけ、電磁誘導波によって、加熱される熱感知器SE1に設けられているICタグT1に電力が供給され、ICタグT1から、熱感知器SE1の固有の識別番号を、非接触で読み出す。読み出された識別番号を、発報情報として、加熱試験器40に設けられている記憶手段42に保存するとともに、識別番号を読み出した時刻を加煙試験器40に設けられている時計から読み込んで記憶手段42に保存する。その後、熱感知器が十分に加熱されて、熱感知器SE1が動作し、火災信号を出力する。
【0052】
なお、ICタグ用リーダ24が熱感知器SE1の識別情報を読出す動作は、非接触であり、しかも半永久的に行うことができる。ICタグ用リーダ24とICタグT1との間隔が短かければ、識別情報を読み出すことが可能である。また、加熱試験器40を熱感知器SE1にほとんど接触させる程度に近づけて動作試験することができるので、加熱試験器40における消費電力を少なくすることができる。さらに、熱感知器SE1とこの隣に設置されている熱感知器SE2との間隔が十分にあるので、2台の熱感知器SE1、SE2が識別情報を同時に発することがなく、仮に識別情報を同時に発したとしても、加熱試験器40から遠い位置に存在している熱感知器SE2から、その識別情報を加熱試験器40が受信することがない。
【0053】
次に、加熱試験器40を、熱感知器SE2に近づけ、熱感知器SE2に設けられているICタグT2に電力が供給され、ICタグT2から、熱感知器SE2の固有の識別番号を、非接触で読み出し、記憶手段42に保存するとともに、識別番号を読み出した時刻を記憶手段42に保存し、熱感知器SE2が動作する。熱感知器SE3についても、上記と同様にして、ICタグT3から、熱感知器SE3の固有の識別番号を、非接触で読み出し、記憶手段42に保存するとともに、識別番号を読み出した時刻を記憶手段42に保存し、熱感知器SE3が動作する。
【0054】
この作業段階において、動作した熱感知器SE1、SE2、SE3が、その時点で感知器回線30を介して、火災受信機20に火災信号を出力する。
【0055】
ここで、図4に示すS11で、所定の周期(たとえば、0.5秒)が経過したかどうかを調べる。所定の周期が経過していれば、S12で、変化があったかどうかを調べる。つまり、火災信号を受信したか、または復旧を検出したかを調べる。そして、火災信号を受信したか、または復旧を検出したのであれば、S13で、変化した情報(火災信号を受信したことを示す情報または復旧動作が行われたことを示す情報)を、記憶装置M1に設けられた時計から読み込んだ発生時刻とともに保存する。そして、S11に戻る。
【0056】
一方、S11で、所定の周期が経過していないと判断され、しかも、S14で、電源のオフ操作が行われていると判断されると、終了し、電源のオフ操作が実行されていないと判断されると、S11に戻る。
【0057】
図5は、実施例2において、加熱試験器40が熱感知器の識別番号を読み出す動作を示すフローチャートである。
【0058】
加熱試験器40は起動されると、S11で、識別番号を読み込むトライをし、識別番号を取得できれば(S12)、取得された識別番号が既に取得した識別番号と重複しているか否かを、S13で判断する。重複していないと判断されれば、S14で、取得した識別番号を保存し、S15で、所定の周期(たとえば5秒間)が経過したか否かを判断する。5秒間経過していれば、S11に戻る。5秒間経過していなければ、S16で、オフ操作がされたか否かを判断する。オフ操作がされたと判断されれば、終了し、オフ操作がされていないと判断されれば、S15に戻り、5秒間の経過を待つ。
【0059】
一方、S13で、識別番号の重複があると判断されれば、重複回数の関数Cを、1インクリメントし、S18で、重複回数Cが所定の定数K(たとえば2回)に達したか否かを判断する。重複回数Cが2回に達していなければ、S15に進み、5秒間待機する。S18で重複回数Cが2回に達していると判断されれば、S19で、ICタグ用リーダ24は所定時間、たとえば1分間読み出しを待機し、待機時間1分間が経過すれば、S20で、重複回数の回数Cを0に初期化し、S11に戻る。S19で待機する時間は、火災感知器の試験器を火災感知器に当てたときから火災感知器が動作するまでの時間であることが望ましい。
【0060】
また、上記火災感知器の試験器に設けられているリーダのアンテナが略環状であるので、火災感知器の動作試験時に、火災感知器の試験器の角度がどのような角度であっても、ICタグのアンテナと火災感知器の試験器のアンテナとの距離が、適切な距離内に収まる。したがって、ICタグに格納されている情報を、火災感知器の試験器が確実かつ迅速に読み取ることができる。
【0061】
なお、S13で読み込んだ発生時刻は消去しない。また、S14では、情報と時刻とを共に保存する。
【0062】
図6は、上記実施例において、試験器40が各感知器のIDを取得した日時の例を示す図である。
【0063】
なお、取得した感知器のIDと感知器の名称との関係は、図3に記載されている。図3と図6とによって、どの感知器についてそのIDが取得されたかを知ることができる。
【0064】
図7は、上記実施例において、信号処理装置50の動作と、保存データの暗号化とを示すフローチャートである。
【0065】
S21で、信号処理装置50を起動し、各情報を読み込み、保存する。つまり、試験器40の記憶手段42、記憶装置M1から各情報(データの再読み込みをも含む情報)を読み込み、各情報を結合して保存する。
【0066】
S22で、時計の時刻を確認する。つまり、加熱試験器40に設けられている時計、記憶装置M1に設けられている時計の双方の時計の時刻が更新されていることを確認し、また、上記双方の時計の更新時刻が同じであることを確認する。S23で、火災受信機20から取得した情報(火災信号および復旧信号)と加熱試験器40から取得した情報(熱感知器のID)とを、時刻順にソートする。S24で、発生事象の順を確認する。つまり、熱感知器のIDを取得した時刻、火災信号が発生した時刻の順序を確認する。なお、この発生事象の順を確認する場合、復旧信号を受信した時刻の順序は確認しないでよい。
【0067】
そして、S25で異常の有無を判断する。たとえば、所定の感知器のIDを取得した後に、火災信号ではなく、他の感知のIDを取得した場合が異常に該当する。つまり、発報情報と回線情報とが交互になっていない場合が異常である。また、同一回線の火災信号と復旧信号とが連続していない場合が異常である。異常があれば、S26で、表示手段56に異常結果を表示する。S27で、熱感知器が設置されている個数の情報と、読み込んだ情報の個数の情報とを対比する。この対比の結果、読み込んだ情報の個数が、熱感知器が設置されている個数よりも少ないと、S28で判断されると、読み込むべき情報が欠落しており、S29で、欠落している情報が何の情報(どの感知器の情報)であるかを表示する。S28で情報の欠落が無いと判断されると、S30で、正常終了したことを、表示手段56に表示する。
【0068】
そして、S31で、作業員による出力操作の有無を判断し、出力操作がされていると判断されれば、S32で、点検票61を出力する。出力操作がされていないと判断されると、S33で、作業員による保存操作の有無を判断し、保存操作がされていると判断されると、S34で、データを暗号化し、この暗号化されたデータを、S35で、保存する。なお、点検票出力は、正常終了したときのみ可能とし、異常終了の場合は出力できない。
【0069】
保存操作がされていないと判断され、S36で、作業員による電源のオフ操作があると判断されれば、終了し、電源のオフ操作がされていないと判断されれば、S31に戻る。
【0070】
図8は、上記実施例において、火災受信機20の記憶装置Mに格納されている回線情報を、例えば、信号処理装置50に設けられている表示手段56に表示させてもよい。
【0071】
図8に示す図のうちの行は、「火災信号発生」を示す行と、「復旧」を示す行とであり、これらが繰り返して表示されている。つまり、一定周期で信号処理装置50が火災信号を監視し、火災信号が発生したこと検出すると、図8の第1行に丸枠で囲ってあるように、「火災」という文字が、表示手段56に表示される。火災信号が発生した回線が、その後に、自動的に火災復旧または、手動復旧すると、それまで表示されていた「火災」が、次の行(第2行)で消去される。この場合、回線3において、火災信号が発生し、火災復旧があったことを示す。つまり、回線3における点検作業が正常に終了されたことを示す。
【0072】
なお、図8の第1行に示す「9:35:43」は、火災信号の発生時刻を示し、図8の第2行に示す「9:35:50」は、火災復旧された時刻を示す。つまり、回線のいずれかに「火災」が表示されている行の時刻は、火災信号発生時刻を示し、次の行(いずれの回線にも「火災」が表示されていない行)の時刻は、火災復旧時刻を示す。
【0073】
その後に、図8の第3行において、回線2において、「火災」が表示され、つまり、回線2において火災信号が発生したことを示し、図8の第4行において、回線2の右に「火災」が消去されているので、回線2において火災復旧されたことを示す。なお、火災復旧した場合、上記のように、回線2の右に「火災」を消去するだけでなく、「復旧」等、火災復旧したことを明示するようにしてもよい。
【0074】
これらと同様に、図8の第5、6行において、回線1で、火災信号が発生し、火災復旧が正常に実行されたことを示す。
【0075】
図9は、上記実施例において、図3、6、8を合わせた結果であり、これを表示手段56に表示してもよい。
【0076】
図3に示す感知器のIDと感知器の名称との対応を示すデータと、図6に示す各感知器のIDを取得した日時を示すデータと、図8に示す表示手段56による点検結果のデータとを統合し、これらのデータを、ソート手段52が、時刻でソートする。その結果は、図9に示す結果になり、図9の第1行に、最初に点検した感知器の名称(感知器1)と、その感知器のIDを読み込んだ日時とが表示され、図9の第2行に、火災信号が発生した日時と、火災信号が発生した回線の名称(回線3)とが表示されている。なお、火災感知器1は、回線3に含まれている。図9の第3行に、火災復旧した日時と、火災復旧した回線の名称(回線3)の右を空欄にすることによって、回線3において火災復旧したことがわかる。これらの状態を示す表示部分が、図9において四角で囲まれている部分である。
【0077】
感知器1と同様に、次に点検した感知器の名称、火災信号の発生、火災復旧の事実が、図9の第4、5、6行に記載され、その次に点検した感知器の名称、火災信号の発生、火災復旧の事実が、図9の第7、8、9行に記載されている。
【0078】
なお、図9において、点検が正常に終了すれば、復旧動作が実行された行(たとえば、時刻9:35:50に復旧動作が行われたことを示す行)を表示する必要はない。しかし、たとえば、ある回線について1つ目の火災感知器が火災信号を発生した後に復旧動作が実行されずに、同一回線に接続されている2つ目の火災感知器を点検した場合、上記2つ目の火災感知器は、火災信号を発生することができないので、信号処理装置50は、上記2つ目の火災感知器は火災信号を発生していないと判断し、上記2つ目の火災感知器が火災信号を発生したことが表示されない。この場合、上記実施例のように、復旧動作が実行されれば実行されたことを示す行が表示されるようにしてあれば、復旧動作が実行されたことを示す行が表示されないので、復旧動作がされずに、上記2つ目の火災感知器を点検したことを作業員が認識することができる。復旧動作後に上記2つ目の火災感知器を確認することができる。一方、上記の場合、復旧動作が実行されても実行されたことを示す行が表示されないようにしてあるとすると、上記2つ目の火災感知器を確認して故障していると判断されるため、上記2つ目の火災感知器が正常であっても交換され、正常な火災感知器が無駄になる。
【0079】
上記実施例によれば、火災信号が復旧しないと、次の火災信号を受信できないので、火災復旧のタイミングを確認することができる。つまり、上記実施例では、火災信号発生の後における火災復旧の有無を確認することができる。
【0080】
また、上記実施例によれば、火災信号を火災受信機20が受信した後に、通常は火災復旧信号が発生するが、その火災復旧信号をS24の発生事象の順の確認に用いてもよいが、正常終了でないときに、復旧のタイミングを確認できればよく、火災信号確認に用いなくてもよい。つまり、復旧信号は復旧のタイミングの確認用であり、火災信号と復旧信号との数の一致は不要である。復旧しなかった場合でも、図7のS25では異常とはされないが、復旧がないと、後の点検ができず、結果としては異常になる。したがって、復旧信号は不要である。復旧信号を火災信号確認に用いないことで、処理する信号が減るので、処理が速くなるという効果がある。
【0081】
さらに、上記実施例によれば、各火災感知器からの情報取得と、火災受信機での火災信号検出と復旧信号の発生等との各タイミングを正確に対比するためには、試験器における時刻情報と、記憶部における時刻情報とが互いに一致していることが前提である。上記実施例では、各時計の時刻を合わせているので、上記対比を正確に実行することができる。
【0082】
また、点検で取得したデータが改竄されると、点検作業をしていない火災感知の点検が正常終了したことにもなり、点検作業の信頼性が失われる。上記実施例によれば、プログラムから情報(データ)を、記憶装置M1(HDD等)に保存する際、暗号化するので、記憶媒体上のデータを変更等、改竄することができず、過去の試験結果を正しく保存することができる。
【符号の説明】
【0083】
SE1、SE2、SE3…熱感知器、 T1、T2、T3…ICタグ、 20…火災受信機、 M1…記憶装置、 30…感知器回線、 40…加熱試験器、 50…信号処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器のIDと、上記火災感知器のIDを火災感知器の試験器が取得した時刻情報とを、火災感知器の試験器から読み込み、また、火災信号とこの火災信号が発生した時刻情報とを、火災受信機から読み込む情報読込手段と;
上記火災感知器の試験器が火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号が発生した時刻情報とをソートするソート手段と;
火災感知器のIDと火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号と火災信号が発生した時刻情報とに基づいて、上記ソート手段が時刻でソートした順に、データを作成するデータ作成手段と;
を有することを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
火災感知器のIDと、上記火災感知器のIDを火災感知器の試験器が取得した時刻情報とを、火災感知器の試験器から読み込み、また、火災信号とこの火災信号が発生した時刻情報と復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とを、火災受信機から読み込む情報読込手段と;
上記火災感知器の試験器が火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報が発生した時刻情報とをソートするソート手段と;
火災感知器のIDと火災感知器のIDを取得した時刻情報と、火災信号と火災信号が発生した時刻情報と、復旧情報とこの復旧情報が発生した時刻情報とに基づいて、上記ソート手段が時刻でソートした順に、データを作成するデータ作成手段と;
を有することを特徴とする火災報知設備。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
上記ソート手段がソートした後、上記火災感知器のIDと、上記火災信号とが交互に発生するときは、異常なしとすることを特徴とする火災報知設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、
火災感知器を点検する前に、火災感知器の試験器が記憶している時刻と、火災受信機の記憶装置に記憶されている時刻とを、実質的に互いに合わせることを特徴とする火災報知設備。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、
上記情報読込手段が読み込んだ情報を暗号化する暗号化手段と;
上記暗号化手段が暗号化した情報を保存する保存手段と;
を有することを特徴とする火災報知設備。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項において、
上記点検票をプリントするプリンタを有することを特徴とする火災報知設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−212382(P2012−212382A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78472(P2011−78472)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】