説明

火災感知システム

【課題】所定の機器が検出環境に与える変化を考慮して適切な火災判定を行うことができ、防災受信機と接続されていない火災感知器が火災の発生を検出した場合でも広い範囲に火災の発生を報知することができる火災感知システムを提供すること。
【解決手段】火災感知システム1は、火災に起因して発生する火災起因現象を検出する火災感知器10と、火災感知器10の検出環境に変化を与える環境変化機器20と、火災感知器10の検出出力と所定の検出基準とに基づき火災発生の有無を判定する判定部31bと、判定部31b又は環境変化機器20の少なくとも一方の動作に応じて、判定部31b又は環境変化機器20の少なくとも一方を制御する判定制御部31aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災感知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火災の発生を感知するための火災感知システムが用いられている。例えば、火災に起因して発生する煙、熱、炎等の火災起因現象を感知する火災感知器と、これらの火災感知器からの信号を受信して火災発生の警報出力や移報出力等を行う防災受信機とを伝送路を介して接続した火災感知システムがある。
【0003】
このような火災感知システムにおいては、火災感知器として様々な作動原理を利用したセンサが用いられている。例えば、火災に伴って発生する煙を感知する煙感知器や、火災による熱を感知する熱感知器、火災の炎から発生する赤外線や紫外線を検出する炎感知器等が火災感知器として用いられている。
【0004】
例えば、散乱光式煙感知器は、外部から遮光された検煙空間に光を発する発光部と、検煙空間に流入した煙によって散乱された光を検出する受光部とを備え、受光部によって所定の基準を超える強度の光が検出された場合、火災による煙を感知したものと判断する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、定温式熱感知器は、監視領域における温度に基づいて火災検出を行うものであり、例えば、サーミスタを用いたものや、バイメタルを用いたものが提案されている。例えば、サーミスタ利用型の定温式熱感知器は、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタの特性を利用したもので、サーミスタの抵抗値に基づいて監視領域の温度を測定し、この温度が所定温度以上になった場合には、監視領域において火災が発生したものと判断する(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、赤外線式炎感知器は、炎から発生する光に含まれる赤外線を検出するもので、炎からの赤外線は人工照明や高温物体から放射される赤外線とは異なる特有の周波数でちらつく点や、炎からの赤外線は炭酸ガス(CO2)から共鳴放射される特定波長付近のスペクトル強度が大きい点を利用し、火災とその他の高温物体とを相互に区別して炎を検出する(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
これらの火災感知器を用いた火災感知システムでは、火災に起因しない現象(例えば、湯気、タバコの煙、ライターの炎等)に反応して火災発報を行わないようにするため、所定の検出基準を超えた状態が予め設定した蓄積時間が継続した場合にのみ火災発報を行うようにしたり、火災感知器の検出信号の上昇具合に応じて検出基準を動的に設定したりするものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2005−352932号公報(段落0015、0016)
【特許文献2】特開2001−143170号公報(段落0017)
【特許文献3】特開2003−227751号公報(段落0015)
【特許文献4】特開2005−4408号公報(段落0023〜0025)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、火災感知システムが火災発生の有無を監視する監視領域には、エアコンやコンロ等が設置されている場合がある。これらのエアコンやコンロが動作すると、煙感知器周辺の空気の流れに変化が生じたり、室内温度が変化したり、コンロによる炎が発生したりする等、火災感知器の検出環境に変化が生じる場合がある。しかし、上述の如き従来の火災感知システムはこれらの変化を考慮していなかったため、エアコンやコンロ等の機器の動作に伴い、空気の流れで煙が拡散されたり、室内の温度上昇速度が抑制されたりした場合に、火災発生直後に迅速に火災を感知することが困難となる可能性があった。
【0010】
また、伝送路を介して防災受信機と接続されていない火災感知器(例えば、スタンドアロン型の消火ロボットに搭載した火災感知器や、住宅用警報器等)が火災の発生を検出した場合、当該火災感知器から防災受信機に警報信号を送信することができないため、当該防災受信機を介して警報出力や移報出力を行うことができず、広い範囲に火災の発生を報知することが困難な可能性があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所定の機器が検出環境に与える変化を考慮して適切な火災判定を行うことができ、防災受信機と接続されていない火災感知器が火災の発生を検出した場合でも広い範囲に火災の発生を報知することができる火災感知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の火災感知システムは、火災に起因して発生する火災起因現象を検出する検出手段と、前記検出手段の検出環境に変化を与える環境変化手段と、前記検出手段の検出出力と所定の検出基準とに基づき火災発生の有無を判定する判定手段と、前記判定手段又は前記環境変化手段の少なくとも一方の動作に応じて、当該判定手段又は当該環境変化手段の少なくとも一方を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の火災感知システムは、請求項1に記載の火災感知システムにおいて、前記制御手段は、前記環境変化手段の動作に応じて前記検出基準を変化させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の火災感知システムは、請求項1又は2に記載の火災感知システムにおいて、前記制御手段は、相互に異なる前記火災起因現象を検出する複数の前記検出手段について、前記環境変化手段の動作に応じて優先度を設定し、前記判定手段は、前記検出手段の検出出力、前記検出基準、及び前記優先度に基づき火災発生の有無を判定することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の火災感知システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の火災感知システムにおいて、前記制御手段は、火災が発生しているものと前記判定手段が判定した場合、前記環境変化手段から擬似的に前記火災起因現象を発生させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明によれば、火災起因現象を検出する検出手段の検出出力に基づき火災発生の有無を判定する判定手段、又は検出手段の検出環境に変化を与える環境変化手段の少なくとも一方の動作に応じて、これらの判定手段又は環境変化手段の少なくとも一方を制御するので、環境変化手段が検出環境に与える変化を考慮して判定手段に適切な火災判定を行わせることができる。また、判定手段が防災受信機と接続されていない場合、当該判定手段の判定結果に応じて環境変化手段が検出環境に変化を与えることで、防災受信機に接続されている検出手段を介して広い範囲に火災の発生を報知することができる。
【0017】
また、請求項2に記載の本発明によれば、環境変化手段の動作に応じて検出基準を変化させるので、環境変化手段が検出手段の検出環境に与える変化に対応した検出基準に基づき、判定手段に高精度な火災判定を行わせることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の本発明によれば、環境変化手段の動作に応じて設定された優先度に基づき火災発生の有無を判定手段が判定するので、環境変化手段が検出手段の検出環境に与える変化に応じて確実に火災検出が可能な検出手段の検出出力を優先して火災判定を行わせることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の本発明によれば、火災が発生しているものと判定手段が判定した場合、環境変化手段から擬似的に火災起因現象を発生させるので、判定手段が他の防災システムにおける防災受信機等と接続されていない場合であっても、当該防災受信機に接続されている検出手段を介して広い範囲に火災の発生を報知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る火災感知システムの各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について順次説明し、最後に、〔III〕各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る火災感知システムは、監視領域における火災の感知を目的とするものである。
【0022】
各実施の形態に係る火災感知システムの設置対象は任意であり、例えば、一般住宅における台所、寝室、居間等の各部屋や、養護施設、病院等の公共施設、あるいは、ビルや工場等の大規模建築物に設置することができる。
【0023】
各実施の形態に係る火災感知システムの特徴の一つは、概略的に、火災起因現象を検出する検出手段の検出出力に基づき火災発生の有無を判定する判定手段、又は検出手段の検出環境に変化を与える環境変化手段の少なくとも一方の動作に応じて、これらの判定手段又は環境変化手段の少なくとも一方を制御することにある。これにより、環境変化手段が検出環境に与える変化を考慮して判定手段に適切な火災判定を行わせることができる。また、判定手段が防災受信機と接続されていない場合、当該判定手段の判定結果に応じて環境変化手段が検出環境に変化を与えることで、防災受信機に接続されている検出手段を介して広い範囲に火災の発生を報知することができる。
【0024】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0025】
〔実施の形態1〕
まず実施の形態1について説明する。この形態は、環境変化手段の動作に応じて、検出基準を変化させると共に、相互に異なる火災起因現象を検出する複数の検出手段について優先度を設定する形態である。
【0026】
(火災感知システムの構成)
まず、火災感知システムの構成を説明する。図1は火災感知システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。図1に示すように、火災感知システム1は、火災感知器10、環境変化機器20、及び火災感知装置30を備えている。
【0027】
(火災感知システムの構成−火災感知器)
火災感知器10は、火災に起因して発生する火災起因現象を検出する検出手段であり、伝送路2を介して火災感知装置30と通信可能に接続されている。この火災感知器10の具体的な構成は任意で、例えば煙感知器、熱感知器、あるいは炎感知器等を用いることができる。本実施の形態1では、火災感知器10として、煙感知器10a、熱感知器10b、及び炎感知器10cを備えた場合について説明する。
【0028】
(火災感知システムの構成−環境変化機器)
環境変化機器20は、火災感知器10の検出環境に変化を与える環境変化手段であり、ネットワーク3を介して火災感知装置30と通信可能に接続されている。環境変化機器20の具体的な構成や、当該環境変化機器20が如何なる種類の火災感知器10の検出環境に変化を与えるかは任意であり、例えば、上述の火災感知器10のうち、煙感知器10a及び熱感知器10bの検出環境に変化を与える環境変化機器20としては、エアコン、コンロ、換気扇等が挙げられる。また、炎感知器10cの検出環境に変化を与える環境変化機器20としては、コンロが挙げられる。本実施の形態1では、環境変化機器20として、エアコン20a及びコンロ20bを備えた場合について説明する。
【0029】
(火災感知システムの構成−火災感知装置)
火災感知装置30は、火災感知器10からの出力や、環境変化機器20の動作に応じた各種処理を実行する。この火災感知装置30は、図1に示したように、機能概念的に制御部31、通信部32、操作部33、及び記録部34を備えている。
【0030】
制御部31は、火災感知装置30の動作を制御するためのものであり、機能概念的に、判定制御部31a及び判定部31bを備えている。判定制御部31aは、環境変化機器20の動作に応じて判定部31bを制御するものであり、特許請求の範囲における制御手段に対応する。判定部31bは、火災感知器10の検出出力と所定の検出基準とに基づき火災発生の有無を判定する判定手段である。これらの制御部31の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0031】
なお、制御部31の具体的構成は任意であるが、例えば、OS(Operating System)などの制御プログラム、各種の処理手順などを規定した組み込みプログラム、所要データを格納するための内部メモリ、及び、これらのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)を備えて構成される。
【0032】
通信部32は、火災感知器10及び環境変化機器20との間で火災感知に関する情報の通信を行なうための通信手段である。通信する情報の具体的な内容は任意であり、例えば、火災感知器10から検出出力信号を受信したり、環境変化機器20の動作を特定するための動作情報を受信したりすることができる。また、具体的な通信方法は任意であり、例えば無線や有線により通信を行なうことができる。
【0033】
操作部33は、利用者からの火災感知装置30に対する操作入力を受け付ける操作手段である。操作部33の具体的構成は任意であり、キーボード等の公知の操作手段を火災感知装置30に一体に設けてもよく、あるいは火災感知装置30とは別体として構成し、ネットワーク等を介して火災感知装置30と当該操作部33とを相互に接続してもよい。
【0034】
記録部34は、制御部31によって実行される各種処理に必要なデータ、例えば、判定部31bが判定を行う際の検出基準を格納する検出基準テーブルや、判定制御部31aが判定部31bの制御を行う際に参照する制御テーブル等を記録する記録手段である。図2は検出基準テーブルを例示した表、図3は制御テーブルを例示した表である。
【0035】
検出基準テーブルは、図2に例示するように、テーブル項目として「煙」「熱」「炎」を備え、これらに対応する情報が格納されている。項目「煙」に対応して格納される情報は、煙感知器10aからの検出出力についての検出基準であり、例えば基準となる減光率が格納される(図2では「20%/m以上」)。項目「熱」に対応して格納される情報は、熱感知器10bからの検出出力についての検出基準であり、例えば基準となる温度が格納される(図2では「65℃以上」)。項目「炎」に対応して格納される情報は、炎感知器10cからの検出出力についての検出基準であり、例えば基準となる出力電流値が格納される(図2では「5mA以上」)。
【0036】
制御テーブルは、図3に例示するように、テーブル項目として「環境変化機器」、「検出基準」、及び「優先度」を備え、これらに対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「環境変化機器」に対応して格納される情報は、環境変化機器20に関する情報であり、環境変化機器20を特定する名称(図3ではコンロ、エアコン等)、及び、名称によって特定される環境変化機器20毎の動作(図3ではコンロ20bについて「ON」「OFF」、エアコン20aについて「風量 大」「冷房」等)が格納される。項目「検出基準」に対応して格納される情報は、判定制御部31aが検出基準を変化させる際の変化量を特定する情報であり、火災感知器10の種別(図3では煙、熱、炎)毎に変化量(図3では、「煙」について「+5%/m」等、「熱」について「+5℃」等、「炎」について「+1mA」等)が格納される。なお、「−」が格納されている場合は、検出基準を変化させないことを意味する。項目「優先度」に対応して格納される情報は、判定部31bが判定を行う際に参照する優先度を特定する情報であり、火災感知器10の種別毎に優先度を示す数値が格納される(図3では「1」「2」「3」)。図3に示した例では、数値が大きい程優先度が高いことを示している。
【0037】
これらの検出基準テーブルや制御テーブルに格納される各情報を記録部34に記録する方法やタイミングは任意であり、例えば火災感知システム1の設置時に、操作部33を介して入力することができる。なお、記録部34の具体的な構成は任意であり、例えば、フラッシュメモリの如き書き換え可能な記憶手段を用いて構成することができる。
【0038】
(火災感知システムによる処理)
次に、このように構成された火災感知システム1が実行する処理について説明する。図4は火災感知システム1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。この処理が起動されるタイミングは任意であり、例えば火災感知装置30の起動後に自動的に起動される。
【0039】
火災感知装置30の起動後、判定制御部31aは、通信部32を介して環境変化機器20から動作情報を取得し(ステップSA−1)、当該取得した動作情報に基づいて特定される環境変化機器20の動作に対応する検出基準の変化量を、制御テーブルから取得する(ステップSA−2)。
【0040】
続いて、判定部31bは、火災感知器10から伝送路2を介して検出出力を取得する(ステップSA−3)。そして、取得した検出出力と、検出基準テーブルに格納されている検出基準とを比較する(ステップSA−4)。このとき判定制御部31aは、ステップSA−2で取得した変化量に基づき、判定部31bがステップSA−4における比較に利用する検出基準を変化させる。
【0041】
図2及び図3に示した例では、エアコン20aの風量が大の場合、風によって煙が拡散され、煙感知器10aで検出される煙の濃度が低くなる可能性があるため、検出基準を−10%/m変化させる。この場合、判定部31bが煙感知器10aからの検出出力と比較する検出基準は、20%/m−10%/m=10%/mとなる。
【0042】
また、エアコン20aが冷房の動作を行っている場合、室内が冷却され、熱感知器10bで検出される温度が低下する可能性があるため、検出基準を−5℃変化させる。この場合、判定部31bが熱感知器10bからの検出出力と比較する検出基準は、65℃−5℃=60℃となる。
【0043】
また、コンロ20bがONの場合、調理によって煙や湯気が発生し、煙感知器10aで検出される煙の濃度が高くなる可能性や、室内温度が上昇し、熱感知器10bで検出される温度が上昇する可能性、あるいは、炎感知器10cで検出される赤外線強度や紫外線強度が上昇する可能性があるため、煙感知器10aについては+5%/m、熱感知器10bについては+5℃、炎感知器10cについては+1mA検出基準を変化させる。この場合、判定部31bが煙感知器10aからの検出出力と比較する検出基準は20%/m+5%/m=25%/m、熱感知器10bからの検出出力と比較する検出基準は65℃+5℃=70℃、炎感知器10cからの検出出力と比較する検出基準は5mA+1mA=6mAとなる。
【0044】
図4に戻り、判定制御部31aが変化させた検出基準と検出出力との比較を判定部31bが行った結果、いずれの火災感知器10の検出出力も検出基準以上でなかった場合(ステップSA−4、No)、ステップSA−1に戻り、判定制御部31aは環境変化機器20から動作情報を取得する(ステップSA−1)。一方、いずれか一以上の火災感知器10の検出出力が検出基準以上であった場合(ステップSA−4、Yes)、判定制御部31aは、当該火災感知器10について、ステップSA−1で取得した動作情報に基づいて特定される環境変化機器20の動作に対応する優先度を、制御テーブルから取得する(ステップSA−5)。
【0045】
図3に示した例では、例えばエアコン20aの風量が大又は中の場合、風によって煙が拡散され、煙感知器10aで煙を検出することが困難になる可能性があるため、煙感知器10aの優先度が1となっている一方で、風の影響を受けにくい炎感知器10cの優先度が3となっている。
【0046】
また、コンロ20bがONの場合、コンロ20bの炎を誤って検出してしまう可能性があるため、炎感知器10cの優先度が1となっている一方で、コンロ20bの炎の影響を受けにくい煙感知器10aの優先度が3となっている。
【0047】
図4に戻り、ステップSA−4で検出出力が検出基準以上と判定された火災感知器10のうち、ステップSA−5で取得した優先度が3の火災感知器10が存在する場合(ステップSA−6、Yes)、判定部31bは火災が発生しているものと判定し(ステップSA−7)、警報の出力を行う(ステップSA−8)。
【0048】
優先度が3の火災感知器10がなく(ステップSA−6、No)、優先度が2の火災感知器10が存在する場合(ステップSA−9、Yes)、判定部31bは、検出出力が検出基準以上であった火災感知器10が複数か否かを判定する(ステップSA−10)。その結果、複数であった場合(ステップSA−10、Yes)、判定部31bは火災が発生しているものと判定する(ステップSA−7)。また、複数でなかった場合(ステップSA−10、No)、判定部31bは火災が発生しているか否か不確実であると判断し、判定制御部31aは環境変化機器20から再度動作情報を取得する(ステップSA−1)。
【0049】
また、優先度が2の火災感知器10がなかった場合(優先度が1の火災感知器10のみであった場合)(ステップSA−9、No)、判定部31bは、火災が発生しているか否か不確実であると判断し、判定制御部31aは環境変化機器20から再度動作情報を取得する(ステップSA−1)。
【0050】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、環境変化機器20の動作に応じて、判定部31bを制御するので、環境変化機器20が火災感知器10の検出環境に与える変化を考慮して、判定部31bに適切な火災判定を行わせることができる。
【0051】
また、環境変化機器20の動作に応じて検出基準を変化させるので、環境変化機器20が火災感知器10の検出環境に与える変化に対応した検出基準に基づき、判定部31bに高精度な火災判定を行わせることができる。
【0052】
また、環境変化機器20の動作に応じて設定された優先度に基づき火災発生の有無を判定部31bが判定するので、環境変化機器20が火災感知器10の検出環境に与える変化に応じて確実に火災検出が可能な火災感知器10の検出出力を優先して火災判定を行わせることができる。
【0053】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、環境変化手段から擬似的に前記火災起因現象を発生させる形態である。
【0054】
なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0055】
(火災感知システムの構成)
まず、本実施の形態2に係る火災感知システムの構成を説明する。図5は火災感知システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。図5に示すように、火災感知システム1は、火災感知器10、及び火災感知装置30を備えている。
【0056】
(火災感知システムの構成−火災感知器)
本実施の形態2では、火災感知器10は、伝送路を介して火災感知装置30と接続されておらず、相互に通信することはできない。但し、火災感知器10が、他の防災システムにおける防災受信機等と伝送路を介して接続されていてもよい。
【0057】
(火災感知システムの構成−火災感知装置)
火災感知装置30は、図5に示したように、制御部31、検出部35、環境変化部36、操作部33、及び記録部34を備えている。なお、操作部33及び記録部34は、実施の形態1における操作部33及び記録部34とそれぞれ同様であるので説明を省略する。
【0058】
制御部31は、機能概念的に、判定部31b及び環境変化制御部31cを備えている。このうち判定部31bは実施の形態1における判定部31bと同様であるので説明を省略する。環境変化制御部31cは、判定部31bの動作に応じて環境変化部36を制御するものであり、特許請求の範囲における制御手段に対応する。これらの制御部31の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0059】
検出部35は、火災に起因して発生する火災起因現象を検出する検出手段である。この検出部35の具体的な構成は任意で、例えば煙感知器、熱感知器、あるいは炎感知器等を用いることができる。
【0060】
環境変化部36は、擬似的に火災起因現象を発生させることで火災感知器10の検出環境に変化を与える環境変化手段である。環境変化部36の具体的な構成や、当該環境変化部36が如何なる種類の火災感知器10の検出環境に変化を与えるかは任意であり、例えば、煙感知器10aの検出環境に変化を与える環境変化部36として、スモーク液を霧状に噴霧することで擬似的に煙を発生させるスモークマシンを用いることができる。
【0061】
(火災感知システムによる処理)
次に、このように構成された火災感知システム1が実行する処理について説明する。図6は火災感知システム1が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
火災感知装置30の起動後、判定部31bは、検出部35から検出出力を取得する(ステップSB−1)。そして、取得した検出出力と、検出基準テーブルに格納されている検出基準とを比較する(ステップSB−2)。その結果、検出出力が検出基準以上でなかった場合(ステップSB−2、No)、ステップSB−1に戻り、判定部31bは再度検出部35から検出出力を取得する(ステップSB−1)。
【0063】
一方、検出出力が検出基準以上であった場合(ステップSB−2、Yes)、判定部31bは火災が発生しているものと判定する(ステップSB−3)。この判定部31bによる火災判定を受けて、環境変化制御部31cは、環境変化部36から擬似的に火災起因現象を発生させる(ステップSB−4)。例えば環境変化部36としてスモークマシンを用いている場合、当該スモークマシンから擬似的に煙を発生させる。このスモークマシンから発生させた煙を煙感知器10aが感知すると、当該煙感知器10aから伝送路を介して防災受信機等に発報信号が送信され、警報出力等の所定の動作が行われる。
【0064】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、火災が発生しているものと判定部31bが判定した場合、環境変化部36から擬似的に火災起因現象を発生させるので、火災感知装置30が他の防災システムにおける防災受信機等と接続されていない場合であっても、当該防災受信機に接続されている火災感知器10を介して広い範囲に火災の発生を報知することができる。
【0065】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0066】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0067】
(各実施の形態の相互の関係について)
上記説明した各実施の形態は、任意の組み合わせで相互に組み合わせることができる。例えば、実施の形態1と実施の形態2とにおける火災感知装置30を組合わせて、伝送路2を介して火災感知装置30に接続されている火災感知器10からの検出出力や、ネットワーク3を介して火災感知装置30に接続されている環境変化機器20の動作に基づいて火災判定を行い、当該判定結果に基づき環境変化部36から擬似的に火災起因現象を発生させ、当該火災感知装置30と接続されていない火災感知器10を介して火災の発生を広範囲に報知させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明に係る火災感知システムは、監視領域における火災を感知する火災感知システムに適用でき、所定の機器が検出環境に与える変化を考慮して適切な火災判定を行うことができ、防災受信機と接続されていない火災感知器が火災の発生を検出した場合でも広い範囲に火災の発生を報知することができる火災感知システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】火災感知システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。
【図2】検出基準テーブルを例示した表である。
【図3】制御テーブルを例示した表である。
【図4】火災感知システムが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】火災感知システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。
【図6】火災感知システムが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 火災感知システム
2 伝送路
3 ネットワーク
10 火災感知器
10a 煙感知器
10b 熱感知器
10c 炎感知器
20 環境変化機器
20a エアコン
20b コンロ
30 火災感知装置
31 制御部
31a 判定制御部
31b 判定部
31c 環境変化制御部
32 通信部
33 操作部
34 記録部
35 検出部
36 環境変化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災に起因して発生する火災起因現象を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出環境に変化を与える環境変化手段と、
前記検出手段の検出出力と所定の検出基準とに基づき火災発生の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段又は前記環境変化手段の少なくとも一方の動作に応じて、当該判定手段又は当該環境変化手段の少なくとも一方を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする火災感知システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記環境変化手段の動作に応じて前記検出基準を変化させること、
を特徴とする請求項1に記載の火災感知システム。
【請求項3】
前記制御手段は、相互に異なる前記火災起因現象を検出する複数の前記検出手段について、前記環境変化手段の動作に応じて優先度を設定し、
前記判定手段は、前記検出手段の検出出力、前記検出基準、及び前記優先度に基づき火災発生の有無を判定すること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の火災感知システム。
【請求項4】
前記制御手段は、火災が発生しているものと前記判定手段が判定した場合、前記環境変化手段から擬似的に前記火災起因現象を発生させること、
を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の火災感知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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